農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットおよび該ユニットによる建築物
【課題】農業用・園芸用ハウスを構築する場合に、ハウスの幅や奥行きを所定単位で広くできるとともに、屋根部の傾きを所定角度に保持できる農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットを提供することである。
【解決手段】支柱と、該支柱に沿って移動可能なスライド体と、該スライド体に一端を回動可能に取り付けた屋根材取付アームと、該屋根材取付アームを回動可能に支持するとともに一端を前記支柱に回動可能に取り付けた支持材を有してなる農業・園芸ハウス用ユニットにおいて、隙歯形状部を有するふたつの係止棒を上下に配し、該隙歯形状部分を噛み合わせることでスライド体を係止し、屋根材取り付けアームの傾きを所定角度に保持可能とした。
【解決手段】支柱と、該支柱に沿って移動可能なスライド体と、該スライド体に一端を回動可能に取り付けた屋根材取付アームと、該屋根材取付アームを回動可能に支持するとともに一端を前記支柱に回動可能に取り付けた支持材を有してなる農業・園芸ハウス用ユニットにおいて、隙歯形状部を有するふたつの係止棒を上下に配し、該隙歯形状部分を噛み合わせることでスライド体を係止し、屋根材取り付けアームの傾きを所定角度に保持可能とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数設置することで農業・園芸ハウスを構築に用いる農業・園芸ハウス用ユニットおよび該ユニットによる建築物に関し、さらに詳しくは、吊り支持屋根タイプの農業・園芸ハウスを構築するユニットにおいて、屋根の傾きを変えることができる農業・園芸ハウス用ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
育苗や野菜の栽培などに利用する農業用ハウスや花卉栽培などに利用する園芸用のハウス(以下「農園芸ハウス」と記す。)としては、アーチ型に形成したパイプや複数のパイプを連結してアーチ型としたパイプを、奥行方向に適宜間隔で並立して骨組みを形成し、該骨組みの外側をビニル等を材質としたシートやフィルムで覆ったいわゆるパイプハウスが多く利用されている。また大型のものとしては、支柱や梁などに鉄骨を用い、その周囲や屋根を塩化ビニル製や金属素材製の波型トタンで覆った構造のハウスも利用されている
【0003】
農園芸ハウスの構造、特に骨格となる支柱部分に関する発明・考案としては、入手容易な直線状の鉄パイプを使用することで組み立てを容易とした発明(特許文献1)や、柱材を二重構造とし屋根材と梁材とを支持する斜材を主骨材とした大型パイプハウス構造用アーチに係る発明(特許文献2)が公知となっている。
しかしながら、前述のパイプハウスおよびこれら特許文献に記載の発明を用いた農園芸ハウスは、使用する部材の長さや強度によってハウスの幅や奥行きが決まってしまい、ハウスを広げる場合にはさらに別のハウスを構築する必要がある。
【0004】
ところで、農作物を含めた植物の育成には、水分、日光、通気(温度や湿度の調節)が必要不可欠である。農園芸ハウスにおいても、ハウスの側面や天井に設けた窓および屋根などの開閉によって、日光を取り入れたり、通気調節を行ったり、また少量ではあるが雨や霧などを取り入れて水分を得たりすることが行われている。この屋根部や側面部の開閉構造に関する出願も多くなされており、ビニル等の覆いを回転軸によって直接巻き取る構造のものが多い。
【0005】
農園芸ハウスの屋根の開閉に係る考案であって、覆い等を直接巻き取る構造以外のものとしては、ハウスを形成するフレームに取り付けた外管と内棒を有する突っ張り棒を伸縮させて、該突っ張り棒が支持する屋根を開閉する考案(特許文献3)や、屋根部分をワイヤーで引いて跳ね上げる発明(特許文献4)も公知となっている。
しかし、これらの屋根開閉に係る考案・発明では、ハウスを構築した状態での屋根材の張替えや修復などの屋根部のメンテナンスが容易でないという欠点がある。
【0006】
一方、農業・園芸用のハウスではないが、上吊り式屋根を有する車庫やカーポートにおいて、屋根部の傾きを可変とした発明として、一端が互いに連結された上弦材と下弦材の他端を柱に沿って昇降する摺動子に連結するとともに、下弦材に屋根を連結した構造からなるカーポートが公知となっている(特許文献5)。当該発明においては屋根の起立状態と架設状態の切り替えだけが想定されており、このままでは、屋根部の開閉状態によって育成物への水分や日光量を変える必要のある農業・園芸ハウスには、適さない。
【特許文献1】特開平9−220028号公報
【特許文献2】特開2003−306973号公報
【特許文献3】実用新案登録第3104808号公報
【特許文献4】実用新案登録第3104808号公報
【特許文献5】特許第2820607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明人は、上記の現状に鑑み、農園芸用ハウスを構築するユニットを着想するに至ったものであり、その課題とするところは、農園芸用ハウスの幅や奥行きを所定単位で増やすことができるとともに、屋根部の傾きを所定角度に保持できる農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、支柱と、該支柱に沿って移動可能なスライド体と、該スライド体に一端を回動可能に取り付けた屋根材取付アームと、一端で該屋根材取付アームの中ほどを回動可能に支持するとともに他端を前記支柱に回動可能に取り付けた支持材を有してなる農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットであって、スライド体を支柱の所定位置に係止する構造を有することを特徴とする農業・園芸ハウス用ユニットである。
以下、本願発明に係る農業・園芸ハウス用ユニットを「本願ユニット」とも記す。
【0009】
スライド体を移動すると、該スライド体に回動可能に取り付けた屋根材取付アームの傾きが変化する。本願ユニットを用いて農園芸ハウスを構築する場合、屋根材取付アームにビニールや屋根パネルを取り付け、隣設するユニット間に屋根部を構成するので、スライド体を移動すると屋根部の傾きが変わる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記スライド体を所定位置に係止する構造が、スライド体に回動可能に取り付けられた隙歯形状部分を有する第1の係止棒と、支柱に固定した隙歯状の凹凸を有する第2の係止棒を有してなることを特徴とする請求項1に記載の農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットである。
ふたつの係止棒が有する隙歯形状部分を嵌め合わせることでスライド体が固定され、屋根材取付アームの傾斜を所定の傾きに保持する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1ないし2のいずれかに記載の農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットであって、第1ロープ体および第2ロープ体の一端を取り付けた巻き軸を有し、第1ロープ体の他端をスライド体に、第2ローブ体の他端を支柱に取り付けてなる農業・園芸ハウス用ユニットである。
巻き軸を回転して第1および第2のロープ体を巻き取ったり、あるいは巻き取ったロープ体を解いたりすることで、スライド体が移動する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットであって、支持材と該支持材によって支持される屋根材取付アームからなる構成部分を二つ設けたことを特徴とする農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットである。
一つの支柱に、屋根材取り付アームおよび該屋根材取付アームを支持する支持棒を二つ有するユニットであり、二つの屋根材取付アームの一端は、ひとつのスライド体に回動可能に取り付けられる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の農業・園芸ハウス用ユニットを用いた建築物である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1 に記載の発明によれば、屋根材取付アームの傾斜角度を多段に保持可能であることから、本願ユニットによって農園芸用ハウスを構築した場合、屋根材によって形成される屋根部の開閉状態を多段階に設定できることとなり、ハウス内で育成する農作物や植物の状態あるいは天候に応じて、屋根部の開閉の状態を変えることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、嵌め合わせる隙歯形状部分をずらすことで、多段階にスライド体を係止でき、屋根材取付アームの傾斜を所定の傾きに保持可能である。また、この係止棒は支柱およびスライド体に取り付けられているため、風や降雪時等に本願ユニットに係る負荷への耐力を増す効果をも奏するものである。またさらには、スライド体に取り付けた係止棒は、該スライド体を下方へ引き下げる荷重としても作用することから、支持材にかかる荷重のバランサーとしても効果を奏するものである。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、巻き軸を回転してスライド体を移動することで屋根材取付アームの傾斜角度を変化させることができることから、本願ユニットによっ て農園芸ハウスを構築した場合、屋根材取付アームに取り付けた屋根材によって形成される屋根部の開閉を容易に行うことができる。また、巻き軸を連結することで、同列の屋根部の開閉をハウス内を移動することなく行えるようにできるというメリットもある。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、ひとつのユニットで二つの屋根材取付アームを有することから、列をさらに増やして広面積のハウスを構築する場合に、端を除いた内側の列に当該ユニットを用いることで支柱の数を減らすことができ、構築作業および屋根部開閉に係る労力の軽減を図ることができる。
【0018】
請求項1ないし4のいずれかに記載の本発明に係るユニットによれば、立設するユニットの数を増減することでハウスの大きさを奥行きおよび幅方向ともに変えることができ、さまざまな広さに対応できる。また、ユニットとなっているため構成部品をなくす心配がないというメリットもある。
【0019】
請求項5に記載の構築物においては、屋根部の角度を変えて角度を保持できるので、屋根部のスライド体側または屋根部の開放端側のどちらか一方を低くしたり、あるいは水平にすることにより、屋根材の張替え等のメンテナンス作業を楽に行える。さらには、屋根部をほぼ完全に開放可能であり、構築物内にトラクター等の作業車を入れての作業ができるというメリットもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本願発明に係る農業・園芸ハウス用ユニットは、複数を適宜間隔で直列に立設し、同様の列を平行にいくつか設けて全体で一つの農園芸ハウスを構築するためのものである。
以下に、図を参照して、本願ユニットおよび本願ユニットを用いた農園芸ハウスの構築方法について説明する。なお、本発明の技術範囲が以下の実施例に限定されないことは勿論である。
【実施例】
【0021】
立設方法については後述することにし、本願ユニットについて説明する。図1が、本願発明に係る農業・園芸ハウス用ユニットを立設した状態を示す図である。さらに詳細に描いた図5も参照されたい。なお図5においては、スライド体2への屋根材取付アーム4の取り付け部分を、取り付け前の状態で描いてある。
径が30mm程度で長さが3m程度のパイプからなる支柱1に、パイプを適宜長さに切断したスライド体2を移動可能に嵌める。支柱1の上端付近に、支持材3の一端を上下回動可能に取り付け、他端は、屋根材取付アーム4の中央より支柱1寄りに、該屋根材取付アーム4を回動支持するように取り付ける。また、屋根材取付アーム4の一端はスライド体2に回動可能に取り付ける。この取り付けを、図1あるいは図12にあるようにスライド体2から適宜離して回動の中心を配置することで、屋根材取付アーム4の開放端を垂直状態にまで跳ね上げることができる(図2参照)。
支持材3が屋根材取付アーム4を回動支持する位置により、屋根材取付アームの回動可能範囲に違いがでるため、使用する屋根材の大きさはもとより、本願ユニットによって構築する農園芸ハウスの屋根部の高さおよび本願ユニットを立設する列間の距離を考慮して、適切な支持位置とする必要がある。また、この回動支持位置そのものが、屋根材取付アームに沿って移動可能であるようにしても良い。こうすると、後から回動支持位置を変更することで微調整ができるなどの利点がある。またさらには、支持材3を伸縮可能ととすることも考えられる。支持材3が伸縮することで、屋根材取付アームの傾きを保持したままで屋根材取付アームを上下動できるという利点がある。
【0022】
ロープ5およびロープ6を巻き軸7に巻き取り可能に取り付けるとともに、ロープの他端は、支柱上部およびスライド体2に取り付ける。30cm長さのパイプからなる巻き軸7は支柱1には固定せず、スライド体2と支持材3の支柱取付部との間にロープ5によって吊られる状態とする。
ロープは、図8にあるように帯状のもの使用した。こうすることで、巻き軸に巻きつくロープによる軸径の増加を抑えた。図9のようにロープの数を3つとすると、ロープからの荷重による巻き軸のねじれを防ぐことができ、なお良い。また、通常の断面円形を有するロープを用いる場合は、ロープがはずれないように巻き軸7に一連のロープガイド溝を設けた構造とすると良い。
後述する本願ユニットを使用して構築した農園芸ハウスにおいては、同列の巻き軸を連結して使用するが、巻き軸が固定されていないため、立設支柱の並びに多少のズレがあっても、隣合う巻き軸を容易に連結できるという利点がある。
【0023】
巻き軸7を回転してロープを巻き取ることでスライド体2を支柱1に沿って移動したときの、屋根材取付アーム4の動きを示す図が、図2、図3および図4である(なお、図2、図3、図4では、係止棒の記載を省略してある)。本願ユニットにより農園芸用ハウスを構築した場合には、屋根材取付アームに屋根材が取り付けられて屋根部を形成するので、屋根材取付アームの動きは、屋根部の動きをも表している。
図2に見られるように、巻き軸7のロープを解いた状態では、屋根材取付アームの開放端は上方に位置することになり、巻き軸を回転してロープを巻き取っていくと、前記開放端が上方から下方へ移動していく。
支持材3の支柱1への取り付けにおいて、回動取り付け部分を支柱から離した位置となるように取り付けると、屋根材取付アーム4をほぼ垂直状態にすることができるようになる。
【0024】
巻き軸7を回転させる方法としては、該巻き軸にハンドルを取り付けて手動により回転する方法や、別途用意したモーター等の回転源によって巻き軸7を直接あるいはプーリーや環状にした伝動ベルトを介して回転させる方法等が考えられる。モーター等の回転源を利用すると、制御装置と連動させて、屋根部の開閉を自動化することもでき、さらには制御装置を遠隔操作をするなどの方法によって、労力の削減が図られる構成とすることも考えられる。
【0025】
スライド体を支柱の所定位置に係止する構造、すなわち屋根材取付アーム4の傾き(構築したハウスにおいては屋根部の傾き)を固定するためのストッパー手段として、隙歯形状部分を有する係止棒をふたつ(17および18)用い、係止棒17は支柱1の下方に支柱を覆うように固着し、係止棒18はスライド体2に回動可能に取り付け、ふたつの係止棒の隙歯形状部分が多段式に嵌合可能とした(図6および図7参照)。隙歯形状部分は、嵌合した場合に隙間19が生じるように形成した。こうすることで嵌合がスムースに行えるようになる。なお、図6においては、屋根材取付アーム4を省略してある。また、図7では、屋根材取付アーム4は、スライド体2にある並んだふたつの円の位置に手前方向に向けて配されることとなる。
この嵌合式のストッパーは、係止棒17にロープを取り付けて同列の係止棒17を連結しても良い。こうすると、列の端で該ロープを所定方向に引くと、係止棒18から係止棒17が外れることになる。また、係止棒17のそれぞれ歯型の上側の角を斜めに切り欠いて、スライド体2が上方に移動する場合には引っかからない構造としても良い。
簡易な構造とするために本実施例では隙歯形状部分を有する係止棒を用いたが、ストッパー手段としては別な構成のものも考えられる。たとえば、スライド体2に挟み構造を設けて支柱に設けたくびれ部分を挟むことでスライド体を適宜位置に係止したり、支柱に設けた穴とスライド体に設けた穴とにピンを貫通させて係止する構造等が考えられる。その他、支持材3や屋根材取付アーム4の回動支持部分においても、所定位置に複数設けた穴にピンを通して固定する構成が考えられる。
【0026】
屋根材取付アーム4は、2本のパイプで補強板8を挟む構成とした(図5参照)。補強板8は、必ずしも必要ではないが、本願ユニットによって農園芸ハウスを構築した場合、屋根材の荷重の多くが屋根材取付アームにかかることになるため、補強のために設けるのが良い。この場合、支持材3による回動支持部に特に荷重が集中するので、補強板8も該回動支持部付近で太めにすると良い。
屋根材取付アームの長さは、使用する屋根材の大きさや構築するハウスの屋根の必要高さなどの諸条件によって異なるものとなることが予想される。あらかじめ必要長さを求めてその長さの棒体やパイプにより構成したり、該屋根材取付アーム自体を伸縮自在構造としたり、単位長さを必要長さ分を連結する構造などが考えられる。本実施例では、長さ180cm、幅90cmからなる方形のパネルを屋根材として用いるため、屋根材取付アーム4の長さを180cmのパイプにより構成した。
【0027】
屋根材取付構造をふたつ有するユニットを示した図が図10である。屋根材取付構造部分(屋根材取付アーム4と支持材3とからなる)を、支柱1を中心として対称位置に有するユニットである。農園芸ハウスを構築する場合には、図14に見られるように、内側の列に使用する。
【0028】
次に、本願ユニットを使用した農園芸ハウスの構築について説明する。なお、必ずしもこの手順によらなくとも、ハウスの構築は可能である。
図14が、本願ユニットにより構築した農園芸ハウスを表す図である。
構築するハウスの面積より少し広めの土地を整地した後、90cm間隔で穴を開けたコンクリート板22を敷き、その上に、これも90cm間隔で穴を開けた断面凹形状のレール21を開口部を上に向けて一列に適宜配置し、コンクリート板とレールの穴に支柱立設用パイプ24を挿入し、該パイプ24に屋根材取付アーム4を片側に有するユニットの支柱1を差し込み、ユニットを立てていく。このとき、屋根材取付アーム4がハウスの内側、奥行き方向に直角となる方向を向くようにする。また、立設したユニットが倒れないようにするために、支柱をワイヤーで固定すると構築作業が楽である。
レール21は、農園芸用ハウスが完成した後は、全列に配されることとなるため、いろいろな利用が考えられる。一例としては、支柱列間をまたぐような台車をこのレールに載せて、移動する台車の上から農作物や花卉の手入れなどをすることに利用できる。
なお、コンクリート板22やレール21は必ずしも必要なものではない。
【0029】
支柱1を立てていくとき、隣接のユニットが有する巻き軸7を連結していく。この連結は、巻き軸7に設けたねじ構造によっても良いし、別体の接続パイプを介して連結しても良い。ひとつの列においては、巻き軸はひとつに連結されている状態にすることで、巻き軸7を少なくともどこか一箇所で回転すれば、同列の巻き軸が回転してロープ5およびロープ7を巻きとり、それに伴って屋根材取付アームが図2ないし4に見られるように動くので、結果、同列の屋根部の開閉が行われることとなる。
【0030】
次に、隣会う支柱が有する屋根材取付アーム4に屋根材12を取り付けていく。図11が、屋根材取付アーム4に屋根材12の取り付け状態を示す図である。
屋根材取付アーム4を構成するパイプの上に屋根材12を載せ、棒状で断面L形状の留具16を該屋根材と補強版に接するように配し、ビスによって屋根材取付アームに留める。なお、屋根材12は、プラスチック等を素材とした角形のパイプを並べて一体とした構造のものである。また最近では、決まった大きさのフレームに天窓素材をはったものも販売されている。勿論、このような屋根材を用いなくとも、隣接の屋根材取付アームの間にビニルやフィルムを張ってもよい。
屋根材12を用いずにビニル13を用いる場合は、図12のように、屋根材取付アーム4にビニル13を固定するレール状器具14をねじにより固定し、ビニル13の端を入れ込み、器具14の内側からビニルを押さえ込んで固定するための留具15によって器具14内に固定する。
屋根材の取り付け位置としては、屋根材取付アーム4に取り付ける場合の他、図13のように、屋根材取付アーム4の開放端から支持材3による屋根材取付アーム4の支持点を経て支持材3に取り付けても良い。この取り付け位置とした場合、雨水がスライド体に向けて流れ込まないという利点がある。なお、図13における屋根材取り付け位置11の波線は、屋根材の取り付け位置を示すものであり、屋根材の形状や材質を示すものではない。
これで、片側に屋根を有する列ができあがる。
【0031】
ハウスの幅を広くする場合には、屋根材取付アームが2つのユニットを用いて、前述の列と平行する列を作る。このとき、屋根材取付アームが列方向に対して直角方向となるようにする。また、巻き軸の連結も行う。
この列は、側面の列と適宜間隔を離して配することとなるが、適宜間隔とは、屋根材取付アームに取り付けた屋根材が列間の中央で合致して山形を形作る距離である。本実施例においては、2.7mである。
屋根材取付アーム4を2つ有するユニットの列を同様にして必要分立てた後、最初の側面の列と同様の要領でもう一方の側面の列を設置する。
ハウス全体を強固なものとするために、横に同じ位置の支柱の上部をワイヤーで連結するとなお良い。このワイヤーには、防虫ネットや遮光幕を張るなど他の利用法もある。
以上のようにして、本願ユニットによる農園芸ハウスが構築される。同列における巻き軸が一本に連結されているので、該巻き軸を回転することで、同列の屋根材の開閉を一度に行うことができる農園芸ハウスとなる。
【0032】
なお、図14においては、褄方向および支柱の下方部分が筒抜け状態であるが、この部分は、使用形態およびハウスの用途に応じて様々な構成とすることができる。たとえば、褄方向には、別途支柱を立てて、出入り口を取り付けたり、側面の支柱の下方部分には、さらに外側に支柱を立て、該支柱を利用してビニルを巻き上げ下げできるような構成とすることも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係るユニットは、各構成部材を適宜強固なものにすることによって、農園芸用以外のハウスにも応用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本願発明に係る農業・園芸ハウス用ユニットを立設した状態を示す説明図である。
【図2】スライド体が支柱の下方に位置したときの屋根材取付アームの状態を示す説明図である。
【図3】スライド体が支柱の中ほどの高さに位置したときの屋根材取付アームの状態を示す説明図である。
【図4】スライド体が支柱の上方に位置したときの屋根材取付アームの状態示す説明図である。
【図5】本願発明に係るユニットの主要構成品を示す図である。
【図6】係止棒の取付および可動の状態を示す説明図である。
【図7】係止棒によってスライド体が固定された状態を表す図である。
【図8】ロープを2本取り付けた巻き軸を表す図である。
【図9】ロープを3本取り付けた巻き軸を表す図である。
【図10】本願発明に係る屋根材取付アームをふたつ有する農業・園芸ハウス用ユニットを示す説明図である。
【図11】屋根材取付アームに屋根材としてパネルを取り付けた状態の説明断面図である。
【図12】屋根材取付アームに屋根材としてビニルシートを取り付けた状態の説明断面図である。
【図13】屋根材の取り付け位置の別な例を示す説明図である。
【図14】本発明に係る農園芸用ハウスを示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 支柱
2 スライド体
3 支持材
4 屋根材取付アーム
5 ロープ
6 ロープ
7 巻き軸
8 補強板
9 ワイヤー
11 屋根材取り付け位置
12 屋根材
13 ビニルシート
14 器具
15 留具
16 固定具
17 係止棒(ストッパー)
18 係止棒(ストッパー)
19 隙間
21 レール
22 コンクリート板
23 固定杭
24 支柱立設用パイプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数設置することで農業・園芸ハウスを構築に用いる農業・園芸ハウス用ユニットおよび該ユニットによる建築物に関し、さらに詳しくは、吊り支持屋根タイプの農業・園芸ハウスを構築するユニットにおいて、屋根の傾きを変えることができる農業・園芸ハウス用ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
育苗や野菜の栽培などに利用する農業用ハウスや花卉栽培などに利用する園芸用のハウス(以下「農園芸ハウス」と記す。)としては、アーチ型に形成したパイプや複数のパイプを連結してアーチ型としたパイプを、奥行方向に適宜間隔で並立して骨組みを形成し、該骨組みの外側をビニル等を材質としたシートやフィルムで覆ったいわゆるパイプハウスが多く利用されている。また大型のものとしては、支柱や梁などに鉄骨を用い、その周囲や屋根を塩化ビニル製や金属素材製の波型トタンで覆った構造のハウスも利用されている
【0003】
農園芸ハウスの構造、特に骨格となる支柱部分に関する発明・考案としては、入手容易な直線状の鉄パイプを使用することで組み立てを容易とした発明(特許文献1)や、柱材を二重構造とし屋根材と梁材とを支持する斜材を主骨材とした大型パイプハウス構造用アーチに係る発明(特許文献2)が公知となっている。
しかしながら、前述のパイプハウスおよびこれら特許文献に記載の発明を用いた農園芸ハウスは、使用する部材の長さや強度によってハウスの幅や奥行きが決まってしまい、ハウスを広げる場合にはさらに別のハウスを構築する必要がある。
【0004】
ところで、農作物を含めた植物の育成には、水分、日光、通気(温度や湿度の調節)が必要不可欠である。農園芸ハウスにおいても、ハウスの側面や天井に設けた窓および屋根などの開閉によって、日光を取り入れたり、通気調節を行ったり、また少量ではあるが雨や霧などを取り入れて水分を得たりすることが行われている。この屋根部や側面部の開閉構造に関する出願も多くなされており、ビニル等の覆いを回転軸によって直接巻き取る構造のものが多い。
【0005】
農園芸ハウスの屋根の開閉に係る考案であって、覆い等を直接巻き取る構造以外のものとしては、ハウスを形成するフレームに取り付けた外管と内棒を有する突っ張り棒を伸縮させて、該突っ張り棒が支持する屋根を開閉する考案(特許文献3)や、屋根部分をワイヤーで引いて跳ね上げる発明(特許文献4)も公知となっている。
しかし、これらの屋根開閉に係る考案・発明では、ハウスを構築した状態での屋根材の張替えや修復などの屋根部のメンテナンスが容易でないという欠点がある。
【0006】
一方、農業・園芸用のハウスではないが、上吊り式屋根を有する車庫やカーポートにおいて、屋根部の傾きを可変とした発明として、一端が互いに連結された上弦材と下弦材の他端を柱に沿って昇降する摺動子に連結するとともに、下弦材に屋根を連結した構造からなるカーポートが公知となっている(特許文献5)。当該発明においては屋根の起立状態と架設状態の切り替えだけが想定されており、このままでは、屋根部の開閉状態によって育成物への水分や日光量を変える必要のある農業・園芸ハウスには、適さない。
【特許文献1】特開平9−220028号公報
【特許文献2】特開2003−306973号公報
【特許文献3】実用新案登録第3104808号公報
【特許文献4】実用新案登録第3104808号公報
【特許文献5】特許第2820607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明人は、上記の現状に鑑み、農園芸用ハウスを構築するユニットを着想するに至ったものであり、その課題とするところは、農園芸用ハウスの幅や奥行きを所定単位で増やすことができるとともに、屋根部の傾きを所定角度に保持できる農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、支柱と、該支柱に沿って移動可能なスライド体と、該スライド体に一端を回動可能に取り付けた屋根材取付アームと、一端で該屋根材取付アームの中ほどを回動可能に支持するとともに他端を前記支柱に回動可能に取り付けた支持材を有してなる農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットであって、スライド体を支柱の所定位置に係止する構造を有することを特徴とする農業・園芸ハウス用ユニットである。
以下、本願発明に係る農業・園芸ハウス用ユニットを「本願ユニット」とも記す。
【0009】
スライド体を移動すると、該スライド体に回動可能に取り付けた屋根材取付アームの傾きが変化する。本願ユニットを用いて農園芸ハウスを構築する場合、屋根材取付アームにビニールや屋根パネルを取り付け、隣設するユニット間に屋根部を構成するので、スライド体を移動すると屋根部の傾きが変わる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記スライド体を所定位置に係止する構造が、スライド体に回動可能に取り付けられた隙歯形状部分を有する第1の係止棒と、支柱に固定した隙歯状の凹凸を有する第2の係止棒を有してなることを特徴とする請求項1に記載の農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットである。
ふたつの係止棒が有する隙歯形状部分を嵌め合わせることでスライド体が固定され、屋根材取付アームの傾斜を所定の傾きに保持する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1ないし2のいずれかに記載の農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットであって、第1ロープ体および第2ロープ体の一端を取り付けた巻き軸を有し、第1ロープ体の他端をスライド体に、第2ローブ体の他端を支柱に取り付けてなる農業・園芸ハウス用ユニットである。
巻き軸を回転して第1および第2のロープ体を巻き取ったり、あるいは巻き取ったロープ体を解いたりすることで、スライド体が移動する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットであって、支持材と該支持材によって支持される屋根材取付アームからなる構成部分を二つ設けたことを特徴とする農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットである。
一つの支柱に、屋根材取り付アームおよび該屋根材取付アームを支持する支持棒を二つ有するユニットであり、二つの屋根材取付アームの一端は、ひとつのスライド体に回動可能に取り付けられる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の農業・園芸ハウス用ユニットを用いた建築物である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1 に記載の発明によれば、屋根材取付アームの傾斜角度を多段に保持可能であることから、本願ユニットによって農園芸用ハウスを構築した場合、屋根材によって形成される屋根部の開閉状態を多段階に設定できることとなり、ハウス内で育成する農作物や植物の状態あるいは天候に応じて、屋根部の開閉の状態を変えることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、嵌め合わせる隙歯形状部分をずらすことで、多段階にスライド体を係止でき、屋根材取付アームの傾斜を所定の傾きに保持可能である。また、この係止棒は支柱およびスライド体に取り付けられているため、風や降雪時等に本願ユニットに係る負荷への耐力を増す効果をも奏するものである。またさらには、スライド体に取り付けた係止棒は、該スライド体を下方へ引き下げる荷重としても作用することから、支持材にかかる荷重のバランサーとしても効果を奏するものである。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、巻き軸を回転してスライド体を移動することで屋根材取付アームの傾斜角度を変化させることができることから、本願ユニットによっ て農園芸ハウスを構築した場合、屋根材取付アームに取り付けた屋根材によって形成される屋根部の開閉を容易に行うことができる。また、巻き軸を連結することで、同列の屋根部の開閉をハウス内を移動することなく行えるようにできるというメリットもある。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、ひとつのユニットで二つの屋根材取付アームを有することから、列をさらに増やして広面積のハウスを構築する場合に、端を除いた内側の列に当該ユニットを用いることで支柱の数を減らすことができ、構築作業および屋根部開閉に係る労力の軽減を図ることができる。
【0018】
請求項1ないし4のいずれかに記載の本発明に係るユニットによれば、立設するユニットの数を増減することでハウスの大きさを奥行きおよび幅方向ともに変えることができ、さまざまな広さに対応できる。また、ユニットとなっているため構成部品をなくす心配がないというメリットもある。
【0019】
請求項5に記載の構築物においては、屋根部の角度を変えて角度を保持できるので、屋根部のスライド体側または屋根部の開放端側のどちらか一方を低くしたり、あるいは水平にすることにより、屋根材の張替え等のメンテナンス作業を楽に行える。さらには、屋根部をほぼ完全に開放可能であり、構築物内にトラクター等の作業車を入れての作業ができるというメリットもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本願発明に係る農業・園芸ハウス用ユニットは、複数を適宜間隔で直列に立設し、同様の列を平行にいくつか設けて全体で一つの農園芸ハウスを構築するためのものである。
以下に、図を参照して、本願ユニットおよび本願ユニットを用いた農園芸ハウスの構築方法について説明する。なお、本発明の技術範囲が以下の実施例に限定されないことは勿論である。
【実施例】
【0021】
立設方法については後述することにし、本願ユニットについて説明する。図1が、本願発明に係る農業・園芸ハウス用ユニットを立設した状態を示す図である。さらに詳細に描いた図5も参照されたい。なお図5においては、スライド体2への屋根材取付アーム4の取り付け部分を、取り付け前の状態で描いてある。
径が30mm程度で長さが3m程度のパイプからなる支柱1に、パイプを適宜長さに切断したスライド体2を移動可能に嵌める。支柱1の上端付近に、支持材3の一端を上下回動可能に取り付け、他端は、屋根材取付アーム4の中央より支柱1寄りに、該屋根材取付アーム4を回動支持するように取り付ける。また、屋根材取付アーム4の一端はスライド体2に回動可能に取り付ける。この取り付けを、図1あるいは図12にあるようにスライド体2から適宜離して回動の中心を配置することで、屋根材取付アーム4の開放端を垂直状態にまで跳ね上げることができる(図2参照)。
支持材3が屋根材取付アーム4を回動支持する位置により、屋根材取付アームの回動可能範囲に違いがでるため、使用する屋根材の大きさはもとより、本願ユニットによって構築する農園芸ハウスの屋根部の高さおよび本願ユニットを立設する列間の距離を考慮して、適切な支持位置とする必要がある。また、この回動支持位置そのものが、屋根材取付アームに沿って移動可能であるようにしても良い。こうすると、後から回動支持位置を変更することで微調整ができるなどの利点がある。またさらには、支持材3を伸縮可能ととすることも考えられる。支持材3が伸縮することで、屋根材取付アームの傾きを保持したままで屋根材取付アームを上下動できるという利点がある。
【0022】
ロープ5およびロープ6を巻き軸7に巻き取り可能に取り付けるとともに、ロープの他端は、支柱上部およびスライド体2に取り付ける。30cm長さのパイプからなる巻き軸7は支柱1には固定せず、スライド体2と支持材3の支柱取付部との間にロープ5によって吊られる状態とする。
ロープは、図8にあるように帯状のもの使用した。こうすることで、巻き軸に巻きつくロープによる軸径の増加を抑えた。図9のようにロープの数を3つとすると、ロープからの荷重による巻き軸のねじれを防ぐことができ、なお良い。また、通常の断面円形を有するロープを用いる場合は、ロープがはずれないように巻き軸7に一連のロープガイド溝を設けた構造とすると良い。
後述する本願ユニットを使用して構築した農園芸ハウスにおいては、同列の巻き軸を連結して使用するが、巻き軸が固定されていないため、立設支柱の並びに多少のズレがあっても、隣合う巻き軸を容易に連結できるという利点がある。
【0023】
巻き軸7を回転してロープを巻き取ることでスライド体2を支柱1に沿って移動したときの、屋根材取付アーム4の動きを示す図が、図2、図3および図4である(なお、図2、図3、図4では、係止棒の記載を省略してある)。本願ユニットにより農園芸用ハウスを構築した場合には、屋根材取付アームに屋根材が取り付けられて屋根部を形成するので、屋根材取付アームの動きは、屋根部の動きをも表している。
図2に見られるように、巻き軸7のロープを解いた状態では、屋根材取付アームの開放端は上方に位置することになり、巻き軸を回転してロープを巻き取っていくと、前記開放端が上方から下方へ移動していく。
支持材3の支柱1への取り付けにおいて、回動取り付け部分を支柱から離した位置となるように取り付けると、屋根材取付アーム4をほぼ垂直状態にすることができるようになる。
【0024】
巻き軸7を回転させる方法としては、該巻き軸にハンドルを取り付けて手動により回転する方法や、別途用意したモーター等の回転源によって巻き軸7を直接あるいはプーリーや環状にした伝動ベルトを介して回転させる方法等が考えられる。モーター等の回転源を利用すると、制御装置と連動させて、屋根部の開閉を自動化することもでき、さらには制御装置を遠隔操作をするなどの方法によって、労力の削減が図られる構成とすることも考えられる。
【0025】
スライド体を支柱の所定位置に係止する構造、すなわち屋根材取付アーム4の傾き(構築したハウスにおいては屋根部の傾き)を固定するためのストッパー手段として、隙歯形状部分を有する係止棒をふたつ(17および18)用い、係止棒17は支柱1の下方に支柱を覆うように固着し、係止棒18はスライド体2に回動可能に取り付け、ふたつの係止棒の隙歯形状部分が多段式に嵌合可能とした(図6および図7参照)。隙歯形状部分は、嵌合した場合に隙間19が生じるように形成した。こうすることで嵌合がスムースに行えるようになる。なお、図6においては、屋根材取付アーム4を省略してある。また、図7では、屋根材取付アーム4は、スライド体2にある並んだふたつの円の位置に手前方向に向けて配されることとなる。
この嵌合式のストッパーは、係止棒17にロープを取り付けて同列の係止棒17を連結しても良い。こうすると、列の端で該ロープを所定方向に引くと、係止棒18から係止棒17が外れることになる。また、係止棒17のそれぞれ歯型の上側の角を斜めに切り欠いて、スライド体2が上方に移動する場合には引っかからない構造としても良い。
簡易な構造とするために本実施例では隙歯形状部分を有する係止棒を用いたが、ストッパー手段としては別な構成のものも考えられる。たとえば、スライド体2に挟み構造を設けて支柱に設けたくびれ部分を挟むことでスライド体を適宜位置に係止したり、支柱に設けた穴とスライド体に設けた穴とにピンを貫通させて係止する構造等が考えられる。その他、支持材3や屋根材取付アーム4の回動支持部分においても、所定位置に複数設けた穴にピンを通して固定する構成が考えられる。
【0026】
屋根材取付アーム4は、2本のパイプで補強板8を挟む構成とした(図5参照)。補強板8は、必ずしも必要ではないが、本願ユニットによって農園芸ハウスを構築した場合、屋根材の荷重の多くが屋根材取付アームにかかることになるため、補強のために設けるのが良い。この場合、支持材3による回動支持部に特に荷重が集中するので、補強板8も該回動支持部付近で太めにすると良い。
屋根材取付アームの長さは、使用する屋根材の大きさや構築するハウスの屋根の必要高さなどの諸条件によって異なるものとなることが予想される。あらかじめ必要長さを求めてその長さの棒体やパイプにより構成したり、該屋根材取付アーム自体を伸縮自在構造としたり、単位長さを必要長さ分を連結する構造などが考えられる。本実施例では、長さ180cm、幅90cmからなる方形のパネルを屋根材として用いるため、屋根材取付アーム4の長さを180cmのパイプにより構成した。
【0027】
屋根材取付構造をふたつ有するユニットを示した図が図10である。屋根材取付構造部分(屋根材取付アーム4と支持材3とからなる)を、支柱1を中心として対称位置に有するユニットである。農園芸ハウスを構築する場合には、図14に見られるように、内側の列に使用する。
【0028】
次に、本願ユニットを使用した農園芸ハウスの構築について説明する。なお、必ずしもこの手順によらなくとも、ハウスの構築は可能である。
図14が、本願ユニットにより構築した農園芸ハウスを表す図である。
構築するハウスの面積より少し広めの土地を整地した後、90cm間隔で穴を開けたコンクリート板22を敷き、その上に、これも90cm間隔で穴を開けた断面凹形状のレール21を開口部を上に向けて一列に適宜配置し、コンクリート板とレールの穴に支柱立設用パイプ24を挿入し、該パイプ24に屋根材取付アーム4を片側に有するユニットの支柱1を差し込み、ユニットを立てていく。このとき、屋根材取付アーム4がハウスの内側、奥行き方向に直角となる方向を向くようにする。また、立設したユニットが倒れないようにするために、支柱をワイヤーで固定すると構築作業が楽である。
レール21は、農園芸用ハウスが完成した後は、全列に配されることとなるため、いろいろな利用が考えられる。一例としては、支柱列間をまたぐような台車をこのレールに載せて、移動する台車の上から農作物や花卉の手入れなどをすることに利用できる。
なお、コンクリート板22やレール21は必ずしも必要なものではない。
【0029】
支柱1を立てていくとき、隣接のユニットが有する巻き軸7を連結していく。この連結は、巻き軸7に設けたねじ構造によっても良いし、別体の接続パイプを介して連結しても良い。ひとつの列においては、巻き軸はひとつに連結されている状態にすることで、巻き軸7を少なくともどこか一箇所で回転すれば、同列の巻き軸が回転してロープ5およびロープ7を巻きとり、それに伴って屋根材取付アームが図2ないし4に見られるように動くので、結果、同列の屋根部の開閉が行われることとなる。
【0030】
次に、隣会う支柱が有する屋根材取付アーム4に屋根材12を取り付けていく。図11が、屋根材取付アーム4に屋根材12の取り付け状態を示す図である。
屋根材取付アーム4を構成するパイプの上に屋根材12を載せ、棒状で断面L形状の留具16を該屋根材と補強版に接するように配し、ビスによって屋根材取付アームに留める。なお、屋根材12は、プラスチック等を素材とした角形のパイプを並べて一体とした構造のものである。また最近では、決まった大きさのフレームに天窓素材をはったものも販売されている。勿論、このような屋根材を用いなくとも、隣接の屋根材取付アームの間にビニルやフィルムを張ってもよい。
屋根材12を用いずにビニル13を用いる場合は、図12のように、屋根材取付アーム4にビニル13を固定するレール状器具14をねじにより固定し、ビニル13の端を入れ込み、器具14の内側からビニルを押さえ込んで固定するための留具15によって器具14内に固定する。
屋根材の取り付け位置としては、屋根材取付アーム4に取り付ける場合の他、図13のように、屋根材取付アーム4の開放端から支持材3による屋根材取付アーム4の支持点を経て支持材3に取り付けても良い。この取り付け位置とした場合、雨水がスライド体に向けて流れ込まないという利点がある。なお、図13における屋根材取り付け位置11の波線は、屋根材の取り付け位置を示すものであり、屋根材の形状や材質を示すものではない。
これで、片側に屋根を有する列ができあがる。
【0031】
ハウスの幅を広くする場合には、屋根材取付アームが2つのユニットを用いて、前述の列と平行する列を作る。このとき、屋根材取付アームが列方向に対して直角方向となるようにする。また、巻き軸の連結も行う。
この列は、側面の列と適宜間隔を離して配することとなるが、適宜間隔とは、屋根材取付アームに取り付けた屋根材が列間の中央で合致して山形を形作る距離である。本実施例においては、2.7mである。
屋根材取付アーム4を2つ有するユニットの列を同様にして必要分立てた後、最初の側面の列と同様の要領でもう一方の側面の列を設置する。
ハウス全体を強固なものとするために、横に同じ位置の支柱の上部をワイヤーで連結するとなお良い。このワイヤーには、防虫ネットや遮光幕を張るなど他の利用法もある。
以上のようにして、本願ユニットによる農園芸ハウスが構築される。同列における巻き軸が一本に連結されているので、該巻き軸を回転することで、同列の屋根材の開閉を一度に行うことができる農園芸ハウスとなる。
【0032】
なお、図14においては、褄方向および支柱の下方部分が筒抜け状態であるが、この部分は、使用形態およびハウスの用途に応じて様々な構成とすることができる。たとえば、褄方向には、別途支柱を立てて、出入り口を取り付けたり、側面の支柱の下方部分には、さらに外側に支柱を立て、該支柱を利用してビニルを巻き上げ下げできるような構成とすることも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係るユニットは、各構成部材を適宜強固なものにすることによって、農園芸用以外のハウスにも応用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本願発明に係る農業・園芸ハウス用ユニットを立設した状態を示す説明図である。
【図2】スライド体が支柱の下方に位置したときの屋根材取付アームの状態を示す説明図である。
【図3】スライド体が支柱の中ほどの高さに位置したときの屋根材取付アームの状態を示す説明図である。
【図4】スライド体が支柱の上方に位置したときの屋根材取付アームの状態示す説明図である。
【図5】本願発明に係るユニットの主要構成品を示す図である。
【図6】係止棒の取付および可動の状態を示す説明図である。
【図7】係止棒によってスライド体が固定された状態を表す図である。
【図8】ロープを2本取り付けた巻き軸を表す図である。
【図9】ロープを3本取り付けた巻き軸を表す図である。
【図10】本願発明に係る屋根材取付アームをふたつ有する農業・園芸ハウス用ユニットを示す説明図である。
【図11】屋根材取付アームに屋根材としてパネルを取り付けた状態の説明断面図である。
【図12】屋根材取付アームに屋根材としてビニルシートを取り付けた状態の説明断面図である。
【図13】屋根材の取り付け位置の別な例を示す説明図である。
【図14】本発明に係る農園芸用ハウスを示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 支柱
2 スライド体
3 支持材
4 屋根材取付アーム
5 ロープ
6 ロープ
7 巻き軸
8 補強板
9 ワイヤー
11 屋根材取り付け位置
12 屋根材
13 ビニルシート
14 器具
15 留具
16 固定具
17 係止棒(ストッパー)
18 係止棒(ストッパー)
19 隙間
21 レール
22 コンクリート板
23 固定杭
24 支柱立設用パイプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、該支柱に沿って移動可能なスライド体と、該スライド体に一端を回動可能に取り付けた屋根材取付アームと、一端で該屋根材取付アームの中ほどを回動可能に支持するとともに他端を前記支柱に回動可能に取り付けた支持材を有してなる農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットであって、スライド体を支柱の所定位置に係止する構造を有することを特徴とする農業・園芸ハウス用ユニット。
【請求項2】
前記スライド体を所定位置に係止する構造が、スライド体に回動可能に取り付けられた隙歯形状部分を有する第1の係止棒と、支柱に固定した隙歯状の凹凸を有する第2の係止棒を有してなることを特徴とする請求項1に記載の農業・園芸ハウスの構築に用いるユニット。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれかに記載の農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットであって、第1ロープ体および第2ロープ体の一端を取り付けた巻き軸を有し、第1ロープ体の他端をスライド体に、第2ローブ体の他端を支柱に取り付けてなる農業・園芸ハウス用ユニット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットであって、支持材と該支持材によって支持される屋根材取付アームからなる構成部分を二つ設けたことを特徴とする農業・園芸ハウスの構築に用いるユニット。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の農業・園芸ハウス用ユニットを用いた構築物。
【請求項1】
支柱と、該支柱に沿って移動可能なスライド体と、該スライド体に一端を回動可能に取り付けた屋根材取付アームと、一端で該屋根材取付アームの中ほどを回動可能に支持するとともに他端を前記支柱に回動可能に取り付けた支持材を有してなる農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットであって、スライド体を支柱の所定位置に係止する構造を有することを特徴とする農業・園芸ハウス用ユニット。
【請求項2】
前記スライド体を所定位置に係止する構造が、スライド体に回動可能に取り付けられた隙歯形状部分を有する第1の係止棒と、支柱に固定した隙歯状の凹凸を有する第2の係止棒を有してなることを特徴とする請求項1に記載の農業・園芸ハウスの構築に用いるユニット。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれかに記載の農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットであって、第1ロープ体および第2ロープ体の一端を取り付けた巻き軸を有し、第1ロープ体の他端をスライド体に、第2ローブ体の他端を支柱に取り付けてなる農業・園芸ハウス用ユニット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の農業・園芸ハウスの構築に用いるユニットであって、支持材と該支持材によって支持される屋根材取付アームからなる構成部分を二つ設けたことを特徴とする農業・園芸ハウスの構築に用いるユニット。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の農業・園芸ハウス用ユニットを用いた構築物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−289112(P2007−289112A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122806(P2006−122806)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(305003623)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(305003623)
【Fターム(参考)】
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