説明

軌道走行可能な作業車両

【課題】前または後部に作業機を昇降可能とする作業機装着装置を有し、鉄道用レールに沿って走行できる作業車両を、手動でも移動できるように構成する。
【解決手段】本機の前後左右両側にレール走行用ガイド輪4F・4F、4R・4Rを備え、該ガイド輪4F・4F、4R・4Rを前後左右のアーム29F・29F、29R・29Rで支持し、該アーム29F・29F、29R・29Rを昇降回動可能とした作業車両1であって、該前後のアーム29F・29F、29R・29R間に手動式ジャッキ72を取り付け可能に構成し、該ジャッキ72を作動させてアーム29F・29F、29R・29Rを下方へ回動することにより本機を持ち上げ可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道(鉄道用レール)上を走行可能な多目的作業車両に関し、より詳細にはエンジントラブル等によって鉄道用レール上で動かなくなった作業車両を、迅速に移動できるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クローラ式走行装置を有するバックホーが鉄道用レール上を走行して作業することは行われており、鉄道用レールに沿って走行できるように、走行装置のトラックフレームより前方及び後方にアームを突出し、該アームの先端の左右両側に鉄道用レール案内用のガイド輪を回転自在に取り付けて、該アームは油圧シリンダ等により昇降可能に構成していた(特許文献1、特許文献2参照)。そして、鉄道用レール上を走行するときにはアームを下降させてガイド輪を鉄道用レール上に沿わせるように載置し、鉄道用レール以外の路上等を走行する場合にはアームを上昇させて、ガイド輪を鉄道用レールから離すようにしていた。
【0003】
【特許文献1】特開2003−63223号公報
【特許文献2】特開昭63−47401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、クローラ式のバックホーの基本構成をそのままにして、鉄道用レール上を走行できるように、ガイド輪を設ける場合には、ブレードを外してその代わりにガイド輪を取り付ける構成としていたが、機体を上昇させるには油圧シリンダを作動させる必要があるため、燃料系や電気系等のトラブルでエンジンが停止してしまうと、機体を持ち上げることができず、機体を移動できなくなる。
【0005】
もし、鉄道用のレール上で上記のように機体を移動できないような場合には、電車の運行に支障をきたすことになるので、大混乱を引き起こすことになってしまう。
【0006】
そこで本発明は、前または後部に作業機を昇降可能とする作業機装着装置を有し、鉄道用レールに沿って走行できる作業車両を、手動でも移動できるように構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、本機の前後左右両側にレール走行用ガイド輪を備え、該ガイド輪を前後左右のアームで支持し、該アームを昇降回動可能とした作業車両であって、該前後のアーム間に手動式ジャッキを取り付け可能に構成し、該ジャッキを作動させてアームを下方へ回動することにより本機を持ち上げ可能に構成したものである。
【0009】
請求項2においては、前記左右のアームの回動支点となる枢軸を中央軸と左右の外軸とにより構成し、該中央軸と外軸を着脱可能な連結部材を介して連結するとともに、前後の中央軸間に昇降用アクチュエータを連結するための第一昇降リンクをそれぞれ中央軸より突設し、前後の外軸間に手動式ジャッキを取り付けるための第二昇降リンクをそれぞれ外軸より突設したものである。
【0010】
請求項3においては、前記アームの先端に、ガイド輪の回転をロックするためのロック機構を設けたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、前または後部に作業機を昇降可能とする作業機装着装置を有し、鉄道用レールに沿って走行できる作業車両を、コンパクトなジャッキを取り付けるだけで、ガイドローラのみで支持される構成に簡単に組替えることができる。すなわち、手動でも移動可能な作業車両を、部品点数を増やさずに簡単に構成することができる。
【0013】
請求項2においては、中央軸と外軸の固定を解除することで、外軸の回転は、中央軸に固定したガイド輪昇降機構の影響を受けなくなる。よって、外軸に固定したアームは、ガイド輪昇降機構に関係なく、回動することができるようになる。
【0014】
請求項3においては、ガイド輪をロックすることで、作業者の意図に反して作業車両が勝手に移動してしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係る作業車両の全体的な構成を示した側面図、図2は同じく平面図、図3はフレームの構成を示す平面図、図4はガイド輪の昇降機構を示す側面図、図5はガイド輪のアームと昇降リンクの長さを示す側面図、図6は枢軸の支持構成を示す平面図、図7は同じく斜視図、図8はガイド輪とその支持部材を示す平面断面図、図9はガイド輪昇降機構を示す平面図である。図10は手動で移動できるように組替えた作業車両を示す側面図、図11は手動で移動できるように組替えた作業車両を示す平面図、図12はジャッキを取り付けた状態を示す側面図、図13は車体の持ち上がりを示す側面図、図14はジャッキを取り付けた状態を示す平面図、図15は手動用ハンドルを取り付けた状態を示す平面図、図16はガイド輪ロック機構を取り付けた状態を示す平面断面図、図17はガイド輪のホイルを示す図である。
【0016】
本発明の実施例の軌道走行可能な作業車両1は、作業機として除雪装置2を備えるもので、クローラ式走行装置3・3と、軌道(以下鉄道用レール)41走行用のガイド輪4F・4F、4R・4R等を具備する。
【0017】
まず、図1、図2を用いて軌道走行可能な作業車両1の全体構成について説明する。
クローラ式走行装置3上に機体フレーム5を載置し、機体フレーム5より前方に前部作業機装着装置50を介して作業機として除雪装置2を装着し、機体フレーム5より後方に後部作業機装着装置60を配置して作業機を装着可能としている。なお、作業機は除雪機やモア等であり限定するものではない。
前記機体フレーム5上において、前部上に運転部6を配置し、前後中央上部に座席7を配置し、機体フレーム5後部上に原動機となるエンジンを載置してボンネット8で覆っている。エンジンからの動力はトランスミッションを介してクローラ式走行装置3の駆動輪10と、機体フレーム5より前方に突出するフロントPTO軸22と、機体フレーム5より後方へ突出するリアPTO軸23に伝える構成としている。
【0018】
機体のフレーム構成について説明する。
図1、図3に示すように、機体フレーム5は、トラックフレーム11・11、前部横フレーム48F、後部横フレーム48R、前部支持フレーム44・44、前部サイドフレーム45・45、前後支持フレーム46・46、後部支持フレーム47と、ガードフレーム17等により構成される。
前部横フレーム48Fと後部横フレーム48Rは、前後方向に配置された左右一対のトラックフレーム11・11の間に、それぞれ前後に所定間隔を開けて左右方向に横架して固設されている。前部支持フレーム44・44は、前部横フレーム48Fの左右中央部より左右所定間隔を開けて前方へ平行に延出し、該前部支持フレーム44・44の前部外側面と前記トラックフレーム11・11の前部内側面との間に前部サイドフレーム45・45を後外方向へ広がるように斜めに横設して支持している。前後支持フレーム46・46は、前部横フレーム48Fと後部横フレーム48Rとの間に、左右方向に間隔を空けて前後方向に横架して固設している。後部支持フレーム47は、後部横フレーム48Rの上左右中央上面より立設している。
【0019】
そして、ガードフレーム17は平面視略U字状に構成して、前部横フレーム48Fより前上方に立ち上げた前部支持体15と、後部支持フレーム47の上部に立設したガードフレーム17の上部より後上方に立ち上げた後部支持体16とによりガードフレーム17を固設している。
【0020】
運転部6はステアリングハンドル20や座席7や各操作レバー等を配置しており、前記ガードフレーム17の前部上に配置される。前記ガードフレーム17の前部には床部18が張設され、該床部18の前部にステアリングコラム19を立設し、該ステアリングコラム19の上端部にステアリングハンドル20を取付け、該ステアリングハンドル20の後方位置に座席7を配置している。該座席7の側部に主変速レバーや副変速レバーや作業機操作レバー等を配置している。また、ステアリングコラム19の側部上に前部作業機となる除雪装置2の操作部51が配置されている。
【0021】
前記前部支持フレーム44・44の前部間に図示しないミッションケースが支持され、該ミッションケースから前方にフロントPTO軸22を突出している。また、前部支持フレーム44・44より前ロアリンク52・52を突出し、該前ロアリンク52・52の前端に除雪装置2の取付部を支持している。また、ガードフレーム17の前端左右中央にブラケット53を立設して、該ブラケット53にアクチュエータとして油圧シリンダからなる昇降シリンダ54の基部側を枢支し、該昇降シリンダ54のピストンロッド先端を前記除雪装置2の取付部に枢支し、該昇降シリンダ54の伸縮により作業機を昇降可能に装着可能としている。前記フロントPTO軸22にユニバーサルジョイントや伝動軸等を介して除雪装置2の入力軸に動力を伝達し、ブロワや掻込オーガ等を駆動する構成としている。
【0022】
また、前記ミッションケースより後方に伝動ケースや伝動軸が延設されて、後部支持フレーム47に支持した伝動ケースから後方にリアPTO軸23が突出され、該リアPTO軸23より後方に、後部作業機装着装置60を介して連結する作業機に動力を伝達可能としている。該後部作業機装着装置60はロアリンク61やリフトアーム62やリフトロッド63等よりなり、リフトアーム62の先端とロアリンク61の前後中途部の間にリフトロッド63を枢結し、該ロアリンク61の後端と、後部支持フレーム47の後部に固設したトップリンクブラケット64に連結した図示しないトップリンクとに作業機を連結可能としている。そして、図示しない油圧シリンダによりリフトアーム62を回動することにより作業機を昇降可能としている。
【0023】
クローラ式走行装置3は、駆動輪10と、前後方向に配設されるトラックフレーム11と、該トラックフレーム11に取り付けられる従動輪12、13と転輪21・21・・・と、履帯14等よりなり、トラックフレーム11の前端に従動輪12を回転自在に支持し、後端に従動輪13を回転自在に支持している。該従動輪12、13の間に転輪21・21・・・とを回転自在に配置している。そして、この従動輪12、13と転輪21・21・・・と駆動輪10とに履帯14を巻回している。
【0024】
次に、ガイド輪4F・4F、4R・4Rの支持構造について説明する。
図1乃至図4に示すように、機体より前方、かつ、前部作業機より後方、つまり、クローラ式走行装置3と除雪装置2の間に左右の前ガイド輪4F・4Fを配置している。また、機体より後方、かつ、後部作業機より前方、つまり、クローラ式走行装置3と後部作業機の間に左右の後ガイド輪4R・4Rを配置している。そして、該ガイド輪4F・4F、4R・4Rはそれぞれアーム29F・29F、29R・29Rの先端に回転自在に支持し、クローラ式走行装置3の前後左右に配置している。
【0025】
即ち、前記ガイド輪4F・4F、4R・4Rは略同じ構成として、円環状の接地部の側面に縁部を形成して、円環部の外周が鉄道用レール41上を接地し、縁部が機体内側に配置されて鉄道用レール41の上側部に当接して脱輪しないようにガイドする構成としている。ガイド輪4F・4F、4R・4Rの中心には軸孔を設けて車軸40F・40F、40R・40Rを挿入して固設している。該ガイド輪4F・4F、4R・4Rの円環部の左右中心は前記従動輪12・13と転輪21の左右中心に略一致させて配置している。該車軸40F・40F、40R・40Rはアーム29F・29F、29R・29Rの先端に左右水平方向内側に回転自在に支持されている。該アーム29Fの先端(前端)は前記車軸40Fを支持してガイド輪4Fを回転自在に支持し、基端(後端)は枢軸27Fの外側端部に固設されている。アーム29Rの先端(後端)には前記車軸40R・40Rを支持し、基端(前端)は枢軸27Rの外側端に固設されている。なお、前記アーム29Fとアーム29Rは同じ長さとしている。よって前後左右のガイド輪4F・4F、4R・4Rは同じ構成で支持される。
【0026】
枢軸27F、27Rは、側面視においてクローラ式走行装置3の内側に配置されており、トラックフレーム11・11下側に支持部材43F・43F、43R・43Rを介して回転自在に支持されている。即ち、トラックフレーム11の下面であって、前部サイドフレーム45の後部取付位置の後部で前部横フレーム48Fの下方に支持部材43Fが固定され、転輪21と転輪21の間の上方に支持部材43Fを配置して枢軸27Fを回転自在に支持している。また、トラックフレーム11の下面であって、後部横フレーム48Rの前下方で転輪21と転輪21の間の上方に支持部材43Rを固定し、枢軸27Rを回転自在に支持している。このように、枢軸27F、27Rを剛性の高い横フレーム48F、48Rに近づけて配置することにより枢軸27F、27Rの変形が小さく、回転をスムースに行え、左右のトラックフレーム11・11間に横架することで、左右両側のガイド輪4F・4F(4R・4R)を同時に昇降することができる。そして、前後の枢軸27F、27Rの前後方向の間隔は油圧シリンダを配置できる程度離して配置することで、後述する昇降リンク36F、36Rを直接駆動することができ、複雑なリンク機構が不要となり、油圧シリンダも一つで済むため、コスト低減化も図れる。
【0027】
前記支持部材43F・43F、43R・43Rの取付構成を詳述すると、図3、図6、図7に示すように、トラックフレーム11の下面にはプレート状のブラケット42F・42F、42R・42Rが固設され、該ブラケット42Fの四隅にはボルト孔が開口されている。図6、図7に示す支持部材43Fは取付プレート43Faと支持パイプ43Fbからなり、取付プレート43Faは正面視略逆コ字状に折り曲げて下側を開放し、上面に前記ボルト孔に位置を合わせてボルト孔を開口しボルト33・33・33・33でブラケット42Fを固定している。該取付プレート43Faの下面には支持パイプ43Fbを左右方向に横設し、該支持パイプ43Fbに枢軸27Fを挿入して支持する構成としている。支持部材43Rも同じ構成で、ブラケット42Rに固定され、枢軸27Rを支持している。
【0028】
前記枢軸27F、27Rは左右水平方向に配置して、両端はクローラ式走行装置3の左右両外端よりも更に外側方に延設し、該枢軸27F、27Rの両端から前方または後方にアーム29F・29F、29R・29Rを突設している。アーム29F、29Rの先端にはボス29Fa、29Raを設けて、図8に示すように、車軸40F、40Rを軸受を介して回転自在に支持している。ガイド輪4F、4Rの車軸40F、40Rは、アーム29F、29R先端より機体側に突出しており、枢軸27F(27R)とアーム29F(29R)とガイド輪車軸40F(40R)とで、略コの字型のフレームを形成している。但し、前記車軸40F(40R)はアーム29F(29R)先端に横設して、車軸40F(40R)に軸受を介してガイド輪4F(4R)を回転自在に支持する構成とすることもできる。
【0029】
このようにして、アーム29F・29F、29R・29Rはクローラ式走行装置3の外側に配置され、つまり、前側のアーム29Fは前側の従動輪12の外側方に位置し、後側のアーム29Rは後側の従動輪13よりも外側方に配置され、クローラ式走行装置3・3の前後中央、つまり、履帯14の内側から前後外側へ回り込んで配設されるアーム29F・29F、29R・29Rによりガイド輪4F・4F、4R・4Rを支持する構成としている。但し、トラックフレーム11の前又は後に駆動輪が位置する場合も同様の構成とすることができる。
【0030】
このように構成することにより、アーム29F・29F及び前部作業機装着装置50は互いに干渉することがなく昇降することができ、また、アーム29R・29R及び後部作業機装着装置60は互いに干渉することがなく昇降することができ、前部作業機装着装置50及び後部作業機装着装置60は取り外す必要もなく、ガイド輪4F・4F、4R・4Rを取り付けることができ、設計変更の必要もない。また、アーム29F・29F、29R・29Rの基部はトラックフレーム11の下部に取り付けられるため、重心を低くでき安定した走行が可能となり、また、機体が左右揺動した場合などでは、高い位置でアーム29F・29F、29R・29Rの基部を支持するよりも鉄道用レールに対する横方向のずれを抑えることができる。
【0031】
そして、前方の枢軸27Fと後方の枢軸27Rの間にガイド輪4F・4F、4R・4Rを昇降させるための昇降機構31を配置し、該枢軸27F、27Rを支持するトラックフレーム11の外側方にはアーム29F、29Rの最上昇位置を設定するためのストッパ32F、32Rが突設されている。
【0032】
該ガイド輪の4F・4F、4R・4Rの昇降機構31について説明する。
図3、図4に示すように、ガイド輪4F・4F、4R・4Rの昇降機構31は、アクチュエータとなる油圧シリンダ38と、第一の昇降リンク36F・36F、36R・36Rとで構成しており、昇降機構31は側面視で履帯14の内側に配置するとともに、前後の枢軸27F、27R間の上方に配置している。そして、平面視において、昇降機構31は左右一側のトラックフレーム11近傍に配置している。
【0033】
このように、昇降機構31は側面視で前後の枢軸27F、27R間に後述するようにリンク等を介して連動連結して配置することで、昇降アクチュエータとなる油圧シリンダ38は小型化することができ、昇降機構31を小さくしてコンパクトに配置することができ、油圧シリンダ38を上部に配置することで、泥等の跳ね上がりをできるだけ避けることができる。
【0034】
また、左右一側に寄せて油圧シリンダ38を配置することによりメンテナンスがし易くなり、左右中央の車高を低くすることがない。また、昇降駆動機構が一つで前後のガイド輪を昇降できるため、部品点数を少なくし、配管も短くすることができ、コスト低減化を図ることができる。
【0035】
前記昇降リンク36F・36Fが固設される枢軸27Fは、図6、図8、図14に示すように、筒状に構成して機体左右中央のトラックフレーム11間に配置する中央軸27Faと、シャフト状に構成して中央軸27Faの左右両側に配置する外軸27Fb・27Fbとで構成している。該中央軸27Faに外軸27Fb・27Fbが回転自在に挿入されて、着脱可能な連結部材として連結ボルト70・70により両者は固定されている。つまり、該中央軸27Faの両側と前記外軸27Fb・27Fbの機体左右中央側にはそれぞれ位置を合わせてボルト孔が開口され、両者を連結ボルト70・70で固定して、一本の枢軸27Fを構成している。後側の枢軸27Rも同様に構成している。中央軸27Fa、27Raの両端部は、取付プレートの支持パイプ43Fb、43Rbに当接している。前記第一の昇降リンク36F・36F、36R・36Rは、中央軸27Fa、27Rbに固設して、前後中央上方側へ突出している。
【0036】
前記昇降リンク36F・36F、36R・36Rは、図4、図9に示すように、略「く」字型に形成され、前方の枢軸の中央軸27Fbに昇降リンク36Fの基部が固設され、該昇降リンク36Fは斜め後上方に延設して先端部に油圧シリンダ38のピストンロッド38a先端を枢支している。後方の枢軸の中央軸27Raには昇降リンク36Rの基部が固設され、該昇降リンク36Rは斜め上方に延設して油圧シリンダのボトム側を枢支している。このように、昇降リンク36F、36Rを枢軸27F、27Rから前後中央斜め上方に延設してから上方に延設する構成として、油圧シリンダ38が略水平を向くように配設することで、該油圧シリンダ38が伸縮するときでも略前後水平方向に姿勢が維持できるようになり、一方の昇降リンク等に偏った荷重がかかることを防止している。但し、ピストンロッド38aは昇降リンク36Rに取り付けてもよい。
【0037】
また、前記前ガイド輪4Fの昇降と後ガイド輪4Rの昇降開始時期に時差を設けている。つまり、図4、図5に示すように、前後の昇降リンク36F、36Rのアーム長は、一方が他方より長く構成している。本実施例では、前方の昇降リンク36Fの長さをL1は、後方の昇降リンク36Rの長さL2より長く(L1>L2)構成している。そして、アーム29F、29Rは同じ長さL3であり、ガイド輪4F、4Rも同じ大きさで同じ重さとしている。
また、図4、図6に示すように、棒状に構成したストッパ32F、32Rがトラックフレーム11の側面より外側方に平行に突設されており、該ストッパ32F、32Rは前記アーム29F、29Rと当接するように突出長さが設定されている。前側のストッパ32Fは前記枢軸27Fの斜め前上方に配置し、後側のストッパ32Rは枢軸27Rの斜め後上方に配置し、アーム29F、29Rを上昇回動させて、その上面がストッパ32F、32Rに当たり停止した位置では、ガイド輪4F、4Rの下端が本体の最低地上高と同等程度まで上昇できるようにしている。こうして、ガイド輪4F、4Rを上昇させて路上等を走行するときに邪魔にならないようにしている。
【0038】
このような構成において、ガイド輪4F、4Rを下降させた状態から持ち上げる場合、油圧シリンダ38を縮小させると、前ガイド輪4Fと後ガイド輪4Rは同じ重さでアーム29F、29Rは同じ長さであり、昇降リンク36Fは昇降リンク36Rよりも長いため、持ち上げ力が小さい前側のガイド輪4Fから上昇する。つまり、油圧シリンダ38の縮小により昇降リンク36Fは図4において枢軸27Fを中心に時計回りに回転する。そして、アーム29Fがストッパ32Fに当接すると上昇は停止し、油圧シリンダ38は更に縮小して、後方の昇降リンク36Rは枢軸27Rを中心に反時計回りに回転し、アーム29Rがガイド輪4Rとともに上昇し、アーム29Rがストッパ32Rに当接すると、上昇回転は停止される。こうしてガイド輪4F、4Rは上昇位置に維持される。
【0039】
逆に、ガイド輪4F、4Rを下降させる場合、油圧シリンダ38を縮小させるとアームとガイド輪の自重により下降し、前記と逆の動作で、操作力の大きい後側のアーム29Rから下降回転する。そして、後側のガイド輪4Rが鉄道用レール上面に到達すると、前側のアーム29Fが下降回転し始め、ガイド輪4Fが鉄道用レールに到達して油圧シリンダ38の伸長が停止される。
但し、前後の昇降リンク36F、36Rの長さを前記と逆に前側を短くすることで、油圧シリンダ38を縮小すると、後側のガイド輪4Rから上昇させることができ、油圧シリンダ38を伸長すると、前側のガイド輪4Fから下降させることができる。
【0040】
また、一つの油圧シリンダ38で前後のガイド輪の昇降に時差を持たせるために、アーム29F、29Rの長さを変更することも可能である。つまり、昇降リンク36F、36Rは同じ長さとし、ガイド輪4F、4Rを同じに構成して、前側アーム29Fを後側アーム29Rより短くし、前側から上昇させて、後側から下降させるように構成することもできる。また、昇降リンク36F、36Rは同じ長さとし、後側アーム29Rまたは後側のガイド輪4Rを前側アーム29Fまたは前側のガイド輪4Fよりも重くすることにより、前側から上昇させて、後側から下降させるように構成することもできる。この場合、アームまたはガイド輪自体の重量を変更してもよく、または、ウエイトを取り付ける構成であってもよい。
【0041】
このように構成することにより、路上走行から鉄道用レールに沿って走行するような場合、機体を鉄道用レールに沿うように機体の前後方向を鉄道用レールの方向と平行にして、鉄道用レール上にクローラ走行装置3を位置させる。そして、ガイド輪4F、4Rを下降して鉄道用レールに沿わせるが、前後のガイド輪4F、4Rを同時に下降させると、同時に縁部が鉄道用レールの内側に嵌めることは大変難しい。そこで、機体を鉄道用レールに沿わせた状態として、前述の如く後側のガイド輪4Rを下降させて前側のガイド輪4Fは上昇させた位置で停止することで、機体が鉄道用レールに対して多少ずれていても、鉄道用レールに沿うように走行することで後側のガイド輪4Rを鉄道用レールに沿わせることができる。この状態から更に前側のガイド輪4Fを下降させる。このとき、ガイド輪4Fと鉄道用レールの位置が多少ずれていても、操向操作して容易に補正して前後のガイド輪4F、4Rを鉄道用レールに沿わせることができるのである。
【0042】
なお、本実施例においては、昇降アクチュエータは油圧シリンダを用いているが、電動シリンダを用いることも可能である。この場合昇降制御を簡単に行うことができ、配管が不要となるため、周囲を簡素化できる。また、油圧シリンダの伸縮によって、該油圧シリンダに連結した昇降リンクを回動して前後のアームを昇降回動するように構成しているが、前後の昇降リンクをロッドで連結して、モータ等により昇降リンクを回動してガイド4F・4F、4R・4Rを昇降させるように構成することもできる。また、前後の枢軸上にそれぞれ歯車を固設し、それぞれの歯車に噛合するように歯車を設けて、該歯車をモータ等で回動してガイド輪4F・4F、4R・4Rを昇降するように構成することもできる。また、昇降リンクをワイヤを介して巻上機と連結して、巻上機の回動によりガイド4F・4F、4R・4Rを昇降するように構成することもできる。
【0043】
次に、作業車両1が、エンジントラブル等によりレール上で停止してしまった場合のような非常時に、作業車両1を手動で移動できるようにするための構成について、図10乃至図17を用いて説明する。
【0044】
まず、車体を持ち上げるための構成について説明する。なお、前後左右対称に配置されるため前部左側について説明する。
図12、図14に示すように、外軸27Fb(27Rb)の支持パイプ43Fb(43Rb)より外側に露出した部分に第二の昇降リンク82F(82R)が上方に突設され、前後の昇降リンク82F・82R間に手動式のジャッキ72を取り付けて、該ジャッキ72を伸長させることで、昇降リンク82F・82Rを前後外側へ回動して、アーム29F、29Rを下降回動させ、ガイド輪4F・4Rを接地させて機体を持ち上げるようにしている。
但し、前記外軸27Fbは中央軸27Fa、昇降リンク36F・36Fを介して油圧シリンダ38と連結しているため、そのままでは上昇できないが、前述のように、外軸27Fbと中央軸27Faの間は連結ボルト70で連結固定しているので、非常時には、該連結ボルト70を外すことで、外軸27Fbは回動自在とすることができる。
なお、本実施例においては、中央軸27Fa(27Ra)と外軸27Fb(27Rb)とをボルト70で連結する構成としたが、中央軸と外軸との連結は、連結が解除できるものであれば良く、ボルトに限定せず、ピンやロック部材等を用いることもできる。
また、前記ジャッキ72は、本実施例ではパンダグラフ式としているが、ラック式やネジ式や油圧式等を用いることも可能であり限定するものではない。
【0045】
次に、パンタグラフ式のジャッキ72を用いた実施例について説明する。
ジャッキ72は、左右の第一のアーム73・73と左右の第二のアーム74・74と、該第一のアーム73・73を枢支するコの字型のブラケット75と、第二のアーム74・74を枢支するコの字型のブラケット76と、第一のアーム73と第二のアーム74の枢支部材78・79間に配置するねじ軸77とで構成されている。該一方の枢支部材79にねじ軸77の一端側が回動自在に支持され、他方の枢支部材78にはねじ軸77の先端側が螺合し、該他方のねじ軸77の端部は、機体外部に突出させて、ねじ軸77の先端にブラケット80を固定し、該ブラケット80にジャッキハンドル81を支持している。
【0046】
前記ジャッキ72のコの字型ブラケット75・76からはそれぞれ挟持プレート84・84、85・85が突設され、該挟持プレート84・84、85・85にそれぞれ第二の昇降リンク82F、82Rを挟んで枢支ピン86・86を貫入し、ジャッキ72に対して回動自在に枢支する。
このような構成において、ジャッキハンドル81を回転させて、枢支部材78・79が近づくように移動させると、コの字型ブラケット75・76間の間隔は広がり、第二の昇降リンク82F・82Rが前後外側に回動されて、アーム29F・29Rが下方に回動されて、ガイド輪4F・4Rが接地した状態からクローラ式走行装置3を持ち上げるのである。但し、昇降リンクを下方に突設して、前後の昇降リンクを引き付けて本機を上昇させるように構成することもできる。また、ジャッキの持ち上げ力が大きい場合には、一つのジャッキで持ち上げるように構成することもできる。
【0047】
前記パンダグラフ式ジャッキ72は、作業車両1の左右両側に取り付け、左右のクローラ式走行装置3・3を同じ高さまで持ち上げる。
このように、ガイド輪4F・4F・4R・4Rはアクチュエータとなる油圧シリンダ38を伸長させてアームを下降回動してリールに接地させることで、レールにガイドされて走行できるようにし、非常時においては、連結ボルト70・70を外して油圧シリンダ38による昇降作動を絶って、ジャッキ72によりアーム29・29を更に下方に回動させて本機を持ち上げることができる。こうして、コンパクトなジャッキ72を取り付けるだけで、容易に車体を持ち上げられ、ガイド輪4F・4F、4R・4Rのみで車体を支持させる状態を保持することができるのである。
【0048】
次に、ガイド輪ロック機構と手動操作用ハンドルについて説明する。なお、ガイド輪ロック機構は4輪のうち少なくとも左右両側の2輪に配置されればよい。また、左右対称に設けられるので左右一側について説明する。
図10、図15に示すように、前記トップリンクブラケット64に手動操作用ハンドル87が着脱自在に設けられている。該手動操作用ハンドル87は非常時に取り付けるもので、通常は機体の任意位置に収納しておく。該手動操作用ハンドル87は、平面視略U字状にベース部87aを形成し、該ベース部87aの開放側を閉じるように把持部87bを左右水平方向に固設している。該開放側と逆側に、左右中央から前下方に基部87cが延設され、該基部87c先端に取付プレート88・88を固設し、該取付プレート88・88をトップリンクブラケットの間に挿入してボルト等により着脱可能に取り付けている。
【0049】
一方、前記アーム29の先端近傍、本実施例では、後方のガイド輪4R・4R近傍には、ガイド輪ロック機構90を取り付けて、前記手動操作用ハンドル87の把持部87bに設けた操作手段により、ロック・解除操作可能に構成している。
ガイド輪ロック機構90は、前記車軸40Rに固定したロックホイル92と、ボス29Raに左右摺動可能に取り付けたロックピン91からなり、該ロックピン91はワイヤ28を介して操作手段と接続される。
【0050】
即ち、図16に示すように、ガイド輪4Rの機体内側の車軸40R上にロックホイル92が固設され、該ロックホイル92の同一半径上には所定角度ごとにピン孔93・93・・・が開口されて、ロックピン91を挿入可能に設けている。該ロックピン91は平面視コの字型のブラケット94に左右摺動自在に支持され、該ブラケット94内のロックピン91外周上には圧縮バネ95が外嵌されて、該ロックピン91をロックホイル92側へ付勢する構成としている。こうして、通常はロックピン91はピン孔93に嵌入するようにして、ガイド輪4Rが回転しないようにロックしている。
また、前記ブラケット94は、アーム29R先端のボス29Raに固設した取付ブラケット96にボルト97・97で着脱可能に取り付けている。
前記ガイド輪ロック機構90を操作する操作手段として操作レバー24が、前記手動操作用ハンドル87に取り付けられている。
【0051】
このような構成において、非常時に本機を移動させようとする場合、ガイド輪ロック機構90と手動操作用ハンドル87を取り付けて、ロックピン91をピン孔93に挿入してガイド輪4R・4Rを固定した状態する。
そして、ジャッキ72・72を左右の第二の昇降リンク82F・82R間に取り付け、連結ボルト70・70・70・70を外す。この状態でジャッキハンドル81を回動して、アーム29F・29Rを下方に回動させてクローラ式走行装置3を持ち上げる。
この状態で手動操作用ハンドル87に設けたレバー24を握ると、ワイヤ28が引っ張られて、ロックピン91がバネ95の付勢力に抗してロックホイル92の孔93から抜けて、ガイド輪4R・4Rのロックが解除されてフリーとなり、手動操作用ハンドル87を持って押すことにより、ガイド輪4F・4F、4R・4Rにより所望の方向に移動可能となるのである。レバー24を離すことで、圧縮バネ95がロックピン91を押してピン孔93内に入り、ロックピン91はもとの位置に戻され、ガイド輪4Rは再びロックされる。
【0052】
すなわち、ガイド輪ロック機構90は、レバー24を握っているとき以外はガイド輪4Rをロックした状態に保ち、レバー24を握っているときにのみ、ガイド輪4Rのロック状態を解除するものである。こうして作業者が手動操作用ハンドル87を握っている時以外は動かすことができず、誤って傾斜地等で自重により自然移動することを防止している。
【0053】
なお、本実施例においては、手動で移動させる時に手動用ハンドル87とガイド輪ロック機構90を取り付ける構成としたが、手動用ハンドル87とガイド輪ロック機構90は、走行車両によって走行させる時から取り付けておいてもよい。そうした場合には、ガイド輪ロック機構90のロックピン91は、ガイド輪4Rから抜けた状態に固定しておく。また、本実施例においては、後方のガイド輪4R・4Rにガイド輪ロック機構を設ける構成としたが、ガイド輪ロック機構の取り付け位置は後方のガイド輪4R・4Rに限定せず、前方のガイド輪4F・4Fに取り付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例に係る作業車両の全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】フレームの構成を示す平面図。
【図4】ガイド輪の昇降機構を示す側面図。
【図5】ガイド輪のアームと昇降リンクの長さを示す側面図。
【図6】枢軸の支持構成を示す平面図。
【図7】同じく斜視図。
【図8】ガイド輪とその支持部材を示す平面断面図。
【図9】ガイド輪昇降機構を示す平面図。
【図10】手動で移動できるように組替えた作業車両を示す側面図。
【図11】手動で移動できるように組替えた作業車両を示す平面図。
【図12】ジャッキを取り付けた状態を示す側面図。
【図13】車体の持ち上がりを示す側面図。
【図14】ジャッキを取り付けた状態を示す平面図。
【図15】手動用ハンドルを取り付けた状態を示す平面図。
【図16】ガイド輪ロック機構を取り付けた状態を示す平面断面図。
【図17】ガイド輪のホイルを示す図。
【符号の説明】
【0055】
1 作業車両
3 クローラ式走行装置
4F ガイド輪
4R ガイド輪
11 トラックフレーム
27F 枢軸
27Fa 中央軸
27Fb 外軸
27R 枢軸
27Ra 中央軸
27Rb 外軸
29F アーム
29R アーム
31 昇降機構
36F 昇降リンク
36R 昇降リンク
70 連結ボルト
72 ジャッキ
82F 第二の昇降リンク
82R 第二の昇降リンク
90 ガイド輪ロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本機の前後左右両側にレール走行用ガイド輪を備え、該ガイド輪を前後左右のアームで支持し、該アームを昇降回動可能とした作業車両であって、該前後のアーム間に手動式ジャッキを取り付け可能に構成し、該ジャッキを作動させてアームを下方へ回動することにより本機を持ち上げ可能に構成したことを特徴とする軌道走行可能な作業車両。
【請求項2】
前記左右のアームの回動支点となる枢軸を中央軸と左右の外軸とにより構成し、該中央軸と外軸を着脱可能な連結部材を介して連結するとともに、前後の中央軸間に昇降用アクチュエータを連結するための第一昇降リンクをそれぞれ中央軸より突設し、前後の外軸間に手動式ジャッキを取り付けるための第二昇降リンクをそれぞれ外軸より突設したことを特徴とする請求項1記載の軌道走行可能な作業車両。
【請求項3】
前記アームの先端に、ガイド輪の回転をロックするためのロック機構を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の軌道走行可能な作業車両。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−8239(P2007−8239A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189046(P2005−189046)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】