説明

農作業機

【課題】タンクが傾斜状態になることを防止できる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機である畦塗り機1は、トラクタの後部に連結する作業機本体11を備える。この作業機本体11の固定機枠26の取付板部40には、タンク支持手段13を固設する。このタンク支持手段13は、タンク12が水平状態を維持するように、タンク12を回動可能に支持する。タンク支持手段13には、タンク12の回動速度を減速させる減速手段51を設ける。減速手段51は、伸縮可能なダンパーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクが傾斜状態になることを防止できる農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、走行車であるトラクタの後部に連結される作業機本体と、液体である水が貯留されるタンクと、作業機本体に設けられタンクを固定的に支持するタンク支持手段とを備えている。また、作業機本体は、土を盛り上げる盛土手段と、この盛土手段による盛土を締め固めて畦を形成する畦形成手段と、タンクに接続されタンクからの水を畦形成手段に向けて散布する散布手段とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−43211号公報(図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の農作業機では、タンクがタンク支持手段によって固定的に支持されているため、作業機本体が傾くと、タンクも作業機本体とともに傾いて傾斜状態になってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、タンクが傾斜状態になることを防止できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の農作業機は、走行車に連結される作業機本体と、液体が貯留されるタンクと、前記作業機本体に設けられ、前記タンクが水平状態を維持するように前記タンクを回動可能に支持するタンク支持手段とを備えるものである。
【0008】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、タンクの回動速度を減速させる減速手段を備えるものである。
【0009】
請求項3記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、規制状態および許容状態に選択的に切り換え可能で、作業機本体の作業状態時において、規制状態に切り換えられるとタンクの回動を規制し、許容状態に切り換えられると前記タンクの回動を許容する作業状態時用規制手段を備えるものである。
【0010】
請求項4記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、規制状態および許容状態に選択的に切り換え可能で、作業機本体の非作業状態時において、規制状態に切り換えられるとタンクの回動を規制し、許容状態に切り換えられると前記タンクの回動を許容する非作業状態時用規制手段を備えるものである。
【0011】
請求項5記載の農作業機は、請求項1または2記載の農作業機において、規制状態および許容状態に選択的に切り換え可能で、作業機本体の作業状態時において、規制状態に切り換えられるとタンクの回動を規制し、許容状態に切り換えられると前記タンクの回動を許容する作業状態時用規制手段と、規制状態および許容状態に選択的に切り換え可能で、前記作業機本体の非作業状態時において、規制状態に切り換えられると前記タンクの回動を規制し、許容状態に切り換えられると前記タンクの回動を許容する非作業状態時用規制手段とを備えるものである。
【0012】
請求項6記載の農作業機は、請求項1ないし5のいずれか一記載の農作業機において、作業機本体は、畦を形成する畦形成手段と、タンクに接続され、前記タンクからの液体を前記畦形成手段に向けて散布する散布手段とを有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タンクを回動可能に支持するタンク支持手段を備え、タンクを水平状態に維持できるため、タンクが傾斜状態になることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る農作業機の前進作業時の平面図である。
【図2】同上農作業機の後進作業時の平面図である。
【図3】同上農作業機の作業時の側面図である。
【図4】同上農作業機の非作業時の側面図である。
【図5】同上農作業機のタンク部分の平面図である。
【図6】同上タンク部分の側面図である。
【図7】同上タンク部分の背面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る農作業機のタンク部分の平面図である。
【図9】同上タンク部分の側面図である。
【図10】同上タンク部分の背面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る農作業機のタンク部分の側面図である。
【図12】同上タンク部分の背面図である。
【図13】非作業状態時用規制手段の規制状態を示す図で、(a)がその側面図、(b)がその背面図である。
【図14】非作業状態時用規制手段の許容状態を示す図で、(a)がその側面図、(b)がその背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施の形態を図1ないし図7を参照して説明する。
【0016】
図1ないし図4において、1は農作業機である畦塗り機で、この畦塗り機1は、走行車であるトラクタ2の後部に連結されて使用されるオフセット作業機である。
【0017】
畦塗り機1は、トラクタ2の後部に連結された状態でトラクタ2の前進走行により圃場の畦に沿って進行方向(前方)に向かって移動しながら畦塗り作業(畦修復作業)をする(図1参照)。なお、圃場の隅部では、畦塗り機1は、前進作業状態から後進作業状態に切り換えられて、トラクタ2の後進走行(バック走行)により圃場の畦に沿って進行方向(後方)に向かって移動しながら畦塗り作業をする(図2参照)。
【0018】
トラクタ2は、前輪および後輪3を有するトラクタ本体4と、このトラクタ本体4の後端部に設けられ油圧で作動して畦塗り機1全体を所定範囲内で昇降させる3点リンク部(作業機昇降装置)5と、トラクタ本体4の後端部に回転可能に設けられたPTO軸6とを備えている。3点リンク部5は、伸縮可能な1本のトップリンク8と、互いに離間対向する左右1対で2本のロワリンク9とを有している。
【0019】
畦塗り機1は、トラクタ2の後部の3点リンク部5にクイックカプラ10を介して脱着可能に連結され水平な作業状態時に農作業である畦塗り作業をする作業機本体11を備えている。
【0020】
作業機本体11は、トラクタ2のトラクタ本体4に対して上下方向に回動可能となっている。つまり、作業機本体11は、3点リンク部5の作動に基づく下方回動により図3に示す水平状の作業状態(水平作業状態)となり、3点リンク部5の作動に基づく上方回動により図4に示す前下り傾斜状の非作業状態(傾斜非作業状態)となる。なお、非作業状態の作業機本体11の傾斜角度αは、例えば25度(10度〜45度)である。
【0021】
また、畦塗り機1は、液体である水(例えば除草剤を含むもの等でもよい)が貯留されるタンク12と、作業機本体11に固定的に設けられタンク12が常に水平状態を維持するようにタンク12を水平な左右方向の回動中心軸線Xを中心として回動可能に支持するタンク支持手段13とを備えている。
【0022】
つまり、タンク12は、作業機本体11に固定されたタンク支持手段13に回動可能に取り付けられているため、図3および図4に示されるように、作業機本体11が水平作業状態および傾斜非作業状態のいずれの状態であっても、常に水平状態を維持することが可能である。例えば水平作業状態の作業機本体11がトラクタ本体4に対して上方回動すると、タンク支持手段13が作業機本体11とともに上方回動するが、このとき、タンク12は、このタンク12自身の重力およびこのタンク12内の水の重力に基づいて、タンク支持手段13に対して回動中心軸線Xを中心として回動し、水平状態(水平姿勢)を維持する。
【0023】
ここで、作業機本体11は、トラクタ2の後部の3点リンク部5にクイックカプラ10を介して連結された機体21と、この機体21に回転可能に設けられ回転しながら田面および畦(元畦)の土を耕耘して盛り上げる盛土手段(ロータリ部)22と、機体21に回転可能に設けられ盛土手段22の進行方向後方で回転しながら盛土手段22による盛土を締め固めて畦(新畦)を形成する畦形成手段(ディスク部)23と、タンク12に接続されこのタンク12からの水を畦形成手段23に向けて散布する散布手段24とを有している。なお、盛土手段22および畦形成手段23は、トラクタ2のPTO軸6から出力される動力に基づいて所定方向へ駆動回転するようになっている。
【0024】
そして、機体21は、3点リンク部5にクイックカプラ10を介して連結された固定機枠26を有している。固定機枠26には、連結アーム等からなる連結手段27を介して可動機枠28が連結され、この可動機枠28に盛土手段22および畦形成手段23等が設けられている。また、機体21は、可動機枠28を固定機枠26に対して可動させるシリンダ等の駆動手段29,30を有し、この駆動手段29,30の作動により畦塗り機1が前進作業状態、後進作業状態および格納非作業状態に選択的に切り換えられる。なお、駆動手段29がオフセットシリンダであり、駆動手段30が回動シリンダである。
【0025】
盛土手段22は、可動機枠28に回転可能に軸支された前後方向の駆動軸である回転軸(図示せず)と、この回転軸とともに所定方向に回転しながら田面および畦の土を耕耘して盛り上げる複数の盛土爪31とを有している。盛土爪31の上方部および側方部は、カバー部32にて覆われている。
【0026】
畦形成手段23は、可動機枠28に回転可能に軸支された左右方向の駆動軸である回転軸(図示せず)と、この回転軸とともに所定方向に回転しながら盛土手段22による盛土を締め固めて田面側に向かって下り傾斜状の畦側面を形成する略円錐台状の畦側面形成体33と、回転軸とともに所定方向に回転しながら盛土手段22による盛土を締め固めて水平状の畦上面を形成する略円柱状の畦上面形成体34とを有している。
【0027】
散布手段24は、タンク12の下面に接続された可撓性の配管36を有し、この配管36の途中には水を圧送するためのポンプ(図示せず)が接続されている。配管36の先端側には、散水ノズル38,39が取り付けられている。散水ノズル38は畦塗り作業時にタンク12からの水を畦側面形成体33の外周面に向けて散布し、散水ノズル39は畦塗り作業時にタンク12からの水を畦上面形成体34の外周面に向けて散布する。なお、散布手段24は、ポンプを有さず、例えば水の重力のみで散布するものでもよい。また、散布手段24の配管36等は、タンク12の回動範囲内において、タンク12の回動に対応可能となっている。
【0028】
ここで、タンク支持手段13は、図5ないし図7にも示されるように、例えば作業機本体11の機体21の固定機枠26の取付板部40に固定的に立設されたタンク支持フレーム41にて構成されている。このタンク支持フレーム41は、例えば複数箇所で折り曲げられた1本の丸パイプのみで構成されている。
【0029】
タンク支持フレーム41は、互いに離間対向する逆L字状の左右1対の対向フレーム部42を有している。各対向フレーム部42は、鉛直部分42aと、この鉛直部分42aの上端部から後方に向かって突出した水平部分42bとにて構成されている。そして、両対向フレーム部42の水平部分42bの後端部同士は、回動中心軸線(回動支点)Xが軸芯を通る水平な左右方向に延びる連結フレーム部43によって一体に連結されている。
【0030】
タンク12は、タンク支持フレーム41の連結フレーム部43に回動可能に取り付けられこの連結フレーム部43に対して回動中心軸線Xを中心として前後方向(図6中、a方向およびb方向)に向かって回動するタンクフレーム46と、このタンクフレーム46に脱着可能に取り付けられこのタンクフレーム46と一体となって回動するタンク本体47とを有している。
【0031】
タンクフレーム46は円筒状の筒状部45を有し、この筒状部45に連結フレーム部43が回動可能に挿入されている。
【0032】
タンク本体47は、液体投入用の上面開口部が上面に形成され下面に配管36が接続された本体部48と、この本体部48に脱着可能に取り付けられ上面開口部を閉鎖する蓋部49とにて構成されている。蓋部49には、本体部48内の圧力を調整するための空気抜き孔50が形成されている。なお、タンク本体47は、例えば合成樹脂製のもので、例えば金属製のタンクフレーム46によって周囲が覆われて保護されている。
【0033】
また、タンク12のタンク支持フレーム41に対するa方向(一方向)への回動時に、このタンク12のタンク支持フレーム41に対するa方向への回動速度を徐々に減速させる減速手段51が、タンク支持フレーム41の左側の対向フレーム部42に立設された取付板部52に取り付けられている。
【0034】
減速手段51は、例えばガススプリング或いはバネ等からなる伸縮可能なダンパー53にて構成されている。ダンパー53は、取付板部52にピン54を介して回動可能に取り付けられたダンパー本体部55と、このダンパー本体部55内に対して出入りするロッド部56と、このロッド部56の下端部に設けられた円筒状の筒状部57とを有している。このダンパー53の筒状部57には、タンクフレーム46に溶接等により固着された固定ピン58が回動可能に挿入されている。
【0035】
なお、図6には、ロッド部56がダンパー本体部55内から最大に突出した状態、つまりダンパー53が最大に伸びた最長状態が示されている。ダンパー53が最長状態になると、この最長状態のダンパー53によってタンク12のタンク支持フレーム41に対するb方向(他方向)への回動が規制される。
【0036】
さらに、作業機本体11の水平作業状態時において、規制状態に切り換えられるとタンク12のタンク支持フレーム41に対するa方向への回動を規制し、許容状態に切り換えられるとタンク12のタンク支持フレーム41に対するa方向への回動を許容する作業状態時用規制手段61が、タンク支持フレーム41の右側の対向フレーム部42に取り付けられている。なお、図1ないし図4では、作業状態時用規制手段61の図示が省略されているが、この作業状態時用規制手段61を備えていない構成であってもよい。
【0037】
作業状態時用規制手段61は、トラクタ2の運転席に乗った作業者から水平な前後方向の回動中心軸線Yを中心として回動操作可能なもので、その回動操作により規制状態(ロック状態)および許容状態(ロック解除状態)に選択的に切り換え可能となっている。
【0038】
この作業状態時用規制手段61は、略くの字状に曲げられた棒状のハンドル62を有している。ハンドル62は、対向フレーム部42の鉛直部分42aに溶接等により固着された円筒状のハンドル支持部63によって回動中心軸線Yを中心として回動可能に支持されている。ハンドル62は、トラクタ2と干渉しない長さのもので、トラクタ2の運転席に乗った作業者が乗ったまま把持できるようになっている。
【0039】
また、ハンドル62の後端部には、タンク12のタンク支持フレーム41に対するa方向への回動を規制する略矩形板状の規制体である規制板65が固設されている。この規制板65は、タンクフレーム46の当接受部66との当接によりタンク12のタンク支持フレーム41に対するa方向のみの回動を規制する。
【0040】
なお、ハンドル62とこのハンドル62に固定された規制板65とにて、作業状態時用規制手段61が構成されている。例えば図示しないが、作業状態時用規制手段61は、規制板65に形成された凹状の挟持部がタンクフレーム46の一部を前後から挟持してタンク12のタンク支持フレーム41に対するa方向およびb方向の回動を一斉に規制する構成でもよい。この構成とした場合、タンク12の水平状態時にダンパー53が最長状態になるようにする必要がない。
【0041】
そして、図6および図7の実線で示すように、作業状態時用規制手段61の規制状態時には、規制板65は、タンクフレーム46の前面側の当接受部66と当接して、タンク12のタンク支持フレーム41に対するa方向への回動を規制する。
【0042】
このとき、ダンパー53が最長状態(略最長状態を含む)になっており、この最長状態のダンパー53によってタンク12のタンク支持フレーム41に対するb方向への回動が規制されている。このため、タンク12は、a方向およびb方向の両方への回動が規制された状態となっており、タンク支持フレーム41に対してロック(固定)されている。なお、対向フレーム部42の鉛直部分42aには、規制板65との当接により作業状態時用規制手段61の回動を規制してこの作業状態時用規制手段61を規制状態に設定するストッパー手段である止め板68が溶接等により固着されている。
【0043】
また、図7の2点鎖線で示すように、作業状態時用規制手段61の許容状態時には、規制板65は、タンクフレーム46の当接受部66との対向位置から離れて、タンク12のタンク支持フレーム41に対するa方向への回動を許容する。つまり、この作業状態時用規制手段61の許容状態時では、タンク12は、ダンパー53の伸縮可能範囲内で、タンク支持フレーム41に対してa方向およびb方向に回動可能である。
【0044】
次に、畦塗り機1の作用等を説明する。
【0045】
畦塗り作業時には、図3に示すように、作業機本体11を水平作業状態にする。
【0046】
このとき、水が貯留されたタンク12は、その下面が水平面に沿って位置する水平状態となっており、規制状態の作業状態時用規制手段61と最長状態のダンパー53とによってタンク支持フレーム41に対してロックされている。このため、水の入ったタンク12の揺れ等を防止できる。
【0047】
この状態で、トラクタ2を進行方向に走行させると、畦塗り機1全体が畦に沿って移動し、盛土手段22および畦形成手段23がそれぞれ所定方向に駆動回転する。
【0048】
そして、盛土手段22にて畦塗り用の土が元畦上に盛り上げられ、この盛り上げられた盛土は、畦側面形成体33にて締め固められて傾斜状の畦側面が形成され、畦上面形成体34にて締め固められて水面状の畦上面が形成される。
【0049】
またこの際、散水ノズル38はタンク12から送られてくる水を畦側面形成体33の外周面に向けて散布し、散水ノズル39はタンク12から送られてくる水を畦上面形成体34の外周面に向けて散布する。こうして、元畦が修復されて崩れにくい強固な新畦が形成される。
【0050】
そして、例えば畦塗り作業が終了し、畦塗り機1をトラクタ2に連結したまま所定位置まで運搬する場合には、図4に示すように、作業機本体11を傾斜非作業状態にする。
【0051】
このとき、トラクタ2に乗った作業者は、3点リンク部5の作動で作業機本体11を回動させて傾斜非作業状態にする前に、トラクタ2に乗ったままハンドル62を把持して、作業状態時用規制手段61を回動中心軸線Yを中心として略90度回動させて許容状態に切り換える。
【0052】
このため、3点リンク部5の作動で作業機本体11がトラクタ本体4に対して上方回動する際には、タンク支持フレーム41は作業機本体11とともに回動するが、タンク12は、作業機本体11とともに回動せず、タンク支持フレーム41に対して回動中心軸線Xを中心としてa方向に回動し、水平状態を維持する。この際、ダンパー53がタンク12のa方向への回動速度を減速させる。
【0053】
そして、このような畦塗り機1によれば、タンク12が水平状態を維持するようにタンク12を回動可能に支持するタンク支持手段13であるタンク支持フレーム41を備えるため、作業機本体11が水平作業状態および傾斜非作業状態のいずれの状態であっても、タンク12を水平状態に維持でき、タンク12が傾斜状態になることを防止できる。よって、例えばタンク12が傾いて蓋部49に本体部48内の水の圧力が作用して蓋部49が破損してしまうことを防止でき、またタンク12が傾いて本体部48内の水が空気抜き孔50から漏れ出してしまうことを防止できる。
【0054】
また、タンク12の回動速度を減速させる減速手段51であるダンパー53を備えるため、タンク12の回動速度を適切に減速させることができる。
【0055】
さらに、作業状態時用規制手段61の規制板(ロック部材)65によって、作業機本体11の水平作業状態時にタンク12の回動を適切に規制することができ、また例えば作業機本体11の水平作業状態時にダンパー53と協働してタンク12をタンク支持フレーム41に対して適切にロックできる。
【0056】
また、作業機本体11の傾斜非作業状態時に、タンク12が傾かず、水平状態を維持するため、従来のようにタンク12が傾く場合に比べて、タンク12の重心がトラクタ2側である前側に位置することとなり、トラクタ2の走行の安定化を図ることができる。
【0057】
なお、作業状態時用規制手段61は、トラクタ2側に向かって突出したハンドル62を有するものには限定されず、例えば図8ないし図10に示す第2の実施の形態のものでもよい。
【0058】
この作業状態時用規制手段61は、例えば作業者による手動によって規制状態(ロック状態)および許容状態(ロック解除状態)に選択的に切り換え可能な規制体である1本の規制アーム(ロック部材)71によって構成されている。
【0059】
規制アーム71は、長手状のアーム部72と、このアーム部72の上端部に設けられた上筒状部73と、アーム部72の下端部に設けられた下筒状部74とを有している。
【0060】
規制アーム71の上筒状部73には、タンク支持フレーム41の対向フレーム部42の水平部分42bに溶接等により固着された左右方向の支点ピン75が回動可能に挿入されている。つまり、規制アーム71は支点ピン75によって回動可能に支持されている。また、支点ピン75は抜止用のつば部76を有し、上筒状部73は支点ピン75に沿って左右方向にスライド可能であるが、つば部76との当接により支点ピン75から抜け出ないようになっている。
【0061】
また、タンクフレーム46の所定部位には規制用ピン81が溶接等により固着され、タンク支持フレーム41の対向フレーム部42の鉛直部分42aの所定部位には許容用ピン82が溶接等により固着されている。
【0062】
そして、図9の実線で示すように、作業状態時用規制手段61の規制状態時つまり規制アーム71の規制状態時には、規制アーム71の下筒状部74に規制用ピン81が挿入され、この規制アーム71によってタンク12のタンク支持フレーム41に対するa方向およびb方向の両方への回動が規制された状態となっており、タンク12はタンク支持フレーム41に対してロック(固定)されている。
【0063】
また、図9の2点鎖線で示すように、作業状態時用規制手段61の許容状態時つまり規制アーム71の許容状態時には、規制アーム71の下筒状部74に許容用ピン82が挿入され、タンク12のタンク支持フレーム41に対するa方向およびb方向の両方への回動が許容される状態となっている。つまり、この作業状態時用規制手段61の許容状態時では、タンク12は、ダンパー53の伸縮可能範囲内で、タンク支持フレーム41に対してa方向およびb方向に回動可能である。そして、この第2の実施の形態でも、タンク12が傾斜状態になることを防止できる等の上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0064】
また、例えば図示しないが、規制板65や規制アーム71を回動させるモータ等の回動駆動手段を有する構成等でもよい。
【0065】
さらに、例えば図11ないし図14に示す第3の実施の形態のように、規制状態(ロック状態)および許容状態(ロック解除状態)に選択的に切り換え可能で、作業機本体11の非作業状態時(傾斜非作業状態時)において、規制状態に切り換えられるとタンク12のタンク支持フレーム41に対するb方向への回動を規制し、許容状態に切り換えられるとタンク12のタンク支持フレーム41に対するb方向への回動を許容する非作業状態時用規制手段91を備えた構成でもよい。
【0066】
非作業状態時用規制手段91は、トラクタ2の運転席に乗った作業者から回動操作可能なもので、その回動操作により規制状態(ロック状態)および許容状態(ロック解除状態)に選択的に切り換え可能となっている。
【0067】
この非作業状態時用規制手段91は、略くの字状に曲げられた棒状のハンドル92を有している。ハンドル92は、対向フレーム部42の水平部分42bに溶接等により固着された円筒状のハンドル支持部93によって回動可能に支持されている。ハンドル92は、トラクタ2と干渉しない長さのもので、トラクタ2の運転席に乗った作業者が乗ったまま把持できるようになっている。
【0068】
また、ハンドル92の後端部(下端部)には、タンク12のタンク支持フレーム41に対するb方向への回動を規制する略矩形板状の規制体である規制板95が固設されている。この規制板95は、タンクフレーム46の当接受部66との当接によりタンク12のタンク支持フレーム41に対するb方向のみの回動を規制する。
【0069】
さらに、ハンドル92の中間部には固定ピン96が固着されている。ハンドル支持部93の上端部には段部97が形成され、この段部97は、非作業状態時用規制手段91の規制状態時に固定ピン96が当接する規制用受面98と、非作業状態時用規制手段91の許容状態時に固定ピン96が当接する許容用受面99とを有している。また、ハンドル支持部93の下端面と規制板95との間には、非作業状態時用規制手段91を下方に付勢して固定ピン96を段部97に押し付ける付勢手段である圧縮バネ100が配設されている。
【0070】
そして、図11の実線および図13(a)、(b)で示すように、非作業状態時用規制手段91の規制状態時には、規制板95は、タンクフレーム46の内面側の当接受部66と当接して、タンク12のタンク支持フレーム41に対するb方向への回動を規制する。
【0071】
このとき、ダンパー53が最縮状態(略最縮状態を含む)になっており、この最縮状態のダンパー53によってタンク12のタンク支持フレーム41に対するa方向への回動が規制されている。このため、タンク12は、a方向およびb方向の両方への回動が規制された状態となっており、タンク支持フレーム41に対してロック(固定)されている。よって、例えば作業機本体11の傾斜非作業状態時において、非作業状態時用規制手段91とダンパー53との協働によりタンク12をタンク支持フレーム41に対して適切にロックでき、運搬時等におけるタンク12の揺れを防止できる。
【0072】
また、図11の2点鎖線および図14(a)、(b)で示すように、非作業状態時用規制手段91の許容状態時には、規制板95は、タンクフレーム46の当接受部66との対向位置から離れて、タンク12のタンク支持フレーム41に対するb方向への回動を許容する。つまり、この非作業状態時用規制手段91の許容状態時では、タンク12は、ダンパー53の伸縮可能範囲内で、タンク支持フレーム41に対してa方向およびb方向に回動可能である。そして、この第3の実施の形態でも、タンク12が傾斜状態になることを防止できる等の上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0073】
なお、例えば図示しないが、作業状態時用規制手段61および非作業状態時用規制手段91の両方を備えた構成でもよい。
【0074】
また、作業機本体11の作業状態時に最長状態の減速手段51と規制状態の作業状態時用規制手段61とによってタンク12がタンク支持手段13に対してロックされる構成には限定されず、例えば作業機本体11の作業状態時に規制状態の作業状態時用規制手段61のみでタンク12の回動を規制してタンク12がタンク支持手段13に対してロックされる構成でもよい。
【0075】
さらに、作業機本体11の非作業状態時に最縮状態の減速手段51と規制状態の非作業状態時用規制手段91とによってタンク12がタンク支持手段13に対してロックされる構成には限定されず、例えば作業機本体11の非作業状態時に規制状態の非作業状態時用規制手段91のみでタンク12の回動を規制してタンク12がタンク支持手段13に対してロックされる構成でもよい。
【0076】
また、タンク支持手段13は、タンク12を回動中心軸線Xを中心として回動可能に支持するものには限定されず、例えばタンク12をある1つの支点を中心として前後左右を含む全方向に回動可能に支持するもの等でもよい。
【0077】
なお、畦塗り機1には限定されず、例えば溝掘り機等の他の種類の農作業機にも適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 農作業機である畦塗り機
2 走行車であるトラクタ
11 作業機本体
12 タンク
13 タンク支持手段
23 畦形成手段
24 散布手段
51 減速手段
61 作業状態時用規制手段
91 非作業状態時用規制手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結される作業機本体と、
液体が貯留されるタンクと、
前記作業機本体に設けられ、前記タンクが水平状態を維持するように前記タンクを回動可能に支持するタンク支持手段と
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
タンクの回動速度を減速させる減速手段を備える
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
規制状態および許容状態に選択的に切り換え可能で、作業機本体の作業状態時において、規制状態に切り換えられるとタンクの回動を規制し、許容状態に切り換えられると前記タンクの回動を許容する作業状態時用規制手段を備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。
【請求項4】
規制状態および許容状態に選択的に切り換え可能で、作業機本体の非作業状態時において、規制状態に切り換えられるとタンクの回動を規制し、許容状態に切り換えられると前記タンクの回動を許容する非作業状態時用規制手段を備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。
【請求項5】
規制状態および許容状態に選択的に切り換え可能で、作業機本体の作業状態時において、規制状態に切り換えられるとタンクの回動を規制し、許容状態に切り換えられると前記タンクの回動を許容する作業状態時用規制手段と、
規制状態および許容状態に選択的に切り換え可能で、前記作業機本体の非作業状態時において、規制状態に切り換えられると前記タンクの回動を規制し、許容状態に切り換えられると前記タンクの回動を許容する非作業状態時用規制手段とを備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の農作業機。
【請求項6】
作業機本体は、
畦を形成する畦形成手段と、
タンクに接続され、前記タンクからの液体を前記畦形成手段に向けて散布する散布手段とを有する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−75401(P2012−75401A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224825(P2010−224825)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】