説明

農作業機

【課題】オフセット作業位置を容易に変更できる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、トラクタに連結する機枠2を備え、この機枠2には回動アーム体11を回動可能に設ける。この回動アーム体11には可動機枠12を回動可能に設ける。この可動機枠にはオフセット作業位置に位置してオフセット作業をする作業手段51を設ける。機枠2にはロック用アーム体61を回動可能に設ける。係合ピン部76を有する位置調整体62をロック用アーム体61に位置調整可能に設ける。位置調整体62のロック用アーム体61に対する位置調整によって、オフセット作業位置が変更可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット作業位置を容易に変更できる農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、走行車であるトラクタに連結される機枠と、機枠に回動可能に設けられた回動アーム体と、回動アーム体に回動可能に設けられた可動機枠と、可動機枠に設けられオフセット作業位置に位置してオフセット作業、すなわち例えば畦塗り作業をする作業手段とを備えている。
【0004】
また、この従来の農作業機は、機枠および可動機枠間に架設されオフセット作業位置を変更するための手動式の第1シリンダと、機枠および可動機枠間に架設され作業手段の状態を切り換えるための手動式の第2シリンダとを備えている。
【0005】
この第1シリンダは、シリンダ側孔部が形成された筒状のシリンダ本体と、このシリンダ本体内にスライド可能に挿入されロッド側孔部が複数形成されたロッドとを有している。
【0006】
そして、ロッドの複数のロッド側孔部のうち選択された一のロッド側孔部とシリンダ本体のシリンダ側孔部とが互いに対向し、これら互いに対向したロッド側孔部およびシリンダ側孔部に脱着ピンが差し込まれ、この差し込まれた脱着ピンにてロッドがシリンダ本体に対して固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−267098号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の農作業機では、第1シリンダのロッドをシリンダ本体に対してスライドさせる際に、そのロッドとともに可動機枠が不可避的に移動するため、その可動機枠が支持した作業手段が水平でない限り、脱着ピンを差し込むための孔合わせがやりづらく、オフセット作業位置の変更に手間取るおそれがある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、オフセット作業位置を容易に変更できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の農作業機は、走行車に連結される機枠と、この機枠に回動可能に設けられた回動アーム体と、この回動アーム体に回動可能に設けられた可動機枠と、この可動機枠に設けられ、オフセット作業位置に位置してオフセット作業をする作業手段と、前記機枠に回動可能に設けられたロック用アーム体と、係合ピン部を有し、前記ロック用アーム体に位置調整可能に設けられた位置調整体と、前記係合ピン部との係合により前記回動アーム体の前記機枠に対する回動を規制するロック体とを備え、前記位置調整体の前記ロック用アーム体に対する位置調整によって前記オフセット作業位置が変更可能となっているものである。
【0011】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、ロック用アーム体は、一方側孔部を有し、位置調整体は、他方側孔部を有し、前記一方側孔部および前記他方側孔部の少なくとも一方は、複数であり、互いに対向した前記一方側孔部および前記他方側孔部に脱着ピンが差し込まれ、この差し込まれた脱着ピンにて前記位置調整体が前記ロック用アーム体に対して固定されているものである。
【0012】
請求項3記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、位置調整体のロック用アーム体に対する位置調整によってオフセット作業位置が任意に変更可能となっているものである。
【0013】
請求項4記載の農作業機は、請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機において、作業手段は、走行車の前進走行時には前進作業状態でオフセット作業をし、前記走行車の後進走行時には後進作業状態でオフセット作業をするものであり、位置調整体のロック用アーム体に対する位置調整によって少なくとも前記前進作業状態のオフセット作業位置が変更可能となっているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、位置調整体のロック用アーム体に対する位置調整によってオフセット作業位置が変更可能となっているため、オフセット作業位置を容易に変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る農作業機の前進作業時の平面図である。
【図2】同上農作業機の非作業時の平面図である。
【図3】同上農作業機の後退作業時(リターン作業時)の平面図である。
【図4】同上農作業機の部分平面図である。
【図5】同上農作業機のロック用アーム部分の側面図である。
【図6】同上農作業機のロック用アーム部分の分解平面図である。
【図7】(a)〜(c)は前進作業状態のオフセット作業位置を説明するための部分平面図である。
【図8】同上農作業機の作業手段を前進作業状態から後退作業状態に切り換える場合の動作説明図である。
【図9】図8に続く動作説明図である。
【図10】図9に続く動作説明図である。
【図11】図10に続く動作説明図である。
【図12】図11に続く動作説明図である。
【図13】図12に続く動作説明図である。
【図14】図13に続く動作説明図である。
【図15】作業手段の後退作業状態時において第2ロック体によるロックを解除した状態を示す図である。
【図16】作業手段の格納非作業状態時において第1ロック体によるロックを解除した状態を示す図である。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る農作業機のロック用アーム部分の分解平面図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係る農作業機のロック用アーム部分の分解平面図である。
【図19】同上ロック用アーム部分の側面図である。
【図20】本発明の第4の実施の形態に係る農作業機のロック用アーム部分の分解平面図である。
【図21】同上農作業機の連結アーム体の分解平面図である。
【図22】同上連結アーム体の平面図である。
【図23】(a)〜(c)は後退作業状態のオフセット作業位置を説明するための部分平面図である。
【図24】本発明の第5の実施の形態に係る農作業機の部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1ないし図3において、1は農作業機で、この農作業機1は、例えば図示しない走行車であるトラクタの後部に連結して使用する牽引式の畦塗り機(オフセット作業機)である。
【0018】
つまり、農作業機1は、トラクタの後部に連結された状態でトラクタの前進走行により圃場の畦に沿って進行方向である前方(図1では、上方向)に向かって移動しながら、オフセット作業、すなわち例えば畦塗り作業(畦修復作業)をするものである。
【0019】
なお、圃場の隅部では、図3に示されるように、農作業機1は、トラクタの後進走行(バック走行)により圃場の畦に沿って進行方向である後方(図3では、下方向)に向かって移動しながら畦塗り作業をする。
【0020】
農作業機1は、トラクタの後部の3点リンク部(作業機昇降装置)に連結される固定機枠である機枠2を備えている。
【0021】
機枠2は、トラクタの後部の3点リンク部に連結されるトップマストおよびロワアーム等にて構成された3点連結部(図示せず)を有している。機枠2は、左右方向中央部にミッションケース部4を有し、このミッションケース部4にて前後方向の入力軸5が回転可能に支持されている。入力軸5は、トラクタのPTO軸に動力伝達手段を介して接続される。
【0022】
機枠2は、第1取付部6、第2取付部7および第3取付部8を有している。第1取付部6は機枠2の左右方向中央部に位置し、第2取付部7および第3取付部8は機枠2の左右方向中央部よりやや左側の部分に位置している。
【0023】
また、農作業機1は、機枠2に上下方向の軸14を中心として回動可能に設けられた回動アーム体11と、この回動アーム体11に上下方向の軸15を中心として回動可能に設けられた可動機枠12と、この可動機枠12に上下方向の軸15を中心として回動可能に設けられた位置決め用の回動体13とを備えている。
【0024】
なお、可動機枠12は伝動ケースの機能を兼ねたものであり、この可動機枠12内に収納された動力伝達手段は、ジョイント(図示せず)を介して入力軸5に接続されている。
【0025】
回動アーム体11は、図1等に示されるように、長手状のアーム本体部16と、このアーム本体部16の一側面である左側面にそれぞれ突設されたばね取付部17、ロック体取付部18および操作体取付部19とを有している。
【0026】
アーム本体部16の前端部が機枠2の第1取付部6に軸14を中心として回動可能に取り付けられている。アーム本体部16の後端部には、可動機枠12が軸15を中心として回動可能に取り付けられている。
【0027】
ロック体取付部18は、図4等に示されるように、平面視で略矩形板状をなすもので、このロック体取付部18の先端部上面には、ストッパピン部21が上方に向かって突設されている。ロック体取付部18の先端側下面には、互いに離間対向する1対のガイド突部22,23が下方に向かって突設されている。一方のガイド突部22は棒状のもので、他方のガイド突部23は板状のものである。
【0028】
なお、例えば図示しないが、両ガイド突部22,23がいずれも棒状または板状のものでもよく、また、略U字状の部材にて、後述のロック用アーム体61をガイドするガイド部を構成してもよい。
【0029】
また、ロック体取付部18の先端側一側面には凹弧面状の一方側当接凹部24が形成され、ロック体取付部18の先端側他側面には凹弧面状の他方側当接凹部25が形成されている。
【0030】
回動体13は、図1等に示されるように、互いに異なる方向に向かって突出する3つの突出部、つまり第1突出部26、第2突出部27および第3突出部28を有している。第1突出部26の先端部にはアーム体取付部29が設けられている。第2突出部27の先端部上面には、略円柱状の前進・格納ロックピン部(第2ロック用の第1係合ピン部)31が上方に向かって突設されている。第3突出部28の先端部上面には、略円柱状の後退ロックピン部(第2ロック用の第2係合ピン部)32が上方に向かって突設されている。互いに離れて位置する前進・格納ロックピン部31および後退ロックピン部32は、平面視で軸15を中心として略対称に位置している。
【0031】
可動機枠12は、図1等に示されるように、回動アーム体11の後端部に回動可能に取り付けられたフレーム部41を有している。フレーム部41には、上面削り体取付部42、盛土体取付部43、畦形成体取付部44および操作体取付部45が設けられている。
【0032】
また、フレーム部41には、図4等に示されるように、ばね取付部46およびロック体取付部47が設けられている。ロック体取付部47は、平面視で略T字をなすもので、このロック体取付部47の先端側一側面には略凹状の一方側当接凹部48が形成され、このロック体取付部47の先端側他側面には略凹状の他方側当接凹部49が形成されている。また、ロック体取付部47には取付板40がねじ等にて固定的に取り付けられ、この取付板40の先端部上面にはストッパピン部50が上方に向かって突設されている。なお、取付板40には、ばね用孔46aを有するばね取付部46が形成されている。
【0033】
さらに、農作業機1は、図1ないし図3等に示されるように、可動機枠12に設けられ複数のオフセット作業位置のうち、トラクタの大きさ等に応じて選択された一のオフセット作業位置に位置して畦塗り作業(オフセット作業)をする作業手段51を備えている。
【0034】
作業手段51は、トラクタの前進走行時(前進作業時)にはトラクタの後方部から一側方(右側方)に向かって突出して位置する前進作業状態となって前方に移動しながら畦塗り作業をし、トラクタの後進走行時(後進作業時)にはトラクタの後方部から他側方(左側方)に向かって突出して位置する後進作業状態となって後方に移動しながら畦塗り作業をし、運搬時等の非作業時にはトラクタの後方部から側方に突出せずトラクタの幅内でトラクタの後方に位置する格納非作業状態となるものである。
【0035】
つまり、作業手段51は、作業者の手動によって前進作業状態、格納非作業状態および後退作業状態に選択的に切り換え可能となっている。また、この農作業機1では、少なくとも前進作業状態のオフセット作業位置が変更可能となっている。
【0036】
ここで、作業手段51は、回転しながら元畦の土を耕耘して盛り上げる盛土体(ロータリ)52と、盛土体52の進行方向後方で回転しながら盛土を締め固めて新畦を形成する畦形成体(ディスク)53と、盛土体52の進行方向前方で回転しながら元畦の上面を削る上面削り体54とを有している。なお、これらの各作業部52,53,54は入力軸5側からの動力で駆動回転するようになっており、また図示しないカバーにて覆われている。
【0037】
上面削り体54は、可動機枠12の上面削り体取付部42に回転可能に取り付けられている。盛土体52は、可動機枠12の盛土体取付部43に回転可能に取り付けられている。畦形成体53は、可動機枠12の畦形成体取付部44に回転可能に取り付けられている。また、上面削り体54は、回転軸56およびこの回転軸56に取り付けられた切削爪57を有している。盛土体52は、回転軸およびこの回転軸に取り付けられた耕耘爪を有している。畦形成体53は、回転軸58、この回転軸58の先端側に取り付けられた円筒状の畦上面形成部材59および回転軸58の基端側に取り付けられた截頭円錐状の畦側面形成部材60を有している。なお、作業手段51の前進作業状態時には、上面削り体54、盛土体52および畦形成体53が前から後に向かって順に位置するが、後退作業状態になるとその順が逆になる。
【0038】
また一方、農作業機1は、図1ないし図3等に示されるように、機枠2に上下方向の軸64を中心として回動可能に設けられ回動アーム体11の長手方向に沿って位置する長手状の1本のロック用アーム体61と、このロック用アーム体61にこのロック用アーム体61の長手方向に沿って位置調整可能に設けられたスライド部材等の位置調整体62と、機枠2および回動体13間に架設されこれら機枠2と回動体13とを連結する1本の連結アーム体63とを備えている。
【0039】
ロック用アーム体61の前端部が機枠2の第2取付部7に上下方向の軸64を中心として回動可能に取り付けられ、ロック用アーム体61の後端部が自由端部となっている。ロック用アーム体61は、回動アーム体11の両ガイド突部22,23間にこれら両ガイド突部22,23に対してスライド可能に挿通されている。このため、ロック用アーム体61は、回動アーム体11に対してその長手方向に沿った状態のまま、この回動アーム体11と一体となって機枠2に対して回動する。
【0040】
連結アーム体63の前端部が機枠2の第3取付部8に上下方向の軸65を中心として回動可能に取り付けられ、連結アーム体63の後端部が回動体13のアーム体取付部29に上下方向の軸66を中心として回動可能に取り付けられている。
【0041】
ここで、ロック用アーム体61は、図5および図6等に示されるように、略4角筒状で長手状のアーム本体部71を有している。アーム本体部71の一端部である前端部には略円筒状の取付部72が設けられ、この取付部72が機枠2の第2取付部7に軸64を介してこの軸64を中心として回動可能に取り付けられている。アーム本体部71の他端部である後端部が自由端部70となっている。
【0042】
アーム本体部71の前端側上面には、略円柱状の格納・後退ロックピン部(第1ロック用の第2係合ピン部)73が上方に向かって突設されている。アーム本体部71の後端側には、このアーム本体部71の長手方向に沿って等間隔をおいて並ぶ上下開口状の複数、すなわち例えば3つの一方側孔部74が形成されている。つまり、アーム本体部71の上下板部に、一方側孔部74が間隔をおいて並設されている。
【0043】
位置調整体62は、両端面が開口した略4角筒状の筒状本体部75を有している。筒状本体部75は、ロック用アーム体61のアーム本体部71の外周面にこのアーム本体部71の長手方向に沿ってスライド可能に嵌合されている。
【0044】
筒状本体部75の一方側上面には、略円柱状の係合ピン部である前進ロックピン部(第1ロック用の第1係合ピン部)76が上方に向かって突設されている。この前進ロックピン部76は、格納・後退ロックピン部73と離間対向して位置している。また、筒状本体部75の他方側における上下板部には、上下開口状の1つの他方側孔部77が形成されている。
【0045】
そして、ロック用アーム体61の複数の一方側孔部74のうち選択された一の一方側孔部74と位置調整体62の他方側孔部77とが互いに対向し、これら互いに対向した一方側孔部74および他方側孔部77に脱着ピン78が上方から差し込まれ、この差し込まれた脱着ピン78にて位置調整体62がロック用アーム体61に対して固定されている。脱着ピン78を抜けば、その固定が解除され、位置調整体62がロック用アーム体61に対してスライド可能となる。なお、脱着ピン78は、ピン部78aとこのピン部78aの上端部に設けられた鍔部78bとにて構成されている。
【0046】
このため、この農作業機1では、脱着ピン78の抜き差しおよび位置調整体62のロック用アーム体61に対するスライドに基づく、位置調整体62のロック用アーム体61に対する位置調整によって、作業手段51の前進作業状態のオフセット作業位置が段階的に変更可能となっている。
【0047】
つまり、図7(a)〜(c)に示されるように、脱着ピン78を差し込む一方側孔部74の選択変更により、作業手段51の前進作業状態時におけるオフセット作業位置(作業手段51のトラクタに対する側方への突出量)を変更することが可能となっている。
【0048】
図7(a)の長さaは、3つの一方側孔部74のうち1番後の一方側孔部74aに脱着ピン78を差し込んだ場合の両軸14,15間の左右方向距離である。図7(b)の長さbは、3つの一方側孔部74のうち後から2番目の一方側孔部74bに脱着ピン78を差し込んだ場合の両軸14,15間の左右方向距離である。図7(c)の長さcは、3つの一方側孔部74のうち後から3番目の一方側孔部74cに脱着ピン78を差し込んだ場合の両軸14,15間の左右方向距離である。そして、a>b>cである。
【0049】
また、農作業機1は、図1ないし図3等に示されるように、第1ロック用のロックピン部73,76との当接係合により回動アーム体11の機枠2に対する回動を規制して回動アーム体11を機枠2に対してロックする回動可能な略板状のロック体である第1ロック体81と、第2ロック用のロックピン部31,32との当接係合により可動機枠12の回動体13に対する回動を規制して可動機枠12を回動体13に対してロックする回動可能な略板状のロック体である第2ロック体82とを備えている。
【0050】
さらに、農作業機1は、第1ロック体81を回動させるための棒状の第1操作体83と、回動アーム体11のばね取付部17と第1ロック体81との間に架設されこの第1ロック体81を付勢する第1付勢体である第1ばね84とを備えている。
【0051】
また、農作業機1は、第2ロック体82を回動させるための棒状の第2操作体85と、可動機枠12のばね取付部46と第2ロック体82との間に架設されこの第2ロック体82を付勢する第2付勢体である第2ばね86とを備えている。
【0052】
ここで、第1ロック体(第1フック体)81は、図4等に示されるように、回動アーム体11のロック体取付部18に上下方向の軸(回動支点)90を中心として回動可能に取り付けられ、その軸90を中心とする回動により第1状態(図1の状態)および第2状態(図2、図3の状態)に選択的に切り換え可能となっている。
【0053】
第1ロック体81は、第1状態時に一方側当接凹部24に当接係合した前進ロックピン部76との当接係合により回動アーム体11の機枠2に対する回動を規制する凹弧面状の第1係合凹部91と、第2状態時に他方側当接凹部25に当接係合した格納・後退ロックピン部73との当接係合により回動アーム体11の機枠2に対する回動を規制する凹弧面状の第2係合凹部92とを同じ側つまり軸90側に有している。
【0054】
また、第1ロック体81は、回動アーム体11のロック体取付部18の上面に軸90を中心として回動可能に取り付けられた取付板部93と、この取付板部93の基端側に一体に設けられ第1ロック体81の回動方向に略沿った方向に長手方向を有する係合板部である長手状板部94とを有している。
【0055】
そして、一方側凹部である第1係合凹部91が長手状板部94の長手方向一端側における取付板部93側の一側面に凹状に形成され、他方側凹部である第2係合凹部92が長手状板部94の長手方向他端側における取付板部93側の一側面に凹状に形成されている。つまり、第1係合凹部91および第2係合凹部92が長手状板部94の一側面に形成されている。長手状板部94の長手方向中央部の他側面には、先端面が凸弧面状に形成された突出板部95が一体に突設されている。
【0056】
さらに、長手状板部94の長手方向一端面には、前進ロックピン部76に当接する凸弧面状の一方側当接部96が形成されている。長手状板部94の長手方向他端面には、格納・後進ロックピン部73に当接する凸弧面状の他方側当接部97が形成されている。一方側当接部96は、他方側当接部97よりも長く、他方側当接部97に比べて大きな突出量をもって取付板部93側とは反対側に向かって突出している。なお、例えば図示しないが、一方側当接部96および他方側当接部97を同じ長さにして第1ロック体81全体を対称形状としてもよい。
【0057】
また、長手状板部94の長手方向他端側にはばね用孔98が形成され、このばね用孔98に圧縮状態の第1ばね84の一端部が挿入され、この第1ばね84の他端部がばね取付部17のばね用孔17aに挿入されている。第1ばね84は、支点越えにより第1ロック体81を2方向(時計回りおよび反時計回り)に選択的に付勢可能である。つまり、ばね用孔98が作用ラインに対して一方側にあるのか他方側にあるかによって、第1ばね84の付勢方向が変わる(図8、図9参照)。
【0058】
さらに、取付板部93の先端面には、第1ロック体81の回動支点(軸90)を中心とする仮想円に沿った円弧面99が形成されている。取付板部93の先端部一方側には、ストッパピン部21との当接係合により第1ロック体81のロック体取付部18に対する一方向(図4上、時計回り)の回動を規制する一方側凸部(一方側当接部)101が円弧面99に連続して形成されている。取付板部93の先端部他方側には、ストッパピン部21との当接係合により第1ロック体81のロック体取付部18に対する他方向(図4上、反時計回り)の回動を規制する他方側凸部(他方側当接部)102が円弧面99に連続して形成されている。
【0059】
また、第2ロック体(第2フック体)82は、可動機枠12のロック体取付部47に上下方向の軸(回動支点)110を中心として回動可能に取り付けられ、その軸110を中心とする回動により第1状態(図1、図2の状態)および第2状態(図3の状態)に選択的に切り換え可能となっている。
【0060】
第2ロック体82は、第1状態時に一方側当接凹部48に当接係合した前進・格納ロックピン部31との当接係合により可動機枠12の回動体13に対する回動を規制する凹弧面状の第1係合凹部111と、第2状態時に他方側当接凹部49に当接係合した後退ロックピン部32との当接係合により可動機枠12の回動体13に対する回動を規制する凹弧面状の第2係合凹部112とを同じ側つまり軸110側に有している。
【0061】
また、第2ロック体82は、可動機枠12のロック体取付部47の上面に軸110を中心として回動可能に取り付けられた取付板部113と、この取付板部113の基端側に一体に設けられ第2ロック体82の回動方向に略沿った方向に長手方向を有する長手状板部114とを有している。
【0062】
そして、一方側凹部である第1係合凹部111が長手状板部114の長手方向一端側における取付板部113側の一側面に凹状に形成され、他方側凹部である第2係合凹部112が長手状板部114の長手方向他端側における取付板部113側の一側面に凹状に形成されている。つまり、第1係合凹部111および第2係合凹部112が長手状板部114の一側面に形成されている。
【0063】
さらに、長手状板部114の長手方向一端面には、前進・格納ロックピン部31に当接する凸弧面状の一方側当接部116が形成されている。長手状板部114の長手方向他端面には、後退ロックピン部32に当接する凸弧面状の他方側当接部117が形成されている。一方側当接部116と他方側当接部117とは同じ長さである。
【0064】
また、取付板部113のうち第1係合凹部111と対向する部分には凸部115が形成され、この凸部115にばね用孔118が形成されている。そして、このばね用孔118に圧縮状態の第2ばね86の一端部が挿入され、この第2ばね86の他端部がばね取付部46のばね用孔46aに挿入されている。第2ばね86は、支点越えにより第2ロック体82を2方向(時計回りおよび反時計回り)に選択的に付勢可能である。つまり、ばね用孔118が作用ラインに対して一方側にあるのか他方側にあるかによって、第2ばね86の付勢方向が変わる(図11、図12参照)。
【0065】
さらに、長手状板部114は、取付板部113側とは反対側の他側面に一方側当接部103および他方側当接部104を有している。一方側当接部103は、ストッパピン部50との当接により第2ロック体82のロック体取付部47に対する一方向(図4上、反時計回り)の回動を規制する。他方側当接部104は、ストッパピン部50との当接により第2ロック体82のロック体取付部47に対する他方向(図4上、時計回り)の回動を規制する。
【0066】
一方、第1操作体(第1レバー)83は、図1等に示されるように、例えば軸120を介して互いに回動可能に連結された棒状の先端側部材121と棒状の基端側部材122とにて構成されている。先端側部材121の先端部が第1ロック体81の突出部95に軸123を中心として回動可能に取り付けられている。基端側部材122の先端部が回動アーム体11の操作体取付部19に軸124を中心として回動可能に取り付けられている。基端側部材122の基端側が作業者によって把持される把持部125となっている。
【0067】
第2操作体(第2レバー)85は、例えば軸126を介して互いに回動可能に連結された棒状の先端側部材127と棒状の基端側部材128とにて構成されている。先端側部材127の先端部が第2ロック体82の長手状板部114の中央部に軸119を中心として回動可能に取り付けられている。基端側部材128の中間部が可動機枠12の操作体取付部45に軸129を中心として回動可能に取り付けられている。基端側部材128の基端側が作業者によって把持される把持部130となっている。
【0068】
なお、図示しないが、農作業機1は、可動機枠12を機枠2に対して手動で移動させる際等に作業者によって把持されるハンドル等の把持体を備えている。この把持体は、例えば可動機枠12に取り付けられている。
【0069】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0070】
図1および図8には、作業手段51が前進作業状態に設定された状態が示されている。
【0071】
この状態では、第1ロック体81は、第1ばね84の付勢力で一方側凸部101がストッパピン部21に当接した第1状態となっており、第1係合凹部91が一方側当接凹部24に当接した前進ロックピン部76と係合してこの前進ロックピン部76が第1係合凹部91と一方側当接凹部24とに挟持されている。その結果、回動アーム体11、ロック用アーム体61、連結アーム体63および回動体13が機枠2に対してロックされている。
【0072】
また、第2ロック体82は、第2ばね86の付勢力で一方側当接部103がストッパピン部50に当接した第1状態となっており、第1係合凹部111が一方側当接凹部48に当接した前進・格納ロックピン部31と係合してこの前進・格納ロックピン部31が第1係合凹部111と一方側当接凹部48とにて挟持されている。その結果、可動機枠12が回動体13に対してロックされている。
【0073】
ここで、例えばトラクタが比較的小型なため、作業手段51の前進作業状態のオフセット作業位置(トラクタに対する側方への突出量)を変更する必要がある場合、つまり作業手段51を前進作業状態のまま機枠2に対して移動させる場合には、まず、作業者は、図9に示すように、第1操作体83の把持部125を把持して、第1ばね84の付勢力に抗して第1ロック体81を回動させて第1状態から第2状態に切り換える。
【0074】
このとき、第1ロック体81は、他方側凸部102がストッパピン部21に当接するまで回動するが、この回動途中で第1ばね84の付勢方向が変わるため、この付勢方向の変更後においては第1ロック体81は第1ばね84の付勢力で回動する。
【0075】
そして、第1ロック体81が第2状態になると、第1係合凹部91が前進ロックピン部76から離れ、第1係合凹部91と前進ロックピン部76との係合が解除される。
【0076】
次いで、作業者は、アーム体11,61,63を機枠2に対して内側方に若干回動させてから、脱着ピン78を一の一方側孔部74および他方側孔部77から一旦抜いた後、位置調整体62をロック用アーム体61に対してスライドさせ、一の一方側孔部74とは異なる他の一方側孔部74と他方側孔部77とを互いに対向させ、これら対向した孔部74,77に脱着ピン78を差し込む。この際の孔合わせは、ロック用アーム体61に対して位置調整体62のみをスライドさせればよいので、作業者にとって容易である。
【0077】
次いで、作業者は、前進ロックピン部76が一方側当接凹部24に当接するまで、アーム体11,61,63を機枠2に対して外側方に若干回動させてから、第1操作体83を操作して第1ロック体81を第1状態に戻す。
【0078】
すると、第1ロック体81の第1係合凹部91が一方側当接凹部24に当接した前進ロックピン部76と係合し、作業手段51が変更後のオフセット作業位置に設定される(図7(b)、(c)参照)。
【0079】
こうして、作業手段51のオフセット作業位置の変更作業が完了する。なお、図2に示す格納非作業状態時や図3に示す後退作業状態時においては、前進ロックピン部76がフリーであるため、第1ロック体81の状態を変えることなく、位置調整体62のロック用アーム体61に対する位置調整によってオフセット作業位置を変更できる。
【0080】
また、図1および図8の状態からオフセット作業位置を変更する必要がない場合には、作業者は、元の畦に沿ってトラクタを前進走行させる。すると、作業手段51が所望のオフセット作業位置に位置した前進作業状態で前方(進行方向)に移動しながら畦塗り作業をする。
【0081】
畦塗り作業が進み、圃場の隅部に到達すると、作業者は、作業手段51を前進作業状態から格納非作業状態を経て後退作業状態に切り換える。
【0082】
すなわち、まず、作業者は、図9に示すように、第1操作体83を操作して第1ロック体81を第1状態から第2状態に切り換えることにより、第1係合凹部91と前進ロックピン部76との係合を解除して第1ロック体81によるロックを解除する。この第1ロック体81の第2状態は格納・後退ロックピン部73に対するロック準備状態である。
【0083】
次いで、作業者は、図10および図11に示すように、ハンドル等の把持体(図示せず)を把持して、格納・後退ロックピン部73が他方側当接凹部25に当接するまで、アーム体11,61,63を機枠2に対して内側方に回動させる。すると、作業手段51が前進作業状態から格納非作業状態に切り換わる。
【0084】
この際、アーム体11,61,63の回動に基づいて、第1ロック体81の第2係合凹部92と格納・後退ロックピン部73とが自動的に係合し、第1ロック体81によるロックが自動的にかかる。
【0085】
つまり、このアーム体11,61,63の回動途中(ロックがかかる直前)で、第1ロック体81の他方側当接部97が格納・後退ロックピン部73に当接すると、第1ロック体81は、そのピン部73にて押されて一方向(図中の矢印方向)へ少しだけ回動し、その後、第1ばね84の付勢力で反対の他方向へ回動してもとの第2状態に戻る。すると、第2係合凹部92が他方側当接凹部25に当接した格納・後退ロックピン部73と係合してこの格納・後退ロックピン部73が第2係合凹部92と他方側当接凹部25とに挟持され、その結果、回動アーム体11等が機枠2に対してロックされる。
【0086】
次いで、作業者は、図12に示すように、第2操作体85を操作して第2ロック体82を第1状態から第2状態に切り換えることにより、第1係合凹部111と前進・格納ロックピン部31との係合を解除して第2ロック体82によるロックを解除する。この第2ロック体82の第2状態は後退ロックピン部32に対するロック準備状態である。
【0087】
このとき、第2ロック体82は、他方側当接部104がストッパピン部50に当接するまで回動するが、この回動途中で第2ばね86の付勢方向が変わるため、この付勢方向の変更後においては第2ロック体82は第2ばね86の付勢力で回動する。そして、第2ロック体82が第2状態になると、第1係合凹部111が前進・格納ロックピン部31から離れ、第1係合凹部111と前進・格納ロックピン部31との係合が解除される。
【0088】
次いで、作業者は、図13および図14に示すように、ハンドル等の把持体(図示せず)を把持して、後退ロックピン部32が他方側当接凹部49に当接するまで、可動機枠12を回動体13および回動アーム体11等に対して回動させる。すると、作業手段51が格納非作業状態から後退作業状態に切り換わる。
【0089】
この際、可動機枠12の回動に基づいて、第2ロック体82の第2係合凹部112と後退ロックピン部32とが自動的に係合し、第2ロック体82によるロックが自動的にかかる。
【0090】
つまり、この可動機枠12の回動途中(ロックがかかる直前)で、第2ロック体82の他方側当接部117が後退ロックピン部32に当接すると、第2ロック体82は、そのピン部32にて押されて一方向(図中の矢印方向)へ少しだけ回動し、その後、第2ばね86の付勢力で反対の他方向へ回動してもとの第2状態に戻る。すると、第2係合凹部112が他方側当接凹部49に当接した後退ロックピン部32と係合してこの後退ロックピン部32が第2係合凹部112と他方側当接凹部49とに挟持され、その結果、可動機枠12が回動体13および回動アーム体11等に対してロックされる。
【0091】
そして、作業者は、元の畦に沿ってトラクタを後退走行させる。すると、作業手段51が後退作業状態で後方(進行方向)に移動しながら畦端部まで畦塗り作業をする。
【0092】
なお、作業手段51を後退作業状態から格納非作業状態に切り換える場合は、図15に示すように、第2ロック体82を第1状態に切り換えることにより、第2係合凹部112と後退ロックピン部32との係合を解除して第2ロック体82によるロックを解除した後、可動機枠12を回動体13に対して回動させる。すると、この回動に基づいて第2ロック体82の第1係合凹部111と前進・格納ロックピン部31とが自動的に係合し、第2ロック体82によるロックが自動的にかかる。
【0093】
また、作業手段51を格納非作業状態から前進作業状態に切り換える場合は、図16に示すように、第1ロック体81を第1状態に切り換えることにより、第2係合凹部92と格納・後退ロックピン部73との係合を解除して第1ロック体81によるロックを解除した後、回動アーム体11等を機枠2に対して回動させる。すると、この回動に基づいて第1ロック体81の第1係合凹部91と前進ロックピン部76とが自動的に係合し、第1ロック体81によるロックが自動的にかかる。なお、図8ないし図16等においては、脱着ピン78は省略されている。
【0094】
そして、このような農作業機1によれば、位置調整体62のロック用アーム体61に対する位置調整によって、前進作業時における作業手段51のオフセット作業位置が変更可能となっているため、従来の構成に比べて、作業手段51の前進作業状態のオフセット作業位置を容易に変更できる。
【0095】
また、互いに対向した一方側孔部74および他方側孔部77に脱着ピン78が差し込まれ、この差し込まれた脱着ピン78にて位置調整体62がロック用アーム体61に対して固定される構成であるため、オフセット作業位置をより一層容易に変更できる。
【0096】
さらに、作業手段51の前進作業状態時において第1ロック体81を第1状態から第2状態に切り換えて第1係合凹部91と前進ロックピン部76との係合を解除した後、作業手段51を格納非作業状態に切り換えるために回動アーム体11を機枠2に対して回動させると、この回動に基づいて第2係合凹部92と格納・後退ロックピン部73とが自動的に係合するため、作業手段51を前進作業状態から格納非作業状態に容易に切り換えることができる。
【0097】
また、作業手段51の格納非作業状態時において第1ロック体81を第2状態から第1状態に切り換えて第2係合凹部92と格納・後退ロックピン部73との係合を解除した後、作業手段51を前進作業状態に切り換えるために回動アーム体11を機枠2に対して回動させると、この回動に基づいて第1係合凹部91と前進ロックピン部76とが自動的に係合するため、作業手段51を格納非作業状態から前進作業状態に容易に切り換えることができる。
【0098】
さらに、作業手段51の格納非作業状態時において第2ロック体82を第1状態から第2状態に切り換えて第1係合凹部111と前進・格納ロックピン部31との係合を解除した後、作業手段51を後退作業状態に切り換えるために可動機枠12を回動体13に対して回動させると、この回動に基づいて第2係合凹部112と後退ロックピン部32とが自動的に係合するため、作業手段51を格納非作業状態から後退作業状態に容易に切り換えることができる。
【0099】
また、作業手段51の後退作業状態時において第2ロック体82を第2状態から第1状態に切り換えて第2係合凹部112と後退ロックピン部32との係合を解除した後、作業手段51を格納非作業状態に切り換えるために可動機枠12を回動体13に対して回動させると、この回動に基づいて第1係合凹部111と前進・格納ロックピン部31とが自動的に係合するため、作業手段51を後退作業状態から格納非作業状態に容易に切り換えることができる。
【0100】
なお、図17には、第2の実施の形態が示されている。
【0101】
この第2の実施の形態に係る位置調整体62の筒状本体部75には、位置調整体62のスライド方向に沿って間隔をおいて並ぶ複数、すなわち例えば2つの他方側孔部77が形成されている。このため、一方側孔部74が3つで他方側孔部77が1つである第1の実施の形態では、設定可能なオフセット作業位置が3箇所であるが、この第2の実施の形態では6箇所である。つまり、一方側孔部74および他方側孔部77のいずれか一方のみが複数である構成には限定されず、両方が複数である構成でもよい。
【0102】
なお、例えば図示しないが、位置調整体が係合ピン部のみで構成され、この位置調整体の下部がロック用アーム体の複数の孔部のうち選択された一の孔部に嵌合して取り付けられる構成等でもよい。
【0103】
また、図18および図19には、第3の実施の形態が示されている。
【0104】
この第3の実施の形態では、位置調整体62のロック用アーム体61に対する位置調整によって前進作業状態のオフセット作業位置が任意に変更可能となっている。この位置調整体62の筒状本体部75の側板部にはボルト用孔部131が形成されかつナット132が溶接等により固設されている。そして、ボルト133がナット132に螺合されそのボルト133の先端部がロック用アーム体61のアーム本体部71の側板部に圧接することにより、位置調整体62がロック用アーム体61に対して固定されている。このため、位置調整体62をロック用アーム体61に対して任意位置に固定可能であり、オフセット作業位置を任意に変更することができる。
【0105】
さらに、図20ないし図23には、第4の実施の形態が示されている。
【0106】
この第4の実施の形態では、位置調整体62のロック用アーム体61に対する位置調整によって作業手段51の前進作業状態のオフセット作業位置が変更可能であり、かつ、位置調整体62と同じ形状の追加位置調整体(位置調整体)135のロック用アーム体61に対する位置調整によって作業手段51の後退作業状態のオフセット作業位置が変更可能である。
【0107】
このロック用アーム体61のアーム本体部71の前端側には、このアーム本体部71の長手方向に沿って等間隔をおいて並ぶ上下開口状の複数、すなわち例えば3つの一方側孔部136が形成されている。
【0108】
追加位置調整体135は、両端面が開口した略4角筒状の筒状本体部137を有している。筒状本体部137は、ロック用アーム体61のアーム本体部71の外周面にこのアーム本体部71の長手方向に沿ってスライド可能に嵌合されている。筒状本体部137の一方側上面には、格納・後退ロックピン部73が上方に向かって突設されている。また、筒状本体部137の他方側における上下板部には、上下開口状の1つの他方側孔部138が形成されている。
【0109】
そして、ロック用アーム体61の複数の一方側孔部136のうち選択された一の一方側孔部136と追加位置調整体135の他方側孔部138とが互いに対向し、これら互いに対向した一方側孔部136および他方側孔部138に脱着ピン139が上方から差し込まれ、この差し込まれた脱着ピン139にて追加位置調整体135がロック用アーム体61に対して固定されている。脱着ピン139を抜けば、その固定が解除され、追加位置調整体135がロック用アーム体61に対してスライド可能となる。なお、脱着ピン139は、ピン部139aとこのピン部139aの上端部に設けられた鍔部139bとにて構成されている。
【0110】
このため、この第4の実施の形態では、前進作業状態のオフセット作業位置に加えて、脱着ピン139の抜き差しおよび追加位置調整体135のロック用アーム体61に対するスライドに基づく、追加位置調整体135のロック用アーム体61に対する位置調整によって、作業手段51の後退作業状態のオフセット作業位置が段階的に変更可能となっている。
【0111】
なおこの場合、回動アーム体(第1フレーム)11の長さと連結アーム体(第2フレーム)63の長さとが異なるので、作業手段51を後退作業状態のまま機枠2に対して移動させるためには、連結アーム体63の長さを調整する必要がある。
【0112】
このため、この第4の実施の形態に係る連結アーム体63は、図21および図22に示されるように、長さ調整可能つまり長手方向に伸縮可能となっている。つまり、この連結アーム体63は、略筒状の外側アーム部材141と、この外側アーム部材141内にスライド可能に嵌合された略筒状の内側アーム部材142とにて構成されている。外側アーム部材141の取付部141aが回動体13のアーム体取付部29に軸66を中心として回動可能に取り付けられている。内側アーム部材142の取付部142aが機枠2の第3取付部8に軸65を中心として回動可能に取り付けられている。また、外側アーム部材141には上下開口状の1つの外側孔部143が形成され、内側アーム部材142には上下開口状の複数、例えば3つの内側孔部144が形成されている。
【0113】
そして、内側アーム部材142の複数の内側孔部144のうち選択された一の内側孔部144と外側アーム部材141の外側孔部143とが互いに対向し、これら互いに対向した内側孔部144および外側孔部143に脱着ピン145が上方から差し込まれ、この差し込まれた脱着ピン145にて内側アーム部材142が外側アーム部材141に対して固定されている。脱着ピン145を抜けば、その固定が解除され、内側アーム部材142が外側アーム部材141に対してスライド可能となる。なお、脱着ピン145は、ピン部145aとこのピン部145aの上端部に設けられた鍔部145bとにて構成されている。
【0114】
図23は後退作業状態のオフセット作業位置を説明するための図であり、図23(a)の長さaは、一方側孔部136aに脱着ピン139を差し込みかつ内側孔部144aに脱着ピン145を差し込んだ場合の両軸14,15間の左右方向距離である。図23(b)の長さbは、一方側孔部136bに脱着ピン139を差し込みかつ内側孔部144bに脱着ピン145を差し込んだ場合の両軸14,15間の左右方向距離である。図23(c)の長さcは、一方側孔部136cに脱着ピン139を差し込みかつ内側孔部144cに脱着ピン145を差し込んだ場合の両軸14,15間の左右方向距離である。そして、a>b>cである。
【0115】
なお、連結アーム体63を伸縮可能とする構成は例えばねじ調整式等でもよい。また、例えばボルトおよびナット等を用いて後退作業状態のオフセット作業位置を任意に変更できるようにしてもよい。
【0116】
また、図24には、第5の実施の形態が示されている。
【0117】
この第5の実施の形態では、例えばがた抑制等のために、ロック用アーム体61の回動支点である軸64と格納・後退ロックピン部73とが同軸状に配設され、これら軸64およびロックピン部73が共通の1本の軸部材147にて構成されている。換言すると、ロック用アーム体61の回動支点がロックピン部73を兼ねている。
【0118】
なお、いずれの実施の形態においても、付勢体であるばね84,86は、ねじりばねには限定されず、他の種類のばねでもよい。
【0119】
また、例えば作業手段51を後退作業状態に切り換えることができないもの等でもよい。
【0120】
さらに、作業手段51がオフセット作業として溝掘り作業をするもの等でもよい。
【符号の説明】
【0121】
1 農作業機
2 機枠
11 回動アーム体
12 可動機枠
51 作業手段
61 ロック用アーム体
62 位置調整体
74 一方側孔部
76 係合ピン部である前進ロックピン部
77 他方側孔部
78 脱着ピン
81 ロック体である第1ロック体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結される機枠と、
この機枠に回動可能に設けられた回動アーム体と、
この回動アーム体に回動可能に設けられた可動機枠と、
この可動機枠に設けられ、オフセット作業位置に位置してオフセット作業をする作業手段と、
前記機枠に回動可能に設けられたロック用アーム体と、
係合ピン部を有し、前記ロック用アーム体に位置調整可能に設けられた位置調整体と、
前記係合ピン部との係合により前記回動アーム体の前記機枠に対する回動を規制するロック体とを備え、
前記位置調整体の前記ロック用アーム体に対する位置調整によって前記オフセット作業位置が変更可能となっている
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
ロック用アーム体は、一方側孔部を有し、
位置調整体は、他方側孔部を有し、
前記一方側孔部および前記他方側孔部の少なくとも一方は、複数であり、
互いに対向した前記一方側孔部および前記他方側孔部に脱着ピンが差し込まれ、この差し込まれた脱着ピンにて前記位置調整体が前記ロック用アーム体に対して固定されている
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
位置調整体のロック用アーム体に対する位置調整によってオフセット作業位置が任意に変更可能となっている
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項4】
作業手段は、走行車の前進走行時には前進作業状態でオフセット作業をし、前記走行車の後進走行時には後進作業状態でオフセット作業をするものであり、
位置調整体のロック用アーム体に対する位置調整によって少なくとも前記前進作業状態のオフセット作業位置が変更可能となっている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2012−5371(P2012−5371A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141807(P2010−141807)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】