説明

農作業機

【課題】トラクタからの回転動力の一部を得て増速する手段を設け、この増速手段が付設し易い構造を有する、トラクタに装着して農作業を行う農作業機を提供することを目的とする。
【解決手段】トラクタに装着して農作業を行う農作業機において、トラクタからの回転動力を受ける延長入力軸11と、延長入力軸11の他端に固定されるカップリング12と、カップリング12に接続し延長入力軸11からの回転動力をミッションケース114内に伝達する入力軸101と、延長入力軸11の回転動力の一部を得て回転を増速させて出力する増速手段13、15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機に関し、特に、トラクタからの回転動力の一部を得て増速する手段を設け、トラクタに装着して農作業を行う農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタに装着する農作業機では、アクチュエータ等を有して様々な農作業に対応していた。アクチュエータ等は電気で動くものも数多くあり、このときの電源は、トラクタのバッテリーを使用し、トラクタ側からハーネス(配線)を介して接続されていた。
【0003】
一方、特許文献1には、ギアケースの後方から突出した出力軸を有するロータリ耕耘装置が記載されている。さらに、特許文献2には、入力軸から平歯車を1段介してミッションケース内部に設けられた油圧ポンプを作動させる農作業機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−210002号公報
【特許文献2】特開10−14301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のトラクタのバッテリーを電源とする方式では、トラクタと農作業機の間をつなぐ配線が必要であり、農作業に応じて農作業機を付け替えるごとに配線を脱着する必要がある。さらに、配線を接続したままトラクタから農作業機を取り外すと断線のおそれもあった。
【0006】
また、特許文献1に記載の発明は、ギアケースの後方にスペースを有する必要があり、さらに、この発明を適用する場合は、ギアケース等の入力軸周りの機構をすべて新しくする必要がある。また、ギアケースの後方の場合、重量バランスも悪くなる。特許文献2に記載の発明は、平歯車を一段介してミッションケース内部の油圧ポンプを作動させる構成であり、定められた油圧ポンプのみに適用可能であり、増速比も限られる。この発明を適用する場合も、入力軸周りの機構をすべて新規に設計する必要がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、トラクタからの回転動力の一部を得て増速する手段を設け、この増速手段が付設し易い構造を有する、トラクタに装着して農作業を行う農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の農作業機は、トラクタに装着して農作業を行う農作業機において、前記トラクタからの回転動力を受ける延長入力軸と、前記延長入力軸の他端に固定されるカップリングと、前記カップリングに接続し前記延長入力軸からの回転動力をミッションケース内に伝達する入力軸と、前記延長入力軸の回転動力の一部を得て回転を増速させて出力する増速手段とを有することを特徴とする。
【0009】
さらに本発明の農作業機は、前記増速手段は、第1の増速手段と、第2の増速手段の2段階で構成されることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記トラクタに農作業機を連結するためのヒッチアームの位置を、前記延長入力軸で延長された長さに対応する分だけ延長することを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記増速手段で増速した回転を受ける出力装置を有し、当該出力装置は発電装置であることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記増速手段で増速した回転を受ける出力装置を有し、当該出力装置は洗車ポンプであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の農作業機は、前記トラクタからの回転動力を受けてミッションケース内に伝達する入力軸と、前記入力軸にはめ込み同軸で回転する伝動手段と、前記入力軸に前記伝動手段よりも先端に接続部を固定してトラクタからの動力を伝達するジョイントと、前記伝動手段を利用して前記入力軸の回転動力の一部を得て回転を増速させて出力する増速手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トラクタに装着して農作業を行う農作業機において、トラクタからの回転動力の一部を得て増速する手段が付設し易い構造を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の農作業機の第1の実施形態の入力軸近辺の平面断面拡大図である。
【図2】本発明の農作業機の第1の実施形態の入力軸近辺の正面拡大図である。
【図3】本発明の農作業機の第2の実施形態の入力軸近辺の平面断面拡大図である。
【図4】本発明の農作業機の第3の実施形態の入力軸近辺の平面断面拡大図である。
【図5】本発明の農作業機の第3の実施形態の入力軸近辺の正面拡大図である。
【図6】本発明の農作業機の第4の実施形態の入力軸近辺の平面断面拡大図である。
【図7】本発明が適用される農作業機の具体例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を説明する。
【0014】
〈第1の実施形態〉
図1は、本発明の農作業機の第1の実施形態の入力軸近辺の平面断面拡大図であり、図2は、正面拡大図である。図1では、機構を分かりやすくするため出力装置である発電装置20の位置を外側へずらして記載されている。また、図1では、下側が前側となり、トラクタに装着される。
【0015】
入力軸101に固定された第1ベベルギア102は、第2ベベルギア104と噛み合っており、第2ベベルギア104と駆動軸106は、同軸で回転する。駆動軸106以降は、農作業に必要な動力として伝達される。ベベルケース111は、入力軸101をベアリング121、122を介して前側のボス部111aで保持する。さらに、第2ベベルギア104をベアリング123を介して後ろ側のベベル保持部111bで保持する。ベベルケース111は外周に複数の孔111cを有するフランジ部111dを有し、ここにボルト等を外側から通し、ミッションケース114の前方の開口した取付部114a(の雌ねじ部)に固定する。このとき、ベベルギア102、104は、ミッションケース114内に配置される。ベベルケース111より前方には、固定部材112が取り付けてある。また、ミッションケース114の両側には、フレームパイプ115、116に固定されたヒッチアーム取付用プレート117、118を有している。
【0016】
従来は、入力軸101前方のスプライン等で構成される受け部101aにトラクタと接続されるジョイント(ユニバーサルジョイントを含む)の一端を取り付け、回転動力が第1ベベルギア102、第2ベベルギア104、駆動軸106と伝達される。また、ヒッチアーム取付用プレート117、118にヒッチアームを取り付けてトラクタと連結することを可能としている。ここに、以下の構成を付加することで、回転動力の一部を得て増速することが可能となる。
【0017】
フレームパイプ115、116には、取付部材41、42がそれぞれ固定されて、さらに、これらの取付部材41、42の前側に取付部材43が連結されている。そして、取付部材43には、ギアケース30が取り付けられている。ギアケース30には、延長入力軸11や、第1ギア13、第2ギア15、伝動軸16が保持されている。
【0018】
延長入力軸11は、前方に、(入力軸101の受け部101aと同様の)受け部11aを有し、途中には、スプライン等で構成される伝達部11bを有する。さらに延長入力軸11の後端には、カップリング12が固定されている。受け部11aは、ジョイント(ユニバーサルジョイントを含む)等を取り付け可能となっていてトラクタからの回転動力が伝達される。カップリング12は、内部にスプライン等を有し、入力軸101の受け部101aを挿入可能となっており、延長入力軸11から、入力軸101へ動力を伝達することができる。延長入力軸11は、第1ベアリング21と第2ベアリング22を介してギアケース30に回転可能に保持される。
【0019】
第1ギア13は、中央に円筒部13aを有し、その外周は平歯車による歯車部13bとなっている。延長入力軸11の伝達部11bには、第1ギア13の円筒部13aが挿入されて、第1ギア13が延長入力軸11と同芯で一緒に回転するように取り付けられる。円筒部13aの内周は、スプラインで構成される。そして、円筒部13aの両側は第1ベアリング21と第2ベアリング22と当接しており、歯車部13bは、円筒部13aの後方に形成されている。
【0020】
伝動軸16は、途中に、平歯車である第2ギア15が、伝動軸16と同芯で一緒に回転するように取り付けられる。第2ギア15は、第1ギア13と噛み合う平歯車であり、第1ギア13よりも歯数が少なく、直径が小さいものとなっている。伝動軸16は、第2ギア15の両側に配置される第3ベアリング23と第4ベアリング24を介してギアケース30に回転可能に保持される。また、伝動軸16の前方端には、第1プーリー17が取り付けられて固定されている。
【0021】
これら、第1ギア13と第2ギア15により、第1の増速手段となっている。ここで、第1ギア13と第2ギア15の中心距離は、例えば、100mm〜200mmとすることができ、第1ギア13の直径を250mm以下とすることができる。なお、本実施形態では、第1の増速手段により2倍以上増速している。
【0022】
出力装置である発電装置20は軸部20aに第2プーリー19が取り付けられ、第2プーリー19が回転するとその動力を元に発電を行う装置である。第1プーリー17と第2プーリー19の間にはベルト18が架け渡され動力を伝達する。第1プーリー17の直径は、第2プーリー19の直径より大きく、ベルト18を含めて第2の増速手段となっている。発電装置20の例として、オルタネータやダイナモが挙げられる。発電装置20の位置は、第2プーリー19の後方にある。なお、第2の増速手段としては、汎用のオルタネータで使用されているプーリーとするとコストが抑えられるが、これだけでなく、チェーン(とスプロケット)やギアによる構成とすることもできる。また、出力装置は、発電装置20の他に、ポンプ等の他の出力装置でも適用可能である。
【0023】
ギアケース30は、伝動軸16を保持する伝動軸保持部30bを延長入力軸11を保持する入力軸保持部30aの横側(真横でなくてもよい)に有している。伝動軸保持部30bの厚みは、入力軸保持部30aより薄くなっており、前側の端部は、入力軸保持部30aより後方に位置しており、第2の増速手段であるプーリー17、19のスペースを確保している。
【0024】
ベース35は、ギアケース30の伝動軸保持部30bの前側に取り付けられ、第1プーリー17と第2プーリー19と発電装置20を支持する。さらに、プーリーケース36は、ベース35に取り付けられ第1プーリー17と第2プーリー19の前側と側面をカバーする。また、ベース35には、調節溝35aを有している。
【0025】
発電装置20は、ベース35の後方に、ボルト37と調節ボルト38により固定する。ボルト37と調節ボルト38は、発電装置20の両側に位置している。調節ボルト38は、調節溝35aにそってずらして位置を決めて固定できる。これにより、ベルト18の張りを調節できる。発電装置20は、外部に設けられており、メンテナンスが容易となっている。
【0026】
次に、第1の実施形態の作用について説明する。
【0027】
トラクタのPTO(Power take Off)からの動力は、ジョイント等を介して延長入力軸11に伝達され、延長入力軸11は回転する。すると、延長入力軸11の後端にカップリング12を介して接続されている入力軸101及び第1ベベルギア102が回転し、第2ベベルギア104と噛み合い、駆動軸106へ動力が伝達される。駆動軸106以降は農作業に必要な動力のために使用される。
【0028】
一方、延長入力軸11に取り付けられている第1ギア13も延長入力軸11と一緒に回転し、第2ギア15と噛み合い動力の一部(例えば、1馬力程度)が伝達されて増速される。さらに、第2ギア15を取り付けている伝動軸16が一緒に回転し、前方先端に固定されている第1プーリー17も回転する。第1プーリー17の回転動力は、ベルト18を介してさらに増速して第2プーリー19へ伝達される。第2プーリー19は、発電装置20の軸部20aに取り付けられているため、発電装置20は伝達された動力をもとに発電を行う。
【0029】
このように、第1ギア13及び第2ギア15の第1の増速手段と、第1プーリー17及び第2プーリー19の第2の増速手段により増速される。トラクタPTOからの定格の回転数は通常540rpm(revolution per minute)である。オルタネータ等の発電機の場合は、2000rpm以上の回転数が好ましく、最低でも1500rpm以上の回転が必要である。そのため、トラクタPTOから延長入力軸11に入力された回転数(定格540rpm)から発電装置20の第2プーリー19の回転までに増速する比率は、3倍以上必要となる。本実施形態では、上記2段階の増速手段により確実に増速される。
【0030】
本実施形態では、従来より図1のBだけ延長入力軸11により延長されている。そのためトラクタへの連結は、延長プレート45、46(の一端の取付孔)を、ヒッチアーム取付用プレート117、118(の取付孔)に取り付け、さらに、延長プレート45、46(の他端の取付孔)に従来のヒッチアームを(ボルト等で)取り付けることにより、Bだけ延長され、従来のヒッチアームを使用して連結することが可能となる。なお、延長プレート45、46を使用せず、ヒッチアーム自体を延長してもよい。以下の実施形態でも同様である。
【0031】
〈第2の実施形態〉
図3は、本発明の農作業機の第2の実施形態の入力軸近辺の平面断面拡大図である。図3では、機構を分かりやすくするため出力装置である発電装置20の位置を外側へずらして記載されている。第2の実施形態では第1の実施形態と異なる点について述べる。同一の箇所は同一の符号を付してある。
【0032】
入力軸61に固定された第1ベベルギア102は、第2ベベルギア104と噛み合っており、第2ベベルギア104と駆動軸106は、同軸で回転する。駆動軸106以降は、農作業に必要な動力として伝達される。ベベルケース63は、入力軸61をベアリング62を介して前側の正面部63aで保持する。さらに、第2ベベルギア104をベアリング123を介して後ろ側のベベル保持部63bで保持する。ベベルギア102、104は、ミッションケース114内に配置される。また、ミッションケース114の両側には、フレームパイプ115、116に固定されたヒッチアーム取付用プレート117、118を有している。
【0033】
フレームパイプ115、116には、取付部材65、66がそれぞれ固定されて、さらに、これらの取付部材65、66の前側に取付部材67が連結されている。そして、取付部材67には、ギアケース50が取り付けられている。ギアケース50には、延長入力軸51や、第1ギア13、第2ギア15、伝動軸56が保持されている。
【0034】
延長入力軸51は、前方に、(入力軸61の受け部61aと同様の)受け部51aを有し、途中には、スプラインで構成される伝達部51bを有する。さらに延長入力軸51の後端には、カップリング12が固定されている。受け部51aは、ジョイント(ユニバーサルジョイントを含む)等を取り付け可能となっていてトラクタからの回転動力が伝達される。カップリング12は、内部にスプラインを有し、入力軸61の受け部61aを挿入可能となっており、延長入力軸51から、入力軸61へ動力を伝達することができる。延長入力軸51は、ベアリング52を介してギアケース50に回転可能に保持される。
【0035】
第1ギア13は、第一の実施形態と同様であり、後端がベアリング52と当接している。
【0036】
伝動軸56は、途中に、平歯車である第2ギア15が、伝動軸56と一緒に回転するように取り付けられる。第2ギア15は、第1ギア13と噛み合う平歯車であり、第1ギア13よりも歯数が少なく、直径が小さいものとなっている。伝動軸56は、ベアリング54を介してギアケース50に回転可能に保持される。また、伝動軸56の後方端には、第1プーリー17が取り付けられて固定されている。
【0037】
これら、第1ギア13と第2ギア15により、第1の実施形態と同様に、第1の増速手段となっている。
【0038】
出力装置である発電装置20、第1プーリー17、第2プーリー19は第1の実施形態と同様である。
【0039】
ベース35は、第1プーリー17と第2プーリー19と発電装置20を支持する。さらに、プーリーケース57は、ベース35に取り付けられ第1プーリー17と第2プーリー19をカバーする。
【0040】
発電装置20の固定は、第1の実施形態と同様である。
【0041】
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
【0042】
トラクタのPTOからの動力は、ジョイント等を介して延長入力軸51に伝達され、延長入力軸51は回転する。すると、延長入力軸51の後端にカップリング12を介して接続されている入力軸61及び第1ベベルギア102が回転し、第2ベベルギア104と噛み合い、駆動軸106へ動力が伝達される。駆動軸106以降は農作業に必要な動力のために使用される。
【0043】
一方、延長入力軸51に入力されたトラクタからの動力の一部は、第1ギア13へも伝達し、第1の実施形態と同様に、第1ギア13と第2ギア15による第1の増速手段と、第1プーリー17、第2プーリー19、ベルト18による第2の増速手段により増速される。
【0044】
トラクタへの連結は、第1の実施形態の構成と同じく延長プレート68、69を介して延長して、従来のヒッチアームを使用して連結することが可能となる。第2の実施形態は簡略化した構造としたことにより図3のCの距離(延長入力軸先端からフレームパイプの中心までの距離)を第1の実施形態より短くすることができる。
【0045】
〈第3の実施形態〉
図4は、本発明の農作業機の第3の実施形態の入力軸近辺の平面断面拡大図である。図5は、正面拡大図である。第3の実施形態では第1の実施形態と異なる点について述べる。同一の箇所は同一の符号を付してある。
【0046】
入力軸101、第1ベベルギア102、第2ベベルギア104、駆動軸106、ベベルケース111、ミッションケース114、フレームパイプ115、116、ヒッチアーム取付用プレート117、118の構成は第1の実施形態と同様であり、この部分は従来の構成となる。ここに、以下の構成を付加することで、回転動力の一部を得て増速することが可能となる。
【0047】
第1スプロケット71は、入力軸101の受け部101aに挿入されている。このため、第1スプロケット71の中央部には、スプライン加工等がされている。また、固定部材112には、カバー78が固定されている。この固定は、他の安全カバー取り付けに使用可能な取付雌ネジ部112aにねじ螺合させて取り付けることができる。さらに、カバー78には、軸受け部78aを有し、出力軸75が第1スプロケット71の横側で回転可能に支持されている。出力軸75には、第2スプロケット73が取り付けられ、出力軸75と一緒に回転する。第1スプロケット71と第2スプロケット73の間は、チェーン72が架け渡され動力伝達可能となっている。
【0048】
このとき、第1スプロケット71の径は、第2スプロケット73の径より(例えば、2倍以上)大きくなっており、第1スプロケット71と第2スプロケット73、チェーン72により、増速手段となっている。また、出力軸75の前側は雌ねじ等を有する出力部75aとなっており、洗車等に利用するポンプや発電機を取り付けることができる。また、ジョイントの一端部となるジョイント接続部130は、第1スプロケット71の前側の入力軸101の受け部101aに固定される。この固定は、ジョイント接続部130が有するストッパ等を利用して行われる。このため、第1スプロケット71の抜け止めにもなっている。なお、スプロケット71、73には、スプロケット以外の伝動部材、例えば、平歯車によるギアの組み合わせ等により構成される増速手段であっても適用可能である。
【0049】
次に、第3の実施形態の作用について説明する。
【0050】
トラクタのPTOからの動力は、ジョイントを介して入力軸101に伝達され、入力軸101は回転する。すると、第1ベベルギア102が回転し、第2ベベルギア104と噛み合い、駆動軸106へ動力が伝達される。駆動軸106以降は農作業に必要な動力のために使用される。
【0051】
一方、入力軸101に取り付けられている第1スプロケット71も入力軸101と一緒に回転し、チェーン72を介して、第2スプロケット73へ動力の一部が伝達されて増速される。第2スプロケット73が回転すると出力軸75も回転し出力部75aへ増速した動力が出力される。
【0052】
第3の実施形態では、入力軸101を延長していないため、トラクタへの連結は、ヒッチアーム取付用プレート117、118に従来のヒッチアームを直接取り付け連結することが可能となる。この場合、例えば、フレームパイプ115の中心から入力軸101先端までの距離Aは、従来と同じであり、重量バランスは変わらない。
【0053】
〈第4の実施形態〉
図6は、本発明の農作業機の第4の実施形態の入力軸近辺の平面断面拡大図である。第4の実施形態では第1の実施形態と異なる点について述べる。同一の箇所は同一の符号を付してある。
【0054】
入力軸101、第1ベベルギア102、第2ベベルギア104、駆動軸106、ベベルケース111、ミッションケース114、フレームパイプ115、116、ヒッチアーム取付用プレート117、118の構成は第1の実施形態と同様であり、この部分は従来の構成となる。ここに、以下の構成を付加することで、回転動力の一部を得て増速する手段を設けることが可能となる。
【0055】
取付フレーム91は、ベベルケース111に取り付けられる。取付フレーム91は、一端にフランジ部91aと取付孔91bを有しており、取付は、ミッションケース114(の取付部114a)に(孔111cを介して)ベベルケース111を取り付けるためのボルト125を取付孔91bに通して締め付ける等して固定できる。取付フレーム91の形状は、円筒又は必要なフレーム構造であればよい。
【0056】
ギアケース90は、取付フレーム91の前側先端部に固定されている。ギアケース90は、延長入力軸84、第1ギア81、第2ギア82を有している。
【0057】
延長入力軸84は、前方に、(入力軸101の受け部101aと同様の)受け部84aを有し、後側には、カップリング83が固定されている。カップリング83は、内部にスプライン等を有し、入力軸101の受け部101aを挿入可能となっており、延長入力軸84から、入力軸101へ動力を伝達することができる。さらに、カップリング83の外側には、平歯車で構成される第1ギア81が具備され、カップリングと一緒に回転する。カップリング83は、第1ギア81の両側に位置する第1ベアリング86と第2ベアリング87を介して、ギアケース90に回転可能に保持されている。
【0058】
出力軸85には、第2ギア82が取り付けられ、出力軸85と一緒に回転する。第2ギア82は、第1ギア81と噛み合う平歯車である。また、出力軸85の前側は出力部85aとなっており、洗車等に利用するポンプや発電機を取り付けることができる。出力軸85は、第2ギア82の両側に配置される第3ベアリング88と第4ベアリング89によってギアケース90に回転可能に保持されている。
【0059】
これら、第1ギア81と第2ギア82により、増速手段となっている。本実施形態では、この増速手段により2倍以上増速している。
【0060】
次に、第4の実施形態の作用について説明する。
【0061】
トラクタのPTOからの動力は、延長入力軸84に伝達され回転する。さらに、カップリング83を介して入力軸101も回転する。すると、第1ベベルギア102が回転し、第2ベベルギア104と噛み合い、駆動軸106へ動力が伝達される。駆動軸106以降は農作業に必要な動力のために使用される。
【0062】
一方、カップリング83に固定されている第1ギア81も入力軸101と一緒に回転し、第2ギア82へ動力の一部が伝達されて増速される。第2ギア82が回転すると出力軸85も回転し出力部85aへ増速した動力が出力される。
【0063】
トラクタへの連結は、第1の実施形態の構成と同じく延長プレート93、94を介して図6のDだけ延長して従来のヒッチアームを取り付けることにより連結することが可能となる。本実施形態の場合は、カップリング83にベアリング86,87を取り付けることにより、延長距離を短くでき、第1の実施形態のBよりも短い距離となっている。
【0064】
〈農作業機の具体例〉
図7は、本発明が適用される農作業機の具体例を示す正面図である。図7の農作業機2は折りたたみ機構を備えた代掻き機であり、図7では、手前側をトラクタ1の後部に装着し、トラクタからのPTO動力を得てカバー152の内で代掻き爪が回転することにより代掻き作業を行う。この農作業機に上述した実施形態を適用することができる。
【0065】
電動油圧シリンダ156は、シリンダが伸び縮みすることにより、回動機構157を作用させサイド作業部155を(図7の左側のように)上側に折りたたみ、代掻き機の全幅を短くすることができる。延長レーキ開閉装置160は、内部のモーターが回転することにより、制御バー162やワイヤ163を介して延長レーキ161を左右に回動させ、延長レーキ161を使用するか否かを選択することができる。土引きユニット166は、内部のモーターの回転により土引き部167を介して後方のレーキの上下動を制御して土引きを調整することができる。
【0066】
これら、電動油圧シリンダ156や、延長レーキ開閉装置160(のモーター)、土引きユニット166(のモーター)は、発電装置20等の本発明で増速した出力軸の回転を利用して発電した電力により作動させることができる。これにより、トラクタ側からの電源ハーネスが必要なくなる。
【0067】
図7では、一種類の農作業機を例に示したが、これに限らず、トラクタに装着してトラクタからの動力を受ける入力軸を有する農作業機全般に本発明を適用することができる。
【0068】
第1の実施形態と第2の実施形態では、発電装置20として説明したが、これ以外に洗車用のポンプ等を取り付けても良い。第3の実施形態や第4の実施形態では、出力部75a、85aには、例えば、図6のポンプ140のように洗車用のポンプ等を取り付けることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
11、51、84 延長入力軸
12、83 カップリング
13、81 第1ギア
15、82 第2ギア
16、56 伝動軸
17 第1プーリー
18 ベルト
19 第2プーリー
20 発電装置
30、50、90 ギアケース
41、42、43、65、66、67 取付部材
45、46、68、69、93、94 延長プレート
61、101 入力軸
63、111 ベベルケース
71 第1スプロケット
72 チェーン
73 第2スプロケット
75、85 出力軸
78 カバー
91 取付フレーム
112 固定部材
114 ミッションケース
115、116 フレームパイプ
117、118 ヒッチアーム取付用プレート
130 ジョイント接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに装着して農作業を行う農作業機において、
前記トラクタからの回転動力を受ける延長入力軸と、前記延長入力軸の他端に固定されるカップリングと、前記カップリングに接続し前記延長入力軸からの回転動力をミッションケース内に伝達する入力軸と、前記延長入力軸の回転動力の一部を得て回転を増速させて出力する増速手段とを有することを特徴とする農作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の農作業機において、
前記増速手段は、第1の増速手段と、第2の増速手段の2段階で構成されることを特徴とする農作業機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の農作業機において、
前記トラクタに農作業機を連結するためのヒッチアームの位置を、前記延長入力軸で延長された長さに対応する分だけ延長することを特徴とする農作業機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の農作業機において、
前記増速手段で増速した回転を受ける出力装置を有し、当該出力装置は発電装置であることを特徴とする農作業機。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の農作業機において、
前記増速手段で増速した回転を受ける出力装置を有し、当該出力装置は洗車ポンプであることを特徴とする農作業機。
【請求項6】
トラクタに装着して農作業を行う農作業機において、
前記トラクタからの回転動力を受けてミッションケース内に伝達する入力軸と、前記入力軸にはめ込み同軸で回転する伝動手段と、前記入力軸に前記伝動手段よりも先端に接続部を固定してトラクタからの動力を伝達するジョイントと、前記伝動手段を利用して前記入力軸の回転動力の一部を得て回転を増速させて出力する増速手段とを有することを特徴とする農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−161256(P2012−161256A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22489(P2011−22489)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】