説明

車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置

【課題】
一箇所の操作で移動体の底面に配置される複数の車輪のブレーキ機構を操作するワイヤーケーブル分岐装置を提供する。
【解決手段】
操作部に繋がる1本の操作ワイヤーケーブルが、複数の分岐ワイヤーケーブルに分岐してワイヤーケーブルの移動体の各々の車輪ブレーキ機構に接続するものにおいて、中間に両ケーブルの端末部に接続するワイヤー分岐機構を設け、ワイヤー分岐機構は操作ワイヤーケーブルと分岐ワイヤーケーブルとのアウターワイヤーの末端部を固定する固定部と固定部内にインナーワイヤーの末端部を嵌合して移動可能にする分岐部材とが設けられ、分岐部材は操作ワイヤーケーブルのインナーワイヤーによる進退移動を各分岐ワイヤーケーブルのインナーワイヤーによる進退移動として複数に分岐伝達し、分岐部材には各インナーワイヤーが互いに平行に移動させる平行移動手段を設けた車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワゴンや台車等の載置台及び床頭台等の移動体の底面に配置される車輪に設ける車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワゴン・台車・載置台・床頭台等の移動体の底面に配置される車輪或いはキャスターは、設置場所に車輪をブレーキ或いはロックして固定する車輪ブレーキ機構が設けられている。
このため、特許文献1(特開平6-199102号公報)に開示されているように、キャビネット等の移動体30において、連結棒24を用いたリンク機構により一対の前輪キャスター11(車輪10)をロックされる機構が提案されている。
また、特許文献2(実開昭57-1948803号(実願昭56-82241))に開示されているように、一対の回転軸15を操作ケーブル20によって回転させ、回転軸15の端部に設けられた押板16の回動によって台車等のキャスターの車輪4ロックする機構が提案されている。
これらワゴン・台車・載置台の移動体において、特に、病院等ではベッド近傍には、例えば、特許文献3(特開2001-29157号公報)に開示されているように、テレビや身の回り品等を収納する床頭台が配置され、患者のベッド移動等に伴って、床頭台の移動も簡単でスムースになるようにしている。
【0003】
ところで、移動体としての床頭台等を、例えば、ベッド近傍の所定の位置に位置決めして固定するには、各4個のキャスターのロックレバーをONにして、各キャスターの車輪と旋回とをロックしなければならない。さもないと、使用者や患者がベッドから起き上がる際に床頭台に掴まったり、見舞いの人等が床頭台に寄りかかったりした場合に、不意に床頭台が動くことがあり、思わぬ怪我をすることもあった。
このため、移動体の使用者、例えば、床頭台にあっては看護師や患者が床頭台を病室の所定位置に配置する際には、必ず床頭台の底面に各キャスターの全てをロックしなければならず、特に、靴先で操作するにしても、通常、ロック解除にはレバーを上方にあげる操作は厄介なものであり、しかも、4箇所のキャスターの全て同様の操作をすると、なおさら厄介な作業であった。また、後日、看護師等が各キャスターのロック状態を点検する際も、床頭台の底面に配置された4個のレバー状態を看護師等が中腰になって目視して確認しなければならず、作業負担を強いるものであった。
【0004】
ところで、病院等での床頭台のキャスターは、エレベータでの移動の際、エレベータとフロアの間の溝に落ちないように、車輪径を大きくしなければならず、実際には直径10cm程度の車輪を用い、安定した走行になるように、例えば、特許文献4(特開7-239294号公報)に開示されるような幅広(7cm程度)の双輪キャスターが用いられている。
そこで、本発明者らは、一回の操作で移動体(床頭台)のキャスターのブレーキ或いはロック状態及び解除状態にでき、簡単に床頭台を固定及び解除できる床頭台固定装置として、下記特許文献5(特願2008-14903)の発明を提供したが、必ずしも十分ではなく、とくに、前記の特許文献1や特許文献2と同様にリンク機構を用いるため、4個の車輪の全てを同時にロック状態及び解除状態にするとなると、リンク機構が複雑になり、制作費も高く、保守箇所が増えてメンテナンスも困難になるという問題点もあった。
なお、1本のワイヤーケーブルを2本のワイヤーケーブルに分岐して2箇所の車輪にブレーキ操作する技術としては、特許文献6(特開2004-175327)が提供されているが、3本以上のワイヤーケーブルに分岐して3箇所以上の車輪のブレーキ機構やロック機構に伝達する機構は実用化されておれず、これは3本以上のワイヤーケーブルに均等に移動力を伝達することが困難であることが考えられる。
【特許文献1】特開平6−199102号公報
【特許文献2】実願昭56−82241号明細書(実開昭57-1948803号)
【特許文献3】特開2001−29157号公報
【特許文献4】特開平7−239294号公報
【特許文献5】特願2008−14903号
【特許文献6】特開2004−175327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、一箇所の操作でワゴン・台車・載置台・床頭台等の移動体の底面に配置される複数の車輪(キャスター)のブレーキ(ロック)機構を操作することができ、種々の車輪の配置に容易に対応することができ、しかも、簡単な機構で作動する複数の車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、操作部に繋がる1本の操作ワイヤーケーブルが、複数の分岐ワイヤーケーブルに分岐して該ワイヤーケーブルの移動体の各々の車輪ブレーキ機構に接続するものにおいて、前記操作ワイヤーケーブルと前記分岐ワイヤーケーブルの中間には両ケーブルの端末部に接続するワイヤー分岐機構を設け、該ワイヤー分岐機構は操作ワイヤーケーブルと分岐ワイヤーケーブルとのアウターワイヤーの末端部を固定する固定部と該固定部内にインナーワイヤーの末端部を嵌合して移動可能にする分岐部材とが設けられ、該分岐部材は前記操作ワイヤーケーブルのインナーワイヤーによる進退移動を前記各分岐ワイヤーケーブルのインナーワイヤーによる進退移動として複数に分岐伝達し、該分岐部材には各インナーワイヤーが互いに平行に移動させる平行移動手段を設けたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置であって、前記の分岐するワイヤーケーブルは、全4個設けられた車輪ブレーキ機構に対応する4本の分岐該ワイヤーケーブルであることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置であって、前記ワイヤー分岐機構の平行移動手段の分岐部材(スライダー)は、前記固定部の内側面で前記分岐部材の外側部を案内するとともに、該分岐部材の上下面とこれに対応する固定部には、移動方向に凸筋とこれに対応する凹溝の前記進退移動方向に平行に移動する案内手段を設けたことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至3に記載の車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置であって、前記分岐機構の分岐部材であるスライダーは扁平形状であって、前記複数の分岐ワイヤーケーブルのワイヤー端末部を並列に固定する取付固定部を設け、移動体の底面に配置される複数箇所の車輪ブレーキ機構に連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明の車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置によれば、1箇所の操作部のワイヤー移動を、複数の分岐ワイヤーへ均等に移動距離を与える平行移動手段を設けた分岐部材を設けたので、対応する移動体の車輪ブレーキ機構のロック機構及び解除状態にすることができ、かつ、これらの機構がリンク機構等に比べて簡単にできるので部品点数が少なく制作費も安価になり、また、保守も容易となる。更に、車輪の配置や操作部の配置が比較的自由に設定できる。
請求項2の発明の車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置によれば、請求項1の作動に加えて、全4個の車輪が設けられた移動体に作用されるので、極めて簡単な構成で4個の車輪(キャスター)を同時に正確に車輪ブレーキ(ロック)状態及び解除状態にできる。
請求項3の発明の車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置によれば、床頭台等の移動体を底板の裏面に設けることができ、かつ、移動体の底面を床から高く離さなくてもよく、特に、床頭台に用いれば車高を低く安定したものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
ここで、本発明の好適な車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置を床頭台の双輪キャスターの車輪ブレーキ機構に適用した実施例を図面に沿って説明する。
[実施例]
(キャビネット部分)
図1に示すように、病院等のベッド近傍には本発明の実施例1の床頭台1が配置され、図9に示すように、床頭台1のキャビネット2の底板21の裏前縁部Fの両側2箇所に、一対の双輪キャスター4(4a,4b)が取付けられ、後縁部Bの両側に位置する2箇所にも一対の双輪キャスター4(4c,4d)が取付けられている。この前縁部の一対の双輪キャスター4(4a,4b)の回転領域Z1は、底板21の外にはみ出さない位置に取付けられるが、これは患者や看護師等がキャスターに躓かないようにしたものであり、後縁部の一対の双輪キャスター4(4c,4d)は、双輪キャスター4(4c,4d)の回転領域Z2が多少底板21の外にはみ出しても、患者や看護師等がキャスターが躓く可能性は低いので、後縁部Bの一対の双輪キャスター4(4c,4d)の間隔は、床頭台がなるべく安定するように広い間隔としている。
通常、床頭台キャビネット2の上面の天板22上にはテレビ(図示せず)等を設置し、中段にはカードリーダやテレビチューナー23、財布や貴重品等を保管する簡易保管庫を収納した引き出24が設けられ、下段には小型の冷蔵庫25が収納されている。なお、底板21の裏側には図9に示すように、冷蔵庫25の放熱部分に対応して複数の通風口21bが設けられている。
床頭台1の右側板26の上端面には、4個の双輪キャスターを同時にロック状態及び解除状態にする末端操作部3が設けられていて、これを操作することにより床頭台を固定状態と移動可能状態に切り換えられる。この末端操作部3は、患者や看護師等が操作し易い位置がよく、操作者の腰の位置の右側板26の上端面に設けたが、床頭台の操作し易い上部であればよく、場合によっては、天板22の一部、背板に設けてもよく。或いは、冷蔵庫の扉が近傍に無く衛生面を考慮しなくてもよければ足操作による底板21の一部でもよい。
この末端操作部3を操作することにより、詳細は後述するが、インナーワイヤーとアウターワイヤーの同軸ワイヤーケーブルを用いた操作伝達機構6を介し、4個の双輪キャスター4のそれぞれの車輪ロック機構5を操作する。この操作用のワイヤーケーブルは、自転車等のブレーキワイヤーと同等のもので、芯のインナーワイヤーとこれを被覆し両端を固定するアウターワイヤーからなり、大凡、この際に末端操作装置3のハンドル部(レバー)を引き挙げることにより、インナーワイヤーを引っ張り双輪キャスター4の車輪ロック機構5のロックを解除し、逆に、ハンドル部を下げて車輪ロック機構5のバネによりロックする。
【0009】
(キャスターの末端操作部)
以下の操作構造の詳細を説明する。
図1は、末端操作部3で4個の双輪キャスターをロック状態にした外観斜視図で、図2が解除状態にした外観斜視図であり、この末端操作部3の詳細から説明する。
先ず、4個の双輪キャスターのロックを解除した状態の図2について、その内部機構を示す図3を参照して説明すると、末端操作部3は主にハンドル部31、解除維持機構32、解除ボタン33、操作部カバー34、枠体35から構成されている。
図3において、ハンドル部31は回動軸311を中心に回動胴部312が回動し、回動胴部312の外周一部に凸部313が設けられ、この凸部313が枠体35の胴体収納部351に設けた溝部352の回動規制範囲で規制される。
回動胴部312の回動軸311近傍の回動する部位には、操作伝達機構6の操作ワイヤーケーブル61の操作部側のタイコと呼ばれるインナーワイヤー612の末端部611を係止する係止部314が設けられ、端末部導入溝315に沿って末端部611を係止部314に係止するようにしている。ハンドル部31(正面)には4本の指が挿入できる把持部317が設けられ、図3に示すように、ハンドル部31の把持部317に手をかけ引き上げると、係止部314も上方に回動し操作ワイヤーケーブル61の末端部611も引き上げられる。
ハンドル部31が所定位置まで引き上げられると、解除維持機構32のロック部材321(図7参照)の先端部3211が、ハンドル部31の最外周の適所に設けられたロック部材係止孔318に嵌合するように構成され、そのためにロック部材321が枠体35の回動側部316をガイドするガイド壁353に設けた滑動孔354に左右動可能に収納され、また、ロック部材321の後端部3212をバネ収納部355に設けたバネ部材322で常に押圧されている。
したがって、ハンドル部31を先端部3211がロック部材係止孔318に嵌合するまで引き上げ、このロック部材係止孔318の嵌合によってこの位置を維持することになる。すなわち、インナーワイヤー612を引っ張り上げた状態を維持することになり、結果として、双輪キャスター4内に設けたノック部材531(図16参照)を引き上げ、ノック部材531に固定された歯型542(図16参照)をキャスターの内歯車45(図16参照)の係合から開放することになり、このロック解除状態を維持することになる。
【0010】
解除維持機構32には解除ボタン33を係合しているが、この解除ボタン33は枠体35の解除ボタン摺動孔356に嵌合し、図7(a)(b)に示すように、解除維持機構32のロック部材321の軸方向のほぼ中央には両外周に一対のピン323が設けられる。図8(a)の側面図、(b)の正面図、(c)の底面図に示すように、解除ボタン33の下部角柱部331はロック部材321が摺動可能に2股部3311になっており、2股部3311には斜めのカム長孔332が設けられ、このカム長孔332にピン323が嵌合しており、棒状のロック部材321の先端3211は後端部3212のバネ部材322で常に押圧されロック部材係止孔318に嵌合して左側(図3)に移動すると、解除ボタン33の下部角柱部331の断面は矩形で、これを収納する枠体35に設けられた同じ断面矩形の解除ボタン摺動孔356によって回動は規制され、解除ボタン33の上端操作部333は上昇する。
この双輪キャスターを解除する状態では、図3の一点鎖線で示されるように、操作部カバー34は右側板26の上端部26aの後部に退避させており、この状態でハンドル部31が上方に引き上げられ、解除ボタン33の先端は突出した状態にある。なお、解除ボタン33は、解除表示ボタンとして、より効果的に機能させるため、危険状態を喚起するために目立つ色彩、例えば、赤色とすればよい。
【0011】
次に、図1の4個の双輪キャスターをロックした状態について、その内部機構を図4を参照して説明すると、解除ボタン33の上端操作部333を下に押圧すると、カム長孔332のカム面に沿って、ピン323も押圧するバネ部材322に抗して移動し(図4右側方向)、嵌合ロック部材321の先端部3211は後退してハンドル部31のロック部材係止孔318から解除され、ハンドル部31は操作ワイヤーケーブル61の末端部611により下方へ引張られる。
この下方への引張力は、キャスター内部のバネ541(図16参照)によりノック部材531が下降し、リンクアーム56(図9参照)、分岐ワイヤーケーブル63、及び、操作ワイヤーケーブル61を介して生じる。この4個のバネ541による下方へ引っ張る力だけで不足の場合には、図3、4で点線で示される引張りバネ3161によって助勢してもよく、この引張りバネ3161の一端は枠体35の内部空間の底部に固着され、他端はハンドル部31の底面とに固着されている。
そして、この引張り力によって、ハンドル部31の上端面319が上端部26aの表面とほぼ同じ水準になり、図1、及び、図4の状態になる。
また、バネの引っ張り力により急激にハンドル部31が戻り騒音等を生じる場合には、図3、4で2点鎖線で示されるショックアブソーバー3162によって戻り速度を緩和させてもよく、バネと同様に、このショックアブソーバー3162の一端は枠体35の内部空間の底部に固着され、他端はハンドル部31の適所に固着されている。
ここで、ハンドル部31の上端面319と、解除ボタン33の上端操作部333とが共に下降した状態で、右側板26の上端部26aの表面とほぼ同じ水準となっているので、後退している操作部カバー34を手前に移動させて、ハンドル部31と解除ボタン33とが操作できないように覆う。
【0012】
この操作部カバー34の構成と動作を主に図5、図6に沿って説明する。
図5(a)(b)の操作部カバー34の図に示すように、枠体35内に前述のハンドル部31、解除維持機構32、解除ボタン33を組み立て、この枠体35に右側面を覆う外枠36と、一部上面と左側面を覆う外枠37とを取付けて完了し、これに操作部カバー34を取り付ける。
外側に位置する右側の外枠36には平行方向に段差361が設けられ、内側に位置する左側の外枠37にも平行方向に段差371が設けられ、操作部カバー34を嵌合する。
図6(a)(b)(c)に示すように、操作部カバー34は右側板341、左側板342、上板343、及び、背板344とから構成され、右側板341の下端内側には嵌合突起3411が平行方向に設けられ、同様に、左側板342の下端内側には嵌合突起3421が平行方向に設けられ、この操作部カバー34が多少弾力のある合成樹脂製であることから、先頭箇所で両嵌合突起3411,3421を拡げて、各段差361,371に嵌合する。
操作部カバー34の上板343の移動方向の先端部には矩形の切欠部3431が設けてあり、操作部カバー34でハンドル部31等を覆う際には、この切欠部3431が枠体35の上面先端部(図5の左端)に設けた矩形の段差357に嵌合し、それ以上の移動を規制する。同様に、操作部カバー34の背板344にはキャビネット2の側板26の上端を跨ぐように、一対の背板部材3441,3442が設けられ、枠体35の後部に当接してそれ以上の移動を規制する。
また、操作部カバー34が後退しすぎて脱落しないように、外枠37の適所にストッパー突部372を設け、操作部カバー34の左側板342の下部の先頭近傍の適所にストッパー係合部3422を設けている。
【0013】
(操作伝達機構)
操作伝達機構6は、キャスター4の末端操作部3からのインナーワイヤーの引張力を4個の車輪ロック(ブレーキ)機構5に伝達する機構で、本発明の特徴とするワイヤーケーブル分岐装置(1→4に引張力を分配(分岐)する装置)を用いるものである。
このワイヤーケーブル分岐装置は、図10で示すように、芯のインナーワイヤーと同軸で被覆部でもあるアウターワイヤーからロックワイヤーを用いたもので、主に操作ワイヤーケーブル61とワイヤー分岐盤62と4本の分岐ワイヤーケーブル63とから構成される。
前述した末端操作部3に取付られる操作ワイヤーケーブル61は、その末端部Aの拡大図の図11に示すように、芯のインナーワイヤー612、それを覆うアウターワイヤーである被覆部613とからなり、インナーワイヤー612の先端には円柱状の所謂タイコと呼ばれる末端部611が設けられ、被覆部613の先端には取付固定部614が設けられ、インナーワイヤー612が取付固定部614に対して、末端部611が進退可能に構成され、他方の末端部616はワイヤー分岐盤62のスライダー622に接続される。
ワイヤー分岐盤62からの4本の分岐ワイヤーケーブル63は、ほぼ同じ長さで、その1本の末端部Bの拡大図の図12に示すように、芯のインナーワイヤー632、それを覆う被覆部633からなり、ワイヤー632の先端には円柱状の末端部631が設けられ、被覆部633の先端には取付固定部634が設けられ、インナーワイヤー632が取付固定部634に対して、末端部631が進退可能に構成され、他の末端はワイヤー分岐盤62に接続される。
【0014】
ワイヤー分岐機構の操作ワイヤーケーブル61と分岐ワイヤーケーブル63とのアウターワイヤー613,633の末端部616,636を固定する固定部であるワイヤー分岐盤62は、図13(a)(b)に示すように、操作ワイヤーケーブル61と4本の分岐ワイヤーケーブル63を接続するもので、図13(a)のワイヤー分岐盤62の蓋621(図13(b))を開けた内部は、スライダー622が左右移動可能に収納される。ワイヤー分岐盤62の操作ワイヤーケーブル61側の側板623に操作ワイヤーケーブル61のアウターケーブル613の末端部(615)である取付固定部615を取付け、前記スライダー622の操作ワイヤーケーブル61側にはインナーワイヤー612の末端部(タイコ)616がスライダー622の嵌合部6221に嵌合し固定される。
また、ワイヤー分岐盤62の4本の分岐ワイヤーケーブル63側の側板624に分岐ワイヤーケーブル63のアウターケーブル633の末端部の取付固定部635を取付け、前記スライダー622の分岐ワイヤーケーブル63側には4本のインナーワイヤー632の末端部(タイコ)636が嵌合する嵌合部6222が設けられ、この嵌合部6222に末端部636を嵌合し固定する。このようにして、操作ワイヤーケーブル61の端末部616が引っ張られると、側板623側に移動(図13:右方向)するが、スライダー622に嵌合される4個の末端部636も一括して側板624から離れるように移動(図13:左方向)する。
【0015】
図14(a)の図13(a)でのa−a線断面図、図14(b)の図13(a)でのc−c線断面図に示すように、このスラダー622は4本のインナーワイヤーの末端部636の移動距離が同じでなければ、正確に4個のキャ双輪キャスターをロックすることができない。このため、操作ワイヤーケーブル61のインナーワイヤー612による進退移動を各分岐ワイヤーケーブル63のインナーワイヤー632による進退移動方向と平行に移動させる平行移動手段を設けている。
この平行移動手段は、ワイヤー分岐盤62の断面矩形ケースの内側面が案内壁になり分岐部材のスライダー622の外側部を案内する構成でも良いが、これだけではスライダー622が傾き、スライダー622の前端がワイヤー分岐盤62の案内壁に引っ掛かることがある。これを防ぐために、スライダー622を設置したとき上下面とこれに対応するワイヤー分岐盤62の底部と蓋621には、移動方向に凸筋とこれに対応する凹溝の前記進退移動方向に平行に移動する案内手段を設けている。
これを、更に詳しく説明すると、スライダー622の上面の移動方向に平行な山部(凸筋)6223が複数設けられ、図13(b)の蓋621を嵌め込んだ側面図に示すように、山部6223を左右方向に案内する案内溝(凹溝)6211を蓋621に設けて、正確にスラダー622がワイヤー軸線に対して平行移動するようにしている。勿論、この逆に、平行な山部を蓋621に設け、対応する案内溝をスライダーに設けてもよい。なお、蓋621の嵌合側面には固定凸部6212はワイヤー分岐盤62の内壁に挿入固定するためのものである。
したがって、スライダー622をワイヤー612,632の前進後退方向と平行に移動させるための平行進退移動手段として、ワイヤー分岐盤62の内側の両側壁は勿論こと、これだけでは、平行移動には不十分であるので、スライダー622の上面には平行な山部6223が複数設けられ、蓋621側にも山部6223を左右方向に案内する案内溝6211が設けられている。
【0016】
このように、操作ワイヤーケーブル61の進退移動がワイヤー分岐盤62を介して4本の分岐ワイヤーケーブル63に伝達される。なお、4本の分岐ワイヤーケーブル63及び取付固定部635は分岐盤62内では並列にしているが、これは、分岐盤62を床頭台1の底板21の裏面に付けるので、この裏面には掃除機等が入ると、分岐盤62と床面とに所定の間隔を有さなければならないので、分岐盤の厚みhもなるべく薄くしなければならないからであり、この本実施例のワイヤー分岐盤62の構成であれば、取付固定部615(635)の1個分の厚さに対応すればよく、分岐盤の厚みhをより小さくすることができる。
また、操作伝達に同軸ワイヤーを用いたので、図9に示すように、床頭台の裏面の4個の双輪キャスター4の位置を自由に設定でき、また、リンク機構の組み合わせとは異なり、構造も簡単で制作費も安価で、保守も容易になる。更に、1本の操作ワイヤーケーブルを4本に分岐して用いているので、極めて簡単な構成で4個のキャスターを同時に正確にブレーキ(ロック)状態及び解除状態にでき、ワイヤー分岐機構6の高さを小さく薄くできるので、床頭台の底板の裏面に設けることができ、或いは、床頭台の車高を低くすることができる。
【0017】
言い換えれば、末端の床頭台の上部の操作部3からの1本の操作ワイヤーケーブル61を4本の分岐ワイヤーケーブル63に分岐して4個の車輪ロック機構であるキャスター操作機構に接続し、1本の操作ワイヤーケーブル61のインナーワイヤー612の前進/後退を4本の分岐ワイヤーケーブル63のインナーワイヤー632の前進/後退に伝達している。この1本の操作ワイヤーケーブル61を4本の分岐ワイヤーケーブル63に分岐するためにワイヤー分岐機構としてワイヤー分岐盤62を設け、ワイヤー分岐盤62には4本の端末部631を並列にして固定するスライダー622を設けて、スライダー622をワイヤー612,632の前進後退方向と正確に平行に移動させている。
もっとも、本発明の実施例は1本の操作ワイヤーケーブルを4本のワイヤーケーブルに分岐しているが、平行移動させることから複数本であれば、4本に限る理由はなく、2本、3本でもよく、4本以上の5本や6本でも良いが、通常の床頭台(移動体)は双輪キャスター4を4箇所に使用している。この4箇所の車輪を同時に全部をロック(ブレーキ)状態、或いは解除することが効果的である。
ここで、4箇所全部の双輪キャスター4を同時に、確実に作動させるには前述した条件以外にも、4本の分岐ワイヤーケーブル63の長さも同じにすること、及び、4本の各分岐ワイヤーケーブル63の屈曲度合いも関係してくるので、これら分岐ワイヤーケーブル63が同時に均一に作動する経路を実験によって割り出し、この経路に各ワイヤーを固定する必要がある。そこで、 床頭台1の底板21の裏の全面に合成樹脂のワイヤー固定板(図示せず)を配置してもよく、このワイヤー固定板は各ワイヤーの全長に亘って最適な経路となるように操作ワイヤーケーブル61と分岐ワイヤーケーブル63のためのワイヤー固定用溝と止め部を設ける。また、このワイヤー固定板は、同時に操作ワイヤーケーブル61や分岐ワイヤーケーブル64が床に垂れ下がるのを防止する作用があり、更に、4箇所の双輪キャスター4の固定位置を指定するようにすれば、正確な位置に簡単に双輪キャスター4を取り付けることが出来る。
なお、上述した床頭台1の底板21の裏の全面の合成樹脂のワイヤー固定板(図示せず)は木製にして、この木製のワイヤー固定板の上面に各ワイヤー(5本)のワイヤー経路の溝やワイヤー分岐盤62のスペースを削って作成して、蓋状に底板21の裏に貼り合わせてもよく、この場合は合成樹脂の成型のための型を作成する必要がなく少量の場合は安価に作成できる。
【0018】
(キャスター(車輪)の配置)
前述した図9は、床頭台1の底板21の裏面の平面図で、前縁部の両側の一対の双輪キャスター4(4a,4b)、後縁部の両側の一対の双輪キャスター4(4c,4d)が取付けられる。
これらのキャスター4の外観概略は、図15に示すようなもので、キャスター4の構成の詳細は後述するが、キャスター操作機構である車輪ロック機構5の枠体51の両側に一対の車輪41a,41bがそれぞれ回転可能に軸支されており、ロック機構枠体51の上面には、キャスター4が取付枠に対して旋回可能に軸支するための旋回支持部52が設けられ、旋回支持部52の軸心Xと同軸に、上下動するノック部材531が設けられており、ノック部材531を押し下げると双輪キャスターがロックされ車輪は回転することができず、ノック部材531の押込みを解除して上方に上がると、双輪のロックが解除され、双輪が自由に回転することができる。
ところで、本実施例で使用する双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)は、双輪の巾が単輪よりも広いので、単輪キャスターに比べて走行安定性があり、また、双輪の回転をロックすると進行方向は勿論のこと、双輪の巾が広いことから旋回阻止でき、特に、本実施例のように4本の双輪キャスター4(4a,4b,4c,4d)での各双輪の回転をロックすると、前後左右の移動や旋回がロックされ、1箇所の双輪キャスターの固定では不十分である場合があるが、床頭台1のキャスター4は前面の2個所でも床頭台はほぼ固定され、3個所であるとより確実に固定され、全部のキャスターである4箇所のキャスターをロックした場合は確実に床頭台1が所定の位置に固定される。したがって、本実施例のように、4箇所のキャスターをロックしようとした場合は、仮に、4箇所のうち一箇所のキャスターのロック機構が不完全或いは破損した場合でも、床頭台を確実に固定及び解除できる。
【0019】
(キャスター(車輪)部)
本実施例のキャスターは、図15でも説明したように、ロック機構枠体51を挟んで、5cm程度の間隔を持った車輪4(41a,41b,41c,41d)の双輪キャスターであり、移動時には走行は単輪キャスターに比べて走行安定性がある。また、車輪41a,41b(41c,41d)の両車輪(双輪)がロックすると走行が出来なくなり、キャスターの旋回も制限されて、更に、本実施例のように、床頭台1の前縁部Fの両側の2箇所の双輪キャスター、及び、後端部Bの車輪41c,41dが固定されると、キャスター自体の旋回を固定しなくても、車輪の回転の固定だけで床頭台1はほぼ完全に固定されることを見出し、この知見を基礎とするものである。
上記の車輪ロック機構5を、図16乃至図19に沿って更に詳しく説明する。
図16はノック部53が上方に上がった状態の図、即ち、キャスターロックが解除されたフリーな状態の図で、図16(a)は車輪ロック機構5の横断面図で、図16(b)は図16(a)のa−a線での断面図である。また、図17はノック部53がキャスター内部のバネ541により歯部542が下がった状態の図、即ち、キャスターロックがロック状態の図で、図17(a)は車輪ロック機構5の横断面図で図17(b)は図17(a)のa−a線での断面図である。
【0020】
図16(a)(b)に示すように、車輪ロック機構5の枠体51内には、キャスター取付金具55に対して双輪キャスター4が旋回可能なように旋回支持部52が軸支され、旋回支持部52の内側に上下動するノック部53が設けられ、ノック部53に続いて車輪歯噛合ロック部54がバネ541を介して連結され、図17(a)に示すように、車輪歯噛合ロック部54はノック部53のノック部材531が押圧された場合に、歯部542が車輪部41の内側の内歯車45に嵌合して、車輪41a,41bの回転を阻止する。
ここで、各部の構成を更に詳細に説明するが、先ず、枠体51はプラスチックで成型されたもので、図18及び図19に示すように、中心に車輪軸受部511が設けられ、図18(a)の枠体51の左側には、旋回支持部52(ノック部53)(図16参照)を挿入する円筒型の取付孔512と収納部513が配置され、取付孔512のキャスター取付金具55に近接する部分は双輪キャスター4の旋回をスムーズにするためにオイレスベアリング525,526等が設けられるが、これらに埃等の付着を避けるため突出輪(カバー部)514が設けられ、車輪軸受部511の下側には上下動する車輪歯噛合ロック部54及びバネ541を収納する収納部515が配置されている。
また、収納部513の下部開放口には、図19(a)(b)に示すような蓋部材516を設けるが、これは組み立て作業で、旋回支持部52にオイレスベアリング525、526、及び、旋回補助ワッシャー522を挿入し、これを枠体51の取付孔512に旋回支持部52を挿入した後に、旋回支持部52の下端に設けれた止め金具(スナップリング)用の固定円周溝523aに、旋回支持部を固定する際にスナップリング523を係止する時の作業するためものでもある。
更に、ノック部53のノック部材531の下端部に車輪歯噛合ロック部54の基部544を一対のフランジ付ベアリング537で回転自在にし取り付けるが、固定縁533とワッシャー538とボルト535(図16(a))で、一対のフランジ付ベアリング537のベアリング内輪を外れないように取り付けた後に蓋をする構成で、上方に爪部516aが設けられ、下方にヒンジ部516bが設けられ、ヒンジ部516bを収納部513の下部の装着溝513bに装着し、相互のピン孔516cと513cにピン517を挿入して、ピン517を回動中心とした蓋を構成する。
そして、車輪歯噛合ロック部54をノック部材531にボルト535で固定する作業を終えた後に、爪部516aを収納部513の外周側の下部嵌合孔513aに嵌合して蓋をする。
【0021】
(旋回支持部及びノック部)
次に、図18での取付孔512と収納部513に装着する旋回支持部52とノック部材531について説明する。
図16,17に示すように、旋回支持部52は金属製の円筒(パイプ)でキャスター取付金具55に固着する。詳しくは、旋回支持部52のパイプの先端部は若干細い直径の取付金具固定軸524が設けられ、先ず、取付金具固定軸524をキャスター取付金具55の取付孔551に挿入して、その後、この取付孔551を挟んで細い直径の取付金具固定軸524の取付縁部(カシメ部)521を外側に拡げるようにカシメ加工することによって、旋回支持部52をキャスター取付金具55に固着する。
この旋回支持部52とロック機構枠体51への取付は旋回自在となるように取付けられるが、両者の接合部であるロック機構枠体51の取付孔512の上端面(突出輪514の底部)とキャスター取付金具55の取付孔551との間には、旋回補助ワッシャー522と一対のオイレスベアリング525,526が挿入され、キャスター取付金具55に対して双輪キャスター4がロック状態で無い場合に、旋回がスムーズになるように構成されている。
組み立て順序は、ワッシャー522、オイレスベアリング525、526、及び、旋回補助ワッシャー522を挿入した旋回支持部52を取付孔512に挿入し、旋回支持部52の下端の固定円周溝523aにスナップリング523で係止する。次に、下からノック部材531を挿入した後、ノック部材531の上部にはリンクアーム56を取付、下部には車輪歯車噛合ロック部54を取り付ける。
ここで、双輪キャスター4の旋回とは、図15に示されるように、通常の双輪キャスター4の接地箇所X2の垂直線とノック部材531の軸心の接地箇所X1とが偏心することによって、床頭台1を移動させる際に、自動的に双輪キャスター4の進行方向が移動方向に向くようにしたものであるが、当然、双輪キャスター4がロック状態では、双輪キャスター4が回動しないことによって旋回は阻止されるが、逆に、床頭台の移動時のロック状態で無い場合には自由に旋回させなければならない。
したがって、旋回支持部52とキャスター取付金具55との間にオイレスベアリング525,526を介在させたのであるが、リンクアーム56を設けることからノック部材531は回動不可能であるので、ノック部材531の下部に設けられた車輪歯車噛合ロック部54は、双輪キャスター4の旋回に伴って回動させなければならず、このため、一対のフランジ付ベアリング537を設けている。なお、フランジ付ベアリング537を一対にしたのは、斜めの負荷がベアリング537に加わるので2個のベアリングにすることによってよりスムースに回動するからである。
【0022】
旋回支持部52は、キャスターの旋回軸を構成するとともに、ノック部53を収納するが、このノック部53について図16、17に沿って説明すると、ノック部53は、ノック部材531、上端近傍のリンク用ピン孔532、下端近傍の固定縁533、回動軸部534と先端ネジ部535、及び、ボルト536から構成される。
ノック部53のリンク用ピン孔532にはピン568が嵌合し、このピン568は、後述する分岐ワイヤーケーブル63により操作されるリンクアーム56のアーム566のカム孔を構成するピン長孔567(図20)に移動可能に嵌合される。
更に、上述したように、このノック部53は下部に車輪歯噛合ロック部54が水平方向に回動自在に車輪歯噛合ロック部54が設けられる。このノック部53は下部の下端には固定縁533と回動軸部534と先端ネジ部535が設けられ、回動軸部534には車輪歯噛合ロック部54を挟んで上下一対のフランジ付ベアリング537がワッシャー538を介して設けられ、ワッシャー538,ボルト536と固定縁533とでベアリング537の内輪を挟んで抜け落ちないように締め付けて固定し、同時に一対のフランジ付ベアリング537のフランジで車輪歯噛合ロック部54を水平方向に回動自在に、且つ抜け落ちないよう取り付ける。
前述したように、フランジ付ベアリング537を設けてノック部53と車輪歯噛合ロック部54が互いに回動自在にすることは、本実施例のようなノック部材531を回動させないキャスターを用いた床頭台において、その移動の際には車輪歯噛合ロック部54がスムーズに回動することは極めて重要である。また、車輪歯噛合ロック部54がスムーズに回動することに伴う作用として、車輪歯噛合ロック部54側の歯部542と双輪キャスター4の内歯車45とが表面の摩擦抵抗で引っ掛かる場合にも、フランジ付ベアリング537によって相互の部材のスムーズな回動が許容されていると、容易に両歯が引っ掛かる状態が解消され、双輪キャスターロック作動及びロック解消動作に対して極めて抜群の作用効果がある。
【0023】
(車輪部及び車輪歯噛合ロック部)
基部544は、図16、17に示すように、基部544の断面二段形状(Z形状)の下段の歯型基部543が二股に構成され、図22に示すように、車輪歯噛合ロック部54は両側に歯型部543とその下端面に3本の下向きに一対の歯部542が設けられ、歯型基部543の上面546のほぼ中央部にはバネ係合部545には、下側に押圧するバネ541が設けられ、常に下方に押し下げる構成になっている。
したがって、車輪歯噛合ロック部54の歯型基部543は、常に、歯型基部543の上面に設けられたバネ541によって下側に押圧され降下するようになっており、床頭台をベッド近傍に設置した通常の場合は、歯型基部543の両脇の下面に設けられた歯部542はバネ541によって各双輪キャスター4の内歯車45に嵌合して、双輪キャスター4の回転を阻止し、ロック状態になり床頭台の移動を阻止して移動を不可能にしている。なお、車輪歯噛合ロック部54の上下動は、枠体51に設けた車輪歯噛合ロック部54の収納部の側壁51aが案内部を構成しており、側壁51a(図18・図23参照)に沿って降下・上昇する。
一方、双輪キャスター4の片方の車輪部41は、図23に示すように、車輪軸42は、枠体51の車輪軸受部511に回転自在に軸支され、車輪部41車輪軸固定部43に固定される(車輪軸固定部43は、車輪を回転自在に軸支する構成でもよい。)。車輪部41の外輪44はゴム製で振動を吸収し走行を滑らかにし雑音を軽減するとともに、床へのグリップを強くしている。
また、双輪キャスター4の車輪部41の内側の外輪近傍には、車輪軸に同心の内歯車45が形成され、車輪軸固定部43が降下した際には、内歯車45に歯部542が噛み合い車輪部41の回転を阻止する。
【0024】
(キャスター取付金具とリンクアーム)
図16、17におけるキャスター取付金具55とリンクアーム56について、図20及び図21に沿って、更に詳細に説明する。
端末操作部3のハンドル部31を上方に挙げる操作によって、操作ワイヤーケーブル61が引っ張られ、ワイヤー分岐盤62によって4本の分岐ワイヤーケーブル63も引っ張られる。更に、この各分岐ワイヤーケーブルのインナーワイヤー632が引っ張られるが、これをノック部53の動きに変換するのがキャスター取付金具55に装着されたリンクアーム56である。
図20に示すように、リンクアーム56は回転軸561を中心にして回動するL字形の2のアームで、片方のアーム562の先端近傍にはインナーワイヤー632の末端部631(図12参照)を係止する係止部563が設けられ、この係止部563はインナーワイヤー632と末端部631を係止するための横溝564と縦溝565が設けられる。他方のアーム566は二股で、その二股の間にノック部材531の先端が回動自在に嵌合され、ノック部材531の先端近傍にはノック部材531の先端のリンク用ピン孔532に対応するピン長孔567が設けられ、このピン長孔567とノック部材531のリンク用ピン孔532とにピン568で貫通する。
このリンクアーム56はキャスター取付金具55に取り付けられるが、キャスター取付孔551を底部552に設けたキャスター取付金具55は、床頭台1の底板21の裏面に固定する固定部553が両端に設けられ、リンクアーム56の回転軸561が両側板554の端軸受部555に軸支され、分岐ワイヤーケーブル63の取付固定部634(図12)をワイヤー取付孔556に取付け、4本の双輪キャスターでの回転取付固定部634と末端部631との間隔をボルト557により調整する調整板558が取付られている。
【0025】
(キャスターのロック(ブレーキ)及びロック解除の作動)
本実施例の床頭台を固定する末端操作装置は、以上のような構成であるので、大凡、次のように作動する。
床頭台1のキャスター4のロック解除のハンドル部31は、図1に示すように、通常の設置状態では、キャスター4がロックされ、キャスター操作部であるハンドル部31は操作部カバー34で覆われているが、床頭台1を移動する際には、図2に示すように、操作部カバー34を後退させ、解除維持のためのロック部材321がハンドル部31のロック部材係止孔に嵌合する位置までハンドル部31を上方に持ち上げ、この時の解除維持のためのロック部材321の移動によって、ロック解除表示ボタンである解除ボタン33を突出させ、キャスター4のロックを解除する。
床頭台1のキャスター4を元のロック状態にするには、ロック解除表示ボタンである解除ボタン33を下側に押して解除維持するロック部材321を後退させ、ハンドル部31がキャスター4内のロック機構によるワイヤーの引っ張力、或いは、協働する引張りバネ3161によって降下するので、この状態で操作部カバー34を手前に前進させて元の図1に示す状態にする。このことを、双輪キャスターのロック/解除状態の作動について、更に詳しく説明する。
[双輪キャスターのロック(ブレーキ)状態]
これは、床頭台1をベッドの近傍に配置した通常の状態で、ハンドル部31と解除ボタン33とが共に下方に位置し、これらが操作部カバー34に覆われ、床頭台の側板26とほぼ同等の高さにあり、操作ワイヤーケーブル61は結果的キャスター内のバネ541によって歯部542をキャスターの内歯車45に嵌合させるとともに、バネ541にノック部材531も押されて、分岐ワイヤーケーブル63によって引っ張られた状態にある。この場合の状態は長時間に亘るが、ハンドル部31を常に引っ張る状態に維持する必要がないので、各ワイヤーは緊張状態にはなく、経年で伸びるようなことがなく、装置の保守も容易になる。
[双輪キャスターのロック解除状態]
この場合には、床頭台を移動する状態で、操作部カバー34を後退させ、ハンドル部31を挙げて解除ボタン33を突出させ、操作ワイヤーケーブル61を引っ張り上げて緊張状態にし、分岐ワイヤーケーブル63によってノック部材531を上方に引っ張り、結果的キャスター内のバネ541に抗し、歯部542をキャスターの内歯車45から開放する。したがって、ハンドル部31を挙っている状態では、双輪キャスターのロック解除状態にあり、床頭台は移動可能となる。
【0026】
本実施例は以上の説明したような構成であるので、一回の操作で移動体である床頭台等の4個のキャスターをロック状態及び解除状態にでき、簡単に移動体である床頭台をより確実固定及び解除でき、操作伝達に同軸ワイヤーケーブルを用いたので、床頭台の裏面の双輪キャスターの位置を自由に設定でき、また、リンク機構の組み合わせと異なり、構造も簡単で制作費も安価で、部品点数が少ないことから保守も容易になり、1本の操作ワイヤーケーブルをワイヤーケーブル分岐装置によって4本ワイヤーケーブルに分岐して用いているので、極めて簡単な構成で4個のキャスターを同時に正確にロック状態及び解除状態にでき、複数(4本)のワイヤーケブルが接続するワイヤ分岐機構を、扁平にして高さを小さく薄くでき、且つ、扁平にしても4本のインナーケーブルの移動距離を均一にし、スムースに移動を伝達できるので、取り付ける対象の移動体、特に、車高を低くする必要のある床頭台等の底板の裏面に設けることができる。
このように、移動体の車輪操作の操作伝達手段にワイヤーケーブルを用いたので、4個の車輪ブレーキ機構(ロック機構)及び解除状態にすることができ、かつ、これらの機構がリンク機構等に比べて簡単にできるので部品点数が少なく制作費も安価になり、また、保守も容易となる。更に、車輪の配置や操作部の配置が比較的自由に設定できる。
また、操作部を床頭台の側板上端に設けたので、床面の双輪キャスターを固定する際にも看護師等が中腰になる必要がなく操作でき、更に、双輪キャスターのロック状態及び解除状態を一目で確認でき、特に、床頭台の下段には冷蔵庫を収納する場合が多いが、足ではなく必ず手で操作することになるので、冷蔵庫近傍での衛生状態も維持できる。
【0027】
さらに、床頭台1と側板上端26aのハンドル部31の一箇所の一回持ち上げる操作で床頭台1の4個の双輪キャスター4をロック状態及び解除状態にでき、簡単に床頭台1を固定及び解除でき、ハンドル部31を上方に引き上げて突出するようにしたので、通常の押圧する操作と異なり、誤って、キャスターのロック状態及び解除状態とすることがなく、かつ、従来のようにペダルを上にあげる操作や直接上に引っ張る操作が無く、無理のない操作で床頭台のキャスターを固定及び解除でき、また、解除維持機構32の解除ボタン33を操作しなければならないこと、操作部カバー34を設けることにより、誤って使用者である患者や付き添い人などが双輪キャスターのロック解除の操作を行ってしまうということもない。
また、操作部カバー34が操作部を覆っている場合には双輪キャスターがロック状態にあることになり、安心して、床頭台1をベッド近傍に配置することができ、双輪キャスターが解除されている危険な状態では、ハンドル部31が突出した状態にあるので、床頭台1から離れていても双輪キャスターの解除状態を一目で確認でき、床頭台が移動可能な不安定な状態であることを、注意喚起することができる。
また、危険表示としてハンドルに加えて、解除ボタンをキャスターの解除状態を表示する解除表示ボタンとすることで、二重の危険防止表示となる。
なお、本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の各実施例に限定されるものでないことは勿論であり、例えば、床頭台の底面に配置される4個所の全部の双輪キャスターの車輪の回転を一箇所の操作部によって同時にロック状態及び解除状態にしたが、キャスターの双輪の幅によっては、1箇所以上であれば2個所や3個所の双輪キャスターの車輪の回転のロックで床頭台が完全に固定されるのであればそれでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例の床頭台を固定する末端操作装置の双輪キャスターをロックした状態の外観斜視図、
【図2】図1の双輪キャスターをロック解除した状態の末端操作部の拡大斜視図、
【図3】双輪キャスターのロックを解除した状態の末端操作部の内部機構の正面図、
【図4】図3でのロックした状態の末端操作部の内部機構の正面図、
【図5】図5(a)は操作部カバーの側面図、図5(b)はその正面図、
【図6】図6(a)は操作部カバーの側面図、(b)はその上面図、(c)はその正面図、
【図7】図7(a)は解除維持機構の側面図、(b)はその上面図、
【図8】図8(a)は解除ボタンの側面図、(b)その正面図、(c)その底面図、
【図9】図1の床頭台の底板裏面の平面図、
【図10】図1の操作伝達機構の全体の構成図、
【図11】図10のA部の操作ワイヤーケーブルの拡大分解図、
【図12】図10のB部の分岐ワイヤーケーブルの拡大分解図、
【図13】図13(a)は図10の分岐盤の内部の正面図、図13(b)は図13(a)のb−b線での分岐盤に蓋をした状態の断面図、
【図14】図14(a)は分岐盤内のスライダーの図13(a)a−a線での断面図、図14(b)は図13(a)c−c線での断面図、
【図15】図1の双輪キャスターの概略の外観斜視図、
【図16】ロック解除状態の双輪キャスターの内部の図で、図16(a)はノック部材が上がった双輪キャスターのロック解除の状態の正面透視図、図16(b)はノック部材その側面透視図、
【図17】ロック状態の図16の双輪キャスターの内部の図で、図17(a)はノック部材を下がったロックの状態の正面透視図、図10(b)はノック部材その側面透視図、
【図18】図16、図17のロック機構枠体の図で、図18(a)はその正面図、図18(b)はその側面図、
【図19】同上ロック機構枠体の蓋部材の図で、図19(a)はその正面図、図19(b)はその側面図、
【図20】リンクアームの図で、図20(a)は正面図、図20(b)は側面図、図20(c)は上面図、
【図21】キャスター取付金具、リンクアームを組み立てた斜視図、
【図22】車輪歯噛合ロック部の斜視図、
【図23】図16、図17の双輪キャスターの一方の車輪部の図で、図23(a)はその正面図、図23(b)はその側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1・・床頭台、
2・・キャビネット、
21・・底板、21a・・縁部、21b・・通風口、22・・天板、
23・・カードリーダやテレビチューナー、24・・引き出、25・・冷蔵庫、
26・・右側板、26a・・上端部、
3・・末端操作部、
31・・ハンドル部、311・・回動軸、312・・回動胴部、
313・・凸部、314・・係止部、
315・・端末部導入溝、316・・回動側部、3161・・引張りバネ、
3162・・ショックアブソーバー、
317・・把持部、318・・ロック部材係止孔、319・・上端面、
32・・解除維持機構、321・・ロック部材、3211・・先端部、3212・・後端部、
322・・バネ部材、323・・ピン、
33・・解除ボタン、331・・下部角柱部、3311・・2股部、332・・カム長孔、
333・・上端操作部、
34・・操作部カバー、341・・右側板、3411,3421・・嵌合突起、
3422・・ストッパー係合部、342・・左側板、
343・・上板、3431・・切欠部、344・・背板、3441,3442・・背板部材、
35・・枠体、351・・胴体収納部、352・・溝部、353・・ガイド壁、
354・・滑動孔、355・・バネ収納部、356・・解除ボタン摺動孔、357・・段差、
36,37・・外枠、361,371・・段差、372・・ストッパー突部、
4,4a,4b,4c,4d・・双輪キャスター、41・・車輪部、41a,41b・・車輪、
42・・車輪軸、43・・車輪軸固定部、44・・外輪、45・・内歯車、
5・・車輪ロック機構、
51・・ロック機構枠体、511・・車輪軸受部、512・・旋回支持部の取付孔、
513,515・・収納部、513a・・嵌合孔、513b・・装着溝、513c・・ピン孔、
514・・突出輪(ベアリングカバー)、
516・・蓋部材、516a・・爪部、516b・・ヒンジ部、
516c・・ピン孔、517・・ピン、
52・・旋回支持部、521・・取付縁部(カシメ部)、522・・旋回補助ワッシャー、
523・・止め金具(固定スナップリング)、
523a・・スナップリング用の固定円周溝、524・・取付金具固定軸、
525,526・・オイレスベアリング、
53・・ノック部、531・・ノック部材、
532・・リンク用ピン孔、533・・固定縁、534・・回動軸部、535・・先端ネジ部、
536・・ボルト、537・・フランジ付ベアリング、538・・ワッシャー、
54・・車輪歯噛合ロック部、541・・バネ、542・・歯部、543・・歯型基部、
544・・基部、545・・バネ係合部、546・・歯型基部上面、547・・嵌合孔、
55・・キャスター取付金具、551・・取付孔、552・・底部、554・・両側板、
555・・端軸受部、556・・ワイヤー取付孔、557・・ボルト、
56・・リンクアーム、561・・回転軸、562・・アーム、
563・・係止部、564・・横溝、565・・縦溝、
566・・アーム、567・・ピン長孔、568・・ピン、
6・・操作伝達機構、61・・操作ワイヤーケーブル、
611,616,631,636・・末端部(タイコ)、612,632・・インナーワイヤー、
613,633・・被覆部(アウターワイヤー)、614,615,634,635・・取付固定部、
62・・ワイヤー分岐盤、621・・蓋、6211・・案内溝、6212・・固定凸部、
622・・スライダー、6221,6222・・嵌合部、6223・・山部、
623,624・・側板、
63・・分岐ワイヤーケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部に繋がる1本の操作ワイヤーケーブルが、複数の分岐ワイヤーケーブルに分岐して該ワイヤーケーブルの移動体の各々の車輪ブレーキ機構に接続するものにおいて、前記操作ワイヤーケーブルと前記分岐ワイヤーケーブルの中間には両ケーブルの端末部に接続するワイヤー分岐機構を設け、該ワイヤー分岐機構は操作ワイヤーケーブルと分岐ワイヤーケーブルとのアウターワイヤーの末端部を固定する固定部と該固定部内にインナーワイヤーの末端部を嵌合して移動可能にする分岐部材とが設けられ、該分岐部材は前記操作ワイヤーケーブルのインナーワイヤーによる進退移動を前記各分岐ワイヤーケーブルのインナーワイヤーによる進退移動として複数に分岐伝達し、該分岐部材には各インナーワイヤーが互いに平行に移動させる平行移動手段を設けたことを特徴とする車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置。
【請求項2】
前記の分岐するワイヤーケーブルは、移動体の底部の全車輪に設けられた車輪ブレーキ機構に対応する4本の分岐該ワイヤーケーブルであることを特徴とする請求項1に記載の車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置。
【請求項3】
前記ワイヤー分岐機構の平行移動手段の分岐部材(スライダー)は、前記固定部の内側面で前記分岐部材の外側部を案内するとともに、該分岐部材の上下面とこれに対応する固定部には、移動方向に凸筋とこれに対応する凹溝の前記進退移動方向に平行に移動する案内手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置。
【請求項4】
前記分岐機構の分岐部材であるスライダーは扁平形状であって、前記複数の分岐ワイヤーケーブルのワイヤー端末部を並列に固定する取付固定部を設け、移動体の底面に配置される複数箇所の車輪ブレーキ機構に連結することを特徴とする請求項1乃至3に記載の車輪ブレーキ機構に用いるワイヤーケーブル分岐装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−143290(P2010−143290A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320254(P2008−320254)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(500302404)トーヨーベンディング株式会社 (25)
【Fターム(参考)】