農作業車
【課題】 走行停止時に作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができなくなる、などの不都合の発生を回避できるようにする。
【解決手段】 主駆動源となる電動モータAと、電動モータAからの動力を車輪9,10及び作業装置4に伝達する伝動系とを備え、伝動系に、伝動の断続を可能にする断続手段Bを設け、電動モータAを駆動源とする油圧ポンプ124を、伝動系における断続手段Bよりも伝動方向上手側に配備した伝動部材Cに連動連結してある。
【解決手段】 主駆動源となる電動モータAと、電動モータAからの動力を車輪9,10及び作業装置4に伝達する伝動系とを備え、伝動系に、伝動の断続を可能にする断続手段Bを設け、電動モータAを駆動源とする油圧ポンプ124を、伝動系における断続手段Bよりも伝動方向上手側に配備した伝動部材Cに連動連結してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達するように構成した農作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような農作業車としては、走行速度調整ペダルの踏み込み操作量に応じて回転速度が変更される走行系交流モータからの動力を、減速ギヤボックス内で適宜減速して前輪及び後輪に伝達し、減速ギヤボックスの後上部に、その減速ギヤボックス内を経由した走行系交流モータからの動力で駆動されることで、リフト機構昇降用の油圧シリンダ(油圧アクチュエータの一例)に向けて作動油を供給して、作動油の供給による油圧シリンダの駆動操作を可能にする油圧ポンプを設けたものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−300022号公報(段落番号0005,0006,0008、図1,3,4,6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
つまり、上記のような農作業車では、走行速度調整ペダルなどを操作して走行系交流モータを停止させることで、車体を走行停止させることができるのであるが、走行系交流モータを停止させると、油圧ポンプも停止されて、その油圧ポンプから油圧アクチュエータに向けた作動油の供給が行われなくなることから、油圧ポンプからの作動油による油圧アクチュエータの駆動操作を行えないようになっており、これによって、例えば、油圧アクチュエータが作業装置を昇降駆動するためのものである場合には、走行停止時に、作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができない不都合が生じるようになっていた。
【0004】
本発明の目的は、走行停止時に作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができなくなる、などの不都合の発生を回避できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうちの請求項1に記載の発明では、主駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達する伝動系とを備え、前記伝動系に、伝動の断続を可能にする断続手段を設け、前記電動モータを駆動源とする油圧ポンプを、前記伝動系における前記断続手段よりも伝動方向上手側に配備した伝動部材に連動連結してある。
【0006】
この構成によると、断続手段により電動モータからの動力を断続することで、車体の走行状態と走行停止状態とを切り換え現出することができ、又、断続手段による電動モータからの動力の断続にかかわらず油圧ポンプを駆動することができる。
【0007】
従って、車体を走行停止させた場合であっても、油圧ポンプからの作動油による油圧アクチュエータの駆動操作が可能となり、これによって、例えば、油圧アクチュエータが作業装置を昇降駆動するためのものである場合には、車体の走行及び走行停止にかかわらず、作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができ、結果、走行停止時に作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができなくなる、などの不都合の発生を回避できる。
【0008】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、主駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達する伝動系とを備え、副駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力で駆動される油圧ポンプとを設けてある。
【0009】
この構成によると、主駆動源の電動モータを駆動することで車体を走行させることができ、主駆動源の電動モータを停止することで車体を走行停止させることができ、副駆動源の電動モータを駆動することで、主駆動源の電動モータの駆動及び停止にかかわらず、油圧ポンプを駆動することができる。
【0010】
従って、車体を走行停止させた場合であっても、油圧ポンプからの作動油による油圧アクチュエータの駆動操作が可能となり、これによって、例えば、油圧アクチュエータが作業装置を昇降駆動させるためのものである場合には、車体の走行及び走行停止にかかわらず、作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができ、結果、走行停止時に作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができなくなる、などの不都合の発生を回避できる。
【0011】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、主駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達する伝動系とを備え、副駆動源となる電動アクチュエータを装備し、この電動アクチュエータの作動で前記作業装置を昇降駆動するように構成してある。
【0012】
この構成によると、電動モータを駆動することで車体を走行させることができ、電動モータを停止することで車体を走行停止させることができ、電動アクチュエータを駆動することで、電動モータの駆動及び停止にかかわらず作業装置を昇降させることができる。
【0013】
従って、車体を走行停止させた場合であっても、電動アクチュエータの作動で作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができ、結果、走行停止時に作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができなくなる不都合の発生を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1には農作業車の一例である乗用田植機の全体側面が、図2にはその全体平面がそれぞれ示されており、この乗用田植機は、四輪駆動型の走行車体1の後部に、単動型の油圧シリンダからなる昇降シリンダ2の作動で昇降揺動するリンク機構3を介して、苗植付装置(作業装置の一例)4を駆動昇降可能に連結して構成されている。
【0015】
図1〜7に示すように、走行車体1は、車体フレーム5の前後中間部に、主駆動源となる直流モータ6(電動モータAの一例)と、この直流モータ6に電力を供給する2つのバッテリ7,8とを搭載し、その直流モータ6からの動力で、車体フレーム5の前部に配備した左右一対の前輪9と、車体フレーム5の後部に配備した左右一対の後輪10とを駆動する電動式の四輪駆動型に構成されている。又、重量の大きい直流モータ6やバッテリ7,8を、前輪9と後輪10との間となる車体フレーム5の前後中間部に配置したことで、安定性の向上が図られている。
【0016】
車体フレーム5は、丸パイプ材などからなる伝動ケース11を前後向きに配備し、その伝動ケース11の後部にミッションケース12を連結し、伝動ケース11の前部に前車軸ケース13を連結し、前車軸ケース13の前部左右中央に、バランスウェイトとしての機能を有する鋳鉄製の支持台14を連結して、その主要部が構成され、その前端に位置する支持台14の左右中間部に、上下向きのステアリング軸15や変速操作軸16などを覆う操縦塔17が立設され、直流モータ6及びバッテリ7,8の上方に配置された運転座席18を支持し、車体フレーム5の略全体を上方から覆うように形成された板金製の搭乗ステップ19が着脱可能に連結されている。
【0017】
搭乗ステップ19には、その中央部に形成した開口から露出する直流モータ6やバッテリ7,8などを覆い隠す樹脂製のモータカバー20が簡易着脱可能に係止装備されており、このモータカバー20を取り外すことで、搭乗ステップ19を取り外す手間を要することなく、直流モータ6やバッテリ7,8などに対するメンテナンスを行える。
【0018】
図1、図3及び図5に示すように、直流モータ6からの動力は、ミッションケース12に備えた入力軸21に、ベルトテンション式の主クラッチ22(断続手段Bの一例)を介して断続可能に伝達され、又、ミッションケース12に備えた伝動軸23に、ベルトテンション式の伝動機構24を介して断続不能に伝達される。
【0019】
図8に示すように、ミッションケース12の入力軸21に伝達された動力は、ミッションケース12の内部において走行用と作業用とに分岐され、走行用の動力は、前進3段、後進1段に変速可能に構成されたギヤ式変速装置25に伝達され、そのギヤ式変速装置25による変速後の動力が、減速ギヤ26を介して中継伝動軸27に伝達され、この中継伝動軸27において前輪駆動用の動力と後輪駆動用の動力とに分岐される。
【0020】
図1、図3、図4、図6、図8及び図9に示すように、前輪駆動用の動力は、ミッションケース12に内装した一対のベベルギヤ28、伝動ケース11に挿通した前後向きの第1伝動軸29、前車軸ケース13に内装した一対のベベルギヤ30や左右向きの第2伝動軸31、及び、前車軸ケース13から左右に向けて延出した左右の前車軸32、などを介して左右の前輪9に伝達される。つまり、左右の前輪9は、直流モータ6からの動力で等速駆動される。
【0021】
図1、図3、図8及び図9に示すように、後輪駆動用の動力は、ミッションケース12に内装した左右のサイドクラッチ33(断続手段Bの一例)やギヤ式減速装置34、及び、ミッションケース12から横外方に向けて延出した左右の後車軸35、などを介して左右の後輪10に伝達される。つまり、左右のサイドクラッチ33の作動による左右の各後輪10に対する独立した伝動調節及び伝動の断続が可能に構成されている。
【0022】
図1、図8及び図10に示すように、作業用の動力は、ミッションケース12に内装したトルクリミッタ36、ミッションケース12の内部とミッションケース12の右外側部に形成したギヤ室37とにわたる第1伝動軸38や第2伝動軸39、それらの伝動軸38,39に対する組み替えが可能となるようにギヤ室37に内装した一対の変速ギヤ40,41、及び、ミッションケース12に内装したベベルギヤ42や作業クラッチ43(断続手段Bの一例)、などを介して、作業動力取出用のPTO軸44に断続可能に伝達される。
【0023】
図1及び図2に示すように、PTO軸44から取り出された作業用の動力は、伸縮自在に構成された外部伝動軸45などを介して、苗植付装置4の動力分配部46に伝達される。
【0024】
苗植付装置4は、動力分配部46からの分配動力で、3条分のマット状苗を載置する苗載台47が所定ストロークで左右方向に往復移動し、左右方向に一定間隔を隔てて並設したクランク式の3つの植付機構48が、対応するマット状苗から所定量の苗を切り出して圃場泥土部に植え付け、苗載台47に装備した3つの縦送りベルト49が、苗載台47が左右のストローク端に到達するごとに、対応するマット状苗を所定量だけ下方に向けて縦送りする、といった植え付け作動を行うように構成され、最大3条の苗の植え付けを行える。
【0025】
苗植付装置4の下部には、植え付け前の圃場泥面を車体の走行に伴って整地する単一の整地フロート50が配備され、この整地フロート50は、その左側の後部が、動力分配部46からの動力を植付機構48に伝達する伝動機構(図示せず)を内装したフレーム兼用の植付伝動ケース51に、又、その右側の後部が、植付機構48を支持する支持フレーム52に、それぞれ左右向きの支軸53を介して、それらの支軸53を支点にしたピッチングが許容されるように連結されている。
【0026】
図1、図2、図4、図5、図8及び図10に示すように、ギヤ式変速装置25は、その変速軸54に軸心方向に相対摺動可能に内嵌された操作軸55が、操縦塔17に内装した変速操作軸16に、その変速操作軸16の回動に連動して前後方向に押し引き操作される連係部材56や、その連係部材56の押し引き操作に連動して回動することで操作軸55を左右方向に摺動操作する回動部材57を介して操作連係されており、変速操作軸16の上部に左右向きに一体形成した変速レバー58を前後方向に揺動操作すると、その操作に連動して、操作軸55が変速軸54に対して軸心方向(左右方向)に摺動変位し、その摺動変位で、変速軸54と一体回転する変速キー59が、変速軸54に相対回転可能に外嵌した後進ギヤ60、植え付け用の低速前進ギヤ61、畦越え用の微速前進ギヤ62、及び、移動用の高速前進ギヤ63のうちのいずれかに選択係合して、前進3段、後進1段のうちの変速レバー58の操作位置に応じた変速状態を現出する。
【0027】
図8に示すように、トルクリミッタ36は、PTO軸44の負荷トルクが設定値を超えた場合に、入力軸21と一体回転する駆動側回転爪64が、PTO軸44と連動する従動側回転爪65との間に有するカム作用で、押しバネ66の付勢に抗して従動側回転爪65との噛合を解除する方向に摺動変位し、PTO軸44への伝動を遮断することで、過負荷に起因した作業伝動系などの破損を回避する。
【0028】
入力軸19と駆動側回転爪64との間には、それらと一体回転し、入力軸21に対する摺動が阻止され、駆動側回転爪64の相対摺動を許容するように、入力軸21と駆動側回転爪64とにスプライン嵌合されるスプラインボス67が介装されており、これによって、入力軸21の軸径が小さくても、駆動側回転爪64に対するスプライン径を大きくすることができて、駆動側回転爪64の摺動抵抗を小さくすることや、トルクリミッタ36に調心作用が働くようにすることができ、結果、駆動側回転爪64に対するスプライン径が小さいことに起因して、駆動側回転爪64の摺動抵抗が大きくなるなどの不都合が生じて、トルクリミッタ36の作動トルクが不安定になることを防止してある。
【0029】
図8及び図9に示すように、ミッションケース12の右外側部には、ギヤ室37を閉塞するカバー68が簡易着脱可能に装備されており、このカバー68を取り外すことで、ギヤ室37に内装した一対の変速ギヤ40,41の配置換えや付け換えを行うことができ、これによって、ミッションケース12を分割する手間を要することなく、走行速度に対して作業速度を変更することができ、苗植付装置4による走行方向での植付けピッチ(株間)を調節できる。
【0030】
図1〜3及び図5に示すように、前車軸ケース13には、第2伝動軸31に作用することで左右の前輪9及び後輪10を制動する多板式のブレーキ69が内装され、このブレーキ69は、走行車体1の右前部に配備した操作ペダル70に、図外の連係機構を介して操作連係され、その操作ペダル70は、連係ロッド71を介して主クラッチ22に操作連係され、操作ペダル70を踏み込み操作すると、主クラッチ22の遮断状態と、操作ペダル70の踏み込み操作量に応じたブレーキ69の制動状態とが現出され、操作ペダル70の踏み込み操作を解除すると、主クラッチ22に備えたテンションバネ72やブレーキ69に内装した戻しバネ(図示せず)の作用で、主クラッチ22の接続状態とブレーキ69の非制動状態とが現出される。
【0031】
操作ペダル70には、走行車体1の前方に向けて延出する操作レバー73が一体装備されており、走行車体1の前方から、その操作レバー73を押し下げると、主クラッチ22の遮断状態と、操作レバー73の押し下げ操作量に応じたブレーキ69の制動状態とが現出され、操作レバー73の押し下げ操作を解除すると、主クラッチ22に備えたテンションバネ72やブレーキ69に内装した戻しバネの作用で、主クラッチ22の接続状態とブレーキ69の非制動状態とが現出される。
【0032】
つまり、操作レバー73を備えたことで、地上側からでも、主クラッチ22やブレーキ69の作用による車体の発進・停止操作や変速操作を行える。
【0033】
図1及び図2に示すように、支持台14には、走行車体1の地上側からの誘導操作を可能にする操作アーム74が固定装備され、この操作アーム74は、正面視が先窄まり状の略逆U字状で側面視が略L字状になるように屈曲形成されたパイプ材からなり、その左右方向の長さ(左右幅)が操縦塔17の左右方向の長さ(左右幅)よりも長くなるように設定され、又、その前部側が支持台14や操縦塔17よりも車体前方側に位置し、更に、その上端が操縦塔17の上下中間位置よりも低い位置に位置するように、その両端が支持台14の対応する横側面にボルト連結されている。
【0034】
つまり、操作アーム74を上記のように備えたことで、運転者が地上に降りて車体を走行させる畦越え走行などを行う場合には、その操作アーム74を利用すれば、畦越え走行時に発生し易い車体前部側の浮き上がりを抑える押さえ込み操作や、車体を左右に誘導する誘導操作などを地上側から良好に行える。
【0035】
特に、操作アーム74の上端位置を低くしたことで、操作アーム74を利用した車体前部側の引き上げ操作が行い易くなり、車体の前部側を持ち上げ気味にした誘導操作が行い易くなる。
【0036】
図1〜5及び図8に示すように、ステアリング軸15は、その上端部にステアリングホイール75が装備され、その下端部にピニオンギヤ76が一体形成され、そのピニオンギヤ76が、支持台14に相対揺動可能に軸支されたセクターギヤ77に噛合し、そのセクターギヤ77の左右両端部には連係アーム78が一体形成され、それらの連係アーム78が、左右の前輪9を操舵する左右の対応するナックルアーム79にタイロッド80を介して操作連係されている。
【0037】
セクターギヤ77は、その揺動支点を中心とする左右一対の長孔81が形成され、それらの長孔81に一端部が係合された左右の連係ロッド82を介して、対応するサイドクラッチ33の操作アーム83に操作連係されている。
【0038】
つまり、ステアリングホイール75を回動操作すると、その操作に連動して、ステアリングホイール75の回動操作量に応じた操舵角に左右の前輪9が操舵され、又、その操作で、前輪9が直進位置から設定角度以上に操舵されると、旋回内側の後輪10に対するサイドクラッチ33が遮断状態に切り換えられて、左右の前輪9と旋回外側の後輪10とを駆動させた3輪駆動状態で旋回する小旋回状態が現出される。
【0039】
図1、図2及び図4に示すように、操縦塔17は、ステアリング軸15が挿通されるステアリングポスト84、そのステアリングポスト84などを後方側から覆う板金製の後部ケース85、ステアリングポスト84などを前方側から覆う樹脂製の前部ケース86、及び、ステアリングポスト84の上端部に装備された上部パネル87、などによって構成されている。
【0040】
上部パネル87には、略コの字状に屈曲形成した丸棒鋼材からなる規制金具88や、その規制金具88を下方に向けて付勢するように規制金具88の一端部に外嵌装備した押しバネ89、などで構成された規制具90が装備されている。規制具90は、規制金具88の一端部を支点にした水平方向への揺動操作や、押しバネ89の付勢に抗した引き上げ操作を行うことで、押しバネ89の付勢で、規制金具88の他端部を、上部パネル87の所定位置に穿設した貫通孔に挿通させて、規制金具88を上部パネル87の下方に向けて突出させる作用位置と、規制金具88の他端を上部パネル87に接当させて、規制金具88を、押しバネ89の付勢に抗して、上部パネル87の上方に退避させる退避位置とに切り換わる。そして、その退避位置では、変速レバー58の通過を許容して、変速レバー58の微速前進位置や高速前進位置への操作を可能にし、又、その作用位置では、変速レバー58との接当で変速レバー58の通過を阻止して、変速レバー58の微速前進位置や高速前進位置への操作を不能にする。
【0041】
つまり、植え付け作業時には、規制具90を作用位置に位置させることで、変速レバー58の誤操作などによって、植え付け作業には適していない微速前進状態や高速前進状態が不測に現出される虞を未然に回避できる。
【0042】
図1〜3及び図5〜7に示すように、伝動ケース11の前部側には、左右向きの支持部材91が装備され、この支持部材91とミッションケース12の後端上部とにわたって、無底の台形状に曲げ形成された左右一対のパイプフレーム92などから、直流モータ6やバッテリ7,8などを上方から覆うように枠組みされた座席フレーム93が架設され、直流モータ6やバッテリ7,8の上方となる座席フレーム93の上部前側に、運転座席18が、その前部の連結支点周りに前後揺動可能に、かつ、前後方向に位置調節可能に連結ピン94を介して連結されている。
【0043】
座席フレーム93の後上部には、搭乗ステップ19の左右の後端部を受け止め支持する支持フレーム95が溶接装備されている。
【0044】
図1及び図2に示すように、座席フレーム93には、最大3枚の予備苗の載置が可能となるように構成された予備苗載台96がボルト連結されており、この予備苗載台96は、予備苗が載置される3つの苗台97を、その1つが、側面視で運転座席18と重合する運転座席18の右側方の位置に、正面視で搭乗ステップ19の右側端と苗植付装置4の右側端との間に位置するように、又、その2つが、上下方向に所定間隔を隔てて並ぶ状態で、側面視で運転座席18と重合する運転座席18の左側方の位置に、正面視で搭乗ステップ18の左側端と苗植付装置4の左側端との間に位置するように、座席フレーム93で支持された予備苗フレーム98に備えて構成されている。
【0045】
つまり、3つの苗台97を上記のように配置したことで、小型に形成される3条植え用の乗用田植機でありながら、車体の全長や左右幅が大きくなる、あるいは、車体の前後バランスが変化するなどの不都合を招くことなく、3枚の予備苗を、苗載台47に対する苗補給の行い易い位置に備えることができ、これによって、苗補給のための畦への立ち寄り回数が少なくなるとともに、苗載台47への苗補給に要する労力を軽減でき、結果、小型の乗用田植機として、作業走行時の枕地旋回による隣接条合わせなどを容易に行える高い旋回性を確保しながら、作業効率の向上や作業労力の軽減化を図れる。
【0046】
又、ステアリングホイール75と左右の苗台97との間に乗降空間を確保することができ、これによって、小型に形成される3条植え用の乗用田植機に予備苗載台96を装備しながらも、走行車体1の横側方や前方からの乗降が行い易くなっている。
【0047】
図1〜3、図6、図7及び図10〜13に示すように、運転座席18の右側方には、昇降シリンダ2に対する作動油の流動を制御する制御弁99と、苗植付装置4に対する伝動を断続する作業クラッチ43とにそれぞれ操作連係された作業用レバー100が配備されており、作業用レバー100は、その下部に一体形成した左右向きの支点軸101が、制御弁99のケーシング102に相対回転可能に支持されている。
【0048】
制御弁99は、ミッションケース12の右側部に連結されるケーシング102に、流路切り換え用のスプール103を、その前端部をケーシング102から前方に向けて突出させた状態で、前後方向にスライド操作可能に内嵌装備し、又、そのスプール103を前方に向けて付勢する押しバネ(図示せず)を内装し、その押しバネの付勢によるスプール103の前方への押し出し操作、又は、その押しバネの付勢に抗したスプール103の後方への押し込み操作で、スプール103が中立位置に達すると、昇降シリンダ2に対する作動油の給排を停止する中立状態を現出し、スプール103が中立位置よりも前方の下降位置に達すると、昇降シリンダ2から作動油を排出させる下降状態を現出し、スプール103が中立位置よりも後方の上昇位置に達すると、昇降シリンダ2に作動油を供給する上昇状態を現出する。
【0049】
支点軸101には、左右向きの操作杆104を備えた揺動部材105が相対回転可能に装備され、又、操作アーム106が溶接され、揺動部材105は、支点軸101を支点にして後方に向けて揺動操作されることで、スプール103を押しバネの付勢に抗して押し込み操作し、操作アーム106は、作業用レバー100の後方への揺動操作に伴って、操作杆104を介して、スプール103を押しバネの付勢に抗して押し込み操作する。
【0050】
操作アーム106には、位置保持用の4つの凹部107と作業クラッチ操作用の凹部108とが形成され、位置保持用の各凹部107には、作業用レバー100の上昇、中立、下降、植付の各操作位置に応じて、デテントローラ109が、つる巻きバネ110の付勢で択一的に係合するようになっており、各凹部107に対するデテントローラ109の係合で、作業用レバー100とともに制御弁99のスプール103を上昇、中立、下降、植付の各操作位置に保持できる。
【0051】
作業クラッチ操作用の凹部108には、その凹部108に一端部が係入された操作ロッド111を介してクランクアーム112が操作連係され、クランクアーム112は、つる巻きバネ113の付勢で揺動することで、作業クラッチ43の操作軸114を押し込み操作し、又、操作アーム106の植付位置への揺動に連動して、つる巻きバネ113の付勢に抗して揺動することで、作業クラッチ43の操作軸114を引き出し操作し、作業クラッチ43は、操作軸114の押し込み操作で遮断状態に切り換わり、操作軸114の引き出し操作で接続状態に切り換わる。
【0052】
そして、上記の構成から、作業用レバー100を中立位置から上昇位置に操作すると、操作アーム106が、揺動部材105の操作杆104を介して、制御弁99のスプール103を上昇位置まで押し込み操作するようになり、これによって、制御弁99の上昇状態が現出されて昇降シリンダ2に作動油が供給され、昇降シリンダ2が収縮作動してリンク機構3を上昇揺動させることから、苗植付装置4が上昇する。そして、この操作では、操作アーム106における作業クラッチ操作用の凹部108での融通で、操作アーム106が、操作ロッド111を介してクランクアーム112を揺動操作することはなく、クランクアーム112が、つる巻きバネ113の付勢で作業クラッチ43の操作軸114を押し込み操作する状態が継続され、作業クラッチ43の遮断状態が維持されることから、苗植付装置4は作動を停止している。
【0053】
作業用レバー100を上昇位置から中立位置に操作すると、操作アーム106が、押しバネによるスプール103の中立位置への押し出し操作を許容するようになり、これによって、制御弁99の中立状態が現出されて昇降シリンダ2に対する作動油の給排が停止され、昇降シリンダ2が作動停止してリンク機構3を揺動停止させることから、苗植付装置4が上昇を停止する。そして、この操作でも、操作アーム106における作業クラッチ操作用の凹部108での融通で、作業クラッチ43の遮断状態が維持されることから、苗植付装置4は作動を停止している。
【0054】
作業用レバー100を中立位置から下降位置に操作すると、操作アーム106が、押しバネによるスプール103の下降位置への押し出し操作を許容するようになり、これによって、制御弁99の下降状態が現出されて昇降シリンダ2から作動油が排出され、昇降シリンダ2が伸長作動してリンク機構3を下降揺動させることから、苗植付装置4が下降する。そして、この操作でも、操作アーム106における作業クラッチ操作用の凹部108での融通で、作業クラッチ43の遮断状態が維持されることから、苗植付装置4は作動を停止している。
【0055】
作業用レバー100を下降位置から中立位置に操作すると、操作アーム106が、揺動部材105の操作杆104を介して、制御弁99のスプール103を中立位置まで押し込み操作するようになり、これによって、制御弁99の中立状態が現出されて昇降シリンダ2に対する作動油の給排が停止され、昇降シリンダ2が作動停止してリンク機構3を揺動停止させることから、苗植付装置4が下降を停止する。そして、この操作でも、操作アーム106における作業クラッチ操作用の凹部108での融通で、作業クラッチ43の遮断状態が維持されることから、苗植付装置4は作動を停止している。
【0056】
作業用レバー100を下降位置から植付位置に操作すると、操作アーム106が、操作ロッド111を介してクランクアーム112を揺動操作し、クランクアーム112が、つる巻きバネ113の付勢に抗して作業クラッチ43の操作軸114を引き出し操作するようになって、作業クラッチ43が遮断状態から接続状態に切り換わることから、苗植付装置4が作動する。
【0057】
作業用レバー100を植付位置から下降位置に操作すると、操作アーム106による操作ロッド111を介したクランクアーム112の揺動操作が解除され、クランクアーム112が、つる巻きバネ113の付勢で作業クラッチ43の操作軸114を押し込み操作するようになって、作業クラッチ43が接続状態から遮断状態に切り換わることから、苗植付装置4が作動を停止する。
【0058】
つまり、作業用レバー100を前後方向に揺動操作することで、苗植付装置4の昇降操作や作動切り換え操作を行える。
【0059】
図6、図7、図12及び図13に示すように、リンク機構3には、その昇降揺動に連動して前後揺動する連係アーム115が装備され、この連係アーム115と揺動部材105とにわたって、リンク機構3が所定の上限位置に到達するのに伴って、揺動部材105や操作アーム106などを介して作業用レバー100を上昇位置から中立位置に押圧操作する操作部材116が架設されている。
【0060】
つまり、作業用レバー100の上昇位置への操作で、リンク機構3とともに苗植付装置4が所定の上限位置に到達すると、作業用レバー100が上昇位置から中立位置に操作されて、リンク機構3とともに苗植付装置4が所定の上限位置にて自動停止する。
【0061】
図1、図6、図12及び図13に示すように、揺動部材105は、その遊端部がレリーズワイヤ117などを介して整地フロート50の前端部に操作連係され、レリーズワイヤ117は、整地フロート50の上昇揺動に連動してインナワイヤ118が引っ張り方向に操作され、整地フロート50の下降揺動に連動してインナワイヤ118が弛み方向に操作され、又、アウタワイヤ119の前端部が、整地フロート50の基準姿勢設定用として作業用レバー100の後方に配備した設定レバー120に、その前後方向への揺動操作によって前後方向に位置変更されるように支持されており、設定レバー120の操作位置に基づいて、制御弁99の中立状態に対する整地フロート50の基準姿勢が設定される。
【0062】
この構成から、作業用レバー100を下降位置に操作して、リンク機構3とともに苗植付装置4を下降させた場合において、整地フロート50が接地して設定レバー120の操作位置に対応する姿勢まで上昇揺動すると、この揺動に伴って、インナワイヤ118が引っ張り方向に操作されて、揺動部材105及び操作杆104を介して、制御弁99のスプール103を下降位置から中立位置まで押し込み操作するようになる。
【0063】
つまり、作業用レバー100の下降位置への操作で、リンク機構3とともに苗植付装置4が下降して、整地フロート50が予め設定された基準姿勢で接地する所定の作業高さ位置に到達すると、作業用レバー100を下降位置に位置させたまま、制御弁99のスプール103が下降位置から中立位置に操作されて、リンク機構3とともに苗植付装置4が所定の作業高さ位置にて自動停止する。
【0064】
そして、このように作業用レバー100を下降位置に操作して苗植付装置4の整地フロート50を接地させた状態や、この接地状態で作業用レバー100を植付位置に操作して苗植付装置4を作動させた作業状態では、操作アーム106が、整地フロート50の上下揺動に連動したスプール103の上昇位置と下降位置とにわたる出退操作を許容するようになり、これによって、車体の走行に伴って変化する圃場泥土の起伏などによって、整地フロート50が上昇揺動すると、その揺動に伴ってスプール103が中立位置から上昇位置に押し込み操作されることで苗植付装置4が上昇し、その上昇で整地フロート50が下降揺動して基準姿勢に復帰すると、その揺動に伴ってスプール103が上昇位置から中立位置に引き出し操作されることで苗植付装置4の上昇が停止する。逆に、車体の走行に伴って変化する圃場泥土の起伏などによって、整地フロート50が下降揺動すると、その揺動に伴ってスプール103が中立位置から下降位置に引き出し操作されることで苗植付装置4が下降し、その下降で整地フロート50が上昇揺動して基準姿勢に復帰すると、その揺動に伴ってスプール103が下降位置から中立位置に押し込み操作されることで苗植付装置4の下降が停止する。
【0065】
つまり、整地フロート50を接地させた作業状態では、整地フロート50の上下揺動に基づいて苗植付装置4が自動的に昇降して、その接地高さを、整地フロート50の姿勢が基準姿勢に維持される所定の高さに維持するようになることから、苗植付装置4による苗の植え付けを、車体の走行に伴って変化する圃場泥土の起伏などにかかわらず、予め設定した植え付け深さで安定して行える。
【0066】
一方、例えば、設定レバー120を前方に向けて揺動操作すると、アウタワイヤ119の前端部が後方に向けて変位し、制御弁99の中立状態に対する整地フロート50の基準姿勢が前下がり方向に変更する。逆に、設定レバー120を後方に向けて揺動操作すると、アウタワイヤ119の前端部が前方に向けて変位し、制御弁99の中立状態に対する整地フロート50の基準姿勢が前上がり方向に変更する。
【0067】
整地フロート50は、図外のバネによって接地付勢されており、その基準姿勢が前下がり方向に変更されるほど、バネの付勢力が弱められることになって、より小さい接地圧の上昇でも敏感に上昇揺動するようになり、逆に、その基準姿勢が前上がり方向に変更されるほど、バネの付勢力が強められることになって、より大きい接地圧の上昇でしか上昇揺動しないようになる。
【0068】
つまり、設定レバー120を前方側の操作位置に設定するほど、整地フロート50の揺動感度を、より柔らかい圃場泥土の起伏でも、その起伏に応じて整地フロート50が敏感に揺動する敏感側に変更することができ、逆に、設定レバー120を後方側の操作位置に設定するほど、整地フロート50の揺動感度を、より硬い圃場泥土の起伏でも整地フロート50が揺動しない鈍感側に変更することができ、これによって、圃場泥土の硬さに応じた整地フロート50の揺動感度の調節が可能になり、圃場泥土の硬さを考慮した好適な苗植付装置4の昇降操作を行えるようになることから、圃場泥土の硬さにかかわらず、苗植付装置4による予め設定した植え付け深さでの安定した苗の植え付けを行える。
【0069】
作業用レバー100の左側方には、制御弁から上方に向けて突設された操作軸121を、制御弁99の内部に形成された昇降シリンダ2に対する油路(図示せず)を閉じる位置と開く位置とにわたって回動操作する油圧ロックレバー122が配備され、この油圧ロックレバー122は、操作軸121に共締め連結されたトグルバネ123によって閉位置と開位置とに切り換え保持される。
【0070】
つまり、油圧ロックレバー122を開位置に切り換え保持すると、昇降シリンダ2の伸縮が許容されることから、苗植付装置4の昇降操作を可能にすることができ、又、油圧ロックレバー122を閉位置に切り換え保持すると、昇降シリンダ2の伸縮が阻止されることから、苗植付装置4の昇降操作を不能にすることができる。
【0071】
図3、図6、図7及び図11に示すように、制御弁99を介して昇降シリンダ2に供給される作動油は、制御弁99のケーシング102に埋設されたトロコイド型の油圧ポンプ124によって圧送され、この油圧ポンプ124は、伝動機構(伝動部材Cの一例)24及び伝動軸23を介して伝達される直流モータ6からの動力で駆動される。
【0072】
つまり、油圧ポンプ124を、直流モータ6からの動力を前輪9や後輪10及び苗植付装置4に伝達する伝動系における、主クラッチ22や作業クラッチ43などの断続手段B、並びにギヤ式変速装置25よりも伝動方向上手側に配備した伝動機構24に、伝動軸23を介して連動連結したことで、主クラッチ22などの断続操作に関係なく、又、ギヤ式変速装置25での変速操作の影響を受けることなく、高速で常時駆動することができ、これによって、主クラッチ22を遮断状態に切り換えた走行停止状態であっても、油圧ポンプ124から昇降シリンダ2に向けて作動油を圧送することができて、苗植付装置4の昇降操作を行えるとともに、ギヤ式変速装置25での変速操作の影響を受けて油圧ポンプ124が低速駆動されることで、油圧ポンプ124から昇降シリンダ2に向けて圧送される作動油量が低下して、苗植付装置4の昇降動作が鈍くなる不都合の発生を未然に回避できる。
【0073】
図1〜3、図5〜7、図14及び図15に示すように、伝動ケース11の上部には、伝動ケース11の支持部材91とミッションケース12の前上部とにボルト連結された側面視略L字状のベースプレート125が配備され、このベースプレート125の後部に、ベースプレート125の縦壁126によって後方への移動が阻止されるようにバッテリ7が載置されている。
【0074】
ベースプレート125におけるバッテリ7の直前箇所には、背面視略L字状の支持プレート127が、その底壁128でバッテリ7の前方への移動を阻止し、その縦壁129に備えたアーム140でバッテリ7の左方への移動を阻止するようにボルト連結され、この支持プレート127の縦壁129に直流モータ6がボルト連結され、この縦壁129に螺合されたボルト130に、主クラッチ22のテンションバネ72の固定端や伝動機構24のテンションバネ131の固定端が係止されている。
【0075】
ベースプレート125における支持プレート127の右側方には、バッテリ8の水平方向への移動を阻止する4つの縦壁132を備えた載置台133が、その左側の縦壁132でバッテリ7の右方への移動を阻止するように配備され、この載置台133は、その左後端部が支持プレート127の右端部に単一の蝶ボルト134によって簡易着脱可能に連結され、又、その右前端部に、座席フレーム93における右側のパイプフレーム92に吊り下げ支持されたフック金具135の下端部に螺合した蝶ナット136で受け止め支持される被支持金具137が溶接されている。
【0076】
直流モータ6とその後方に位置するバッテリ7は、座席フレーム93における左右のパイプフレーム92の間に位置し、直流モータ6の右側方に位置するバッテリ8は、右側のパイプフレーム92の下方に位置するようになっており、それらを覆うモータカバー20を取り外すとともに、運転座席18を前方に揺動させる又は取り外すことによって、直流モータ6及び各バッテリ7,8に対するメンテナンスを容易に行うことができるとともに、直流モータ6やその後方に位置するバッテリ7の左右のパイプフレーム92の間からの着脱が可能になり、又、蝶ボルト134や蝶ナット136を取り外すことで、右側のパイプフレーム92が邪魔になる不都合を招くことなく、直流モータ6の右側方に位置するバッテリ8を載置台133ごと着脱することができる。
【0077】
図16に示すように、直流モータ6は、運転座席18の近傍又はステアリングホイール75の近傍などに配備されるスイッチ138が閉操作されて、リレースイッチ139が閉状態に切り換わることで、バッテリ7,8からの電力が供給されて作動し、スイッチ138が開操作されて、リレースイッチ139が開状態に切り換わることで、バッテリ7,8からの電力が断たれて作動を停止する。
【0078】
つまり、駆動源として直流モータ6を採用したことで、交流モータを採用する場合に必要となるインバータなどを装備することない簡単な回路構成で駆動回路を構成することができる。
【0079】
又、駆動源としてエンジンを採用する場合に比較して、騒音が大幅に低減されることから、苗植付装置4における植付機構48などの作動状態を、それらの作動音で判断することが可能になり、更に、振動が大幅に低減されることから、振動による疲労が抑制され、その上、マフラを装備する必要がないことから、マフラからの放熱が植付苗に悪影響を及ぼす不都合や、マフラからの放熱で作業環境が悪化するあるいはメンテナンス作業が行い難くなるなどの不都合を招くことがなく、しかも、燃料の増減による車体バランスの変化がないことから、車体の安定性が向上する。
【0080】
更に、駆動源として小型作業機では一般的なリコイルスタータ式のエンジンを採用する場合に比較して、始動操作に要する労力が大幅に低下することから、高齢者でも簡単に始動させることができる。
【0081】
図1及び図2に示すように、誘導用の操作アーム74には、バランスウェイト141が簡易着脱可能に装備されており、このように、車体重心から車体前方側の最も離れた位置にバランスウェイト140を装備することで、バランスウェイト140として比較的軽量のものを採用しながらも、そのバランス機能を効果的に発揮させることができて、車体の前後バランスにおける安定性の向上を図れるようになり、又、バランスウェイト140として比較的軽量のものを採用できることで、車体全体としての重量化を抑制でき、操作アーム55を利用した地上側からの車体の操作性を確保できる。
【0082】
〔別実施形態〕
〔1〕農作業車としては、4条以上の植え付けが可能に構成された乗用田植機や、施肥装置(作業装置の一例)などを追加装備した乗用田植機、あるいは、乗用田植機以外の直播機あるいはトラクタやコンバインなどであってもよい。
【0083】
〔2〕電動モータAとして交流モータを装備するようにしてもよい。
【0084】
〔3〕車輪7,8及び作業装置4に伝動する主駆動源としての電動モータAとは別に、油圧ポンプ124を駆動する専用の副駆動源としての電動モータを装備するようにしてもよい。この構成においては、主駆動源の電動モータAに電力を供給する専用のバッテリと、副駆動源の電動モータに電力を供給する専用のバッテリとを装備するようにしてもよい。
【0085】
〔4〕施肥装置(作業装置の一例)などを追加装備する場合には、車輪7,8及び作業装置4に伝動する主駆動源としての電動モータAとは別に、追加装備した施肥装置などに伝動する副駆動源としての電動モータを装備するようにしてもよい。この構成においては、主駆動源の電動モータAと副駆動源の電動モータのいずれからの動力で油圧ポンプ124を駆動するように構成してもよい。又、主駆動源の電動モータAに電力を供給する専用のバッテリと、副駆動源の電動モータに電力を供給する専用のバッテリとを装備するようにしてもよい。
【0086】
〔5〕断続手段Bとしては、伝動を遮断する中立位置の現出保持が可能に構成されたギヤ式や静油圧式などの変速装置であってもよい。
【0087】
〔6〕油圧ポンプ124に連動連結される伝動系の伝動部材Cとしては、伝動系における断続手段Bの配置などに応じて種々の変更が可能である。
【0088】
〔7〕副駆動源となる電動シリンダ又は電動モータなどの電動アクチュエータを装備し、その電動アクチュエータの作動で作業装置4を昇降駆動するように構成してもよい。この構成においては、所定の上限位置での作業装置4の自動停止、予め設定した所定の作業高さ位置での作業装置4の自動停止、及び、予め設定した所定の作業高さ位置に作業装置4を維持するための作業装置4の自動昇降を、電動アクチュエータの電気的な制御で行うようにしてもよく、又、電動アクチュエータの機械的な制御(例えば、リンク機構3の上限位置への到達で、電動アクチュエータを上昇駆動させるためのスイッチをオフ操作する連係部材を備えるなどの制御構成)で行うようにしてもよい。
【0089】
〔8〕2つのバッテリ7,8を装備する構成に代えて、単一のバッテリを装備するようにしてもよい。
【0090】
〔9〕操縦塔17などに、主駆動源としての電動モータAを緊急停止させるための停止スイッチを装備するようにしてもよい。この構成では、運転者が地上に降りて車体を走行させる畦越え走行などにおいて、車体を緊急停止させる必要が生じた場合には、その走行時には走行車体1の前方に位置する運転者が、その位置からの操作が可能となるように操縦塔17に装備した停止スイッチを押圧操作することで、電動モータAの停止とともに車体を簡単に走行停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】乗用田植機の全体側面図
【図2】乗用田植機の全体平面図
【図3】伝動系及び操向系の構成などを示す平面図
【図4】操向系及び変速操作系の構成などを示す要部の縦断側面図
【図5】電動モータの配置や伝動構造などを示す車体後部の左側面図
【図6】電動モータの配置や操作構造などを示す車体後部の右側面図
【図7】電動モータやバッテリの配置などを示す車体後部の平面図
【図8】伝動構造を示すミッションケースの縦断背面図
【図9】走行用の伝動構造を示すミッションケースなどの横断平面図
【図10】作業用の伝動構造を示すミッションケースの横断平面図
【図11】油圧ポンプの駆動構造を示す要部の縦断背面図
【図12】昇降操作構造を示す要部の側面図
【図13】昇降操作構造を示す要部の分解斜視図
【図14】電動モータやバッテリの支持構造を示す要部の縦断正面図
【図15】電動モータやバッテリの支持構造を示す要部の斜視図
【図16】電動モータの駆動回路を示す電気配線図
【符号の説明】
【0092】
4 作業装置
9 車輪
10 車輪
124 油圧ポンプ
A 電動モータ
B 断続手段
C 伝動部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達するように構成した農作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のような農作業車としては、走行速度調整ペダルの踏み込み操作量に応じて回転速度が変更される走行系交流モータからの動力を、減速ギヤボックス内で適宜減速して前輪及び後輪に伝達し、減速ギヤボックスの後上部に、その減速ギヤボックス内を経由した走行系交流モータからの動力で駆動されることで、リフト機構昇降用の油圧シリンダ(油圧アクチュエータの一例)に向けて作動油を供給して、作動油の供給による油圧シリンダの駆動操作を可能にする油圧ポンプを設けたものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−300022号公報(段落番号0005,0006,0008、図1,3,4,6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
つまり、上記のような農作業車では、走行速度調整ペダルなどを操作して走行系交流モータを停止させることで、車体を走行停止させることができるのであるが、走行系交流モータを停止させると、油圧ポンプも停止されて、その油圧ポンプから油圧アクチュエータに向けた作動油の供給が行われなくなることから、油圧ポンプからの作動油による油圧アクチュエータの駆動操作を行えないようになっており、これによって、例えば、油圧アクチュエータが作業装置を昇降駆動するためのものである場合には、走行停止時に、作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができない不都合が生じるようになっていた。
【0004】
本発明の目的は、走行停止時に作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができなくなる、などの不都合の発生を回避できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうちの請求項1に記載の発明では、主駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達する伝動系とを備え、前記伝動系に、伝動の断続を可能にする断続手段を設け、前記電動モータを駆動源とする油圧ポンプを、前記伝動系における前記断続手段よりも伝動方向上手側に配備した伝動部材に連動連結してある。
【0006】
この構成によると、断続手段により電動モータからの動力を断続することで、車体の走行状態と走行停止状態とを切り換え現出することができ、又、断続手段による電動モータからの動力の断続にかかわらず油圧ポンプを駆動することができる。
【0007】
従って、車体を走行停止させた場合であっても、油圧ポンプからの作動油による油圧アクチュエータの駆動操作が可能となり、これによって、例えば、油圧アクチュエータが作業装置を昇降駆動するためのものである場合には、車体の走行及び走行停止にかかわらず、作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができ、結果、走行停止時に作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができなくなる、などの不都合の発生を回避できる。
【0008】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、主駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達する伝動系とを備え、副駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力で駆動される油圧ポンプとを設けてある。
【0009】
この構成によると、主駆動源の電動モータを駆動することで車体を走行させることができ、主駆動源の電動モータを停止することで車体を走行停止させることができ、副駆動源の電動モータを駆動することで、主駆動源の電動モータの駆動及び停止にかかわらず、油圧ポンプを駆動することができる。
【0010】
従って、車体を走行停止させた場合であっても、油圧ポンプからの作動油による油圧アクチュエータの駆動操作が可能となり、これによって、例えば、油圧アクチュエータが作業装置を昇降駆動させるためのものである場合には、車体の走行及び走行停止にかかわらず、作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができ、結果、走行停止時に作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができなくなる、などの不都合の発生を回避できる。
【0011】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、主駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達する伝動系とを備え、副駆動源となる電動アクチュエータを装備し、この電動アクチュエータの作動で前記作業装置を昇降駆動するように構成してある。
【0012】
この構成によると、電動モータを駆動することで車体を走行させることができ、電動モータを停止することで車体を走行停止させることができ、電動アクチュエータを駆動することで、電動モータの駆動及び停止にかかわらず作業装置を昇降させることができる。
【0013】
従って、車体を走行停止させた場合であっても、電動アクチュエータの作動で作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができ、結果、走行停止時に作業装置を任意の高さ位置に昇降させることができなくなる不都合の発生を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1には農作業車の一例である乗用田植機の全体側面が、図2にはその全体平面がそれぞれ示されており、この乗用田植機は、四輪駆動型の走行車体1の後部に、単動型の油圧シリンダからなる昇降シリンダ2の作動で昇降揺動するリンク機構3を介して、苗植付装置(作業装置の一例)4を駆動昇降可能に連結して構成されている。
【0015】
図1〜7に示すように、走行車体1は、車体フレーム5の前後中間部に、主駆動源となる直流モータ6(電動モータAの一例)と、この直流モータ6に電力を供給する2つのバッテリ7,8とを搭載し、その直流モータ6からの動力で、車体フレーム5の前部に配備した左右一対の前輪9と、車体フレーム5の後部に配備した左右一対の後輪10とを駆動する電動式の四輪駆動型に構成されている。又、重量の大きい直流モータ6やバッテリ7,8を、前輪9と後輪10との間となる車体フレーム5の前後中間部に配置したことで、安定性の向上が図られている。
【0016】
車体フレーム5は、丸パイプ材などからなる伝動ケース11を前後向きに配備し、その伝動ケース11の後部にミッションケース12を連結し、伝動ケース11の前部に前車軸ケース13を連結し、前車軸ケース13の前部左右中央に、バランスウェイトとしての機能を有する鋳鉄製の支持台14を連結して、その主要部が構成され、その前端に位置する支持台14の左右中間部に、上下向きのステアリング軸15や変速操作軸16などを覆う操縦塔17が立設され、直流モータ6及びバッテリ7,8の上方に配置された運転座席18を支持し、車体フレーム5の略全体を上方から覆うように形成された板金製の搭乗ステップ19が着脱可能に連結されている。
【0017】
搭乗ステップ19には、その中央部に形成した開口から露出する直流モータ6やバッテリ7,8などを覆い隠す樹脂製のモータカバー20が簡易着脱可能に係止装備されており、このモータカバー20を取り外すことで、搭乗ステップ19を取り外す手間を要することなく、直流モータ6やバッテリ7,8などに対するメンテナンスを行える。
【0018】
図1、図3及び図5に示すように、直流モータ6からの動力は、ミッションケース12に備えた入力軸21に、ベルトテンション式の主クラッチ22(断続手段Bの一例)を介して断続可能に伝達され、又、ミッションケース12に備えた伝動軸23に、ベルトテンション式の伝動機構24を介して断続不能に伝達される。
【0019】
図8に示すように、ミッションケース12の入力軸21に伝達された動力は、ミッションケース12の内部において走行用と作業用とに分岐され、走行用の動力は、前進3段、後進1段に変速可能に構成されたギヤ式変速装置25に伝達され、そのギヤ式変速装置25による変速後の動力が、減速ギヤ26を介して中継伝動軸27に伝達され、この中継伝動軸27において前輪駆動用の動力と後輪駆動用の動力とに分岐される。
【0020】
図1、図3、図4、図6、図8及び図9に示すように、前輪駆動用の動力は、ミッションケース12に内装した一対のベベルギヤ28、伝動ケース11に挿通した前後向きの第1伝動軸29、前車軸ケース13に内装した一対のベベルギヤ30や左右向きの第2伝動軸31、及び、前車軸ケース13から左右に向けて延出した左右の前車軸32、などを介して左右の前輪9に伝達される。つまり、左右の前輪9は、直流モータ6からの動力で等速駆動される。
【0021】
図1、図3、図8及び図9に示すように、後輪駆動用の動力は、ミッションケース12に内装した左右のサイドクラッチ33(断続手段Bの一例)やギヤ式減速装置34、及び、ミッションケース12から横外方に向けて延出した左右の後車軸35、などを介して左右の後輪10に伝達される。つまり、左右のサイドクラッチ33の作動による左右の各後輪10に対する独立した伝動調節及び伝動の断続が可能に構成されている。
【0022】
図1、図8及び図10に示すように、作業用の動力は、ミッションケース12に内装したトルクリミッタ36、ミッションケース12の内部とミッションケース12の右外側部に形成したギヤ室37とにわたる第1伝動軸38や第2伝動軸39、それらの伝動軸38,39に対する組み替えが可能となるようにギヤ室37に内装した一対の変速ギヤ40,41、及び、ミッションケース12に内装したベベルギヤ42や作業クラッチ43(断続手段Bの一例)、などを介して、作業動力取出用のPTO軸44に断続可能に伝達される。
【0023】
図1及び図2に示すように、PTO軸44から取り出された作業用の動力は、伸縮自在に構成された外部伝動軸45などを介して、苗植付装置4の動力分配部46に伝達される。
【0024】
苗植付装置4は、動力分配部46からの分配動力で、3条分のマット状苗を載置する苗載台47が所定ストロークで左右方向に往復移動し、左右方向に一定間隔を隔てて並設したクランク式の3つの植付機構48が、対応するマット状苗から所定量の苗を切り出して圃場泥土部に植え付け、苗載台47に装備した3つの縦送りベルト49が、苗載台47が左右のストローク端に到達するごとに、対応するマット状苗を所定量だけ下方に向けて縦送りする、といった植え付け作動を行うように構成され、最大3条の苗の植え付けを行える。
【0025】
苗植付装置4の下部には、植え付け前の圃場泥面を車体の走行に伴って整地する単一の整地フロート50が配備され、この整地フロート50は、その左側の後部が、動力分配部46からの動力を植付機構48に伝達する伝動機構(図示せず)を内装したフレーム兼用の植付伝動ケース51に、又、その右側の後部が、植付機構48を支持する支持フレーム52に、それぞれ左右向きの支軸53を介して、それらの支軸53を支点にしたピッチングが許容されるように連結されている。
【0026】
図1、図2、図4、図5、図8及び図10に示すように、ギヤ式変速装置25は、その変速軸54に軸心方向に相対摺動可能に内嵌された操作軸55が、操縦塔17に内装した変速操作軸16に、その変速操作軸16の回動に連動して前後方向に押し引き操作される連係部材56や、その連係部材56の押し引き操作に連動して回動することで操作軸55を左右方向に摺動操作する回動部材57を介して操作連係されており、変速操作軸16の上部に左右向きに一体形成した変速レバー58を前後方向に揺動操作すると、その操作に連動して、操作軸55が変速軸54に対して軸心方向(左右方向)に摺動変位し、その摺動変位で、変速軸54と一体回転する変速キー59が、変速軸54に相対回転可能に外嵌した後進ギヤ60、植え付け用の低速前進ギヤ61、畦越え用の微速前進ギヤ62、及び、移動用の高速前進ギヤ63のうちのいずれかに選択係合して、前進3段、後進1段のうちの変速レバー58の操作位置に応じた変速状態を現出する。
【0027】
図8に示すように、トルクリミッタ36は、PTO軸44の負荷トルクが設定値を超えた場合に、入力軸21と一体回転する駆動側回転爪64が、PTO軸44と連動する従動側回転爪65との間に有するカム作用で、押しバネ66の付勢に抗して従動側回転爪65との噛合を解除する方向に摺動変位し、PTO軸44への伝動を遮断することで、過負荷に起因した作業伝動系などの破損を回避する。
【0028】
入力軸19と駆動側回転爪64との間には、それらと一体回転し、入力軸21に対する摺動が阻止され、駆動側回転爪64の相対摺動を許容するように、入力軸21と駆動側回転爪64とにスプライン嵌合されるスプラインボス67が介装されており、これによって、入力軸21の軸径が小さくても、駆動側回転爪64に対するスプライン径を大きくすることができて、駆動側回転爪64の摺動抵抗を小さくすることや、トルクリミッタ36に調心作用が働くようにすることができ、結果、駆動側回転爪64に対するスプライン径が小さいことに起因して、駆動側回転爪64の摺動抵抗が大きくなるなどの不都合が生じて、トルクリミッタ36の作動トルクが不安定になることを防止してある。
【0029】
図8及び図9に示すように、ミッションケース12の右外側部には、ギヤ室37を閉塞するカバー68が簡易着脱可能に装備されており、このカバー68を取り外すことで、ギヤ室37に内装した一対の変速ギヤ40,41の配置換えや付け換えを行うことができ、これによって、ミッションケース12を分割する手間を要することなく、走行速度に対して作業速度を変更することができ、苗植付装置4による走行方向での植付けピッチ(株間)を調節できる。
【0030】
図1〜3及び図5に示すように、前車軸ケース13には、第2伝動軸31に作用することで左右の前輪9及び後輪10を制動する多板式のブレーキ69が内装され、このブレーキ69は、走行車体1の右前部に配備した操作ペダル70に、図外の連係機構を介して操作連係され、その操作ペダル70は、連係ロッド71を介して主クラッチ22に操作連係され、操作ペダル70を踏み込み操作すると、主クラッチ22の遮断状態と、操作ペダル70の踏み込み操作量に応じたブレーキ69の制動状態とが現出され、操作ペダル70の踏み込み操作を解除すると、主クラッチ22に備えたテンションバネ72やブレーキ69に内装した戻しバネ(図示せず)の作用で、主クラッチ22の接続状態とブレーキ69の非制動状態とが現出される。
【0031】
操作ペダル70には、走行車体1の前方に向けて延出する操作レバー73が一体装備されており、走行車体1の前方から、その操作レバー73を押し下げると、主クラッチ22の遮断状態と、操作レバー73の押し下げ操作量に応じたブレーキ69の制動状態とが現出され、操作レバー73の押し下げ操作を解除すると、主クラッチ22に備えたテンションバネ72やブレーキ69に内装した戻しバネの作用で、主クラッチ22の接続状態とブレーキ69の非制動状態とが現出される。
【0032】
つまり、操作レバー73を備えたことで、地上側からでも、主クラッチ22やブレーキ69の作用による車体の発進・停止操作や変速操作を行える。
【0033】
図1及び図2に示すように、支持台14には、走行車体1の地上側からの誘導操作を可能にする操作アーム74が固定装備され、この操作アーム74は、正面視が先窄まり状の略逆U字状で側面視が略L字状になるように屈曲形成されたパイプ材からなり、その左右方向の長さ(左右幅)が操縦塔17の左右方向の長さ(左右幅)よりも長くなるように設定され、又、その前部側が支持台14や操縦塔17よりも車体前方側に位置し、更に、その上端が操縦塔17の上下中間位置よりも低い位置に位置するように、その両端が支持台14の対応する横側面にボルト連結されている。
【0034】
つまり、操作アーム74を上記のように備えたことで、運転者が地上に降りて車体を走行させる畦越え走行などを行う場合には、その操作アーム74を利用すれば、畦越え走行時に発生し易い車体前部側の浮き上がりを抑える押さえ込み操作や、車体を左右に誘導する誘導操作などを地上側から良好に行える。
【0035】
特に、操作アーム74の上端位置を低くしたことで、操作アーム74を利用した車体前部側の引き上げ操作が行い易くなり、車体の前部側を持ち上げ気味にした誘導操作が行い易くなる。
【0036】
図1〜5及び図8に示すように、ステアリング軸15は、その上端部にステアリングホイール75が装備され、その下端部にピニオンギヤ76が一体形成され、そのピニオンギヤ76が、支持台14に相対揺動可能に軸支されたセクターギヤ77に噛合し、そのセクターギヤ77の左右両端部には連係アーム78が一体形成され、それらの連係アーム78が、左右の前輪9を操舵する左右の対応するナックルアーム79にタイロッド80を介して操作連係されている。
【0037】
セクターギヤ77は、その揺動支点を中心とする左右一対の長孔81が形成され、それらの長孔81に一端部が係合された左右の連係ロッド82を介して、対応するサイドクラッチ33の操作アーム83に操作連係されている。
【0038】
つまり、ステアリングホイール75を回動操作すると、その操作に連動して、ステアリングホイール75の回動操作量に応じた操舵角に左右の前輪9が操舵され、又、その操作で、前輪9が直進位置から設定角度以上に操舵されると、旋回内側の後輪10に対するサイドクラッチ33が遮断状態に切り換えられて、左右の前輪9と旋回外側の後輪10とを駆動させた3輪駆動状態で旋回する小旋回状態が現出される。
【0039】
図1、図2及び図4に示すように、操縦塔17は、ステアリング軸15が挿通されるステアリングポスト84、そのステアリングポスト84などを後方側から覆う板金製の後部ケース85、ステアリングポスト84などを前方側から覆う樹脂製の前部ケース86、及び、ステアリングポスト84の上端部に装備された上部パネル87、などによって構成されている。
【0040】
上部パネル87には、略コの字状に屈曲形成した丸棒鋼材からなる規制金具88や、その規制金具88を下方に向けて付勢するように規制金具88の一端部に外嵌装備した押しバネ89、などで構成された規制具90が装備されている。規制具90は、規制金具88の一端部を支点にした水平方向への揺動操作や、押しバネ89の付勢に抗した引き上げ操作を行うことで、押しバネ89の付勢で、規制金具88の他端部を、上部パネル87の所定位置に穿設した貫通孔に挿通させて、規制金具88を上部パネル87の下方に向けて突出させる作用位置と、規制金具88の他端を上部パネル87に接当させて、規制金具88を、押しバネ89の付勢に抗して、上部パネル87の上方に退避させる退避位置とに切り換わる。そして、その退避位置では、変速レバー58の通過を許容して、変速レバー58の微速前進位置や高速前進位置への操作を可能にし、又、その作用位置では、変速レバー58との接当で変速レバー58の通過を阻止して、変速レバー58の微速前進位置や高速前進位置への操作を不能にする。
【0041】
つまり、植え付け作業時には、規制具90を作用位置に位置させることで、変速レバー58の誤操作などによって、植え付け作業には適していない微速前進状態や高速前進状態が不測に現出される虞を未然に回避できる。
【0042】
図1〜3及び図5〜7に示すように、伝動ケース11の前部側には、左右向きの支持部材91が装備され、この支持部材91とミッションケース12の後端上部とにわたって、無底の台形状に曲げ形成された左右一対のパイプフレーム92などから、直流モータ6やバッテリ7,8などを上方から覆うように枠組みされた座席フレーム93が架設され、直流モータ6やバッテリ7,8の上方となる座席フレーム93の上部前側に、運転座席18が、その前部の連結支点周りに前後揺動可能に、かつ、前後方向に位置調節可能に連結ピン94を介して連結されている。
【0043】
座席フレーム93の後上部には、搭乗ステップ19の左右の後端部を受け止め支持する支持フレーム95が溶接装備されている。
【0044】
図1及び図2に示すように、座席フレーム93には、最大3枚の予備苗の載置が可能となるように構成された予備苗載台96がボルト連結されており、この予備苗載台96は、予備苗が載置される3つの苗台97を、その1つが、側面視で運転座席18と重合する運転座席18の右側方の位置に、正面視で搭乗ステップ19の右側端と苗植付装置4の右側端との間に位置するように、又、その2つが、上下方向に所定間隔を隔てて並ぶ状態で、側面視で運転座席18と重合する運転座席18の左側方の位置に、正面視で搭乗ステップ18の左側端と苗植付装置4の左側端との間に位置するように、座席フレーム93で支持された予備苗フレーム98に備えて構成されている。
【0045】
つまり、3つの苗台97を上記のように配置したことで、小型に形成される3条植え用の乗用田植機でありながら、車体の全長や左右幅が大きくなる、あるいは、車体の前後バランスが変化するなどの不都合を招くことなく、3枚の予備苗を、苗載台47に対する苗補給の行い易い位置に備えることができ、これによって、苗補給のための畦への立ち寄り回数が少なくなるとともに、苗載台47への苗補給に要する労力を軽減でき、結果、小型の乗用田植機として、作業走行時の枕地旋回による隣接条合わせなどを容易に行える高い旋回性を確保しながら、作業効率の向上や作業労力の軽減化を図れる。
【0046】
又、ステアリングホイール75と左右の苗台97との間に乗降空間を確保することができ、これによって、小型に形成される3条植え用の乗用田植機に予備苗載台96を装備しながらも、走行車体1の横側方や前方からの乗降が行い易くなっている。
【0047】
図1〜3、図6、図7及び図10〜13に示すように、運転座席18の右側方には、昇降シリンダ2に対する作動油の流動を制御する制御弁99と、苗植付装置4に対する伝動を断続する作業クラッチ43とにそれぞれ操作連係された作業用レバー100が配備されており、作業用レバー100は、その下部に一体形成した左右向きの支点軸101が、制御弁99のケーシング102に相対回転可能に支持されている。
【0048】
制御弁99は、ミッションケース12の右側部に連結されるケーシング102に、流路切り換え用のスプール103を、その前端部をケーシング102から前方に向けて突出させた状態で、前後方向にスライド操作可能に内嵌装備し、又、そのスプール103を前方に向けて付勢する押しバネ(図示せず)を内装し、その押しバネの付勢によるスプール103の前方への押し出し操作、又は、その押しバネの付勢に抗したスプール103の後方への押し込み操作で、スプール103が中立位置に達すると、昇降シリンダ2に対する作動油の給排を停止する中立状態を現出し、スプール103が中立位置よりも前方の下降位置に達すると、昇降シリンダ2から作動油を排出させる下降状態を現出し、スプール103が中立位置よりも後方の上昇位置に達すると、昇降シリンダ2に作動油を供給する上昇状態を現出する。
【0049】
支点軸101には、左右向きの操作杆104を備えた揺動部材105が相対回転可能に装備され、又、操作アーム106が溶接され、揺動部材105は、支点軸101を支点にして後方に向けて揺動操作されることで、スプール103を押しバネの付勢に抗して押し込み操作し、操作アーム106は、作業用レバー100の後方への揺動操作に伴って、操作杆104を介して、スプール103を押しバネの付勢に抗して押し込み操作する。
【0050】
操作アーム106には、位置保持用の4つの凹部107と作業クラッチ操作用の凹部108とが形成され、位置保持用の各凹部107には、作業用レバー100の上昇、中立、下降、植付の各操作位置に応じて、デテントローラ109が、つる巻きバネ110の付勢で択一的に係合するようになっており、各凹部107に対するデテントローラ109の係合で、作業用レバー100とともに制御弁99のスプール103を上昇、中立、下降、植付の各操作位置に保持できる。
【0051】
作業クラッチ操作用の凹部108には、その凹部108に一端部が係入された操作ロッド111を介してクランクアーム112が操作連係され、クランクアーム112は、つる巻きバネ113の付勢で揺動することで、作業クラッチ43の操作軸114を押し込み操作し、又、操作アーム106の植付位置への揺動に連動して、つる巻きバネ113の付勢に抗して揺動することで、作業クラッチ43の操作軸114を引き出し操作し、作業クラッチ43は、操作軸114の押し込み操作で遮断状態に切り換わり、操作軸114の引き出し操作で接続状態に切り換わる。
【0052】
そして、上記の構成から、作業用レバー100を中立位置から上昇位置に操作すると、操作アーム106が、揺動部材105の操作杆104を介して、制御弁99のスプール103を上昇位置まで押し込み操作するようになり、これによって、制御弁99の上昇状態が現出されて昇降シリンダ2に作動油が供給され、昇降シリンダ2が収縮作動してリンク機構3を上昇揺動させることから、苗植付装置4が上昇する。そして、この操作では、操作アーム106における作業クラッチ操作用の凹部108での融通で、操作アーム106が、操作ロッド111を介してクランクアーム112を揺動操作することはなく、クランクアーム112が、つる巻きバネ113の付勢で作業クラッチ43の操作軸114を押し込み操作する状態が継続され、作業クラッチ43の遮断状態が維持されることから、苗植付装置4は作動を停止している。
【0053】
作業用レバー100を上昇位置から中立位置に操作すると、操作アーム106が、押しバネによるスプール103の中立位置への押し出し操作を許容するようになり、これによって、制御弁99の中立状態が現出されて昇降シリンダ2に対する作動油の給排が停止され、昇降シリンダ2が作動停止してリンク機構3を揺動停止させることから、苗植付装置4が上昇を停止する。そして、この操作でも、操作アーム106における作業クラッチ操作用の凹部108での融通で、作業クラッチ43の遮断状態が維持されることから、苗植付装置4は作動を停止している。
【0054】
作業用レバー100を中立位置から下降位置に操作すると、操作アーム106が、押しバネによるスプール103の下降位置への押し出し操作を許容するようになり、これによって、制御弁99の下降状態が現出されて昇降シリンダ2から作動油が排出され、昇降シリンダ2が伸長作動してリンク機構3を下降揺動させることから、苗植付装置4が下降する。そして、この操作でも、操作アーム106における作業クラッチ操作用の凹部108での融通で、作業クラッチ43の遮断状態が維持されることから、苗植付装置4は作動を停止している。
【0055】
作業用レバー100を下降位置から中立位置に操作すると、操作アーム106が、揺動部材105の操作杆104を介して、制御弁99のスプール103を中立位置まで押し込み操作するようになり、これによって、制御弁99の中立状態が現出されて昇降シリンダ2に対する作動油の給排が停止され、昇降シリンダ2が作動停止してリンク機構3を揺動停止させることから、苗植付装置4が下降を停止する。そして、この操作でも、操作アーム106における作業クラッチ操作用の凹部108での融通で、作業クラッチ43の遮断状態が維持されることから、苗植付装置4は作動を停止している。
【0056】
作業用レバー100を下降位置から植付位置に操作すると、操作アーム106が、操作ロッド111を介してクランクアーム112を揺動操作し、クランクアーム112が、つる巻きバネ113の付勢に抗して作業クラッチ43の操作軸114を引き出し操作するようになって、作業クラッチ43が遮断状態から接続状態に切り換わることから、苗植付装置4が作動する。
【0057】
作業用レバー100を植付位置から下降位置に操作すると、操作アーム106による操作ロッド111を介したクランクアーム112の揺動操作が解除され、クランクアーム112が、つる巻きバネ113の付勢で作業クラッチ43の操作軸114を押し込み操作するようになって、作業クラッチ43が接続状態から遮断状態に切り換わることから、苗植付装置4が作動を停止する。
【0058】
つまり、作業用レバー100を前後方向に揺動操作することで、苗植付装置4の昇降操作や作動切り換え操作を行える。
【0059】
図6、図7、図12及び図13に示すように、リンク機構3には、その昇降揺動に連動して前後揺動する連係アーム115が装備され、この連係アーム115と揺動部材105とにわたって、リンク機構3が所定の上限位置に到達するのに伴って、揺動部材105や操作アーム106などを介して作業用レバー100を上昇位置から中立位置に押圧操作する操作部材116が架設されている。
【0060】
つまり、作業用レバー100の上昇位置への操作で、リンク機構3とともに苗植付装置4が所定の上限位置に到達すると、作業用レバー100が上昇位置から中立位置に操作されて、リンク機構3とともに苗植付装置4が所定の上限位置にて自動停止する。
【0061】
図1、図6、図12及び図13に示すように、揺動部材105は、その遊端部がレリーズワイヤ117などを介して整地フロート50の前端部に操作連係され、レリーズワイヤ117は、整地フロート50の上昇揺動に連動してインナワイヤ118が引っ張り方向に操作され、整地フロート50の下降揺動に連動してインナワイヤ118が弛み方向に操作され、又、アウタワイヤ119の前端部が、整地フロート50の基準姿勢設定用として作業用レバー100の後方に配備した設定レバー120に、その前後方向への揺動操作によって前後方向に位置変更されるように支持されており、設定レバー120の操作位置に基づいて、制御弁99の中立状態に対する整地フロート50の基準姿勢が設定される。
【0062】
この構成から、作業用レバー100を下降位置に操作して、リンク機構3とともに苗植付装置4を下降させた場合において、整地フロート50が接地して設定レバー120の操作位置に対応する姿勢まで上昇揺動すると、この揺動に伴って、インナワイヤ118が引っ張り方向に操作されて、揺動部材105及び操作杆104を介して、制御弁99のスプール103を下降位置から中立位置まで押し込み操作するようになる。
【0063】
つまり、作業用レバー100の下降位置への操作で、リンク機構3とともに苗植付装置4が下降して、整地フロート50が予め設定された基準姿勢で接地する所定の作業高さ位置に到達すると、作業用レバー100を下降位置に位置させたまま、制御弁99のスプール103が下降位置から中立位置に操作されて、リンク機構3とともに苗植付装置4が所定の作業高さ位置にて自動停止する。
【0064】
そして、このように作業用レバー100を下降位置に操作して苗植付装置4の整地フロート50を接地させた状態や、この接地状態で作業用レバー100を植付位置に操作して苗植付装置4を作動させた作業状態では、操作アーム106が、整地フロート50の上下揺動に連動したスプール103の上昇位置と下降位置とにわたる出退操作を許容するようになり、これによって、車体の走行に伴って変化する圃場泥土の起伏などによって、整地フロート50が上昇揺動すると、その揺動に伴ってスプール103が中立位置から上昇位置に押し込み操作されることで苗植付装置4が上昇し、その上昇で整地フロート50が下降揺動して基準姿勢に復帰すると、その揺動に伴ってスプール103が上昇位置から中立位置に引き出し操作されることで苗植付装置4の上昇が停止する。逆に、車体の走行に伴って変化する圃場泥土の起伏などによって、整地フロート50が下降揺動すると、その揺動に伴ってスプール103が中立位置から下降位置に引き出し操作されることで苗植付装置4が下降し、その下降で整地フロート50が上昇揺動して基準姿勢に復帰すると、その揺動に伴ってスプール103が下降位置から中立位置に押し込み操作されることで苗植付装置4の下降が停止する。
【0065】
つまり、整地フロート50を接地させた作業状態では、整地フロート50の上下揺動に基づいて苗植付装置4が自動的に昇降して、その接地高さを、整地フロート50の姿勢が基準姿勢に維持される所定の高さに維持するようになることから、苗植付装置4による苗の植え付けを、車体の走行に伴って変化する圃場泥土の起伏などにかかわらず、予め設定した植え付け深さで安定して行える。
【0066】
一方、例えば、設定レバー120を前方に向けて揺動操作すると、アウタワイヤ119の前端部が後方に向けて変位し、制御弁99の中立状態に対する整地フロート50の基準姿勢が前下がり方向に変更する。逆に、設定レバー120を後方に向けて揺動操作すると、アウタワイヤ119の前端部が前方に向けて変位し、制御弁99の中立状態に対する整地フロート50の基準姿勢が前上がり方向に変更する。
【0067】
整地フロート50は、図外のバネによって接地付勢されており、その基準姿勢が前下がり方向に変更されるほど、バネの付勢力が弱められることになって、より小さい接地圧の上昇でも敏感に上昇揺動するようになり、逆に、その基準姿勢が前上がり方向に変更されるほど、バネの付勢力が強められることになって、より大きい接地圧の上昇でしか上昇揺動しないようになる。
【0068】
つまり、設定レバー120を前方側の操作位置に設定するほど、整地フロート50の揺動感度を、より柔らかい圃場泥土の起伏でも、その起伏に応じて整地フロート50が敏感に揺動する敏感側に変更することができ、逆に、設定レバー120を後方側の操作位置に設定するほど、整地フロート50の揺動感度を、より硬い圃場泥土の起伏でも整地フロート50が揺動しない鈍感側に変更することができ、これによって、圃場泥土の硬さに応じた整地フロート50の揺動感度の調節が可能になり、圃場泥土の硬さを考慮した好適な苗植付装置4の昇降操作を行えるようになることから、圃場泥土の硬さにかかわらず、苗植付装置4による予め設定した植え付け深さでの安定した苗の植え付けを行える。
【0069】
作業用レバー100の左側方には、制御弁から上方に向けて突設された操作軸121を、制御弁99の内部に形成された昇降シリンダ2に対する油路(図示せず)を閉じる位置と開く位置とにわたって回動操作する油圧ロックレバー122が配備され、この油圧ロックレバー122は、操作軸121に共締め連結されたトグルバネ123によって閉位置と開位置とに切り換え保持される。
【0070】
つまり、油圧ロックレバー122を開位置に切り換え保持すると、昇降シリンダ2の伸縮が許容されることから、苗植付装置4の昇降操作を可能にすることができ、又、油圧ロックレバー122を閉位置に切り換え保持すると、昇降シリンダ2の伸縮が阻止されることから、苗植付装置4の昇降操作を不能にすることができる。
【0071】
図3、図6、図7及び図11に示すように、制御弁99を介して昇降シリンダ2に供給される作動油は、制御弁99のケーシング102に埋設されたトロコイド型の油圧ポンプ124によって圧送され、この油圧ポンプ124は、伝動機構(伝動部材Cの一例)24及び伝動軸23を介して伝達される直流モータ6からの動力で駆動される。
【0072】
つまり、油圧ポンプ124を、直流モータ6からの動力を前輪9や後輪10及び苗植付装置4に伝達する伝動系における、主クラッチ22や作業クラッチ43などの断続手段B、並びにギヤ式変速装置25よりも伝動方向上手側に配備した伝動機構24に、伝動軸23を介して連動連結したことで、主クラッチ22などの断続操作に関係なく、又、ギヤ式変速装置25での変速操作の影響を受けることなく、高速で常時駆動することができ、これによって、主クラッチ22を遮断状態に切り換えた走行停止状態であっても、油圧ポンプ124から昇降シリンダ2に向けて作動油を圧送することができて、苗植付装置4の昇降操作を行えるとともに、ギヤ式変速装置25での変速操作の影響を受けて油圧ポンプ124が低速駆動されることで、油圧ポンプ124から昇降シリンダ2に向けて圧送される作動油量が低下して、苗植付装置4の昇降動作が鈍くなる不都合の発生を未然に回避できる。
【0073】
図1〜3、図5〜7、図14及び図15に示すように、伝動ケース11の上部には、伝動ケース11の支持部材91とミッションケース12の前上部とにボルト連結された側面視略L字状のベースプレート125が配備され、このベースプレート125の後部に、ベースプレート125の縦壁126によって後方への移動が阻止されるようにバッテリ7が載置されている。
【0074】
ベースプレート125におけるバッテリ7の直前箇所には、背面視略L字状の支持プレート127が、その底壁128でバッテリ7の前方への移動を阻止し、その縦壁129に備えたアーム140でバッテリ7の左方への移動を阻止するようにボルト連結され、この支持プレート127の縦壁129に直流モータ6がボルト連結され、この縦壁129に螺合されたボルト130に、主クラッチ22のテンションバネ72の固定端や伝動機構24のテンションバネ131の固定端が係止されている。
【0075】
ベースプレート125における支持プレート127の右側方には、バッテリ8の水平方向への移動を阻止する4つの縦壁132を備えた載置台133が、その左側の縦壁132でバッテリ7の右方への移動を阻止するように配備され、この載置台133は、その左後端部が支持プレート127の右端部に単一の蝶ボルト134によって簡易着脱可能に連結され、又、その右前端部に、座席フレーム93における右側のパイプフレーム92に吊り下げ支持されたフック金具135の下端部に螺合した蝶ナット136で受け止め支持される被支持金具137が溶接されている。
【0076】
直流モータ6とその後方に位置するバッテリ7は、座席フレーム93における左右のパイプフレーム92の間に位置し、直流モータ6の右側方に位置するバッテリ8は、右側のパイプフレーム92の下方に位置するようになっており、それらを覆うモータカバー20を取り外すとともに、運転座席18を前方に揺動させる又は取り外すことによって、直流モータ6及び各バッテリ7,8に対するメンテナンスを容易に行うことができるとともに、直流モータ6やその後方に位置するバッテリ7の左右のパイプフレーム92の間からの着脱が可能になり、又、蝶ボルト134や蝶ナット136を取り外すことで、右側のパイプフレーム92が邪魔になる不都合を招くことなく、直流モータ6の右側方に位置するバッテリ8を載置台133ごと着脱することができる。
【0077】
図16に示すように、直流モータ6は、運転座席18の近傍又はステアリングホイール75の近傍などに配備されるスイッチ138が閉操作されて、リレースイッチ139が閉状態に切り換わることで、バッテリ7,8からの電力が供給されて作動し、スイッチ138が開操作されて、リレースイッチ139が開状態に切り換わることで、バッテリ7,8からの電力が断たれて作動を停止する。
【0078】
つまり、駆動源として直流モータ6を採用したことで、交流モータを採用する場合に必要となるインバータなどを装備することない簡単な回路構成で駆動回路を構成することができる。
【0079】
又、駆動源としてエンジンを採用する場合に比較して、騒音が大幅に低減されることから、苗植付装置4における植付機構48などの作動状態を、それらの作動音で判断することが可能になり、更に、振動が大幅に低減されることから、振動による疲労が抑制され、その上、マフラを装備する必要がないことから、マフラからの放熱が植付苗に悪影響を及ぼす不都合や、マフラからの放熱で作業環境が悪化するあるいはメンテナンス作業が行い難くなるなどの不都合を招くことがなく、しかも、燃料の増減による車体バランスの変化がないことから、車体の安定性が向上する。
【0080】
更に、駆動源として小型作業機では一般的なリコイルスタータ式のエンジンを採用する場合に比較して、始動操作に要する労力が大幅に低下することから、高齢者でも簡単に始動させることができる。
【0081】
図1及び図2に示すように、誘導用の操作アーム74には、バランスウェイト141が簡易着脱可能に装備されており、このように、車体重心から車体前方側の最も離れた位置にバランスウェイト140を装備することで、バランスウェイト140として比較的軽量のものを採用しながらも、そのバランス機能を効果的に発揮させることができて、車体の前後バランスにおける安定性の向上を図れるようになり、又、バランスウェイト140として比較的軽量のものを採用できることで、車体全体としての重量化を抑制でき、操作アーム55を利用した地上側からの車体の操作性を確保できる。
【0082】
〔別実施形態〕
〔1〕農作業車としては、4条以上の植え付けが可能に構成された乗用田植機や、施肥装置(作業装置の一例)などを追加装備した乗用田植機、あるいは、乗用田植機以外の直播機あるいはトラクタやコンバインなどであってもよい。
【0083】
〔2〕電動モータAとして交流モータを装備するようにしてもよい。
【0084】
〔3〕車輪7,8及び作業装置4に伝動する主駆動源としての電動モータAとは別に、油圧ポンプ124を駆動する専用の副駆動源としての電動モータを装備するようにしてもよい。この構成においては、主駆動源の電動モータAに電力を供給する専用のバッテリと、副駆動源の電動モータに電力を供給する専用のバッテリとを装備するようにしてもよい。
【0085】
〔4〕施肥装置(作業装置の一例)などを追加装備する場合には、車輪7,8及び作業装置4に伝動する主駆動源としての電動モータAとは別に、追加装備した施肥装置などに伝動する副駆動源としての電動モータを装備するようにしてもよい。この構成においては、主駆動源の電動モータAと副駆動源の電動モータのいずれからの動力で油圧ポンプ124を駆動するように構成してもよい。又、主駆動源の電動モータAに電力を供給する専用のバッテリと、副駆動源の電動モータに電力を供給する専用のバッテリとを装備するようにしてもよい。
【0086】
〔5〕断続手段Bとしては、伝動を遮断する中立位置の現出保持が可能に構成されたギヤ式や静油圧式などの変速装置であってもよい。
【0087】
〔6〕油圧ポンプ124に連動連結される伝動系の伝動部材Cとしては、伝動系における断続手段Bの配置などに応じて種々の変更が可能である。
【0088】
〔7〕副駆動源となる電動シリンダ又は電動モータなどの電動アクチュエータを装備し、その電動アクチュエータの作動で作業装置4を昇降駆動するように構成してもよい。この構成においては、所定の上限位置での作業装置4の自動停止、予め設定した所定の作業高さ位置での作業装置4の自動停止、及び、予め設定した所定の作業高さ位置に作業装置4を維持するための作業装置4の自動昇降を、電動アクチュエータの電気的な制御で行うようにしてもよく、又、電動アクチュエータの機械的な制御(例えば、リンク機構3の上限位置への到達で、電動アクチュエータを上昇駆動させるためのスイッチをオフ操作する連係部材を備えるなどの制御構成)で行うようにしてもよい。
【0089】
〔8〕2つのバッテリ7,8を装備する構成に代えて、単一のバッテリを装備するようにしてもよい。
【0090】
〔9〕操縦塔17などに、主駆動源としての電動モータAを緊急停止させるための停止スイッチを装備するようにしてもよい。この構成では、運転者が地上に降りて車体を走行させる畦越え走行などにおいて、車体を緊急停止させる必要が生じた場合には、その走行時には走行車体1の前方に位置する運転者が、その位置からの操作が可能となるように操縦塔17に装備した停止スイッチを押圧操作することで、電動モータAの停止とともに車体を簡単に走行停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】乗用田植機の全体側面図
【図2】乗用田植機の全体平面図
【図3】伝動系及び操向系の構成などを示す平面図
【図4】操向系及び変速操作系の構成などを示す要部の縦断側面図
【図5】電動モータの配置や伝動構造などを示す車体後部の左側面図
【図6】電動モータの配置や操作構造などを示す車体後部の右側面図
【図7】電動モータやバッテリの配置などを示す車体後部の平面図
【図8】伝動構造を示すミッションケースの縦断背面図
【図9】走行用の伝動構造を示すミッションケースなどの横断平面図
【図10】作業用の伝動構造を示すミッションケースの横断平面図
【図11】油圧ポンプの駆動構造を示す要部の縦断背面図
【図12】昇降操作構造を示す要部の側面図
【図13】昇降操作構造を示す要部の分解斜視図
【図14】電動モータやバッテリの支持構造を示す要部の縦断正面図
【図15】電動モータやバッテリの支持構造を示す要部の斜視図
【図16】電動モータの駆動回路を示す電気配線図
【符号の説明】
【0092】
4 作業装置
9 車輪
10 車輪
124 油圧ポンプ
A 電動モータ
B 断続手段
C 伝動部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達する伝動系とを備え、
前記伝動系に、伝動の断続を可能にする断続手段を設け、
前記電動モータを駆動源とする油圧ポンプを、前記伝動系における前記断続手段よりも伝動方向上手側に配備した伝動部材に連動連結してある農作業車。
【請求項2】
主駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達する伝動系とを備え、
副駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力で駆動される油圧ポンプとを設けてある農作業車。
【請求項3】
主駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達する伝動系とを備え、
副駆動源となる電動アクチュエータを装備し、この電動アクチュエータの作動で前記作業装置を昇降駆動するように構成してある農作業車。
【請求項1】
主駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達する伝動系とを備え、
前記伝動系に、伝動の断続を可能にする断続手段を設け、
前記電動モータを駆動源とする油圧ポンプを、前記伝動系における前記断続手段よりも伝動方向上手側に配備した伝動部材に連動連結してある農作業車。
【請求項2】
主駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達する伝動系とを備え、
副駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力で駆動される油圧ポンプとを設けてある農作業車。
【請求項3】
主駆動源となる電動モータと、この電動モータからの動力を車輪及び作業装置に伝達する伝動系とを備え、
副駆動源となる電動アクチュエータを装備し、この電動アクチュエータの作動で前記作業装置を昇降駆動するように構成してある農作業車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−189912(P2007−189912A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8704(P2006−8704)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]