説明

車車間電力送受システム、車載電力送受制御装置

【課題】送電車両が、受電車両に必要な電力量を送電できない事態を抑制することができる車車間電力送受システムを提供する。
【解決手段】センター側システム200は、送電車両の候補となる候補車両に対して、走受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量を予測し、その予測した消費電力量と候補車両の現在の余剰電力量とから、走受電地点での候補車両の余剰電力量を予測する。そして、受電車両の受電必要電力量と、候補車両の送受電地点での余剰電力量とを比較し、受電必要電力量よりも余剰電力量が多い候補車両に絞りこみを行なう(S403)。その絞り込み結果を、受電車両の車両側システム100に通知して、絞りこまれた二次候補車両の中から、受電車両のユーザが送電車両を選択する(S406)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車車間で電力を送電、受電を行なう車車間電力送受システム、および、このシステムに用いる車載電力送受制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の有する電力エネルギーを効率的に利用すべく、自車両の電力が不足している場合には車両外部から電力を受電し、自車両の電力に余裕がある場合には電力を車両外部に送電する電力給電システムが提案されている。例えば、特許文献1によれば、回生エネルギーなどを回収した結果、バッテリの残存容量に余裕が生じた場合には、車載電源装置から車両外部へ余剰電力を送電する。これにより、回収した回生エネルギーなどを有効に活用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−210843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
余剰電力を車両外部へ送電する場合には、自車両が電力不足に陥らないように送電電力量を決定する必要がある。特に、移動後に受電車両に対して送電を行なう場合には、移動中に消費する電力量を加味した上で、送電する場所に到着した時点での余剰電力を決定する必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された車載電源装置では、単純に、回収した回生エネルギー分を余剰電力とする構成であり、移動等で消費する電力量については考慮せずに余剰電力を決定している。そのため、送電側の車両が電力不足になるおそれもあった。
【0006】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、送電車両が、受電車両に必要な電力量を送電できない事態を抑制することができる車車間電力送受システム、および、そのシステムを構成する車載電力送受制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、受電車両と送電車両とが、走受電地点にて電力送受を行う車車間電力送受システムであって、前記送電車両の候補となる複数の候補車両および前記受電車両にそれぞれ搭載された車載電力送受制御装置と、その車載電力送受制御装置と無線通信を行なうセンター側装置とを有し、
前記車載電力送受制御装置は、その車載電力送受制御装置が搭載された車両が受電車両となった場合の構成として、受電車両が前記送受電地点において受電する必要がある受電必要電力量を決定する受電必要量決定手段と、その受電必要電力量を前記センター側装置へ通知する受電必要量通知手段とを備え、その車載電力送受制御装置が搭載された車両が候補車両となった場合の構成として、候補車両の現在の余剰電力量を決定する現在余剰量決定手段と、その余剰電力量および現在位置を前記センター側装置へ通知する候補車両情報通知手段とを備え、
前記センター側装置は、候補車両が前記走受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量を予測する第1消費電力予測手段と、前記候補車両が前記送受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量と、候補車両の現在の余剰電力量とから、前記走受電地点での候補車両の余剰電力量を予測する余剰量予測手段と、前記受電車両の受電必要電力量と、前記候補車両の前記送受電地点での余剰電力量とを比較し、受電必要電力量よりも余剰電力量が多い候補車両を前記送電車両として決定する送電車両決定手段とを含むことを特徴とする。
【0008】
このように、移動による消費電力量を考慮して候補車両の送受電地点での余剰電力量を決定し、この余剰電力量が受電必要電力量よりも多い候補車両を送電車両として決定する。よって、送受電地点において、送電車両が受電必要電力量を受電車両に送電できない事態が抑制される。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記車載電力送受制御装置は、その車載電力送受制御装置が搭載された車両が送電車両となった場合の構成として、送電車両が前記送受電地点まで移動している間、送電車両の現在の余剰電力量を逐次更新する送電車両余剰量更新手段と、その余剰電力量および現在位置を前記センター側装置へ逐次通知する送電車両情報通知手段とを備え、
前記センター側装置は、送電車両が現在位置から前記走受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量の予測値を逐次更新する送電車両消費電力更新手段と、前記送電車両が前記送受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量の予測値と、送電車両の現在の余剰電力量とから、前記走受電地点での送電車両の余剰電力量の予測値を逐次更新する送電車両余剰量更新手段と、前記余剰電力量の予測値が、前記受電車両の受電必要電力量を超えているか否かを逐次判断する送電可否判断手段とを含むことを特徴とする。
【0010】
このように、送電車両が送受電地点まで移動している間、逐次、送電車両の余剰電力量の予測値が受電車両の受電必要電力量を超えているか否かを判断するようにすれば、送電車両が、移動中に、予測に反してバッテリの電力を多く消費してしまった場合に、速やかにそのことを判断することができる。その結果、以下の発明のように、送電車両を別の車両に変更し、あるいは、追加の送電車両を決定することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記センター側装置は、前記送電可否判断手段により、前記余剰電力量の予測値が前記受電必要電力量よりも小さいと判断されたことに基づいて、送受電地点を再設定した上で、前記第1消費電力予測手段、余剰量予測手段、送電車両決定手段を再度実行して、別の送電車両を決定することを特徴とする。
【0012】
このようにすれば、送電車両が、移動中に、予測に反してバッテリの電力を多く消費してしまった場合に、速やかに、別の送電車両を決定することができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、前記センター側装置は、前記送電可否判断手段により、前記余剰電力量の予測値が前記受電必要電力量よりも小さいと判断されたことに基づいて、前記受電必要電力量と前記余剰電力量の予測値との差分の電力量である不足電力量を、前記送受電地点にて前記受電車両に対して送電可能な第2送電車両を決定する第2送電車両決定手段を備え、さらに、前記第2送電車両の候補となる複数の第2候補車両から、現在の余剰電力量を取得する現在余剰量取得手段と、第2候補車両が前記走受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量を予測する第2消費電力予測手段と、前記第2候補車両が前記送受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量と、第2候補車両の現在の余剰電力量とから、前記走受電地点での第2候補車両の余剰電力量を予測する第2余剰量予測手段とを備え、前記第2送電車両決定手段は、前記不足電力量と、前記第2候補車両の前記送受電地点での余剰電力量とを比較し、不足電力量よりも余剰電力量が多い第2候補車両を前記第2送電車両として決定することを特徴とする。
【0014】
このようにすれば、最初の送電車両が移動中に予測に反してバッテリの電力を多く消費してしまった場合に、送受電地点にて、受電車両に電力を送電する第2送電車両を速やかに決定することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、前記センター側装置は、前記送電車両と前記候補車両とが略同じ時間に到着できる地点を送受電地点として決定する送受電地点決定手段を備えることを特徴とする。
【0016】
このようにすれば、候補車両が送電車両に決定された後、送受電地点にて送電車両および受電車両の一方が他方の到着を待つ時間が短くなる。
【0017】
請求項6記載の発明は、前記センター側装置は、受電必要電力量よりも余剰電力量が多い複数の候補車両について、その候補車両に対応する送受電地点と受電車両との距離、その送受電地点まで受電車両の所要時間を、前記受電車両の車載電力送受制御装置へ送信する送受電地点情報通知手段を備え、
前記車載電力送受制御装置は、センター側装置から送信された、複数の候補車両についての送受電地点までの距離、送受電地点までの所要時間を表示部に表示する候補車両表示手段と、それら複数の候補車両からユーザ操作により選択された1つの候補車両を送電車両として選択して前記センター側装置へ送信する送電車両選択手段と、を備え、
前記センター側装置の送電車両決定手段は、受電車両の車載電力送受制御装置において複数の候補車両から選択された車両を送電車両に決定することを特徴とする。
【0018】
このように、受電車両のユーザが複数の候補車両から送電車両を選択するようにすれば、受電車両のユーザにとって都合の良い候補車両が送電車両として決定される。
【0019】
請求項7記載の発明は、前記候補車両表示手段は、受電車両から前記送受電地点までの距離に応じて、送受電地点を異なる色で表示することを特徴とする。このようにすれば、色により送受電地点までの距離が分かることから、受電車両のユーザは、どこを送受電地点とする送電車両を選択するかを容易に決定することができる。
【0020】
請求項8記載の発明は、前記車載電力送受制御装置は、その車載電力送受制御装置が搭載された車両が候補車両となった場合の構成として、送電電力の電力単価を前記センター側装置へ送信する電力単価送信手段を備え、
前記センター側装置の送受電地点情報通知手段は、前記候補車両から取得した送電電力の電力単価を、送受電地点における送受電力単価として、送受電地点までの距離、送受電地点までの所要時間とともに送信し、
前記車載電力送受制御装置の候補車両表示手段は、センター側装置から送信された送受電力単価も前記表示部に表示することを特徴とする。
【0021】
このように、電力単価も表示するようにすれば、受電車両のユーザは、安い電力単価の送電車両を選択することができる。
【0022】
請求項9記載の発明は、前記センター側装置は、複数の車両の実際の走行時の消費電力量を道路区間に対応付けて格納する電力消費実績データベースを備え、前記第1消費電力予測手段は、その電力消費実績データベースと、前記候補車両の現在位置から前記送受電地点までの経路とに基づいて、候補車両が前記送受電地点まで移動することによる候補車両のバッテリの消費電力量を予測することを特徴とする。
【0023】
このようにすれば、候補車両が送受電地点まで移動することによる候補車両のバッテリの消費電力量を精度よく予測することができる。
【0024】
請求項10記載の発明は、請求項1における車載電力送受制御装置の発明である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】車両側システム100の構成を示すブロック図である。
【図2】センター側システム200の構成を示すブロック図である。
【図3】個人情報および車両情報を登録する場合のフローチャートである。
【図4】送電車両を決定する際の処理を示すフローチャートである。
【図5】ステップS411、S414、S415を説明する図である。
【図6】自車両(受電車両)と、他車A(送電車両)とが、費電力量管理のための情報をセンター側システム200に送信していることを説明する図である。
【図7】送受電地点まで移動する間に消費する電力量を道路区間ごとに予測することを説明する図である。
【図8】送受電計画の見直しを行なう処理を示すフローチャートである。
【図9】図8の処理を車両の移動に関連付けて説明する図である。
【図10】電力送受の後に行われる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用された車両側システム100の構成を示すブロック図である。
【0027】
車両側システム100は、蓄電装置110、電力部120、車載端末130、送受信装置140を備える。また、携帯端末150を付加することもできる。これらのうち、蓄電装置110を除いた構成が、特許請求の範囲の車載電力送受制御装置に相当する。
【0028】
蓄電装置110は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池などのバッテリ111と、そのバッテリ111の電圧、充放電電流を検出するバッテリセンサ112を備える。バッテリ111は、車両の駆動力源となっているモータ(図示せず)に電力を供給する。
【0029】
電力部120は、電力量管理部121、航続可能距離管理部122、電力送受部123を備える。電力量管理部121は、蓄電装置110のバッテリセンサ112からの信号に基づいて、バッテリ111の残電力量を逐次決定する。この残電力量は、たとえば、公知の手法によりSOCの現在値を演算し、そのSOCの現在値にバッテリ111の定格容量を乗じることで決定する。また、SOCの現在値と最低SOCとの差分に定格容量を乗じることで残電力量を決定してもよい。航続可能距離管理部122は、電力量管理部121が逐次決定する残電力量に基づいて、自車両の航続可能距離を逐次演算する。たとえば、残電力量を、単位電力あたりの推定航続距離で割ることで航続可能距離を算出する。単位電力あたりの推定航続距離の演算方法には種々の方法がある。たとえば、過去の所定期間の走行履歴における単位電力あたりの平均航続距離を、単位電力あたりの推定航続距離とすることができる。また、過去の所定期間の走行履歴における単位電力あたりの最低航続距離を、単位電力あたりの推定航続距離としてもよい。これらは、自車両が電気自動車である場合であるが、さらに、エンジンを併用するハイブリッド車両においては、燃料により走行できる距離を加えて航続可能距離を決定してもよい。
【0030】
また、電力量管理部121は、特許請求の範囲の現在余剰量決定手段にも相当しており、残電力量を逐次決定することに加え、バッテリ111の余剰電力量や、受電必要電力量も逐次決定する。余剰電力量は、現時点で、車両走行において余剰(余裕)となっている電力量である。この余剰電力量は種々の方法により決定することができる。たとえば、ユーザが余剰電力判定SOCを決定し、その余剰電力判定SOCを超えていることを条件に、SOCの所定%に相当する電力量を余剰電力量とすることができる。また、上記余剰電力判定SOCを超えている分を全部、余剰電力量としてもよい。また、上記余剰電力判定SOCは予め初期値が設定されていてもよい。
【0031】
受電必要電力量も種々の方法により決定することができる。たとえば、まず、目的地を設定する。そして、現在位置から目的地までの経路上の距離と航続可能距離との差分距離を算出する。この差分距離に、単位距離あたりに必要な電力量との積を受電必要電力量とする。なお、単位距離あたりに必要な電力量としては、たとえば、過去の走行実績における平均値を用いる。また、目的地を用いずに受電必要電力量を決定してもよい。たとえば、ユーザが不足電力判定SOCを決定し、その不足電力判定SOCを下回った場合に、SOCの所定%に相当する電力量を受電必要電力量としてもよい。また、上記不足電力判定SOCは、ユーザ設定ではなく予め設定されていてもよい。また、ユーザが直接、受電必要電力量を入力するようにしてもよい。
【0032】
電力送受部123は、他車両に対してバッテリ111の電力を送電するとともに、他車両から電力を受電し、その電力をバッテリ111に蓄電するための機械的構成である。また、バッテリ111は、モータにより発生する回生エネルギーを蓄電することもできる。
【0033】
車載端末130としては、たとえばナビゲーション装置を用いることができる。この車載端末130は、この車両側システム100が搭載されている車両の識別情報である車両ID、販売電力(送電電力)の単位電力あたりの設定価格を記憶している記憶部131を備える。車両IDとしては、たとえば登録ナンバーがある。また、車両を個々に識別できる情報に加え、車両の種別を識別できる種別情報(車種、車重、駆動力源が何かなど)を車両IDに含ませてもよい。記憶部131は、記憶情報が書き換え可能であり、設定価格はユーザが設定する。自車位置決定部132は、たとえばGPS受信機を用いて自車の現在位置を逐次決定する。送受制御部133は、送受信装置140から、車載端末130内の情報、電力部120内の情報をセンター側システム200(図2)に送信するとともに、センター側システム200から送信され、送受信装置140により受信された情報を取得する。
【0034】
送受信装置140は、無線により、信号の送受信を行なう装置である。この送受信装置140からセンター側システム200に送信される情報としては、車両ID、設定価格、自車位置(車両位置情報)、航続可能距離、バッテリ111の残電力量、余剰電力量、受電必要電力量がある。車両位置情報等、逐次変化する情報については、一定周期で送信される。また、車両毎の余剰電力量の決定方法や受電必要電力量の決定方法も送信するようになっていてもよい。さらに、この送受信装置140からは、ユーザ入力に基づく種々の情報も送信される。この情報としては、たとえば、受電が必要な場合における受電要求情報、送電車両における送電受諾情報などがある。受電要求情報には、受電が必要であること、および、上述の車両ID、車両位置情報、航続可能距離、受電必要電力量が含まれる。
【0035】
携帯端末150は、車載端末130の機能の一部または全部を、車載端末130に代えて実行する装置である。この携帯端末150は、記憶部151と、位置決定部152とを備える。記憶部151は、記憶情報が書き換え可能であり、ユーザは、この記憶部151に、車両IDや販売電力の設定価格が記憶できる。位置決定部152は、携帯端末150の現在位置を逐次決定する。この携帯端末150が車両に搭載された場合には、携帯端末150が決定する現在位置は車両の現在位置となる。携帯端末150は、無線または有線で車載端末130と接続されており、記憶部151の記憶情報や位置決定部152が決定した現在位置を車載端末130へ送信可能である。また、車載端末150から情報を取得して、この携帯端末150を送受信装置140の代わりとして使用することもできる。
【0036】
次に、図2のセンター側システム200の構成を説明する。センター側システム200は、特許請求の範囲のセンター側装置に相当するものであり、主演算装置210、各種データベース220〜224、送受信装置230、通信制御装置240を備える。
【0037】
送受信装置230は、車両側システム100の送受信装置140から送信される種々の情報を受信する。受信した情報は、通信制御装置240により取得され、主演算装置210へ送られる。また、送受信装置230には、主演算装置210で決定された種々の情報が通信制御装置240を介して供給され、これらの情報を車両側システム100の送受信装置140へ送信する。
【0038】
通信制御装置240は、プッシュ配信部241とWEB閲覧サービス処理部242とを備える。プッシュ配信部241は、主演算装置210で決定された所定の種類の情報を、プッシュ配信先として設定された車両に搭載された車両側システム100へプッシュ配信する。WEB閲覧サービス処理部242は、車両側システム100からの要求に応じて、その車両側システム100が搭載された車両の周辺に存在する周辺車両についての種々の情報(設定価格、余剰電力、車両位置)を、その情報を要求した車両側システム100へ提供する。
【0039】
主演算装置210は、車両情報処理部211、対象絞り込み処理部212、探索処理部213、消費電力予測部214、課金処理部215を備える。
【0040】
車両情報処理部211は、複数の車両に搭載された車両側システム100からそれぞれ送信される車両情報を車両情報DB221に格納する処理を行う。この車両情報としては、車両ID、車両位置情報、航続可能距離がある。また、各車両側システム100からは残電力量、余剰電力量、受電必要電力量も送信される。車両情報処理部210は、これら電力量に関する情報は、電力消費実績DBに格納する処理を行うとともに、上述の車両位置情報に基づいて、各車両ついて、車両移動に伴う電力量の消費実績を演算する。この電力量の消費実績は、詳しくは、道路区間毎(たとえば隣接ノード間毎)の電力消費量である。この電力量の消費実績は、電力量消費実績DB220へ格納する。
【0041】
個人情報管理DB222には、多数の個人の個人情報が格納されている。ここでの個人情報は、余剰電力販売時に課金を行うために必要な個人情報であり、個人の氏名、住所、決済のためのカード情報を含んでいる。また、販売電力の設定価格を、車両情報としてではなく個人情報として、この個人情報管理DB222に格納するようにしてもよい。この個人情報管理DB222への情報の登録は予め行なっておく。登録のための装置は、前述の携帯端末150、車載端末130を用いる。また、その他の装置、たとえば、自宅のコンピュータから登録を行なってもよい。
【0042】
課金情報管理DB223は、受電車両と送電車両とが一対一に定まった場合に、受電車両と送電車両との対応が記憶される。また、それら受電車両と送電車両との間の電力送受信が終了し、送受電力量が確定した場合には、その送受電力量が、受電車両、送電車両に対応付けて記憶される。地図情報DB224は、経路探索を行う際に利用する道路地図データが格納されている。
【0043】
主演算装置210へ説明を戻す。対象絞り込み処理部212は、受電が必要な車両(受電車両)から受電要求があった場合に送電車両の絞り込みを行う。具体的には、まず、一次絞り込みとして、受電車両の現在位置からその受電車両の航続可能距離内に存在し、送電機能を備えた車両を絞り込む。送電機能を備えた車両とは、具体的には車両側システム100を搭載した車両である。車両側システム100を備えた車両は、送電機能として電力送受部123を備えているからである。また、車両側システム100を備えた車両は、逐次、現在位置をセンター側システム200に送信しているので、センター側システム200において現在位置を把握可能である。
【0044】
さらに、この一次絞り込みの後に二次絞り込みを行う。二次絞り込みでは、一次絞り込みで絞り込んだ車両(以下、一次候補車両)のうち、送受電を行う地点(送受電地点)での余剰電力量が、受電車両の受電必要電力量を超えている車両に絞り込む。なお、送受電地点は、次に説明する探索処理部213で決定する。また、送受電地点における余剰電力量の演算には、消費電力予測部214における予測値を用いる。
【0045】
探索処理部213は、地図DB224と、公知の経路探索アルゴリズムとを用いて、車両の現在位置から目的地までの経路および所要時間を算出する。この探索処理部213で経路探索を行う車両は、上記対象絞り込み処理部212の一次絞り込みにより絞り込まれた一次候補車両と受電車両である。これらの車両に対しては目的地としての送受電地点候補も設定する。送受電地点候補は、受電車両と一次候補車両とが電力の送受電を行う候補となる位置である。受電車両および一次候補車両がともに送受電地点候補に向かって走行した場合に、互いに略同じ時間に到着できる位置を送受電地点候補として設定する。なお、もちろん、送受電地点候補は、受電車両および一次候補車両の航続可能距離内に限定する。簡単な例としては、互いの車両からの距離が略等しい位置を送受電地点候補とすることができる。また、互いに現在位置から所定時間後に到達できる到達可能範囲を演算する。上記所定時間を徐々に長くしていくと、ある時間において、互いの車両の到達可能範囲が重複する。この重複範囲内の場所を送受電地点候補とする。到達可能範囲は、現在位置を中心とする円状でもよいが、経路が設定(あるいは推定)されているときは経路から所定距離内に限定してもよい。なお、ここでは、到達可能範囲の重複エリアをある程度の大きさとして、そのエリア内で複数の送受電地点候補を設定することとする。すなわち、一台の一次候補車両に対して複数箇所の送受電地点候補を設定する。そして、設定した全ての送受電地点候補に対して経路探索を行う。
【0046】
そして、複数の一次候補車両に対して、複数の送受電地点候補における余剰電力量が消費電力予測部214で予測される。予測の結果、送受電地点候補における余剰電力量が受電必要電力量を越えていると予測された車両が二次候補車両である。この二次候補車両および、二次候補車両の送受電地点候補は、通信制御装置240および送受信装置230により車両側システム100に送信され、その車両側システム100の図示しない表示部に表示される。そして、ユーザ操作に基づいて、一台の二次候補車両が送電車両として選択されるとともに、一箇所の送受電地点が選択される。この表示部における表示態様は、送受電地点候補を自車両(受電車両)からの距離に応じて異なる色で表示する。たとえば、自車両に近い送受電地点候補は青色で示し、自車両から遠くなるほど赤色に近い色で表示する。このようにすれば、受電車両のユーザは、送電車両の選択が容易になる。また、表示部には、二次候補車両毎に設定価格も表示する。
【0047】
また、探索処理部213は、最終的にユーザにより送受電地点が決定された場合には、その送受電地点まで、受電車両および送電車両のそれぞれの経路探索も行う。
【0048】
消費電力予測部214は、余剰電力予測部としても機能するものであって、上記一次候補車両に対して、送受電地点候補に到着するまでの消費電力を予測する。この予測には、電力消費実績DB220に記憶されている道路区間毎の電力消費量を用いる。電力消費実績DB220には、道路区間毎に、多数の車両の過去の電力消費量が格納されているが、たとえば、道路区間毎に、過去の電力消費量の平均値を算出し、その平均値をその道路区間の電力消費量として予測する。消費電力予測部214は、さらに、目的地まで道路区間毎に予測した消費電力量の合計値を、現時点での一次候補車両の残電力量から引くことで、送受電地点候補における残電力量を予測する。さらに、その予測した残電力量から、一次候補車両毎に定まっている余剰電力量の決定方法に基づいて、送受電地点候補における余剰電力を予測する。一方、受電車両に対しては、同様の方法で、送受電地点候補における受電必要電力量を予測する。
【0049】
対象絞り込み処理部212における二次絞り込みでは、このようにして予測した、送受電地点候補における余剰電力量と受電必要電力量とを用いて一次候補車両をさらに絞り込むのである。
【0050】
消費電力予測部214は、また、送電車両および受電車両が送受電地点まで走行している間は、それらの車両から逐次送信されてくる車両位置情報から、送受電地点までの消費電力量を予測する。
【0051】
前述の対象絞り込み処理部212では、送電車両および受電車両が送受電地点まで向かっている間も、送電車両および受電車両の残電力量と、消費電力予測部214が逐次予測する消費電力量とから、送電車両および受電車両が送受電地点まで到着できるかどうか、送受電地点における受電車両の受電必要電力量はどれだけか、送受電地点における受電車両の余剰電力がどれだけかを逐次予測する。そして、交通渋滞、悪天候、送電車両が急遽、別な車両に送電を行なってしまったなど、何らかの事情により、送受電地点において、送電車両の余剰電力量が受電車両の受電必要電力量よりも少ないと判断できた場合、代わりの送電車両の絞り込みを行う。代わりの送電車両の絞り込みを行う処理は、その時点において、新たな送電車両を決定する処理であり、最初に送電車両を決定したときの処理を同じである。
【0052】
受電車両および送電車両の対応は、最終的には、受電車両のユーザが一台の送電車両を選択し、選択された送電車両のユーザが送電を受諾したことにより確定する。課金処理部215は、上記対応が確定した時点で、送電車両のユーザと、受電車両のユーザとの対応付けを課金情報管理DBに登録する。そして、電力の送受が終了した時点で、送電電力量(=受電電力量)と、送電車両が設定している設定価格とから定まる料金を、受電車両のユーザに対して課金する。
【0053】
次に、上述の車両側システム100とセンター側システム200からなる車車間電力送受システムの処理をフローチャートにより説明する。
【0054】
図3は、個人情報および車両情報を登録する場合のフローチャートである。この処理は、車両ユーザの登録開始指示操作により開始するものであり、次の図4の前に予め行われる。
【0055】
まず、ステップS31は、車両側システム100が行う処理であり、車載装置130の記憶部131、あるいは携帯端末150の記憶部151に記憶されている氏名、住所、カード情報、販売電力の設定価格などの個人情報をセンター側システム200へ送信する。
【0056】
ステップS32はセンター側システム200の処理であり、車両側システム100から送信された上記個人情報を、個人情報管理DB222へ登録する。
【0057】
ステップS33は、車両側システム100が行う処理であり、車両IDなどの車両情報をセンター側システム200へ送信する。ステップS34はセンター側システム200の処理であり、車両側システム100から送信された車両情報を、車両情報管理DB221へ登録する。
【0058】
図4は、送電車両を決定する際の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、受電車両のユーザが、送受電処理の開始を指示する操作を車載装置130に入力することにより開始される。あるいは、電力量管理部121で目的地に到達できるか否かを判断し、目的地に到達できないと判断した場合に自動的に開始してもよい。
【0059】
まず、ステップS401(特許請求の範囲の受電必要電力量通知手段に相当)では、車両側システム100が、現時点における航続可能距離および受電必要電力量をセンター側システム200に通知する。以下、この通知を行なった車両を受電車両という。なお、受電車両以外の複数の車両にそれぞれ搭載された車両側システム100は、候補車両として、現在位置、余剰電力量を逐次、センター側システム200に送信している。この送信処理が、特許請求の範囲の候補車両情報通知手段に相当する。
【0060】
ステップS402〜405はセンター側システム200が行なう。ステップS402では、前述の一次絞り込みを行なう。すなわち、車両側システム100を備えた車両のうち、航続可能距離を通知してきた車両を中心としてその車両の位置から航続可能距離内に存在する車両に絞り込む。ここで絞り込んだ車両が前述の一次候補車両である。
【0061】
ステップS403では、前述の二次絞り込みを行なう。すなわち、ステップS402で絞り込んだ一次候補車両のうち、送受電地点候補での余剰電力が、受電車両の受電必要電力量を超えている車両を検索する。この検索の結果により絞り込まれた車両が二次候補車両である。なお、この処理において、車両のユーザの送電意思を取得して、送電意思があるユーザにさらに限定してもよい。
【0062】
上記ステップS403において、送受電地点候補での余剰電力量を演算するためには、各一次候補車両に対して、図2で説明した方法により送受電地点候補を設定する。そして、各送受電地点候補における一次候補車両の余剰電力を、それら一次候補車両の現時点での余剰電力と、送受電地点候補までの消費電力とから演算する。
【0063】
ステップS404では、ステップS403で絞り込んだ二次候補車両に対して、それぞれ、受電車両との送受電地点候補を一箇所あるいは複数ヶ所決定するとともに、その送受電地点候補までのルート、所要時間を、受電車両および二次候補車両に対してそれぞれ演算する。
【0064】
ステップS405では、ステップS404の演算結果を受電車両に送信する。なお、ステップS403で絞り込んだ車両数が所定数よりも多い場合に、送受電地点候補までの距離や所要時間に基づいて、演算結果を送信する車両数を限定してもよい。
【0065】
ステップS406は車両側システム100の処理であり、送電ユーザ(送電車両)の選択を行なう。この選択においては、センター側システム200から受信した絞り込み結果に基づいて、各二次候補車両との送受電地点候補、その送受電地点候補までの距離、所要時間、二次候補車両の現在位置を表示する。また、距離に応じて、二次候補車両との送受電地点、或いはその二次候補車両の現在位置、あるいは、その両方)を異なる色で表示する。これにより、色の違いから、どの二次候補車両との電力送受信が短距離の移動で済むかが判断できる。この表示の後、ユーザ操作により、一台の二次候補車両を送電車両として選択する。また、その選択した二次候補車両に対して複数の送受電地点候補が存在する場合には、一つの候補値店が送受電地点として選択される。
【0066】
ステップS407では、選択結果をセンター側システム200へ通知する。ステップS408では、センター側システム200は、受電車両のユーザにより選択された送電車両に対して、選択されたことを通知する。この通知には、受電車両との送受電地点、その送受電地点までのルート、その送受電地点までの所要時間も含ませる。
【0067】
ステップS409は、送電車両の車両側システム100が行なう処理であり、対応可否の回答として、対応可あるいは対応否を選択する。この選択は、送電車両のユーザの入力操作に基づいて行なう。
【0068】
ステップS410では、ステップS409の選択結果をセンター側システム200へ通知する。ステップS411は、上記ステップS409において対応可が選択された場合に実行する。一方、対応否が選択された場合には、図示していないが、対応否を送電車両に通知した後、ステップS406に戻る。
【0069】
ステップS411では、送電ユーザと受電ユーザとの対応付け処理を行なう。この対応付け処理は、送電可を通知した車両から、その車両IDを取得するとともに、受電車両からも車両IDを取得し、それらの車両IDと車両情報管理DB221、個人情報管理DB222の記憶内容とに基づいて行なう。
【0070】
ステップS412では、上記対応付けを課金情報管理DB223に登録する。ステップS413では、送電車両が送電可と回答したことを受電車両に通知するとともに、送電車両にも、受電車両への通知を行ったことを通知する。ステップS414では、送電車両の車両側システム100および受電車両の車両側システム100は、それぞれ、送受電地点まで経路案内を開始する。そして、送受電地点に到着したら経路案内を終了する(ステップS415)。
【0071】
図5は、ステップS411、S414、S415を説明する図である。図5に示すように、自車両(受電車両)と他車A(送電車両)との対応付けが行われ(S411)、その後、送受電地点までの経路案内が開始され(S414)、自車両と他車Aは、それぞれ、送受電地点への移動を開始する。そして、自車両と他車Aがともに送受電地点に到着したら(S415)、車車間での電力の送受信が行われる。
【0072】
自車両、他車Aとも予定通りの消費電力量で走行できれば、送受電地点で送電車両から受電車両に受電必要電力量を送電できる。しかし、途中で渋滞等により、予想外に電力を消費してしまうことも考えられる。
【0073】
そこで、センター側システム200は、受電車両、送電車両が送受電地点へ向かって移動している間、すなわち、図4のステップS414を実施後、ステップS415にて送受電地点に到着すると判断するまで、受電車両、送電車両が予定通りの消費電力量で走行しているかを逐次監視する。受電車両、送電車両は、送受電地点へ向かって移動している間、センター側システム200に対して、消費電力量の管理のために必要な情報を逐次送信する。
【0074】
図6は、自車両(受電車両)と、他車A(送電車両)とが、送受電地点Gに向かって移動している間に、逐次、消費電力量管理のための情報をセンター側システム200に送信していることを説明する図である。
【0075】
同図に示すように、他車Aは、余剰電力量を逐次、センター側システム200に送信する。また、余剰電力量とともに、残電力量、車両の位置、車両IDも送信している。一方、自車両は、受電必要電力量を逐次、センター側システム200に送信する。また、受電必要電力量とともに、残電力量、車両の位置、車両IDも送信する。
【0076】
センター側システム200は、これら受電車両、送電車両から逐次送信される残電力量、車両の位置をもとに、道路区間毎の電力消費量の実績を決定して、電力消費実績DB220へ格納する。なお、この電力消費量の実績は、電気自動車とハイブリッド車両とを区別して格納する。さらに、車種別にして格納してもよい。また、受電車両、送電車両に限らず、車両側システム100を搭載した車両は、逐次、残電力量と車両位置とをセンター側システム200へ送信している。
【0077】
センター側システム200は、受電車両が現在位置から送受電地点まで移動する間に消費する消費電力量を、受電車両と同種の車両に対し、電力消費実績DB220に格納されている電力消費実績に基づいて予測する。図7は、その予測した電力量を説明する図である。この図に示すように、電力消費実績DB220に格納されている電力消費実績をもとに、P1−P2区間、P2−P3区間、・・・など、各道路区間を受電車両が走行する際の消費電力量を予測する。そして、現在位置から送受電地点までの消費電力量の予測値と、現時点での受電車両の残電力量とから、受電車両が送受電地点まで到達できるかを逐次予測する。
【0078】
また、センター側システム200は、送電車両についても、現在位置から送受電地点までの消費電力量を、受電車両の場合と同様にして予測する。そして、予測した消費電力量を、現時点での送電車両の余剰電力量から引くことで、送受電地点における送電車両の余剰電力量を予測する。なお、残電力量から、予測した消費電力量を引くことで、送受電地点における送電車両の余剰電力量を予測することとしてもよい。
【0079】
受電車両に対する予測、送電車両に対する予測の結果、受電車両と送電車両とが、送受電地点で予定通りの電力送受を行なうことができないと判断した場合には、送受電計画の見直しを行なう。
【0080】
この処理を、図8、図9を用いて説明する。図8の処理は、送受電地点まで経路案内を行なっているときに実施する。
【0081】
ステップS801では、受電車両、送電車両は、送受電地点まで移動を継続する。ステップS802では、送電車両および受電車両は、それぞれ、受電必要電力量、余剰電力量をセンター側システム200へ送信する。
【0082】
ステップS803では、センター側システム200は、送電車両の余剰電力量と、受電車両の受電必要電力量とを比較する。また、受電車両、送電車両が、送受電地点まで走行できるか否かも判断する。
【0083】
ステップS804では、ステップS803における判断結果に基づいて、送受電地点で予定通りの電力送受が可能か否かを判断する。予定通りの電力送受ができると判断した場合(S804:YES)には、ステップS801の処理へ戻る。一方、予定通りの電力送受ができないと判断した場合には、プッシュ配信にて、予定通りの電力送受ができないことを示す送受電不可情報を、受電車両と送電車両に通知する。
【0084】
その後、図4のステップS402以降を実施することで、受電車両に対して送電を行なう別の送電車両が決定される。
【0085】
図9は、図8の処理を車両の移動に関連付けて説明する図である。当初、自車両(受電車両)は、他車両Aを送電車両として、送受電地点G1にて電力送受を行なう予定で、送受電地点G1へ向かって移動していた。しかし、その移動中に、他車Aの余剰電力量が不足すると判断された。そのため、他車Bが、新たな送電車両として決定されるとともに、新たな送受電地点G2が決定された。そのため、自車両は、送受電地点G2へ目的地を変更し、且つ、他車Bもその送受電地点G2へ向かって走行を開始する。そして、自車両と他車Bと送受電地点G2に到着した後、それらの車両の間で電力送受が行われる。
【0086】
図10は、電力送受の後に行われる処理を示すフローチャートである。まず、ステップS101では、送電車両が送電した送電電力量が演算される。そして、ステップS102では、その送電電力量が、送電車両からセンター側システム200へ通知される。この通知には、この情報を通知した車両の車両IDも含まれる。
【0087】
ステップS103では、課金情報管理DB223より、上記送電車両のIDから、課金を行なう受電車両のユーザと、入金を行なう送電車両のユーザとを読み出す。ステップS104では、個人情報管理DB222から、送電車両のユーザの設定価格を読み出す。
【0088】
ステップS105では、課金処理部215にて課金処理を行なう。詳しくは、ステップS102で取得した送電電力量に、ステップS104で読み出した設定価格を乗じることで課金額を算出する。その課金額を受電車両のユーザに課金する課金処理を行なう。この課金処理は、たとえば、クレジットカードの口座からの引き落とし処理である。また、送電車両のユーザに対しては、上記課金額を入金する入金処理を行なう。ステップS106では、課金履歴、入金履歴を、課金情報管理DB223に登録する。
【0089】
以上、説明した実施形態によれば、移動による消費電力を考慮して候補車両の送受電地点での余剰電力量を決定し、この余剰電力量が受電必要電力量よりも多い候補車両を送電車両として決定する。よって、送受電地点において、送電車両が受電必要電力量を受電車両に送電できない事態が抑制される。
【0090】
また、本実施形態によれば、送電車両が送受電地点まで移動している間、逐次、送電車両の余剰電力量の予測値が受電車両の受電必要電力量を超えているか否かを判断している。そのため、送電車両が、移動中に、予測に反してバッテリの電力を多く消費してしまった場合に、速やかに、別の送電車両を決定することができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0092】
たとえば、前述の実施形態では、センター側システム200が送受電地点を決定していたが、送受電地点の決定方法は前述の実施形態に限られない。たとえば、受電車両のユーザが送受電地点を指定してもよい。
【0093】
また、前述の実施形態では、最初の送電車両が受電必要電力量を送電できないと判断できた場合に、代わりの送電車両の絞り込みを行なっていた。これに代えて、追加の送電車両の絞り込みを行なってもよい。
【0094】
追加の送電車両の絞り込みを行う処理は、送受電地点において、受電車両が最初の送電車両から電力を受電してもまだ不足する電力量(不足電力量)を供給できる車両という条件で絞りこみを行う処理である。この場合も、複数の候補車両が存在する場合には、受電車両のユーザに選択させ、且つ、送電車両のユーザも送電を受諾した場合に、最終的に追加の送電車両として決定する。この決定の処理は特許請求の範囲の第2送電車両決定手段に相当する。また、この絞り込みにおいては、追加の送電車両(第2送電車両に相当)の候補となる複数の第2候補車両を決定し、それらの車両から、現在の余剰電力量を取得する(現在余剰量取得手段)。そして、第2候補車両が走受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量を予測する(第2消費電力予測手段)。第2候補車両は、送受電地点からの距離が所定距離内という条件で絞り込む。次いで、第2候補車両が送受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量と、第2候補車両の現在の余剰電力量とから、走受電地点での第2候補車両の余剰電力量を予測する(第2余剰量予測手段)。そして、不足電力量と、第2候補車両の送受電地点での余剰電力量とを比較し、不足電力量よりも余剰電力量が多い第2候補車両を第2送電車両の候補とする。候補を決定した後は、最初の送電車両の場合と同様の処理を行なって一台の第2送電車両を決定する。
【符号の説明】
【0095】
100 車両側システム(車載電力送受制御装置)、 110 蓄電装置、 111 バッテリ、 112 バッテリセンサ、 120 電力部、 121 電力量管理部、 122 航続可能距離管理部、 123 電力送受部、 130 車載装置、 131 記憶部、 132 自車位置決定部、 133 送受制御部、 140 送受信装置、 150 携帯端末、 151 記憶部、 152 位置決定部、 200 センター側システム(センター側装置)、 210 主演算装置、 211 車両情報処理部、 212 対象絞り込み処理部、 213 探索処理部、 214 消費電力予測部、 215 課金処理部、 220 電力消費実績DB、 221 車両情報管理DB、 222 個人情報管理DB、 223 課金情報管理DB、 224 地図DB、 230 送受信装置、 240 通信制御装置、 241 プッシュ配信部、 242 WEB閲覧サービス処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電車両と送電車両とが、走受電地点にて電力送受を行う車車間電力送受システムであって、
前記送電車両の候補となる複数の候補車両および前記受電車両にそれぞれ搭載された車載電力送受制御装置と、その車載電力送受制御装置と無線通信を行なうセンター側装置とを有し、
前記車載電力送受制御装置は、
その車載電力送受制御装置が搭載された車両が受電車両となった場合の構成として、
受電車両が前記送受電地点において受電する必要がある受電必要電力量を決定する受電必要量決定手段と、
その受電必要電力量を前記センター側装置へ通知する受電必要量通知手段とを備え、
その車載電力送受制御装置が搭載された車両が候補車両となった場合の構成として、
候補車両の現在の余剰電力量を決定する現在余剰量決定手段と、
その余剰電力量および現在位置を前記センター側装置へ通知する候補車両情報通知手段とを備え、
前記センター側装置は、
候補車両が前記走受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量を予測する第1消費電力予測手段と、
前記候補車両が前記送受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量と、候補車両の現在の余剰電力量とから、前記走受電地点での候補車両の余剰電力量を予測する余剰量予測手段と、
前記受電車両の受電必要電力量と、前記候補車両の前記送受電地点での余剰電力量とを比較し、受電必要電力量よりも余剰電力量が多い候補車両を前記送電車両として決定する送電車両決定手段と
を含むことを特徴とする車車間電力送受システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記車載電力送受制御装置は、その車載電力送受制御装置が搭載された車両が送電車両となった場合の構成として、
送電車両が前記送受電地点まで移動している間、送電車両の現在の余剰電力量を逐次更新する送電車両余剰量更新手段と、
その余剰電力量および現在位置を前記センター側装置へ逐次通知する送電車両情報通知手段とを備え、
前記センター側装置は、
送電車両が現在位置から前記走受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量の予測値を逐次更新する送電車両消費電力更新手段と、
前記送電車両が前記送受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量の予測値と、送電車両の現在の余剰電力量とから、前記走受電地点での送電車両の余剰電力量の予測値を逐次更新する送電車両余剰量更新手段と、
前記余剰電力量の予測値が、前記受電車両の受電必要電力量を超えているか否かを逐次判断する送電可否判断手段と
を含むことを特徴とする車車間電力送受システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記センター側装置は、
前記送電可否判断手段により、前記余剰電力量の予測値が前記受電必要電力量よりも小さいと判断されたことに基づいて、送受電地点を再設定した上で、前記第1消費電力予測手段、余剰量予測手段、送電車両決定手段を再度実行して、別の送電車両を決定することを特徴とする車車間電力送受システム。
【請求項4】
請求項2において、
前記センター側装置は、
前記送電可否判断手段により、前記余剰電力量の予測値が前記受電必要電力量よりも小さいと判断されたことに基づいて、前記受電必要電力量と前記余剰電力量の予測値との差分の電力量である不足電力量を、前記送受電地点にて前記受電車両に対して送電可能な第2送電車両を決定する第2送電車両決定手段を備え、さらに、
前記第2送電車両の候補となる複数の第2候補車両から、現在の余剰電力量を取得する現在余剰量取得手段と、
第2候補車両が前記走受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量を予測する第2消費電力予測手段と、
前記第2候補車両が前記送受電地点まで移動することによるバッテリの消費電力量と、第2候補車両の現在の余剰電力量とから、前記走受電地点での第2候補車両の余剰電力量を予測する第2余剰量予測手段とを備え、
前記第2送電車両決定手段は、前記不足電力量と、前記第2候補車両の前記送受電地点での余剰電力量とを比較し、不足電力量よりも余剰電力量が多い第2候補車両を前記第2送電車両として決定する
ことを特徴とする車車間電力送受システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記センター側装置は、
前記送電車両と前記候補車両とが略同じ時間に到着できる地点を送受電地点として決定する送受電地点決定手段を備えることを特徴とする車車間電力送受システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記センター側装置は、受電必要電力量よりも余剰電力量が多い複数の候補車両について、その候補車両に対応する送受電地点と受電車両との距離、その送受電地点まで受電車両の所要時間を、前記受電車両の車載電力送受制御装置へ送信する送受電地点情報通知手段を備え、
前記車載電力送受制御装置は、センター側装置から送信された、複数の候補車両についての送受電地点までの距離、送受電地点までの所要時間を表示部に表示する候補車両表示手段と、
それら複数の候補車両からユーザ操作により選択された1つの候補車両を送電車両として選択して前記センター側装置へ送信する送電車両選択手段と、を備え、
前記センター側装置の送電車両決定手段は、受電車両の車載電力送受制御装置において複数の候補車両から選択された車両を送電車両に決定することを特徴とする車車間電力送受システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記候補車両表示手段は、受電車両から前記送受電地点までの距離に応じて、送受電地点を異なる色で表示することを特徴とする車車間電力送受システム。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記車載電力送受制御装置は、
その車載電力送受制御装置が搭載された車両が候補車両となった場合の構成として、
送電電力の電力単価を前記センター側装置へ送信する電力単価送信手段を備え、
前記センター側装置の送受電地点情報通知手段は、
前記候補車両から取得した送電電力の電力単価を、送受電地点における送受電力単価として、送受電地点までの距離、送受電地点までの所要時間とともに送信し、
前記車載電力送受制御装置の候補車両表示手段は、センター側装置から送信された送受電力単価も前記表示部に表示することを特徴とする車車間電力送受システム。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記センター側装置は、
複数の車両の実際の走行時の消費電力量を道路区間に対応付けて格納する電力消費実績データベースを備え、
前記第1消費電力予測手段は、その電力消費実績データベースと、前記候補車両の現在位置から前記送受電地点までの経路とに基づいて、候補車両が前記送受電地点まで移動することによる候補車両のバッテリの消費電力量を予測する
ことを特徴とする車車間電力送受システム。
【請求項10】
受電車両と送電車両とが、走受電地点にて電力送受を行う車車間電力送受システムに用いられ、前記受電車両および前記送電車両の候補となる複数の候補車両にそれぞれ搭載される車載電力送受制御装置であって、
この車載電力送受制御装置が搭載された車両が受電車両となった場合の構成として、
受電車両が前記送受電地点において受電する必要がある受電必要電力量を決定する受電必要量決定手段と、
その受電必要電力量を、車両外部のセンター側装置へ通知する受電必要量通知手段とを備え、
その車載電力送受制御装置が搭載された車両が候補車両となった場合の構成として、
候補車両の現在の余剰電力量を決定する現在余剰量決定手段と、
その余剰電力量および現在位置を前記センター側装置へ通知する候補車両情報通知手段とを備える
ことを特徴とする車載電力送受制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−115873(P2013−115873A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257905(P2011−257905)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】