説明

軸材の接合方法及び軸材の接合管理システム

【課題】第1の軸材の軸線と平行な基線を設定し、該基線を基準にして、第2の軸材を第1の軸材と接合するに際して、第1の軸材と第2の軸材との相対的な位置や角度を適正化したうえで、両者を接合する。
【解決手段】鋼管1の芯線4に沿って基線12を設定し、該基線12を基準にして、建て込み済みの鋼管1と新たな鋼管1とを位置合わせして接合する鋼管1の接合方法であって、基線12を設定する基線設定工程と、基線設定工程において設定された後の基線12の変動量を検出する変動量検出工程と、変動量検出工程において検出された基線12の変動量に応じて、基線12を補正する基線補正工程と、基線補正工程において補正された基線12を基準にして、建て込み済みの鋼管1と新たな鋼管2とを位置合わせして接合する接合工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱や梁等の軸材同士を接合する方法及び管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
躯体工事では、鉄骨、プレキャストコンクリート等の柱を高い鉛直度をもって設置することが要求される。このため、柱の設置は、その鉛直度をトランシットやトータルステーションによって測定しながら行われる(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−275044号公報
【特許文献2】特開平9−268553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、先に建て込んだ柱に新たな柱を接合する工事において、トランシットやトータルステーションの使用が困難あるいは不適な場合がある。詳細は後述するが、このような場合、カメラ等の光学機器を用いて、接合する柱の芯線と平行な基線を設定し、先に建て込んだ柱の基線を基準にして、建て込み済みの柱と新たな柱とを位置合わせして接合する方法が考えられる。
【0005】
この方法では、建て込み済みの柱が撓んだり、あるいは、基線を設定した後に光学機器がずれたりした場合に、建て込み済みの柱の基線の位置や角度が、設定時の位置や角度に対してずれてしまう。この場合、建て込み済みの柱に対する新たな柱の相対的な位置や角度を適正化できない状態で、両者を接合することになる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、柱や梁等の第1の軸材の軸線に沿って基線を設定し、該基線を基準にして、第1の軸材と柱や梁等の第2の軸材とを位置合わせして接合するに際して、第1の軸材と第2の軸材との相対的な位置や角度を適正化したうえで、両者を接合することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る軸材の接合方法は、第1の軸材の芯線に沿って基線を設定し、該基線を基準にして、前記第1の軸材と第2の軸材とを位置合わせして接合する軸材接合方法であって、前記基線を設定する基線設定工程と、前記基線設定工程において設定された後の前記基線の変動量を検出する変動量検出工程と、前記変動量検出工程において検出された前記変動量に応じて、前記基線を補正する基線補正工程と、前記基線補正工程において補正された前記基線を基準にして、前記第1の軸材と前記第2の軸材とを位置合わせして接合する接合工程と、を備える。
【0008】
上記軸材の接合方法において、前記変動量検出工程は、前記基線を所定の投影面に投影した投影点と前記所定の投影面上の所定の基準点との距離を測定する測定工程と、前記測定工程において測定された前記投影点と前記所定の基準点との距離に基づいて前記変動量を算出する算出工程とを備えてもよい。また、前記基線補正工程において、前記算出工程において算出された前記変動量が減少するように、前記基線を補正してもよい。
【0009】
上記軸材の接合方法において、前記所定の基準点は、前記投影点の設計上の位置に設定されていてもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る軸材の接合管理システムは、第1の軸材の芯線に沿って基線を設定し、該基線を基準にして、前記第1の軸材と第2の軸材とを位置合わせして接合するための軸材接合管理システムであって、前記第1の軸材の芯線に沿った直線上に配される一対の位置指標と、前記第1の軸材に設置され、前記一対の位置指標の一方を撮像する第1の撮像部と、前記第1の軸材に設置され、前記一対の位置指標の他方を撮像する第2の撮像部と、前記第1の撮像手段及び前記第2の撮像手段によって撮影された画像に基づいて、前記一対の位置指標の位置を算出し、算出した前記一対の位置指標の位置に基づいて、前記基線を設定する基線設定部と、前記基線設定手段によって前記基線が設定された後に前記第1の撮像手段及び前記第2の撮像手段によって撮影された画像に基づいて、前記一対の位置指標の位置を算出し、算出した前記一対の位置指標の位置に基づいて、前記基線設定手段によって設定された後の前記基線の変動量を検出する変動量検出部と、前記変動量検出手段によって検出された前記変動量に応じて、前記基線設定手段によって設定された前記基線を補正する基線補正部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、柱や梁等の第1の軸材の軸線に沿って基線を設定し、該基線を基準にして、第1の軸材と柱や梁等の第2の軸材とを位置合わせして接合するに際して、第1の軸材と第2の軸材との相対的な位置や角度を適正化したうえで、両者を接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る鋼管の接合方法を実施している状態を示す斜視図である。
【図2】基線を設定している状態を示す斜視図である。
【図3】建て込み済みの鋼管と新たな鋼管との相対的な位置及び角度を調整している状態を示す斜視図である。
【図4】建て込み済みの鋼管と新たな鋼管との相対的な位置及び角度を調整している状態を示す斜視図である。
【図5】建て込み済みの鋼管と新たな鋼管との相対的な位置及び角度を調整している状態を示す斜視図である。
【図6】解析用コンピュータの表示画面を示す図である。
【図7】建て込み済みの鋼管に新たに鋼管を連結した状態を示す斜視図である。
【図8】基線が設定後にずれた状態を示す斜視図である。
【図9】基線の補正方法を説明するためのフローチャートである。
【図10】フロントターゲットを投影台上に設置している状態を示す斜視図である。
【図11】フロントターゲットを投影台上で移動させている状態を示す斜視図である。
【図12】基線を補正する工程を説明するための図である。
【図13】基線を補正する工程を説明するための図である。
【図14】解析用コンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【図15】他の実施形態に係る鋼管の接合方法を実施している状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る鋼管1の接合方法を実施している状態を示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態では、塔状構造物を構築するに際して、鋼管1をその芯線4の方向に直線的に連続するように接合することにより、柱を構築する。また、複数本(本実施形態では4本)の鋼管1を、鉛直軸回りに所定間隔おきに配置して連結用鋼管3で連結することにより構造体2を構築する。そして、構造体2をクレーンで吊り下げた状態で、各鋼管1の下端に新たに鋼管1を接合し、接合した複数本の鋼管1を連結用鋼管3で連結して構造体2を構築する。以降、建て込み済みの最下段の構造体2の複数本の鋼管1と複数本の新たな鋼管1とを接合する工程と、複数本の新たな鋼管1を連結用鋼管3により連結する工程とを繰返す。
【0014】
ここで、本実施形態では、カメラユニット30、フロントターゲット40F、バックターゲット40R等を備える接合管理システム10を用いて、建て込み済みの構造体2の鋼管1の芯線4に対して平行な基線12と、新たに接合する鋼管1の芯線4に対して平行な基線14とを設定し、原則的には、基線14が基線12の延長線上に位置するように調整したうえで、建て込み済みの鋼管1の下端に新たな鋼管1の上端を接合する。
【0015】
図2は、基線12、14を設定している状態を示す斜視図である。この図に示すように、接合管理システム10は、基線12、14の設定に用いられる一対のレーザー鉛直器20U、21U及び一対のレーザー鉛直器20L、21Lと、鋼管1の上端に着脱される墨出し用のテンプレート22U、及び鋼管1の下端に着脱される墨出し用のテンプレート22Lとを備える。
【0016】
テンプレート22U、22Lは、鋼管1の上端又は下端に取付けられる円板部22Aと、円板部22Aから外径方向へ延びる延設部22Bとを備える。円板部22Aは、その中心点が鋼管1の芯線4上に位置し、芯線4回りの角度位置が規定の位置となるように、鋼管1の上端又は下端に取付ける。また、延設部22Bには一対の小孔22C、22Dが形成されている。一対の小孔22C、22Dは、それぞれ円板22Aの中心点から所定距離の地点に配されている。ここで、上下の延設部22Bの芯線4回りの角度位置は一致しており、これにより、上下の小孔22C及び上下の小孔22Dは、それぞれ、芯線4と平行な直線上に位置する。
【0017】
レーザー鉛直器20U、20L、21U、21Lは、取付け面に対して鉛直な方向へレーザーLを照射する視準器であり、レーザー照射方向を微調整できるように構成されている。一対のレーザー鉛直器20U、21Uは、上側の延設部22Bの上側に下方へレーザーが照射されるように設置し、一対のレーザー鉛直器20L、21Lは、下側の延設部22Bの下側に上方へレーザーが照射されるように設置する。また、レーザー鉛直器20U、20Lのレーザー照射方向を、上下の小孔22Cを通過するように微調整し、レーザー鉛直器21U、21Lのレーザー照射方向を、上下の小孔22Dを通過するように微調整する。
【0018】
ここで、レーザー鉛直器20Uから下方へ照射されるレーザーLと、レーザー鉛直器20Lから上方へ照射されるレーザーLとは、同一直線上を通過するところ、このレーザーLが通過する直線を基線12、14に設定する。また、レーザー鉛直器21Uから下方へ照射されるレーザーLと、レーザー鉛直器21Lから上方へ照射されるレーザーLとは、同一直線上を通過するところ、このレーザーLが通過する直線を基線12、14に設定する。即ち、一対の基線12と一対の基線14とを設定する。
【0019】
図3〜図5は、建て込み済みの鋼管1と新たな鋼管1との相対的な位置及び角度を調整している状態を示す斜視図である。これらの図に示すように、接合管理システム10は、カメラユニット30と、フロントターゲット40Fと、バックターゲット40Rと、解析用コンピュータ50とを備える。カメラユニット30は、ユニット本体31と、CCDやCMOS等の撮像素子で前方の被写体を撮像する前方撮像部32Fと、CDやCMOS等の撮像素子で後方の被写体を撮像する後方撮像部32Rと、前方撮像部32Fに隣設された一対の円状の反射鏡34F、35Fと、後方撮像部34Rに隣設された一対の円状の反射鏡34R、35Rとを備える。
【0020】
ユニット本体31は、鋼管1に磁力等により着脱可能に取付けられる。ユニット本体31の一方側(図中下側)には、前方撮像部32Fと一対の反射鏡34F、35Fが設けられ、ユニット本体31の他方側(図中上側)には、後方撮像部32Rと一対の反射鏡34R、35Rが設けられる。
【0021】
前方撮像部32Fと後方撮像部32Rとは、表裏対称に配されており、前方撮像部32Fの光軸は、後方撮像部32Rの光軸の延長線上で前方(図中下方)に延びている。また、前方撮像部32Fは、一対の反射鏡34F、35Fの間に配され、後方撮像部32Rは、一対の反射鏡34R、35Rの間に配されている。また、反射鏡34Fと反射鏡34Rとは、表裏対称に配され、反射鏡35Fと反射鏡35Rとは、表裏対称に配されている。
【0022】
フロントターゲット40Fは、長方形の板部42と、板部42に並べて設けられた一対の円状の反射鏡44F、45Fとを備える。また、バックターゲット40Rは、長方形の板部42と、板部42に並べて設けられた一対の円状の反射鏡44R、45Rとを備える。反射鏡44Fと反射鏡45Fとの中心点間の距離、反射鏡44Rと反射鏡45Rとの中心点間の距離、反射鏡34Fと反射鏡35Fとの中心点間の距離、及び反射鏡34Rと反射鏡35Rとの中心点間の距離は、同一に設定されている。
【0023】
図3に示すように、当該工程では、まず、カメラユニット30を、前方撮像部32Fが下方を向き、後方撮像部32Rが上方を向くように、建て込み済みの鋼管1の下端近傍に取り付ける。この際、該鋼管1の上端に設置したレーザー鉛直器20U、21Uから照射されたレーザーが、それぞれ反射鏡34R、35Rの中心点を照射し、該鋼管1の下端に設置したレーザー鉛直器20L、21Lから照射されたレーザーが、それぞれ反射鏡34F、35Fの中心点を照射するように、カメラユニット30の位置及び姿勢を調整する。
【0024】
次に、後方撮像部32Rにより、上側のテンプレート22Uの小孔22C、22Dを撮像して、その撮像データを解析用コンピュータ50に入力する。そして、解析用コンピュータ50により、上側の小孔22C、22Dの3次元座標を算出し、算出した3次元座標に基づいて、基線12を表す直線の式を算出する。また、前方撮像部32Fにより、下側のテンプレート22Lの小孔22C、22Dを撮像して、その撮像データを解析用コンピュータ50に入力する。そして、解析用コンピュータ50により、下側の小孔22C、22Dの3次元座標を算出し、算出した3次元座標に基づいて、基線14を表す直線の式を算出する。
【0025】
図4に示すように、次に、バックターゲット40Rを、上側のテンプレート22Uの小孔22C、22Dの直下に設置する。この際、バックターゲット40Rの反射鏡44R、45Rを、それぞれ小孔22C、22Dの直下に配置する。
【0026】
そして、後方撮像部32Rにより、バックターゲット40Rの反射鏡44R、45Rを撮像して、その撮像データを解析用コンピュータ50に入力する。そして、解析用コンピュータ50の表示画面51で確認しながら、反射鏡44R、45Rの中心点がそれぞれ基線12上に位置するように、バックターゲット40Rの位置を調整する。
【0027】
図5に示すように、次に、フロントターゲット40Fを、新たな鋼管1の下側のテンプレート22Lの小孔22C、22Dの直上に設置する。この際、フロントターゲット40Fの反射鏡44F、45Fを、それぞれ小孔22C、22Dの直上に配置する。また、新たな鋼管1の上端に設置したレーザー鉛直器20U、21Uから照射されたレーザーが、それぞれ反射鏡44F、45Fの中心点を照射するように、フロントターゲット40Fの位置及び姿勢を調整する。
【0028】
図6は、解析用コンピュータ50の表示画面51を示す図である。この図に示すように、表示画面51の中央上部には、後方撮像部32Rにより撮影された画像52Rが表示され、表示画面51の中央下部には、前方撮像部32Fにより撮られた画像52Fが表示される。ここで、画像52R、52Fの縦横の実線は、座標軸である。また、画像52Rの縦横の破線の交点は、基線12と反射鏡44Rとの交点であり、画像52Fの縦横の破線の交点は、基線14と反射鏡44Fとの交点である。
【0029】
また、表示画面51の左下部には、「誘導」と「計測」という文字が表示されているが、解析用コンピュータ50のキーボードの操作等による「誘導」モードと「計測」モードとの選択に応じて、「誘導」と「計測」という文字の色及びこれらの背景色が変化する。また、「誘導」モードが選択されると、後方撮像部32Rの画像52Rと前方撮像部32Fの画像52Fとが表示画面51に表示される。この際、画像処理により、画像52Rには、反射鏡44R、45Rとバックターゲット40Rの枠だけ抽出されて映し出され、画像52Fには、反射鏡44F、45Fとバックターゲット40Fの枠だけ抽出されて映し出される。また、「計測」モードが選択されると、基線12、14の計測が実施される。
【0030】
図7は、建て込み済みの鋼管1に新たに鋼管1を連結した状態を示す斜視図である。この図に示すように、カメラユニット30及びバックターゲット40Rを建て込み済みの鋼管1に設置した後、テンプレート22U、22Lを取り外し、建て込み済みの鋼管1の下端に新たな鋼管1の上端を連結する。この際、建て込み済みの鋼管1と新たな鋼管1とは、溶接等により接合するのではなく、これらの相対的な位置や姿勢を調整できるように連結する。
【0031】
次に、前方撮像部32Fにより、フロントターゲット40Fの反射鏡44F、45Fを撮像して、その撮像データを解析用コンピュータ50に入力する。そして、解析用コンピュータ50の表示画面51の画像52Fを確認しながら、反射鏡44Fの中心点が、基線12の延長線上に位置するように、新たな鋼管1の位置及び姿勢を調整する。
【0032】
ここで、図8は、建て込み済みの鋼管1が撓んだり、あるいは、カメラユニット30やバックターゲット40がずれたりする等して、基線12が設定後にずれた状態を示す斜視図である。このような状態では、設計上の芯線4に対して平行でない基線12に基づいて基線14を設定することになる。これにより、新たな鋼管1をその位置や姿勢が適正になるように、即ち、新たな鋼管1を、その芯線4が建て込み済みの鋼管1の設計上の芯線4の延長線上に位置するように、建て込み済みの鋼管1に接合することができなくなる。例えば、図示するように、建て込み済みの鋼管1が、下端が外側に広がるように撓んだ場合、新たな鋼管1は、下側にかけて外側に傾斜した状態で、建て込み済みの鋼管1に接合されてしまう。
【0033】
そこで、本実施形態では、建て込み済みの鋼管1に新たな鋼管1を接合する前に、設定した基線12を補正する。そして、補正した基線12に基づいて、基線14を設定し、新たな鋼管1の位置や姿勢を調整して建て込み済みの鋼管1に接合する。
【0034】
図9は、基線12の補正方法を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示すように、まず、建て込み済みの構造体2の姿勢を調整する工程を実施する(ステップ1)。ここで、構造体2の鉛直下方には、フロントターゲット40Fを設置するための投影台60(図10参照)が設置されている。この投影台60のフロントターゲット40Fを設置する上面(投影面)は水平である。
【0035】
当該工程では、構造体2の天端の位置を測定して、その測定値に基づいて、構造体2の重心線の位置や傾きを算出し、該重心線が投影台60の上面に対して垂直になるように、構造体2の姿勢を調整する。そして、構造体2の重心線と投影台60の上面との垂直度が規定範囲内になったことが確認されると(ステップ2)、フロントターゲット40Fを投影台60上に設置する工程を実施する(ステップ3)。
【0036】
図10は、フロントターゲット40Fを投影台60上に設置している状態を示す斜視図である。これらの図に示すように、当該工程では、フロントターゲット40Fを、反射鏡44F、45Fが前方撮像部32Fの撮像領域に設置する。この際、図6に示すように、解析用コンピュータ50の表示画面51の画像52Fを確認しながら、反射鏡44Fの中心点が、前方撮像部32F内の破線の交点(基線14上の点)に位置するように、フロントターゲット40Fを配置する。即ち、反射鏡44Fの中心点を基線12の延長線上に配置する。そして、解析用コンピュータ50を「計測」モードに設定し、反射鏡44Fの中心点の座標を計測する。
【0037】
ここで、図10に示すように、図中実線で示す正方形領域の頂点は、設計上の基線12を投影台60に投影した地点(設計上の投影点)である。これに対し、図中破線で示す四角形領域の頂点は、実際に設定された基線12を投影台60に投影した地点であり、この地点に、反射鏡44F、45Fの中心点を配置する。ここで、基線12の誤差が少ないほど、投影台60の上面に形成される四角形の正方性が高くなり、基線12の誤差が大きくなるほど、投影台60の上面に形成される四角形の正方性が低くなる。
【0038】
図11は、フロントターゲット40Fを投影台60上で移動させている状態(図9のフローチャートのステップ4)を示す斜視図である。この図に示すように、当該工程では、フロントターゲット40Fを、反射鏡44F、45Fの中心点が設計上の投影点に位置するように移動させる。この際、投影台60上で、各フロントターゲット40Fの位置を測量器で測量することにより、4個のフロントターゲット40Fのスパン長を実測しながら、各フロントターゲット40Fを、投影台60上に設定された設計座標に移動させる。そして、解析用コンピュータ50を「計測」モードに設定し、反射鏡44Fの中心点の座標を計測する。
【0039】
図12及び図13は、基線12を補正する工程(図9のフローチャートのステップ5)を説明するための図である。
【0040】
図12に示すように、4本の基線12の投影点A´,B´,C´,D´が、それぞれ、設計座標A,B,C,Dと一致するように、4本の基線12を補正する。なお、投影点A´に対応する1本の基線12の補正方法を例にとって説明するが、投影点B´,C´,D´に対応する3本の基線12の補正方法も同様である。
【0041】
まず、投影点A´の設計座標Aに対するずれ量dAx,dAyを求める。この際、投影点A´,B´,C´,D´を頂点とする四角形(図中実線で示す)A´B´C´D´の重心G´と、設計座標A,B,C,Dを頂点とする四角形(図中破線で示す)ABCDの重心Gとを一致させる。ただし、四角形ABCDの重心Gは、設計座標A,B,Cを頂点とする三角形ABCの重心と設計座標C,D,Aを頂点とする三角形CDAの重心とを結ぶ直線と、設計座標A,B,Dを頂点とする三角形ABDの重心と設計座標B,C,Dを頂点とする三角形BCDの重心とを結ぶ直線との交点とする。
【0042】
ここで、dAyは放射方向(y方向)のずれ量、dAxは放射方向と直交する方向(x方向)のずれ量である。ここで、dAxは、重心G(G´)と設計座標Aとを結ぶ直線GAと、投影点A´との距離である。また、dAyは、設計座標Aを通る直線GAの垂線と、投影点A´との距離である。
【0043】
次に、図13(A)、(B)に示すように、ずれ量dAx,dAyに基づいて、基線12を補正する。ここで、図中実線で示すように、基線12は、その上端の座標が後方撮像部32Rの座標系の原点(0,0)に設定される。しかし、鋼管1の撓みやカメラユニット30のずれ等が原因で、図中破線で示すように、基線12は、その上端の座標が(Xh,Yh)に移動するように変動する。
【0044】
そこで、解析用コンピュータ50において、基線12の上端の座標を(Xh,Yh)から(0,0)に補正することで、基線12を設定当初の状態に近似するように補正する。ここで、基線12の上端の補正量Xh,Yhは、下記(1)、(2)式で表される。なお、L1は、後方撮像部32Rからバックターゲット40Rの反射鏡44Rまでの距離であり、L2は、前方撮像部32Fから投影台60上のフロントターゲット40Fの反射鏡44Fまでの距離である。
Xh=dAx×(L1/L2)・・・(1)
Yh=dAy×(L1/L2)・・・(2)
【0045】
次に、新たな鋼管1の下端にフロントターゲット40Fを設置し、前方撮像部32Fにより、フロントターゲット40Fの反射鏡44F、45Fを撮像する工程(図9のフローチャートのステップ6)を実施する。フロントターゲット40Fの設定は、上述の方法(図7参照)と同様に実施する。そして、バックターゲット40Rの反射鏡44Rの中心点とフロントターゲット40Fの反射鏡44Fの中心点とのずれ量が規定範囲内であるか否かを判定し、規定範囲外であればステップ6の工程を繰り返し、規定範囲内であれば基線12の補正を終了する(図9のフローチャートのステップ7)。
【0046】
そして、基線12の補正の終了後は、4本の新たな鋼管1を、連結用鋼管3で連結することにより新たな構造体2を構築し、建て込み済みの構造体2と新たな構造体2とからなる塔状の構造物全体の形状を確認する工程を実施する。当該工程では、各鋼管1に設置されたバックターゲット40Rの反射鏡44Rとフロントターゲット40Fの反射鏡44Fとのずれ量が規定範囲内であるか否かを判定する。そして、上記ずれ量が規定範囲外であれば、新たな構造物2の鋼管1や連結用鋼管3の位置及び姿勢を調整することで、上記ずれ量が規定範囲内に収まるようにする。一方、上記ずれ量が規定範囲内であれば、建て込み済みの鋼管1と新たな鋼管1とを溶接し、新たな構造物2の鋼管1と連結用鋼管3とを溶接する。
【0047】
図14は、解析用コンピュータ50の概略構成を示すブロック図である。この図に示すように、解析用コンピュータ50は、入力部53と、中心点抽出部54と、基線設定部55と、記憶部56と、変動量検出部57と、基線補正部58とを備える。入力部53は、前方撮像部32Fと後方撮像部32Rとから出力された撮像データを入力する。
【0048】
中心点抽出部54は、上述の計測モードが選択されている場合、入力部53が入力した前方撮像部32Fの撮像データに基づいてフロントターゲット40Fの反射鏡44F、45Fの中心点の三次元座標(前方撮像部32Fを原点とする)を抽出し、入力部53が入力した後方撮像部32Rの撮像データに基づいてバックターゲット40Rの反射鏡44R、45Rの中心点の三次元座標(後方撮像部32Rを原点とする)を抽出する。そして、基線設定部55は、中心点抽出部54により抽出された反射鏡44F、45Fの中心点の3次元座標に基づいて、基線12を表す直線の式を算出し、中心点抽出部54により抽出された反射鏡44R、45Rの中心点の3次元座標に基づいて、基線14を表す直線の式を算出する。記憶部56は、基線設定部55により設定された基線12、14を表す直線の式を記憶する。
【0049】
変動量検出部57は、基線設定部55により基線12が設定された後に計測モードが選択されると、中心点抽出部54により抽出された反射鏡44Fの中心点の第1の座標と第2の座標との座標値差(dAx、dAy)を算出する。そして、変動量検出部57は、算出した座標値差(dAx、dAy)を用いて上記(1)、(2)式から、基線12の上端の座標の補正量(変動量)(Xh,Yh)を算出する。
【0050】
ここで、第1の座標は、基線設定部55により設定された基線12を投影台60上に投影した点の座標であり、第2の座標は、設計上の投影点の座標である。また、第1の座標及び第2の座標は、記憶部56に記憶され、変動量検出部57により読み出されて、上述の演算に用いられる。
【0051】
基線補正部58は、変動量検出部57により算出された基線12の上端の座標を補正し、補正された基線12の上端の座標に基づいて基線12を表す式を算出する。
【0052】
以上、本実施形態に係る鋼管1の接合方法では、鋼管1を建て込む前に設定した基線12の設定後の変動量を検出する工程と、当該工程において検出された基線12の変動量に応じて、基線12を補正する工程とを実施したうえで、補正された基線12を基準にして、建て込み済みの鋼管1と新たな鋼管1とを位置合わせして接合した。
【0053】
これにより、建て込み済みの鋼管1の設計上の芯線4に対して平行な基線12に基づいて、新たな鋼管1の基線14を設定することができる。従って、新たな鋼管1をその位置や姿勢が適正になるように、即ち、新たな鋼管1を、その芯線4が建て込み済みの鋼管1の設計上の芯線4の延長線上に位置するように調整したうえで、建て込み済みの鋼管1に接合することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る鋼管1の接合方法では、基線12の変動量を検出する工程において、基線12をその下方の投影面に投影した投影点と、該投影面上の設計上の投影点との距離を測定する工程と、当該工程において測定された実際の投影点と設計上の投影点との距離に基づいて、基線12の変動量を算出する工程とを実施した。ここで、図13に示すように、基線12の投影点と設計上の投影点との距離(dAx,dAy)から、基線12の上端の設定位置に対するずれ(Xh,Yh)を、幾何学的に求めることができる。そして、基線12を補正する工程において、上記投影点間の距離に基づいて算出した基線12のずれ(Xh,Yh)が減少するように、基線12を補正した。
【0055】
ここで、建て込み済みの構造体2の重心線あるいは建て込み済みの鋼管1の芯線を、鉛直軸に対して平行にすることは、施工上困難である。このため、建て込み済みの構造体2の重心線あるいは鋼管1の芯線4を基準として、新たな鋼管1を建て込む場合、新たな鋼管1の鉛直度を確保することは困難である。しかしながら、本実施形態に係る鋼管1の接合方法によれば、建て込み済みの鋼管1の鉛直下方の設計上の投影点を基準として、新たな鋼管1を建て込むことにより、新たな鋼管1の鉛直度を確保することができる。
【0056】
図15は、他の実施形態に係る鋼管1の接合方法を実施している状態を示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態では、塔状構造物を構築するに際して、鋼管1をその芯線4の方向に直線的に連続するように接合することにより、柱を構築する。また、複数本(本実施形態では4本)の鋼管1を、鉛直軸回りに所定間隔おきに配置して連結用鋼管3で連結することにより構造体2を構築し、各鋼管1の上端に新たに鋼管1を接合する。そして、接合した複数本の鋼管1を連結用鋼管3で連結して構造体2を構築する。以降、建て込み済みの最上段の構造体2の複数本の鋼管1と複数本の新たな鋼管1とを接合する工程と、複数本の新たな鋼管1を連結用鋼管3により連結する工程とを繰返す。
【0057】
本実施形態では、接合管理システム100を用いて、建て込み済みの構造体2の鋼管1の芯線4に対して平行な基線12と、新たに接合する鋼管1の芯線4に対して平行な基線14とを設定し、原則的には、基線14が基線12の延長線上に位置するように調整したうえで、建て込み済みの鋼管1の上端に新たな鋼管1の下端を接合する。
【0058】
ここで、本実施形態では、新たな鋼管1の上方に、透明部を有する投影台600を設置し、投影台600の透明部の上に、フロントターゲット40Fを載置する。そして、前方撮像部32Fにより、投影台60を通して、フロントターゲット40Fを撮像し、解析用コンピュータ50により、反射鏡44F、45Fの中心点の位置を抽出する。
【0059】
上述の実施形態と同様、フロントターゲット40Fを基線12の投影点に配して、その位置を検出し、その後、フロントターゲット40Fを設計上の投影点に配して、その位置を検出する。そして、実際の投影点と設計上の投影点との距離に基づいて、基線12を補正する。これにより、上述の実施形態と同様、建て込み済みの鋼管1の設計上の芯線4に対して平行な基線12に基づいて、新たな鋼管1の基線14を設定することができる。従って、新たな鋼管1をその位置や姿勢が適正になるように、即ち、新たな鋼管1を、その芯線4が建て込み済みの鋼管1の設計上の芯線4の延長線上に位置するように、建て込み済みの鋼管1に接合することができる。
【0060】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0061】
例えば、上述の各実施形態では、各構造体2を4本の鋼管1を正方形状に配して連結用鋼管3で連結することにより構築したが、鋼管1の本数や配置等は適宜変更してもよい。また、軸体として鋼管1を例に挙げたが、それに限らず、他の柱材や梁材等を接合するに際して、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 鋼管、2 構造体、3 連結用鋼管、4 芯線、10 接合管理システム、12、14 基線、20U、20L、21U、21L レーザー鉛直器、22U、22L テンプレート、22A 円板部、22B 延設部、22C、22D 小孔、30 カメラユニット、31 ユニット本体、32F 前方撮像部(第1の撮像部)、32R 後方撮像部(第2の撮像部)、34F、34R、35F、35R 反射鏡、40F フロントターゲット(位置指標)、40R バックターゲット(位置指標)、42 板部、44F、44R、45F、45R 反射鏡、50 解析用コンピュータ、51 表示画面、52R、52F 画像、53 入力部、54 中心点抽出部、55 基線設定部、56 記憶部、57 変動量検出部、58 基線補正部、60 投影台、100 接合管理システム、600 投影台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸材の芯線に沿って基線を設定し、該基線を基準にして、前記第1の軸材と第2の軸材とを位置合わせして接合する軸材の接合方法であって、
前記基線を設定する基線設定工程と、
前記基線設定工程において設定された後の前記基線の変動量を検出する変動量検出工程と、
前記変動量検出工程において検出された前記変動量に応じて、前記基線を補正する基線補正工程と、
前記基線補正工程において補正された前記基線を基準にして、前記第1の軸材と前記第2の軸材とを位置合わせして接合する接合工程と、
を備える軸材の接合方法。
【請求項2】
前記変動量検出工程は、
前記基線を所定の投影面に投影した投影点と前記所定の投影面上の所定の基準点との距離を測定する測定工程と、
前記測定工程において測定された前記投影点と前記所定の基準点との距離に基づいて前記変動量を算出する算出工程とを備え、
前記基線補正工程において、前記算出工程において算出された前記変動量が減少するように、前記基線を補正する請求項1に記載の軸材の接合方法。
【請求項3】
前記所定の基準点は、前記投影点の設計上の位置に設定されている請求項2に記載の軸材の接合方法。
【請求項4】
第1の軸材の芯線に沿って基線を設定し、該基線を基準にして、前記第1の軸材と第2の軸材とを位置合わせして接合するための軸材の接合管理システムであって、
前記第1の軸材の芯線に沿った直線上に配される一対の位置指標と、
前記第1の軸材に設置され、前記一対の位置指標の一方を撮像する第1の撮像部と、
前記第1の軸材に設置され、前記一対の位置指標の他方を撮像する第2の撮像部と、
前記第1の撮像部及び前記第2の撮像部によって撮影された画像に基づいて、前記一対の位置指標の位置を算出する位置算出部と、
前記位置算出部によって算出された前記一対の位置指標の位置に基づいて、前記基線を設定する基線設定部と、
前記基線設定部によって前記基線が設定された後に前記位置算出部によって算出された前記一対の位置指標の位置に基づいて、前記基線設定部によって設定された後の前記基線の変動量を検出する変動量検出部と、
前記変動量検出部によって検出された前記変動量に応じて、前記基線設定部によって設定された前記基線を補正する基線補正部と、
を備える軸材接合管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−102479(P2012−102479A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250024(P2010−250024)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】