説明

農作業機

【課題】シリンダにより作動する作動部の安全性を考慮したトラクタに装着して農作業を行う農作業機を提供することを目的とする。
【解決手段】トラクタに装着して農作業を行う農作業機において、シリンダ16の伸縮により一方の定位置と他方の定位置を移動する作動部と、シリンダ16を制御する制御部10と、負荷検出手段20とを有し、制御部10は、シリンダ16の作動中に負荷検出手段20から得られる負荷関連情報からシリンダ16に一定以上の負荷がかかったと判断した場合にシリンダ16を逆方向に作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機に関し、特に、シリンダにより作動する作動部の安全性を考慮したトラクタに装着して農作業を行う農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタに装着して農作業を行う農作業機には様々な作業や機能を実現するため作動部を有している場合が多い。そして、その作動部は、シリンダの伸縮により作動する機構も多く存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、電動シリンダにより回動する畦塗り機が記載されている。さらに、特許文献2には、電動油圧シリンダにより延長作業体を上下動させる代掻き作業機が記載されている。さらに、特許文献3には、油圧シリンダを利用した折り畳み農作業機が記載されている。
【0004】
図10は、従来の電動油圧シリンダによる代掻き作業機を示す正面図である。代掻き作業機50は、入力軸51側をトラクタに装着してカバー52内の代掻き爪を回転させて代掻き作業を行う。そして、代掻き作業機50は、上部に設けられた電動油圧シリンダ56を伸縮させると回動機構57の作用により延長作業部55がセンター作業部58に対し上下動し、延長作業部55を下ろして作業部を延長するか、延長作業部55を上げて折りたたむかを選択でき、全体の作業幅を変更できるようになっている。例えば、作業者は、代掻き作業機50の作業幅を長くしたいときは、遠隔操作用のスイッチをおすと、電動油圧シリンダ56が作動して、延長作業部55を降ろすことができる。
【0005】
電動油圧シリンダ56は、補助部56aに、モータ、ポンプ、オイルタンク等を有し、モータが回転すると、油圧を上げてタンク内の作動油を送り込み、シリンダ56bを作動させる。また、一定圧力以上にならないようにリリーフ弁が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−173586号公報
【特許文献2】特開2004−305104号公報
【特許文献3】特開平10−295103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電動油圧シリンダ56を作動させて、延長作業部55を降ろした時に、障害物201を挟むと、電動油圧シリンダ56に一定以上の力が加わり、内部の油圧が上昇し、電動油圧シリンダ56内のリリーフ弁が作用する。リリーフ弁が作用すると、電動油圧シリンダ56には、それ以上圧力が加わらなくなり、作業者は延長作業部55が途中で止まっていることに気づいてスイッチを離すと、電動油圧シリンダ56は止まる。
【0008】
このとき、電動油圧シリンダ56のリリーフ弁が作用する場合は、かなりの力がかかっており、農作業機を壊してしまう可能性がある。また、障害物201は、一定の力で挟まった状態で取り出すことができない。さらに、人の手や足が挟まると重大な事故につながるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みて、シリンダにより作動する作動部の安全性を考慮したトラクタに装着して農作業を行う農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の農作業機は、トラクタに装着して農作業を行う農作業機において、シリンダの伸縮により一方の定位置と他方の定位置を移動する作動部と、前記シリンダを制御する制御部と、負荷検出手段とを有し、前記制御部は、前記シリンダの作動中に前記負荷検出手段から得られる負荷関連情報から前記シリンダに一定以上の負荷がかかったと判断した場合に前記シリンダを逆方向に作動させることを特徴とする。
【0011】
さらに本発明の農作業機は、位置検出手段を有し、前記制御部は、前記位置検出手段から得られる位置関連情報から前記作動部が移動先の定位置に移動したと判断した場合に前記シリンダを停止させることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記シリンダを逆方向へ作動させる量は、あらかじめ定めた一定量であることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記シリンダを逆方向へ作動させる量は、前記作動部の移動始めの定位置まで戻る量であることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、当該農作業機が、代掻き作業を行う作業部を延長させる延長作業部を回動可能に設置された代掻き作業機であって、前記シリンダは、前記延長作業部を回動させるシリンダであることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、当該農作業機が、畦塗りを行う作業部の位置や角度を変更可能に設置された畦塗り機であって、前記シリンダは、前記作業部の位置や角度を変更させるシリンダであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みて、シリンダにより作動する作動部の安全性を考慮したトラクタに装着して農作業を行う農作業機を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の農作業機が有するシリンダにより作動する作動部の制御システムのブロック図である。
【図2】本発明の農作業機が有するシリンダにより作動する作動部の制御システムのフローチャートである。
【図3】本発明の農作業機が有するシリンダに適用可能な油圧回路の一例である。
【図4】本発明の農作業機の一例である代掻き作業機の第1の状態を示す正面図である。
【図5】本発明の農作業機の一例である代掻き作業機を第2の状態を示す正面図である。
【図6】本発明の農作業機の一例である代掻き作業機において制御システムが作用するときの状態を示す正面図である。
【図7】本発明の農作業機の一例である畦塗り機の状態の変化を示す平面図である。
【図8】本発明の農作業機の一例である畦塗り機において制御システムが作用するときの第1の状態を示す平面図である。
【図9】本発明の農作業機の一例である畦塗り機において制御システムが作用するときの第2の状態を示す平面図である。
【図10】従来の電動油圧シリンダによる代掻き作業機を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の農作業機が有するシリンダにより作動する作動部の制御システムのブロック図である。制御システム1は、操作部5と、記憶手段11と演算ユニット12を有する制御ユニット10と、方向制御弁15と、油圧シリンダ16と、負荷検出手段20と、位置検出手段21とを備えている。なお、油圧シリンダ16により作動する作動部の具体例については、後述する。
【0016】
操作部5は、例えば、トラクタ側に配置可能とし、作業者が操作部5のスイッチをONにすることで油圧シリンダ16による作動部を作動させる。操作部からの操作信号は、有線又は無線のどちらで送信してもよい。
【0017】
記憶手段11は、定位置に関するデータや負荷条件に関する情報を記憶しておく手段であり、例えば、フラッシュメモリやHDD等の記憶デバイスで構成され、農作業機の適した位置に設置可能である。
【0018】
演算ユニット12(演算部)は、操作部5からの操作信号、各検出手段20、21からの情報と、及び、記憶手段11に記憶させた定位置等の情報から、油圧シリンダ16に対して伸縮又は停止の指令を出す手段であり、CPU等のデバイスで構成され、農作業機の適した位置に設置可能である。
【0019】
記憶手段11と演算ユニット12は、制御ユニット10(制御部)としてコンパクトな構成とすることができる。
【0020】
油圧シリンダ16は、油圧を利用して作動するシリンダである。油圧シリンダ16は、油圧ホースなどを接続して油圧回路を構成してもよく、また、従来例で示したようにポンプやタンク、モータと一体型の電動油圧シリンダであってもよい。
【0021】
方向制御弁15は、演算ユニット12からの指令をもとに油圧シリンダ16を伸縮又は停止させるための弁である。方向制御弁15は、油圧回路内に設置でき、直接、方向制御弁15を制御することができる。また、例えば、電動油圧シリンダの場合等では、方向制御弁15は、ポンプを動かすモータの回転方向により連動させて切り換える弁とすることができ、モータ等の回転方向を制御して方向制御弁15の切換を行ってもよい。
【0022】
負荷検出手段20は、負荷関連情報を検出し、演算ユニット12へ送る。そして、演算ユニット12では、一定以上の負荷であるか否かを判定する。具体例は後述する。
【0023】
位置検出手段21は、位置関連情報を検出し、演算ユニット12へ送る。そして、演算ユニット12では、定位置であるか否かを判定する。具体例は後述する。
【0024】
図2は、本発明の農作業機が有するシリンダにより作動する作動部の制御システムのフローチャートである。図2は、シリンダを伸ばす方向に作動させる場合について説明している。
【0025】
作業者は、油圧シリンダ16を有する作動部を作動させるため、操作部5の所定のスイッチを押す。すると、操作部5からの操作情報を受け取った演算ユニット12は油圧シリンダ16に対して伸び指令をだし、油圧シリンダ16が伸びる(S101)。このとき、負荷検出手段20は、演算ユニット12に負荷関連情報を送って、この負荷関連情報に基づき演算ユニット12が作動部に一定以上の負荷(異常負荷)がかかっているか否かを判定する(S102)。
【0026】
S102で異常負荷と判定した場合は、演算ユニット12は油圧シリンダ16に縮み指令を出し、油圧シリンダ16を縮ませる(S103)。そして、演算ユニット12は指定の縮み量か否かを判定し(S105)、指定の縮み量に達しない場合は引き続き油圧シリンダ16を縮ませ、指定縮み量に達した場合は油圧シリンダ16の縮みを停止させる(S107)。
【0027】
指定縮み量は、例えば、作動部を一定量戻す縮み量とすることができる。この場合は、例えば、人の手や障害物により負荷を検出した場合は、一定量戻すことで、引っかかりをなくし手や障害物を取り除くことができる。さらに、操作部5のスイッチを押すなどして再作動させる場合は、縮み量が少ないため無駄な時間を短縮できる。この一定量は、記憶手段11に記憶させておけばよい。
【0028】
また、指定縮み量は、例えば、作動部が移動し始めた定位置まで戻す縮み量としてもよい。この場合の制御としては、位置検出手段21により、移動し始めの定位置を検知するまで戻すようにすることができる。
【0029】
S102で異常負荷でないと判定した場合は、次に、演算ユニット12は位置検出手段21から送られる位置関連情報をもとに、油圧シリンダ16による作動部が移動先の定位置か否かを判定する(S104)。定位置と判定した場合は、演算ユニット12から油圧シリンダ16へ停止命令を出し、油圧シリンダ16を停止させる(S106)。一方、定位置でない場合は、シリンダの伸び指令により引き続き油圧シリンダ16を作動させる(S101)。定位置の情報は、記憶手段11に記憶させておけばよい。
【0030】
上記は、シリンダを伸ばす方向に作動させる場合について説明したが、シリンダが縮む方向の場合は、伸びと縮みを逆にして同様の制御を行える。このようにすることで、シリンダが作動しているときに途中で負荷を感じた場合は、油圧シリンダ16を逆方向に指定量だけ作動させる。一方、作動部が移動先の定位置まで移動した場合は、油圧シリンダ16を停止させる。このため、定位置で油圧シリンダ16が逆方向に作動することはない。
【0031】
図3は、本発明の農作業機が有するシリンダに適用可能な油圧回路の一例である。油圧タンク33内の作動油は、油圧ポンプ32により油圧回路30へ送られる。そして、方向制御弁15を切り換えることで、油圧シリンダ16を伸ばす方向に動かすか、縮む方向に動かすか、停止させるかを選択することができる。また、リリーフ弁31は、油圧回路30内の圧力が一定以上にならないように設定され、回路の破損を防止する。さらに、圧力スイッチ22は、油圧回路30内の圧力が一定以上でONとなるスイッチである。圧力スイッチ22が作用する圧力は、油圧シリンダ16の通常の作動に必要な圧力より高く、リリーフ弁31が作用する圧力よりも低く設定される。
【0032】
以下に、負荷検出手段20と位置検出手段21の具体例を述べる。なお、これらの具体例を併用して使用して精度を上げることもできる。
【0033】
〈負荷検出手段20の第1の具体例〉
負荷検出手段20の第1の具体例は、負荷検出手段20が、ポテンショメータの場合である。ポテンショメータは、移動により変化する可変抵抗の電圧を測定する等して現在の位置や角度が分かるようになっている。このポテンショメータを作動部などに設置し、ポテンショメータからの情報を負荷関連情報として得る。そして、演算ユニット12では、この情報から、時間当たりの位置の変化を算出し、演算ユニット12が指令している油圧シリンダ16の通常の作動による位置の変化の値と比較する。そして、これらの差が一定以上の場合は、油圧シリンダ16に負荷がかかっているとして異常負荷と判定する(S102)。
【0034】
〈負荷検出手段20の第2の具体例〉
負荷検出手段20の第2の具体例は、負荷検出手段20が、圧力スイッチの場合である。圧力スイッチは、図3でも説明したように油圧回路30内の圧力が一定以上でスイッチが入る。すなわち油圧シリンダ16に一定以上の負荷がかかった場合、油圧回路30の圧力が上昇し圧力スイッチがONとなる。この圧力スイッチからの情報を負荷関連情報として得る。そして、演算ユニット12では、圧力スイッチがONとなっている場合は、油圧シリンダ16に負荷がかかっているとして異常負荷と判定する(S102)。
【0035】
〈負荷検出手段20の第3の具体例〉
負荷検出手段20の第3の具体例は、負荷検出手段20が、ストロークセンサの場合である。ストロークセンサは、ストローク量を測定できるセンサであり、このストロークセンサを油圧シリンダ16や油圧シリンダ16により作動する部分に設置し、このストロークセンサからの情報を負荷関連情報として得る。そして、演算ユニット12では、この情報から、時間当たりの位置の変化を算出し、演算ユニット12が指令している油圧シリンダ16の通常の作動による位置の変化の値と比較する。そして、これらの差が一定以上の場合は、油圧シリンダ16に負荷がかかっているとして異常負荷と判定する(S102)。
【0036】
〈負荷検出手段20の第4の具体例〉
負荷検出手段20の第4の具体例は、負荷検出手段20が、電流検出手段の場合である。電流検出手段は、油圧シリンダ16を動かすためのポンプを作動させるモータに流れる電流値を測定する。そして、この電流検出手段からの情報を負荷関連情報として得る。油圧シリンダ16に負荷がかかるとモータにも負荷がかかりモータを構成する回路に過電流が流れる。そのため、演算ユニット12では、電流検出手段からの電流値が一定以上の場合、油圧シリンダ16に負荷がかかっているとして異常負荷と判定する(S102)。この電流検出手段は、油圧ポンプをモータで作動させる場合に利用でき、例えば、電動油圧シリンダ56で採用可能である。
【0037】
〈位置検出手段21の第1の具体例〉
位置検出手段21の第1の具体例は、位置検出手段21が、ポテンショメータの場合である。このポテンショメータを作動部などに設置し、このポテンショメータからの情報を位置関連情報として得る。そして、演算ユニット12では、この情報と、記憶手段11に記憶してある定位置の情報を比較し、作動部が定位置(の範囲内)であるか否かを判断する(S104)。なお、このポテンショメータは、〈負荷検出手段20の第1の具体例〉のポテンショメータと供用することができ、コストを抑えることができる。
【0038】
〈位置検出手段21の第2の具体例〉
位置検出手段21の第2の具体例は、位置検出手段21が、リミットスイッチの場合である。リミットスイッチは、スイッチがONになるとその情報が演算ユニット12に伝達される。このリミットスイッチを作動部の各定位置でONとなるように設置し、リミットスイッチからの情報を位置関連情報として得る。そして、演算ユニット12では、リミットスイッチがONとなった場合、作動部が定位置(の範囲内)であると判断する(S104)。
【0039】
〈位置検出手段21の第3の具体例〉
位置検出手段21の第3の具体例は、位置検出手段21が、ストロークセンサの場合である。このストロークセンサを油圧シリンダ16や作動部に設置し、このストロークセンサからの情報を位置関連情報として得る。そして、演算ユニット12では、この情報と、記憶手段11に記憶してある定位置の情報を比較し、作動部が定位置(の範囲内)であるか否かを判断する(S104)。なお、このストロークセンサは、〈負荷検出手段20の第3の具体例〉のストロークセンサと供用することができ、コストを抑えることができる。
【0040】
以下に、上記の制御システムを具体的な各農作業機に適用する場合の例について述べる。
【0041】
〈代掻き作業機に適用する場合〉
図4〜図6は、本発明の農作業機の一例である代掻き作業機の各状態を示す正面図である。図4〜図6の代掻き作業機は、図10で説明した従来の代掻き作業機50と同様に、両端に、延長作業部55を有し、電動油圧シリンダ56を作動させると、回動機構57を介して延長作業部55が上下動し、延長作業部55(作動部)を延長するか折りたたむかを選択でき、全体の作業幅を変更できるようになっている。以下、上記の制御システムを代掻き作業機に適用する場合について説明し、図10で説明した従来の代掻き作業機50と異なる点について説明する。
【0042】
図4と図5は、リミットスイッチ25の取り付け例を示している。リミットスイッチ25は、センター作業部58の両端と、両側の回動機構57内に取り付けられており、図4の延長作業部55を上側に上げて折りたたんだ状態では、回動機構57内のリミットスイッチ25a、25bがONとなり、演算ユニット12が一方の定位置であると判断する。一方、図5の右側のように、延長作業部55を下ろして、延長させた状態では、センター作業部58右側のリミットスイッチ25cがONとなり、演算ユニット12は延長作業部55が他方の定位置であると判断する。
【0043】
図6は、本発明の農作業機の一例である代掻き作業機において制御システムが作用するときの状態を示す正面図である。上側に折りたたんだ状態から電動油圧シリンダ56を縮めると、回動機構57が作用して、延長作業部55は下に回動し延長する状態へ変化する。このとき、障害物201により延長作業部55が途中で動かなくなり、電動油圧シリンダ56に負荷がかかったと演算ユニット12が判断すると、電動油圧シリンダ56を逆方向すなわち、伸ばす方向に作用させる。このとき戻す量は、例えば、延長作業部55を図6中の二点鎖線ぐらいまで戻すことで、障害物201を取り除け、作業機自体の破損を防止できる。
【0044】
図6には、リミットスイッチ25以外に、圧力スイッチ22と、ポテンショメータ23の取り付け例も示されている。圧力スイッチ22は、電動油圧シリンダ56内部に設置でき、ポテンショメータ23は、回動機構57の回動部に設置し角度を検出することができる。これらは、上述した、負荷検出手段20や位置検出手段21となり得る。なお、図6は、取り付け例であり、同時にすべての取り付けが必要という訳ではない
【0045】
〈畦塗り機に適用する場合〉
以下、上記の制御システムを畦塗り機に適用する場合について説明する。
【0046】
図7は、本発明の農作業機の一例である畦塗り機の状態の変化を示す平面図である。畦塗り機70は、装着部71をトラクタ後部に装着して、作業部78で畦塗り作業を行う。装着部71と作業部78の間は、中間フレーム72により接続されている。中間フレーム72の両側に位置する、回動支点72a、72bにより、装着部71と作業部78がそれぞれ水平方向に回動可能に支持されている。作業部78は、爪などを有する耕耘部76で旧畦の土をかき出し、ディスクを回転させるなどして整畦部77で畦形状に仕上げる。また、上面削り部75を付設させて旧畦の上面を削り強固な畦を形成してもよい。
【0047】
図7(a)は、前進作業時の図である。トラクタは、図の上側に位置しトラクタを前進させながらトラクタ幅より外側に位置する作業部78で横側に畦を形成していく。
【0048】
図7(b)は、格納時の図である。第1シリンダ80は、装着部71(の支点80a)と中間フレーム72(の支点80b)の間に装着され、図7(a)の状態から、第1シリンダ80を縮ませると中間フレーム72が回動支点72aを中心に左側へ回動する。すると作業部78も同時に移動し、作業部78はトラクタの幅方向の中心付近まで移動させることで図7(b)の格納時の状態となる。
【0049】
図7(c)は、バック作業時の図である。第2シリンダ81は、中間フレーム72(の支点81a)と作業部78(の支点81b)の間に装着され、図7(b)の状態から第2シリンダ81を伸ばすと中間フレーム72が回動支点72bを中心に左側へ回動する。すると作業部78の向きが前進作業時の図7(a)とは逆になる。これにより、トラクタを旋回させて向きを変え、バックで作業を行えば、トラクタの全長幅により畦を塗ることのできない圃場の隅の作業を行える。
【0050】
図7(c)から図7(a)への変化は、第1シリンダ80と第2シリンダ81の伸縮を逆に行えばよい。そしてこれら、第1シリンダ80と第2シリンダ81を油圧シリンダ16として制御することが可能となる。第1シリンダ80による作動部は中間フレーム72がなり得え、第2シリンダ81による作動部は作業部78がなり得る。そして、定位置は、図7で示される位置が定位置となる。
【0051】
図8と図9は、本発明の農作業機の一例である畦塗り機において制御システムが作用するときの各状態を示す平面図である。
【0052】
図8で、第1シリンダ80を縮めて中間フレーム72を移動させているとき、障害物202に作業部78(整畦部77)がぶつかり、第1シリンダ80に負荷がかかったと演算ユニット12が判断すると、第1シリンダ80を逆方向すなわち、伸ばす方向に作用させる。このとき戻す量は、例えば、図8中の二点鎖線ぐらいまで戻すことで、障害物202を取り除け、作業機自体の破損を防止できる。
【0053】
一方、図9では、第2シリンダ81を伸ばして作業部78を回動させているとき、障害物203に作業部78(整畦部77)がぶつかり、第2シリンダ81に負荷がかかったと演算ユニット12が判断すると、第1シリンダ80を逆方向すなわち、縮める方向に作用させる。このとき戻す量は、例えば、図9中の二点鎖線ぐらいまで戻すことで、障害物203を取り除け、作業機自体の破損を防止できる。
【0054】
また、図8と図9では、負荷検出手段20や位置検出手段21の例も示されている。リミットスイッチ25(25e、25f)は、装着部71に中間フレーム72の回動範囲の端部でONになる位置に設置され、第1シリンダ80による各定位置(図7(a)と図7(b)(c))でONとなる。ポテンショメータ23(23a、23b)は、中間フレーム72の回動支点72aと回動支点72b近傍にそれぞれ設置でき、第1シリンダ80や第2シリンダ81による装着部71に対する中間フレーム72の角度や、中間フレーム72に対する作業部78の角度を検知できる。また、ストロークセンサ24を第1シリンダ80に取り付けすれば、第1シリンダ80のストローク量を検知できる。なお、図8、図9は、取り付け例であり、同時にすべての取り付けが必要という訳ではない。
【0055】
上記実施例は、代掻き作業機と畦塗り機について述べたが、本発明は、これ以外に、シリンダで作動する機構を有している農作業機に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 制御システム
5 操作部
10 制御ユニット
11 記憶手段
12 演算ユニット
15 方向制御弁
16 油圧シリンダ
20 負荷検出手段
21 位置検出手段
22 圧力スイッチ
23 ポテンショメータ
24 ストロークセンサ
25 リミットスイッチ
30 油圧回路
31 リリーフ弁
50、50’ 代掻き作業機
56 電動油圧シリンダ
70 畦塗り機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに装着して農作業を行う農作業機において、
シリンダの伸縮により一方の定位置と他方の定位置を移動する作動部と、前記シリンダを制御する制御部と、負荷検出手段とを有し、
前記制御部は、前記シリンダの作動中に前記負荷検出手段から得られる負荷関連情報から前記シリンダに一定以上の負荷がかかったと判断した場合に前記シリンダを逆方向に作動させることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の農作業機において、
位置検出手段を有し、前記制御部は、前記位置検出手段から得られる位置関連情報から前記作動部が移動先の定位置に移動したと判断した場合に前記シリンダを停止させることを特徴とする農作業機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の農作業機において、
前記シリンダを逆方向へ作動させる量は、あらかじめ定めた一定量であることを特徴とする農作業機。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の農作業機において、
前記シリンダを逆方向へ作動させる量は、前記作動部の移動始めの定位置まで戻る量であることを特徴とする農作業機。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の農作業機において、
当該農作業機は、代掻き作業を行う作業部を延長させる延長作業部を回動可能に設置された代掻き作業機であって、
前記シリンダは、前記延長作業部を回動させるシリンダであることを特徴とする農作業機。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の農作業機において、
当該農作業機は、畦塗りを行う作業部の位置や角度を変更可能に設置された畦塗り機であって、
前記シリンダは、前記作業部の位置や角度を変更させるシリンダであることを特徴とする農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−254721(P2011−254721A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129878(P2010−129878)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】