説明

軽量気泡コンクリートパネル取付用定規アングルの連結構造

【課題】 一般部材を用いて建築現場において容易に加工・施工できると共に、梁の途中に配置された角柱により定規アングルが中断された部分にALCパネルの取付部がきたとしても、十分なパネル強度・施工精度を得ることができるALCパネル取付用定規アングルの連結構造および連結方法の提供。
【解決手段】 断面L字型の連結プレート11と、この連結プレート11の両端に側縁の一部が固定され、この固定部分以外の側縁が前記連結プレートの底部から突出して突出部13を形成した一対のフラットバー12とからなる平面略コ字状の連結部材10を、定規アングル8の中断部分に平行に配置すると共に、前記各フラットバー12の突出部13の底部を梁H上に溶接固定および/または前記各フラットバー12の突出部13の側縁を角柱3の表面に溶接固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁の途中に配置された角柱軽量気泡コンクリートパネル(以下、ALCパネルという。)取付用定規アングルが中断された部分の連結構造に関するものである。
さらに詳しくは、一般部材を用いて建築現場において容易に加工・施工できると共に、梁の中断部分にALCパネルの取付部位が合致しても、十分なパネル強度・施工精度を得ることができるALCパネル取付用定規アングルの連結構造および連結方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ALCパネルは、いわゆるコンクリート板に比べて多孔質であり、比重が0.45〜0.55と軽量であることから、軽量性、耐侯性および断熱性に優れており、これらの特性を生かして建築材料、例えば、建物の内外壁用パネルや屋根パネルとして広く使用されている。
【0003】
ALC壁パネルの取付構造においては、ALCパネルの層間変形追従性を有するようにロッキングの構造を採用することが多い。
その構造の一例として、アンカーが埋設されたALC壁パネルを、稲妻プレート、板状部材および自重受け部材の3つに分かれた取付部材および定規アングルを用いて梁に取付ける構造がある。
この取付構造は、アンカーの埋設位置や上層パネルと下層パネルの取付け位置にずれがあっても容易にALC壁パネルを梁に固定することが可能であるという長所を有している。
すなわち、稲妻プレートあるいは自重受け部材の相対的な取付け位置を調整したり、自重受け部材とそれを挿入される板状部材との隙間のなかで板状部材を幅方向に移動させて固定したりすることにより、パネル取付時にアンカー位置と前記3つの部材との位置合わせが容易となるのである。
【0004】
一方、建築物の梁に沿わせて垂直に角柱が配置される場合、ALC壁パネルを梁に取付けるための長尺な定規アングルが、その柱位置において角柱と干渉するため中断されて、柱を跨って1本の定規アングルを取付けることができない。
そのため、従来よりこの問題を解消するため、図6に示すように、角柱3により中断された定規アングル8の起立片8aの端部間に、連結部材としてフラットバー1を用いてその接合部5を溶接して固定し、そのフラットバー1に稲妻プレート9a、板状部材9bおよび自重受け部材9cの3つの部材からなる取付金具を用いて、ALC壁パネル6を梁4に固定していた。
【0005】
しかし、図6に示すように、フラットバー1を定規アングル8の連結部材とした場合は、ALC壁パネル6の取付け強度が低いという問題点があった。
すなわち、自重受け部材9cへのALC壁パネル6の荷重を、その直接固定されているフラットバー1が全て負担するため、フラットバー1が撓んでしまったり、またALC壁パネル6の取付け強度不足になったりしていた。
【0006】
そこで、本出願人は、このような問題を解決するために検討した結果、図7に示した平面L型取付用鋼材2を連結部材とした連結構造により、上記問題点が解決できることを見出し、先に提案した。
この平面L型取付用鋼材2は、垂直フランジ部2aと水平フランジ部2bとからなるアングル型の長尺鋼材を構成しており、水平フランジ部2bの中間部はその長さ方向に所定幅残してコ字型に切り欠かれて、幅の狭い長尺板状水平フランジ部2dと両端部に形成された矩形板状水平フランジ部2c、およびコ字型切欠き部2eが形成されている鋼材である。(特許文献1参照)
【0007】
この提案の平面L型取付用鋼材2は、図8に示したように、角柱3にそのコ字型切欠き部2eを嵌め込んだ状態で梁4の上面に固定される。
すなわち、平面L型取付用鋼材2の幅の狭い長尺板状水平フランジ部2dが角柱3のダイヤフラム3a上に載置されるとともに、矩形板状水平フランジ部2cが梁4の上面に載置され、さらにその端辺が梁4の上面に溶接固定される。
これにより平面L型取付用鋼材2は十分な強度で梁4上面に固定される。そして、平面L型取付用鋼材2にパネルの取付金具9が固定される。
その取付金具9は垂直フランジ部2aに固定される。すなわち、上層壁パネル6aをその下部に埋設されたアンカー6cとボルト等の係止部材9dを介して係止するパネル下部取付け部材9a(稲妻プレート)と、垂直フランジ部2aのパネル6側に溶接固定されて上層壁パネル6aを受ける自重受け部材9cと、一端部が下層壁パネル6bの上部に埋設されたアンカー6cとボルト等の係止部材9dによって係止し他端部が自重受け部材9cに貫通する板状部材9bとから構成されている。
この3部材(パネル下部取付け部材9a、自重受け部材9c、板状部材9b)から構成される取付金具9によりパネル6が梁4に固定されていると、パネルのアンカー位置6cと取付金具9との位置合わせが容易となり、パネル6の取付強度が十分に得られるとともにパネル6の層間変形追従性の優れたパネルの取付構造にすることができる。
【0008】
しかし、上記のALCパネルの取付構造は、一般の取付金物を使用することができず、特殊な形状の鋼材(平面L型取付用鋼材)を準備しなくてはならないという問題が残されていた。
また、コ字型切欠き部2eを形成するために溶断加工方法が必要となるため、建設現場でガス溶断機を準備し、その溶断作業に熟練の作業員や多大な手間が必要とされていた。
また、工場で予め加工された連結部材(平面L型取付用鋼材)を手配しても、現場での角柱寸法などに応じて多種寸法の金具を準備する必要があり、金物製作の費用などでコスト高となっていた。
【特許文献1】特開2000−096749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0010】
したがって、本発明の目的は、一般部材を用いて建築現場において容易に加工・施工できると共に、梁の途中に配置された角柱によって定規アングルが中断された部分にALCパネルの取付部位が合致しても、十分なパネル強度・施工精度を得ることができるALCパネル取付用定規アングルの連結構造および連結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、
梁の途中に配置された角柱によってALCパネル取付用の定規アングルが中断された部分の連結構造であって、前記角柱の幅以上の長さを有する断面L字型の連結プレートと、この連結プレートの両端に側縁の一部が固定され、この固定部分以外の側縁が前記連結プレートの底部から突出して突出部を形成した一対の平板部材とからなる平面略コ字状の連結部材を、前記定規アングルの中断部分に平行に配置すると共に、前記各平板部材の突出部の底部を前記梁上に溶接固定および/または前記各平板部材の突出部の側縁を前記角柱表面に溶接固定してなることを特徴とするALCパネル取付用定規アングルの連結構造を採用した。
【0012】
なお、ALCパネル取付用定規アングルの連結構造において、前記連結部材の連結プレート両端と前記平板部材の側縁の一部との接合部が溶接固定されていることが、好ましい条件とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下に説明するとおり、一般部材を用いて建築現場において容易に加工・施工できると共に、梁の途中に配置された角柱によって定規アングルが中断された部分にALCパネルの取付部位が合致しても、十分なパネル強度・施工精度を得ることができるALCパネル取付用定規アングルの連結構造および連結方法が提供される。
【0014】
すなわち、本発明によれば、連結部材を構成する鋼材部品を建築現場で容易に入手することができ、簡単に組み立て・取付を行うことができる。
そのため、定規アングルが中断された部分に対する連結部材の取付作業が大幅に軽減されると共に、手間・時間・材料などのトータルコストの低減を図ることができる。 さらに、連結部材を梁上に強固に固定することができるため、梁の途中に配置された角柱によって定規アングルが中断された部分にALCパネルの取付部位が合致した場合であっても、建物躯体の層間変形に対するパネル追従性を阻害することなく、定規アングルの一般部と同様に十分なパネル強度と施工精度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明で使用する連結部材の一例を示す斜視説明図、図2は同じく他の一例を示す斜視説明図、図3、図4は連結部材を定規アングルの中断部分に取付けた状態を示す斜視説明図、図5は連結部材の取付部分にさらにALCパネルを取付けた構造を示す斜視説明図である。
【0017】
図1に示したように、本発明で使用する連結部材10は、定規アングルを中断する角柱の幅以上の長さを有す断面L字型の連結プレート11と、この連結プレート11の両端に接合部14を介して側縁の一部が固定され、この固定部分以外の側縁が連結プレート11の底部から突出して突出部13を形成した一対の平板部材12とからなる平面略コ字状の取付金具であり、突出部13の底部を梁の上面に溶接固定および/または突出部13の側縁を角柱表面に溶接固定することにより、定規アングルの中断部分に取り付けられるように構成される。
【0018】
この連結部材10は、建築現場での実測寸法に基づいて、一般的な鋼材部品を使用し、連結プレート11の両端に平板部材12の側縁の一部を、好ましくは接合部14を溶接固定して接合することにより、容易に作成することができる。
【0019】
図2に示した連結部材10は、連結プレート11の両端からやや内側の部分に、平板部材12の一方の側壁と、その底部の一部を切り欠いた部分15を溶接固定した点が、図1の連結部材とは相違している。この図2の連結部材10によれば、連結部材自体の取付強度は向上するが、平板部材12の一部を切り欠く必要がある点では余分な手間を要する。
【0020】
これらの連結部材10を、梁4の途中に配置された角柱3により中断される定規アングル8の起立片8aの端部間に取り付ける。
その方法は、図3に示すように、連結部材10を、定規アングル8の中断部分に平行に配置すると共に、各平板部材12の突出部13の底部を溶接部15で梁4上に溶接固定するか、あるいは各平板部材12の突出部13の側縁を溶接部7で角柱3の表面に溶接固定することにより、容易に行うことができる。
図3の手段は寸法精度の点で勝り、図4の手段はパネルの取付強度および層間変形追従性で優れているが、場合によっては両者の手段を併用することもできる。
【0021】
なお、連結部材10を定規アングルの中断部分に取り付ける具体的手段としては、以下に述べる方法が好ましく採用される。
まず、定規アングルの中断部分に沿わせて、この中断部分よりも長さが大きい定規バーを配置すると共に、この定規バーの両端を中断部分の両端に位置する定規アングルの端部起立片にシャコ万クランプなどの固定具を用いて仮固定する。
次に、前記定規バーに沿わせて連結部材を中断部分に配置し、この状態で平板部材の突出部の底部を、梁の上面に溶接固定および/または突出部の側縁を角柱表面に溶接固定する。
【0022】
そして、固定具を取り外し、定規バーと定規アングルとの仮固定を解除することにより、連結部材の取り付けが完了する。
この方法によれば、連結部材を構成する鋼材部品を建築現場で容易に入手することができ、簡単に組み立て・取付を行うことができる。
そのため、定規アングルの中断部分に対する連結部材の取付作業が大幅に軽減されると共に、手間・時間・材料などのトータルコストの低減を図ることができるばかりか、連結部材を梁H上に強固に固定することができる。
【0023】
次に、上記定規アングルの中断部分にALCパネル6の取付部位が合致した場合の取付構造について、図5に基づいて説明する。
なお、符号は従来例と同一のものは同一符号を付した。
【0024】
図5に示したように、梁4の途中に配置された角柱3により中断される定規アングル8の起立片8aの端部間、つまり定規アングル8の中断部分において、壁パネル6の上層パネル6aおよび下層パネル6bの各1枚は、それぞれのパネル上下端部でかつ幅方向の中心部が各パネルに埋設されているアンカー6cに取付け金具9を介して梁4などの建物躯体に取り付けられて、ロッキングによるパネルの層間変形追従性を有する構造となっている。
【0025】
また、梁4の途中に配置された角柱3により中断される定規アングル8のの端部同士は、本発明の連結部材10によって連結されている。そして、この連結部材10の連結プレート11には取付け金具9が溶接固定されている。
【0026】
なお、取付け金具9は、図8で示した場合と同様に、上層パネル6aをその下部に埋設されたアンカー6cとボルトなどの係止部材9dを介して係止するL字型のパネル下部取付け部材9aと、上層パネル6aを受ける自重受け部材9cと、一端部が下層パネル6bの上部に埋設されたアンカー6cとボルトなどによって係止し、他端部が自重受け部材9cに貫通する板状部材9bとから構成されている。
【0027】
かかる構成の取付構造によれば、連結部材10を梁4上および/または角柱3表面に平板部材12を介して強固に固定することができるため、定規アングル8が中断された部分にALCパネル6の取付部位が合致した場合であっても、建物躯体の層間変形に対するパネル追従性を阻害することなく、定規アング8の一般部と同様に十分なパネル強度と施工精度を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、梁の途中に配置された角柱によりALCパネル取付用定規アングルが中断された部分の連結構造を、一般部材を用いて建築現場において容易に加工・施工できると共に、梁の中断部分にALCパネルの取付部位が合致しても、十分なパネル強度・施工精度を得ることができることから、建築分野に対して与える貢献度が極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明で使用する連結部材の一例を示す斜視説明図。
【図2】同じく他の一例を示す斜視説明図。
【図3】連結部材を定規アングルの中断部分に取付けた状態を示す斜視説明図。
【図4】連結部材を定規アングルの中断部分に取付けた状態を示す斜視説明図。
【図5】連結部材の取付部分にさらにALCパネルを取付けた構造を示す斜視説明図。
【図6】連結部材にフラットプレートを用いた従来例を示す斜視説明図。
【図7】従来の連結部材の斜視説明図。
【図8】図7の連結部材の取付部分にさらにALCパネルを取付けた構造を示す斜視説明図。
【符号の説明】
【0030】
1 フラットプレート(従来の連結部材)
2 平面L型取付用鋼材(従来の連結部材)
2a 垂直フランジ部
2b 水平フランジ部
2c 矩形状板水平フランジ部
2d 長尺状板水平フランジ部
2e コ字型切欠き部
3 角柱
4 梁
5 接合部
6 ALC壁パネル
6a 上層壁パネル
6b 下層壁パネル
6c アンカー
7 溶接部
8 定規アングル
8a 起立片
9 取付金具
9a パネル下部取付部材(稲妻プレート)
9b 板状部材
9c 自重受け部材
9d 係止部材
10 連結部材
11 連結プレート
12 平板部材
13 突出部
14 接合部
15 底部の一部を切り欠いた部分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁の途中に配置された角柱によって軽量気泡コンクリートパネル取付用の定規アングルが中断された部分の連結構造であって、前記角柱の幅以上の長さを有する断面L字型の連結プレートと、この連結プレートの両端に側縁の一部が固定され、この固定部分以外の側縁が前記連結プレートの底部から突出して突出部を形成した一対の平板部材とからなる平面略コ字状の連結部材を、前記定規アングルの中断部分に平行に配置すると共に、前記各平板部材の突出部の底部を前記梁上に溶接固定および/または前記各平板部材の突出部の側縁を前記角柱表面に溶接固定してなることを特徴とする軽量気泡コンクリートパネル取付用定規アングルの連結構造。
【請求項2】
前記連結部材の連結プレート両端と前記平板部材の側縁の一部との接合部が溶接固定されていることを特徴とする請求項1に記載の軽量気泡コンクリートパネル取付用定規アングルの連結構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−112066(P2006−112066A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298413(P2004−298413)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000185949)クリオン株式会社 (105)
【Fターム(参考)】