説明

車載式汚染空気および汚染水浄化装置

【課題】自動車を利用して原子炉の事故現場に移動でき、外部ガス処理設備および廃液処理装置の代替え装置として緊急対応が可能な車載式汚染空気および汚染水浄化装置を提供する。
【解決手段】車載式汚染空気および汚染水浄化装置を自動車に着脱自在に搭載したため、原子炉の事故が発生しても、道路を利用して保管地から事故現場まで迅速に浄化装置を輸送できる。到着後は、直ちに汚染空気中や汚染水中の放射性物質を、放射性物質吸着剤付きのフィルタユニットを利用して捕獲することができる。その結果、仮に原子力発電プラントの非常用ガス処理施設および廃液処理装置が稼働停止状態でも、代替え設備としての浄化装置を現場まで輸送し、早急に汚染空気浄化処理および汚染水浄化処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車載式汚染空気および汚染水浄化装置、詳しくは放射性物質により汚染された汚染空気および放射性物質により汚染された汚染水をコンテナなどの車載用の箱状容器内に供給し、箱状容器に収納した放射性物質吸着剤を含むフィルタユニットにより、それぞれの放射性物質を捕集する車載式汚染空気および汚染水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
東北地方太平洋沖地震の津波を原因として発生した東京電力福島第一原子力発電所事故では、原子炉の炉心溶融および水素爆発が発生し、国際原子力事象評価尺度のレベル7(深刻な事故)に相当する多量の放射性物質(セシウム、ヨウ素など)が大気中に放出され、これが大気の放射能汚染源として問題となっている。また、高濃度の放射性物質を含む多量の未処理原子炉冷却水も発生している。
原子炉の事故時に原子炉建屋内の汚染空気から放射性物質を除去する従来技術として、例えば特許文献1の「原子炉建屋の排気処理設備」に開示されたものが知られている。これは、原子炉を納めた原子炉一次格納施設を密閉して放射能を封じ込める二次格納施設に非常用ガス処理施設を外設し、原子炉の事故時に発生した放射性物質を含む汚染空気を二次格納施設の外へ導出し、これを非常用ガス処理施設により除去するものである。
非常用ガス処理施設は、原子炉水位の低下やドライウェル圧力の上昇によって発生するLOCA(原子炉冷却材喪失事故発生信号)が現れた時や、原子炉建屋の排気放射能のモニタ値が上昇した時に作動し、二次格納施設全般の排気ガスに対して放射性物質の除去を行う。
【0003】
また、原子力発電プラント内に設置されて、このプラントから排出された廃液より放射性核種を除去し、プラント内の放射能レベルを低減する廃液処理装置として、例えば特許文献2の「廃液処理方法および廃液処理装置」が知られている。これは、原子力発電プラント内で発生した廃液をイオン交換性フィルタに通すことによって、原子力発電プラントの廃液から放射性核種を除去し、プラント内の放射能レベルを低減することができるものである。
【特許文献1】特開2005−43131号公報
【特許文献2】特開2006−162316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の「原子炉建屋の排気処理設備」では、例えば東北地方太平洋沖地震の際のように、想定外の巨大津波が発生して非常用ガス処理施設が水没した場合には、原子炉建屋内に充満した放射性物質を含む汚染空気の浄化ができず、原子炉建屋の崩壊に伴い、高濃度の放射性物質を含む汚染空気が大気中に拡散する現実があった。
このように原子炉建屋が崩壊した場合には、屋内外で原子炉建屋の修復作業が行われる。しかしながら、高濃度の放射能によって空気が汚染された環境下では、放射線作業従事者(作業者)に対して、衣服等に放射性物質が付着する外部被爆および放射性物質を吸引等して生じる内部被爆のリスクが高まる。その対策として、各現場作業時の年間許容線量(緊急時被爆限度)を考慮し、作業者の作業時間が適宜短縮されていた。その結果、建屋の修復に長期間を要していた。
また、特許文献2の「廃液処理方法および廃液処理装置」は、原子力発電プラント内に配備される装置であるため、前記非常用ガス処理施設と同様に廃液処理装置も水没して故障した場合には、原子炉発電プラント内で発生した廃液(汚染水)中の放射性物質をイオン交換性フィルタにより除去することができなかった。
【0005】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、箱状容器内のフィルタユニットに付着した放射性物質吸着剤により汚染空気中や汚染水中の放射性物質を吸着して除去する汚染空気および汚染水浄化装置を自動車に搭載すれば、道路を利用して保管基地から原子炉の事故現場まで迅速に移動することができ、仮に原子炉建屋の非常用ガス処理施設や廃液処理装置が稼働停止となっても、これらの代替え装置として汚染空気および汚染水浄化装置を利用し、早期に原子炉建屋の屋内外の汚染空気中または汚染水中から放射性物質を除去可能なことを知見し、この発明を完成させた。
【0006】
この発明は、自動車を利用して原子炉発電プラントの事故現場までの移動が容易で、原子炉事故時における外部ガス処理設備および外部廃液処理装置としての緊急対応が可能な車載式汚染空気および汚染水浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、自動車に搭載され、かつ放射性物質を含む汚染空気および放射性物質を含む汚染水から、それぞれに含まれた放射性物質を除去する車載式汚染空気および汚染水浄化装置であって、前記放射性物質を含む汚染空気の吸気口と、前記放射性物質を除去した浄化空気の排気口とが離間して形成され、かつ自動車に着脱自在に搭載される箱状容器と、該箱状容器に設けられ、前記吸気口から前記箱状容器の内部空間に前記放射性物質を含む汚染空気を吸い込んで前記排気口から排気する送風機と、前記箱状容器の内部空間のうち、前記吸気口の形成領域と前記排気口の形成領域との間に設けられて、前記箱状容器の内部空間を吸気口側と排気口側とに仕切り、かつ前記放射性物質を吸着する放射性物質吸着剤が付着した不織布を主材料とするフィルタユニットと、前記箱状容器に設けられ、前記放射性物質を含む汚染水を前記フィルタユニットに供給する給水ノズルと、前記箱状容器に設けられ、前記放射性物質を含む汚染水を前記給水ノズルに送水する送水手段とを備えた車載式汚染空気および汚染水浄化装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記自動車はトラックで、前記箱状容器は、前記トラックの荷台に搭載される輸送用のコンテナである請求項1に記載の車載式汚染空気および汚染水浄化装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記フィルタユニットは、不織布袋と、該不織布袋の内部空間に収納され、かつ前記放射性物質吸着剤が付着した不織布暖簾とを有し、該不織布暖簾の上部には前記給水ノズルが配置された請求項1または請求項2に記載の車載式汚染空気および汚染水浄化装置である。
【0010】
放射性物質としては、例えばヨウ素、セシウムなどが挙げられる。
放射性物質を含む汚染空気としては、例えば、事故後の原子炉建屋の内部汚染空気および原子炉建屋周辺の汚染空気などが挙げられる。
放射性物質を含む汚染水としては、例えば、原子炉の燃料棒の冷却水(廃液)などが挙げられる。
自動車の種類としては、例えば中型荷物車、大型荷物車、トレーラを採用することができる。このうち、荷台にコンテナが搭載されるコンテナ輸送用のトラックが望ましい。
箱状容器としては、緊急対応性およびコストの面から輸送用のコンテナが好ましいが、放射能が漏れ難い素材(鉛や放射能遮断フィルム)などで覆われた容器などを採用してもよい。
コンテナの種類としては、例えば一般的なドライコンテナ(有蓋コンテナ)、冷凍コンテナ、冷蔵コンテナ、保温コンテナ、断熱コンテナ、送風コンテナなどを採用することができる。このうち、密閉性が高いという理由により何れも放射能遮断フィルムが内張りされた冷凍コンテナまたは冷蔵コンテナが好ましい。
【0011】
コンテナのサイズは、長さ20フィート、高さ8フィート6インチが一般的である。ただし、長さ40フィート、高さ8フィート6インチの大型コンテナでも、長さ20フィート、高さ9フィート6インチのハイ・キューブコンテナでもよい。
箱状容器の形状は、例えば矩形箱形状、球箱形状、楕円箱形状など任意である。箱状容器の大きさも、自動車に搭載可能なものであれば任意である。
吸気口および排気口の形状、大きさは任意である。また、吸気口および排気口の箱状容器における形成位置は、箱状容器の車両前後方向(車長方向)の両端部とした方が、フィルタユニットの収納空間を大きく確保できるために好ましい。浄化された空気(浄化空気)は、排気口から元の場所である原子炉建屋の屋内外に戻すことができる。
送風機の種類としては、電動モータなどのアクチュエータによりファン(羽根)を回転させる、例えばプロペラファン式送風機、シロッコファン式送風機、ターボファン式送風機、斜流ファン式送風機、ラインフローファン式送風機などを採用することができる。
【0012】
フィルタユニットは、1枚の不織布からなるものでもよいし、複数枚の不織布を積層したものまたは複数枚の不織布を適宜接合したものでもよい。
フィルタユニットの形状および大きさは、箱状容器の内部空間を吸気口側と排気口側とに、完全または若干のすき間を有して仕切ることができれば任意である。フィルタユニットの使用数は1つでも2つ以上でもよい。複数の場合には、箱状容器の内部空間において、汚染空気の流れ方向に複数のフィルタユニットを所定ピッチで配置した方が、吸気口を通して箱状容器に吸引された汚染空気中により、効率的に放射性物質を除去できるので好ましい。
【0013】
フィルタユニットの構造は任意であるものの、不織布袋と、不織布袋の内部空間に収納され、かつ放射性物質吸着剤が付着した不織布暖簾とを有したものの方が望ましい。この場合、不織布暖簾の上部に給水ノズルを配置した方が好ましい。このような構造にすれば、給水ノズルから不織布暖簾に供給された汚染水(洗浄水)は、不織布暖簾の下端部から、不織布袋の底部を通過して箱状容器の床面に落下する。このとき、不織布袋の底部には、不織布暖簾によって捕獲されなかった放射性物質および塵などが捕獲される。しかも、不織布袋は袋状であるため、放射性物質や塵などをこの底部に多量に貯留することができる。
また、不織布暖簾は不織布袋の内部空間に収納されているため、汚染空気の浄化時、送風機により発生した箱状容器内の汚染空気の流れによって、不織布暖簾の捲れや捩じれを防止することができる。これにより、フィルタユニットの面内で均一に放射性物質を付着させることができる。
【0014】
しかも、汚染空気の浄化時に、給水ノズルから洗浄水を流出してもよい。これにより、不織布暖簾に付着した放射性物質が洗い流され、放射性物質の付着を原因とした不織布暖簾の放射能レベルを低下させることができ、不織布暖簾の使用期間を長くすることができる。しかも、洗浄水と直接接触した汚染空気中の放射性物質をこの洗浄水中に取り込み、放射性物質吸着剤に吸着した放射性物質とともに洗い流すことができる。
さらに、箱状容器には、不織布暖簾を伝って箱状容器の床に流れ落ちた放射性物質を含む使用済み洗浄水を給水ノズルに戻す水循環手段を設けた方が望ましい。これにより、放射性物質を含む使用済み洗浄水を外部排出することなく再使用することができる。なお、水循環手段は、洗浄水を循環させるだけでなく、前記放射性物質を含む汚染水を浄化した水(浄化水)を循環させてもよい。
【0015】
不織布としては、例えば綿、麻、絹などの天然繊維からなるものでもよいし、ポリプロピレン系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、ポリエチレン系樹脂繊維などの各種の合成樹脂繊維からなるものでもよい。また、通気性を確保して不織布を合成樹脂により固めたものでもよい。その他、アルミニウム、鉄などの金属製繊維の不織布でもよいし、ガラス繊維からなる不織布でもよい。
不織布は、汚染空気中の粉塵を効率良く捕集可能な目付を有するものが好ましい。例えば、新品のフィルタに定格風量で空気を流した時の初期圧力損失が250Pa以上のものでもよい。
【0016】
放射性物質吸着剤の素材としては、例えば酸化チタン(TiO)、チタン珪酸塩、ゼオライト、活性炭、紺青などを採用することができる。その他、汚染空気の浄化時には、常温で乾かない例えばアクリル系などの糊(接着剤)を採用してもよい。ただし、糊を採用した場合には給水ノズルからのフィルタユニットへの洗浄水の供給は行わない。
放射性物質吸着剤の性状としては、例えば粒状、粉末状などが挙げられる。
フィルタユニットへの放射性物質吸着剤の付着方法としては、例えば、あらかじめ不織布の繊維中に含めてもよいし、放射性物質吸着剤をインクに練り混ぜて印刷してもよい。また、不織布の製造後、塗布法などで不織布の所定面に付着したり、この所定面から各繊維内に含浸させてもよい。また、不織布には消臭性、抗菌性を付与してもよい。また、キルティング加工される2枚の不織布の間に、放射性物質吸着剤を封入(サンドイッチ)してもよい。
【0017】
洗浄水としては、例えば水道水などを採用することができる。
給水ノズルとしては、例えば各種の合成樹脂(塩化ビニル樹脂など)からなるパイプ、または各種の金属(鉄、ステンレス、アルミニウムなど)からなるパイプに、洗浄水の流出孔(噴射孔)を1つまたは複数形成したものを採用することができる。給水ノズルへの洗浄水の供給は、例えば、水道管の蛇口と給水ノズルとをホースにより連結しても、自動車に搭載された水タンクの水を供給ポンプにより圧送してもよい。
送水手段としては、例えば汚染水の供給ポンプと、汚染水の供給パイプとを有したものなどを採用することができる。供給ポンプとしては、汚染水を圧送する電動式または油圧式のポンプなどを採用することができる。なお、箱状容器に設けられ、かつ供給パイプの上流側の端部が内部空間に配置される汚染水タンクを送水手段の構成体の一部としてもよい。ただし、長尺な供給パイプを原子炉プラントの汚染水槽などに差し込み、供給ポンプを作動して、直接、汚染水槽から汚染水を給水ノズルに送水してもよい。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、車載式汚染空気および汚染水浄化装置を自動車に着脱自在に搭載したため、外部ガス処理設備および廃液処理装置が故障するような原子炉の事故が発生しても、道路を利用して保管基地から原子炉の事故現場まで迅速に汚染空気および汚染水浄化装置を輸送することができる。現場到着後、放射性物質を含む汚染水の浄化時には、送水手段により放射性物質を含む汚染水を箱状容器内の給水ノズルに送水し、給水ノズルからフィルタユニットに供給された汚染水中の放射性物質がフィルタユニットにより捕獲される。
一方、放射性物質を含む汚染空気の浄化時には、送風機の負圧力で箱状容器内に原子炉建屋の内外の放射性物質を含む汚染空気を吸引する。これにより、吸引された汚染空気中の放射性物質を、フィルタユニットの放射性物質吸着剤により捕獲することができる。
これにより、仮に原子炉建屋の非常用ガス処理施設や廃液処理装置が稼働停止の緊急事態が発生したとしても、早急に代替え設備としての車載式汚染空気および汚染水浄化装置を輸送し、現場で運転することができる。これにより、原子炉建屋の屋内外の汚染空気中または原子力発電プラント内で発生した汚染水(廃液)中から放射性物質を除去することができる。なお、汚染空気を浄化した浄化空気は、箱状容器の排気口から元の場所である原子炉建屋の屋内外に戻される。また、汚染水を浄化した浄化水も原子力発電プラント内に戻して再利用することができる。
【0019】
特に、請求項2に記載の発明によれば、箱状容器としてコンテナを採用したため、既成のコンテナの壁板に吸気口や排気口を形成し、かつ不織布製のフィルタユニットおよび給水ノズルをコンテナの内部空間に設け、送水手段をコンテナに設けるなどの簡単なコンテナ改造のみで、必要とする台数分の汚染空気および汚染水浄化装置を短期間のうちに製造することができる。
しかも、このようにコンテナを利用し、自動車としてコンテナの輸送用のトラックを採用したことで、現場への汚染空気および汚染水浄化装置の輸送に際しても、荷台に対して汚染空気および汚染水浄化装置専用の掛止具を設けるなどの改造を必要とせず、既成のコンテナ輸送用のトラックをそのまま使用することができる。また、既成のコンテナは一般的にコンテナの段積みを可能とする例えば凹凸嵌合部を有する段積み構造を備えているため、設置スペースが小さい現場であっても、必要台数の汚染空気および汚染水浄化装置を段積みして配備することができる。
【0020】
また、請求項3に記載の発明によれば、フィルタユニットとして、不織布袋と放射性物質吸着剤が付着した不織布暖簾とを有し、不織布暖簾の上部に給水ノズルを配設したため、給水ノズルから不織布暖簾に供給された汚染水は、不織布暖簾の下端部から、不織布袋の底部を通過して箱状容器の床面に落下する。このとき、不織布袋の底部により、不織布暖簾によって捕獲されなかった放射性物質および塵などを捕獲することができる。
さらに、不織布暖簾は不織布袋の内部空間に収納されているため、汚染空気の浄化時、送風機により発生した箱状容器内の汚染空気の流れによって、不織布暖簾の捲れや捩じれを防止することができる。これにより、フィルタユニットの面内で均一に放射性物質を付着できる。しかも、洗浄水によって不織布暖簾に付着した放射性物質を洗い流すため、放射性物質の付着を原因とした不織布暖簾の放射能レベルを低下でき、不織布暖簾の使用期間を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例1に係る車載式汚染空気および汚染水浄化装置の自動車に搭載しての全体使用状態を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施例1に係る車載式汚染空気および汚染水浄化装置の使用状態を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施例1に係る車載式汚染空気および汚染水浄化装置の一部を構成する給水ノズルの使用状態を示す要部拡大平面図である。
【図4】この発明の実施例1に係る車載式汚染空気および汚染水浄化装置の一部を構成するフィルタユニットの使用状態を示す要部拡大正面図である。
【図5】この発明の実施例1に係る車載式汚染空気および汚染水浄化装置を現場に段積みして使用している状態を示す斜視図である。
【図6】この発明の実施例2に係る車載式汚染空気および汚染水浄化装置の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。ここでいう「車両前方向」とは車両進行方向をいい、「車両後方向」とは車両進行方向とは反対方向をいう。また、「車両左方向」とは車両進行方向に向かった状態(車両進行方に目線を向けた状態)での左方向、「車両右方向」とは車両進行方向に向かった状態(車両進行方に目線を向けた状態)での右方向をいう。
【実施例】
【0023】
図1〜図4において、10はこの発明の実施例1に係る車載式汚染空気および汚染水浄化装置(以下、浄化装置)である。この浄化装置10は、トラック(自動車)13に搭載され、かつヨウ素やセシウムなどの放射性物質を含む汚染空気およびこのような放射性物質を含む汚染水から、それぞれに含まれた放射性物質を除去する装置であって、この汚染空気の吸気口11と、汚染空気から放射性物質を除去した浄化空気の排気口12とが離間して形成され、かつトラック13の荷台13aに着脱自在に搭載される輸送用のコンテナ(箱状容器)14と、コンテナ14に設けられ、吸気口11からコンテナ14の内部空間に汚染空気を吸い込んで排気口12から排気する送風機15と、コンテナ14の内部空間のうち、吸気口11の形成領域と排気口12の形成領域との間に設けられて、コンテナ14の内部空間を吸気口側と排気口側とに仕切り、かつ汚染空気中の放射性物質および汚染水中の放射性物質を吸着する放射性物質吸着剤aが付着した不織布を主材料とする10個のフィルタユニット16と、コンテナ14に設けられ、放射性物質を含む汚染水を各フィルタユニット16に供給する10本の給水ノズル17と、コンテナ14に設けられ、放射性物質を含む汚染水が貯められる汚染水タンクT1と、コンテナ14に設けられ、放射性物質を含む汚染水を各給水ノズル17に送水する汚染水ポンプ(送水手段)P1と汚染水から放射性物質を除去した処理水である浄化水を貯める貯水タンクT2とを備えている。
【0024】
以下、これらの構成体を詳細に説明する。
図1に示すように、トラック13はコンテナ輸送用のもので、荷台13aの四隅にコンテナ掛止具が配設されている。
コンテナ14は長さ20フィート、幅8フィート、高さ8フィートの冷凍用のコンテナ14であり、内周面の全域に放射能遮断フィルムが展張されている。コンテナ14の左側壁には、その車両前端部に円形の吸気口11が形成されているとともに、その車両後端部に円形の排気口12が形成されている。
【0025】
また、コンテナ14の床板の左後コーナー部には、排気口12に連通する送風機15が設けられている。送風機15は、電動モータによりシロッコファンを回転させる方式のものである。なお、送風機15の汚染空気吸入側には、放射性物質吸着剤aの一種であるゼオライト、酸化チタンの各粉末を所定量だけ不織布製のバッグに充填した放射性物質除去器を取り付け、汚染空気中の放射性物質の除去率を高めてもよい。
コンテナ14の床板の左後コーナー部の下面には、開閉弁V3付きのドレン41を介して、浄化水の貯水タンクT2が設けられている。また、この床板の右後コーナー部の下面には、放射性物質を含む汚染水を貯める汚染水タンクT1が設けられている。床板の右側端部の上面には、開閉弁V1付きの上流側の端部が汚染水タンクT1に挿入された大径で長尺な供給パイプ(送水手段)24が、床板の右辺の全長にわたって配管されている。床板の右後のコーナーの上面には、供給パイプ24の上流側の端部に連通された汚染水ポンプP1が固定されている。また、供給パイプ24には、その長さ方向へ所定ピッチで、かつ途中部分に散水弁V2が配設された10本の分枝パイプ(送水手段)31が垂直に立設されている。各分枝パイプ31の上端部(先端部)は、抜き差し式の管継ぎ手32を介して、対応する給水ノズル17の上流側の端部に、それぞれ着脱自在に連通されている。
【0026】
10本の給水ノズル17は塩化ビニル樹脂からなり、コンテナ14の上部空間にコンテナ14の長さ方向の略全長にわたって所定ピッチで水平配置されている。各給水ノズル17の車両後側部分には、ノズルの長さ方向の略全長にわたって、洗浄水の流出孔17bが所定ピッチで形成されている(図3)。各給水ノズル17の車両前後方向には、後述する不織布袋22の上端部に挿入され、不織布袋22を支持する2本の袋開口保持バー30が、給水ノズル17と平行に配置されている。すなわち、給水ノズル17と袋開口保持バー30とは、3本1組となっている。
また、車両右側壁および車両左側壁の各内面の上端部には、対応する給水ノズル17の両端部と、2本の袋開口保持バー30の両端部とをそれぞれ支持する3連樋形状のパイプ受台33が、車両長さ方向に向かって所定ピッチで10個ずつ配設されている。このうち、車両右側壁に配設されたパイプ受台33は、水平方向に延びる短尺な2本の支柱33cにより、車両右側壁から片持ちばり状態で支持されている。このパイプ受台33の中央凹部33aには給水ノズル17の端部が掛止され、パイプ受台33の両側凹部33bには2本の袋開口保持バー30の端部がそれぞれ掛止されている。各給水ノズル17の長さは、この中央凹部33aに横架された状態で、管継ぎ手32から給水ノズル17の端部を着脱できる程度の長さである(図3および図4)。また、各袋開口保持バー30は、給水ノズル17の長さより若干長い金属製の丸棒である。
【0027】
図2〜図4に示すように、各フィルタユニット16は、不織布袋22と、不織布袋22の内部空間に収納され、かつ放射性物質吸着剤aが付着した不織布暖簾23とを有している。各フィルタユニット16は、表裏面を車両前後方向に配置した矩形状のもので、コンテナ14の内部空間に車両長さ方向に所定ピッチで配置されている。
不織布袋22に使用される不織布および不織布暖簾23に使用される不織布としては、ポリエチレンテレフタレートを主原料とした樹脂繊維を、所定のバインダにより接着して得られたものを採用している。
不織布袋22は、コンテナ14の内部空間を長さ方向に直交する面で切断した断面と略同一となる、長さが300cmで幅が300cmの袋である。また、不織布袋22の長さ方向(車幅方向)の一端部には、その下端から上端にわたって線ファスナ22aが設けられている。また、各不織布袋22の長さ方向の両端部の上部には、給水ノズル17の両端部と、2本の袋開口保持バー30の両端部とをそれぞれ外方へ突出させる3対の孔部がそれぞれ形成されている。各不織布袋22は、コンテナ14の内周面に固定された図示しない面状ファスナを利用し、コンテナ14の左右の側壁、底壁のうち、少なくとも左右の側壁に掛止される。これにより、コンテナ14の内部空間がその長さ方向に仕切られる。なお、コンテナ14と各不織布袋22とのすきまは貼着テープなどでふさいだほうが、フィルタユニット16による汚染空気の除去率が高まる。
【0028】
また、不織布暖簾23は、給水ノズル17の全長にわたって所定ピッチで配置された多数本の短冊片23aから構成されている。各短冊片23aは長さが約600cmの細長い不織布からなり、その長さ方向の中間部に結び目であるリング部23bを形成してこの細長い不織布を折り返したものである(図4)。各短冊片23aは、上端部のリング部23bを前記給水ノズル17に順次挿入することで、給水ノズル17に不織布暖簾23が形成される。
各短冊片23aの全域には、ゼオライト、酸化チタンの各粉末からなる放射性物質吸着剤aが付着している。
【0029】
次に、図1〜図5を参照して、この発明の実施例1に係る浄化装置10の運転方法を説明する。まず、浄化装置10による汚染水中から放射性物質を除去する汚染水浄化方法を説明する。
図1および図2に示すように、あらかじめタイヤの下に板材を敷くなどして、コンテナ14の全体を、汚染水タンクT1が配置された後右コーナー部が最も下方位置となるように傾ける。
その後、供給パイプ24の開閉弁V1、各分枝パイプ31の散水弁V2およびドレン41の開閉弁V3をそれぞれ開き、汚染水ポンプP1により汚染水タンクT1の放射性物質を含む汚染水を、供給パイプ24に圧送する。これにより、汚染水は各分枝パイプ31から管継ぎ手32を通って各給水ノズル17に供給され、各流出孔17bから各不織布暖簾23へと流出される(図3および図4)。その結果、汚染水中に含まれた放射性物質は、各不織布暖簾23の放射性物質吸着剤aに吸着される。
【0030】
その後、放射性物質の一部が除去された汚染水は不織布暖簾23を伝って落下し、不織布袋22の底部分を通過する際に、汚染水中に残存する放射性物質や塵がさらに捕獲される。不織布袋22は袋状であるため、放射性物質や塵などを袋底部に多量に貯留することができる。
その後、処理済みの汚染水は浄化水となってコンテナ14の床面に落下する。その後、浄化水は、コンテナ14の傾斜に伴ってドレン41の上端開口付近に集められ、このドレン41を通して貯水タンクT2に貯水される(図2)。
【0031】
次に、図1〜図4を参照して、この発明の実施例1に係る車載式汚染空気および汚染水の浄化装置10による汚染空気の浄化方法を説明する。
図1に示すように、まず、コンテナ14の吸気口11に対して、原子炉建屋19の二次格納施設20の壁板に一端部が連通された吸気ホースH1の他端部を連通するとともに、コンテナ14の排気口12に対して、二次格納施設20の壁板のうち、吸気ホースH1が連通されていない壁板に一端部が連通された排気ホースH2の他端部を連通する。
一方、10個のフィルタユニット16のうち、1つ置きの各フィルタユニット16を、汚染空気の流れを良くするために、給水ノズル17および袋開口保持バー30の長さ方向の中間部に手繰り寄せ、それぞれ紐によって1つに束ねる(図6参照)。こうして束ねられた各フィルタユニット16の両側方には、通気路が形成される。また、供給パイプ24の開閉弁V1と、各分枝パイプ31の散水弁V2と、ドレン41の開閉弁V3とをそれぞれ閉める。
【0032】
次に、送風機15を作動することで、二次格納施設20の内部空間の放射性物質(ヨウ素やセシウムなど)を含む汚染空気(汚染空気)が、吸気ホースH1から吸気口11を経てコンテナ14の内部空間の車両後側部分に吸引される。吸引された汚染空気は、束ねられた各フィルタユニット16の部分でその両側方の通気路を通過しながら、束ねていない各フィルタユニット16を、車両後方側のものから順次通過する。これらのフィルタユニット16では、汚染空気が不織布袋22の表布(車両後方の布)を経て不織布暖簾23を通り、不織布袋22の裏布(車両前方の布)を通過する(図2および図3)。
このとき、汚染空気中の放射能物質は、その一部が不織布袋22の表布と裏布とに付着するものの、大半は不織布暖簾23の放射性物質吸着剤aに吸着される。不織布暖簾23は不織布袋22の内部空間に収納されているため、汚染空気の浄化時、送風機15により発生したコンテナ14の内部汚染空気の流れによって、不織布暖簾23の捲れや捩じれを防止することができる。これにより、フィルタユニット16の面内で略均一に放射性物質を付着させることができる。こうして浄化された浄化空気は、コンテナ14の内部空間の車両前側の部分に到達し、その後、排気口12および排気ホースH2を通して二次格納施設20の内部空間に戻される。
【0033】
次に、放射性物質の付着により汚れたフィルタユニット16の交換について説明する。この交換時には、まず、各不織布袋22の線ファスナ22aを開き、各袋開口保持バー30から各不織布袋22を抜き取るとともに、各給水ノズル17から各不織布暖簾23を構成する多数本の短冊片23aを引き抜く。その後、新しい不織布暖簾23を各給水ノズル17に装着するとともに、新しい不織布袋22を各袋開口保持バー30に装着してから、線ファスナ22aを閉めることでフィルタユニット16の交換が完了する。
以上説明した汚染空気および汚染水の各浄化処理は、図1に示すようにトラック13の荷台13aに、浄化装置10を搭載した状態で行うだけでなく、図5に示すように荷台13aから地面に下ろして使用してもよい。この場合、必要な台数分の浄化装置10を段済みすることができる。
【0034】
このように、浄化装置10をトラック13に着脱自在に搭載したため、例えば外部ガス処理設備および廃液処理装置が故障するような原子炉の事故が発生しても、道路を利用して保管基地から原子炉の事故現場まで迅速に代替え設備としての浄化装置10を輸送することができる。しかも、現場到着後は、直ちに汚染水ポンプP1により放射性物質を含む汚染水を給水ノズル17に送水し、フィルタユニット16により汚染水中の放射性物質を捕獲する汚染水の浄化を行うことができるとともに、送風機15を作動してコンテナ14の内部空間に吸引した原子炉建屋19の屋内の汚染空気中の放射性物質を、各フィルタユニット16の放射性物質吸着剤aにより吸着することができる。なお、屋外汚染空気の除染作業時には、現場到着後、吸気口11に吸気ホースH1を連通することなく、そのまま送風機15を作動して吸気口11から放射性物質により汚染された外気をコンテナ14の内部空間に吸引し、浄化空気の浄化レベルが人体に影響がないレベルに達していれば、浄化空気を排気口12から大気解放することができる。
【0035】
また、車載式汚染空気および汚染水の浄化装置10の外装用の箱状容器としてコンテナ14を採用しため、既成のコンテナ14の壁板に吸気口11や排気口12を形成し、かつ不織布製のフィルタユニット16をコンテナ14の内部空間に設けるなどの簡単なコンテナ14の改造のみで、必要とする台数分の浄化装置10を短期間のうちに製造することができる。
しかも、このように箱状容器としてコンテナ14を採用し、自動車としてコンテナ14の輸送用のトラック13を採用したことで、現場への浄化装置10の輸送に際しても、荷台13aに浄化装置専用の掛止具を配設するなどの改造を必要とせず、既成のコンテナ14輸送用のトラック13をそのまま用いることができる。また、既成のコンテナ14はもともと段積み可能な構造を有しているため、設置スペースが小さい現場であっても、必要台数の浄化装置10を段積みして配備することができる。
【0036】
さらに、浄化装置10は、原子炉の建屋内の汚染空気の清浄を行うだけでなく、屋外の高濃度な放射線汚染領域の汚染空気中から放射性物質を除去することもできる。浄化処理される放射能物質を含む汚染水は、原子力発電プラントから排出されたものに限らず、例えば、放射能廃棄物の処理施設から排出された汚染水などでもよい。
さらに、フィルタユニット16として、不織布袋22と不織布暖簾23とを有するものを採用し、かつ不織布袋22の上部に、全長にわたって所定ピッチで多数の流出孔17bが形成された給水ノズル17を収納するように構成したため、不織布暖簾23の上端部の全域、ひいては不織布暖簾23の全域に汚染水を均一に供給することができ、水溶性のセシウム(化合物)が吸着し易くなる。
【0037】
次に、図1、図3、図4および図6を参照して、この発明の実施例2に係る車載式汚染空気および汚染水浄化装置を説明する。
図6に示すように、この発明の実施例2に係る浄化装置10Aの特徴は、汚染空気の浄化時に、貯水タンクT2に貯液された洗浄水(実施例1の汚染水浄化中に得られた浄化水でもよい)を、水循環手段18により各給水ノズル17に循環供給することで、各フィルタユニット16、具体的には各不織布暖簾23に付着した放射性物質を洗い流せる点を特徴としている。
【0038】
水循環手段18は、コンテナ14の車両後方の床面に設けられている。水循環手段18は、一端部が貯水タンクT2の下部内に配置され、他端が供給パイプ24の上流部に連通された洗浄水パイプ24Aと、洗浄水パイプ24Aの一端部付近に設けられ、洗浄水を供給パイプ24に圧送する循環ポンプP2と、洗浄水パイプ24Aの他端部に設けられた開閉弁V4とを有している。また、洗浄水パイプ24Aの途中部分には、ゼオライト粉末が充填された図示しないろ過器を設けてもよい。これにより、使用済み洗浄水を浄化した循環中の浄化水に残存する放射性物質を除去することができる。貯水タンクT2に貯液された洗浄水(使用済み洗浄水)は、循環ポンプP2を作動することで、洗浄水パイプ24Aを介して、供給パイプ24の上流部に供給される。
【0039】
次に、図1、図3、図4および図6を参照して、実施例2の浄化装置10Aによる汚染空気の浄化方法を説明する。
図1、図3、図4および図6に示すように、この汚染空気の浄化は、実施例1の送風機15を使用した汚染空気のフィルタ浄化と同時に行われる。以下、これを具体的に説明する。
浄化装置10Aの汚染空気の浄化運転に先立って、汚染水タンクT1に連通した開閉弁V1、フィルタユニット16を束ねた側の分枝パイプ31の散水弁V2を閉めるとともに、ドレン41の開閉弁V3、フィルタユニット16を束ねていない側の分枝パイプ31の散水弁V2、洗浄水パイプ24Aの開閉弁V4をそれぞれ開き、水循環手段18の循環ポンプP2を作動する。これにより、貯水タンクT2に貯水された洗浄水が、洗浄水パイプ24Aを通して供給パイプ24にポンプ圧送される。その後、洗浄水は、各分枝パイプ31から、フィルタユニット16が展張されたままの給水ノズル17に供給され、各流出孔17bを通過してそれぞれの不織布暖簾23へと流出する。
【0040】
その結果、汚染空気の浄化時、各不織布暖簾23の放射性物質吸着剤aに吸着された放射性物質や、不織布暖簾23を伝って流下中の洗浄水に直接取り込まれた放射性物質は、いずれも洗浄水の流れに伴って落下し、不織布袋22の底部分によってその一部が捕獲され、放射性物質を含む使用済み洗浄水(浄化水)としてコンテナ14の床面に落下する。
その後、使用済み洗浄水は、コンテナ14の傾斜に伴ってドレン41の上端開口付近に集められ、ドレン41を通して貯水タンクT2に貯水されて、上述した水循環手段18により循環使用される。その途中、使用済み洗浄水は、ゼオライト粉末が充填されたろ過器を通過することで、水中に含まれた塵などの異物の他に放射性物質も除去される。
【0041】
これにより、不織布暖簾23に付着した汚染空気中の放射性物質が洗い流され、放射性物質の付着を原因とした不織布暖簾23の放射能レベルを低下させることができ、不織布暖簾23の使用期間を長くすることができる。また、洗浄水によりフィルタユニット16に付着した放射性物質だけでなく、洗浄水に接触した汚染空気中の放射性物質を取り込んで洗い流すことができる。
このように、コンテナ14に水循環手段18を設けたため、放射性物質を含む使用済み洗浄水を外部排出することなく、順次、再使用することができる。なお、水循環手段は、洗浄水を循環させるだけでなく、この洗浄水に代えて実施例1の汚染水浄化時に発生した汚染水の浄化水を循環させてもよい。これにより、汚染水を処理した浄化水中の放射性物質の含有率がさらに低下する。
その他の構成、作用および効果は、実施例1から推測可能な範囲であるため省略する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明の車載式汚染空気および汚染水浄化装置は、原子炉の事故時において、原子炉プラントでの排ガス処理設備および廃液処理装置が稼働停止状態となったとき、緊急対応が可能な代替え設備として有用である。
【符号の説明】
【0043】
10,10A 車載式汚染空気および汚染水浄化装置、
11 吸気口、
12 排気口、
13 トラック(自動車)、
14 コンテナ(箱状容器)、
15 送風機、
16 フィルタユニット、
17 給水ノズル、
22 不織布袋、
23 不織布暖簾、
24 供給パイプ(送水手段)、
31 分枝パイプ(送水手段)、
P1 汚染水ポンプ(送水手段)、
a 放射性物質吸着剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載され、かつ放射性物質を含む汚染空気および放射性物質を含む汚染水から、それぞれに含まれた放射性物質を除去する車載式汚染空気および汚染水浄化装置であって、
前記放射性物質を含む汚染空気の吸気口と、前記放射性物質を除去した浄化空気の排気口とが離間して形成され、かつ自動車に着脱自在に搭載される箱状容器と、
該箱状容器に設けられ、前記吸気口から前記箱状容器の内部空間に前記放射性物質を含む汚染空気を吸い込んで前記排気口から排気する送風機と、
前記箱状容器の内部空間のうち、前記吸気口の形成領域と前記排気口の形成領域との間に設けられて、前記箱状容器の内部空間を吸気口側と排気口側とに仕切り、かつ前記放射性物質を吸着する放射性物質吸着剤が付着した不織布を主材料とするフィルタユニットと、
前記箱状容器に設けられ、前記放射性物質を含む汚染水を前記フィルタユニットに供給する給水ノズルと、
前記箱状容器に設けられ、前記放射性物質を含む汚染水を前記給水ノズルに送水する送水手段とを備えた車載式汚染空気および汚染水浄化装置。
【請求項2】
前記自動車はトラックで、
前記箱状容器は、前記トラックの荷台に搭載される輸送用のコンテナである請求項1に記載の車載式汚染空気および汚染水浄化装置。
【請求項3】
前記フィルタユニットは、不織布袋と、該不織布袋の内部空間に収納され、かつ前記放射性物質吸着剤が付着した不織布暖簾とを有し、
該不織布暖簾の上部には前記給水ノズルが配置された請求項1または請求項2に記載の車載式汚染空気および汚染水浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−76682(P2013−76682A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218132(P2011−218132)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(396003319)カースル株式会社 (17)
【Fターム(参考)】