説明

車体傾斜装置及び車体傾斜装置に用いられる二層三方弁

【課題】車体傾斜装置において、従来技術のレベル調整制御用の自動高さ調整弁を十分生かしながら、迅速な車体傾斜制御を行うことである。
【解決手段】車体傾斜装置30は、空気バネ22,23に対応して設けられる個別傾斜部112,113と、制御部110とを含んで構成される。個別傾斜部112は、制御部110から与えられる高さ指令値と、リンクレバー機構24から得られる車高値との間の偏差である高さ偏差を用いて、制御弁40と、大容量弁170を駆動して空気バネ22に対し十分な給排気を行うことができる。制御弁40は、固定スリーブ91、制御スリーブ90、スプール80の二重構造を有し、制御スリーブ90は、リンクレバー機構24と回転・直進変換機構44によって移動駆動され、スプール80は、設定車高値に応じてスプールアクチュエータ120によって移動駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体傾斜装置及び車体傾斜装置に用いられる二層三方弁に係り、特に、車両の台車と車体の間に設けられる空気バネを伸長または縮小して台車に対し車体を傾斜させる車体傾斜装置、及び車体傾斜装置に用いられる二層三方弁に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道を用いた交通機関では、乗客の乗り心地改善等のために、台車と車体との間に空気バネが設けられる。空気バネは、1両の車両の前後および左右にそれぞれ設けられ、これらの空気バネに加圧空気源からの加圧空気を供給しあるいは空気バネ中の空気を大気中に排出することで、車体は台車に対し上下方向に移動でき、前後・左右の空気バネを全て給気あるいは排気とすると、車体を上下並進移動させることができ、左右の空気バネの一方のみを給気、あるいはさらに他方も排気とすると、車体を左右方向(車幅方向)に傾斜させることができる。
【0003】
例えば、台車に対し車体の高さが予め定めた高さより全体的に高くなったり低くなったりするのを調整するレベル調整制御を行うことができる。また、車両の曲線部走行の際にレールのカント不足のために発生する超過遠心力を緩和するために車体を曲線の内側に傾斜させる車体傾斜制御を行うことができる。
【0004】
特許文献1には、車体傾斜制御の際に、精度の高い車高計測を行うことができる車体傾斜制御用車高計測装置が述べられている。ここでは、レベル調整制御のために、自動高さ調整弁の開閉操作部と一体回転するシャフトの先端部に開閉操作レバーの一端が一体回転可能に連結され、この開閉操作レバーの先端に調整棒の一端が接続され、調整棒の他端が台車にブラケットを介して接続され、このシャフトに車高計測用エンコーダが設けられている。台車に対する車体の上下方向を車高として、車高が変化して、例えば車高が下がったときは、調整棒を介して開閉操作レバーの先端側が突き上げられて自動高さ調整弁が切り換わり、加圧空気が空気バネに供給され、車体が上昇する。空気バネが伸長すると開閉操作レバーの先端側が調整棒を介して下向きに引っ張られ、空気バネへの加圧空気の供給が停止する。このようにして、台車に対し車体の床面は一定の高さに制御される。
【0005】
車体傾斜制御を行うときは、車高計測エンコーダを用いながら、レベル調整用の空気連通系を遮断し、車体傾斜制御用空気圧回路系を起動させ、小口径給気弁を開いて空気バネに給気を開始し、その後大口径給気弁を開き、これによって車高を高くする。所定の高さになれば、大口径給気弁を閉じ、ついで小口径給気弁を閉じる。車高を低くするときには、排気弁を開いて空気バネからの排気が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3153160号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
乗客の増減に応じて台車に対し車体の床面を一定の高さに制御するレベル調整制御のために設計された自動高さ調整弁をそのまま車体傾斜制御用に用いるには、給排気能力が不足し、曲線走行の速度に対応して車両を十分な速さで傾斜動作しきれないことが生じる。そこで、特許文献1等に述べられているように、自動高さ調整弁とは別に給気弁と排気弁を用い、車体傾斜制御のときは自動高さ調整弁を用いずに、この給気弁と排気弁を用いて空気バネの伸長または縮小を迅速にすることが行われている。
【0008】
このように、レベル調整制御には自動高さ調整弁を用い、車体傾斜制御にはこれとは別の給気弁と排気弁とを用いるものとすることは、せっかくの自動高さ調整弁を生かしきれていない。
【0009】
本発明の目的は、レベル調整制御用の自動高さ調整弁を十分生かしながら、迅速な車体傾斜制御を行うことを可能とする車体傾斜装置及び車体傾斜装置に用いられる二層三方弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る車体傾斜装置は、車両の車体と台車の間に配置される空気バネに気体を供給しあるいは排気して空気バネを伸縮させて車体と台車の間の高さである車高値を変更する車体傾斜装置であって、小径のステムと大径のランドとを有するスプールと、気体供給源に接続される給気ポートと、排気ポートと、空気バネに接続される負荷ポートとを有する固定スリーブと、外周側で固定スリーブに摺動自在に支持され、内周側でスプールを摺動自在に支持し、少なくともスプールのランドに対応する負荷口を有し、固定スリーブに対し予め定めた所定移動範囲で相対的に移動可能で、所定移動範囲において負荷口は固定スリーブの負荷ポートの範囲にある制御スリーブと、を含み、スプールのランドと制御スリーブの負荷口との間の相対位置関係で給気ポートから負荷ポートを経て空気バネに供給される気体流量が定まり、あるいは空気バネから負荷ポートを経て排気ポートから排出される気体流量が定まる二層三方弁と、車高値の設定値である設定車高値に応じて、二層三方弁の固定スリーブに対しスプールを軸方向に移動駆動するスプールアクチュエータと、設定車高値と実際の車高値との差である車高偏差値に応じて、二層三方弁のスプールに対し制御スリーブを軸方向に移動駆動するスリーブアクチュエータと、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る車体傾斜装置において、スリーブアクチュエータは、一方端が台車側に回転可能に支持され、他方端が回転接続部によって回転可能に支持される台車側アームと、一方端が回転接続部によって回転可能に支持され、他方端が車体側に回転可能に支持される車体側アームとを含み、車高値に応じて、台車側アームと車体側アームとで形成される形状が変化するリンクレバー機構と、リンクレバー機構の車体側支持部に設けられ、リンクレバー機構の形状変化に応じて回転する回転部と、回転部の回転をスリーブの軸方向直進運動に変換する回転・直進変換機構と、を含むことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る車体傾斜装置において、二層三方弁の制御スリーブの状態を検出し、電気信号として出力する制御スリーブセンサと、制御スリーブセンサの出力に応じ電気信号によって駆動され、二層三方弁よりも流量容量が大きい大容量弁であって、出力口が二層三方弁の負荷口と共に空気バネに接続される大容量弁と、を備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る車体傾斜装置において、二層三方弁のスプールの状態を検出し、電気信号として出力するスプールセンサと、スプールセンサの出力をスプールアクチュエータの駆動信号にフィードバックするフィードバックループと、を備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る車体傾斜装置において、二層三方弁のスプールは、軸方向の一方端側を開閉弁端側として、開閉弁端側に排気用開口部を有し軸方向に延びて他方端が排気ポートに連通する中心穴が設けられるステム部と、ステム部よりも外径の大きい中央ランド部とを有し、制御スリーブは、軸方向の一方端側を開閉弁端側として、スプールの開閉弁端側の外径よりも大きい内径の開閉弁側開口部を開閉弁端側に有し、スプールを軸方向に摺動自在に支持し、スプールとの間の相対位置が中立状態のときにスプールの中央ランド部を塞ぐ位置に配置される負荷口と、軸方向に沿って負荷口の前後に配置され負荷口を越えて相互に連通する2つの開口部とを有し、二層三方弁に対し、一方端側が気体供給源に接続され他方端側が制御スリーブの開閉弁端に接続される筒状の開閉弁本体と、開閉弁本体の内部に収納され制御スリーブの開閉弁側開口部を塞ぐ大きさの開閉弁弁体と、開閉弁弁体を制御スリーブの開閉弁端側に付勢する付勢手段とを含む給気開閉弁を備えることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る車体傾斜装置用二層三方弁は、小径のステムと大径のランドとを有するスプールと、気体供給源に接続される給気ポートと、排気ポートと、空気バネに接続される負荷ポートとを有する固定スリーブと、外周側で固定スリーブに摺動自在に支持され、内周側でスプールを摺動自在に支持し、少なくともスプールのランドに対応する負荷口を有し、固定スリーブに対し予め定めた所定移動範囲で相対的に移動可能で、所定移動範囲において負荷口は固定スリーブの負荷ポートの範囲にある制御スリーブと、を含み、スプールのランドと制御スリーブの負荷口との間の相対位置関係で給気ポートから負荷ポートを経て空気バネに供給される気体流量が定まり、あるいは空気バネから負荷ポートを経て排気ポートから排出される気体流量が定まることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記構成により、車体傾斜装置は、スプール・スリーブ機構において、固定スリーブとは別に、固定スリーブとスプールの双方に対し相対的に移動可能な制御スリーブを設ける。そして、設定車高値と実際の車高値との差である車高偏差値をゼロにするには、スリーブアクチュエータを用いて、制御スリーブをスプールに対し軸方向に移動駆動する。この機能は、設定車高値を予め設定された標準車高値とすれば、従来のレベル調整制御と同じである。レベル調整制御においては、固定スリーブに対するスプールの位置を標準車高値に相当する固定位置とし、このスプールに対し制御スリーブを車高偏差値に応じて移動駆動する。この構成は、従来の自動高さ調整弁において、スプールとスリーブを逆にしたものに相当する。
【0017】
設定車高値を標準車高値と異なる値として車体を傾斜させるときは、スプールアクチュエータを用いて、固定スリーブおよび制御スリーブに対しスプールを軸方向に移動駆動する。このようにすることで、従来の自動高さ調整弁における標準車高値をオフセットさせて設定車高値とすることができる。この状態において、二層三方弁の流路が開き、圧縮気体が空気バネへ給気される、または空気バネから排気されるので、車体が上下に移動し台車側アームと車体側アームで形成されるリンクレバー機構が動作し、車高偏差値をゼロにする方向にスリーブアクチュエータが移動し、車高値を設定車高値にする制御を行うことができる。このように、制御弁の制御を2系統独立としたので、自動高さ調整弁を十分生かしながら、レベル調整制御と、車体傾斜制御の双方を迅速に行うことができる。
【0018】
また、車体傾斜装置において、スリーブアクチュエータは、台車側アームと車体側アームとを含むリンクレバー機構と、リンクレバー機構の形状変化を制御スリーブの軸方向直進運動に変換する回転・直進変換機構と、を含む。この構成は、従来技術で用いられている自動高さ調整弁におけるリンクレバー機構と同じである。したがって、堅牢性と作動性の実績のある従来技術を十分生かしながら、レベル調整制御と、車体傾斜制御の双方を迅速に行うことができる。
【0019】
また、車体傾斜装置において、二層三方弁の制御スリーブとスプールの状態を検出し、その間の偏差を電気信号として出力する。そして、その偏差に応じた電気信号で、二層三方弁よりも流量容量が大きい大容量弁を駆動し、その出力口を二層三方弁の負荷口と合わせて空気バネに接続する。したがって、車体の傾斜制御において、二層三方弁のみによるものよりも大きな流量を空気バネに供給し、あるいは空気バネから二層三方弁のみによるよりも大きな流量で排気することができる。これによって、車体傾斜制御を、二層三方弁のみを用いる場合に比べ、迅速に行うことができる。
【0020】
また、車体傾斜装置において、二層三方弁のスプールの状態を検出し、電気信号として出力し、これをスプールアクチュエータの駆動信号にフィードバックするので、スプールの位置について、変動に強い高い剛性で定めることもできる。
【0021】
また、車体傾斜装置において、中央ランド部に対応する負荷口と、負荷口の前後に相互に連通する2つの開口部を配置したスプール・スリーブ機構を基本とする。スプールは、軸方向に沿って排気用の穴が設けられている。そして、スプール・スリーブ機構の軸方向の一方端側を開閉弁端側として、その開閉弁端側に、付勢手段によって制御スリーブの開閉弁端側に付勢される開閉弁弁体を含む給気開閉弁が配置される。このような構成とすることで、制御スリーブに対しスプールが開閉弁端側に移動するときは、開閉弁弁体が付勢手段の付勢力に抗しながら気体供給源への給気ポート側に移動して給気ポートとスリーブの開閉弁側開口部が連通するので、給気ポートと空気バネとが連通する。制御スリーブに対しスプールが逆側に移動するときは、給気開閉弁の付勢手段の付勢力によって開閉弁弁体が制御スリーブの開閉弁側開口部が遮蔽されると共に、スプールの開閉弁端側と開閉弁弁体との間に隙間を生じてスプールの排気用開口部と制御スリーブの内部空間との間が連通するので、排気ポートと空気バネとが連通する。このように、スプール・スリーブ機構を基本とする新しい概念の車体傾斜装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る実施の形態の車体傾斜装置が用いられる車両の様子を説明する図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の車体傾斜装置に用いられる制御弁の詳細構成図である。
【図3】本発明に係る実施の形態における給気開閉弁と二層三方弁に関する詳細図である。
【図4】本発明に係る実施の形態における回転・直進変換機構の詳細構成図である。
【図5】本発明に係る実施の形態の車体傾斜装置のブロック図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、レベル調整のときに空気バネを伸長させる様子を説明する図である。
【図7】本発明に係る実施の形態において、レベル調整のときに空気バネを縮小させる様子を説明する図である。
【図8】本発明に係る実施の形態において、車体傾斜のときに空気バネを伸長させる様子を説明する図である。
【図9】本発明に係る実施の形態において、車体傾斜のときに空気バネを縮小させる様子を説明する図である。
【図10】本発明に係る実施の形態において、別の構成の制御弁を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を用いて、本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。以下では、従来技術の自動高さ調整弁に相当するものとして、スプール・スリーブ方式の制御弁を説明するが、これは一例であって、空気バネに連通する負荷ポートと、気体供給源に連通する給気ポートと、大気側に開放される排気ポートとの3つのポートを有する気体制御弁であれば、他の構造であってもよい。また、大容量弁もスプール・スリーブ方式の三方弁としての電気的アクチュエータによって駆動される制御弁を説明するが、これも一例であって、電気信号によって制御され流量容量の十分大きな気体弁であれば、他の構造であっても構わない。例えば、単なるオンオフ弁であっても構わない。スプールアクチュエータとして可動線輪型のフォースモータを説明するが、これ以外の方式、例えば、プランジャ型のアクチュエータでもよく、場合によってはステッピングモータ、サーボモータ等の小型モータとボールネジ等の直線運動機構との組合せであってもよい。
【0024】
なお、以下では、空気バネに加圧空気が供給されるものとして説明するが、ここでの空気は、外気の他に、乾燥空気、あるいは窒素と酸素の成分比を適当に変更した気体、適当な不活性ガス等を添加した気体等であってもよい。
【0025】
なお、以下では、空気バネの伸縮制御を用いた車体傾斜装置を主として説明するが、これは応用例を説明するためのものである。車体傾斜装置用途以外でも、防振テーブルの水平維持機構に用いて除振装置に用いることもできる。
【0026】
また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0027】
図1は、車体傾斜装置30が用いられる車両10の構成を説明する図である。車両10は、路面12の上に敷設されるレール14,15の上を回転する車輪16,17を備える台車18と、乗客等が利用する車体20と、台車18と車体20の間に設けられる空気バネ22,23と、台車18と車体20との間に設けられるリンクレバー機構24,25を含んで構成される。1両の車両について、その前後左右に空気バネとそれに対応するリンクレバー機構がそれぞれ設けられるが、図1では、そのうちの左右の2つの空気バネ22,23とリンクレバー機構24,25についてのみ図示されている。ここでは、車体傾斜装置30を構成する各要素について簡単に説明し、具体的な詳細構造については図3以下で詳述するものとする。
【0028】
図1では、路面12が傾斜し、左右のレール14,15の高さに差がつけられている。この差は、レールが曲線状に敷設されて車両がカーブしながら走行するときに、車体20の中の乗客が遠心力を感じないように、車体20を傾斜させるためのものである。曲線の内側のレール14と曲線の外側のレール15の高低差は、カント量と呼ばれる。このカント量は、その曲線部分を走行する車両の設定速度に適合して設定されるので、その設定速度以上で高速走行する車両の場合には、超過遠心力が生じることになる。
【0029】
その超過遠心力を車体20の中の乗客に感じさせないようにするには、その高速走行に対応するカント量に相当するように、台車18に対し車体20を曲線の内側に向かって傾斜させればよい。このように台車18に対し車体20を傾斜させることが車体傾斜制御である。図1の例では、空気バネ22が縮小され、空気バネ23が伸長されて、これによって車体20の空気バネ22側が低くなるように、車体20が台車18に対し傾斜している様子が示されている。
【0030】
リンクレバー機構24,25は、台車18に対し回動可能に一方端が支持される台車側アームと、車体20に対し回転可能に他方端が支持される車体側アームであるレバーと、台車側アームの他方端と車体側アームの一方端が相互に回動可能に接続される機構で、台車18に対する車体20の高さ位置が変わると、リンクレバー機構24,25のリンク形状が変化し、その形状変化は、台車18に対する車体20の高さによって一意に定まる。そこで、例えば、予め定められた車体20の基準面に対する車体側アームの傾斜角度を、台車に対する車体の高さに対応する高さ対応値として用いることができる。その意味から、リンクレバー機構24,25は、高さ対応値を車高値として提供することができる車高検出器である。
【0031】
車体傾斜装置30は、各空気バネ22,23に対応して設けられる個別傾斜部112,113と、複数の個別傾斜部112,113を統合的に制御する制御部110とを含んで構成される。個別傾斜部112,113は、図1の例では左右対称の構成であるので、以後では、個別傾斜部112に代表させて、説明を続けるものとする。
【0032】
個別傾斜部112は、制御部110から与えられる高さ指令値と、リンクレバー機構24から得られる車高値との間の偏差である高さ偏差を用いて、制御弁40と、制御弁よりも流量容量の大きな大容量弁170とを駆動して、空気バネ22に対し十分な給排気を行うことができる装置である。
【0033】
制御弁40と、大容量弁170には、それぞれ給気口接続部、排気口開放部、負荷口接続部が設けられる。図1の気体供給源32は、制御弁40と大容量弁170の給気口接続部に接続され、加圧空気を供給する気体源である。排気は、制御弁40と大容量弁170の排気口開放部を大気側に開放することで行われる。
【0034】
制御弁40は、スプール・スリーブ機構を有し、給気ポートと排気ポートと負荷ポートとを有する二層三方弁78を含む。ここでは、スリーブが2層に分かれて、制御スリーブ90と固定スリーブ91とに分かれる。固定スリーブ91は、スプール・スリーブ機構の筐体であって、一般的なスプール・スリーブ機構のスリーブに相当するものである。制御スリーブ90は、外周側で固定スリーブ91に摺動自在に支持され、内周側でスプール80を摺動自在に支持する部材である。
【0035】
スプール80は、スプールアクチュエータで移動駆動され、制御スリーブ90は、回転・直進変換機構44を介してリンクレバー機構24によって移動駆動される。スプール80の状態と、制御スリーブ90の状態は、それぞれセンサによって検出されるが、図1では、制御スリーブ90の状態を示す電気信号が大容量弁駆動部150に供給される様子が示される。制御弁40の詳細構成については、図2、図3を用いて後述する。なお、スプール80の状態を示す電気信号は、図2で説明するように、制御部110に供給される。
【0036】
大容量弁駆動部150は、スプール80の位置と制御スリーブ90の位置の偏差に応じた電気信号を駆動信号として、大容量弁170に出力する回路である。大容量弁170は、二層三方弁78の流量容量よりも十分大きな流量容量を有する弁である。例えば、二層三方弁78における流量容量の少なくとも2倍、好ましくは5倍から10倍の流量容量を有する気体弁である。大容量弁170は、二層三方弁78と同様に、スプール・スリーブ型三方弁を用いることができる。
【0037】
制御弁路42は、制御弁40の負荷口接続部と空気バネ22とを接続する負荷路である。また、大容量弁路172は、大容量弁170の負荷口接続部と空気バネ22とを接続する大容量の負荷路である。図1に示されるように、制御弁路42と大容量弁路172とは、相互に合流して、空気バネ22に接続されるので、空気バネ22には、制御弁40と、大容量弁170とから加圧空気の供給を受けることができ、また、空気バネ22から、制御弁40と、大容量弁170とを介して、大気に開放して排気することができる。
【0038】
大容量弁170の給気口接続部に設けられる開閉弁174と、大容量弁170の排気口開放部に設けられる開閉弁176は、車体の傾斜制御を行うときに開放され、大容量弁170を作動させることができる。
【0039】
次に、制御弁40の詳細構造について、図2から図4を用いて説明する。制御弁40は、大別して、給気開閉弁60と、二層三方弁78と、制御スリーブアクチュエータに相当する回転・直進変換機構44と、スプールアクチュエータ120と、制御スリーブセンサ130と、スプールセンサ140とを含んで構成される。図2は、制御弁40全体の構造図で、図3は、給気開閉弁60と二層三方弁78の部分の詳細図、図4は、回転・直進変換機構44の詳細図である。これらの図において、直交するXYZ軸を示した。X方向が、スプール80および制御スリーブ90の移動方向である。
【0040】
制御弁40は、給気口接続部52、排気口開放部54、負荷口接続部41の3つの気体流通口と、スプール駆動制御ポート128、制御スリーブセンサポート132、スプールセンサポート146の3つの信号接続部を有する。これらは、制御弁40の筐体に取り付けられる。制御弁40の筐体は、制御弁40が複数の構成要素を組み合わせていることから、各構成要素の筐体を接続して組み立てたものであるが、ここでは、二層三方弁78の筐体である固定スリーブ91に代表させて、これを制御弁40の筐体と呼ぶことにする。
【0041】
給気口接続部52は、給気開閉弁60に気体供給源32からの加圧空気を供給するための接続口である。排気口開放部54は、二層三方弁78の排気ポートに接続し、大気に開放する開放端である。負荷口接続部41は、二層三方弁78の負荷ポートと空気バネ22とを接続するための接続口である。給気口接続部52と負荷口接続部41には適当なフィルタを設けてもよい。また、排気口開放部54に適当な消音器を設けてもよい。
【0042】
スプール駆動制御ポート128は、スプールアクチュエータ120に制御部110からの駆動制御信号を伝送するための信号線を接続するためのコネクタ部である。制御スリーブセンサポート132は、制御スリーブ90の状態を検出する制御スリーブセンサ130であるレゾルバ等の出力信号を大容量弁駆動部150に伝送するための信号線を接続するためのコネクタである。スプールセンサポート146は、スプール80の状態を検出するスプールセンサ140である変位センサの出力信号を制御部110へ伝送するための信号線を接続するためのコネクタである。
【0043】
図3は、給気開閉弁60と二層三方弁78に関する詳細を示す断面図である。給気開閉弁60は、二層三方弁78における給気ポートに相当するもので、気体供給源32に接続される。給気開閉弁60は、二層三方弁78の制御スリーブ90の+X方向の移動で閉じ、−X方向の移動で開く。または、二層三方弁78のスプール80の+X方向の移動で開き、−X方向の移動で閉じる。図3は、二層三方弁78が中立状態にあるときの様子が示されている。
【0044】
給気開閉弁60は、制御弁40の筐体の一部を構成する開閉弁本体61と、その内部空間62に収納されるようにして配置される弁体機構64を含んで構成される。開閉弁本体61は、一方端側が給気口接続部52に接続され、他方端側が二層三方弁78の筐体の一部である固定スリーブ91の開閉弁端に接続される筒状部材である。開閉弁本体61の一方端側には、円環状の突出部63が設けられる。
【0045】
弁体機構64は、両側に円板を有し、その円板の間に弱いバネ定数のコイルバネ70が取り付けられるバネ付双方向弁体である。具体的には、弁体機構64は、給気口接続部52側の円板である給気側弁体66と、二層三方弁78側の円板である開閉弁弁体68と、給気側弁体66と開閉弁弁体68とを接続する付勢手段であるコイルバネ70を含んで構成される。コイルバネ70は、給気側弁体66と開閉弁弁体68に対し、互いに引き離す方向に付勢力を与える。
【0046】
給気側弁体66は、開閉弁本体61の内部の圧力が供給圧力よりも高くなった場合に、逆流を防止する逆止弁の機能を有し、開閉弁本体61の一方端側に設けられる円環状の突出部63に囲まれる開口部を塞げる大きさの外形を有する円板である。
【0047】
開閉弁弁体68は、中立状態では、制御スリーブ90の開閉弁端側に設けられる円環状の突出部98によって囲まれる開口部である開閉弁側開口部を塞げる大きさの外形を有する円板である。開閉弁弁体68は、コイルバネ70によって開閉弁本体61の他方端側に向かうように付勢されるので、制御スリーブ90の中立状態では、開閉弁弁体68は、制御スリーブ90の開閉弁端側の突出部98に押し付けられる。なお、図3では、開閉弁端側の近傍部65が破線で囲んで示されている。
【0048】
また、スプール80と制御スリーブ90が中立状態のときは、スプール80の開閉弁端側に設けられる円環状の突出部88もちょうど制御スリーブ90の円環状の突出部98とX方向の位置が同じとなるように設定されるので、中立状態では、開閉弁弁体68は、スプール80の開閉弁端側の突出部88にも同時に押し付けられる。これによって、中立状態では、制御スリーブ90の開閉弁端側の突出部98で囲まれる開口部と、スプール80の開閉弁端側の突出部88で囲まれる開口部は、共にその開口部が塞がれる。開閉弁弁体68の二層三方弁78側の表面69と、制御スリーブ90の突出部98の先端部と、スプール80の突出部88の先端部とは、相互に気密に密着できるようにされる。
【0049】
二層三方弁78のスプール80は、軸方向の一方端側である+X方向端を開閉弁端側として、開閉弁端側に排気用開口部82を有し、軸方向に沿って延びて他方端が排気口開放部54に連通する中心穴84が設けられる細軸のステム部と、ステム部よりも外径の大きい中央ランド部86とを有する軸部材である。排気用開口部82は、円環状の突出部88に囲まれる開口部である。
【0050】
制御スリーブ90は、外周側で固定スリーブ91に摺動自在に支持され、内周側でスプール80を摺動自在に支持する部材である。制御スリーブ90は、軸方向の一方端側である+X方向端を開閉弁端側として、スプール80の開閉弁端側の外径よりも大きい内径の開閉弁側開口部を開閉弁端側に有し、スプール80を軸方向に摺動自在に支持する案内穴を内部に有する。開閉弁側開口部は、開閉弁端側の円環状の突出部98によって囲まれた開口部である。図3には、スプール80の開閉弁端側の外径と制御スリーブ90の開閉弁側開口部の内径との隙間空間100が示されている。
【0051】
制御スリーブ90は、軸方向に沿って3つの開口部を有するが、そのうちの1つが負荷口50である。上記のように、給気開閉弁60と二層三方弁78の組合せでは、制御スリーブ90において気体供給源32から加圧空気が供給されるのは、給気開閉弁60側からである。その意味で、給気口に相当するのは、開閉弁端側の近傍部65の隙間空間100である。また、制御スリーブ90において空気バネ22から空気が大気に排気されるのは、スプール80の中心穴84を介して行われる。その意味で、排気口に相当するのも、開閉弁端側の近傍部65の隙間空間100である。その詳細な動作については、図6から図9を用いて後述する。
【0052】
したがって、図3における構成の制御スリーブ90は、外周に軸方向に沿って3つの開口部を有するが、そのうちの1つが負荷口50である。中立状態では、この負荷口50と、スプール80の中央ランド部86の位置とが一致し、中央ランド部86によって負荷口50は閉じられた状態となっている。他の2つの開口部92,94は、連通路96によって互いに連通する。この2つの開口部92,94は、スプール80と制御スリーブ90と給気開閉弁60の協働によって、加圧空気を空気バネ22に接続される負荷口50に供給するか、負荷口50から大気に排気するかを切り替えるために用いられる。これらの詳細な作用については、図6から図9を用いて後述する。
【0053】
再び図2に戻り、制御スリーブ90は、−X方向端で、回転・直進変換機構44を介してリンクレバー機構24に接続される。図4は、その部分の拡大斜視図である。ここでは、リンクレバー機構24について、台車側アーム26と車体側アームであるレバー28と、これらを回転自在に相互に接続する回転接続部27が示されている。
【0054】
回転・直進変換機構44は、車高値に応じて、台車側アーム26と車体側アームであるレバー28とで形成される形状の変化に伴うレバー28の回転運動を、制御スリーブ90の直進運動に変換する機能を有する。これによって、車高値に応じて、制御スリーブ90が軸方向に移動駆動される。その意味で、リンクレバー機構24と回転・直進変換機構44が、制御スリーブ90を移動駆動するスリーブアクチュエータに相当する。
【0055】
回転・直進変換機構44は、制御弁40の筐体に固定されるケース160に中心軸161が回転自在に保持される回転体162と、回転体162の中心軸161から偏心して配置される偏心ピン164と、制御スリーブ90の−X方向端に接続される案内板166に設けられた案内溝168を含んで構成される。
【0056】
ここで、回転体162の中心軸161に、レバー28の一方端が取り付けられる。また、案内板166は、制御スリーブ90と一体であるので、X方向にのみ移動可能である。そして、案内溝168は、Z方向に沿って設けられた溝で、偏心ピン164を受け入れる溝幅を有する。
【0057】
ケース160の内部に配置される制御スリーブセンサ130であるレゾルバは、回転体162の回転角度を検出する。回転体162の回転角度は、回転・直進変換機構44によって制御スリーブ90の軸方向の変位に変換されるので、制御スリーブセンサ130であるレゾルバは、制御スリーブ90の軸方向変位に相当する回転角度を検出することになる。制御スリーブセンサ130であるレゾルバの出力信号は、適当な信号線で、制御スリーブセンサポート132に伝送される。レゾルバに代えて、他の形式の回転検出センサを用いてもよい。例えば、エンコーダを用いることができる。
【0058】
再び図2に戻り、スプール軸118は、スプール80が二層三方弁78の領域よりも−X方向に延びて突き出す部分である。スプール軸118に取り付けられるスプールアクチュエータ120は、スプール80を軸方向に移動駆動する可動線輪型のフォースモータである。また、スプール軸118の先端に取り付けられるスプールセンサ140である変位センサは、スプール80の軸方向の変位を検出する差動トランス型センサである。
【0059】
スプールアクチュエータ120は、スプール軸118に取り付けられ先端部がカップ型に開く駆動アーム122と、駆動アーム122の先端に設けられるコイル124と、制御弁40の筐体に取り付けられコイル124に対向して配置される永久磁石126を含んで構成される。コイル124には、スプール駆動制御ポート128を介して制御部110から駆動電流信号が供給される。この駆動電流信号によってコイル124に流れる電流と、永久磁石126の磁束との協働作用によって、駆動アーム122に、軸方向の駆動力が与えられ、これによって、スプール80を軸方向に移動駆動することができる。
【0060】
スプールセンサ140は、スプール80のX方向の移動量を検出する変位センサである。図2には、スプールセンサ140として、差動トランス型が図示されているが、差動トランス型以外の形式の変位センサを用いてもよい。例えば、光学型変位センサ、静電容量型変位センサ等を用いることができる。
【0061】
図5は、上記構成の車体傾斜装置30のブロック図である。ここで、空気バネ22によって変化する台車18と車体20の間の高さである車高値から、リンクレバー機構24、回転・直進変換機構44、二層三方弁78を介して再び空気バネ22に戻るフィードバックループが、レベル調整制御のループである。ここでは、実際の車高値hが予め定めた標準車高値h0からずれて、車高偏差値Δhが生じると、スプール80に対し制御スリーブ90の相対位置関係が変化し、空気バネ22に対しQ1の大きさで加圧空気の供給または空気バネ22からの大気への排気が行われ、Δhをゼロにする方向に車体20が上昇または下降する。これ以外の部分は、傾斜制御において、付加的な供給流量Q2を空気バネ22に与えるときのブロック図に相当する。特に、破線枠171の部分は、大容量弁170を用いて大容量出力とするための部分のブロック図に相当する。
【0062】
そこで、最初に、レベル調整制御の流れを説明する。ここでは、形式的に、制御部110から高さ指令値200として予め定めた標準車高値h0が与えられる。高さ指令値200が標準車高値h0のときは、スプール80は中立位置とされるので、スプールアクチュエータ120はスプール80を移動駆動しない。
【0063】
ここで、リンクレバー機構24は、実際の車高値が標準車高値h0となるときに、回転・直進変換機構44を介して、制御スリーブ90の軸方向に沿った配置位置が中立位置となるように、台車側アーム26の長さが設定される。したがって、車高値が標準車高値h0のときには、制御スリーブ90とスプール80の位置関係が中立位置であるので、図3に示されるように、制御スリーブ90の負荷口50はスプール80の中央ランド部86によって閉じられる。と同時に、開閉弁端側の近傍65でスプール80の+X方向端の突出部88ならびに制御スリーブ90の+X方向端の突出部98が給気開閉弁60の開閉弁弁体68と密着する。したがって、空気バネ22には制御弁40から加圧空気が供給されることもなく、制御弁40を介して大気に開放されることもない。
【0064】
ここで、乗客の増減があって、実際の車高値が標準車高値h0からΔhだけ変化するとき、上記のレベル調整制御のフィードバックループが働く。すなわち、そのΔhがリンクレバー機構24と回転・直進変換機構44を介して、制御スリーブ90の軸方向の位置を変化させる。スプール80は中立状態のままであるので、制御スリーブ90の負荷口50とスプール80の中央ランド部86との相対位置関係が変化する。ここで、Δhがプラスのときに、空気バネ22から制御弁40を介して大気開放が行われるように制御スリーブ90がスプール80に対し移動する構成とする。すなわち、制御スリーブ90が+X方向に移動すると同時に、開閉弁弁体68を押すので、スプール80のランド部86および突出部88に加圧空気が通れる隙間ができ、空気バネ内の加圧空気が通路を通って大気放出される。これによって、車高偏差値Δhが小さくなり、それに応じて、制御スリーブ90の移動が中立位置に向かって戻される。このようにして、車高偏差値Δhをゼロにするように、リンクレバー機構24を介したフィードバックが行われる。
【0065】
次に、傾斜制御のときの流れについて説明する。車両10がカント不足を補償するために車体20を傾斜させる必要があるときには、各空気バネに対し、それぞれ異なる設定車高値が与えられる。例えば、図1において、空気バネ22に設定車高値h1が与えられ、空気バネ23に設定車高値h2が与えられる。そして、実際の車高値がこの設定車高値h1,h2となるように、傾斜制御が行われる。以下では、空気バネ22に対して、設定車高値h1が与えられるとして説明を続ける。傾斜制御を開始する前に、車体20と台車18の位置関係が平行状態にあるときは、実際の車高値は標準車高値h0になっており、制御スリーブ90は中立位置にある。
【0066】
制御部110から、高さ指令値200として設定車高値h1が与えられると、サーボアンプ202において、スプールアクチュエータ120のための駆動信号が生成される。いま、設定車高値h1が標準車高値h0よりも大きいとすると、空気バネ22を伸長させるように、スプール80の軸方向の位置を変化させる。制御スリーブ90は中立状態のままであるので、制御スリーブ90の負荷口50とスプール80の中央ランド部86との相対位置関係が変化する。ここで、空気バネ22に制御弁40を介して加圧空気が供給されるように、スプール80が制御スリーブ90に対し移動する構成とする。すなわち、スプール80が+X方向に移動すると同時に開閉弁弁体68を押すので、制御スリーブ90の負荷口50および突出部98に加圧空気が通れる隙間ができ、空気バネ22内へ加圧空気が通路を通って供給される。
【0067】
これによって、車高値が上がる。車高値が上がると、リンクレバー機構24、回転・直進変換機構44を介して、制御スリーブ90が軸方向に移動し、レベル調整制御と同様のフィードバックが働く。このフィードバックは、スプール80の中央ランド部86と制御スリーブ90の負荷口50が一致するまで継続的に働く。スプール80の中央ランド部86の軸方向の位置は、車高値が標準車高値h0のときの位置よりオフセットして、車高値が設定車高値h1に相当する位置となっている。したがって、制御スリーブ90は、実際の車高値hが設定車高値h1となるまで軸方向に移動する。実際の車高値hが設定車高値h1となると、制御スリーブ90の負荷口50とスプール80の中央ランド部86の位置が一致し、制御弁40から空気バネ22への加圧空気の供給が止まり、制御スリーブ90の移動も止まる。
【0068】
このように、傾斜制御のときには、スプール80の軸方向の位置が、標準車高値h0に対応する中立位置から、設定車高値h1に対応する位置にオフセットされる。このオフセットに対応して、制御スリーブ90が軸方向に移動駆動して、実際の車高値が設定車高値h1となる。つまり、スプール80の軸方向の位置がオフセットすることを除けば、調整制御と同様なリンクレバー機構24を含むフィードバックが利用される。
【0069】
この制御では、空気バネ22に供給される加圧空気の流量は、制御弁40の供給流量Q1で制限される。そこで、供給流量を増やすために大容量弁170が用いられる。大容量弁170を用いるループは以下の通りである。回転・直進変換機構44に含まれる制御スリーブセンサ130の出力する電気信号は制御スリーブセンサアンプ206で適当に増幅と信号変換が行われる。制御スリーブセンサアンプ206の出力は、減算部208において、高さ指令値200によって生成されたサーボアンプ202の出力から減算される。この減算処理によって、高さ指令値200である設定車高値h1と実際の車高値との差である車高偏差値が求められる。この車高偏差値は、電気信号値に基づく値である。
【0070】
この車体偏差値を大容量弁駆動部150のプリアンプ210で適当に増幅し、必要な信号変換を行って、電流ブースタ212で大容量弁170の駆動信号とする。この駆動信号で大容量弁170を駆動する。大容量弁170の供給流量Q2は、制御弁40の供給流量Q1に比べ格段に大きいものとする。
【0071】
加算部204は、制御弁40の供給流量Q1と大容量弁170の供給流量Q2とを合流させるもので、具体的には、図1の制御弁路42と大容量弁路172との合流部に相当する。これによって、空気バネ22には、制御弁40のみを用いる場合に比較し、格段に多い流量で、加圧空気が供給される。例えば、Q2をQ1の5倍として、大容量弁170を用いることで、制御弁40のみを用いる場合の供給流量Q1の6倍の供給流量(Q1+Q2)が空気バネ22に供給される。これによって、空気バネ22の伸長速度が格段に速くなる。
【0072】
大容量弁170からの供給流量を加えた合計供給流量で空気バネ22が伸長し、車高値が変化すると、制御弁40と大容量弁170のそれぞれについてフィードバック制御が行われる。制御弁40については、上記のように、リンクレバー機構24、回転・直進変換機構44、二層三方弁78、空気バネ22のフィードバックループで制御が行われる。大容量弁170については、リンクレバー機構24、回転・直進変換機構44、制御スリーブセンサ130、制御スリーブセンサアンプ206、減算部208、大容量弁駆動部150、大容量弁170、加算部204、空気バネ22のフィードバックループで制御が行われる。
【0073】
なお、上記では、空気バネ22に加圧空気を供給する場合を説明したが、空気バネ22から排気する場合でも同様である。
【0074】
図5において、スプールセンサ140と、スプールセンサアンプ214のループは、スプール80の移動駆動についての位置フィードバックを行うものである。すなわち、高さ指令値200が与えられたサーボアンプ202から、スプールアクチュエータ120、スプール80、スプールセンサ140による変位検出、スプールセンサアンプ214による適当な増幅と必要な信号変換を経て再びサーボアンプ202に戻るループで、スプール80の位置がスプールアクチュエータ120の駆動信号にフィードバックされる。これによって、スプール80の位置制御が安定し、精度が向上する。
【0075】
上記構成の作用、特に、給気開閉弁60と二層三方弁78の作用について、図6から図9を用いて詳細に説明する。図6と図7は、レベル調整制御における様子を説明する図で、図6は、実際の車高値hが標準車高値h0よりも低いので、空気バネ22に加圧空気を供給する場合、図7は、実際の車高値hが標準車高値h0よりも高いので、空気バネ22から排気を行う場合の図である。図8と図9は、傾斜制御における様子を説明する図で、図8は、実際の車高値hが設定車高値h1よりも低いので、空気バネ22に加圧空気を供給する場合、図9は、実際の車高値hが設定車高値h1よりも高いので、空気バネ22から排気を行う場合の図である。
【0076】
図6は、レベル調整制御において、実際の車高値hが標準車高値h0よりも低い場合である。この場合は、リンクレバー機構24と回転・直進変換機構44によって、制御スリーブ90が、中立位置にあるスプール80に対し、−X方向に移動した場合に相当する。ここでは、制御スリーブ90がスプール80に対し後退するので、開閉弁端側の近傍部65において、制御スリーブ90の突出部98と開閉弁弁体68との間に隙間が生じ、その隙間を通って、給気口接続部52からの加圧空気が、制御スリーブ90の内径とスプール80の外径との間の隙間空間100に流れ込む。そして、流れ込んだ加圧空気は、開口部92、連通路96、開口部94を経て、スプール80の中央ランド部86と負荷口50との間の位置関係のずれによって生じた−X方向側の開口から負荷口50に流れ込み、制御弁路42から空気バネ22に供給される。
【0077】
このようにして、給気口接続部52と空気バネ22とが連通することで、空気バネ22に加圧空気が供給され、空気バネ22が伸長する。空気バネ22が伸長すると、車高値hが高くなる。車高値hが高くなると、制御スリーブ90はスプール80に対して+X方向に戻される。車高値hが標準車高値h0に達すると、スプール80の中央ランド部86と制御スリーブ90の負荷口50の位置が一致するとともに、制御スリーブ90の先端の突出部98が給気開閉弁60の開閉弁弁体68に密着する。これにより、図3で説明した中立状態に戻って、給気口接続部52からの加圧空気の供給が止まる。このようにして、実際の車高値を標準車高値h0に戻すレベル調整制御が自動的に行われる。
【0078】
図7は、レベル調整制御において、実際の車高値hが標準車高値h0よりも高い場合である。この場合は、リンクレバー機構24と回転・直進変換機構44によって、制御スリーブ90が、中立位置にあるスプール80に対し、+X方向に移動した場合に相当する。ここでは、制御スリーブ90がスプール80に対し突き出すので、給気開閉弁60の付勢手段であるコイルバネ70の付勢力によって開閉弁弁体68が制御スリーブ90の開閉弁側開口部を遮蔽する。具体的には、開閉弁端側の近傍部65において制御スリーブ90の円環状の突出部98に開閉弁弁体68が押し付けられる。これによって、給気口接続部52からの加圧空気の供給が遮断される。そして、このとき、スプール80の開閉弁端側と開閉弁弁体68との間に隙間が生じるので、スプール80の排気用開口部82と、制御スリーブ90の内径とスプール80の外径との間の内部空間との間が連通する。具体的には、スプール80の開閉弁端側の円環状の突出部88と、開閉弁弁体68との間に隙間が生じる。これによって、制御スリーブ90の内径とスプール80の外径との間の隙間空間100と、スプール80の排気用開口部82が連通する。
【0079】
そして、スプール80の中央ランド部86と負荷口50との間の位置関係のずれによって生じた+X方向側の開口から負荷口50に連通し、制御弁路42から空気バネ22に連通する。したがって、空気バネ22からの空気は、制御弁路42、負荷口50、隙間空間100、排気用開口部82を通って、排気口開放部54を介して大気に放出される。
【0080】
このようにして、空気バネ22と排気口開放部54が連通することで、空気バネ22からの空気が大気に放出され、空気バネ22が縮小する。空気バネ22が縮小すると、車高値hが低くなる。車高値hが低くなると、制御スリーブ90はスプール80に対し−X方向に戻される。車高値hが標準車高値h0に達すると、スプール80の中央ランド部86と負荷口50の位置が一致するとともに、スプール80の先端の突出部88が給気開閉弁60の開閉弁弁体68に密着する。これにより、図3の中立状態に戻って、空気バネ22からの空気の放出が止まる。このようにして、実際の車高値を標準車高値h0に戻すレベル調整制御が自動的に行われる。
【0081】
次に傾斜制御における様子を説明する。傾斜制御では、上記のように、大容量弁170を用いて、傾斜制御をより迅速に行うことができる。大容量弁170の利用は、傾斜制御の迅速化のためであるが、給気開閉弁60と二層三方弁78の作用においては、流量の大きさが異なるのみであるので、以下では、大容量弁170を用いずに制御弁40のみを用いる場合について説明する。なお、以下では、傾斜制御を開始する前に、台車18と車体20との間の高さである車高値が標準状態にあり、制御スリーブ90が中立状態であるとして説明する。
【0082】
図8は、傾斜制御において、車高値を高く設定する場合である。この場合は、スプールアクチュエータ120によって、スプール80が、中立位置にある制御スリーブ90に対し、+X方向に移動した場合に相当する。ここでは、スプール80が制御スリーブ90に対し突き出すので、開閉弁端側の近傍部65において、制御スリーブ90の突出部98と開閉弁弁体68との間に隙間が生じ、その隙間を通って、給気口接続部52からの加圧空気が、制御スリーブ90の内径とスプール80の外径との間の隙間空間100に流れ込む。そして、流れ込んだ加圧空気は、開口部92、連通路96、開口部94を経て、スプール80の中央ランド部86と負荷口50との間の位置関係のずれによって生じた−X方向側の開口から負荷口50に流れ込み、制御弁路42から空気バネ22に供給される。
【0083】
このようにして、給気口接続部52と空気バネ22とが連通することで、空気バネ22に加圧空気が供給され、空気バネ22が伸長する。空気バネ22が伸長すると、車高値hが高くなる。車高値hが高くなると、制御スリーブ90はスプール80に対して+X方向に移動する。車高値hが設定車高値h1に達すると、スプール80の中央ランド部86と制御スリーブ90の負荷口50の位置が一致するとともに、制御スリーブ90の先端の突出部98が給気開閉弁60の開閉弁弁体68に密着する。これにより、車高値の設定に対応して、図3で説明した中立状態よりも、制御スリーブ90とスプール80が+X方向にオフセットした状態で、給気口接続部52からの加圧空気の供給が止まる。このようにして、実際の車高値を設定車高値h1にする傾斜制御が自動的に行われる。
【0084】
図9は、傾斜制御において、車高値を低く設定する場合である。この場合は、スプールアクチュエータ120によって、スプール80が、中立位置にある制御スリーブ90に対し、−X方向に後退した場合に相当する。ここでは、制御スリーブ90に対しスプール80が引っ込む。このとき、開閉弁弁体68が制御スリーブ90の開閉弁側開口部を遮蔽している。具体的には、開閉弁端側の近傍部65において制御スリーブ90の円環状の突出部98に開閉弁弁体68が押し付けられる。これによって、給気口接続部52からの加圧空気の供給が遮断される。そして、このとき、スプール80の開閉弁端側と開閉弁弁体68との間に隙間が生じるので、スプール80の排気用開口部82と、制御スリーブ90の内径とスプール80の外径との間の内部空間との間が連通する。具体的には、スプール80の開閉弁端側の円環状の突出部88と、開閉弁弁体68との間に隙間が生じる。これによって、制御スリーブ90の内径とスプール80の外径との間の隙間空間100と、スプール80の排気用開口部82が連通する。
【0085】
そして、スプール80の中央ランド部86と負荷口50との間の位置関係のずれによって生じた+X方向側の開口から負荷口50に連通し、制御弁路42から空気バネ22に連通する。したがって、空気バネ22からの空気は、制御弁路42、負荷口50、隙間空間100、排気用開口部82を通って、排気口開放部54を介して大気に放出される。
【0086】
このようにして、空気バネ22と排気口開放部54が連通することで、空気バネ22からの空気が大気に放出され、空気バネ22が縮小する。空気バネ22が縮小すると、車高値hが低くなる。車高値hが低くなると、制御スリーブ90はスプール80に対し−X方向に戻される。車高値hが設定車高値h1に達すると、スプール80の中央ランド部86と負荷口50の位置が一致するとともに、制御スリーブ90の先端部の突出部98が給気開閉弁60の開閉弁弁体68に密着する。これにより、車高値の設定に対応して、図3で説明した中立状態よりも、制御スリーブ90とスプール80が−X方向にオフセットした状態で、空気バネ22からの空気の放出が止まる。このようにして、実際の車高値を設定車高値h1にする傾斜制御が自動的に行われる。
【0087】
上記では、制御弁40として、給気開閉弁60と二層三方弁78とを組み合わせた構成を説明した。ここで、二層三方弁78の制御スリーブ90は外周に軸方向に沿って3つの開口部を有し、そのうちの1つは負荷口であるが、他の2つは給気口でも排気口でもない構成である。この他に、スプールに3つのランド部を有し、制御スリーブの外周に軸方向に沿って給気口、負荷口、排気口が配置される一般的なスプール・スリーブ型の三方弁を用いることができる。
【0088】
図10は、そのような制御弁180の一例として、その基本構成を説明する図である。ここで用いられる三方弁181は、固定スリーブ182、制御スリーブ184、スプール186を備える。スプール186は、スプールアクチュエータ120によって軸方向に駆動でき、制御スリーブ184はリンクレバー機構24と回転・直進変換機構44によって軸方向に駆動できる。スプール186は、ステムに3つのランド部が軸方向に相互に離間して設けられる。制御スリーブ184は、この3つのランド部の配置に対応して、外周に軸方向に沿って、給気口188、負荷口190、排気口192が順次配置される。
【0089】
中立状態において、負荷口190の位置は、スプール186の中央ランド部の位置と一致して、中央ランドは負荷口190を塞ぐ。給気口188と排気口192は、中央ランド部の前後のステムの位置に合わせて配置される。また、固定スリーブ182においては、制御スリーブ184の給気口188、負荷口190、排気口192に対応して、それぞれ、給気ポート、負荷ポート、排気ポートが設けられる。制御スリーブ184は、予め定めた移動範囲で、固定スリーブ182に対し軸方向に移動可能で、その移動範囲においては、給気口188は給気ポートの範囲内、負荷口190は負荷ポートの範囲内、排気口192は排気ポートの範囲内とされる。
【0090】
図10の構成の三方弁181を用いる制御弁180によっても、図5で説明したブロック図の構成をとることができ、図6から図9の作用を奏することができる。
【0091】
上記では、制御スリーブの移動駆動を車高値によって形状が変化するリンクレバー機構によって行い、スプールの移動駆動をスプールアクチュエータによって行うものとして説明した。設定車高値の変更は、スプールと制御スリーブの相対的位置のオフセットの設定で行うことができる。したがって、スプールの移動駆動を車高値によって形状が変化するリンクレバー機構によって行い、制御スリーブの移動駆動をフォースモータ等の制御スリーブアクチュエータによって行うものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係る車体傾斜装置及び車体傾斜装置用二層三方弁は、台車と車体の間に設けられる空気バネを伸長または縮小して台車に対し車体を傾斜させる車両に用いられる。
【符号の説明】
【0093】
10 車両、12 路面、14,15 レール、16,17 車輪、18 台車、20 車体、22,23 空気バネ、24,25 リンクレバー機構、26 台車側アーム、27 回転接続部、28 レバー、30 車体傾斜装置、32 気体供給源、40,180 制御弁、41 負荷口接続部、42 制御弁路、44 回転・直進変換機構、50,190 負荷口、52 給気口接続部、54 排気口開放部、60 給気開閉弁、61 開閉弁本体、62 内部空間、63,88,98 突出部、64 弁体機構、65 開閉弁端側の近傍部、66 給気側弁体、67,69 表面、68 開閉弁弁体、70 コイルバネ、78 二層三方弁、80,186 スプール、82 排気用開口部、84 中心穴、86 中央ランド部、90,184 制御スリーブ、91,182 固定スリーブ、92,94 開口部、96 連通路、100 隙間空間、110 制御部、112,113 個別傾斜部、118 スプール軸、120 スプールアクチュエータ、122 駆動アーム、124 コイル、126 永久磁石、128 スプール駆動制御ポート、130 制御スリーブセンサ、132 制御スリーブセンサポート、140 スプールセンサ、142 磁性体軸、144 コイル、146 スプールセンサポート、150 大容量弁駆動部、160 ケース、161 中心軸、162 回転体、164 偏心ピン、166 案内板、168 案内溝、170 大容量弁、171 破線枠(大容量出力のためのブロック図)、172 大容量弁路、174,176 開閉弁、181 三方弁、188 給気口、192 排気口、200 高さ指令値、202 サーボアンプ、204 加算部、206 制御スリーブセンサアンプ、208 減算部、210 プリアンプ、212 電流ブースタ、214 スプールセンサアンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体と台車の間に配置される空気バネに気体を供給しあるいは排気して空気バネを伸縮させて車体と台車の間の高さである車高値を変更する車体傾斜装置であって、
小径のステムと大径のランドとを有するスプールと、
気体供給源に接続される給気ポートと、排気ポートと、空気バネに接続される負荷ポートとを有する固定スリーブと、
外周側で固定スリーブに摺動自在に支持され、内周側でスプールを摺動自在に支持し、少なくともスプールのランドに対応する負荷口を有し、固定スリーブに対し予め定めた所定移動範囲で相対的に移動可能で、所定移動範囲において負荷口は固定スリーブの負荷ポートの範囲にある制御スリーブと、
を含み、スプールのランドと制御スリーブの負荷口との間の相対位置関係で給気ポートから負荷ポートを経て空気バネに供給される気体流量が定まり、あるいは空気バネから負荷ポートを経て排気ポートから排出される気体流量が定まる二層三方弁と、
車高値の設定値である設定車高値に応じて、二層三方弁の固定スリーブに対しスプールを軸方向に移動駆動するスプールアクチュエータと、
設定車高値と実際の車高値との差である車高偏差値に応じて、二層三方弁のスプールに対し制御スリーブを軸方向に移動駆動するスリーブアクチュエータと、
を備えることを特徴とする車体傾斜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車体傾斜装置において、
スリーブアクチュエータは、
一方端が台車側に回転可能に支持され、他方端が回転接続部によって回転可能に支持される台車側アームと、一方端が回転接続部によって回転可能に支持され、他方端が車体側に回転可能に支持される車体側アームとを含み、車高値に応じて、台車側アームと車体側アームとで形成される形状が変化するリンクレバー機構と、
リンクレバー機構の車体側支持部に設けられ、リンクレバー機構の形状変化に応じて回転する回転部と、
回転部の回転を制御スリーブの軸方向直進運動に変換する回転・直進変換機構と、
を含むことを特徴とする車体傾斜装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車体傾斜装置において、
二層三方弁の制御スリーブの状態を検出し、電気信号として出力する制御スリーブセンサと、
制御スリーブセンサの出力に応じ電気信号によって駆動され、二層三方弁よりも流量容量が大きい大容量弁であって、出力口が二層三方弁の負荷ポートと共に空気バネに接続される大容量弁と、
を備えることを特徴とする車体傾斜装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1に記載の車体傾斜装置において、
二層三方弁のスプールの状態を検出し、電気信号として出力するスプールセンサと、
スプールセンサの出力をスプールアクチュエータの駆動信号にフィードバックするフィードバックループと、
を備えることを特徴とする車体傾斜装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1に記載の車体傾斜装置において、
二層三方弁のスプールは、
軸方向の一方端側を開閉弁端側として、開閉弁端側に排気用開口部を有し軸方向に延びて他方端が排気ポートに連通する中心穴が設けられるステム部と、ステム部よりも外径の大きい中央ランド部とを有し、
制御スリーブは、
軸方向の一方端側を開閉弁端側として、スプールの開閉弁端側の外径よりも大きい内径の開閉弁側開口部を開閉弁端側に有し、スプールを軸方向に摺動自在に支持し、スプールとの間の相対位置が中立状態のときにスプールの中央ランド部を塞ぐ位置に配置される負荷口と、軸方向に沿って負荷口の前後に配置され負荷口を越えて相互に連通する2つの開口部とを有し、
二層三方弁に対し、
一方端側が気体供給源に接続され他方端側が制御スリーブの開閉弁端に接続される筒状の開閉弁本体と、開閉弁本体の内部に収納され制御スリーブの開閉弁側開口部を塞ぐ大きさの開閉弁弁体と、開閉弁弁体を制御スリーブの開閉弁端側に付勢する付勢手段とを含む給気開閉弁を備えることを特徴とする車体傾斜装置。
【請求項6】
小径のステムと大径のランドとを有するスプールと、
気体供給源に接続される給気ポートと、排気ポートと、空気バネに接続される負荷ポートとを有する固定スリーブと、
外周側で固定スリーブに摺動自在に支持され、内周側でスプールを摺動自在に支持し、少なくともスプールのランドに対応する負荷口を有し、固定スリーブに対し予め定めた所定移動範囲で相対的に移動可能で、所定移動範囲において負荷口は固定スリーブの負荷ポートの範囲にある制御スリーブと、
を含み、スプールのランドと制御スリーブの負荷口との間の相対位置関係で給気ポートから負荷ポートを経て空気バネに供給される気体流量が定まり、あるいは空気バネから負荷ポートを経て排気ポートから排出される気体流量が定まることを特徴とする車体傾斜装置用二層三方弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−232717(P2012−232717A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104412(P2011−104412)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【特許番号】特許第4850978号(P4850978)
【特許公報発行日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(503094070)ピー・エス・シー株式会社 (36)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)