説明

農用灌水往復ポンプ

【課題】ピストン185やピストン軸186のこじれ程度を減少させ円滑に往復変位させることにより、安定的に水を吐出させる。
【解決手段】シリンダ部184のピストン案内孔j1の一端を閉鎖するピストン軸受部187を備え、前記ピストン案内孔j1内のピストン185から延出されたピストン軸186がピストン軸受部187の軸受孔j8に挿通される農用灌水往復ポンプにおいて、前記軸受孔j8の長さを前記ピストン185の長さと略同等か或いはこれよりも大きくなし、且つピストン軸受部187の肉部に、外界側から前記ピストン案内孔j1内にグリースを注入するためのグリース注入手段192、及び、外界側と前記ピストン案内孔j1の一端とを連通させるための流体通路j8を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗を畦上へ移植する野菜移植機等に載設される農用灌水往復ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダ部のピストン案内孔の一端を密封するピストン軸受部を備え、前記ピストン案内孔内のピストンから延出されたピストン軸が前記ピストン軸受部の軸受孔に挿通されるものとなされた農用灌水往復ポンプは従来より野菜移植機に載設されて使用されている(例えば特許文献1参照)。
該農用灌水往復ポンプは、ピストン軸をカムの押圧力で特定方向へ繰り返し往復変位され、一回の往復変位ごとに、その変位量に応じた量の水を移植中の苗に供給するものである。
【0003】
【特許文献1】特願平11−42005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の農用灌水往復ポンプにおいては、ピストン軸に繰り返し付与されるカムによる押圧力は厳密にはピストン軸の中心線個所を安定的に該中心線の方向へ正確に押圧するものとならない。したがって、ピストン軸を押圧する期間中にピストン及びピストン軸はピストン案内孔及び、ピストン軸受部の軸受孔内にて遊動変位してこじれ姿勢方向が常に変化するのであり、これに起因して、ピストンとピストン案内孔との間のシールが損なわれ、該シール個所を通じてポンプの圧力室内に外気が吸引され、水を安定的に吐出させることができなくなるのである。
【0005】
本発明は、斯かる問題点に鑑みてなされたものであって、即ち、ピストンやピストン軸をこれらのこじれ程度を減少させて往復変位させることにより、安定的に水を吐出させることのできる農用灌水往復ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願発明は次のようなものとなす。
即ち、本願の第1発明は、請求項1に記載したように、シリンダ部のピストン案内孔の一端を密封するピストン軸受部を備え、前記ピストン案内孔内のピストンから延出されたピストン軸がピストン軸受部の軸受孔に挿通される農用灌水往復ポンプにおいて、前記ピストン軸受部の軸受孔の長さを前記ピストンの長さと略同等か或いはこれよりも大きくなし、且つピストン軸受部の肉部に、外界側から前記ピストン案内孔内にグリースを注入するためのグリース注入手段、及び、外界側と前記ピストン案内孔の前記一端開口内とを連通させるための流体通路を形成したことを特徴とする。
【0007】
また第2発明は、請求項2に記載したように、シリンダ部のピストン案内孔の一端を密封するピストン軸受部を備え、前記ピストン案内孔内のピストンから延出されたピストン軸がピストン軸受部の軸受孔に挿通される農用灌水往復ポンプにおいて、前記ピストン軸受部の軸受孔の長さを前記ピストンの往復ストロークと略同等か或いはこれよりも大きくなし、且つピストン軸受部の肉部に、外界側から前記ピストン案内孔内にグリースを注入するためのグリース注入手段、及び、外界側と前記ピストン案内孔の前記一端開口内とを連通させるための流体通路を形成したことを特徴とする。
【0008】
上記した各発明は次のように具体化するのがよい。
即ち、請求項3に記載したように、前記シリンダ部及び前記ピストンが樹脂材で形成されており、また前記ピストン軸と前記ピストン軸受部とが異種の金属材料で形成されるほか、前記ピストン軸周囲を取り巻くピストン案内孔内にグリースが蓄えられる構成となす。
【0009】
また請求項4に記載したように、前記ピストンが前記ピストン案内孔内の前記一端側の往復ストローク終点に位置したとき、前記ピストンと前記ピストン軸受部との間となる前記ピストン案内孔内に特定容積のグリース溜まり空間が形成されると共に、前記グリース注入手段の前記ピストン案内孔内に接した開口と、前記流体通路の前記ピストン案内孔内に接した開口とが前記ピストン軸を挟むように配置されている構成となす。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、次のような効果を奏するのである。
即ち、請求項1に記載のものによれば、ピストン軸受部の軸受孔の長さがピストンの長さと略同等か或いはこれよりも大きくなされていることから、ピストン及びピストン軸のこじれ変位が抑制されるようになり、またピストン案内孔内に注入されたグリースがピストン軸と軸受孔との隙間に供給されてこれらの相対摺動変位を円滑となすため、ピストン軸と軸受孔との隙間をこれらの相対摺動変位の円滑性を損なうことなく従来よりも小さくなしてピストン及びピストン軸のこじれ変位が一層抑制されるようになり、したがってピストンとピストン案内孔とのシールが安定的に確保されて水を安定的に吐出させることができる。またピストンがシリンダ部内にてピストン軸受部側へ変位されるときは、ピストン軸を包囲したピストン案内孔内の空気や漏水が流体通路から外界側へ流出され、一方、ピストンがシリンダ部内で反ピストン軸受部側へ変位されるときは、外界側の空気が流体通路を通じて、ピストン軸を包囲したピストン案内孔内に吸引されるようになって、ピストンの往復変位が円滑に行われるのである。
【0011】
請求項2に記載のものによれば、ピストン軸受部の軸受孔の長さがピストンの往復ストロークと略同等か或いはこれよりも大きくなされていることから、ピストン及びピストン軸のこじれ変位が抑制されるようになるほか、請求項1記載のものと同様な効果が得られる。
【0012】
請求項3に記載のものによれば、比較的強度を必要としないシリンダ部及びピストンが樹脂材であるため破損の恐れはないものであり、しかも全体を金属材となした場合よりも軽量となすことができるのであり、またピストン軸受部とピストン軸が異種金属となされているため、これらの耐久性が向上すると共にこれらの焼付き現象が防止されるのであり、またピストン軸受部とピストン軸との相対摺動面が格別なグリース溜まり部を設けないでも比較的多量のグリースにより長期に亘って円滑に潤滑されるものとなる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、グリース溜まり空間内に注入されたグリースが、その量に対応する期間の間、ピストン軸とピストン軸受部との相対摺動変位を潤滑し続けるため、長期に亘ってグリース注入の必要がないものとなすことができるのであり、またグリース注入手段からグリースを注入したとき、該注入したグリースがピストン案内孔内にてピストン軸を回り込むように移動した後でなければ流体通路に到達しないため、ピストン案内孔にその適当量が溜まることなく短絡的に流体通路に達して流体通路から無駄に外界側へ漏れ出る現象を確実に防止できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、図1〜図21を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施の一形態である野菜移植機の左側面図、図2は本発明の実施の一形態である野菜移植機の平面図、図3は野菜移植機のシャーシ前半部の要部平面図、図4は補強部材を示す要部平面図、図5は前輪支持軸を示す側面図、図6は後輪駆動軸を示す側面図、図7は苗供給部を示す平面図、図8は苗供給部の一部を示す平面図、図9は苗供給部の一部を示す正面図及び側面図、図10は駆動スプロケット中心部の断面図、図11は駆動スプロケット中心部の平面図、図12は移植爪周辺の平面図、図13は移植爪周辺の後面図、図14は移植爪周辺の側面図、図15は移植爪の側面図、図16は移植爪を上方変位させるスプリング等の後面図、図17は移植爪と灌水管の関係を示すもので一部を断面で示した側面図、図18は移植爪と灌水管の関係を示す平面図、図19は灌水ポンプ周辺の側面図、図20は灌水ポンプ周辺の平面図、図21は灌水ポンプの断面図である。
【0015】
図1及び図2を用いて本発明の野菜移植機の実施の一形態である玉葱用の歩行型の野菜移植機101の全体構成について説明する。
なお、以下の説明においては図1中の矢印Aの方向を野菜移植機101の機体の「前方」とする。
【0016】
野菜移植機101は、箱形フレーム401の前部上にエンジン103を載置し、箱形フレーム401の後部上にミッションケース104を配置し、ミッションケース104後部上から後方にハンドル部材となるハンドルフレーム106を水平方向に連設している。該ハンドルフレーム106の中途部上に苗供給部107を配置し、ハンドルフレーム106の後部を運転操作部109としている。
【0017】
前記箱形フレーム401の前部には前輪支持軸110を横架し、前輪支持軸110の両側に前輪支持フレーム111、111の一端を取り付け、前輪支持フレーム111、111の他端に前輪112、112を回転可能に支持している。
また、箱形フレーム401の中途部より支持フレーム113を横架し、ミッションケース104より後輪駆動軸115を水平方向側方に突出し、該後輪駆動軸115の両側に駆動ケース116、116の一端を連設して、該駆動ケース116、116の他端に後輪117、117を回転可能に支持している。
【0018】
移植部120は、ミッションケース104の後部且つ苗供給部107の下方であって、後フレーム405、405の間となる位置に配置される。移植部120は移植爪151を昇降して、上端位置で苗供給部107より苗126を受け取り、下端位置で移植爪151を開いて畦125中に苗126を落下させて、その後方に配置した覆土輪122により苗126の根部に土を寄せて覆土して移植する構成としている。
【0019】
次に図1から図6を用いて野菜移植機101の構造体(シャーシ)の詳細構成について説明する。
図1及び図2に示すように、野菜移植機101の骨格を構成する構造体であるシャーシは、メンテナンス時の作業性等を考慮して、シャーシの前半部と後半部とを容易に分割可能としている。該前半部は主に箱形フレーム401、前輪支持軸110、支持フレーム113、機体フレーム102、後輪駆動軸115等で構成され、該後半部は主にハンドルフレーム106、後フレーム405、405、後部支持部材406等で構成される。
【0020】
箱形フレーム401は上方が開口した略箱形の構造部材であり、箱形フレーム401の前部にはエンジン103がボルト等により固定され、箱形フレーム401の後部にはミッションケース104がボルト等により固定される。また、エンジン103とミッションケース104との間には油圧ポンプ403が固設され、箱形フレーム401の下部に設けられた油圧式のアクチュエー夕(油圧シリンダ)404に圧油を供給可能としている。
【0021】
前輪支持軸110は、パイプ110a、パイプ110b、パイプ110c等で構成される。
図5にも示すように、パイプ110aは断面視略六角形のパイプであり、前記箱形フレーム401の前端部に回動可能に軸支される。このとき、パイプ110aの長手方向は機体左右方向と一致し、且つパイプ110aの右半部において箱形フレーム401に軸支される。また、パイプ110aの中途部にはアーム110dが突設されている。
【0022】
パイプ110b、110cは断面視略六角形のパイプであり、前記パイプ110aに対して相対回転不能で摺動可能な外形を有している。
パイプ110bはパイプ110aにその右端部より嵌装され、パイプ110bの右端部には機体右側の前輪支持フレーム111の一端が固設される。前輪支持フレーム111の他端には右側の前輪112が回転可能に軸支される。パイプ110cはパイプ110aにその左端部より嵌装され、パイプ110cの左端部には機体左側の前輪支持フレーム111の一端が固設される。前輪支持フレーム111の他端には左側の前輪112が回転可能に軸支される。
【0023】
図2〜図4に示すように、パイプ110b、110cを摺動させてパイプ110aからの突出量を変更することにより、畦125の左右幅に応じて左右の前輪112、112の間隔を変更することが可能である。なお、パイプ110aの左右端部近傍の側面には固定ネジ402が螺装され、パイプ110b、110cを所望の突出量とした後にパイプ110aに固定可能としている。
【0024】
支持フレーム113は箱形フレーム401の左右側面に突設された略円筒形状の部材であり、支持フレーム113の左端部に固設されたブラケット113aと、機体フレーム102の後端部に固設されたブラッケト102aとがボルト締結により固定されている。また、前輪支持軸110のパイプ110aの左端部は機体フレーム102の前端部102bに回動可能に軸支されている。従って、支持フレーム113及び機体フレーム102により前輪支持軸110の左半部の剛性が向上されている。
【0025】
後輪駆動軸115は主にパイプ115a、パイプ115b,駆動伝達軸115c、駆動伝達軸115d等で構成される。なお、以下の説明では機体左側の後輪駆動軸115について説明し、機体右側の後輪駆動軸115については説明を省略する。
【0026】
図2、図3、図4及び図6に示すように、機体左側の後輪駆動軸115のパイプ115aは断面視略六角形のパイプであり、その右端部はミッションケース104の左側方に配置される。パイプ115aの長手方向は機体左右方向と略一致し、パイプ115aの中途部にはアーム115eが突設されている。このとき、パイプ115aの右端部(ミッションケース104側の端部)は箱形フレーム401の後端部より左側方に突設された後部支持部材406にブラッケト406aを介して回動可能に軸支され、パイプ115aの左端部は回動支持部材407に回動可能に軸支される。
回動支持部材407から突設されたブラッケト407aは機体フレーム102の後端部に固設されたブラッケト102aにボルト締結により固定される。
【0027】
パイプ115bは断面視略六角形のパイプであり、前記パイプ115aに対して相対回転不能且つ摺動可能な外形を有している。
パイプ115bはパイプ115aにその左端部より嵌装され、パイプ115bの左端部には機体左側の駆動ケース116の一端が固設される。該駆動ケース116の他端には左側の後輪117が回転可能に軸支される。
【0028】
駆動伝達軸115cは略円柱状の部材であり、パイプ115bに相対回転自在に貫装される。このとき、駆動伝達軸115cの一端はミッションケース104の側方から突出し、エンジン103からの駆動力を後輪117に伝達するための走行出力軸104bと相対回転不能に接続される。また、駆動伝達軸115cの他端面には長手方向に断面形状が略六角形の孔が穿設される。
【0029】
駆動伝達軸115dは断面視略六角形の柱状部材であり、駆動伝達軸115cに穿設された断面形状が略六角形の孔に相対回転不能且つ摺動可能に嵌装される。
駆動伝達軸115cから突出している駆動伝達軸115dの端部は駆動ケース116に軸支される。該駆動伝達軸115dの端部には駆動ケース116内にてスプロケット(図示せず)が外嵌される。
【0030】
パイプ115bを摺動させてパイプ115aからの突出量を変更することにより、畦125の左右幅に応じて左右の後輪117、117の間隔を変更することが可能である。なお、パイプ115aの左端部近傍の側面には固定ネジ412が螺装され、パイプ115bを所望の突出量とした後にパイプ115aに固定可能としている。また、パイプ115bをパイプ115aに対して摺動させたときには、駆動伝達軸115dは駆動伝達軸115cに対して摺動可能であるが、相対回転不能である。従って、左右の後輪117、117の間隔を変更してもミッションケース104からの駆動力を後輪117、117に伝達することが可能である。
【0031】
図1〜図3に示すように、機体フレーム102の横方に前後向きに配置された棒状の部材であるロッド408の両端には、それぞれ前輪支持軸110のパイプ110aから突設されているアーム110d、及び後輪駆動軸115のパイプ115aから突設されているアーム115eが回動可能に枢着される。
【0032】
また、後輪駆動軸115のパイプ115aから突設されている別のアーム115fにはロッド409の後端が回動可能に枢着され、ロッド409の前端は箱形フレーム401の下部に設けられた油圧シリンダ404のシリンダロッドの端部に回動可能に枢着される。なお、油圧シリンダ404のシリンダロッドの軸線方向は箱形フレーム401の前後方向と略一致し、シリンダロッドは機体の前方に伸長する。
【0033】
図1及び図4において、油圧シリンダ404が伸長するとロッド409が前方に引き寄せられて後輪駆動軸115のパイプ115a、115bが機体左側方視で時計回りに回動する。従って、駆動ケース116及び後輪117はパイプ115a、115bを中心として、機体左側方視で時計回りに回動する。
【0034】
また、パイプ115a、115bが機体左側方視で時計回りに回動すると、ロッド408が後方に引き寄せられて前輪支持軸110も機体左側方視で時計回りに回動する。従って、前輪支持フレーム111及び前輪112は前輪支持軸110を中心として機体左側方視で時計回りに回動する。
このように、油圧シリンダ404を伸長、収縮させることにより、圃場に合わせて機体の高さを変更することが可能である。
【0035】
以下では図1〜図4、及び図6を用いて野菜移植機101の構造体であるシャーシの後半部について説明する。
図1及び図2に示すように、ハンドルフレーム106は平面視略U字型に屈曲されたパイプ部材であり、ハンドルフレーム106の右端部はミッションケース104の右側面後部上方にボルト締結により固定され、またハンドルフレーム106の左端部は支持部材410(図2に図示)を介してミッションケース104の左側面後部上方にボルト締結により固定される。
【0036】
後フレーム405、405はハンドルフレーム106を下方から支持するための部材であり、後フレーム405、405の後端はハンドルフレーム106の左右中途部に固設され、後フレーム405、405の前端は後部支持部材406の左右端部に固設される。
【0037】
以上のような図1及び図2に示す野菜移植機101のシャーシにおいて、該シャーシの前半部と後半部との分離を容易とし作業性(メンテナンス性)を向上させるため、シャーシの前半部と後半部との接続箇所は、シャーシ前半部の右半部に設けられた箱形フレーム401の後端部と、該箱形フレーム401の後部とに固設されたミッションケース104の後部側面上方、即ち機体の左右中心から右寄りとなる位置に集中している。そして、シャーシの前半部にはエンジン103やミッションケース104等の重量物が固定され、シャーシの後半部には移植部120等の重量物が固定されている。
【0038】
そのため、従来の野菜移植機の場合、走行中に圃場に凹凸等があって姿勢が変化すると、シャーシの前半部と後半部との接続箇所においてねじれが生じやすく、野菜移植機のシャーシの前半部に対して後半部が揺れたり、あるいは振動するという現象が発生していた そこで、図2、図3、図4及び図6に示すように、箱形フレーム401の後端部から左側方に突設された後部支持部材406の左端部と、支持フレーム113の中途部との間を補強部材411を介して着脱容易に固定した。
【0039】
また、棒状の部材である補強軸113cは、その両端が左右の支持フレーム113、113に嵌装される形で、箱形フレーム401の左右方向に横架される。該補強軸113cにより、箱形フレーム401の剛性が向上し、箱形フレーム401、支持フレーム113及び後輪駆動軸115のねじれが防止される。
【0040】
補強部材411は筒状の部材であり、補強部材411の前端部にはブラケット411aが設けられ、該ブラケット411aと支持フレーム113の中途部に設けられたステ−113bとはボルト締結により固定される。また、補強部材411の後端部にはブラケット411bが設けられ、該ブラケット411bと後部支持部材406の左端部に設けられたブラケット406bとはボルト締結により固定される。
【0041】
以上のように、本実施例の野菜移植機101は、エンジン103及びミッションケース104を固定する箱形フレーム401と、箱形フレーム401の前部において機体左右方向に横架される前輪支持軸110と、箱形フレーム401の後部において機体左右方向に横架される後輪駆動軸115と、箱形フレーム401の前後中途部より機体側方に突設される支持フレーム113とでシャーシの前半部を構成し、且つ、ミッションケース104に固設されて後方に延出されるとともに移植部120が固設されるハンドルフレーム106と、該ハンドルフレーム106の中途部を下方から支持する後フレーム405と、該後フレーム405の前端部と箱形フレーム401の後端部とを接続する後部支持部材406とでシャーシの後半部を構成し、箱形フレーム401を機体の左右中心から左右何れかにずれた位置に配置するとともに、箱形フレーム401がずれた方向と反対側にて支持フレーム113と後部支持部材406とを着脱可能に固定する補強部材411を設けたものである。
【0042】
このように構成することにより、野菜移植機101のシャーシの前半部と後半部との接続箇所におけるねじれが解消され、シャーシの剛性が向上する。また、補強部材411は容易に着脱可能であり、メンテナンス時等の作業性を損ねることがない。
【0043】
また、箱形フレーム401を機体の左右中心からずれた位置(本実施例では機体右寄り)に配置することにより、前輪支持軸110、支持フレーム113、後輪駆動軸115の上方且つ箱形フレーム401の側方(本実施例においてはエンジン103及びミッションケース104の左側方)に大きなスペースが生じるのであり、該スペースに灌水用の水を貯溜する一対のタンクt、tが配設されているが、補強部材411でシャーシの剛性が増大されているので、これらタンクtの重量でシャーシがねじれたり撓んだりすることは阻止される。
【0044】
次に苗供給部107について図1、図2、図5〜図11を参照して説明する。
図2及び図7に示すように、ハンドルフレーム106における左フレーム106Lの中途部より補助作業者m1側(機体中心と反対側)へ平面視コ字状の支持フレーム337が水平側方へ突設され、該支持フレーム337とハンドルフレーム106の前後中途部上に、板体を横向き長円形(長リング形)になした苗搬送台339が略水平に固設されている。
【0045】
そして、図1、図2、図7、図10に示すように、駆動スプロケット341がハンドルフレーム上106に架設状に固着された連結プレート334上に設けられている縦向き駆動軸341aを介して回転駆動可能に支持されており、また従動スプロケット342が支持フレーム337上に固定された縦向き支持軸342aを介して回転自在に支持されており、これら駆動スプロケット341と従動スプロケット342とにチェーン状に連結した苗搬送ポット340連が巻回されている。縦向き駆動軸341aには前記ミッションケース104からチェーンや歯車等の伝動機構を介してエンジン103の回転が伝達されるのであり、また駆動スプロケット341と縦向き駆動軸341aとの間には移植部120と苗供給部107との作動位相を最適となすための回転位相調整機構341bが設けられている。
【0046】
上記のように苗搬送台339が機体中心から偏位した車輪(前輪112、後輪117)側へ延設されることで、苗供給部107が畦125を跨ぐように配設されて、二条植の場合、四条の植付け巾を跨ぐようになり、畦125の両側に位置する主作業者m2と補助作業者m1の両者が苗供給部107に対面して苗載台331に載せられた方形状の苗箱内に収容された苗126を取って苗搬送ポット340に供給できるようにしている。
【0047】
苗搬送ポット340は、図8、図9に示すように、筒体の上部を拡開した漏斗状に構成し、上方より苗126を挿入し易い形状としている。苗搬送ポット340の下部外周には連結板343aが直径方向に延設され、該連結板343aの端部が隣接する苗搬送ポット340の連結板343bと枢支ピン344により互いに回動自在に連結されている。そして、該苗搬送ポット340の上下中途部側面に駆動スプロケット341と従動スプロケット342の外周面が当接するようになされており、苗搬送ポット340連が本実施例では平面視右回り回動し補助作業者m1側で反転して受継位置350側へ苗126を搬送するようにしている。
【0048】
連結板343aの下部(搬送方向前部が好ましい)にはプレート状の蓋体345の一端が支点ピン346により枢支され、蓋体345の上面で苗搬送ポット340の下面を蓋する構成としている。つまり蓋体345を上下揺動されるシャッターとしている。
【0049】
そして、蓋体345の他側の下面の左右−側にはローラ347が回転自在に枢支され、苗搬送台339上を転動するようにしている。ロ−ラ347は苗搬送ポット340毎に取り付けられるが、連続した苗搬送ポット340は搬送方向に対して左右交互にローラ347を配置されている。つまり、苗供給部107において、多数連結した苗搬送ボット340、340は偶数個とし、それぞれ順に番号を付したときに、奇数に位置する苗搬送ポット340と偶数に位置する苗搬送ポット340では搬送方向に対して交互に左右逆側にローラ347、347を配置しているのである。さらに具体的には、奇数(又は偶数)に対応するローラ347は内周側に、一方、偶数(又は奇数)に対応するローラ347は外周側に配置するのである。この際、奇数に位置する苗搬送ポット340の外周面には特定色(例えば青色)を着色し、また偶数に位置する苗搬送ポット340の外周面には他の特定色(例えば赤色)を着色しておき、2人作業によりこれら苗搬送ポット340に苗126を投入するときは、主作業者m2は一方の特定色に着色され右側の移植爪151内に苗126を落下させるものとした苗搬送ポット340を受け持ち、補助作業者324は他方の特定色に着色され左側の移植爪151内に苗126を落下させる苗搬送ポット340を受け持つようにする。
【0050】
苗搬送台339はローラ347が転動するレールの役目を果たしており、苗搬送台339のローラ347が転動する経路において、受継位置350、つまり、機体上方の苗搬送台339の開口部(又は切欠)339a、339bを左右前後位置をズラせて並設配置して、該開口部339a、339bでローラ347を支えるものがなくなり支点ピン346を中心に蓋体345が下方に回動して、苗搬送ポット340の下方を開口し、苗126が移植部120に落下するようになしている。
【0051】
即ち、左右方向に長い長円形の苗搬送台339の前部右側の苗搬送ポット340の移動軌跡部に開口部339a、339bを搬送方向に沿って開口し、該開口部339a、39bは苗搬送ポット340の底面積よりも大きくして苗126の落下を可能になすと共に、搬送方向に対して、連結した苗搬送ポット340の3ピッチ又は5ピッチ離れた位置に開口しており、この間隔は条幅(条間隔)に合わせている。
【0052】
そして進行方向に対して一方は左右一側を、他方は左右他側をそれぞれローラ347の落ち込むように位置を合せて側方に大きく開口させてあり、ローラ347が落ち込む側の反対側は苗搬送ポット340の底面よも若干広げる程度となされていて、苗126は落下する(蓋体345が下方へ回動できる)が進行方向前後で隣接する苗搬送ポット340に付設されているローラ347は落ち込まないようにしている。つまり、開口部339a、339bは苗搬送ポット340の搬送方向中心線に対して、互いに左右逆側に広げて開口している。
【0053】
そして、開口部339a、339b内にて開放された蓋体345のローラ347が通過する位置には、徐々に上昇して苗搬送台339のロ−ラ347転動面につながるスロープ(傾斜面)339c、339cがそれぞれ設けられて、ローラ347が引っ掛かることなく移動に伴って徐々に蓋体345が閉じるようにしている。
【0054】
前方の移植部120の移植爪151、151がその移動軌跡の最高位置に到達したときにこれら移植爪151、151のそれぞれの真上となる特定苗搬送位置b1、b2(図9参照)で、しかも、前記各開口部339a、339bの真下には、苗126をその対応する移植爪151内へ案内する漏斗状の中間ガイド体348が配置されており、各ガイド体348は下部周面部分348aを撓曲自在なゴム質又は樹脂材で形成されると共に苗搬送台339の下面から延出された支持片349を介して位置保持されていて、その対応する移植爪151がこれの移動軌跡の最高位置に支障なく到達できるようになされている。
【0055】
このように、苗供給部107は長円状に苗搬送ポット340、340…が連結配置されていて、機体後方の主作業者m2と補助作業者m1が位置する前を順に通過してその通過時に苗126を苗搬送ポット340内に挿入され、その後、特定苗搬送位置b1、b2(図8参照)へ回転移動されるものとなされている。該特定苗搬送位置bl、b2において、3ピッチ離れたロ−ラ347、347が同時に開口部339a、339b内に落ち込み、蓋体345、345が重力作用により下方へ回動して開き、これに関連して、苗126が2つの苗搬送ポット340、340から同時に落下して中間ガイド体348内に入り、ここで落下位置及び落下方向を修正されてさらに下方へ落下し、その後、移植部120の移植爪151、151内に到達する。
【0056】
この後、ロ〜ラ347、347はスロープ339c、339cに当接して徐々に上昇して蓋体345、345を閉じる。従って、1つの移植爪151には1つ置きの苗搬送ポット340から苗126が供給される。つまり、奇数となる苗搬送ポット340は左側(又は右側)の開口部339cで、偶数となる苗搬送ポット340は右側(又は左側)の開口部339cで蓋体345が開かれるものとなり、奇数の苗搬送ポット340と偶数の苗搬送ポット340とで左右の条(1条と2条又は3条と4条)の移植爪151、151内に苗126が同時に落下することになる。よって、同時2条の植付けが可能となり、左右条の間隔も一定に保てるのである。
【0057】
以下では図7、図10及び図11を用いて回転位相調整手段341bについて説明する。
縦向き駆動軸341aの先部は駆動スプロケット341の中心孔341cに相対変位可能に嵌挿されると共に、縦向き駆動軸341aの長さ途中に駆動スプロケット341の下面を受け止めるためのスプロケット支持板351が固定されており、該スプロケット支持板351の各端部にはボルト挿通孔351a、351bが形成されるほか、これらボルト挿通孔351a、351bの真下でスプロケット支持板351の下面にナット351c、351dが固着されている。そして駆動スプロケット341は複数の半径アーム部341dを具備したものとなされており、特定直径位置に位置した2つの半径アーム部341d、341dの長さ途中個所のそれぞれに平面視円弧状の透孔341e、341fが形成されている。
【0058】
また前記2つの半径アーム部341d、341dの上面側には位相調整容易化機構352が形成されており、該位相調整容易化機構352は基礎板353、基準位相指示アーム354及び高低速位相指示アーム355を備えている。基礎板353は前記2つの半径アーム部341d、341dの上面に支持される平面視長方形の板部材で、中央位置の上面に支点軸356が起立状に固定されると共に、前記透孔341e、341fのそれぞれと対応する位置にその透孔341e、341fと合致する円弧状の透孔353a、353bを形成されており、また各端部の下面にその対応する半径アーム部341d、341dを略密状に挟み付けるための一対の下向き係止棒357、358を固設されるほか、一方の端部にV形の切欠353cを形成されたものとなされている。
【0059】
基準位相指示アーム354は前記切欠353cに関連して配置される平面視扇形の目盛部354aと前記透孔341eの位置に関連して配置される透孔存在部354bと前記支点軸356と関連して配置される回転中心部354cと前記透孔341fの上方に位置しないように配置される位置固定部354dとを具備しており、目盛部354aには角度位置を判別するための目盛a1と、低速の位相を示す印b1及び高速の位相を示す印b2とが表示されると共に低速の位相に対応した係止用凹み部c1と高速の位相に対応した係止用凹み部c2とがデテント機構の一部として形成されており、また透孔存在個所354bには前記透孔341eの真上となる位置に前記透孔341eに沿うやや長い透孔354eが形成されており、また回転中心部354cには支点軸356の細径部356aに回転自在に嵌挿される筒部材357が上下向きに固定されており、位置固定部354dには前記透孔353bよりも支点軸356に近くなるように位置された円弧状の透孔354fが形成されている。この際、透孔354fには比較的短いボルト366が挿通されるのであり、該ボルト366が基礎板353の上面に固定されたナット部材359に螺入されることにより基準位相指示アーム354が基礎板353に固定された状態となる。
【0060】
高低速位相指示アーム355は前記印b1、b2に関連して配置される指示部355aと前記凹み部c1、c2に対応して位置されデテント機構の一部として形成される弾圧部355bと前記透孔354e及びボルト挿通孔351aに関連して配置される位置決め部355cと前記支点軸356に関連して配置される回転中心部355dとを具備しており、指示部355aには平面視山形の先鋭個所d1が形成されており、弾圧部355bには円形透孔355eと、該円形透孔355eに一端開口を連通され上面に起立状に固定された筒部材360と、円形透孔355eに挿入された球体361と、筒部材360に収納され球体361を下方へ押圧するスプリング362と、筒部材360の上端開口を閉鎖するためのボルト363とが設けられており、位置固定部355dには前記透孔354eの真上に位置された円形のボルト孔355fが形成されており、回転中心部355dには支点軸356の細径部356aに回転自在に嵌挿される筒部材364が固定されている。
【0061】
前記透孔341eには長ボルト365aが挿通されており、該ボルト365aはボルト孔355f、透孔354e及び透孔353aに挿通されナット351cに螺入されてスプロケット支持板351、駆動スプロケット341、基礎板353、基準位相指示アーム354、高低速位相指示アーム355を同体状に締結するものであり、また他方の透孔341fにも長ボルト365bが挿通されており、該ボルト365bは透孔353bに挿通されナット351dに螺入されてスプロケット支持板351、駆動スプロケット341及び基礎板353を同体状に締結するものである。
【0062】
ところで、エンジン103から後輪117、117、苗供給部107及び移植部120にエンジン103の回転を伝達する動力伝達系統は副変速機構を具備し、該副変速機構を低速或いは高速に切り換え操作することにより、後輪117、117、苗供給部107及び移植部120にエンジン103から低速回転を伝達する状態(低速状態)とエンジン103から高速回転を伝達する状態(高速状態)の何れか一方を任意に選択できるようになされている。苗供給部107及び移植部120に低速回転を伝達する場合と高速回転(例えば低速回転の2倍の速度)を伝達する場合とでは、最適な移植を行う上での、苗供給部107と移植部120との作動位相は異なるのであり、即ち、低速状態の場合では、例えば移植爪151の位置がその移動軌跡上の最高位置に略合致したとき、その対応する苗搬送ポット340の蓋体345が開放するように調整するのがよいのであり、一方、高速状態の場合は例えば移植爪151の位置がその移動軌跡上の最高位置に到達するよりも幾分先行して、その対応する苗搬送ポット340の蓋体345が開放するように調整するのがよいのである。
【0063】
低速状態の場合の基礎的な位相調整操作は例えば次のように行う。即ち、作業者は2本の長ボルト365a、365b及びボルト366を緩めてを緩めた状態となす。そして高低速位相指示アーム355の指示部355aの先鋭個所d1が低速位相の印b1を指していないときは基準位相指示アーム354を支点軸356回りへ揺動変位させることにより先鋭個所d1が低速位相の印b1を指す状態となす。このときの基準位相指示アーム354と高低速位相指示アーム355の相対位置は球体361と凹み部c1との係合により保持される。
【0064】
次に長ボルト365a、365bを仮締めして駆動スプロケット341等に手で回転力を付与するなどして、駆動スプロケット341を縦向き駆動軸341a回りに回転させ、苗供給部107及び移植部120をこれらの動力伝達系統を介して連動作動させ、各移植爪151に対し苗搬送ポット340の蓋体345がどのようなタイミングで開放するかを確認する。
【0065】
蓋体345の開放タイミングが適正でないときはV形の切欠353cが基準位相指示アーム354の目盛a1上で指した示度を記憶しておき、再び長ボルト365a、365bを緩め、駆動スプロケット341を縦向き駆動軸341aに対し、その開放タイミングが良好となる側へ透孔341e、341fの円弧方向の長さの許容する範囲内で変位させ、再び長ボルト365a、365bを仮締めし、先と同様に、各移植爪151に対し苗搬送ポット340の蓋体345がどのようなタイミングで開放するかを確認するのであり、以後、適正な開放タイミングが得られるまで同様な操作を繰り返す。この際、記憶した切欠353cの示度は縦向き駆動軸341aに対する駆動スプロケット341の変位操作を誤りのないものとする上で寄与する。
【0066】
適正な開放タイミングが得られたとき、即ち、移植爪151がこれの移動軌跡上の最高位置に達したときにその真上に位置した苗搬送ポット340の蓋体345が全開するような作動が得られたとき、2本の長ボルト365a、365b及びボルト358を確実に締結し、縦向き駆動支持軸341aと駆動スプロケット341との相対位置を固定させる。
【0067】
この基礎的な調整操作の過程において、駆動スプロケット341が縦向き駆動軸341aに対しその回転位相を特定角度だけ変位されるとき、基礎板354は駆動スプロケット341と同体状に回転変位されるものの、高低速位相指示アーム355及び基準位相指示アーム354は長ボルト365a及び、球体361及び凹み部c1を介して縦向き駆動軸341aと同一の位相を保持されるのであり、従って駆動スプロケット341の位置決め後における駆動スプロケット341と縦向き駆動軸341aとの相対位相の状態はV形の切欠353cが目盛a1上で指している示度を見ることにより認識される。
【0068】
基礎的な調整操作が終了した後に切欠353cの指した目盛a1上の示度を記録しておけば、この後、駆動スプロケット341を取り外す等したときにも、切欠353cの目盛上の示度が同一となるように駆動スプロケット341等を組み立てることによって、低速状態の場合の基礎的な調整が行われた後の状態と同一の状態が得られ、既述の基礎的な調整を再度行う必要はなくなる。
【0069】
既述の基礎的な調整操作が終了した後における前記高速状態の場合の位相調整操作は次のように行う。即ち、作業者は2本の長ボルト365a、365bを緩めた状態となし、次に駆動スプロケット341等に手で回転力を付与することにより駆動スプロケット341を高低速位相指示アーム355の先鋭個所d1が高速位相を示す印b2を指すようになる側へ、即ち縦向き駆動支持軸341aに対し回転位相を進める側(図11中右回り)へ回動変位させ、先鋭個所d1が高速位相を示す印b2を指したときに駆動スプロケット341の回動変位操作を止め、この状態で2本の長ボルト365a、365bを締結する。この際、基準位相指示アーム354の長孔354eとこれに挿通された長ボルト365aとは駆動スプロケット341の過大な回動変位を規制する上で寄与する。また球体361及び凹み部c2は駆動スプロケット341及び基準位相指示アーム354を高速状態の場合の最適位置に位置決めする操作を容易となす。
【0070】
高速状態に対応する位相を示す印b2の位置は予め実験により高速状態における最適位置であることが確認されており、低速状態の場合よりも縦向き駆動軸341a回りへ凡そ4度〜5度程度位相を進めた位置となっており、従って高速状態の場合には移植爪151がその移動軌跡上の最高位置に到達する少し手前に到達しそれが閉じた時点に、苗搬送ポット340の蓋体345が全開となるように作動する。
【0071】
高速状態の場合において苗搬送ポット340から苗126が移植爪151の移動軌跡の最高位置まで落下するに要する時間は、重力加速度が同一であることから低速状態の場合と変わりないのであるが、苗搬送ポット340は低速状態の場合の例えば2倍の速度で左右方向へ移動するのであり、このような状況の下で、低速状態の場合と同様に移植爪151がこれの最高位置に到達したときに苗搬送ポット340の蓋体345が全開となるような作動では、蓋体345の開放により苗搬送ポット340から落下する苗126がその対応する移植爪151内に十分に入り込む前に該移植爪151が最高位置から降下するようになって苗搬送ポット340内の苗126を移植爪151内へ的確に供給することが困難となるのである。しかし、この実施例では苗搬送ポット340の作動位相が移植爪151のそれに対して既述のように進められているため、蓋体345の開放で苗搬送ポット340から落下した苗126は移植爪151がこれの最高位置を経て降下するまでにその内方に十分に入り込み、苗搬送ポット340内の苗126は移植爪151内に的確に供給されるのである。
【0072】
なお、上記した位相調整のための操作手順は一例であり、これとは異なる手順による操作をしても差し支えないのであり、例えば基礎的な位相調整を高速状態の場合で行い、該高速状態の場合を基準位相として低速状態の場合の位相調整を行うようになすことも可能である。
【0073】
以下では図1、図2、図12〜図16を用いて移植部120の詳細構成について説明する。
図1、図2等に示すように、移植部120はミッションケース104の後方且つ苗供給部107の下方に配設される。該移植部120は、図12〜図14にも示すように、野菜の苗126を苗供給装置107から畦125へ搬送する左右一対の移植爪151、151と、各移植爪151の左右一側にそれぞれ配置され駆動部となるロータリケース152、152と、各移植爪151の左右他側に配置しガイド部となる昇降ガイド153、153と、これらを連結するアームやリンク等から構成されている。昇降ガイド153、153はシャーシの後半部を構成する後フレーム405、405、後部支持部材406又はハンドルフレーム106及び後部支持部材406に固設されたフレーム413、フレーム414、フレーム415のうち、フレーム414及びフレーム415にそれぞれ固設され、ロータリケース152、152から突出した支点軸154、154は支持板154a、154aを介してフレーム413及びフレーム414にそれぞれ固設される。移植爪151、151はフレーム413とフレーム414の間及びフレーム414とフレーム415の間に配設され、該移植爪151、151は苗供給部107の下方で側面視楕円状の軌跡で昇降するように構成されている。
【0074】
ロータリケース152は一端が前記支点軸154に回転自在に支持され、該ロータリケース152の外側面の支点軸154外周部に伝動体となるスプロケット155が固設され、チェーン等の伝動手段を介して、ミッションケース104から横方へ延出された植付出力軸104aに固定されたスプロケット127と連動連結され、該移植部120と苗供給部107が同期して駆動するように構成されている。なお、スプロケット155の代わりに歯車等により伝動する構成とすることもでき限定するものではない。
【0075】
前記ロータリケース152内には支点軸154に外嵌された第一の歯車と、ロータリケース152内にて回転可能に軸支された第二の歯車と、ロータリケース152他側よりスプロケット155と反対側に突出している出力軸156に外嵌されている第三の歯車の計三つの歯車が直列的に配置され、順に噛合している。そして、出力軸156にはアーム157の一端が固設されている。このとき、前記第一の歯車と第三の歯車とは歯数が同じであることから、ロータリケース152に対して支点軸154が一回転すると、アーム157はロータリケース152に対して支点軸154とは逆方向に一回転する。
【0076】
従って、ミッションケース104からの駆動力によりロータリケース152が回転駆動されるとき、見かけ上出力軸156は野菜移植機101の機体に対して回転しておらず、アーム157は野菜移植機101の機体に対して回動せずに支点軸154を中心に揺動することとなる。
【0077】
前記アーム157の他端には連結軸159の一端が固設され、該連結軸159上に条幅に合わせて移植爪支持体160、160の一側(前側)が軸受を介して回転自在に支持されている。移植爪支持体160は左右のプレートより構成して、左右のプレート間の連結軸159上に開閉カム161を固設している。
【0078】
移植爪支持体160の他側(後側)には漏斗状のカップ160aが形成され、苗供給部107より苗126が入り易くし、カップ160a下部に開閉可能に移植爪151を配置している。カップ160aはその対応する移植爪151がこれの移動軌跡の最高位置に達したとき、前記中間ガイド体348の下部が入り込むのを許容するものとなされており、このような入り込み状態で苗搬送ポット340内の苗126が落下されると、この苗126は中間ガイド体348内に案内された後、的確にカップ160a内に落下するものとなる。
【0079】
このような中間ガイド体348及びカップ160aによる苗126の案内作用は、苗搬送ポット340から移植爪151内へ苗126を的確に落下させる上での、移植爪151の位置と蓋体345の開放時点との相対位相のずれの許容範囲を拡大する上で寄与するのであり、例えば苗供給部107及び移植部120が低速状態で作動されるときのそれらの最適作動位相を変更することなく、苗供給部107及び移植部120を高速状態で作動させて使用する場合にも、苗搬送ポット340内の苗126を的確に移植爪151内に落下させることを可能となすのであり、また中間ガイド体348が存在しない場合には苗126が曲がっていると該苗126と苗搬送ポット340の内壁面との接触等により斜め下方に落下して的確に移植爪151内に落下しないが、このような曲がり状の苗126であっても移植爪151内に的確に落下させることを可能となすのである。
【0080】
移植爪151の開閉機構はカップ160aの前部と後部に同距離はなれた位置に爪支点軸163、163を左右水平方向に設け、爪支点軸163に移植爪151の上部の前後一端を枢支している。そして、移植爪151は前後略対称に構成したくちばし状の爪部151a、151aを合わせた状態で苗126を収納支持し、開いた状態で苗126を落下させるようにしており、合わせる側の爪部151a上部のカップ160aの左右両側に枢支軸164、164を設けて前後の爪部151a、151aを連結している。そして、該枢支軸164、164とカップ160a上部との間にバネ169、169を介装して枢支軸164、164を持ち上げるように付勢し、移植爪151を閉じるようにしている。
【0081】
また、開閉カム161側に位置する爪部151aの爪支点軸163上には当接アーム165の一端が枢支され、当接アーム165の他端にローラ166を設けて開閉カム161の外周に当接するように構成している。当接アーム165と爪部151a上部との間には爪開閉量調節機構167が設けられており、該爪開閉量調節機構167は当接アーム165と爪部151aの両者間にボルト168を螺装して、該ボルト168を回動することにより両者の間隔を調節して、爪部151aの回動量を調節できるようにしている。
【0082】
前記バネ169、169により爪部151aは閉じるように付勢され、支点軸163に対して反対側に位置する当接アーム165の先端は開閉カム161に当接されて回動が規制されている。従って、開閉カム161の外周形状によって爪部151aが回動して移植爪151が開閉されることになるのである。このように構成することによって、常に移植爪151は閉じ方向に付勢され、開閉カム161により強制的に開くように制御される。
【0083】
そして、移植爪支持体160の前部が上方に延出されて延出部160bが形成され、該延出部160bより支持軸170が昇降ガイド153側の側方に突出されている。該支持軸170の端部にローラ171を設けて上下方向に配置した昇降ガイド153に嵌合し、移植爪151の昇降をガイドするようにしている。
【0084】
このような構成において、ミッションケース104からの動力によりロータリケース152が回動され、左右一対の移植爪151が上昇端に達する少し手間でそれらの爪部151a、151aは同時に閉じ、苗供給部107から苗126が投入されると、左右一対の移植爪151、151は同時に、昇降ガイド153に沿って下降する。
【0085】
そして、下端位置まで下降すると、開閉カム161の回動により、該開閉カム161に当接した当接アーム165が回動し(開閉カム161の小径部に当接する)、爪支点軸163、163を中心に爪部151aが回動し、移植爪151、151が開き、畦125中の下端位置で苗126が落下放出される。更に回動すると、移植爪151、151が上昇され、植付爪151は略楕円軌跡を描いて再び最高位置に戻り、以後、同じ作動を繰り返す。
【0086】
図15に示すように、本実施例の移植爪151は、移植爪支持体160の反対側となる爪部151aにスクレーパ420が設けられている。
スクレーパ420は、移植爪支持体160の反対側となる爪部151aの外周面に付着した土等を除去するためのものであり、主に支持部421、摺動筒422、摺動棒423、バネ424、ローラ425、当接部材426、ガイド棒427等で構成される。
【0087】
支持部421は図示例では移植爪支持体160の反対側となる爪部151aの外周面から後方に向けて突設されている。該支持部421には摺動筒422が固設されるとともに、ガイド棒427が摺動可能に貫装されるガイド孔421aが穿設される。
【0088】
摺動筒422は筒状の部材でおり、摺動棒423が摺動可能に貫装される。摺動棒423は断面が略円形の棒状(又はパイプ状)の部材であり、その上端には軸支部材423aが設けられる。該軸支部材423aにはローラ425が回転自在に軸支されるとともに、軸支部材423aと摺動筒422との間にはバネ424が介装される。
摺動棒423の下端には当接部材426が設けられる。当接部材426はゴムや樹脂等の可撓性の材質からなり、移植爪支持体160の反対側となる爪部151aの外周面に当接されている。
【0089】
ガイド棒427は断面形状が略円形の棒状の部材であり、その下端が屈曲されて摺動棒423の下端部に固設されるとともに、その胴体部はガイド孔421aに摺動可能に嵌装される。この際、摺動棒423の胴体部の長手方向と、ガイド棒427の胴体部の長手方向とは略平行となされ、摺動棒423とガイド棒427とが同体的に摺動可能となされている。そしてガイド棒427の胴体部及びガイド孔421aは、図示例では摺動棒423の胴体部に対し後側に配置されている。しかし、これに限るものではなく、ガイド棒427の胴体部及びガイド孔421aは例えば摺動棒423の胴体部に対し、左右一側に配置してもよい。
【0090】
以上のように構成されたスクレーパ420は、通常時(スクレーパ420に外力が加わっていないとき)にはバネ424の付勢力により摺動棒423が摺動筒422より上方に突出した状態となり、当接部材426は移植爪支持体160の反対側となる爪部151aの外周面の上部に当接している。
【0091】
移植部120が駆動されてロータリケース152が回動し、移植爪151が上方に回動していくと、スクレーパ420の上方に突出したローラ425が苗供給部107の下面(又は該下面に設けられた板状の部材)と当接する。移植爪151が更に上方に回動していくと、摺動棒423はバネ424の付勢力に抗して押し下げられ、下方に摺動する。このとき、当接部材426は移植爪支持体160の反対側となる爪部151aの外周面に沿って当接しつつ下方に移動し、該爪部151aの外周面に付着した土等を除去する。
【0092】
本実施例のスクレーパ420は、当接部材426を支持しつつ摺動する部材である摺動棒423及びガイド棒427の断面形状が略円形であるため、滑らかに摺動可能である。また、二本の略平行な棒状部材である摺動棒423及びガイド棒427が一体的に摺動するため、当接部材426が摺動棒423の軸中心に回転することがなく、移植爪支持体160の反対側となる爪部151aの外周面に付着した土等を確実に除去することが可能である。
【0093】
また図13及び図14に示すように、植付出力軸104aの軸端のスプロケット127の外側面の特定位置と、支持板154aの間にはスプリング210が張設されている。該スプリング210は上端フック部をスプロケット127の外側面に突設されたバネ掛け軸部211に掛け止められ、下端フック部を支持板154aの外側面に突設されたピン部材212に掛け止められている。
【0094】
バネ掛け部材211は、図16に示すように、スプロケット127に固設された軸部材213とこれに回動自在に装着されたローラ214からなっており、該ローラ214の外周面に形成された環状溝にスプリング210の上端フック部が掛け止められている。
【0095】
該スプリング210は、植付出力軸104aの回転中、スプロケット127の回転に連動して伸縮変形し、移植爪151が最下位置に位置したときに最も延びた状態となり、移植爪151が最上位置に位置したとき最も縮んだ状態となるように装着されている。従って、エンジン103と植付出力軸104aとの連動を断続させる図示しない植付クラッチが断操作されたとき、移植爪151が最下位置近傍に位置しておれば、スプリング210は自身の弾力でスプロケット127を回転させ、左右の移植爪151、151を最上位置近傍へ向けて上昇変位させるものとなる。これにより、移植作業中、作業者が図示しない植付クラッチを任意時に断操作しても、移植爪151は常に適当高さまで上昇した状態となって、移植爪151、151が畦崩しや、畦125を覆ったマルチフィルムを破損させるような事態は防止される。
【0096】
次に、移植爪151内の苗126への灌水機構について、図1、図2及び、図17〜図21を用いて説明する。
該灌水機構は、図1及び図2に示す一対の水タンクt、t及び一対の灌水ポンプ171、171と、左右の移植爪151、151の内部にそれぞれ挿入される図17及び図18に示す灌水管172と、これら灌水管172と灌水ポンプ171、171の間を連結する図19及び図20に示すホース173a、173bとからなる。
【0097】
図19及び図20に示すように、一対の灌水ポンプ171、171は、図2に示す左右の移植爪151、151にそれぞれ対応しており、ミッションケース104後端部の左方位置で後部支持部材406の長さ途中個所に固定されたポンプ台174に固定されている。ポンプ台174は、後部支持部材406に固定された起立状の脚部175と、これの上端に固着された固定台板176aと、これの上面にボルトa2を介して上下方向のスライド調整可能に固定された可動台板176bとからなっている。脚部175は後部支持部材406に固着された縦向きステー板177と、これに長孔及び結合ボルト178等を介して高さ調整可能に固定され縦部材g1及び横部材g2を備えてなる起立状支持部材179とを具備している。固定台板176aは後上部を縦部材g1の上端に、そして前後長さ略中央を横部材g2の前端に固着され、下前部を管状の支持フレーム113に外嵌された逆U字形部材180の後面個所h1に突き合わせ状に固着され、水平線に対し後上がり状の凡そ45度程度の傾斜状となされている。逆U字形部材180は前後に位置された両端部間をボルトで締結されることにより支持部材113に締結状に固定されている。可動台板176bはこれの上面に一対の灌水ポンプ171、171をボルトで固定されており、後上部の下面に下向きのブラケット181を固定されるほか、後端縁を90度上方へ折り曲げて起立面部h2を形成されており、該起立面部h2に固着されたナットnに前側から押しボルト182を螺入され、該押しボルト182を回し操作することにより起立面部h2に対する押しボルト182の前張り出し量が変化し、押しボルト182の頭部が逆U字形部材180の後面個所h1に押し当てられることにより、可動台板176bが固定台板上176aを後上方へ調整変位されるものとなされている。押しボルト182はロックナット183により締結固定される。
【0098】
灌水ポンプ171のそれぞれは、図21に示すように、シリンダ部184、ピストン185、ピストン軸186、ピストン軸受部187及び水出入り口部188等を備えている。シリンダ部184は合成樹脂で形成されたものであって、内孔j1をピストン案内孔となされた筒状の前後向き周壁部184aと、前後向き周壁部184aの一端開口を閉鎖した端面壁部184bとを具備し、前後向き周壁部184aの環状後端面にネジ孔j2を形成され、端面壁部184bに吸引孔j3と吐出孔j4を透設されており、吸引孔j3の前部に第1径大孔部j31と第2径大孔部j32を形成されてこれら第1径大孔部j31及び第2径大孔部j32を弁室に、そして第1径大孔部j31の後端段部をスプリング受け面j33となされ、一方、吐出孔j4の前部を径大孔部j41となされて段部を形成されると共に該段部に弁座j42を形成されたものとなされている。
【0099】
ピストン185は前側に径大部185aを、そして後側に径小部185bを具備しており、これら径大部185a及び径小部185bを合成樹脂で一体状に形成され、径大部185aの長さ途中の外周面に環状のリング溝を形成され、該リング溝内にシール用のゴム質ピストンリング189を嵌着されるほか、径大部185aの前面に環状のバネ挿入孔j5を形成されている。そして、ピストン185とシリンダ部184の端面壁部184bとの間には圧縮状の比較的大径のスプリング190が配置され、該スプリング190の後端はバネ挿入孔j5の底面部を後方へ押圧している。またピストン軸186はステンレス材等の金属材で形成されており、前端部をピストン185の後面に植設され、後端部にピン孔j6を形成されている。
【0100】
ピストン軸受部187は鍔部187a、張出部187b及び嵌合部187cからなる本体部191にグリース注入手段192を設けたもので、本体部191の全体をピストン軸186の材料に対し異種となる金属である砲金で一体状に形成され、本体部191の前面にピストン185の小径部185bが入り込むことのできる円形凹み部j7を形成され、該円形凹み部j7の直径を前記小径部185bのそれよりも幾分大きくなされ、本体部191の中心個所にピストン軸186の挿入される軸受孔j8を透設され、軸受孔j8を取り巻く肉部に比較的小径の流体通路j9を軸受孔j8に対し平行に透設され、またグリース注入手段192を本体部191の張出部187bの外周面に螺着されたグリースニップル193と、円形凹み部j7の底面に穿孔されグリースニップル193のグリース孔と連通されたグリース通路j10とで形成されており、シリンダ部184のネジ孔j2にボルト194を螺入されて固定される。
【0101】
この際、軸受孔j8の長さはピストン185の長さと略同等か或いはこれよりも大きくなし、且つ、ピストン185の往復ストロークと略同等か或いはこれよりも大きくなしてあり、また流体通路j9は外界側とピストン案内孔j1の一端とを連通させるものであり、またピストン案内孔j1内であってピストン185とピストン軸受部187との間となる隙間は軸受孔j7内に供給されるグリースを溜めておくためのグリース溜まり空間(斜線部)kとなされており、さらにピストン案内孔j1内に接したグリース孔j10の開口j101と、ピストン案内孔j1内に接した流体通路j9の開口j91とはピストン軸186を挟んで対峙するように配置されている。なお、グリースニップル193の螺着位置は適宜に変更して差し支えない。
【0102】
水出入り口部188は水吸引部195と水吐出部196からなる本体部を具備し、水吸引部195が吸引側ホース接続突起部195aと吸引覆蓋部195bで形成されていて、これらの中心部に水吸引孔195cを透設されており、また水吐出部196は吐出側ホース接続部196aと吐出覆蓋部196bで形成されていて、これらの中心部に水吐出孔196cを透設されており、また水吸引孔196cの後部に径大孔部j11を形成され段部を形成されると共に該段部に弁座j12を形成され、一方、水吐出孔196cに第1径大孔部j13と第2径大孔部j14とを形成されると共に第1径大部j13の前端にスプリング受け面j15を形成されたものとなされている。
【0103】
該水出入り口部188はシリンダ部184に図示しないボルトを介して固定されており、水吸引孔195c内には、弁座j12に当接される弁体としての球体197と、該球体197とスプリング受け面j33との間に位置され該球体197を押圧するスプリング198とが配設されており、また水吐出孔196c内には、弁座j42に当接される弁体としての球体199と、該球体199とスプリング受け面j15との間に位置され該球体199を押圧するスプリング200とが配設されている。
【0104】
そして図19及び図20に示すように、吸引側ホース接続部195aは吸引ホース173aを介して前記水タンクtに連通され、吐出側ホース接続部196aは吐出ホース173bを介して前記灌水管172に連通されており、またピストン軸186の先端にはローラ支持部材201及び支軸202を介して当接ローラ203が回転自在に装着されている。
【0105】
また前記ミッションケース104より駆動軸104aが突出され、該駆動軸104aにカム204が固設され、該カム204と当接ローラ203との間に揺動アーム205が配設されている。該揺動アーム205は下端がブラケット181の下端部に支点軸206回りの揺動自在に枢支されており、上部前面を当接ローラ203の当接される平面個所となされると共に、揺動アーム205の長さ途中個所に支軸207を介してカムローラ208を装着されるほか、揺動アーム205の上部から前下方へ向け、灌水ポンプ171、171を手動操作するためのレバー部材209が延出されている。
【0106】
この際、ピストン185はスプリング190の弾力で後方へ押されているため自由状態ではそのストロークの後端に位置され、当接ローラ203もこれの自由状態ではピストン185のストロークの後端に対応した位置に保持される。また揺動アーム205はレバー部材209の重量により支点軸206回りの矢印方向f1へ回転力を付与されて、常に前面個所が当接ローラ203に接した状態となる。
【0107】
このような構成において、ピストン185がこれのストロークの後端に位置した状態の下で、グリースニップル193にグリースガンを接続し、グリースをグリース孔j10からピストン案内孔j1内のグリース溜まり空間kに注入する。この際、流体通路j9の開口j91とグリース孔j10の開口j101とがピストン軸186を挟むように配置されているため、グリース孔j10から注入されたグリースはグリース溜まり空間k内に充たされた後に、流体通路j9を通じて外界側へ溢れ出るようになるのであり、これによりグリースはグリース溜まり空間k内に過不足無く注入されたことが確認される。
【0108】
エンジン103の回転力でカム204が回転駆動されると、カムローラ208がスプリング190の弾力に抗して揺動アーム205を繰り返し揺動させ、該揺動アーム205の揺動により当接ローラ203が前後変位されピストン軸186を前後方向へ繰り返し往復変位させるのであり、これにより灌水ポンプ171、171はピストン185を往復変位され、該往復変位の1回ごとに、ホース173a、吸引孔195c及びこれの内方の弁機構を介して水タンクt内の水をシリンダ部184の圧力室k1内に吸引すると共に、ホース173b、吐出孔196c及びこれの内方の弁機構を介して圧力室k1内の水を灌水管172へ向け吐出するように作動する。この際、1つの灌水ポンプ171におけるピストン185の1回の往復変位による水の吐出量は凡そ8cc〜10cc程度である。
【0109】
このように作動する灌水ポンプ171において、ピストン軸受部187の本体部191を金属材(砲金等)で形成したことは、これを樹脂材等で形成する場合に較べて、効果的にピストン軸受部187の剛性を増大されると共にその摩耗を抑制されるものとなり、また軸受孔j8の長さをピストン185の長さと略同等か或いはこれよりも大きくなしたことは本体部191とピストン軸186との間の隙間に起因した遊動傾斜変位を効果的に減少させるものであり、また軸受孔j8の長さをピストン185のストロークと略同等か或いはこれよりも大きくなしたことも本体部191とピストン軸186との間の隙間に起因した遊動傾斜変位を効果的に減少させるものであり、またピストン案内孔j1内でピストン185とピストン軸受部187との間となる隙間をグリース溜まり空間としてここにグリースを溜めておくことは、ピストン軸186の姿勢保持能力を減少させる虞のあるグリース溜まり部を軸受孔j7の内面途中に設けないでも本体部191とピストン軸186との間にグリースを絶えず供給してこれらの相対変位を円滑となすものであり、また流体通路j9を設けたことはピストン185が往復変位するときにピストン185の後側のピストン案内孔j1内の空気や漏洩水が流体通路j9を通じて出入りすることを可能となして、軸受孔j8とピストン軸186との隙間を通じた空気や漏洩水の出入りを不要となし、該隙間を可及的に小さくなす上で寄与するものであり、以上のことから、ピストン185及びピストン軸186の隙間は可及的に小さくなされるのであり、これによりピストン185の往復変位中における該隙間に起因したピストン軸186の遊動傾斜変位(こじれ変位)が効果的に抑制され、しかもピストン軸186は軸受孔j8内で円滑に摺動変位するのである。
【0110】
こうしてピストン185はピストン案内孔j1の中心線方向へ正確に案内されるようになり、ピストン185の後側の空気が圧力室k1内に流入したり或いは圧力室k1内の水がピストン185の後側に漏洩するような現象が効果的に阻止されるものとなり、各灌水ポンプ171は水タンクt内の水を的確に吸引し吐出するものとなる。
【0111】
ポンプ台174は支持部材406及び支持フレーム113に支持されてその位置を確実に保持される。また灌水ポンプ171の水吐出量を大小に調整するには、カム204に対する揺動アーム205の前後位置を変化させるのであり、具体的にはボルトa2、a2及び押しボルト182を操作して可動台板176bを固定台板176aに沿って前後変位させる。
【0112】
一対の水タンクt、tはシャーシに固定された載置台上に載せられる。図2に示すように、水タンクtの配置箇所は、ミッションケース104後端部の左方位置であって、灌水ポンプ171、171の更に左方位置であり、また一対の水タンクt、tは機体の前後方向において略中央部に位置されて機体安定性及び機動性を良好となされている。
【0113】
各灌水管172は図17及び図18に示すように、移植爪支持体160に固設されており、その一端部が移植爪支持体160の前方に延出されて、灌水ポンプ171の吐出側ホース接続部196aから延出されたホース173bの先端部を外挿され、他端が移植爪151の爪部151a、151a間に挿入されている。灌水ポンプ171、171の作動により、水タンクt、t内の水が灌水管172、172から供給されると、この水は移植爪151内の苗126に注がれるのであり、これにより植付直後の苗126への給水作業が不要となり、その活着性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の実施の一形態である野菜移植機の左側面図。
【図2】本発明の実施の一形態である野菜移植機の平面図。
【図3】野菜移植機のシャーシ前半部の要部平面図。
【図4】補強部材を示す要部平面図。
【図5】前輪支持軸を示す側面図。
【図6】後輪駆動軸を示す側面図。
【図7】苗供給部の平面図。
【図8】苗供給部の一部を示す平面図。
【図9】苗供給部の一部を示す正面図及び側面図。
【図10】駆動スプロケット中心部の断面図。
【図11】駆動スプロケット中心部の平面図。
【図12】移植爪周辺の平面図。
【図13】移植爪周辺の後面図。
【図14】移植爪周辺の側面図。
【図15】移植爪の側面図。
【図16】移植爪を上方変位させるスプリング等の後面図。
【図17】移植爪と灌水管の関係を示すもので一部を断面で示した側面図。
【図18】移植爪と灌水管の関係を示す平面図。
【図19】灌水ポンプ周辺の側面図。
【図20】灌水ポンプ周辺の平面図。
【図21】灌水ポンプの断面図。
【符号の説明】
【0115】
171 灌水往復ポンプ
184 シリンダ部
185 ピストン
186 ピストン軸
187 ピストン軸受部
192 グリース注入手段
j1 ピストン案内孔
j8 軸受孔
j9 流体通路
j91 開口
j101 開口
k グリース溜まり空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ部のピストン案内孔の一端を密封するピストン軸受部を備え、前記ピストン案内孔内のピストンから延出されたピストン軸がピストン軸受部の軸受孔に挿通される農用灌水往復ポンプにおいて、前記ピストン軸受部の軸受孔の長さを前記ピストンの長さと略同等か或いはこれよりも大きくなし、且つピストン軸受部の肉部に、外界側から前記ピストン案内孔内にグリースを注入するためのグリース注入手段、及び、外界側と前記ピストン案内孔の前記一端開口内とを連通させるための流体通路を形成したことを特徴とする農用灌水往復ポンプ。
【請求項2】
シリンダ部のピストン案内孔の一端を密封するピストン軸受部を備え、前記ピストン案内孔内のピストンから延出されたピストン軸がピストン軸受部の軸受孔に挿通される農用灌水往復ポンプにおいて、前記ピストン軸受部の軸受孔の長さを前記ピストンの往復ストロークと略同等か或いはこれよりも大きくなし、且つピストン軸受部の肉部に、外界側から前記ピストン案内孔内にグリースを注入するためのグリース注入手段、及び、外界側と前記ピストン案内孔の前記一端開口内とを連通させるための流体通路を形成したことを特徴とする農用灌水往復ポンプ。
【請求項3】
前記シリンダ部及び前記ピストンが樹脂材で形成され、また前記ピストン軸と前記ピストン軸受部とが異種の金属材料で形成されるほか、前記ピストン軸周囲を取り巻くピストン案内孔内にグリースが蓄えられることを特徴とする請求項1又は2記載の農用灌水往復ポンプ。
【請求項4】
前記ピストンが前記ピストン案内孔内の前記一端側の往復ストローク終点に位置したとき、前記ピストンと前記ピストン軸受部との間となる前記ピストン案内孔内に特定容積のグリース溜まり空間が形成されると共に、前記グリース注入手段の前記ピストン案内孔内に接した開口と、前記流体通路の前記ピストン案内孔内に接した開口とが前記ピストン軸を挟むように配置されていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の農用灌水往復ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−42651(P2006−42651A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226297(P2004−226297)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】