説明

農作業機

【課題】可動機枠を手動で容易に移動できる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、トラクタに連結する機枠2と、この機枠2に対して移動可能な可動機枠12とを備える。可動機枠12には、畦塗り作業をする作業手段51を設ける。可動機枠12には、作業者が可動機枠12を機枠2に対して手動で移動させる際に把持する把持体131を設ける。把持体131は、第1把持部材133と、この第1把持部材133から側方に向かって突出する第2把持部材134とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動機枠を手動で容易に移動できる農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、走行車であるトラクタに連結される機枠と、この機枠に対して移動可能な可動機枠と、この可動機枠に設けられオフセット作業位置に位置してオフセット作業、すなわち例えば畦塗り作業をする作業手段とを備えている。
【0004】
また、この従来の農作業機は、機枠および可動機枠間に架設されオフセット作業位置を変更するための手動式の第1シリンダと、機枠および可動機枠間に架設され作業手段の状態を切り換えるための手動式の第2シリンダとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−267098号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そして、このような農作業機においては、例えば作業手段の状態を切り換える場合等に、作業者の人力による手動によって可動機枠を容易に移動できることが求められている。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、可動機枠を手動で容易に移動できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の農作業機は、走行車に連結される機枠と、この機枠に対して移動可能な可動機枠と、この可動機枠に設けられた作業手段と、前記可動機枠に設けられ、この可動機枠を前記機枠に対して手動で移動させる際に把持される把持体とを備え、前記把持体は、第1把持部材と、この第1把持部材から側方に向かって突出する第2把持部材とを有するものである。
【0009】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、第1把持部材は、側面視で前方に向かって開口する第1コ字状棒部を有し、第2把持部材は、前記第1コ字状棒部から側方に向かって突出する第2コ字状棒部を有するものである。
【0010】
請求項3記載の農作業機は、請求項2記載の農作業機において、第2コ字状棒部は、側面視で前高後低の傾斜方向に沿って位置するものである。
【0011】
請求項4記載の農作業機は、請求項2または3記載の農作業機において、第1把持部材は、第1コ字状棒部の上側前端部から前斜め下方に向かって突出する延長棒部と、この延長棒部の前端部に設けられた前側取付板部と、この前側取付板部と前記延長棒部との間に架設された補強板部と、前記第1コ字状棒部の下側前端部に設けられた後側取付板部とを有するものである。
【0012】
請求項5記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、第1把持部材は、側面視で前方に向かって開口するコ字状棒部を有し、第2把持部材は、前記コ字状棒部から側方に向かって突出するL字状棒部を有するものである。
【0013】
請求項6記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、第1把持部材は、上下方向に沿って位置する鉛直棒部を有し、第2把持部材は、前記鉛直状棒部から側方に向かって突出する水平棒部を有するものである。
【0014】
請求項7記載の農作業機は、走行車に連結される機枠と、この機枠に対して移動可能な可動機枠と、この可動機枠に設けられた作業手段と、前記可動機枠を前記機枠に対して手動で移動させる際に把持される伸縮可能な伸縮把持体とを備えるものである。
【0015】
請求項8記載の農作業機は、請求項7記載の農作業機において、伸縮把持体は、縮み位置と伸び位置との間で移動可能な把持部材と、この把持部材を前記縮み位置側に向けて付勢する付勢手段とを有し、前記把持部材は、作業者によって把持された状態でその作業者の人力に基づいて前記付勢手段の付勢力に抗して前記縮み位置から前記伸び位置に移動し、その後、その作業者が手を離すと、前記付勢手段の付勢力に基づいて前記伸び位置から前記縮み位置に移動するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、可動機枠を手動で容易に移動でき、よって、作業手段の状態を容易に切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る農作業機の前進作業時の斜視図である。
【図2】同上農作業機の前進作業時の平面図である。
【図3】同上農作業機の非作業時の平面図である。
【図4】同上農作業機の後退作業時(リターン作業時)の平面図である。
【図5】同上農作業機の部分平面図である。
【図6】同上農作業機のロック用アーム部分の側面図である。
【図7】同上農作業機のロック用アーム部分の分解平面図である。
【図8】(a)〜(c)は前進作業状態のオフセット作業位置を説明するための部分平面図である。
【図9】同上農作業機の把持体の斜視図である。
【図10】図2におけるa方向からみた側面図である。
【図11】図2におけるb方向からみた側面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る農作業機の把持体の斜視図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る農作業機の把持体の斜視図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係る農作業機の前進作業時の斜視図である。
【図15】同上農作業機の前進作業時の平面図である。
【図16】作業手段の前進作業状態で伸縮把持体が伸びている状態を示す平面図である。
【図17】作業手段の格納非作業状態で伸縮把持体が伸びている状態を示す平面図である。
【図18】同上農作業機の非作業時の平面図である。
【図19】同上農作業機の後退作業時(リターン作業時)の平面図である。
【図20】伸縮把持体の縮み状態時の底面図である。
【図21】伸縮把持体の縮み状態時の側面図である。
【図22】伸縮把持体の伸び状態時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1ないし図4において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば図示しない走行車であるトラクタの後部に連結して使用する牽引式の畦塗り機(オフセット作業機)である。
【0020】
つまり、農作業機1は、トラクタの後部に連結された状態でトラクタの前進走行により圃場の畦に沿って進行方向である前方(図2では、上方向)に向かって移動しながら、オフセット作業、すなわち例えば畦塗り作業(畦修復作業)をするものである。
【0021】
なお、圃場の隅部では、図4に示されるように、農作業機1は、トラクタの後進走行(バック走行)により圃場の畦に沿って進行方向である後方(図4では、下方向)に向かって移動しながら畦塗り作業をする。
【0022】
農作業機1は、トラクタの後部の3点リンク部(作業機昇降装置)に連結される固定機枠である機枠2を備えている。
【0023】
機枠2は、トラクタの後部の3点リンク部に連結されるトップマストおよびロワアーム等にて構成された3点連結部を有している。機枠2は、左右方向中央部にミッションケース部4を有し、このミッションケース部4にて前後方向の入力軸5が回転可能に支持されている。入力軸5は、トラクタのPTO軸に動力伝達手段を介して接続される。
【0024】
機枠2は、第1取付部6、第2取付部7および第3取付部8を有している。第1取付部6は機枠2の左右方向中央部に位置し、第2取付部7および第3取付部8は機枠2の左右方向中央部よりやや左側の部分に位置している。
【0025】
また、農作業機1は、機枠2に上下方向の軸14を中心として回動可能に設けられた回動アーム体11と、この回動アーム体11に上下方向の軸15を中心として回動可能に設けられ機枠2に対して移動可能な可動機枠12と、この可動機枠12に上下方向の軸15を中心として回動可能に設けられた位置決め用の回動体13とを備えている。
【0026】
なお、可動機枠12は伝動ケースの機能を兼ねたものであり、この可動機枠12内に収納された動力伝達手段は、ジョイント(図示せず)を介して入力軸5に接続されている。
【0027】
回動アーム体11は、図1および図2等に示されるように、長手状のアーム本体部16と、このアーム本体部16の一側面である左側面にそれぞれ突設されたばね取付部17、ロック体取付部18および操作体取付部19とを有している。
【0028】
アーム本体部16の前端部が機枠2の第1取付部6に軸14を中心として回動可能に取り付けられている。アーム本体部16の後端部には、可動機枠12が軸15を中心として回動可能に取り付けられている。
【0029】
ロック体取付部18は、図5等に示されるように、平面視で略矩形板状をなすもので、このロック体取付部18の先端部上面には、ストッパピン部21が上方に向かって突設されている。ロック体取付部18の先端側下面には、互いに離間対向する1対のガイド突部22,23が下方に向かって突設されている。一方のガイド突部22は棒状のもので、他方のガイド突部23は板状のものである。
【0030】
なお、例えば図示しないが、両ガイド突部22,23がいずれも棒状または板状のものでもよく、また、略U字状の部材にて、後述のロック用アーム体61をガイドするガイド部を構成してもよい。
【0031】
また、ロック体取付部18の先端側一側面には凹弧面状の一方側当接凹部24が形成され、ロック体取付部18の先端側他側面には凹弧面状の他方側当接凹部25が形成されている。
【0032】
回動体13は、図1および図2等に示されるように、互いに異なる方向に向かって突出する3つの突出部、つまり第1突出部26、第2突出部27および第3突出部28を有している。第1突出部26の先端部にはアーム体取付部29が設けられている。第2突出部27の先端部上面には、略円柱状の前進・格納ロックピン部(第2ロック用の第1係合ピン部)31が上方に向かって突設されている。第3突出部28の先端部上面には、略円柱状の後退ロックピン部(第2ロック用の第2係合ピン部)32が上方に向かって突設されている。互いに離れて位置する前進・格納ロックピン部31および後退ロックピン部32は、平面視で軸15を中心として略対称に位置している。
【0033】
可動機枠12は、図1および図2等に示されるように、回動アーム体11の後端部に回動可能に取り付けられたフレーム部41を有している。フレーム部41には、上面削り体取付部42、盛土体取付部43、畦形成体取付部44および操作体取付部45が設けられている。
【0034】
また、フレーム部41には、図5等に示されるように、ばね取付部46およびロック体取付部47が設けられている。ロック体取付部47は、平面視で略T字をなすもので、このロック体取付部47の先端側一側面には略凹状の一方側当接凹部48が形成され、このロック体取付部47の先端側他側面には略凹状の他方側当接凹部49が形成されている。また、ロック体取付部47には取付板40がねじ等にて固定的に取り付けられ、この取付板40の先端部上面にはストッパピン部50が上方に向かって突設されている。なお、取付板40には、ばね用孔46aを有するばね取付部46が形成されている。
【0035】
さらに、農作業機1は、図1ないし図4等に示されるように、可動機枠12に設けられ複数のオフセット作業位置のうち、トラクタの大きさ等に応じて選択された一のオフセット作業位置に位置して畦塗り作業(オフセット作業)をする作業手段51を備えている。
【0036】
作業手段51は、トラクタの前進走行時(前進作業時)にはトラクタの後方部から一側方(右側方)に向かって突出して位置する前進作業状態となって前方に移動しながら畦塗り作業をし、トラクタの後進走行時(後進作業時)にはトラクタの後方部から他側方(左側方)に向かって突出して位置する後進作業状態となって後方に移動しながら畦塗り作業をし、運搬時等の非作業時にはトラクタの後方部から側方に突出せずトラクタの幅内でトラクタの後方に位置する格納非作業状態となるものである。
【0037】
つまり、作業手段51は、作業者の手動によって前進作業状態、格納非作業状態および後退作業状態に選択的に切り換え可能となっている。また、この農作業機1では、少なくとも前進作業状態のオフセット作業位置が変更可能となっている。なお、後退作業状態のオフセット作業位置を変更できるようにしてもよい。
【0038】
ここで、作業手段51は、回転しながら元畦の土を耕耘して盛り上げる盛土体(ロータリ)52と、盛土体52の進行方向後方で回転しながら盛土を締め固めて新畦を形成する畦形成体(ディスク)53と、盛土体52の進行方向前方で回転しながら元畦の上面を削る上面削り体54とを有している。なお、これらの各作業部52,53,54は入力軸5側からの動力で駆動回転するようになっている。
【0039】
上面削り体54は、可動機枠12の上面削り体取付部42に回転可能に取り付けられている。盛土体52は、可動機枠12の盛土体取付部43に回転可能に取り付けられている。畦形成体53は、可動機枠12の畦形成体取付部44に回転可能に取り付けられている。
【0040】
また、上面削り体54は、回転軸56およびこの回転軸56に取り付けられた切削爪57を有している。盛土体52は、回転軸およびこの回転軸に取り付けられた耕耘爪を有している。畦形成体53は、回転軸58、この回転軸58の先端側に取り付けられた円筒状の畦上面形成部材59および回転軸58の基端側に取り付けられた截頭円錐状の畦側面形成部材60を有している。この畦側面形成部材60の上方部は、図1に示されるように、カバー部材39で覆われている。
【0041】
なお、作業手段51の前進作業状態時には、上面削り体54、盛土体52および畦形成体53が前から後に向かって順に位置するが、後退作業状態になるとその順が逆になる。
【0042】
また一方、農作業機1は、図1ないし図4等に示されるように、機枠2に上下方向の軸64を中心として回動可能に設けられ回動アーム体11の長手方向に沿って位置する長手状の1本のロック用アーム体61と、このロック用アーム体61にこのロック用アーム体61の長手方向に沿って位置調整可能に設けられたスライド部材等の位置調整体62と、機枠2および回動体13間に架設されこれら機枠2と回動体13とを連結する1本の連結アーム体63とを備えている。
【0043】
ロック用アーム体61の前端部が機枠2の第2取付部7に上下方向の軸64を中心として回動可能に取り付けられ、ロック用アーム体61の後端部が自由端部となっている。ロック用アーム体61は、回動アーム体11の両ガイド突部22,23間にこれら両ガイド突部22,23に対してスライド可能に挿通されている。このため、ロック用アーム体61は、回動アーム体11に対してその長手方向に沿った状態のまま、この回動アーム体11と一体となって機枠2に対して回動する。
【0044】
連結アーム体63の前端部が機枠2の第3取付部8に上下方向の軸65を中心として回動可能に取り付けられ、連結アーム体63の後端部が回動体13のアーム体取付部29に上下方向の軸66を中心として回動可能に取り付けられている。
【0045】
ここで、ロック用アーム体61は、図6および図7等に示されるように、略4角筒状で長手状のアーム本体部71を有している。アーム本体部71の一端部である前端部には略円筒状の取付部72が設けられ、この取付部72が機枠2の第2取付部7に軸64を介してこの軸64を中心として回動可能に取り付けられている。アーム本体部71の他端部である後端部が自由端部70となっている。
【0046】
アーム本体部71の前端側上面には、略円柱状の格納・後退ロックピン部(第1ロック用の第2係合ピン部)73が上方に向かって突設されている。アーム本体部71の後端側には、このアーム本体部71の長手方向に沿って等間隔をおいて並ぶ上下開口状の複数、すなわち例えば3つの一方側孔部74が形成されている。つまり、アーム本体部71の上下板部に、一方側孔部74が間隔をおいて並設されている。
【0047】
位置調整体62は、両端面が開口した略4角筒状の筒状本体部75を有している。筒状本体部75は、ロック用アーム体61のアーム本体部71の外周面にこのアーム本体部71の長手方向に沿ってスライド可能に嵌合されている。
【0048】
筒状本体部75の一方側上面には、略円柱状の係合ピン部である前進ロックピン部(第1ロック用の第1係合ピン部)76が上方に向かって突設されている。この前進ロックピン部76は、格納・後退ロックピン部73と離間対向して位置している。また、筒状本体部75の他方側における上下板部には、上下開口状の1つの他方側孔部77が形成されている。
【0049】
そして、ロック用アーム体61の複数の一方側孔部74のうち選択された一の一方側孔部74と位置調整体62の他方側孔部77とが互いに対向し、これら互いに対向した一方側孔部74および他方側孔部77に脱着ピン78が上方から差し込まれ、この差し込まれた脱着ピン78にて位置調整体62がロック用アーム体61に対して固定されている。脱着ピン78を抜けば、その固定が解除され、位置調整体62がロック用アーム体61に対してスライド可能となる。なお、脱着ピン78は、ピン部78aとこのピン部78aの上端部に設けられた鍔部78bとにて構成されている。
【0050】
このため、この農作業機1では、脱着ピン78の抜き差しおよび位置調整体62のロック用アーム体61に対するスライドに基づく、位置調整体62のロック用アーム体61に対する位置調整によって、作業手段51の前進作業状態のオフセット作業位置が段階的に変更可能となっている。
【0051】
つまり、図8(a)〜(c)に示されるように、脱着ピン78を差し込む一方側孔部74の選択変更により、作業手段51の前進作業状態時におけるオフセット作業位置(作業手段51のトラクタに対する側方への突出量)を変更することが可能となっている。
【0052】
図8(a)の長さaは、3つの一方側孔部74のうち1番後の一方側孔部74aに脱着ピン78を差し込んだ場合の両軸14,15間の左右方向距離である。図8(b)の長さbは、3つの一方側孔部74のうち後から2番目の一方側孔部74bに脱着ピン78を差し込んだ場合の両軸14,15間の左右方向距離である。図8(c)の長さcは、3つの一方側孔部74のうち後から3番目の一方側孔部74cに脱着ピン78を差し込んだ場合の両軸14,15間の左右方向距離である。そして、a>b>cである。
【0053】
また、農作業機1は、図1ないし図4等に示されるように、第1ロック用のロックピン部73,76との当接係合により回動アーム体11の機枠2に対する回動を規制して回動アーム体11を機枠2に対してロックする回動可能な略板状のロック体である第1ロック体81と、第2ロック用のロックピン部31,32との当接係合により可動機枠12の回動体13に対する回動を規制して可動機枠12を回動体13に対してロックする回動可能な略板状のロック体である第2ロック体82とを備えている。
【0054】
さらに、農作業機1は、第1ロック体81を回動させるための棒状の第1操作体83と、回動アーム体11のばね取付部17と第1ロック体81との間に架設されこの第1ロック体81を付勢する第1付勢体である第1ばね84とを備えている。
【0055】
また、農作業機1は、第2ロック体82を回動させるための棒状の第2操作体85と、可動機枠12のばね取付部46と第2ロック体82との間に架設されこの第2ロック体82を付勢する第2付勢体である第2ばね86とを備えている。
【0056】
ここで、第1ロック体(第1フック体)81は、図5等に示されるように、回動アーム体11のロック体取付部18に上下方向の軸(回動支点)90を中心として回動可能に取り付けられ、その軸90を中心とする回動により第1状態(図1、図2の状態)および第2状態(図3、図4の状態)に選択的に切り換え可能となっている。
【0057】
第1ロック体81は、第1状態時に一方側当接凹部24に当接係合した前進ロックピン部76との当接係合により回動アーム体11の機枠2に対する回動を規制する凹弧面状の第1係合凹部91と、第2状態時に他方側当接凹部25に当接係合した格納・後退ロックピン部73との当接係合により回動アーム体11の機枠2に対する回動を規制する凹弧面状の第2係合凹部92とを同じ側つまり軸90側に有している。
【0058】
また、第1ロック体81は、回動アーム体11のロック体取付部18の上面に軸90を中心として回動可能に取り付けられた取付板部93と、この取付板部93の基端側に一体に設けられ第1ロック体81の回動方向に略沿った方向に長手方向を有する係合板部である長手状板部94とを有している。
【0059】
そして、一方側凹部である第1係合凹部91が長手状板部94の長手方向一端側における取付板部93側の一側面に凹状に形成され、他方側凹部である第2係合凹部92が長手状板部94の長手方向他端側における取付板部93側の一側面に凹状に形成されている。つまり、第1係合凹部91および第2係合凹部92が長手状板部94の一側面に形成されている。長手状板部94の長手方向中央部の他側面には、先端面が凸弧面状に形成された突出板部95が一体に突設されている。
【0060】
さらに、長手状板部94の長手方向一端面には、前進ロックピン部76に当接する凸弧面状の一方側当接部96が形成されている。長手状板部94の長手方向他端面には、格納・後進ロックピン部73に当接する凸弧面状の他方側当接部97が形成されている。一方側当接部96は、他方側当接部97よりも長く、他方側当接部97に比べて大きな突出量をもって取付板部93側とは反対側に向かって突出している。なお、例えば図示しないが、一方側当接部96および他方側当接部97を同じ長さにして第1ロック体81全体を対称形状としてもよい。
【0061】
また、長手状板部94の長手方向他端側にはばね用孔98が形成され、このばね用孔98に圧縮状態の第1ばね84の一端部が挿入され、この第1ばね84の他端部がばね取付部17のばね用孔17aに挿入されている。第1ばね84は、支点越えにより第1ロック体81を2方向(時計回りおよび反時計回り)に選択的に付勢可能である。
【0062】
さらに、取付板部93の先端面には、第1ロック体81の回動支点(軸90)を中心とする仮想円に沿った円弧面99が形成されている。取付板部93の先端部一方側には、ストッパピン部21との当接係合により第1ロック体81のロック体取付部18に対する一方向(図5上、時計回り)の回動を規制する一方側凸部(一方側当接部)101が円弧面99に連続して形成されている。取付板部93の先端部他方側には、ストッパピン部21との当接係合により第1ロック体81のロック体取付部18に対する他方向(図5上、反時計回り)の回動を規制する他方側凸部(他方側当接部)102が円弧面99に連続して形成されている。
【0063】
また、第2ロック体(第2フック体)82は、可動機枠12のロック体取付部47に上下方向の軸(回動支点)110を中心として回動可能に取り付けられ、その軸110を中心とする回動により第1状態(図2、図3の状態)および第2状態(図4の状態)に選択的に切り換え可能となっている。
【0064】
第2ロック体82は、第1状態時に一方側当接凹部48に当接係合した前進・格納ロックピン部31との当接係合により可動機枠12の回動体13に対する回動を規制する凹弧面状の第1係合凹部111と、第2状態時に他方側当接凹部49に当接係合した後退ロックピン部32との当接係合により可動機枠12の回動体13に対する回動を規制する凹弧面状の第2係合凹部112とを同じ側つまり軸110側に有している。
【0065】
また、第2ロック体82は、可動機枠12のロック体取付部47の上面に軸110を中心として回動可能に取り付けられた取付板部113と、この取付板部113の基端側に一体に設けられ第2ロック体82の回動方向に略沿った方向に長手方向を有する長手状板部114とを有している。
【0066】
そして、一方側凹部である第1係合凹部111が長手状板部114の長手方向一端側における取付板部113側の一側面に凹状に形成され、他方側凹部である第2係合凹部112が長手状板部114の長手方向他端側における取付板部113側の一側面に凹状に形成されている。つまり、第1係合凹部111および第2係合凹部112が長手状板部114の一側面に形成されている。
【0067】
さらに、長手状板部114の長手方向一端面には、前進・格納ロックピン部31に当接する凸弧面状の一方側当接部116が形成されている。長手状板部114の長手方向他端面には、後退ロックピン部32に当接する凸弧面状の他方側当接部117が形成されている。一方側当接部116と他方側当接部117とは同じ長さである。
【0068】
また、取付板部113のうち第1係合凹部111と対向する部分には凸部115が形成され、この凸部115にばね用孔118が形成されている。そして、このばね用孔118に圧縮状態の第2ばね86の一端部が挿入され、この第2ばね86の他端部がばね取付部46のばね用孔46aに挿入されている。第2ばね86は、支点越えにより第2ロック体82を2方向(時計回りおよび反時計回り)に選択的に付勢可能である。
【0069】
さらに、長手状板部114は、取付板部113側とは反対側の他側面に一方側当接部103および他方側当接部104を有している。一方側当接部103は、ストッパピン部50との当接により第2ロック体82のロック体取付部47に対する一方向(図5上、反時計回り)の回動を規制する。他方側当接部104は、ストッパピン部50との当接により第2ロック体82のロック体取付部47に対する他方向(図5上、時計回り)の回動を規制する。
【0070】
一方、第1操作体(第1レバー)83は、図1および図2等に示されるように、例えば軸120を介して互いに回動可能に連結された棒状の先端側部材121と棒状の基端側部材122とにて構成されている。先端側部材121の先端部が第1ロック体81の突出部95に軸123を中心として回動可能に取り付けられている。基端側部材122の先端部が回動アーム体11の操作取付部19に軸124を中心として回動可能に取り付けられている。基端側部材122の基端側が作業者によって把持される把持部125となっている。
【0071】
第2操作体(第2レバー)85は、例えば軸126を介して互いに回動可能に連結された棒状の先端側部材127と棒状の基端側部材128とにて構成されている。先端側部材127の先端部が第2ロック体82の長手状板部114の中央部に軸119を中心として回動可能に取り付けられている。基端側部材128の中間部が可動機枠12の操作取付部45に軸129を中心として回動可能に取り付けられている。基端側部材128の基端側が作業者によって把持される把持部130となっている。
【0072】
また、農作業機1は、図1および図2等に示されるように、作業手段51の状態を切り換えるために可動機枠12を機枠2に対して作業者が手動で移動させる際に、その作業者によって把持されるハンドル等の取手手段である把持体131を備えている。この把持体131は、例えば可動機枠12のフレーム部41の被取付部41a,41bに固定手段(例えばボルトおよびナット等)132によって固定的に取り付けられている。なお、この把持体131は、カバー部材39の近傍に配設されている。
【0073】
ここで、把持体131は、図9ないし図11等にも示されるように、作業者が把持可能な第1把持部材(後方突出部分)133と、作業手段51の前進作業状態時(基準姿勢時)に第1把持部材133から右側方(外側方)に向かって突出し作業者が把持可能な第2把持部材(側方突出部分)134とにて構成されている。
【0074】
第1把持部材133は、作業手段51の前進作業状態時において平面視で前後方向に沿って位置しかつ側面視で前方に向かって開口する略コ字状をなす第1コ字状棒部(コ字状棒部)135を有している。
【0075】
第1コ字状棒部135は、水平状に位置する下水平棒部分136と、この下水平棒部分136の後端部から上方に向かって一体に突出して鉛直状に位置する鉛直棒部分137と、この鉛直棒部分137の上端部から前方に向かって一体に突出して水平状に位置する上水平棒部分138とにて構成されている。下水平棒部分136は上水平棒部分138よりも短く、この下水平棒部分136の前端部には、フレーム部41の被取付部41aに取り付けられる断面略L字状の取付部である後側取付板部139が固設されている。この後側取付板部139には、1つの取付用孔140が形成されている。
【0076】
なお、下水平棒部分136の後端部と鉛直棒部分137の下端部との連結部分は、略4分の1の円弧状に形成されている。上水平棒部分138の後端部と鉛直棒部分137の上端部との連結部分は、略4分の1の円弧状に形成されている。
【0077】
また、第1把持部材133は、第1コ字状棒部135の上側前端部、つまり上水平棒部分138の前端部から前斜め下方に向かって一体に突出する傾斜状の延長棒部141と、この延長棒部141の前端部に固設されフレーム部41の被取付部41bに取り付けられる鉛直状の取付部である前側取付板部142とを有している。前側取付板部142は、平面視で左右方向に沿って位置する平板状のもので、この前側取付板部142には、複数、すなわち例えば2つの取付用孔143が形成されている。なお、延長棒部141は、第1コ字状棒部135の上水平棒部分138よりも少し長い。
【0078】
さらに、第1把持部材133は、前側取付板部142と延長棒部141との間に固定的に架設されこれら前側取付板部142と延長棒部141とを連結する側面視略三角形状で鉛直状の補強板部145を有している。補強板部145は、平面視で前後方向に沿って位置する平板状のもので、前側取付板部142に直交状に固設されている。つまり、補強板部145の前端部が前側取付板部142に固着され、補強板部145の上端部が延長棒部141の側部に固着されている。なお、補強板部145の前端部は前側取付板部142の側端部略全体に固着され、補強板部145の上端部は延長棒部141の少なくとも前半部に固着されている。
【0079】
第2把持部材134は、作業手段51の前進作業状態時において側面視で前高後低の傾斜方向に沿って位置しかつ平面視で左側方(内側方)に向かって開口する略コ字状をなす第2コ字状棒部150のみによって構成されている。この第2コ字状棒部150は、第1コ字状棒部135とは形状が異なり、倒U字状に近い略コ字状のもので、第1コ字状棒部135から右側方に向かって突出している。
【0080】
第2コ字状棒部150は、第1コ字状棒部135の鉛直棒部分137の下端部近傍から右側方に向かって突出して水平状に位置する水平棒部分151と、第1コ字状棒部135の上水平棒部分138の前端部近傍から平面視右斜め後方でかつ背面視右斜め下方に向かって突出して傾斜状に位置する傾斜棒部分152と、これら水平棒部分151の右端部と傾斜棒部分152の右端部とを滑らかに連続するように一体に連結する略半円弧状の円弧棒部分153とにて構成されている。
【0081】
なお、図10から明らかなように、第2コ字状棒部150の傾斜棒部分152は、側面視で前高後低の傾斜方向に沿って位置するが、この傾斜棒部分152と上水平棒部分138とがなす角度αは、例えば略45度である。
【0082】
また、平面視で、傾斜棒部分152の延長線上の付近に可動機枠12の回動支点である軸15が位置している。さらに、第2コ字状棒部150の少なくとも一部、すなわち例えば円弧棒部分153は、平面視で畦形成体53の上面形成部材59の後方に位置している。また、第2操作体85の把持部130は、把持体131の近傍に位置している。なお、第1コ字状棒部135、延長棒部141および第2コ字状棒部150の各断面形状は、把持しやすい略円形形状である。また、図1に示されるように、可動機枠12には、方向輪10が取り付けられている。
【0083】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0084】
例えば図2には、作業手段51が前進作業状態に設定された状態が示されている。
【0085】
この状態では、第1ロック体81は、第1ばね84の付勢力で一方側凸部101がストッパピン部21に当接した第1状態となっており、第1係合凹部91が一方側当接凹部24に当接した前進ロックピン部76と係合してこの前進ロックピン部76が第1係合凹部91と一方側当接凹部24とに挟持されている。その結果、回動アーム体11、ロック用アーム体61、連結アーム体63および回動体13が機枠2に対してロックされている。
【0086】
また、第2ロック体82は、第2ばね86の付勢力で一方側当接部103がストッパピン部50に当接した第1状態となっており、第1係合凹部111が一方側当接凹部48に当接した前進・格納ロックピン部31と係合してこの前進・格納ロックピン部31が第1係合凹部111と一方側当接凹部48とにて挟持されている。その結果、可動機枠12が回動体13に対してロックされている。
【0087】
ここで、畦塗り作業が進み、圃場の隅部に到達すると、作業者は、作業手段51を前進作業状態から格納非作業状態を経て後退作業状態に切り換える。この際、作業者は、把持体131を利用して、可動機枠12を作業手段51とともに機枠2に対して移動(回動を含む)させる。
【0088】
すなわち、まず、作業者は、第1操作体83を操作して第1ロック体81を第1状態から第2状態に切り換えることにより、第1係合凹部91と前進ロックピン部76との係合を解除して第1ロック体81によるロックを解除する。この第1ロック体81の第2状態は格納・後退ロックピン部73に対するロック準備状態である。
【0089】
次いで、作業者は、例えば把持体131の第1コ字状棒部135を両手で把持して、格納・後退ロックピン部73が他方側当接凹部25に当接するまで、アーム体11,61,63を機枠2に対して内側方に回動させる。つまり、作業者は、前後方向に沿った第1コ字状棒部135を把持して、可動機枠12を作業手段51とともに機枠2に対して左右方向に略沿って移動させる。このとき、作業者は、可動機枠12の移動方向に対して略直角方向の第1コ字状棒部135を把持することで、この第1コ字状棒部135に力を加えやすく、可動機枠12を機枠2に対して効率的に移動させることが可能である。
【0090】
そして、この可動機枠12の移動により、この可動機枠12で支持された作業手段51が前進作業状態から格納非作業状態に切り換わる。
【0091】
この際、アーム体11,61,63の回動に基づいて、第1ロック体81の第2係合凹部92と格納・後退ロックピン部73とが自動的に係合し、第1ロック体81によるロックが自動的にかかる。
【0092】
次いで、作業者は、第2操作体85を操作して第2ロック体82を第1状態から第2状態に切り換えることにより、第1係合凹部111と前進・格納ロックピン部31との係合を解除して第2ロック体82によるロックを解除する。この第2ロック体82の第2状態は後退ロックピン部32に対するロック準備状態である。
【0093】
このとき、第2ロック体82は、他方側当接部104がストッパピン部50に当接するまで回動するが、この回動途中で第2ばね86の付勢方向が変わるため、この付勢方向の変更後においては第2ロック体82は第2ばね86の付勢力で回動する。そして、第2ロック体82が第2状態になると、第1係合凹部111が前進・格納ロックピン部31から離れ、第1係合凹部111と前進・格納ロックピン部31との係合が解除される。
【0094】
次いで、作業者は、例えば把持体131の第2コ字状棒部150を両手で把持して、後退ロックピン部32が他方側当接凹部49に当接するまで、可動機枠12を回動体13および回動アーム体11等に対して回動させる。つまり、作業者は、把持体131のうち可動機枠12の回動支点(軸15)から最も離れて位置する部分、つまり傾斜状の第2コ字状棒部150の円弧棒部分153側の部分を把持して、可動機枠12を作業手段51とともに機枠2に対して移動させる。このとき、作業者は、回動支点(軸15)から最も離れた位置で略回動支点方向(回転中心側)を向いた第2コ字状棒部150を把持することで、この第2コ字状棒部150に力を加えやすく、可動機枠12を機枠2に対して効率的に移動させることが可能である。
【0095】
そして、この可動機枠12の移動により、この可動機枠12で支持された作業手段51が格納非作業状態から後退作業状態に切り換わる。
【0096】
この際、可動機枠12の回動に基づいて、第2ロック体82の第2係合凹部112と後退ロックピン部32とが自動的に係合し、第2ロック体82によるロックが自動的にかかる。
【0097】
そして、作業者は、元の畦に沿ってトラクタを後退走行させる。すると、作業手段51が後退作業状態で後方(進行方向)に移動しながら畦端部まで畦塗り作業をする。
【0098】
なお、作業手段51を後退作業状態から格納非作業状態に切り換える場合は、第2ロック体82を第1状態に切り換えることにより、第2係合凹部112と後退ロックピン部32との係合を解除して第2ロック体82によるロックを解除した後、可動機枠12を回動体13に対して回動させる。すると、この回動に基づいて第2ロック体82の第1係合凹部111と前進・格納ロックピン部31とが自動的に係合し、第2ロック体82によるロックが自動的にかかる。
【0099】
また、作業手段51を格納非作業状態から前進作業状態に切り換える場合は、第1ロック体81を第1状態に切り換えることにより、第2係合凹部92と格納・後退ロックピン部73との係合を解除して第1ロック体81によるロックを解除した後、回動アーム体11等を機枠2に対して回動させる。すると、この回動に基づいて第1ロック体81の第1係合凹部91と前進ロックピン部76とが自動的に係合し、第1ロック体81によるロックが自動的にかかる。
【0100】
そして、このような農作業機1によれば、把持体131が可動機枠12に固設されこの把持体131が互いに異なる方向に向かって開口するそれぞれ略コ字状の第1コ字状棒部135および第2コ字状棒部150を有するため、作業手段51の状態を切り換える際に機枠2に対して可動機枠12を手動で容易に移動でき、よって、作業手段51の状態を容易に切り換えることができる。
【0101】
しかも、第1コ字状棒部135を有する第1把持部材133は、第1コ字状棒部135の上側前端部から前斜め下方に向かって突出する延長棒部141と、この延長棒部141の前端部に設けられた前側取付板部142と、これら前側取付板部142および延長棒部141間に架設された補強板部145とを有するため、第1把持部材133の耐久性が良好である。
【0102】
また、第1コ字状棒部135と第2コ字状棒部150とが連続して位置し、かつ第2操作体85の把持部130が把持体131の近傍に位置するため、作業手段51の状態を前進作業状態から後退作業状態に連続的にスムーズに行うことができる。
【0103】
また一方、位置調整体62のロック用アーム体61に対する位置調整によって、前進作業時における作業手段51のオフセット作業位置が変更可能となっているため、従来の構成に比べて、作業手段51の前進作業状態のオフセット作業位置を容易に変更できる。
【0104】
さらに、互いに対向した一方側孔部74および他方側孔部77に脱着ピン78が差し込まれ、この差し込まれた脱着ピン78にて位置調整体62がロック用アーム体61に対して固定される構成であるため、オフセット作業位置をより一層容易に変更できる。
【0105】
また、作業手段51の前進作業状態時において第1ロック体81を第1状態から第2状態に切り換えて第1係合凹部91と前進ロックピン部76との係合を解除した後、作業手段51を格納非作業状態に切り換えるために回動アーム体11を機枠2に対して回動させると、この回動に基づいて第2係合凹部92と格納・後退ロックピン部73とが自動的に係合するため、作業手段51を前進作業状態から格納非作業状態に容易に切り換えることができる。
【0106】
さらに、作業手段51の格納非作業状態時において第1ロック体81を第2状態から第1状態に切り換えて第2係合凹部92と格納・後退ロックピン部73との係合を解除した後、作業手段51を前進作業状態に切り換えるために回動アーム体11を機枠2に対して回動させると、この回動に基づいて第1係合凹部91と前進ロックピン部76とが自動的に係合するため、作業手段51を格納非作業状態から前進作業状態に容易に切り換えることができる。
【0107】
また、作業手段51の格納非作業状態時において第2ロック体82を第1状態から第2状態に切り換えて第1係合凹部111と前進・格納ロックピン部31との係合を解除した後、作業手段51を後退作業状態に切り換えるために可動機枠12を回動体13に対して回動させると、この回動に基づいて第2係合凹部112と後退ロックピン部32とが自動的に係合するため、作業手段51を格納非作業状態から後退作業状態に容易に切り換えることができる。
【0108】
さらに、作業手段51の後退作業状態時において第2ロック体82を第2状態から第1状態に切り換えて第2係合凹部112と後退ロックピン部32との係合を解除した後、作業手段51を格納非作業状態に切り換えるために可動機枠12を回動体13に対して回動させると、この回動に基づいて第1係合凹部111と前進・格納ロックピン部31とが自動的に係合するため、作業手段51を後退作業状態から格納非作業状態に容易に切り換えることができる。
【0109】
なお、図12には、第2の実施の形態が示されている。
【0110】
この第2の実施の形態に係る把持体131の第1把持部材133は、第1の実施の形態のものと同じ形状であり、コ字状棒部135、後側取付板部139、延長棒部141、前側取付板部142および補強板部145にて構成されている。
【0111】
また、この第2の実施の形態に係る把持体131の第2把持部材134は、第1の実施の形態のものとは異なり、コ字状棒部135から右側方に向かって突出して正面視で略L字状をなすL字状棒部155のみによって構成されている。このL字状棒部155は、コ字状棒部135の鉛直棒部分137の下端部近傍から右側方に向かって突出して水平状に位置する水平棒部分156と、この水平棒部分156の右端部から上方に向かって突出して鉛直状に位置する鉛直棒部分157とにて構成されている。そして、この第2の実施の形態でも、作業手段51の状態を切り換える際に機枠2に対して可動機枠12を手動で容易に移動できる等の作用効果を奏することができる。なお、例えばL字状棒部155の水平棒部分156の右端部と鉛直棒部分157の下端部との連結部分を円弧状に形成してもよい。
【0112】
また、図13には、第3の実施の形態が示されている。
【0113】
この第3の実施の形態に係る把持体131の第1把持部材133は、第1の実施の形態のものとは異なり、上下方向に沿って鉛直状に位置する鉛直棒部158と、この鉛直棒部158の下端部から前方に向かって突出して水平状に位置する突出棒部159と、この突出棒部159の前端部に固設されフレーム部41の被取付部41aに取り付けられる断面略L字状の取付板部160とにて構成されている。
【0114】
また、この第3の実施の形態に係る把持体131の第2把持部材134は、第1の実施の形態のものとは異なり、鉛直棒部158の下端部近傍から右側方に向かって突出して水平状に位置する水平棒部160のみによって構成されている。そして、この第3の実施の形態でも、作業手段51の状態を切り換える際に機枠2に対して可動機枠12を手動で容易に移動できる等の作用効果を奏することができる。なお、例えば水平棒部160を鉛直棒部158の上端部から側方に向けて突出させるようにしてもよい。
【0115】
さらに、図14ないし図22には、第4の実施の形態が示されている。
【0116】
この第4の実施の形態に係る農作業機1は、前記第1の実施の形態において、機枠2に上下方向の軸65を中心として回動可能に設けられ可動機枠12を機枠2に対して手動で移動させる際に作業者によって把持される伸縮可能な棒状の伸縮把持体(伸縮ハンドル)161を付加したものである。
【0117】
伸縮把持体161は、図20ないし図22等に示されるように、縮む位置と伸び位置との間で長手方向に沿って移動可能な長手状の把持部材(ロッド)162を有している。
【0118】
把持部材162は、例えば長手方向一端面(図20上、左端面)が開口しかつ長手方向他端面(図20上、右端面)が閉鎖した細長円筒状に形成されている。把持部材162の長手方向他端側が、作業者によって把持される把持部(グリップ)163となっている。把持部163は、手が滑り難いゴム等の材質で形成することが好ましい。また、把持部材162の長手方向他端部の内面には、ばね取付部164が形成されている。把持部材162の長手方向一端部の外面には、Eリング等からなる抜止め部170が外方に向かって突出状に形成されている。
【0119】
そして、把持部材162は、連結アーム体63の後端近傍の下面に下方に向かって突設された支持体165にて、移動可能に支持されている。支持体165は、連結アーム体63の下面に固設された突出部166と、この突出部166に固設され把持部材162を移動可能に嵌合支持する両端面開口状で円筒状の支持部(アウターパイプ)167とにて構成されている。なお、把持部材162の抜止め部170が支持部167の端部に当接することにより、把持部材162が支持部167から抜け出ないようになっている。
【0120】
また、伸縮把持体161は、機枠2に対して軸65を中心として水平方向に回動可能でかつ把持部材162内に対して出入り可能な長手状の取付部材である回動部材(引張り金具)171と、この回動部材171と把持部材162とを連結しこの把持部材162を縮み位置側に向けて付勢する弾性変形可能な付勢手段であるばね部材176とを有している。
【0121】
回動部材171の長手方向一端部には取付部172が形成され、この取付部172が軸65に回動可能に取り付けられている。取付部172は、平面視で略3角形状をなす板部分173を有し、この板部分173の両側のテーパ状の側面が把持部材162の長手方向一端部と接触する把持部材接触面174となっている。回動部材171の長手方向他端部には、ばね取付部175が形成されている。
【0122】
ばね部材176は、例えばコイル状の引きばねからなるもので、ばね部材176の一端部が回動部材171のばね取付部175に取り付けられ、ばね部材176の他端部が把持部材162のばね取付部164に取り付けられている。
【0123】
そして、把持部材162は、可動機枠12を機枠2に対して手動で移動させる作業者によって把持された状態でその作業者の人力に基づいてばね部材176の付勢力に抗して縮み位置から伸び位置に移動し、その後、その作業者が手を離すと、ばね部材176の付勢力に基づいて伸び位置から縮み位置に自動的に移動する。
【0124】
図20および図21には伸縮把持体161の縮み状態が示されており、この伸縮把持体161の縮み状態時には、把持部材162が縮み位置に位置し、ばね部材176の全体と回動部材171の取付部172以外の部分とが把持部材162内に位置している。
【0125】
このとき、把持部材162が自然長から引張られた引張状態のばね部材176によって縮み位置側に付勢された状態で、把持部材162の長手方向一端部の2箇所が回動部材171の取付部172の把持部材接触面174に所望の接触圧をもって接触している。このため、把持部材162のガタツキは発生しない。
【0126】
図22には伸縮把持体161の伸び状態が示されており、この伸縮把持体161の伸び状態時には、把持部材162が伸び位置に位置し、回動部材171の全体とばね部材176の回動部材171側の端部とが把持部材162外に露出して位置している。
【0127】
このとき、把持部材162は、把持部163が作業者の手によって把持された状態で、自然長から図21の状態よりもさらに引張られた引張状態のばね部材176の付勢力に抗して、伸び位置に位置している。
【0128】
このため、作業者が把持部材162の把持部163から手を離すと、把持部材162は、ばね部材176の付勢力(弾性復元力)に基づいて、伸び位置からもとの待機位置である縮み位置まで自動的に移動する。
【0129】
そして、このような伸縮把持体161を備えた第4の実施の形態に係る農作業機1の場合には、圃場の隅部で作業手段51を前進作業状態から格納非作業状態を経て後退作業状態に切り換える際、作業者は、把持体(第1ハンドル)131および伸縮把持体(第2ハンドル)161の両方を利用して、可動機枠12を作業手段51とともに機枠2に対して移動(回動を含む)させる。
【0130】
すなわち、まず、作業者は、第1操作体83を操作して第1ロック体81を第1状態から第2状態に切り換えることにより、第1係合凹部91と前進ロックピン部76との係合を解除して第1ロック体81によるロックを解除する。この第1ロック体81の第2状態は格納・後退ロックピン部73に対するロック準備状態である。
【0131】
次いで、作業者は、例えば右の手で把持体131の第1把持部材133の第1コ字状棒部135を把持しかつ左の手で伸縮把持体161の把持部材162の把持部163を把持して、その伸縮把持体161を伸ばした状態のまま、格納・後退ロックピン部73が他方側当接凹部25に当接するまで、アーム体11,61,63を機枠2に対して内側方に回動させる(図14ないし図17参照)。
【0132】
つまり、作業者は、第1コ字状棒部135および把持部163を把持して、可動機枠12を作業手段51とともに機枠2に対して左右方向に略沿って移動させる。このとき、作業者は、可動機枠12の移動方向に対して略直角方向の第1コ字状棒部135および把持部163を把持することで、これら第1コ字状棒部135および把持部163に力を加えやすく、可動機枠12を機枠2に対して効率的に移動させることが可能である。
【0133】
なお、作業者の手から把持部163に加えられる力の向きは、把持部材162の長手方向に対して交差する方向であるため、この力が把持部163に加わっている間は、把持部材162の外面が支持部167の内面に圧接係合し、把持部材162はばね部材176の付勢力によって縮み位置に戻らない。
【0134】
そして、この可動機枠12の移動により、この可動機枠12で支持された作業手段51が前進作業状態から格納非作業状態に切り換わる。この際、アーム体11,61,63の回動に基づいて、第1ロック体81の第2係合凹部92と格納・後退ロックピン部73とが自動的に係合し、第1ロック体81によるロックが自動的にかかる。また、作業手段51が格納非作業状態になった時点で、作業者が把持部材162の把持部163から手を離すと、把持部材162はばね部材176の付勢力に基づいて伸び位置から縮み位置に戻る(図18参照)。
【0135】
次いで、作業者は、第2操作体85を操作して第2ロック体82を第1状態から第2状態に切り換えることにより、第1係合凹部111と前進・格納ロックピン部31との係合を解除して第2ロック体82によるロックを解除する。この第2ロック体82の第2状態は後退ロックピン部32に対するロック準備状態である。
【0136】
このとき、第2ロック体82は、他方側当接部104がストッパピン部50に当接するまで回動するが、この回動途中で第2ばね86の付勢方向が変わるため、この付勢方向の変更後においては第2ロック体82は第2ばね86の付勢力で回動する。そして、第2ロック体82が第2状態になると、第1係合凹部111が前進・格納ロックピン部31から離れ、第1係合凹部111と前進・格納ロックピン部31との係合が解除される。
【0137】
次いで、作業者は、例えば把持体131の第2把持部材134の第2コ字状棒部150を両手で把持して、後退ロックピン部32が他方側当接凹部49に当接するまで、可動機枠12を回動体13および回動アーム体11等に対して回動させる。つまり、作業者は、把持体131のうち可動機枠12の回動支点(軸15)から最も離れて位置する部分、つまり傾斜状の第2コ字状棒部150の円弧棒部分153側の部分を把持して、可動機枠12を作業手段51とともに機枠2に対して移動させる。このとき、作業者は、回動支点(軸15)から最も離れた位置で第2コ字状棒部150を把持することで、この第2コ字状棒部150に力を加えやすく、可動機枠12を機枠2に対して効率的に移動させることが可能である。
【0138】
そして、この可動機枠12の移動により、この可動機枠12で支持された作業手段51が格納非作業状態から後退作業状態に切り換わる(図19参照)。この際、可動機枠12の回動に基づいて、第2ロック体82の第2係合凹部112と後退ロックピン部32とが自動的に係合し、第2ロック体82によるロックが自動的にかかる。作業者は、元の畦に沿ってトラクタを後退走行させる。すると、作業手段51が後退作業状態で後方(進行方向)に移動しながら畦端部まで畦塗り作業をする。なお、後退作業状態から前進作業状態に戻す場合にも、同じようにして把持体131および伸縮把持体161の両方を利用する。
【0139】
そして、このような第4の実施の形態であっても、作業手段51の状態を切り換える際に、機枠2に対して可動機枠12を手動で容易に移動できる等の作用効果を奏することができる。
【0140】
特に、この第4の実施の形態に係る農作業機1は伸縮可能な伸縮把持体161を備えた構成であるため、機枠2に対して可動機枠12をより一層容易に手動で移動させることができる。
【0141】
また、伸縮把持体161は、把持部材162を引き出すだけで簡単に延長でき、また、把持部材162の長手方向に対して交差する方向に力を加えているときには伸縮把持体161を伸縮方向にロックでき、伸縮把持体161を離すだけで自動的に縮めることができる。
【0142】
さらに、伸縮把持体161の縮み状態時にも把持部材162がばね部材176で縮み位置側に付勢されているので、把持部材162のガタツキの発生を適切に防止できる。
【0143】
なお、作業手段51を前進作業状態から格納非作業状態にする際(格納非作業状態から前進作業状態にする際も)に伸縮把持体161のみを両手で把持し、作業手段51を格納非作業状態から後退作業状態にする際(後退作業状態から格納非作業状態にする際も)に把持体131のみを両手で把持するようにしてもよい。
【0144】
また、把持部材162を縮み位置側に向けて付勢する付勢手段は、ばね部材176には限定されず、例えばゼンマイばねや、ガススプリング等でもよい。
【0145】
さらに、把持部材162内に付勢手段が位置する構成には限定されず、例えばワイヤーを用いて、付勢手段を把持部材162外の位置に設けるようにしてもよい。
【0146】
なお、例えば伸縮把持体161を第2の実施の形態や第3の実施の形態に付加してもよい。
【0147】
また、いずれの実施の形態においても、例えば作業手段51がオフセット作業として溝掘り作業をするもの等でもよい。なお、前記第1〜第4の実施の形態に係る構成を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0148】
1 農作業機
2 機枠
12 可動機枠
51 作業手段
131 把持体
133 第1把持部材
134 第2把持部材
135 第1コ字状棒部(コ字状棒部)
139 後側取付板部
141 延長棒部
142 前側取付板部
145 補強板部
150 第2コ字状棒部
155 L字状棒部
158 鉛直棒部
160 水平棒部
161 伸縮把持体
162 把持部材
176 付勢手段であるばね部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結される機枠と、
この機枠に対して移動可能な可動機枠と、
この可動機枠に設けられた作業手段と、
前記可動機枠に設けられ、この可動機枠を前記機枠に対して手動で移動させる際に把持される把持体とを備え、
前記把持体は、
第1把持部材と、
この第1把持部材から側方に向かって突出する第2把持部材とを有する
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
第1把持部材は、側面視で前方に向かって開口する第1コ字状棒部を有し、
第2把持部材は、前記第1コ字状棒部から側方に向かって突出する第2コ字状棒部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
第2コ字状棒部は、側面視で前高後低の傾斜方向に沿って位置する
ことを特徴とする請求項2記載の農作業機。
【請求項4】
第1把持部材は、
第1コ字状棒部の上側前端部から前斜め下方に向かって突出する延長棒部と、
この延長棒部の前端部に設けられた前側取付板部と、
この前側取付板部と前記延長棒部との間に架設された補強板部と、
前記第1コ字状棒部の下側前端部に設けられた後側取付板部とを有する
ことを特徴とする請求項2または3記載の農作業機。
【請求項5】
第1把持部材は、側面視で前方に向かって開口するコ字状棒部を有し、
第2把持部材は、前記コ字状棒部から側方に向かって突出するL字状棒部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項6】
第1把持部材は、上下方向に沿って位置する鉛直棒部を有し、
第2把持部材は、前記鉛直状棒部から側方に向かって突出する水平棒部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項7】
走行車に連結される機枠と、
この機枠に対して移動可能な可動機枠と、
この可動機枠に設けられた作業手段と、
前記可動機枠を前記機枠に対して手動で移動させる際に把持される伸縮可能な伸縮把持体と
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項8】
伸縮把持体は、
縮み位置と伸び位置との間で移動可能な把持部材と、
この把持部材を前記縮み位置側に向けて付勢する付勢手段とを有し、
前記把持部材は、作業者によって把持された状態でその作業者の人力に基づいて前記付勢手段の付勢力に抗して前記縮み位置から前記伸び位置に移動し、その後、その作業者が手を離すと、前記付勢手段の付勢力に基づいて前記伸び位置から前記縮み位置に移動する
ことを特徴とする請求項7記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−24080(P2012−24080A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129505(P2011−129505)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】