説明

農作業機

【課題】 この発明は、部品を変更することなく若しくは一部の部品の変更を行うのみで、苗移植作業において楽な姿勢で苗補給することができ、安全で然も作業能率が良い農作業機を提供することを目的とする。
【解決手段】 苗載台(55)と、回転するターンテーブル(41)に設けた複数の第一の供給カップ(40)を設け、該第一の供給カップ(40)より上下作動する苗植付具に苗を供給して圃場に苗を植付ける構成とし、上側が広くて下側が狭くなるロート状に内部空間が形成された第二の供給カップ(40a)の下部を、第一の供給カップ(40)内に嵌入した農作業機とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場に播種作業や苗移植作業を行う農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
圃場に苗移植作業行う場合、苗移植専用作業機を用いて行っていた。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−9025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、部品を変更することなく若しくは一部の部品の変更を行うのみで、苗移植作業において楽な姿勢で苗補給することができ、安全で然も作業能率が良い農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、苗載台(55)と、回転するターンテーブル(41)に設けた複数の第一の供給カップ(40)を設け、該第一の供給カップ(40)より上下作動する苗植付具(60’)を供給して圃場に苗を植付ける構成とし、上側が広くて下側が狭くなるロート状に内部空間が形成された第二の供給カップ(40a)の下部を、第一の供給カップ(40)内に嵌入した農作業機としたものである。
【0006】
請求項2記載の発明は、苗植付具(60’)を、上側が広くて下側が狭くなるロート状に内部空間が形成された第二の植付具(60)に交換できる構成とした請求項1に記載の農作業機としたものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、種子タンク(58)から間歇的に繰り出される種子を繰り出しと同期して間歇回転するターンテーブル(41)に設けた複数の供給カップ(40)に受け止める構成とし、種子タンク(58)を有する繰出装置(56)を機体の左右一側方に変位して配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の農作業機としたものである。
【0008】
請求項4記載の発明は、ターンテーブル(41)を機体の左右一側方の繰出装置(56)と同じ側に変位して配置したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の農作業機としたものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によると、苗の移植作業を行う場合は、第二の供給カップ40aを第一の供給カップ40内から取り除き、作業者が苗載台55に載置されている育苗トレイの苗を第一の供給カップ40に補給すると、ターンテーブル41の回転により苗が苗植付具60’に供給し、圃場に苗を植付ける。従って、非常に効率的であり、安全で然も作業能率が良い
【0010】
請求項2記載の発明によると、請求項1記載の発明の効果に加えて、苗植付具(60’)を、上側が広くて下側が狭くなるロート状に内部空間が形成された第二の植付具(60)に交換することができ、作業能率が良い。
【0011】
請求項3記載の発明によると、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、種子タンク58から間歇的に繰り出される種子を供給カップ40が受け止めて、該供給カップ40から種子が植付具60に供給されるから、植付具60が種子を圃場に適切に播種して、播種作業が行える。このように、播種作業と苗の移植作業とが同じ機械にて行える。然も、種子タンク58を有する繰出装置56が機体の左右一側方に変位して配置されているので、作業者はその変位して配置されている機体の左右一側方から容易な姿勢で種子タンク58内に種子を供給することができる。また、操縦ハンドル6が種子タンク58と同じ機体の左右一側方にずらせて設けられている場合には、作業者は作業中に畝溝を歩行しながらハンドル操作を容易に行なえるが、操縦ハンドル6と種子タンク58とが機体の同じ側に変位して配置されているので、種子の補給作業も操縦ハンドル6を操作する位置から容易に行なえて作業性が良い。
【0012】
請求項4記載の発明によると、請求項1乃至3記載の発明の効果に加えてターンテーブル41が機体の左右一側方の繰出装置56と同じ側に変位して配置されているから、機体のターンテーブル41と繰出装置56とが変位して配置されている側と反対側に作業者が歩行できる空間部Aが形成され、従って、作業者はその機体の空間部Aを歩きながら、ターンテーブル41の各苗供給カップ40に楽な姿勢で苗を供給することができ、安全で然も作業能率が良い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】歩行型播種機の側面図である。
【図2】歩行型播種機の平面図である。
【図3】走行部と植付部の連結部分の斜視図である。
【図4】種子供給装置の底面図である。
【図5】植付装置等の側面図である。
【図6】植付装置等の平面図である。
【図7】種子供給装置4の斜視図である。
【図8】目皿式種子繰出装置56の側断面図である。
【図9】目皿式種子繰出装置56の説明用分解斜視図である。
【図10】他の例を示す目皿113の平面図である。
【図11】センサ192部の斜視図である。
【図12】油圧回路図である。
【図13】野菜移植機として用いる場合の作用説明用平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図9は本発明を施した農作業機の一例としての歩行型播種機を表している。この歩行型播種機1は、走行車輪2,2,3,3を有する走行部1aによって畝Uを跨いだ状態で機体を進行させながら、種子供給装置4、植付装置5等からなる植付部1bで野菜等の種子を畝Uの上面に植付ける(種を蒔く)構成となっている。作業者は、播種作業時には、機体後方に設けた操縦ハンドル6で適宜機体を操向操作すると共に、種子供給装置4へ種子を補給する。以下、各部の構成について説明する。
【0015】
走行部1aは、走行部ミッションケース7の前側にエンジン9が配置されている。エンジン9の左側面部には該エンジンの動力で駆動する油圧ポンプ10が設けられている。また、エンジン9の上側には燃料タンク11等が設けられ、その上側をボンネット12が覆っている。走行部ミッションケース7の背面部に側面視長方形の左右に長い連結フレーム13が一体に設けられており、この連結フレームの背面右端部に走行部1aと操縦ハンドル6をつなぐメインフレーム14の前端部が固着連結されている。メインフレーム14は、植付部1bの平面視右側を通って後方に延び、途中で斜め上向きに湾曲し、そのまま植付部1bの後方位置まで延びている。そして、その後端部に操縦ハンドル6が固着して取り付けられている。
【0016】
走行部ミッションケース7の左右側面から突出する回動筒部15,15に走行伝動ケース16,16が一体に取り付けられ、その走行伝動ケースの先端部に駆動走行車輪である後輪2,2が軸支されている。また、エンジン9の下側に前後方向のピボット軸17aを中心に揺動自在に設けた前輪支持フレーム17の左右両端部に前輪支持ロッド18,18が高さ調節可能に取り付けられ、該ロッドの下端部に従動走行車輪である前輪3,3が軸支されている。
【0017】
走行部1aには機体に対し後輪2,2を上下動させて機体位置を制御する機体制御機構が設けられている。この機体制御機構は、走行部ミッションケース7の上に配置した油圧バルブユニット20から後方に向けて昇降シリンダ21が設けられ、該シリンダのピストンロッドの先端部に天秤杆22が上下方向の軸まわりに回動自在に取り付けられている。ピストンロッドは、前後両端が油圧バルブユニット20とメイフレーム14に取り付けた取付部材23とに支持されたガイド軸24に沿って摺動するようになっている。天秤杆22の左右両端部と、回動筒部15,15に固着したスイングアーム25,25とが、連結ロッド26,26を介して連結されている。左側の連結ロッド26は、ローリングシリンダ27が組み込まれており、該シリンダを伸縮作動させることにより長さを変えられるようになっている。
【0018】
昇降シリンダ21及びローリングシリンダ27は、前記油圧ポンプ10から供給される作動油を油圧バルブユニット20内の制御バルブ(図示せず)で制御して作動させられる。昇降シリンダ21を伸縮作動させると、左右の後輪2,2が同方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が昇降する。また、ローリングシリンダ27を伸縮作動させると、左右の後輪2,2が逆方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が左右に傾斜する。
【0019】
植付部1bは、前記連結フレーム13の上面に走行部ミッションケース7から伝動される植付部ミッションケース30の下部が固着され、該植付部ミッションケースの上部に第一植付伝動ケース31の基部が固着され、更に該第一植付伝動ケースの先端部に第二植付伝動ケース32の基部が固着されている。そして、第一植付伝動ケース31と第二植付伝動ケース32に後述する植付装置5の作動機構が連結されている。植付装置5の後記種子植付具60は、走行部1aよりも後側に位置している。また、植付部ミッションケース30に基部を固着した上部フレーム34に、種子植付具60の上方に位置するように種子供給装置4と後記苗載台55が取り付けられている。
【0020】
図3に示すように、植付部ミッションケース30の入力軸30aは該ケースの下端部から前方に突出しており、これを走行部ミッションケース7のPTO取出部7aに挿入することにより、該PTO取出部内の走行部側の軸に伝動連結するようになっている。また、植付部ミッションケース30は、前記連結フレーム13にボルト35…によって着脱自在に取り付けられている。このため、ボルト35…を外し、PTO取出部7aから入力軸31aを抜くことにより、走行部1aから植付部1bごと取り外せることができ、植付部1bのメンテナンスが容易に行える。
【0021】
側面視において、植付部ミッションケース30は連結フレーム13から後方上向きに設けられ、且つ第一植付伝動ケース31は植付部ミッションケース30の上端部から後方下向きに設けられ、且つ第二植付伝動ケース32は第一植付伝動ケース31の下端部から水平後方に設けられている。この構成とすることにより、機体の前後長を必要以上に長くすることなく、第二植付伝動ケース32の下側に前記天秤杆22が移動するためのスペースが確保されている。
【0022】
また、平面視において、植付部ミッションケース30は、連結フレーム13の右端部に固着されており、昇降シリンダ21と天秤杆22と右側の連結ロッド26の間に形成される機体制御機構の右側空間部を通って上方に延びている。そして、第一植付伝動ケース31は植付部ミッションケース30の左側、第二植付伝動ケース32は第一植付伝動ケース31のさらに左側に配置されている。ローリングシリンダ27が設けられていない分だけ左側空間部よりも右側空間部の方が広いので、植付部ミッションケース30を右側に配置するのが好ましいのである。また、植付部ミッションケース30、第一植付伝動ケース31及び第二植付伝動ケース32を左右に振り分けて配置することにより、左右の重量バランスが良好となる。
【0023】
種子供給装置4は、複数の供給カップ40…を円周上に等間隔で配置したターンテーブル41を備えている。このターンテーブル41は機体の左右中心よりも若干右寄りの位置に配置されている。ターンテーブル41は、前記上部フレーム34に固定された支持板42に、中心軸43を支点にして回転自在に設けられている。中心軸43にはラチェットホイール45が取り付けられ、そのラチェットホイールの歯に噛み合う方向に付勢したラチェット爪46が中心軸43に回転自在に嵌合するラチェットアーム47に取り付けられている。
【0024】
ラチェットアーム47と、後記前リンク支持アーム67Bと一体に作動する供給駆動アーム49とが供給駆動ロッド50を介して連結されており、供給駆動アーム49が揺動することにより、ターンテーブル41が植付装置5の作動と同期して供給カップ40…の取付間隔分づつ間欠的に回転する。
【0025】
各供給カップ40…の底部には開閉自在なシャッタ52…が取り付けられている。平面視で前側やや左寄りの位置が切れたC字形のシャッタ閉じ棒53が供給カップの底部に接する高さに設けられており、上記シャッタ閉じ棒53の切れた部分に相当する供給位置Pに位置する供給カップ40のシャッタ52は自重で開くが、それ以外の供給カップ40…のシャッタ52…はシャッタ閉じ棒53に規制されて閉じた状態になる。
【0026】
40a…は合成樹脂にて形成された種子供給カップであって、前記各供給カップ40…内に下部が嵌入した状態で載置されている。そして、種子供給カップ40aの内部空間は、その上側が広くて下側が狭くなるロート状に形成されており、後記播種パイプ120下端の種子繰り出し口より供給される種子をその上側の広い受け部で受けて、そのロート状部で供給カップ40の中央位置に種子を誘導し、供給カップ40が供給位置Pまで移動すると、シャッタ52が開き種子が植付装置5の種子植付具60の中央部に落下するように構成されている。
【0027】
ターンテーブル41の前側には、育苗トレイを1個づつ載せられる苗載台55が設けられている(これは、後述するように播種機を野菜苗移植機として使用する場合に、育苗され苗が各育苗ポット部に入っている育苗トレイを2つ左右方向に並べて置くことができる構成になっている)。この苗載台55は、植付部ミッションケース30の上面に基部がボルトにより固着された取付棒55aに鉄の棒材より枠体55bを構成したものを固定して構成している。
【0028】
56は目皿式種子繰出装置であって、苗載台55の後端部とメインフレーム14の後上端部との間に掛け渡して設けた支持フレーム57に固定され、ターンテーブル41の上方に位置するように設けられている。そして、繰出装置56上には種子タンク58が係止具59にて脱着可能に載置され、該種子タンク58は右側下面に落下孔58aを開口し、その下部にシャッター110を設けている。よって、シャッター110を閉じることにより、一時的に播種を停止したり、また、種子タンク58のみ取り外して搬送等もできるようにしている。
【0029】
繰出装置56は、繰出ケース111中央下部を漏斗状に構成し、その中央に繰出軸112を嵌挿し、該繰出軸112上端には目皿113がバネ座114を介装して止めネジ115にて螺止されている。そして、繰出軸112下端には、伝動軸116を固設して、該伝動軸116の下端にユニバーサルジョイント117を装着している。そのユニバーサルジョイント117の下端を前記ターンテーブル41を回転駆動する中心軸43の上端に係合させている。従って、目皿113はターンテーブル41と同期して間歇的に回転する。
【0030】
目皿113は、同心円上に種子孔113a…が一定間隔をおいて一列開口され、繰出ケース111内の目皿113上には種子孔113a…に嵌入することができなかった余分な種子を掻き出すブラシ118が配設されており、該ブラシ118は「く」の字形に構成され、繰出ケース111の前下部に開口した落下孔111a上を囲み種子タンク58底部と繰出ケース111の底部111bの間にブラシ118を配設している。ブラシ118上部は押圧部118aとして、種子タンク58下面に密着できるようにし、種子タンク58から落下してくる種子が落下孔111a側へ溢れ出ないようにすると共に、下部のブラシ118は回転時に余分な種子を掻き出し一定量の種子しか播種できないようにしている。
【0031】
尚、目皿113の種子孔113a…は、ターンテーブル41の供給カップ40と同じ8個形成されている。また、図10に示すように、目皿113は、その種子孔113a…が2個単位で8組設けられたものや、3個単位で8組設けられたものに取り替える構成になっている。即ち、1か所に2個若しくは3個播種する大根の種子等のように小さな種子(小さなコーティング種子)は、この図10に示すような目皿113に交換して播種作業を行なう。
【0032】
また、ブラシ118は繰出ケース111の側面に設けた溝部111cに嵌入され、種子タンク58を嵌め込むことにより固定され、該ブラシ118の側部には板バネ状の種子押出し体119が固定され、目皿113の種子孔113aが落下孔111a上に位置した時に種子押出し体119の先端が種子孔113aに嵌入し、種子を強制的に落下させるようにしている。落下孔111a下端には播種パイプ120が連通され、該播種パイプ120下端は前記ターンテーブル41の供給カップ40内の種子供給カップ40aの上方に臨んで設けられている。
【0033】
そして、繰出ケース111の底部111bに起毛部材121が貼設されており、起毛部材121は長繊維を毛の如く立毛させたビロード又はベルベット等の布でできており、その立毛方向は一方向を向いている為に、起毛部材121上で目皿113を回転させるときにはその回転方向に立毛方向を合わせ、抵抗が少なくなって滑り易くなるようにしている。該起毛部材121の幅は種子孔113aの直径よりも少し幅広くし、円板の一部切り欠いたC字形に構成し、起毛部材121を落下孔111a上を除く目皿113の種子孔113aの回転軌跡に沿って底部111bに貼設されている。
【0034】
従って、目皿113はターンテーブル41と同期して間歇的に回転するので、種子タンク58内の種子が目皿113により間歇的に繰出されると、その種子は順次ターンテーブル41の供給カップ40内の種子供給カップ40a内に供給され、ターンテーブル41の回転により種子の入った供給カップ40が供給位置Pまで移動すると、シャッタ52が開き種子が植付装置5の種子植付具60の中に落下する。
【0035】
植付装置5は、下端が尖ったカップ状の種子植付具60を備えている。この種子植付具60は、前側部材60aと後側部材60bとからなっており、種子植付具60の後方に位置する前側部材回動軸61Aに回動自在に支持された前側部材取付アーム62A,62Aに前側部材60aが一体に取り付けられ、種子植付具60の前方に位置する後側部材回動軸61Bに回動自在に支持された後側部材取付アーム62B,62Bに後側部材60bが一体に取り付けられている。よって、回動軸61A,61Bを支点にして両部材60a,60bが回動すると、種子植付具60の下部が開閉する。前側部材取付アーム62Aと後側部材取付アーム62Bに形成された長穴に遊嵌する連動ピン63によって、前側部材60aと後側部材60bは互いに連動して回動する。前側部材取付アーム62Aの脚部62aAと後側部材取付アーム62Bの脚部62aBとの間に、前側部材60a及び後側部材60bを閉じる側に付勢するスプリング64が張設されている。この種子植付具60は、下記の作動機構によって所定の動作を行う。
【0036】
尚、種子植付具60の前側部材60aと後側部材60bは、その内部空間が上側が広くて下側が狭くなるロート状に形成されており、その上側の広い受け部で前記供給カップ40より種子を確実に受け止めて、そのロート状部で種子植付具60の先端部中央に種子を誘導し、畝の適正位置に種子を植付けることができる。
【0037】
第二植付伝動ケース32から上方に突出する支持部33aに後リンク支持アーム67Aが回動自在に取り付けられ、その支持アームに基部が枢着された後リンク68Aの後端に前側部材回動軸61Aが連結されている。後リンク68Aの中間部には、第二植付伝動ケース32の後端部に設けた後リンク駆動アーム69Aが連結されている。また、植付部ミッションケース30に前リンク支持アーム67Bが回動自在に取り付けられ、その支持アームに基部が枢着された前リンク68Bの後端に後側部材回動軸61Bが連結されている。前リンク68Bの中間部には、第一植付伝動ケース31の後端部に設けた前リンク駆動アーム69Bが連結されている。両駆動アーム69A,69Bが駆動回転すると、後リンク68A及び前リンク68Bが基部の位置を前後に変動させつつ上下に揺動し、種子植付具60が一定姿勢のまま上下動する。
【0038】
後リンク68Aの基部には開閉アーム71が回動自在に取り付けられ、その開閉アーム71の先端部と前側部材取付アーム62Aとが開閉ロッド72で連結されている。また、後リンク68Aの中間部には後リンク駆動アーム69Aと一体に回転する開閉カム73が取り付けられている。この開閉カムのカムフォロアとしてのローラ74が開閉アーム71に設けられている。種子植付具60が下死点付近にある位置から上昇する行程で、開閉カム73がローラ74に係合するようになっている。開閉カム73がローラ74に係合すると、開閉ロッド72が引かれ、前側部材60aと後側部材60bが互いに連動して回動し、種子植付具60が開く。開閉カム73がローラ74に係合しない時は、スプリング64の張力によって種子植付具60が閉じている。
【0039】
種子植付具60が上死点にある時に、種子供給装置4により種子が落下供給される。供給された種子は、前側部材回動軸61Aと後側部材回動軸61Bに取り付けられている筒状の種子ガイド76を通って種子植付具内に導かれる。種子を保持した種子植付具60が下降し、下死点では種子植付具60の下部が畝の表土部に突き刺さり、種子移植用穴を形成する。これとほぼ同期して種子植付具60が開き、保持していた種子を上記種子移植用穴の中央に解放する。そのまま種子植付具60が上昇し、上死点付近まで上昇すると種子植付具60が閉じる。
【0040】
前記第二植付伝動ケース32は植付装置5の左側方に位置している。そして、該第二植付伝動ケース32に固着して、種子植付具60の左側方から後方にかけてを覆うカバー76が取り付けられている。これら第二植付伝動ケース32とカバー76によって、種子補給作業時に作業者が植付装置5に干渉することを防いでいる。
【0041】
種子植付位置の後方には、左右一対の鎮圧輪180が配置されている。該左右鎮圧輪180は、メインフレーム14の前後中間部に固着した支持枠186に上下に揺動自在に支持された揺動フレーム187の中途部に回転自在に装着されている。そして、該揺動フレーム187の後端部の左右中央位置より上方に向けてロッド188が延設されており、該ロッド188の上端部は、メインフレーム14の後端部に基部が固設された支持アーム189の貫通孔189aを貫通して支持されている。そして、ロッド188には錘190が貫通して設けられており、この錘190の個数を調節することにより、左右鎮圧輪180の鎮圧荷重が調節できるようになっている。尚、191はヘアピンであって、ロッド188が支持アーム189の貫通孔189aから抜けるのを防止するものである。
【0042】
この左右鎮圧輪180は、下部ほど互いの間隔が狭くなるように斜めに取り付けられ、機体の進行に伴って畝面を転動し、種子が植付けられた後の種子移植穴の周囲の土を崩落させて穴を埋め戻すと共に、その跡を軽く鎮圧するようになっている。
【0043】
192は畝上面を検出するセンサであって、該センサ192が上下回動すると、その回動をリンク機構193にて上下制御バルブ20aに伝え、センサ192の角度が元に戻る方向に昇降シリンダ21を作動させる。これにより、畝の上面から機体までの高さを一定に維持するように機体を昇降制御し、畝の高さの変更に係わらず常に種子の植付深さが一定になるように制御され、植付後の種子の成育が良い。
【0044】
また、上記センサ192はメイフレーム14に左側が軸支された回動軸194に後端部が固着され先端が前方に向けて延設されたアーム195に軸196にて回動自在に軸支されている。そして、回動軸194は植付深さ調節レバー197の基部が連繋されており、植付深さ調節レバー197を係合案内198の調節係合部に係合係止して固定状態にすると、回動軸194は回動が固定され、従って、アーム195の軸196は上下高さが固定されるので、センサ192は畝上面に摺接しながらその軸196回りに回動して、上記のように畝の高さ変更に係わらず常に種子の植付深さが一定になるように制御される。そして、植付深さ調節レバー197を係合案内198の調節係合部に対して位置調節して係合係止して固定状態にすることにより、アーム195の軸196の上下高さ位置を調節できるので、畝に対する機体高さを制御する基準位置を自由に設定できるので、種子の植付深さが調節できる。
【0045】
尚、油圧バルブユニット20内の左右傾斜制御バルブ20bは左右傾斜検出用の振り子200の動きに連動して切り替わるようになっており、機体が左右に傾斜するとローリングシリンダ27が適宜作動し、機体を左右水平に戻すように制御する。
【0046】
操縦ハンドル6は両端が後方に延びる平面視略コ字形をしており、その両端部にグリップ6a,6aが取り付けられている。旋回時や路上走行時には、作業者がグリップ6a,6aを握って操縦する。また、図に示すように、操縦ハンドル6の内側に形成される空間部に身体を入れた状態で歩きながら、種子タンク58に種子を補給することもできる。操縦ハンドル6は、種子タンク58と同じく機体の左右中心から右側にずらせて設けられているので、作業者は畝の右側の溝を歩行しながらハンドル操作や種子補給作業を行いやすい。
【0047】
グリップ6a,6aの下側にはサイドクラッチレバー100,100が設けられている。また、操縦ハンドル6の基部には操作パネル101が設けられ、該操作パネルに、種子供給装置4及び植付装置5へ伝動する植付クラッチの入・切操作と機体の昇降操作をする植付昇降レバー102、メインクラッチの入・切操作をするメインクラッチレバー103等が設けられている。
【0048】
尚、図中の符号104は種子の植付間隔を調節する株間調節レバーである。
【0049】
上記の歩行型播種機1にて豆等の種子を圃場に植付ける作業(播種作業)について説明する。
先ず、種子タンク58に豆等の種子を入れて、作業者は機体の後部で操縦ハンドル6の左右グリップ6aを握って右後輪2の後方の畝溝を歩きながら、メインクラッチレバー204を入操作して左右前輪3と左右後輪2を畝溝に沿わせて機体を進行させ、植付昇降レバー203を操作して植付クラッチを入操作し且つ機体制御機構を制御状態にして、播種作業を行なう。この時、種子タンク58内の種子は目皿113により繰り出されるが、目皿113はターンテーブル41と同期して間歇的に回転するので、種子タンク58内の種子が目皿113により間歇的に繰出されると、その種子は順次ターンテーブル41の供給カップ40内の種子供給カップ40a内に供給され、ターンテーブル41の回転により種子の入った供給カップ40が供給位置Pまで移動すると、シャッタ52が開き種子が植付装置5の種子植付具60の中に落下する。そして、種子植付具60の上側の広い受け部で確実に受け止めた種子は、そのロート状部で種子植付具60の先端部中央に誘導され、種子植付具60にて畝の適正位置に植付けられる。その後、左右一対の鎮圧輪180がその種子の左右側部を鎮圧して覆土する。
【0050】
最後に上記の歩行型播種機1を野菜苗移植機として用いて、畝に苗の移植作業を行なう場合の説明をする。
先ず、種子タンク58は空にしておき、各供給カップ40内から種子供給カップ40aを取り除いておく。また、植付装置5の種子植付具60をセル成形苗が移植できる一般的な苗植付具60’に交換しておく。そして、苗載台55に育苗され苗が各育苗ポット部に入っている育苗トレイを2つ左右方向に並べて置く。
【0051】
そして、メインクラッチレバー204を入操作して左右前輪3と左右後輪2を畝溝に沿わせて機体を進行させ、植付昇降レバー203を操作して植付クラッチを入操作し且つ機体制御機構を制御状態にして、作業者は機体の左側の空間部A(左後輪2の後方の畝溝)を歩きながら、苗載台55に載置されている育苗トレイの苗をターンテーブル41の各苗供給カップ40…に補給する。すると、ターンテーブル41の回転により苗の入った各々の苗供給カップ40が苗供給位置Pまで回転すると、シャッタ52が開き苗が植付装置5の苗植付具60’の中に落下する。そして、苗植付具60’が畝に苗を植付けた後に、左右一対の鎮圧輪180・180がその苗の左右側部を軽く鎮圧する。この時、作業者は機体の左側である空間部Aからターンテーブル41の苗供給カップ40…へ楽な姿勢で苗補給することができ、安全で然も作業能率が良い。
【0052】
尚、上記実施例においては、畝に播種又は苗を移植する作業例を示したが、平らな圃場に播種又は苗を移植する場合も同様である。また、播種作業には豆類や野菜のコーティング種子等如何なる種子を播種しても良く、苗移植作業にはキャベツや白菜等の葉菜類の苗・大根やさつま芋等の根菜類の苗・南瓜や西瓜等の果菜類の苗が挙げられるが、他に、い草や花等の如何なる苗でも良い。
【符号の説明】
【0053】
1 農作業機(歩行型播種機)
2 後輪
3 前輪
4 種子供給装置
5 植付装置
6 操縦ハンドル
40 供給カップ
40a 種子供給カップ
41 ターンテーブル
55 苗載台
58 種子タンク
60 植付具
60’ 苗植付具
80 鎮圧輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗載台(55)と、回転するターンテーブル(41)に設けた複数の第一の供給カップ(40)を設け、該第一の供給カップ(40)より上下作動する苗植付具(60’)を供給して圃場に苗を植付ける構成とし、上側が広くて下側が狭くなるロート状に内部空間が形成された第二の供給カップ(40a)の下部を、第一の供給カップ(40)内に嵌入した農作業機。
【請求項2】
苗植付具(60’)を、上側が広くて下側が狭くなるロート状に内部空間が形成された第二の植付具(60)に交換できる構成とした請求項1に記載の農作業機
【請求項3】
種子タンク(58)から間歇的に繰り出される種子を繰り出しと同期して間歇回転するターンテーブル(41)に設けた複数の供給カップ(40)に受け止める構成とし、種子タンク(58)を有する繰出装置(56)を機体の左右一側方に変位して配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の農作業機
【請求項4】
ターンテーブル(41)を機体の左右一側方の繰出装置(56)と同じ側に変位して配置したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−268476(P2009−268476A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188608(P2009−188608)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【分割の表示】特願2000−124461(P2000−124461)の分割
【原出願日】平成12年4月25日(2000.4.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】