説明

車輌用放電灯

【課題】 クラックの発生を防止すると共に良好な放電特性を確保する。
【解決手段】 直流点灯方式によって発光され、発光部22と発光部を挟んだ反対側において設けられた陰極側細管部23及び陽極側細管部24とから成る発光管21と、陰極側連接棒30に接続された陰極側電極28と、陽極側連接棒33に接続された陽極側電極29とを設け、陽極側細管部が発光部側の端部に設けられた膨出部26と膨出部に連続され陽極側連接棒を挿通する挿通部25とから成り、膨出部の内側に陽極側電極の一部が位置され、膨出部には内径が陽極側電極の軸方向において一定の大きさに形成された同径部26aが設けられ、発光部には軸方向が陽極側電極の軸方向に一致され円筒状に形成された平坦部22aが設けられ、同径部の内径を挿通部の内径より大きく平坦部の内径より小さくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車輌用放電灯に関する。詳しくは、陽極側細管部における発光部側の端部に所定の大きさの内径を有する膨出部を設けてクラックの発生を防止すると共に良好な放電特性を確保する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌用前照灯は、一般の照明灯とは異なり、精密な配光制御が必要であるため、均一で棒状、かつ、明暗比の高い発光形状が求められる。白熱灯やハロゲン灯のフィラメントにはそのような特徴が備わっているため、車輌用前照灯の光源として広く用いられている。
【0003】
一方、光源として放電灯が用いられた車輌用前照灯にあっては、放電灯は白熱灯やハロゲン灯に比較して光束・輝度が高く、また、白熱灯及びハロゲン灯に比較して寿命が長いと言う長所がある。
【0004】
このように放電灯は白熱灯やハロゲン灯と比較して輝度が高く寿命が長いため、近年、車輌用前照灯として放電灯を備えたものが普及している。
【0005】
一般に、放電灯は、一対の電極を保持し内部に不活性ガス等の気体やハロゲン化物が封入された発光管が、発光管の保護や温度の安定等を目的とした外管の内部に配置されている。発光管は内部において放電が行われる発光部と発光部を挟んで反対側に設けられた一対の細管部とから成る。発光部は放電が行われたときにアークが発生する部分であり、細管部の径より大きくされている。
【0006】
放電灯にあっては、電極に高電圧パルスが印加され、発光管の発光部において放電が行われることにより点灯が開始される。
【0007】
このような放電灯は、一般照明用の放電灯に比して、起動後の立ち上がり特性の迅速性を確保することが不可欠であり、立ち上がり特性の迅速化を図るために、点灯直後(起動直後)には定常時の点灯状態における電力の数倍の電力が供給される。
【0008】
放電灯には、点灯方式として交流点灯方式と直流点灯方式(例えば、特許文献1参照)があり、直流点灯方式の放電灯にあっては、一対の電極がそれぞれ陰極側電極と陽極側電極とされている。
【0009】
直流点灯方式の放電灯は、電極の極性の切替がないため、陰極側電極と陽極側電極のそれぞれ専用の設計が必要である交流点灯方式の放電灯に比して極性を切り替えるための回路が不要となり、低コスト化や小型化等の利点を有している。
【0010】
このような直流点灯方式の放電灯にあっては、電子を受け取る側の陽極側電極の温度が電子を放出する側の陰極側電極の温度に対して高くなり発生する熱量も大きくなると言う特徴を有している。また、上記したように、立ち上がり特性の迅速化を図るために、点灯直後には定常時の数倍の電力が供給されるため、陽極側電極の温度は一層上昇し、発生する熱も一層増加してしまう。
【0011】
そこで、直流点灯方式の放電灯にあっては、陽極側電極の熱による溶融や変形等を防止するために、陽極側電極が陰極側電極に比して数倍の太さに形成されている。
【0012】
【特許文献1】特開2007−250225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、上記のように、直流点灯方式の放電灯においては、陽極側電極が陰極側電極に比して数倍の太さに形成されているため、陽極側電極の外周面と細管部の内周面との距離が小さく、陽極側電極からの熱の伝達による細管部のクラックが発生し易いと言う問題がある。
【0014】
細管部にクラックが発生するとリーク現象が生じて発光管の内圧が低下し、良好な放電特性が確保されず、点灯不良等の不具合を生じてしまう。
【0015】
そこで、細管部の全体の内径を大きくして陽極側電極との間の距離を大きくして細管部におけるクラックの発生を防止する方法が考慮される。
【0016】
しかしながら、この場合には、発光管の内部に封入されているハロゲン化物の多くが細管部の内部に侵入してしまい、ハロゲン化物の発光部における滞留量が減少し、発光効率の低下を来たすおそれがある。また、このときハロゲン化物の発光部における滞留量を増加させるために、発光管に対するハロゲン化物の封入量を増やすと、ハロゲン化物による発光管の腐食が発生し易くなってしまう。
【0017】
また、細管部の全体の内径を大きくした場合には、細管部の熱容量が大きくなってしまい、発光効率や立ち上がり特性の低下を生じる可能性もある。
【0018】
そこで、本発明車輌用放電灯は、クラックの発生を防止すると共に良好な放電特性を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
車輌用放電灯は、上記した課題を解決するために、直流点灯方式によって発光され、発光部と前記発光部を挟んだ反対側において前記発光部に連続して設けられた陰極側細管部及び陽極側細管部とから成る発光管と、一部が前記陰極側細管部の内部に配置された陰極側連接棒と、一部が前記陽極側細管部の内部に配置された陽極側連接棒と、前記発光管の内部に配置され軸方向における一端が前記陰極側連接棒の軸方向における一端に接続された陰極側電極と、前記発光管の内部に配置され軸方向における一端が前記陽極側連接棒の軸方向における一端に接続された陽極側電極とを備え、前記陽極側細管部が前記発光部側の端部に設けられた膨出部と前記膨出部に連続され前記陽極側連接棒を挿通する挿通部とから成り、前記膨出部の内側に前記陽極側電極の一部が位置されると共に前記膨出部の内周面と前記陽極側電極の外周面との間に隙間が形成され、前記膨出部には内径が前記陽極側電極の軸方向において一定の大きさに形成された同径部が設けられ、前記発光部には軸方向が前記陽極側電極の軸方向に一致され円筒状に形成された平坦部が設けられ、前記同径部の内径が前記挿通部の内径より大きく前記平坦部の内径より小さくされたものである。
【0020】
従って、車輌用放電灯にあっては、同径部と陽極側電極の間の十分な大きさの隙間が確保される。
【発明の効果】
【0021】
本発明車輌用放電灯は、直流点灯方式によって発光される車輌用放電灯であって、発光部と前記発光部を挟んだ反対側において前記発光部に連続して設けられた陰極側細管部及び陽極側細管部とから成る発光管と、一部が前記陰極側細管部の内部に配置された陰極側連接棒と、一部が前記陽極側細管部の内部に配置された陽極側連接棒と、前記発光管の内部に配置され軸方向における一端が前記陰極側連接棒の軸方向における一端に接続された陰極側電極と、前記発光管の内部に配置され軸方向における一端が前記陽極側連接棒の軸方向における一端に接続された陽極側電極とを備え、前記陽極側細管部が前記発光部側の端部に設けられた膨出部と前記膨出部に連続され前記陽極側連接棒を挿通する挿通部とから成り、前記膨出部の内側に前記陽極側電極の一部が位置されると共に前記膨出部の内周面と前記陽極側電極の外周面との間に隙間が形成され、前記膨出部には内径が前記陽極側電極の軸方向において一定の大きさに形成された同径部が設けられ、前記発光部には軸方向が前記陽極側電極の軸方向に一致され円筒状に形成された平坦部が設けられ、前記同径部の内径が前記挿通部の内径より大きく前記平坦部の内径より小さくされたことを特徴とする。
【0022】
従って、高温となる陽極側電極の熱が陽極側細管部に伝達され難く、発光管、特に、陽極側細管部のクラックの発生を防止することができる。
【0023】
また、陽極側細管部のクラックの発生が防止されリーク現象が生じないため発光管の内圧の低下が発生せず、良好な放電特性を確保することができる。
【0024】
請求項2に記載した発明にあっては、前記同径部の内径が前記挿通部の内径の1.2倍乃至1.4倍にされている。
【0025】
従って、良好な初期特性と良好な寿命性能を確保してクラックの発生を防止すると共に良好な放電特性を確保することが可能である。
【0026】
請求項3に記載した発明にあっては、前記陽極側電極の前記陽極側連接棒に接続されていない側の一端から前記膨出部と前記挿通部の連続点までの距離が前記陽極側電極の前記陽極側連接棒に接続されていない側の一端から前記陽極側連接棒の前記陽極側電極に接続された側の一端までの距離の1.0倍乃至1.3倍にされている。
【0027】
従って、良好な初期特性と良好な寿命性能を確保してクラックの発生を防止すると共に良好な放電特性を確保することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明車輌用放電灯を実施するための最良の形態について添付図面を参照して説明する。車輌用放電灯は車輌用前照灯に備えられている。
【0029】
車輌用前照灯1は、車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
【0030】
車輌用前照灯1は、図1に示すように、前方に開口された凹部を有するランプハウジング2とランプハウジング2の開口面を閉塞するカバー3とを備え、ランプハウジング2とカバー3によって灯具外筐4が構成されている。灯具外筐4の内部空間は灯室5として形成されている。
【0031】
ランプハウジング2の後端部には前後に貫通された挿通孔2aが形成され、挿通孔2aはバックカバー6によって閉塞されている。ランプハウジング2の下端部には上下に貫通された配置孔2bが形成されている。
【0032】
灯室5には、図示しない光軸調整機構によってリフレクター7が傾動可能に支持されている。リフレクター7の後端部には前後に貫通された取付孔7aが形成されている。リフレクター7の内面は反射面7bとして形成されている。
【0033】
リフレクター7の前端部にはレンズホルダー8が取り付けられ、レンズホルダー8の前端部には投影レンズ9が取り付けられている。
【0034】
リフレクター7の取付孔7aには放電灯(車輌用放電灯)10が前後に延びる状態で取り付けられている。
【0035】
ランプハウジング2の配置孔2bには放電灯点灯装置11が取り付けられている。放電灯点灯装置11は、ケース体12の内部に図示しない点灯回路が収納されて成る。ケース体12の外周面には入力側コネクター13が設けられ、ケース体12の上面には出力側コネクター14が設けられている。
【0036】
入力側コネクター13は図示しない接続コードによって図示しない電源供給回路に接続されている。
【0037】
出力側コネクター14は給電コード15を介して始動装置16に接続され、始動装置16が放電灯10の後述するソケットに接続されている。
【0038】
放電灯10の点灯(起動)は、電源供給回路の電源電圧を放電灯点灯装置11の点灯回路によって昇圧し、給電コード15及び始動装置16を介して放電灯10に高電圧パルスを印加し、放電が開始されることによって行われる。放電灯10に対する点灯方式としては直流点灯方式が用いられている。
【0039】
灯室5の前端部には灯室5に配置された各部の一部を遮蔽するためのエクステンション17が配置されている。灯室5には放電灯10から出射される光の一部を遮蔽する図示しないシェードが配置されている。
【0040】
放電灯10は本体18がソケット19に接続されることにより構成されている(図2参照)。
【0041】
本体18は外管20と外管20の内部に配置された発光管21とを有している。
【0042】
外管20は発光管21等を覆う閉塞部20aと閉塞部20aの前端部から前方へ突出された保持部20bとが一体に形成されて成る。
【0043】
発光管21はアルミナ等のセラミックによって形成され、発光部22と発光部22の前後両端にそれぞれ連続する陰極側細管部23及び陽極側細管部24とによって構成されている。陰極側細管部23と陽極側細管部24はそれぞれ前後に延びる略円筒状に形成され、外径が発光部22の外径より小さくされている。
【0044】
発光部22の内部及び陰極側細管部23、陽極側細管部24の発光部22側における各端部の内部にはハロゲン化物とキセノンやアルゴン等の不活性ガスとが封入されている。発光部22の前後方向における中間部は前後に延びる略円筒状に形成された平坦部22aとして設けられている。
【0045】
陽極側細管部24は、図3に示すように、後側に位置する挿通部25と挿通部25の前端に連続する膨出部26とから成り、膨出部26の前端が発光部22の後端に連続されている。
【0046】
挿通部25は前後に長い円筒状に形成されている。
【0047】
膨出部26は陽極側細管部24の前端部として設けられ、厚みが挿通部25及び発光部22の厚みと同じにされている。膨出部26は内周面27が挿通部25の内周面25aより外側に位置され、膨出部26の内径が挿通部25の内径より大きくされている。
【0048】
膨出部26は、後端部を除く部分が内径が一定にされた同径部26aとして設けられ、後端部が内径が後方へ行くに従って小さくなる変径部26bとして設けられている。変径部26bは、前端の内径が同径部26aの内径と同じにされ、後端の内径が挿通部25の内径と同じにされている。
【0049】
尚、上記には、膨出部26の厚みが挿通部25及び発光部22の厚みと同じにされている例を示したが、膨出部26の厚みは挿通部25及び発光部22の厚みより厚くされていてもよい。
【0050】
発光管21の内部には、例えば、それぞれタングステン等の金属材料によって前後に長く形成された陰極側電極28と陽極側電極29が前後に離隔して配置されている。従って、放電灯10は前端側が陰極側にされ後端側が陽極側にされている。
【0051】
陰極側電極28と陽極側電極29はそれぞれ一部が発光部22の内部に位置されている。陰極側電極28は、例えば、細径の針状に形成され、陽極側電極29は、例えば、太い棒状に形成され外径が陰極側電極28の外径より大きくされている。
【0052】
尚、上記には、陰極側電極28が前側に位置され陽極側電極29が後側に位置された例を示したが、逆に、陰極側電極28を後側に位置させ陽極側電極29を前側に位置させることにより、前端側を陽極側にし後端側を陰極側にすることも可能である。
【0053】
陰極側電極28の前端には、例えば、溶接によって陰極側連接棒30が接続されている。陰極側連接棒30は、例えば、モリブデン等の金属材料によって形成され、発光管21の陰極側細管部23から前方へ突出され、保持部20bを貫通されて外管20の外部へ突出された部分を有する。陰極側連接棒30の外管20の外部へ突出された部分には、第1の導電線31が接続されている。第1の導電線31は一部が90°屈曲されて外管20の下方に位置され、後端部がソケット19に設けられた図示しない第1の接続端子に接続されている。
【0054】
陰極側連接棒30のうち陰極側細管部23の内部に配置された部分は、陰極側細管部23の前端部において、例えば、フリットガラス(低融点ガラス)によって封止されている。
【0055】
第1の導電線31における外管20の下方に位置する部分には絶縁スリーブ32が被着されている。
【0056】
陽極側電極29の後端には、例えば、溶接によって陽極側連接棒33が接続されている。陽極側電極29と陽極側連接棒33の溶接が行われた部分は溶接部34とされている。
【0057】
陽極側連接棒33は、例えば、モリブデン等の金属材料によって形成されている。陽極側連接棒33は後端側を除く部分が陽極側細管部24の内部に配置され、後端側の部分が陽極側細管部24から後方へ突出されている。陽極側連接棒33の後端部には図示しない第2の導電線が接続され、第2の導電線は後端部がソケット19に設けられた図示しない第2の接続端子に接続されている。
【0058】
陽極側連接棒33の前端部と陽極側電極29の略後半部とは膨出部26の内部に位置されている。陽極側連接棒33の前端部における外周面及び陽極側電極29の略後半部における外周面と膨出部26の内周面27との間には隙間が形成されている。
【0059】
陽極側連接棒33のうち陽極側細管部24の内部に位置された部分は、陽極側細管部24の後端部において、例えば、フリットガラスによって封止されている。
【0060】
陽極側連接棒33のうち陽極側細管部24の内部に配置された部分には、例えば、モリブデン等の金属材料によって形成されたコイル35が巻き付けられている。従って、コイル35は陽極側細管部24の内部に配置されている。
【0061】
放電灯10にあっては、外管20の内部における発光管21の外側の空間にシュラウドガスとして、例えば、アルゴンガス等の不活性ガスや窒素ガスが封入されている。
【0062】
また、発光部22の内部にはキセノンガスやアルゴンガス等の不活性ガスとともにヨウ化物等のハロゲン化物が封入されている。
【0063】
放電灯10にあっては、上記したように、点灯方式として直流点灯方式が用いられており、陽極側電極29に高電圧パルスが印加されて起動(発光)され、陽極側電極29側の温度が陰極側電極28側の温度に対して高くなる。
【0064】
以上に記載した通り、放電灯10にあっては、陽極側細管部24に設けられた膨出部26の同径部26aの内径が挿通部25の内径より大きくされているため、高温となる陽極側電極29の熱が陽極側細管部24に伝達され難く、発光管21、特に、陽極側細管部24のクラックの発生を防止することができる。
【0065】
また、陽極側細管部24のクラックの発生が防止されリーク現象が生じないため発光管21の内圧の低下が発生せず、良好な放電特性を確保することができる。
【0066】
さらに、陽極側細管部24の全体の内径を大きくすることなくクラックの発生を防止することができるため、発光管21の内部に封入されているハロゲン化物の陽極側細管部24の内部への侵入が抑制され、発光効率の低下を抑制することができる。また、ハロゲン化物の陽極側細管部24の内部への侵入が抑制されるため、ハロゲン化物の発光部21における滞留量の増加を目的として発光管21に対するハロゲン化物の封入量を増やす必要がなく、ハロゲン化物による発光管21の腐食の発生を抑制することもできる。
【0067】
さらにまた、陽極側細管部24の全体の内径を大きくしていないため、陽極側細管部24の熱容量がほとんど大きくならず、発光効率の低下や立ち上がり特性の低下を抑制することができる。
【0068】
以下に、放電灯10において、各部の寸法を変更したときに、初期特性及び寿命性能に与える影響を測定した結果について説明する(図4参照)。
【0069】
図4に示す寸法Bは、陽極側電極29の陽極側連接棒33に接続されていない側の一端(前端)から陽極側連接棒33の陽極側電極29に接続された側の一端(前端)までの距離(図3参照)である。図4に示す寸法Aは、陽極側電極29の陽極側連接棒33に接続されていない側の一端(前端)から膨出部26と挿通部25の連続点までの距離(図3参照)である。
【0070】
図4に示す寸法Cは膨出部26の同径部26aの内径(図3参照)であり、図4に示す寸法Dは挿通部25の内径(図3参照)である。
【0071】
図4の上段に示す表1は、初期特性に与える影響について測定した結果を示すものである。
【0072】
表1においては、初期特性に関する比率A/Bと比率C/Dの関係を示している。表1に示す数値は、比率A/Bと比率C/Dの値を変化させたときに放電灯の発光部から出射される光の光束値(lm)を示している。
【0073】
光束値としては3000lm以上が必要とされ、比率A/B及び比率C/Dとも大きくなるに従って陽極側細管部24の熱容量が大きくなり光束値が低下する。
【0074】
表1に示すように、光束値が3000lm以上とされた太枠で囲んだ範囲において良好な初期特性が得られ、比率C/Dが1.5以上になると光束値が3000lm未満になると言う結果が得られた。
【0075】
表2においては、寿命性能に関する比率A/Bと比率C/Dの関係を示している。表2に示す数値は、比率A/Bと比率C/Dの値を変化させたときに、放電灯の初期特性の光束値L1と放電灯を1500時間点灯した後の光束値L2とを測定し、光束値L1に対する光束値L2の割合を光束維持率(%)として示している。表1中、「クラック」とあるのは、放電灯の点灯後1500時間以内に発光管にクラックが生じたことを示している。
【0076】
光束維持率としては80%以上が必要とされ、比率A/B及び比率C/Dとも大きくなるに従って膨出部へのハロゲン化物の侵入量が増加して光束維持率が低下し、また、比率A/B及び比率C/Dとも小さくなるに従ってクラックが発生し易いと言う結果が得られた。
【0077】
表2に示すように、クラックの発生がなく、かつ、光束維持率が80%以上とされた太枠で囲んだ範囲において良好な寿命性能が得られた。
【0078】
表1と表2においてそれぞれ太枠で囲んだ範囲のうち、両者に含まれる範囲が良好な初期特性と良好な寿命性能を確保することができる範囲であり、この範囲として比率C/Dが1.2〜1.4の範囲、比率A/Bが1.0〜1.3の範囲であると言う結果が得られた。
【0079】
従って、比率C/Dが1.2〜1.4の範囲にされることにより、良好な初期特性と良好な寿命性能を確保してクラックの発生を防止すると共に良好な放電特性を確保することが可能である。
【0080】
また、比率A/Bが1.0〜1.3の範囲にされることにより、良好な初期特性と良好な寿命性能を確保してクラックの発生を防止すると共に良好な放電特性を確保することが可能である。
【0081】
さらに、比率C/Dが1.2〜1.4の範囲にされると共に比率A/Bが1.0〜1.3の範囲にされることにより、良好な初期特性と良好な寿命性能を確保してクラックの発生を防止すると共に良好な放電特性を確保することができる。
【0082】
上記した発明を実施するための最良の形態において示した各部の形状及び構造は、何れも本発明を実施するに際して行う具体化のほんの一例を示したものにすぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図2乃至図4と共に本発明車輌用放電灯の最良の形態を示すものであり、本図は、車輌用前照灯の概略断面図である。
【図2】一部を断面にして示す放電灯の拡大側面図である。
【図3】放電灯の一部を示す拡大断面図である。
【図4】初期特性と寿命性能に関して測定した結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0084】
10…放電灯(車輌用放電灯)、21…発光管、22…発光部、22a…平坦部、23…陰極側細管部、24…陽極側細管部、25…挿通部、26…膨出部、26a…同径部、27…内周面、28…陰極側電極、29…陽極側電極、30…陰極側連接棒、33…陽極側連接棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流点灯方式によって発光される車輌用放電灯であって、
発光部と前記発光部を挟んだ反対側において前記発光部に連続して設けられた陰極側細管部及び陽極側細管部とから成る発光管と、
一部が前記陰極側細管部の内部に配置された陰極側連接棒と、
一部が前記陽極側細管部の内部に配置された陽極側連接棒と、
前記発光管の内部に配置され軸方向における一端が前記陰極側連接棒の軸方向における一端に接続された陰極側電極と、
前記発光管の内部に配置され軸方向における一端が前記陽極側連接棒の軸方向における一端に接続された陽極側電極とを備え、
前記陽極側細管部が前記発光部側の端部に設けられた膨出部と前記膨出部に連続され前記陽極側連接棒を挿通する挿通部とから成り、
前記膨出部の内側に前記陽極側電極の一部が位置されると共に前記膨出部の内周面と前記陽極側電極の外周面との間に隙間が形成され、
前記膨出部には内径が前記陽極側電極の軸方向において一定の大きさに形成された同径部が設けられ、
前記発光部には軸方向が前記陽極側電極の軸方向に一致され円筒状に形成された平坦部が設けられ、
前記同径部の内径が前記挿通部の内径より大きく前記平坦部の内径より小さくされた
ことを特徴とする車輌用放電灯。
【請求項2】
前記同径部の内径が前記挿通部の内径の1.2倍乃至1.4倍にされた
ことを特徴とする請求項1に記載の車輌用放電灯。
【請求項3】
前記陽極側電極の前記陽極側連接棒に接続されていない側の一端から前記膨出部と前記挿通部の連続点までの距離が前記陽極側電極の前記陽極側連接棒に接続されていない側の一端から前記陽極側連接棒の前記陽極側電極に接続された側の一端までの距離の1.0倍乃至1.3倍にされた
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車輌用放電灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−119228(P2012−119228A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269446(P2010−269446)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】