説明

送信装置、中継装置、受信装置、通信システム、送信方法、及び中継方法

【課題】カバーエリアの狭小化を回避する送信装置、中継装置、受信装置、通信システム、送信方法又は中継方法を提供する。
【解決手段】送信装置は、第1の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の送信アンテナと、前記第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の送信アンテナを備え、中継装置は、前記第1の偏波特性と同一の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の受信アンテナと、前記第2の偏波特性と同一の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の受信アンテナと、前記第1の偏波特性又は前記第2の偏波特性のいずれか一方と同一の偏波特性を有する送信アンテナを有する中継装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、中継装置、受信装置、通信システム、送信方法、及び中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において、データ信号を高速に伝送するために偏波(polarized)MIMO(Multiple−Input Multiple−Output;多入力多出力)伝送が提案されている。偏波(polarization)とは、電場が特定の方向にのみ振動する電波である。偏波MIMO伝送では、データ信号を偏波方向の異なるアンテナを複数個用いて送受信する。これにより、異なるデータ信号を乗せた搬送帯域信号は各々異なる方向に偏波する電波として送信されるため、送信の際に同一の周波数の電波を用いても相互にデータ信号が干渉しない。よって、同一の周波数の電波を用いて偏波MIMO伝送を行うことで、通信容量を増加させることができる。
【0003】
特許文献1には以下の無線通信方法が記載されている。送信側では、送信データを分割して第1の系列と第2の系列のデータを生成する。第1の系列と第2の系列のデータに基づいて、系列毎に無線周波数の送信信号を生成する。第1の系列の送信信号を右旋円偏波方式、第2の系列の送信信号を左旋円偏波方式の無線信号として送信する。受信側では、右旋円偏波方式と左旋円偏波方式の無線信号を受信し、得られた受信信号に基づいて第1の系列データと第2の系列データを合成して出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−254112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の無線通信方法では、偏波MIMO伝送に係る送信装置における総送信電力は、要求されるシステム仕様によって規定される。各送信アンテナに割り当てられる送信電力は、1個のアンテナを用いてデータ信号を送受信するSISO(Single−Input Single−Outout)伝送の場合よりも相対的に低下する。
このため、偏波MIMO伝送を行う送信装置からの受信信号を、一定の受信電力レベル以上で受信することができる領域(カバーエリア;coverage area)は、SISO伝送を行う送信装置よりも狭くなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、カバーエリアの狭小化を回避する送信装置、中継装置、受信装置、通信システム、送信方法又は中継方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、第1の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の送信アンテナと、前記第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の送信アンテナと、第1のパイロット信号を前記第1の送信アンテナに各々出力する第1の出力部と、前記第1のパイロット信号と直交する第2のパイロット信号を前記第2の送信アンテナに各々出力する第2の出力部を備えることを特徴とする送信装置である。
【0008】
(2)本発明の他の態様は、前記第1のパイロット信号と前記第2のパイロット信号は、互いに異なる搬送周波数又はシンボルに配置されていることを特徴とする(1)の送信装置である。
【0009】
(3)本発明の他の態様は、前記第1のパイロット信号が配置される搬送周波数及びシンボルには、前記第2のパイロット信号及び該第2のパイロット信号と同一のリソースブロックに属するデータ信号が、配置されないことを特徴とする(1)の送信装置である。
【0010】
(4)本発明の他の態様は、前記第2のパイロット信号は、前記第1のパイロット信号と直交する信号系列であることを特徴とする(1)の送信装置である。
【0011】
(5)本発明の他の態様は、第1の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の受信アンテナと、前記第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の受信アンテナと、前記第1の偏波特性又は前記第2の偏波特性のいずれか一方と同一の偏波特性を有する第1及び第2の送信アンテナとを備えることを特徴とする中継装置である。
【0012】
(6)本発明の他の態様は、前記送信アンテナは、当該送信アンテナとは異なる偏波特性を有する受信アンテナが受信した信号を送信することを特徴とする(5)の中継装置である。
【0013】
(7)本発明の他の態様は、第1の偏波特性を有するM(Mは1以上の整数)個の第1の受信アンテナと、前記第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有するN(Nは1以上の整数)個の第2の送信アンテナとを備え、前記第1の受信アンテナ及び前記第2の送信アンテナは、前記第1の偏波特性と同一の偏波特性を有するM個の第1の送信アンテナと、前記第2の偏波特性と同一の偏波特性を有するN個の第2の送信アンテナを備える送信装置が送信する信号と、前記第1の偏波特性と同一の偏波特性を有するM個の第1の受信アンテナと、前記第2の偏波特性と同一の偏波特性を有するN個の第2の受信アンテナと、前記第1の偏波特性と同一の偏波特性を有する少なくともM+N個の送信アンテナを備える中継装置が送信する信号を受信することを特徴とする受信装置である。
【0014】
(8)本発明の他の態様は、第1の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の送信アンテナと、前記第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の送信アンテナを備える送信装置と、前記第1の偏波特性と同一の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の受信アンテナと、前記第2の偏波特性と同一の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の受信アンテナと、前記第1の偏波特性又は前記第2の偏波特性のいずれか一方と同一の偏波特性を有する第1及び第2の送信アンテナを有する中継装置とを備えることを特徴とする通信システムである。
【0015】
(9)本発明の他の態様は、第1のパイロット信号を第1の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の送信アンテナから送信する過程と、第1のパイロット信号とは直交する第2のパイロット信号を第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の送信アンテナから送信する過程とを備えることを特徴とする送信方法である。
【0016】
(10)本発明の他の態様は、第1の受信信号を第1の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の受信アンテナから入力する過程と、第2の受信信号を前記第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の受信アンテナから入力する過程と、前記第1の受信信号及び前記第2の受信信号を、前記第1の偏波特性又は前記第2の偏波特性のいずれか一方と同一の偏波特性を有する第1及び第2の送信アンテナから各々送信する過程とを備えることを特徴とする中継方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カバーエリアの狭小化を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る通信システムの一例を示す概念図である。
【図2】本実施形態に係る送信装置100の構成を表す概略図である。
【図3】本実施形態に係るリソースマッピングの一例を示す図である。
【図4】本実施形態に係るリソースマッピングのその他の例を示す図である。
【図5】本実施形態に係るリソースマッピングのその他の例を示す図である。
【図6】本実施形態に係るリソースマッピングのその他の例を示す図である。
【図7】本実施形態に係るリソースマッピングのその他の例を示す図である。
【図8】本実施形態に係るリソースマッピングのその他の例を示す図である。
【図9】本実施形態に係るリソースマッピングのその他の例を示す図である。
【図10】本実施形態に係る中継装置の構成を示す概略図である。
【図11】本実施形態に係る受信装置の構成を示す概略図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る通信システムの概念図を表す。
【図13】本実施形態に係る受信装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る通信システム1の一例を示す概念図である。
通信システム1は、送信装置100、受信装置200及び中継装置300を含んで構成される。
【0020】
送信装置100は、送信データを符号化及び変調して送信信号を生成する。送信装置100は、生成した送信信号を電波に乗せて中継装置300に送信する。送信データは、例えば、通話に伴う音声信号、撮影した画像を表す静止画像又は動画像信号、文字メッセージ、等である。
送信装置100は、例えば、無線通信における基地局装置(特にマクロ基地局[macro base station]、大出力基地局ともいう、eNodeBなど)、無線LANアクセスポイント(wireless access point、無線ハブ[wireless hub]、親機ともいう)、放送における基地局装置、中継局装置(repeater)の一部である。
【0021】
送信装置100は、第1の偏波(polarization)特性を有する送信アンテナ101−1と、第1の偏波特性と偏波方向が直交する第2の偏波特性を有する送信アンテナ101−2を具備する。第1の偏波特性は、例えば、垂直偏波(vertical polarization)である。垂直偏波とは、電場の振動方向が水平面(例えば、地面)に対して垂直の電波である。第2の偏波特性は、例えば、水平偏波(horizontal polarization)である。水平偏波とは、電場の振動方向が水平面に対して並行な電波である。
ここで、偏波特性が垂直偏波(V)であるアンテナ(送信アンテナ、受信アンテナ共に)では、その素子の長手方向が水平面に対して垂直な方向(偏波方向)に延びるように配置されている。偏波特性が水平偏波(H)であるアンテナ(送信アンテナ、受信アンテナ共に)では、その素子の長手方向が水平面に対して水平な方向(偏波方向)に延びるように配置されている。
送信装置100は、生成した搬送波帯域の2つの送信信号を、各送信アンテナ101−1、101−2を用いて、中継装置300に同時に送信する。
【0022】
中継装置300は、送信装置100が送信した送信信号を受信し、受信した信号を受信装置200に送信する。
中継装置300は、例えば、無線通信における基地局装置(特にマイクロ基地局[micro base station]、ピコ基地局[pico base station]、小出力基地局ともいう、フェムト基地局[femto base station]、Home eNodeBなど)、リピータハブ(repeater hub、シェアードハブ[shared hub]、ともいう)、放送における中継局装置の一部、共同受信装置(community receiver、共聴施設ともいう)である。
【0023】
中継装置300は、第1の偏波特性で送信された搬送波帯域の信号を受信する受信アンテナ301−1及び第2の偏波特性で送信された搬送波帯域の信号を受信する受信アンテナ301−2を備える。また、第1の偏波特性で搬送波帯域の信号を送信する送信アンテナ302−1及び送信アンテナ302−2を備える。
中継装置300は、受信アンテナ301−1が受信した信号を増幅して、増幅した信号を、送信アンテナ302−1を用いて、受信装置200に送信する。中継装置300は、受信アンテナ301−2が受信した信号を増幅して、増幅した信号を、送信アンテナ302−2を用いて、受信装置200に送信する。
送信アンテナ302−1及び送信アンテナ302−2は第1の偏波特性を有する送信アンテナである。
【0024】
受信装置200は、中継装置300から搬送波帯域の信号を受信し、信号検出(例えば、MIMO信号推定、チャネル推定)、復調、復号(以下、信号検出等と総称する)を行い、送信データを検出する。
受信装置200は、例えば、無線通信における受信端末装置(携帯電話機、携帯情報端末装置など)、放送における受信装置(テレビジョン受信機、ラジオ受信機)である。
【0025】
受信装置200は、第1の偏波特性で送信された搬送波帯域の信号を受信する受信アンテナ201−1及び201−2を備える。
受信アンテナ201−1は、中継装置300の送信アンテナ302−1及び302−2から各々送信された搬送波帯域の信号を受信する。受信アンテナ201−2は、中継装置300の送信アンテナ302−1及び302−2から送信された搬送波帯域の信号を受信する。
なお、上述では、送信アンテナ302−1、送信アンテナ302−2、受信アンテナ201−1及び受信アンテナ201−2が第1の偏波特性を有するアンテナである場合を示しているが、これらのアンテナが同一の偏波特性を有していれば、これに限らない。
【0026】
本実施形態では、OFDM(orthogonal frequency division multiplexing;直交周波数分割多重)方式を用いてデータの伝送を行う例について説明する。本実施形態ではこれに限らず、その他の伝送方式、例えば、狭帯域変調、CDMA(code division multiple access;符号分割多元アクセス)、SC−FDMA(single carrier−frequency division multiple access;単一キャリア周波数分割多元アクセス)、DFT−s−OFDM(discrete Fourier transform−spread−OFDM;離散フーリエ変換拡散OFDM)等のシングルキャリア伝送方式や、MC−CDMA(multiple carrier−code division multiple access;多重キャリア符号分割多重アクセス)等のマルチキャリア伝送方式を用いてもよい。
【0027】
次に、本実施形態に係る送信装置100の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る送信装置100の構成を表す概略図である。
送信装置100は、送信アンテナ101−1、101−2、符号化部103、変調部104、リソースマッピング部105、IDFT部106−1、106−2、GI挿入部107−1、107−2、送信部108−1、108−2及び参照信号生成部109を含んで構成される。図2において、送信装置100は2個の送信アンテナ101−1、101−2を備えるが、本実施形態ではこれには限られない。送信装置100はM個(Mは3またはそれより大きな整数)の送信アンテナ101−1〜101−Mを備えてもよい。その場合、送信装置100は、アンテナの数であるM個のIDFT部106−1〜106−M、GI挿入部107−1〜107−M及び送信部108−1〜108−Mを、送信アンテナ101−1〜101−Mに各々対応して備える。
【0028】
符号化部103は、送信データを入力され、入力された送信データに対して誤り訂正符号化を行って符号化ビット系列を変調部104に出力する。
符号化部103が誤り訂正符号化を行う際に用いる符号化方式は、例えば、ターボ符号化(turbo coding)、畳み込み符号化(convolutional coding)、低密度パリティ検査符号化(low density parity check coding;LDPC)、リードソロモン符号化(Reed−Solomon coding;RS Coding)である。
【0029】
符号化部103は、符号化ビット系列の符号化率(coding rate)をデータ伝送率に対応する符号化率に合わせるために、符号化ビット系列に対してレートマッチング処理を行って出力してもよい。レートマッチング処理は、例えば、パンクチャ(puncture)処理、反復(レペティション、repetition)処理、パディング(padding)処理、又はこれらのうちの組み合わせである。パンクチャ処理とは、一部のデータを削除する処理である。反復処理とは、全部又は一部のデータを2回以上反復して直列につなぎ合わせる処理である。パディング処理とは、データの一部に他のデータ(例えば、ゼロ値)を挿入する処理である。
【0030】
符号化部103は、符号化ビット系列を並び替えてインターリーブし、インターリーブした符号化ビット系列を出力してもよい。
符号化部103は、複数の符号化方式を用いて各々符号化ビット系列(例えば、畳み込み符号化とリードソロモン符号化を用いた場合、畳み込み符号とリードソロモン符号)を生成し、異なる符号化方式を用いて生成した符号化ビット系列を連接して出力してもよい。
【0031】
変調部104は、符号化部103から入力された符号化ビット系列を変調して変調シンボルを生成し、生成した変調シンボルをリソースマッピング部105に出力する。
変調部104が行う変調処理は、例えば、BPSK(binary phase shift keying;2相位相変調)、QPSK(quadrature phase shift keying;4相位相変調)、M−QAM(M−quadrature amplitude modulation;M値直交振幅変調、例えば、M=16、64、256、1024、4096)などがある。
なお、変調部104は、生成した変調シンボルを並び替えてインターリーブし、インターリーブした変調シンボルをリソースマッピング部105に出力してもよい。
【0032】
参照信号生成部109は、参照信号(パイロット信号)を生成し、生成した参照信号をリソースマッピング部105に出力する。参照信号は、例えば、送信装置100の各送信アンテナから受信装置200もしくは中継装置300の各受信アンテナまでの伝搬特性を表す伝達関数を推定するために用いる信号である。
【0033】
リソースマッピング部105は、変調部104から入力された変調シンボル及び参照信号生成部109から入力された参照信号(パイロット信号)を構成するシンボルを、予め設定されたサブキャリア(周波数)及びスロット(時刻)に割り当てて周波数領域信号を生成する。リソースマッピング部105は、上述の割り当てを送信装置100に入力される送信データを送信するストリーム毎に行う。ここでは、リソースマッピングとは、シンボルを割り当てる処理、シンボルをどのサブキャリア及びシンボルに割り当てるかを表す配置のいずれも指す。
リソースマッピング部105は、生成した周波数領域信号を、そのストリームに対応するアンテナに係るIDFT部106−1、106−2又は両者に出力する。ストリームとは、送信元(例えば、送信装置100)から送信先(例えば、中継装置300、受信装置200)への信号の流れの単位である。
【0034】
IDFT部106−1、106−2は、各々リソースマッピング部105から入力された周波数領域信号に対して逆離散フーリエ変換(inverse discrete Fourier Transform;IDFT)して時間領域信号に変換する。IDFT部106−1、106−2は、変換した時間領域信号を各々GI挿入部107−1、107−2に出力する。
IDFT部106−1、106−2は、周波数領域信号を時間領域信号に変換できれば、IDFTの代わりに、他の処理方法(例えば、逆高速フーリエ変換[IFFT、inverse fast Fourier transform])を用いてもよい。
【0035】
GI挿入部107−1、107−2は、IDFT部106−1、106−2から入力された時間領域信号(有効シンボルと呼ぶ)にGI(guard interval;ガードインターバル、ガード区間ともいう)を付加してOFDMシンボル列を生成する。GIとは、前後の時間のOFDMシンボルが互いに干渉しないことを目的として付加する区間である。この区間の幅をGI長と呼ぶ。例えば、GI挿入部107−1、107−2は、有効シンボルの後半の一部の区間の複写(コピー)をGIとして、有効シンボルに前置する。従って、GIが前置された有効シンボルがOFDMシンボル列となる。
【0036】
GI挿入部107−1、107−2は、生成したOFDMシンボル列を各々送信部108−1、108−2に出力する。
GI挿入部107−n(nは、アンテナの番号、図2の例では1又は2)が送信部108−nに出力するOFDMシンボル列s(t)は式(1)で表される。
【0037】
【数1】

【0038】
式(1)において、t(0≦t<T)は、1つのOFDMシンボルにおける時間領域信号のインデックスを示す。Nは、送信に用いられるサブキャリアの数である。Tは、OFDMシンボル長、即ち一度に処理される1フレームの時間である。TはDFT(discrete Fourier transform、離散フーリエ変換)区間長、即ちIDFTが行われる区間(受信側では、DFTが行われる区間)に係る時間である。Tは、GI長、即ちGIに係る時間である。よって、T=T+Tという関係がある。Sk,nは、GI挿入部107−nの第kサブキャリアに割り当てられた変調シンボル又はパイロット信号のシンボルを示す。これらのシンボルは、上述の周波数領域信号の要素となる信号である。Δfは、サブキャリア間隔、即ち、隣接するサブキャリア間の周波数間隔である。
【0039】
送信部108−1、108−2、は、GI挿入部107−1、107−2から各々入力されたOFDMシンボル列を、D/A(digital−to−analog;ディジタル・アナログ)変換してアナログ信号を生成する。送信部108−1、108−2は、生成したアナログ信号に対してフィルタリング処理により帯域制限して帯域制限信号を生成する。送信部108−1、108―2は、生成した帯域制限信号を無線周波数帯域にアップコンバートして搬送帯域(carrier band、伝送帯域ともいう)信号を生成し、生成した搬送帯域信号を各々送信アンテナ101−1、101−2に出力する。
【0040】
送信アンテナ101−1及び101−2は互いに異なる偏波特性を有する。図2に示す例では、送信アンテナ101−1の偏波特性は垂直偏波であり、送信アンテナ101−2の偏波特性は水平偏波である。
送信アンテナ101−1は、送信部108−1から入力された搬送帯域信号を垂直偏波(V)で偏波した電波で中継装置300に送信する。
送信アンテナ101−2は、送信部108−2から入力された搬送帯域信号を水平偏波(H)で偏波した電波で中継装置300に送信する。
【0041】
次に、リソースマッピング部105が行うリソースマッピングの一例について説明する。
図3は、本実施形態に係るリソースマッピングの一例を示す図である。
図3において、各列はサブキャリアを示し、横軸に併記されている0、1、…27…等の数字はサブキャリア番号を示す。各行はOFDMシンボルを示し、縦軸に併記されている0、1…8等の数字は、シンボル番号を示す。行及び列毎の区分は、信号を配置する最小単位であるリソースエレメントを示す。
図3において、右下がりの斜線で塗りつぶした部分は、パイロット信号が割り当てられるリソースエレメントを示す。白抜きの部分は、変調シンボルが割り当てられるリソースエレメントである。
【0042】
図3に示す例では、リソースマッピング部105は、サブキャリア方向に対して12個のサブキャリアにつき1個のサブキャリアに対してパイロット信号を割り当てる。また、リソースマッピング部105がパイロット信号を割り当てる、サブキャリア番号の初期値(最小値)は、シンボル番号が1増加するに従い3増加し、11よりも大きくなると、12減少するようにシフトする。
図3において、パイロット信号が割り当てられるリソースエレメントは、シンボル番号0についてサブキャリア番号0、12、24、シンボル番号1について3、15、27、シンボル番号2について6、18、シンボル番号3について9、21、シンボル番号4について、0、12、24、シンボル番号5について3、15、27、シンボル番号6について6、18、シンボル番号7について9、21、シンボル番号8について0、12、24である。
【0043】
図4は、本実施形態に係るリソースマッピングのその他の例を示す図である。
図4に示す例は、リソースマッピング部105がIDFT部106−1に出力する周波数領域信号のリソースマッピングの一例を示す。図4において、リソースマッピング部105がパイロット信号を割り当てるリソースエレメントは偶数のシンボル番号に限られ、奇数のシンボル番号にはない。図4において、×印の部分は、変調シンボル及びパイロット信号ともに割り当てないリソースエレメントを示す。信号を割り当てないリソースエレメントは、サブキャリア方向に対して12個のサブキャリアにつき1個のサブキャリアであって、奇数のシンボル番号に配置される。その他の点は、図3に示す例と同様である。
図4において、パイロット信号が割り当てられるリソースエレメントは、シンボル番号0についてサブキャリア番号0、12、24、シンボル番号2について6、18、シンボル番号4について、0、12、24、シンボル番号6について6、18、シンボル番号8について0、12、24である。
図4において、変調シンボルもパイロット信号も割り当てられないリソースエレメントは、シンボル番号1について3、15、27、シンボル番号3について9、21、シンボル番号5について3、15、27、シンボル番号7について9、21である。
【0044】
図5は、本実施形態に係るリソースマッピングのその他の例を示す図である。
図5に示す例は、リソースマッピング部105がIDFT部106−2に出力する周波数領域信号のリソースマッピングの一例を示す。図5において、リソースマッピング部105がパイロット信号を割り当てるリソースエレメントは奇数のシンボル番号に限られ、偶数のシンボル番号にはない。図5において、×印の部分は、変調シンボル及びパイロット信号ともに割り当てられないリソースエレメントを示す。信号を割り当てないリソースエレメントも、サブキャリア方向に対して12個のサブキャリアにつき1個のサブキャリアであって、偶数のシンボル番号に割り当てる。その他の点は、図3に示す例と同様である。
図5において、パイロット信号が割り当てられるリソースエレメントは、シンボル番号1について3、15、27、シンボル番号3について9、21、シンボル番号5について3、15、27、シンボル番号7について9、21である。
図5において、変調シンボルもパイロット信号も割り当てられないリソースエレメントは、シンボル番号0についてサブキャリア番号0、12、24、シンボル番号2について6、18、シンボル番号4について、0、12、24、シンボル番号6について6、18、シンボル番号8について0、12、24である。
【0045】
つまり、図4及び図5に示す例は、リソースマッピング部105は、搬送帯域OFDM信号を出力するアンテナによって互いに異なるサブキャリア番号及びシンボル番号のリソースエレメントにパイロット信号を割り当てることを示す。これは、アンテナ毎に制御信号が互いに直交することを意味する。
【0046】
次に、リソースマッピング部105が行うリソースマッピングの更に他の例について説明する。
図6は、本実施形態に係るリソースマッピングのその他の例を示す図である。
図6に示す例は、リソースマッピング部105がIDFT部106−1に出力する周波数領域信号のリソースマッピングの一例を示す。
図6において、各列はサブキャリアを示し、横軸に併記されている0、1、…、27、…等の数字はサブキャリア番号を示す。各行はOFDMシンボルを示し、縦軸に併記されている0、1、…、8等の数字は、シンボル番号を示す。行及び列毎の区分は、信号を配置する最小単位であるリソースエレメントを示す。
図6において、右下がりの斜線で塗りつぶした部分は、パイロット信号が割り当てられるリソースエレメントである。白抜きの部分は、変調シンボルが割り当てられるリソースエレメントである。×印の部分は、変調シンボル及びパイロット信号ともに割り当てられないリソースエレメントを示す。
【0047】
図6に示す例では、リソースマッピング部105は、サブキャリア方向に対して12個のサブキャリアにつき1個のサブキャリアに対してパイロット信号を割り当てる。また、リソースマッピング部105がパイロット信号を割り当てる、サブキャリア番号の初期値(最小値)は、シンボル番号が1増加するに従い3増加し、11よりも大きくなると、12減少するようにシフトする。
図6において、パイロット信号が割り当てられるリソースエレメントは、シンボル番号0についてサブキャリア番号0、12、24、シンボル番号1について3、15、27、シンボル番号2について6、18、シンボル番号3について9、21、シンボル番号4について、0、12、24、シンボル番号5について3、15、27、シンボル番号6について6、18、シンボル番号7について9、21、シンボル番号8について0、12、24である。
【0048】
また、図6に示す例では、変調シンボル及びパイロット信号ともに割り当てられないリソースエレメントも、サブキャリア方向に対して12個のサブキャリアにつき1個のサブキャリアに対して割り当てられる。このようなリソースエレメントのサブキャリア番号の初期値も、シンボル番号が1増加するに従い3増加し、11よりも大きくなると、12減少するようにシフトする。但し、この信号が割り当てられないリソースエレメントは、パイロット信号が割り当てられるリソースエレメントの中間に割り当てられる。例えば、シンボル番号0について、サブキャリア番号は6であり、パイロット信号が割り当てられるリソースエレメントサブキャリア番号0、12の中間である。
図6において、変調シンボルもパイロット信号も割り当てられないリソースエレメントは、シンボル番号0についてサブキャリア番号6、18、シンボル番号1について9、21、シンボル番号2について0、12、24、シンボル番号3について3、15、27、シンボル番号4について、6、18、シンボル番号5について9、21、シンボル番号6について0、12、24、シンボル番号7について3、15、27、シンボル番号8について6、18である。
【0049】
図7は、本実施形態に係るリソースマッピングのその他の例を示す図である。
図7に示す例は、リソースマッピング部105がIDFT部106−2に出力する周波数領域信号のリソースマッピングの一例を示す。
図7に示す例でも、リソースマッピング部105は、サブキャリア方向に対して12個のサブキャリアにつき1個のサブキャリアに対してパイロット信号を割り当てる。また、リソースマッピング部105がパイロット信号を割り当てる、サブキャリア番号の初期値(最小値)は、シンボル番号が1増加するに従い3増加し、11よりも大きくなると、12減少するようにシフトする。なお、本実施例では、パイロット信号が12個のサブキャリアにつき1個のサブキャリアに対してパイロット信号を割り当てている。但し、リソースマッピング部105がパイロット信号を割り当てるリソースエレメントのサブキャリア番号は、図6に示す例とは異なる。
図7において、パイロット信号が割り当てられるリソースエレメントは、シンボル番号0についてサブキャリア番号6、18、シンボル番号1について9、21、シンボル番号2について0、12、24、シンボル番号3について3、15、27、シンボル番号4について、6、18、シンボル番号5について9、21、シンボル番号6について0、12、24、シンボル番号7について3、15、27、シンボル番号8について6、18である。
この配置は、図6において変調シンボルもパイロット信号も割当られないリソースエレメントの配置と同一である。
【0050】
また、図7に示す例では、変調シンボル及びパイロット信号ともに割り当てられないリソースエレメントも、サブキャリア方向に対して12個のサブキャリアにつき1個のサブキャリアに対して割り当てられる。このようなリソースエレメントのサブキャリア番号の初期値も、シンボル番号が1増加するに従い3増加し、11よりも大きくなると、12減少するようにシフトする。このようなリソースエレメントのサブキャリア番号も、図6に示す例とは異なる。
例えば、図7において、変調シンボルも制御信号も割り当てられないリソースエレメントは、シンボル番号0についてサブキャリア番号0、12、24、シンボル番号1について3、15、27、シンボル番号2について6、18、シンボル番号3について9、21、シンボル番号4について、0、12、24、シンボル番号5について3、15、27、シンボル番号6について6、18、シンボル番号7について9、21、シンボル番号8について0、12、24である。
この配置は、図6においてパイロット信号が割り当てられるリソースエレメントの配置と同一である。
【0051】
つまり、図6及び図7に示す例は、リソースマッピング部105は、搬送帯域OFDM信号を出力するアンテナによって互いに異なるサブキャリア番号及びシンボル番号のリソースエレメントにパイロット信号を割り当てることを示す。これは、アンテナ毎にパイロット信号が互いに直交することを意味する。
【0052】
次に、リソースマッピング部105が行うリソースマッピングの更に他の例について説明する。
図8は、本実施形態に係るリソースマッピングのその他の例を示す図である。
図8に示す例は、リソースマッピング部105がIDFT部106−1に出力する周波数領域信号のリソースマッピングの一例を示す。
図8において、各列はサブキャリアを示し、横軸に併記されている0、1、…27…等の数字はサブキャリア番号を示す。各行はOFDMシンボルを示し、縦軸に併記されている0、1…8等の数字は、シンボル番号を示す。行及び列毎の区分は、信号を配置する最小単位であるリソースエレメントを示す。
図8において、右下がりの斜線で塗りつぶした部分は、第1のパイロット信号が割り当てられるリソースエレメントである。白抜きの部分は、変調シンボルが割り当てられるリソースエレメントである。
【0053】
図8に示す例では、リソースマッピング部105は、サブキャリア方向に対して12個のサブキャリアにつき1個のサブキャリアに対して第1のパイロット信号を割り当てる。また、リソースマッピング部105が第1のパイロット信号を割り当てる、サブキャリア番号の初期値(最小値)は、シンボル番号が1増加するに従い3増加し、11よりも大きくなると、12減少するようにシフトする。例えば、第1のパイロット信号が割り当てられるリソースエレメントは、シンボル番号0についてサブキャリア番号0である。
図8において、第1のパイロット信号が割り当てられるリソースエレメントは、シンボル番号0についてサブキャリア番号0、12、24、シンボル番号1について3、15、27、シンボル番号2について6、18、シンボル番号3について9、21、シンボル番号4について、0、12、24、シンボル番号5について3、15、27、シンボル番号6について6、18、シンボル番号7について9、21、シンボル番号8について0、12、24である。
【0054】
図9は、本実施形態に係るリソースマッピングのその他の例を示す図である。
図9に示す例は、リソースマッピング部105がIDFT部106−2に出力する周波数領域信号のリソースマッピングの一例を示す。
図9において、網掛けで塗りつぶした部分は、第2のパイロット信号が割り当てられるリソースエレメントである。第2のパイロット信号とは、第1のパイロット信号とは異なる信号系列からなり、互いに直交する信号系列、例えばアダマール符号(Hadamard code)、M系列(m−sequence)、Zadoff−Chu系列である。
【0055】
図9に示す例では、リソースマッピング部105は、サブキャリア方向に対して12個のサブキャリアにつき1個のサブキャリアに対して第2のパイロット信号を割り当てる。また、リソースマッピング部105が第2のパイロット信号を割り当てるリソースエレメントは、図8に示す第1のパイロット信号を割り当てられるリソースエレメントと同一である。
図9において、第2のパイロット信号が割り当てられるリソースエレメントは、シンボル番号0についてサブキャリア番号0、12、24、シンボル番号1について3、15、27、シンボル番号2について6、18、シンボル番号3について9、21、シンボル番号4について、0、12、24、シンボル番号5について3、15、27、シンボル番号6について6、18、シンボル番号7について9、21、シンボル番号8について0、12、24である。
【0056】
つまり、図8及び図9に示す例は、リソースマッピング部105は、搬送帯域OFDM信号を出力するアンテナによって同一のサブキャリア番号及びシンボル番号のリソースエレメントに互いに直交する信号系列からなるパイロット信号を割り当てることを示す。これは、アンテナ毎にパイロット信号が互いに直交することを意味する。
【0057】
なお、上述の説明では、リソースマッピング部105が、1つのシンボル番号について、12個のサブキャリアにつき1個のサブキャリアに対してパイロット信号を割り当てる例を示したが、本実施形態ではこれには限られない。パイロット信号のサブキャリア数の全サブキャリア数の比は1/12とは異なっていてもよく、例えば、リソースマッピング部125は、送信ストリーム数が多いほど、パイロット信号を割り当てるサブキャリア数を増加させるようにしてもよい。また、シンボル番号が1増加する際のサブキャリア番号の増加量は、サブキャリア番号の増加量は3でなくとも、もしくは一定の整数でなくともよく、シンボル番号毎に異なるサブキャリア番号となるように分散していればよい。
【0058】
従って、本実施形態によれば、アンテナ毎に送信する信号の偏波方向が異なり、かつリソースマッピング部105は、パイロット信号のサブキャリア(周波数)及びシンボル(時刻)の配置が異なる。受信装置200に対し、1つのアンテナから送信された信号を、他のアンテナから送信された信号の影響を受けずに伝達関数の推定を可能にする。これにより、受信装置200に対し、データ信号に基づく受信信号を高品質で受信することを可能にする。
【0059】
次に、本実施形態に係る中継装置300の構成について説明する。
図10は、本実施形態に係る中継装置300の構成を示す概略図である。
中継装置300は、受信アンテナ301−1、301−2、送信アンテナ302−1、302−2、帯域制限部310−1、310−2、及び増幅部311−1、311−2を含んで構成される。
【0060】
受信アンテナ301−1と301−2は、互いに異なる偏波特性を有するアンテナである。図10に示す例では、受信アンテナ301−1の偏波特性は垂直偏波(V)であり、受信アンテナ301−2の偏波特性は水平偏波(H)である。
受信アンテナ301−1は、送信装置100の送信アンテナ101−1から垂直偏波(V)で偏波した搬送帯域信号を受信し、受信した搬送帯域信号を帯域制限部310−2に出力する。受信アンテナ301−1は、送信装置100の送信アンテナ101−2から水平偏波(H)で偏波した搬送帯域信号を受信する。但し、その受信信号値は、垂直偏波(V)で偏波した搬送帯域信号と比較して極めて低い。
受信アンテナ301−2は、送信装置100の送信アンテナ101−2から水平偏波(H)で偏波した搬送帯域信号を受信し、受信した搬送帯域信号を帯域制限部310−2に出力する。受信アンテナ301−2は、送信装置100の送信アンテナ101−1から、垂直偏波(V)で偏波した搬送帯域信号を受信する。但し、その受信信号値は、水平偏波(H)で偏波した搬送帯域信号と比較して極めて低い。
【0061】
帯域制限部310−1、310−2は、受信アンテナ301−1、301−2から入力された搬送帯域信号に対してフィルタリング処理によって各々帯域制限を行う。これにより、帯域制限部310−1、310−2は、搬送帯域信号から不要成分(spurious;スプリアスとも呼ぶ)を除去する。帯域制限部310−1、310−2は、帯域制限を行った帯域制限信号を増幅部311−1、311−2に出力する。
なお、帯域制限部310−1、310−2は、受信アンテナ301−1、301−2から入力された搬送帯域信号に対して、更に送信アンテナ302−1、302−2が送信した信号に基づく成分(回り込み信号)を除去し、その成分を除去した信号を増幅部311−1、311−2に出力してもよい。例えば、帯域制限部310−1、310−2の通過帯域は、送信アンテナ302−1、302−2が送信する信号の搬送帯域と異なっていてもよい。
【0062】
増幅部311−1、311−2は、帯域制限部310−1、310−2から入力された帯域制限信号を各々予め設定された増幅率で増幅し、各々増幅した信号を送信信号として送信アンテナ302−1、302−2に出力する。
送信アンテナ302−1、302−2の偏波特性は、図10の例では同一(垂直偏波(V))である。
送信アンテナ302−1、302−2は、増幅部311−1、311−2から入力された送信信号を、各々垂直偏波(V)で偏波した電波で受信装置200に送信する。
【0063】
次に、本実施形態に係る受信装置200について説明する。
図11は、本実施形態に係る受信装置200の構成を示す概略図である。
受信装置200は、受信アンテナ201−1、201−2、受信部202−1、202−2、GI除去部203−1、203−2、DFT部204−1、204−2、伝搬路推定部205、MIMO分離部206、復調部207及び復号部208を含んで構成される。
【0064】
受信アンテナ201−1、201−2の偏波特性は、互いに同一(図11の例では、垂直偏波(V))である。
受信アンテナ201−1は、中継装置300の送信アンテナ302−1、302−2が各々垂直偏波(V)で送信した送信信号を伝搬帯域信号として受信し、受信した伝搬帯域信号を受信部202−1に出力する。
受信アンテナ201−2は、中継装置300の送信アンテナ302−1、302−2が各々垂直偏波(V)で送信した送信信号を伝搬帯域信号として受信し、受信した伝搬帯域信号を受信部202−2に出力する。
【0065】
受信部202−1、202−2は、受信アンテナ201−1、201−2から入力された伝搬帯域信号を各々ダウンコンバートし、ダウンコンバートした信号を更にフィルタリング処理を各々行う。これにより受信部202−1、202−2は、ダウンコンバートした信号から不要成分を除去する。
受信部201−1、201−2は、フィルタリング処理を行った信号(アナログ信号)をA/D(analog−to−digital;アナログ/ディジタル)変換してディジタル信号(OFDMシンボル列に相当)に変換し、変換したディジタル信号をGI除去部203−1、203−2に各々出力する。受信部201−1、201−2は、変換したディジタル信号をともに伝搬路推定部205に出力する。
【0066】
伝搬路推定部205は、受信部202−1、202−2から入力されたディジタル信号に含まれる制御信号に相当する部分の信号を用いて、送信装置100の送信アンテナ101−1又は101−2から、受信装置200の受信アンテナ201−1又は201−2までの伝搬路情報を推定する。そのために、伝搬路推定部205は、送信アンテナ101−1、101−2が送信する制御信号を記憶した記憶部を備え、その記憶部から読み出した制御信号を、伝搬路情報の推定に用いる。伝搬路情報は、例えば、伝達関数、インパルス応答である。
伝搬路推定部205は、推定した伝搬路情報をMIMO分離部206に出力する。
【0067】
GI除去部203−1、203−2は、受信部201−1、201−2から入力されたディジタル信号からGIに相当する区間の信号を各々除去し、GIに相当する区間の信号が除去された信号(GI除去信号、有効シンボル列に相当)を各々DFT部204−1、204−2に出力する。
DFT部204−1、204−2は、GI除去部203−1、203−2から入力されたGI除去信号(時間領域信号)に対して各々DFTを行って周波数領域信号に変換し、変換した周波数領域信号を各々MIMO分離部206に出力する。
DFT部204−1、204−2は、時間領域信号を周波数領域信号に変換できれば、DFTの代わりに、他の処理方法(例えば、高速フーリエ変換[FFT、fast Fourier transform])を用いてもよい。
【0068】
MIMO分離部206は、伝搬路推定部205から入力された伝搬路情報に基づいて、DFT部204−1、204−2から各々入力された周波数領域信号に対してMIMO分離処理を行って変調シンボルに相当する信号を生成する。MIMO分離部206は、生成した変調シンボルに相当する信号を復調部207に出力する。
MIMO分離処理は、例えば、ZF(zero forcing;ゼロフォーシング)法、MMSE(minimum mean square error;最小平均二乗誤差)法のような線形処理、MLD(maximum likelihood detection;最尤検出)法、PIC(parallel interference cancellation;並列干渉除去)法、SIC(successive interference cancellation;逐次干渉除去)法のような非線形処理である。
【0069】
具体的には、MIMO分離部206は、ZF法を用いる場合、伝搬路情報として伝達関数行列Hの擬似逆行列を重み行列Wとして算出する(式(2)参照)。
【0070】
【数2】

【0071】
式(2)において、Hは、行列Hの複素共役転置行列を表す。(HH)−1は、行列HHの逆行列を表す。行列Hは、送信装置100の送信アンテナ101−1又は101−2から受信装置200の受信アンテナ201−1又は201−2までの伝達関数を要素とする行列(M行L列、Mは送信装置100が備える送信アンテナの数(図2の例では、2)、Lは受信装置200が備える受信アンテナの数(図11の例では2))である。
【0072】
MIMO分離部206は、MMSE法を用いる場合、伝搬路情報として伝達関数行列Hの平方行列に雑音成分を加えた行列の逆行列に伝達関数行列Hを乗じた行列を重み行列Wとして算出する(式(3)参照)。
【0073】
【数3】

【0074】
式(3)において、Iは単位行列(L行L列)を示す。σは、雑音電力を表す。
MIMO分離部206は、DFT部204−1、204−2から入力される周波数領域信号を要素とする受信信号ベクトルR(L次元、図11の例では2次元)に算出した重み行列を乗じて、信号ベクトルS’を算出する。信号ベクトルS’は、上述の変調シンボルに相当する信号を要素とするM次元のベクトルである。このようにして、受信アンテナ201−1、201−2間で受信した信号が同期し、同相の信号成分が強調される。
【0075】
復調部207は、MIMO分離部206から入力された変調シンボルに相当する信号に対して復調処理(demodulate)を行い、符号化データ列を生成し、生成した符号化データ列を復号部208に出力する。
この符号化データ列は、復調部207が硬判定(hard decision)を行って得られた値(1又は0)の系列(符号化ビット列)、復調部207が軟判定を行って得られた値(LLR[logarithm of likelihood ratio;対数尤度比])の系列(符号化LLR列)、いずれでもよい。
ここで、復調部207は、入力された信号のサンプル毎にビット1をとる確率とビット0をとる確率の比の対数値であるLLRを算出する。復調部207は、算出したLLRの系列を、符号化LLR列として復号部208に出力してもよい。
復調部207は、更に、算出したLLRが予め設定した閾値(0よりも大きく、かつ1よりも小さい実数)か判断してもよい。復調部207は、LLRが予め設定した閾値よりも大きい場合1と定め、LLRが予め設定した閾値と等しいか、又は小さい場合、0と定めた値の系列を、符号化ビット列として復号部208に出力してもよい。
【0076】
復号部208は、復調部207から入力された符号化データ列に対して誤り訂正復号処理を行い、送信データを復号する。
復号部208が行う誤り訂正復号処理は、送信装置100の符号化部103が行った誤り訂正符号化処理に対応する方式である。例えば、符号化部103が畳み込み符号化を行った場合、復号部208は、逆畳み込み(deconvolutional)復号を行う。
符号化部103が、符号化ビット系列を並び替えてインターリーブした場合、復号部208は、入力された符号化データ列を符号化部103が符号化した直後の符号化ビット系列と同一、つまり元の並び順になるように並び替える(デインターリーブ、de−interleave)。符号化部103は、このデインターリーブを行った符号化データ列に対して誤り訂正復号処理を行う。
【0077】
次に、中継装置300が送信する送信信号(搬送帯域信号)の受信装置200における受信電力について従来技術と比較して説明する。
従来技術では、送信装置1000が備える2本の送信アンテナ1001−1、1001−2から各々、受信装置2000が備える2本の受信アンテナ2001−1、2001−2へ信号S、Sをそれぞれ送信することを仮定する。また、送信装置1000の総送信電力がP、送信アンテナ1001−1、1001−2から受信アンテナ2001−1、2001−2への平均伝搬路損失をL、送信アンテナ1001−1、1001−2の送信電力は等しいとする。
このとき、送信装置1000の送信アンテナ1001−1は、信号Sを送信電力P/2で送信し、送信アンテナ1002−1は、信号Sを送信電力P/2で送信する。従って、受信装置2000の受信アンテナ2001−1、2001−2において、送信アンテナ1000−1、1001−2からの信号の平均受信電力は、各々P・L/2、P・L/2となる。
【0078】
本実施形態に係る中継装置300の総送信電力がP、中継装置300の送信アンテナ302−1、302−1から受信装置200の受信アンテナ201−1、201−2への平均伝搬路損失をL、送信アンテナ302−1、302−2の送信電力は等しいとする。
このとき、中継装置300の送信アンテナ302−1は、信号Sを送信電力P/2で送信し、信号Sを送信電力P/2で送信する。送信アンテナ302−2は、信号Sを送信電力P/2で送信し、信号Sを送信電力P/2で送信する。
従って、受信装置200の受信アンテナ201−1は、中継装置300の送信アンテナ302−1が送信した信号Sを受信電力P・L/2で受信し、送信アンテナ302−2が送信した信号Sを受信電力P・L/2で受信する。
受信装置200の受信アンテナ201−2は、中継装置300の送信アンテナ302−1が送信した信号Sを受信電力P・L/2で受信し、送信アンテナ302−2が送信した信号Sを受信電力P・L/2で受信する。
よって、受信装置200は、受信信号Sについて平均受信電力P・Lで受信し、受信信号Sについて平均受信電力P・Lで受信する。
【0079】
上述のように、従来技術では、送信装置1000は、各々異なる偏波特性で信号を受信装置2000に送信し、受信装置2000は各々対応する偏波特性で信号を受信していた。
そのため、受信装置2000における受信電力は、送信装置1000が各送信アンテナ2001−1、2001−2に割り当てた送信電力に制限される問題が生じていた。
【0080】
これに対し、本実施形態では、送信装置100が各々異なる偏波特性で信号を中継装置300に送信し、中継装置300が各々異なる偏波特性で信号を受信し、受信した信号を何れか一方の偏波特性で受信装置200に送信する。
このように、本実施形態では、送信装置は第1の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の送信アンテナと、前記第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の送信アンテナと、第1の制御信号を前記第1の送信アンテナに各々出力する第1の出力部と、前記第1の制御信号と直交する第2の制御信号を前記第2の送信アンテナに各々出力する第2の出力部を備える。また、中継装置は、第1の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の受信アンテナと、前記第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の受信アンテナと、前記第1の偏波特性又は前記第2の偏波特性のいずれか一方と同一の偏波特性を有する送信アンテナとを備える。
【0081】
これにより、送信装置が総送信電力の上限を超えないように送信電力を各送信アンテナに割り当てても、本実施形態では信号毎に受信電力を受信装置が信号毎に合算できる。従って、本実施形態では、受信信号のS/N比が向上し、空間相関を低減できるため、MIMO分離による送信信号の抽出精度、つまり通信品質が向上する。ひいては、MIMO通信システムおいて、伝送容量を維持しながら、カバーエリアの狭小化を回避することができる。
【0082】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について説明する。
図12は、本実施形態に係る通信システム2の概念図を表す。通信システム2は、送信装置100、中継装置300及び受信装置400を含んで構成される。送信装置100は、図2に示す送信装置100と同一の構成を備える。中継装置300は、図10に示す中継装置300と同一の構成を備える。
【0083】
以下、主に第1の実施形態との差異点について説明する。第1の実施形態と共通する点については説明を割愛する。
受信装置400は、受信アンテナ201−1、201−2及び201−3を備える。
受信アンテナ201−1、201−2の偏波特性は垂直偏波(V)であり、受信アンテナ201−3の偏波特性は水平偏波(H)である。
従って、各受信アンテナは、同一の偏波特性を有する送信アンテナから送信された信号を受信する。
【0084】
図12に示す例では、受信アンテナ201−1は、偏波特性が垂直偏波(V)である送信アンテナ101−1、301−1、301−2から送信された信号を受信する(実線参照)。受信アンテナ201−2は、偏波特性が垂直偏波(V)である送信アンテナ101−1、301−1、301−2から送信された信号を受信する(実線参照)。
図12において、S11−1は、送信アンテナ101−1から受信アンテナ301−1への伝搬路を示す。S11−2は、送信アンテナ101−1から受信アンテナ201−1への伝搬路を示す。S11−3は、送信アンテナ101−1から受信アンテナ201−2への伝搬路を示す。
【0085】
受信アンテナ201−3は、偏波特性が水平偏波(H)である送信アンテナ101−2から送信された信号を受信する(破線参照)。図12において、S12−1は、送信アンテナ101−2から受信アンテナ301−2への伝搬路を示す。S12−2は、送信アンテナ101−2から受信アンテナ201−3への伝搬路を示す。S13−1は、送信アンテナ302−1から受信アンテナ201−1への伝搬路を示す。S13−2は、送信アンテナ302−1から受信アンテナ201−2への伝搬路を示す。S14−1は、送信アンテナ302−2から受信アンテナ201−1への伝搬路を示す。S14−2は、送信アンテナ302−2から受信アンテナ201−2への伝搬路を示す。
受信装置400は、各受信アンテナが受信した受信信号に対して、信号検出、復調、復号処理(以下、信号検出等と呼ぶ)を行って送信データを得る。
【0086】
図13は、本実施形態に係る受信装置400の構成を示す概略図である。
受信装置400は、受信アンテナ201−1、201−2、201−3、受信部201−1、201−2、201−3、GI除去部203−1、203−2、203−3、DFT部204−1、204−2、401、伝搬路推定部205、MIMO分離部206、復調部207、復号部208及び伝搬路補償部404を含んで構成される。
従って、受信装置400は、受信アンテナ201−3、GI除去部401、DFT部401、及び伝搬路補償部404を備える点が図11に示す受信装置200と異なる。その他の点では、受信装置200と同様である。
【0087】
受信アンテナ201−3の偏波特性は、受信アンテナ201−1、201-2の偏波特性とは異なる(図13の例では、水平偏波(H))である。
受信アンテナ201−3は、送信装置100の送信アンテナ101−2が水平偏波(H)で送信した送信信号を伝搬帯域信号として受信し、受信した伝搬帯域信号を受信部202−3に出力する。
【0088】
受信部202−3は、受信アンテナ201−3から入力された伝搬帯域信号を各々ダウンコンバートし、ダウンコンバートした信号を更にフィルタリング処理を行う。受信部201−3は、フィルタリング処理を行った信号(アナログ信号)をA/D変換してディジタル信号(OFDMシンボル列に相当)に変換し、変換したディジタル信号をGI除去部203−3に出力する。受信部201−3は、変換したディジタル信号を伝搬路推定部205に出力する。
GI除去部203−3は、受信部201−3から入力されたディジタル信号からGIに相当する区間の信号を各々除去し、GIに相当する区間の信号が除去された信号(GI除去信号、有効シンボル列に相当)をDFT部401に出力する。
【0089】
DFT部401は、GI除去部203−3から入力されたGI除去信号(時間領域信号)に対して各々DFTを行って周波数領域信号に変換し、変換した周波数領域信号を伝搬路補償部404に出力する。
伝搬路補償部404は、伝搬路推定部208から伝搬路情報が入力され、DFT部401から周波数領域信号が入力される。伝搬路補償部404は、入力された伝搬路情報に基づき入力された周波数領域信号に対して、送信装置100の送信アンテナ101−2から受信装置の受信アンテナ201−3の間の伝搬路歪を補償する。伝搬路歪とは、信号の伝達によって生じた特性の変化のことであり、例えば伝達関数を用いて表される。
【0090】
ここで、伝搬路推定部205から入力される伝搬路情報は、例えば式(4)が示す伝達関数行列Gである。伝達関数行列Gは、送信装置100の送信アンテナ101−1、101−2並びに中継装置300の受信アンテナ302−1、302−2から受信装置400の受信アンテナ201−1、201−2、201−3までの伝達関数を要素とする行列である。伝達関数行列Gは、式(4)に示すようにr行u列の行列である。図12に示す例では、r=3、u=2である。
【0091】
【数4】

【0092】
式(4)において、(tx)は、送信装置100から受信装置400への伝搬路を示すインデックスである。(rs)は、中継装置300から受信装置400への伝搬路を示すインデックスである。
11(tx)は、送信アンテナ101−1から受信アンテナ201−1への伝達関数である。G11(rs)は、送信アンテナ302−1から受信アンテナ201−1への伝達関数である。G21(tx)は、送信アンテナ101−1から受信アンテナ201−2への伝達関数である。G21(rs)は、送信アンテナ302−1から受信アンテナ201−2への伝達関数である。G12(rs)は、送信アンテナ302−2から受信アンテナ201−1への伝達関数である。G22(rs)は、送信アンテナ302−2から受信アンテナ201−2への伝達関数である。G32(tx)は、送信アンテナ101−2から受信アンテナ201−3への伝達関数である。
【0093】
伝達関数行列Gの第1行第2列の要素が0であることは、受信アンテナ201−3には、送信アンテナ101−1及び送信アンテナ302−1からの信号を受信しないことを示す。これは、受信アンテナ201−3の偏波特性が水平偏波(H)であるのに対し、送信アンテナ101−1、302−1の偏波特性が垂直偏波(V)と互いに直交する偏波特性を有するために受信特性が0となるからである。
第2行第2列の要素がG21(tx)とG21(rs)が加算された値をとるのは、受信アンテナ201−2には、送信アンテナ101−1と302−1の両者からの信号を受信することを示す。伝達関数行列Gの、第2行第3列の要素がG11(tx)とG11(rs)が加算された値をとるのは、受信アンテナ201−1には、送信アンテナ101−1と302−1の両者からの信号を受信することを示す。
【0094】
伝搬路補償部404は、入力された伝搬路情報に基づき重み行列Vを算出する。伝搬路補償部404は、伝搬路情報が伝達関数行列Gを示す場合、例えば、ZF法を用いて重み行列Vを算出することができる。
伝搬路補償部404が、ZF法を用いる場合、重み行列Vとして、式(5)を用いて伝達関数行列Gの第1行のベクトル要素[G32(tx),0]の擬似逆行列を算出する。
【0095】
【数5】

【0096】
伝搬路補償部404が、例えば、MMSE法を用いる場合、重み行列Vは、伝達関数行列Gの第1のベクトル要素の平方行列に雑音成分を加えた行列の逆行列に伝達関数行列Gを乗じた行列を重み行列Vとして算出する(式(6)参照)。
【0097】
【数6】

【0098】
伝搬路補償部404は、入力された周波数領域信号Rに算出した重み行列Vを乗じて伝搬路補償を行った信号ベクトルS’’(図13の例では1列のベクトル)を算出する。伝搬路補償部404は、算出した信号ベクトルS’’を復調部207に出力する。
MIMO分離部206は、伝搬路推定部205から伝搬路情報を入力される。MIMO分離部206は、入力された伝搬路情報が示す伝達関数行列Gの第2行及び第3行からなる部分行列G’を受信信号ベクトルに乗算してMIMO分離を行った信号ベクトルS’を算出し、算出した信号ベクトルS’を復調部207に出力する。この受信信号ベクトルは、偏波特性が垂直偏波(V)である受信アンテナ201−1、201−2が受信した受信信号に基づく周波数領域信号を要素とするベクトルである。
すなわち、MIMO分離部206は、式(2)又は式(3)に、伝達関数行列Hの代わりに部分行列G’を用いて算出した重み行列Wに基づいて信号ベクトルS’を算出する。
【0099】
復調部207は、伝搬路補償部404から入力された信号ベクトルS’’、MIMO分離部206から入力された信号ベクトルS’の要素となる信号各々に対して復調処理を行う。
なお、信号ベクトルS’の要素となる信号及び信号ベクトルS’’の要素となる信号のうち共通する信号については、各信号の品質を示す指標値(例えばSINR(signal to noise power ratio;信号対雑音干渉電力比))を算出し、算出した指標値がより良好(例えば、SINRが大きい)な品質を示す信号について復調処理を行うようにしてもよい。
または、その共通する信号の各々を復調し、復調して生成した信号同士を合成してもよい。または、その共通する信号を合成し、合成した信号を復調してもよい。
【0100】
図13に示す例では、伝搬路補償部404は、偏波特性が水平方向(H)である受信アンテナ201−3が受信した受信信号の周波数領域信号に対して伝搬路補償を行った信号ベクトルS’’を算出する。また、MIMO分離部206は、偏波特性が垂直方向(V)である受信アンテナ201−3が受信した受信信号の周波数領域信号に対してMIMO分離を行った信号ベクトルS’を算出する。本実施形態ではこれには限られず、伝搬路補償部404及びMIMO分離部206が、異なる(例えば、直交)偏波特性をもつ受信アンテナが受信した受信信号の周波数領域信号を入力するようにしてもよい。ここで、送信装置100が備える送信アンテナの偏波特性と中継装置300が備える送信アンテナの偏波特性と共通する偏波特性を有する受信アンテナが受信した受信信号の周波数領域信号をMIMO分離部206に入力するようにしてもよい。
例えば、伝搬路補償部404は、偏波特性が垂直方向(V)である受信アンテナが受信した受信信号の周波数領域信号に対して伝搬路補償を行った信号ベクトルS’’を算出してもよい。この場合、MIMO分離部206は、偏波特性が水平方向(H)である受信アンテナが受信した受信信号の周波数領域信号に対してMIMO分離を行った信号ベクトルS’を算出してもよい。
【0101】
また、伝搬路補償部404に入力される共通の偏波特性を有する受信アンテナが受信した受信信号の周波数領域信号のチャネル数(アンテナ数)は1に限らず2以上の整数Nであってもよい。MIMO分離部206に入力される共通の偏波特性を有する受信アンテナが受信した受信信号の周波数領域信号のチャネル数(アンテナ数)は2に限らず1以上の整数Mであればよい。N又はMが2以上である場合、出力される信号ベクトルS’’又はS’において、受信信号の成分が受信アンテナ間で同期し、同相の成分が強調される。
【0102】
次に、送信装置100及び中継装置300が送信する送信信号(搬送帯域信号)の受信装置400における受信電力について説明する。
本実施形態に係る送信装置100の総送信電力がP、送信装置100の送信アンテナ101−1、101−2から受信装置200の受信アンテナ201−1、201−2、201−3への平均伝搬路損失をL、送信アンテナ101−1、101−2の送信電力は等しいと仮定する。
このとき、送信装置100の送信アンテナ101−1は、信号Sを送信電力P/2で送信する。送信アンテナ101−2は、信号Sを送信電力P/2で送信する。
【0103】
また、本実施形態に係る中継装置300の総送信電力がP、中継装置300の送信アンテナ302−1、302−1から受信装置200の受信アンテナ201−1、201−2、201−3への平均伝搬路損失をL、送信アンテナ302−1、302−2の送信電力は等しいと仮定する。
このとき、中継装置300の送信アンテナ302−1は、信号Sを送信電力P/2で送信する。送信アンテナ302−2は、信号Sを送信電力P/2で送信する。
【0104】
このとき、受信装置200の受信アンテナ201−1は、送信アンテナ302−1が送信した信号を受信電力P・L/2で受信し、送信アンテナ302−2が送信した信号を受信電力P・L/2で受信し、送信アンテナ302−2が送信した信号を受信電力P・L/2で受信し、送信アンテナ101−2が送信した信号を受信電力P・L/2で受信する。
受信アンテナ201−2は、送信アンテナ302−1が送信した信号を受信電力P・L/2で受信し、送信アンテナ302−2が送信した信号を受信電力P・L/2で受信し、送信アンテナ302−2が送信した信号を受信電力P・L/2で受信し、送信アンテナ101−2が送信した信号を受信電力P・L/2で受信する。
受信アンテナ201−3は、送信アンテナ302−1が送信した信号を受信電力P・L/2で受信する。
よって、受信装置200は、全体として信号Sについて平均受信電力(P/2+P)Lで受信し、信号Sについて平均受信電力(P/2+P)Lで受信する。
【0105】
上述の実施形態では、送信装置100が偏波特性の異なるMIMO信号を送信し、中継装置300が各偏波特性を有するMIMO信号を受信し、受信したMIMO信号を何れかの一つの偏波特性で送信する。これにより、本実施形態は、送信アンテナ毎に割り当てられた送信電力の制限を回避することができる。ひいては、受信信号の品質(例えば、SNR(signal to noise ratio;信号雑音比))を改善し、空間相関を低下させることができるためにMIMO信号から送信データ信号の推定精度を向上させることができる。
また、受信装置において、中継装置300の他、送信装置100が送信した信号を受信する場合、ある偏波特性を有する受信信号に対して伝搬路補償を行い、他の偏波特性を有する受信信号に対してMIMO分離を行う。伝搬路補償を行った信号も復調に用いることにより、送信データ信号の推定精度を向上させることができる。その結果、偏波MIMO伝送における伝送レートを維持しながら、カバーエリアの狭小化を緩和することができる。
【0106】
なお、上述した実施形態における送信装置100、受信装置200、400及び中継装置300の一部、例えば、符号化部103、変調部104、リソースマッピング部105、IDFT部106−1、106−2、GI挿入部107−1、107−2、参照信号生成部109、GI除去部203−1、203−2、DFT部204−1、204−2、401、伝搬路推定部205、MIMO分離部206、復調部207、復号部208、帯域制限部310−1、310−2、及び伝搬路補償部404をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、送信装置100、受信装置200、400又は中継装置300に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
また、上述した実施形態における送信装置100、受信装置200、400及び中継装置300の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現しても良い。送信装置100、受信装置200、400及び中継装置300の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化しても良い。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いても良い。
【0107】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0108】
1…通信システム、100…送信装置、
101−1、101−2…送信アンテナ、103…符号化部、104…変調部、
105…リソースマッピング部、106−1、106−2…IDFT部、
107−1、107−2…GI挿入部、108−1、108−2…送信部、
109…参照信号生成部
200…受信装置、
201−1、201−2、201−3…受信アンテナ、
202−1、202−2、202−3…受信部、
203−1、203−2、203−3…GI除去部、204−1、204−2…DFT部、
205…伝搬路推定部、206…MIMO分離部、207…復調部、208…復号部、
300…中継装置、
301−1、301−2…受信アンテナ、302−1、302−2…送信アンテナ、
310−1、310−2…帯域制限部、311−1、311−2…増幅部、
2…通信システム、400…受信装置、
401…DFT部、404…伝搬路補償部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の送信アンテナと、
前記第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の送信アンテナと、
第1のパイロット信号を前記第1の送信アンテナに各々出力する第1の出力部と、
前記第1のパイロット信号と直交する第2のパイロット信号を前記第2の送信アンテナに各々出力する第2の出力部を備えること
を特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記第1のパイロット信号と前記第2のパイロット信号は、互いに異なる搬送周波数又はシンボルに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記第1のパイロット信号が配置される搬送周波数及びシンボルには、前記第2のパイロット信号及び該第2のパイロット信号と同一のリソースブロックに属するデータ信号が、配置されないことを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項4】
前記第2のパイロット信号は、前記第1のパイロット信号と直交する信号系列であることを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項5】
第1の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の受信アンテナと、
前記第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の受信アンテナと、
前記第1の偏波特性又は前記第2の偏波特性のいずれか一方と同一の偏波特性を有する第1及び第2の送信アンテナとを備えること
を特徴とする中継装置。
【請求項6】
前記送信アンテナは、当該送信アンテナとは異なる偏波特性を有する受信アンテナが受信した信号を送信することを特徴とする請求項5に記載の中継装置。
【請求項7】
第1の偏波特性を有するM(Mは1以上の整数)個の第1の受信アンテナと、
前記第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有するN(Nは1以上の整数)個の第2の送信アンテナとを備え、
前記第1の受信アンテナ及び前記第2の送信アンテナは、
前記第1の偏波特性と同一の偏波特性を有するM個の第1の送信アンテナと、前記第2の偏波特性と同一の偏波特性を有するN個の第2の送信アンテナを備える送信装置が送信する信号と、
前記第1の偏波特性と同一の偏波特性を有するM個の第1の受信アンテナと、前記第2の偏波特性と同一の偏波特性を有するN個の第2の受信アンテナと、前記第1の偏波特性と同一の偏波特性を有する少なくともM+N個の送信アンテナを備える中継装置が送信する信号を受信すること
を特徴とする受信装置。
【請求項8】
第1の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の送信アンテナと、
前記第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の送信アンテナを備える送信装置と、
前記第1の偏波特性と同一の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の受信アンテナと、
前記第2の偏波特性と同一の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の受信アンテナと、
前記第1の偏波特性又は前記第2の偏波特性のいずれか一方と同一の偏波特性を有する第1及び第2の送信アンテナを有する中継装置とを
備えることを特徴とする通信システム。
【請求項9】
第1のパイロット信号を第1の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の送信アンテナから送信する過程と、
第1のパイロット信号とは直交する第2のパイロット信号を第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の送信アンテナから送信する過程と、
を備えることを特徴とする送信方法。
【請求項10】
第1の受信信号を第1の偏波特性を有する少なくとも1つの第1の受信アンテナから入力する過程と、
第2の受信信号を前記第1の偏波特性とは異なる第2の偏波特性を有する少なくとも1つの第2の受信アンテナから入力する過程と、
前記第1の受信信号及び前記第2の受信信号を、前記第1の偏波特性又は前記第2の偏波特性のいずれか一方と同一の偏波特性を有する第1及び第2の送信アンテナから各々送信する過程と
を備えることを特徴とする中継方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−38694(P2013−38694A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174935(P2011−174935)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】