送電装置、車両および電力伝送システム
【課題】送電器に同軸ケーブルを接続したとしても、外部に放射されるノイズを低減することができると共に、特定の部材が高温となることを抑制する。
【解決手段】送電装置は、間隔をあけて設けられた受電部27に電力を非接触で送電する送電部28と、送電部28と間隔をあけて設けられ、送電部28に電力を供給するコイルユニット23と、コイルユニット23に接続され、電源からの電力を供給する同軸ケーブル50とを備え、同軸ケーブル50は、内側導体と、内側導体の外周を覆うように設けられた絶縁体と、絶縁体上に配置され、アースされた外側導体とを含み、コイルユニット23は、送電部28の周囲に配置される。
【解決手段】送電装置は、間隔をあけて設けられた受電部27に電力を非接触で送電する送電部28と、送電部28と間隔をあけて設けられ、送電部28に電力を供給するコイルユニット23と、コイルユニット23に接続され、電源からの電力を供給する同軸ケーブル50とを備え、同軸ケーブル50は、内側導体と、内側導体の外周を覆うように設けられた絶縁体と、絶縁体上に配置され、アースされた外側導体とを含み、コイルユニット23は、送電部28の周囲に配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電装置、車両および電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮からバッテリなどの電力を用いて駆動輪を駆動させるハイブリッド車両や電気自動車などが着目されている。
【0003】
特に近年は、上記のようなバッテリを搭載した電動車両において、プラグなどを用いずに非接触でバッテリを充電可能なワイヤレス充電が着目されている。そして、最近では非接触の充電方式においても各種の充電方式が提案されており、特に、共鳴現象を利用することで非接触で電力を伝送する技術が脚光を浴びている。
【0004】
電磁共鳴を利用したワイヤレス電力伝送システムとしては、たとえば、特開2010−73976号公報に記載されたワイヤレス電力伝送システムが挙げられる。このワイヤレス電力伝送システムは、給電コイルを含む給電装置と、受電コイルを含む受電装置とを備える。そして、給電コイルと受電コイルとの間は、電磁共鳴によって電力の伝送がなされている。
【0005】
なお、一般に、特開2003−79597号公報、特開2008−67807号公報および特開2004−129689号公報に記載されているように、磁気共鳴撮像装置が従来から各種提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−73976号公報
【特許文献2】特開2003−79597号公報
【特許文献3】特開2008−67807号公報
【特許文献4】特開2004−129689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2010−73976号公報に記載されたワイヤレス電力伝送システムにおいては、電磁誘導コイルを用いて、送電コイルに電力を伝達している。電力伝送時には、電磁誘導コイルに電磁誘導による逆起電力による電圧が印加され、電磁誘導コイルを流れる電流は平衡状態の高周波電流となる。
【0008】
通常の配線に高周波の電流を流したのでは、配線自体がアンテナとして機能し、配線の周囲に電磁波が形成され、配線がノイズの発生源となるおそれがある。
【0009】
そこで、配線自体がノイズの発生源となることを抑制するために、電磁誘導コイルと電源とを接続する配線として、同軸ケーブルを採用することが考えられる。
【0010】
この同軸ケーブルは、内側導体と、この内側導体の外周を覆うように設けられた絶縁体と、絶縁体の外周に設けられた外側導体とを含み、外側導体はアースされる。
【0011】
一般的に、同軸ケーブルの外側導体がアースされると、内側導体を電流が流れたとしても、当該電流による磁界が外部に漏れることが抑制される。
【0012】
さらに、表面効果により、外側導体の内表面に電流が流れ、外側導体の外表面には電流が流れず、同軸ケーブルから電磁界が外部に放射されることが抑制されている。
【0013】
このように電磁誘導コイル内を流れる電流は、電流が平衡状態となる一方で、同軸ケーブルは、上記のように不平衡状態となっている。
【0014】
このため、単に、電磁誘導コイルに同軸ケーブルを接続して、電源からの電力を送電器に供給すると、同軸ケーブルの外側導体の外表面にコモンモード電流が流れる。コモンモード電流が流れると、同軸ケーブルから電磁波が放射され、ノイズの原因となる。
【0015】
このようなコモンモード電流を抑制する手法として、バランを同軸ケーブルと、送電器との間に配置することが考えられる。一般的に、バランは、フェライトコアと、このフェライトコアに巻き回されたコイルとを含む。
【0016】
その一方で、バランに高周波の電流が流れると、フェライトコアが加熱して高温となるという問題が生じる。
【0017】
特開2003−79597号公報などに記載された磁気共鳴撮像装置は、核磁気共鳴を利用して、身体の断面画像などを撮像する装置である。核磁気共鳴とは、水や脂肪の水素原子に外部から強い磁界をかけると、電磁波のエネルギーが水素原子だけに吸収され、エネルギー状態が高いほうへ励起する。このような現象を核磁気共鳴という。
【0018】
そして、励起した状態から元のエネルギ状態に戻る際に、水素原子の周囲に振動する磁場(電磁波)を発生する。元に戻るまでの時間(緩和時間)が組織やその状態、例えば正常細胞と癌細胞によって異なる。磁気共鳴撮像装置は、その情報を受信して、受信した情報に基づいてコンピュータによって画像化する。
【0019】
このように、磁気共鳴撮像装置は、非接触で電力を伝送する電力伝送システムとは全く異なる技術分に属している。
【0020】
特開2003−79597号公報などには、受電器に非接触で電力を送電する送電器に同軸ケーブルやバランを接続することについてすら記載されておらず、バランを接続することで、バランのコアが高温となることについて記載も示唆もされていない。
【0021】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、送電器に同軸ケーブルを接続したとしても、外部に放射されるノイズを低減することができると共に、特定の部材が高温となることを抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る送電装置は、間隔をあけて設けられた受電部に電力を非接触で送電する送電部と、送電部と間隔をあけて設けられ、送電部に電力を供給する第1コイルユニットと、第1コイルユニットに接続され、電源からの電力を第1コイルユニットに供給する供給ケーブルとを備える。
【0023】
好ましくは、上記第1コイルユニットは、供給ケーブルに接続された第1コイルと、第1コイルに接続された第2コイルとを含む。上記第1コイルは、送電部の周囲に配置されると共に、電源から供給される不平衡電流を平衡電流に変換して第2コイルに供給する。好ましくは、上記送電部は、送電コイルを含み、送電コイルと第1コイルとは互いに対向するように配置される。
【0024】
好ましくは、上記送電コイルと第2コイルとは、互いに対向するように配置され、上記第1コイルを流れる電流方向と、第2コイルを流れる電流方向とを異ならせる。好ましくは、上記供給ケーブルは、内側導体と、内側導体の外周を覆うように設けられた絶縁体と、絶縁体上に配置され、アースされた外側導体とを含む。
【0025】
好ましくは、上記第1コイルは、第1単位コイルと、第1単位コイルに接続された第2単位コイルと、第2単位コイルに接続された第3単位コイルとを含む。上記第2コイルは、第1端部および第2端部を含む。上記第1単位コイルは、内側導体に接続された第3端部と、第1端部に接続された第4端部とを含む。上記第2単位コイルは、第4端部に接続された第5端部と、外側導体に接続された第6端部とを含む。上記第3単位コイルは、第6端部に接続された第7端部と、第2端部に接続された第8端部とを含む。
【0026】
好ましくは、上記第1単位コイルと、第2単位コイルと、第3単位コイルとは、互いに同軸上に配置される。好ましくは、上記第1単位コイルと、第2単位コイルと、第3単位コイルとは、同一形状とされる。
【0027】
好ましくは、上記送電部は、受電部と送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界と、受電部と送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて、受電部に電力を送電する。好ましくは、上記受電部と送電部との結合係数は、0.1以下である。好ましくは、上記送電部の固有周波数と受電部の固有周波数との差は、受電部の固有周波数の10%以下である。
【0028】
本発明に係る車両は、間隔をあけて設けられた送電部から非接触で電力を受電する受電部と、受電部と間隔をあけて設けられ、受電部から電力を受け取る第2コイルユニットと、第2コイルユニットに接続された受電ケーブルと、受電ケーブルに接続された変換器と、変換器に接続されたバッテリとを備える。上記第2コイルユニットは、受電ケーブルに接続された第3コイルと、第3コイルに接続された第4コイルとを含む。上記第3コイルは、受電部の周囲に配置されると共に、第4コイルから供給される平衡電流を不平衡電流に変換して、変換器に供給する。
【0029】
好ましくは、上記受電部は、受電コイルを含み、受電コイルと第3コイルとは互いに対向するように配置される。好ましくは、上記受電コイルと第4コイルとは、互いに対向するように配置される。上記第3コイルを流れる電流方向と、第4コイルを流れる電流方向とを異ならせる。好ましくは、上記受電ケーブルは、内側導体と、内側導体の外周を覆うように設けられた絶縁体と、絶縁体上に配置され、アースされた外側導体とを含む。
【0030】
好ましくは、上記第3コイルは、第4単位コイルと、第4単位コイルに接続された第5単位コイルと、第5単位コイルに接続された第6単位コイルとを含む。上記第4コイルは、第9端部および第10端部を含む。上記第4単位コイルは、内側導体に接続された第11端部と、第9端部に接続された第12端部とを含む。上記第5単位コイルは、第12端部に接続された第13端部と、外側導体に接続された第14端部とを含む。上記第6単位コイルは、第14端部に接続された第15端部と、第10端部に接続された第16端部とを含む。
【0031】
好ましくは、上記第4単位コイルと、第5単位コイルと、第6単位コイルとは、互いに同軸上に配置される。好ましくは、上記第4単位コイルと、第5単位コイルと、第6単位コイルとは、同一形状とされる。
【0032】
好ましくは、上記受電部は、受電部と送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界と、受電部と送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて送電部から電力を受電する。好ましくは、上記受電部と送電部との結合係数は、0.1以下である。好ましくは、上記送電部の固有周波数と受電部の固有周波数との差は、受電部の固有周波数の10%以下である。
【0033】
本発明に係る電力伝送システムは、受電部を含む車両と、送電装置とを備えた、電力伝送システムである。上記送電装置は、受電部に電力を非接触で送電する送電部と、送電部と間隔をあけて設けられ、送電部に電力を供給する第1コイルユニットと、第1コイルユニットに接続され、電源からの電力を第1コイルユニットに供給する供給ケーブルとを備える。上記第1コイルユニットは、供給ケーブルに接続された第1コイルと、第1コイルに接続された第2コイルとを含む。上記第1コイルは、送電部の周囲に配置されると共に、電源から供給される不平衡電流を平衡電流に変換して第2コイルに供給する。
【0034】
本発明に係る電力伝送システムは、上記送電部を含む送電装置と、受電装置を含む車両とを備えた、電力伝送システムである。上記車両は、送電部から非接触で電力を受電する受電部と、受電部と間隔をあけて設けられ、受電部から電力を受け取る第2コイルユニットと、第2コイルユニットに接続された受電ケーブルと、受電ケーブルに接続された変換器と、変換器に接続されたバッテリとを備える。上記第2コイルユニットは、受電ケーブルに接続された第3コイルと、第3コイルに接続された第4コイルとを含む。上記第3コイルは、受電部の周囲に配置されると共に、第4コイルから供給される平衡電流を不平衡電流に変換して、変換器に供給する。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る送電装置、車両および電力伝送システムによれば、同軸ケーブルから放射されるノイズを低減することができると共に、特定の部位が高温となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施の形態1に係る受電装置と、送電装置と、電力伝送システムとを模式的に示す模式図である。
【図2】電力伝送システムのシミュレーションモデルを示す図である。
【図3】シミュレーション結果をしめすグラフである。
【図4】固有周波数を固定した状態で、エアギャップを変化させたときの電力伝送効率と、共鳴コイルに供給される電流の周波数fとの関係を示すグラフである。
【図5】電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。
【図6】送電部28の構成を模式的に示す斜視図である。
【図7】図6に示すコイルユニット23および交流電源21などを示す電気回路図である。
【図8】コイルユニット12およびバッテリ15などを示す電気回路図である。
【図9】図6に示す送電部28の変形例を示す模式図である。
【図10】図8に示す送電装置41が採用された電力伝送システムを示す図である。
【図11】比較例としての電力伝送システムを模式的に示す模式図である。
【図12】図11に示す比較例としての電力伝送システムにおける電力伝送効率を示すグラフである。
【図13】図10に示す電力伝送システムにおける電力伝送効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1から図13を用いて、本発明の実施の形態に係る受電装置と送電装置と、この送電装置および受電装置を含む電力伝送システムについて説明する。図1は、本実施の形態に係る受電装置と、送電装置と、電力伝送システムとを模式的に示す模式図である。
【0038】
本実施の形態1に係る電力伝送システムは、受電装置40を含む電動車両10と、送電装置41を含む外部給電装置20とを有する。電動車両10の受電装置40は、送電装置41が設けられた駐車スペース42の所定位置に停車して、主に、送電装置41から電力を受電する。
【0039】
駐車スペース42には、電動車両10を所定の位置に停車するように、輪止やラインが設けられている。
【0040】
外部給電装置20は、交流電源21に接続された高周波電力ドライバ22と、高周波電力ドライバ22などの駆動を制御する制御部26と、この高周波電力ドライバ22に接続された同軸ケーブル50と、同軸ケーブル50に接続された送電装置41とを含む。送電装置41は、送電部28と、コイルユニット23とを含む。送電部28は、共鳴コイル24と、共鳴コイル24に接続されたキャパシタ25とを含む。コイルユニット23は、高周波電力ドライバ22に電気的に接続されている。なお、この図1に示す例においては、キャパシタ25が設けられているが、キャパシタ25は必ずしも必須の構成ではない。
【0041】
送電部28は、共鳴コイル24のインダクタンスLと、共鳴コイル24の浮遊容量およびキャパシタ25のキャパシタンスとから形成された電気回路を含む。
【0042】
電動車両10は、受電装置40と、受電装置40に接続された整流器13と、この整流器13に接続されたDC/DCコンバータ14と、このDC/DCコンバータ14に接続されたバッテリ15と、パワーコントロールユニット(PCU(Power Control Unit))16と、このパワーコントロールユニット16に接続されたモータユニット17と、DC/DCコンバータ14やパワーコントロールユニット16などの駆動を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)18とを備える。なお、本実施の形態に係る電動車両10は、図示しないエンジンを備えたハイブリッド車両であるが、モータにより駆動される車両であれば、電気自動車や燃料電池車両も含む。
【0043】
整流器13は、コイルユニット12に接続されており、コイルユニット12から供給される交流電流を直流電流に変換して、DC/DCコンバータ14に供給する。
【0044】
DC/DCコンバータ14は、整流器13から供給された直流電流の電圧を調整して、バッテリ15に供給する。なお、DC/DCコンバータ14は必須の構成ではなく省略してもよい。この場合には、外部給電装置20にインピーダンスを整合するための整合器を設けることで、DC/DCコンバータ14の代用をすることができる。
【0045】
パワーコントロールユニット16は、バッテリ15に接続されたコンバータと、このコンバータに接続されたインバータとを含み、コンバータは、バッテリ15から供給される直流電流を調整(昇圧)して、インバータに供給する。インバータは、コンバータから供給される直流電流を交流電流に変換して、モータユニット17に供給する。
【0046】
モータユニット17は、たとえば、三相交流モータなどが採用されており、パワーコントロールユニット16のインバータから供給される交流電流によって駆動する。
【0047】
なお、電動車両10がハイブリッド車両の場合には、電動車両10は、エンジン、動力分割機構とをさらに備え、モータユニット17は、発電機として主に機能するモータジェネレータと、電動機として主に機能するモータジェネレータとを含む。
【0048】
受電装置40は、受電部27と、コイルユニット12とを含む。受電部27は、共鳴コイル11とキャパシタ19とを含む。共鳴コイル11は浮遊容量を有する。このため、受電部27は、共鳴コイル11のインダクタンスと、共鳴コイル11およびキャパシタ19のキャパシタンスとによって形成された電気回路を有する。
【0049】
本実施の形態に係る電力伝送システムにおいては、送電部28の固有周波数と、受電部27の固有周波数との差は、受電部27または送電部28の固有周波数の10%以下である。このような範囲に各送電部28および受電部27の固有周波数を設定することで、電力伝送効率を高めることができる。その一方で、固有周波数の差が受電部27または送電部28の固有周波数の10%よりも大きくなると、電力伝送効率が10%より小さくなり、バッテリ15の充電時間が長くなるなどの弊害が生じる。
【0050】
ここで、送電部28の固有周波数とは、キャパシタ25が設けられていない場合には、共鳴コイル24のインダクタンスと、共鳴コイル24のキャパシタンスとから形成された電気回路が自由振動する場合の振動周波数を意味する。キャパシタ25が設けられた場合には、送電部28の固有周波数とは、共鳴コイル24およびキャパシタ25のキャパシタンスと、共鳴コイル24のインダクタンスとによって形成された電気回路が自由振動する場合の振動周波数を意味する。上記電気回路において、制動力および電気抵抗をゼロもしくは実質的にゼロとしたときの固有周波数は、送電部28の共振周波数とも呼ばれる。
【0051】
同様に、受電部27の固有周波数とは、キャパシタ19が設けられていない場合には、共鳴コイル11のインダクタンスと、共鳴コイル11のキャパシタンスとから形成された電気回路が自由振動する場合の振動周波数を意味する。キャパシタ19が設けられた場合には、受電部27の固有周波数とは、共鳴コイル11およびキャパシタ19のキャパシタンスと、共鳴コイル11のインダクタンスとによって形成された電気回路が自由振動する場合の振動周波数を意味する。上記電気回路において、制動力および電気抵抗をゼロもしくは実質的にゼロとしたときの固有周波数は、受電部27の共振周波数とも呼ばれる。
【0052】
図2および図3を用いて、固有周波数の差と電力伝送効率との関係とを解析したシミュレーション結果について説明する。図2は、電力伝送システムのシミュレーションモデルを示す。電力伝送システム89は、送電装置90と、受電装置91とを備え、送電装置90は、電磁誘導コイル92と、送電部93とを含む。送電部93は、共鳴コイル94と、共鳴コイル94に設けられたキャパシタ95とを含む。
【0053】
受電装置91は、受電部96と、電磁誘導コイル97とを備える。受電部96は、共鳴コイル99とこの共鳴コイル99に接続されたキャパシタ98とを含む。
【0054】
共鳴コイル94のインダクタンスをインダクタンスLtとし、キャパシタ95のキャパシタンスをキャパシタンスC1とする。共鳴コイル99のインダクタンスをインダクタンスLrとし、キャパシタ98のキャパシタンスをキャパシタンスC2とする。このように各パラメータを設定すると、送電部93の固有周波数f1は、下記の式(1)によって示され、受電部96の固有周波数f2は、下記の式(2)によって示される。
【0055】
f1=1/{2π(Lt×C1)1/2}・・・(1)
f2=1/{2π(Lr×C2)1/2}・・・(2)
ここで、インダクタンスLrおよびキャパシタンスC1,C2を固定して、インダクタンスLtのみを変化させた場合において、送電部93および受電部96の固有周波数のズレと、電力伝送効率との関係を図3に示す。なお、このシミュレーションにおいては、共鳴コイル94および共鳴コイル99の相対的な位置関係は固定した状態であって、さらに、送電部93に供給される電流の周波数は一定である。
【0056】
図3に示すグラフのうち、横軸は、固有周波数のズレ(%)を示し、縦軸は、一定周波数での伝送効率(%)を示す。固有周波数のズレ(%)は、下記式(3)によって示される。
【0057】
(固有周波数のズレ)={(f1−f2)/f2}×100(%)・・・(3)
図3からも明らかなように、固有周波数のズレ(%)が±0%の場合には、電力伝送効率は、100%近くとなる。固有周波数のズレ(%)が±5%の場合には、電力伝送効率は、40%となる。固有周波数のズレ(%)が±10%の場合には、電力伝送効率は、10%となる。固有周波数のズレ(%)が±15%の場合には、電力伝送効率は、5%となる。すなわち、固有周波数のズレ(%)の絶対値(固有周波数の差)が、受電部96の固有周波数の10%以下の範囲となるように各送電部および受電部の固有周波数を設定することで電力伝送効率を高めることができることがわかる。さらに、固有周波数のズレ(%)の絶対値が受電部96の固有周波数の5%以下となるように、各送電部および受電部の固有周波数を設定することで電力伝送効率をより高めることができることがわかる。なお、シミュレーションソフトしては、電磁界解析ソフトウェア(JMAG(登録商標):株式会社JSOL製)を採用している。
【0058】
次に、本実施の形態に係る電力伝送システムの動作について説明する。
コイルユニット23には、高周波電力ドライバ22から交流の電力が供給される。コイルユニット23に所定の交流電流が流れると、電磁誘導によって共鳴コイル24にも交流電流が流れる。この際、共鳴コイル24を流れる交流電流の周波数が特定の周波数となるように、コイルユニット23に電力が供給されている。
【0059】
共鳴コイル24に特定の周波数の電流が流れると、共鳴コイル24の周囲には特定の周波数で振動する電磁界が形成される。
【0060】
共鳴コイル11は、共鳴コイル24から所定範囲内に配置されており、共鳴コイル11は共鳴コイル24の周囲に形成された電磁界から電力を受け取る。
【0061】
本実施の形態においては、共鳴コイル11および共鳴コイル24は、所謂、ヘリカルコイルが採用されている。このため、共鳴コイル11の周囲には、特定の周波数で振動する磁界が主に形成され、共鳴コイル24は当該磁界から電力を受け取る。
【0062】
ここで、共鳴コイル24の周囲に形成される特定の周波数の磁界について説明する。「特定の周波数の磁界」は、典型的には、電力伝送効率と共鳴コイル24に供給される電流の周波数と関連性を有する。そこで、まず、電力伝送効率と、共鳴コイル24に供給される電流の周波数との関係について説明する。共鳴コイル24から共鳴コイル11に電力を伝送するときの電力伝送効率は、共鳴コイル24および共鳴コイル11の間の距離などの様々な要因よって変化する。たとえば、送電部28および受電部27の固有周波数(共振周波数)を固有周波数f0とし、共鳴コイル24に供給される電流の周波数を周波数f3とし、共鳴コイル11および共鳴コイル24の間のエアギャップをエアギャップAGとする。
【0063】
図4は、固有周波数f0を固定した状態で、エアギャップAGを変化させたときの電力伝送効率と、共鳴コイル24に供給される電流の周波数f3との関係を示すグラフである。
【0064】
図4に示すグラフにおいて、横軸は、共鳴コイル24に供給する電流の周波数f3を示し、縦軸は、電力伝送効率(%)を示す。効率曲線L1は、エアギャップAGが小さいときの電力伝送効率と、共鳴コイル24に供給する電流の周波数f3との関係を模式的に示す。この効率曲線L1に示すように、エアギャップAGが小さい場合には、電力伝送効率のピークは周波数f4,f5(f4<f5)において生じる。エアギャップAGを大きくすると、電力伝送効率が高くなるときの2つのピークは、互いに近づくように変化する。そして、効率曲線L2に示すように、エアギャップAGを所定距離よりも大きくすると、電力伝送効率のピークは1つとなり、共鳴コイル24に供給する電流の周波数が周波数f6のときに電力伝送効率がピークとなる。エアギャップAGを効率曲線L2の状態よりもさらに大きくすると、効率曲線L3に示すように電力伝送効率のピークが小さくなる。
【0065】
たとえば、電力伝送効率の向上を図るため手法として次のような第1の手法が考えられる。第1の手法としては、エアギャップAGにあわせて、図1に示す共鳴コイル24に供給する電流の周波数を一定として、キャパシタ25やキャパシタ19のキャパシタンスを変化させることで、送電部28と受電部27との間での電力伝送効率の特性を変化させる手法が考えられる。具体的には、共鳴コイル24に供給される電流の周波数を一定とした状態で、電力伝送効率がピークとなるように、キャパシタ25およびキャパシタ19のキャパシタンスを調整する。この手法では、エアギャップAGの大きさに関係なく、共鳴コイル24および共鳴コイル11に流れる電流の周波数は一定である。なお、電力伝送効率の特性を変化させる手法としては、送電装置41と高周波電力ドライバ22との間に設けられた整合器を利用する手法や、コンバータ14を利用する手法などを採用することもできる。
【0066】
また、第2の手法としては、エアギャップAGの大きさに基づいて、共鳴コイル24に供給する電流の周波数を調整する手法である。たとえば、図4において、電力伝送特性が効率曲線L1となる場合には、共鳴コイル24には周波数が周波数f4または周波数f5の電流を共鳴コイル24を供給する。そして、周波数特性が効率曲線L2,L3となる場合には、周波数が周波数f6の電流を共鳴コイル24に供給する。この場合では、エアギャップAGの大きさに合わせて共鳴コイル24および共鳴コイル11に流れる電流の周波数を変化させることになる。
【0067】
第1の手法では、共鳴コイル24を流れる電流の周波数は、固定された一定の周波数となり、第2の手法では、共鳴コイル24を流れる周波数は、エアギャップAGによって適宜変化する周波数となる。第1の手法や第2の手法などによって、電力伝送効率が高くなるように設定された特定の周波数の電流が共鳴コイル24に供給される。共鳴コイル24に特定の周波数の電流が流れることで、共鳴コイル24の周囲には、特定の周波数で振動する磁界(電磁界)が形成される。受電部27は、受電部27と送電部28の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界を通じて送電部28から電力を受電している。したがって、「特定の周波数で振動する磁界」とは、必ずしも固定された周波数の磁界とは限らない。なお、上記の例では、エアギャップAGに着目して、共鳴コイル24に供給する電流の周波数を設定するようにしているが、電力伝送効率は、共鳴コイル24および共鳴コイル11の水平方向のずれ等のように他の要因によっても変化するものであり、当該他の要因に基づいて、共鳴コイル24に供給する電流の周波数を調整する場合がある。
【0068】
なお、本実施の形態では、共鳴コイルとしてヘリカルコイルを採用した例について説明したが、共鳴コイルとして、メアンダラインなどのアンテナなどを採用した場合には、共鳴コイル24に特定の周波数の電流が流れることで、特定の周波数の電界が共鳴コイル24の周囲に形成される。そして、この電界をとおして、送電部28と受電部27との間で電力伝送が行われる。
【0069】
本実施の形態に係る電力伝送システムにおいては、電磁界の「静電界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用することで、送電および受電効率の向上が図られている。
【0070】
図5は、電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。図5を参照して、電磁界は3つの成分から成る。曲線k1は、波源からの距離に反比例した成分であり、「輻射電界」と称される。曲線k2は、波源からの距離の2乗に反比例した成分であり、「誘導電界」と称される。また、曲線k3は、波源からの距離の3乗に反比例した成分であり、「静電界」と称される。なお、電磁界の波長を「λ」とすると、「輻射電界」と「誘導電界」と「静電界」との強さが略等しくなる距離は、λ/2πとあらわすことができる。
【0071】
「静電界」は、波源からの距離とともに急激に電磁波の強度が減少する領域であり、本実施の形態に係る電力伝送システムでは、この「静電界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用してエネルギー(電力)の伝送が行なわれる。すなわち、「静電界」が支配的な近接場において、同じ固有周波数を有する送電部28および受電部27(たとえば一対のLC共振コイル)を共鳴させることにより、送電部28から他方の受電部27へエネルギー(電力)を伝送する。この「静電界」は遠方にエネルギーを伝播しないので、遠方までエネルギーを伝播する「輻射電界」によってエネルギー(電力)を伝送する電磁波に比べて、共鳴法は、より少ないエネルギー損失で送電することができる。
【0072】
このように、本実施の形態に係る電力伝送システムにおいては、送電部28と受電部27とを電磁界によって共振させることで送電装置41から受電装置40に電力を送電している。そして、送電部28と受電部27との間の結合係数(κ)は、0.1以下である。なお、一般的に電磁誘導を利用した電力伝送では、送電部と受電部と間の結合係数(κ)は1.0に近いものとなっている。
【0073】
本実施の形態の電力伝送における送電部28と受電部27との結合を、たとえば、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電磁界(電磁場)共振結合」または「電界(電場)共振結合」という。
【0074】
「電磁界(電磁場)共振結合」は、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電界(電場)共振結合」のいずれも含む結合を意味する。
【0075】
本明細書中で説明した送電部28の共鳴コイル24と受電部27の共鳴コイル11とは、コイル形状のアンテナが採用されているため、送電部28と受電部27とは主に、磁界によって結合しており、送電部28と受電部27とは、「磁気共鳴結合」または「磁界(磁場)共鳴結合」している。
【0076】
なお、共鳴コイル24,11として、たとえば、メアンダラインなどのアンテナを採用することも可能であり、この場合には、送電部28と受電部27とは主に、電界によって結合している。このときには、送電部28と受電部27とは、「電界(電場)共振結合」している。
【0077】
図6は、送電部28および受電部27の構成を模式的に示す斜視図である。この図6に示すように、送電部28のコイルユニット23には、同軸ケーブル50が接続されている。同軸ケーブル50は、内側導体51と、内側導体51の外周を被覆する絶縁体52と、絶縁体の外周を覆うように形成された外側導体53と、外側導体53の外周を覆うように形成された保護被膜(シース)54とを含む。内側導体51は、高周波電力ドライバ22に接続されており、外側導体53は、アースされている。このため、外側導体53の電位は0Vとされている。その一方で、内側導体51には、たとえば、0(V)〜A(V)(A:正の数)の電圧が印加されている。
【0078】
コイルユニット23は、共鳴コイル24の周囲に配置され、コイル線を複数巻回して形成されたコイル60と、このコイル60に接続されたコイル61とを含む。コイル60は、単位コイル62と、単位コイル62に接続された単位コイル63と、単位コイル63に接続された単位コイル64とを含む。
【0079】
単位コイル62の巻数と、単位コイル63の巻数と、単位コイル64の巻数とは、いずれも、1巻とされており、各単位コイルの巻数は一致している。そして、単位コイル62と、単位コイル63と、単位コイル64とは、いずれも、同軸上に配置されており、単位コイル62と単位コイル63と単位コイル64の巻径は、いずれも、一致している。すなわち、単位コイル62と、単位コイル63と、単位コイル64とは互いに同一形状ある。このため、各単位コイル62〜64を通る磁束は共通する。
【0080】
コイル61は、この図6に示す例においては、略1巻に形成されている。このコイル61は、端部65および端部66を含む。単位コイル62は、同軸ケーブル50の内側導体51に接続された端部67と、コイル61の端部65に接続された端部68とを含む。
【0081】
単位コイル63は、単位コイル62の端部68に接続された端部69と、同軸ケーブル50の外側導体53に接続された端部70とを含む。単位コイル64は、単位コイル63の端部70に接続された端部71と、コイル61の端部66に接続された端部72とを含む。
【0082】
受電部27のコイルユニット12には、同軸ケーブル150が接続されている。同軸ケーブル150は、内側導体151と、内側導体151の外周を被覆する絶縁体152と、絶縁体の外周を覆うように形成された外側導体153と、外側導体153の外周を覆うように形成された保護被膜(シース)154とを含む。内側導体151は、整流器13に接続されており、外側導体153は、アースされている。このため、外側導体153の電位は0Vとされている。
【0083】
コイルユニット12は、共鳴コイル27の周囲に配置され、コイル線を複数巻回して形成されたコイル160と、このコイル160に接続されたコイル161とを含む。コイル160は、単位コイル162と、単位コイル162に接続された単位コイル163と、単位コイル163に接続された単位コイル164とを含む。
【0084】
単位コイル162の巻数と、単位コイル163の巻数と、単位コイル164の巻数とは、いずれも、1巻とされており、各単位コイルの巻数は一致している。そして、単位コイル162と、単位コイル163と、単位コイル164とは、いずれも、同軸上に配置されており、単位コイル162と単位コイル163と単位コイル164の巻径は、いずれも、一致している。すなわち、単位コイル162と、単位コイル163と、単位コイル164とは互いに同一形状ある。
【0085】
コイル161は、この図6に示す例においては、略1巻に形成されている。このコイル161は、端部165および端部166を含む。単位コイル162は、同軸ケーブル150の内側導体151に接続された端部167と、コイル161の端部165に接続された端部168とを含む。
【0086】
単位コイル163は、単位コイル162の端部168に接続された端部169と、同軸ケーブル150の外側導体153に接続された端部170とを含む。単位コイル164は、単位コイル163の端部170に接続された端部171と、コイル161の端部166に接続された端部172とを含む。
【0087】
上記のように構成された送電部28および受電部27を用いて、電力を伝送するときに、各コイルに流れる電流などについて説明する。
【0088】
図7は、図6に示すコイルユニット23および交流電源21などを示す電気回路図である。ここで、コイル60に交流電源21からの交流電流が供給されると、電磁誘導によってコイル60に誘導起電力が生じ、各単位コイル62〜64は、所定の範囲内で電位が変動する。
【0089】
そこで、各単位コイル62〜64の電位変動について説明する。この図7および図6において、交流電源21から、たとえば、0(V)〜A(V)の電圧の不平衡電流がコイルユニット23に供給されると、単位コイル62の端部67と、単位コイル63の端部70との間は、電圧が0(V)〜A(V)で変動する。
【0090】
さらに、単位コイル63と単位コイル64とは同軸上に配置されており、単位コイル63の巻数と、単位コイル64の巻数とは一致している。このため、単位コイル63の端部70と端部69の間に生じる電位差と、単位コイル64の端部71と端部72の間に生じる電位差は等しくなる。
【0091】
単位コイル64の端部71は、アースされているので、単位コイル64の端部71と端部72との間には、電圧が−A/2(V)〜0(V)の範囲で変動する。
【0092】
そして、コイル61の端部66は、端部72に接続されており、端部65は端部69に接続されているため、コイル61には、電圧が−A/2(V)〜A/2(V)の範囲で振動する交流電流が流れることになる。
【0093】
この図7においては、模式的にコイル61を中央部で2つのコイル61aとコイル61bとに分割している。そして、コイル61の長さ方向の中央部を中央部Cとすると、この中央部Cの電位は0(V)となる。このように、コイル60は、交流電源21からの不平衡な電流を平衡な電流に変換してコイル61に供給している。
【0094】
その一方で、単位コイル62および単位コイル63を一体のコイルとしてみると、当該コイルの端部67は、−A(V)〜A(V)の電圧が印加され、他方の端部70は0(A)とされている。このため、単位コイル62および単位コイル63から形成されたコイルには、不平衡な電流が流れており、同軸ケーブル50は当該コイルに接続されているため、外側導体53にコモンモード電流が流れることが抑制されている。
【0095】
このように、同軸ケーブル50の外側導体53にコモンモード電流が流れることが抑制されているので、同軸ケーブル50から外部に向けてノイズが放射されることが抑制されている。
【0096】
図6において、送電部28は、多層巻のコイルが採用されている。そして、コイル60は、送電部28の周囲に配置されている。電力伝送時において、送電部28の周囲にはエバネッセント場(近傍場)が形成されている。
【0097】
ここで、単位コイル62〜64の電位は誘導起電力によって決まるものであり、当該誘電起電力はコイル60をとおる磁束量によって決まるものである。
【0098】
本実施の形態においては、コイル60は、送電部28の周囲に配置されているため、エネルギの高いエバネッセント場から多くの磁力線が供給されやすくなっている。
【0099】
このため、交流電源21から供給される電位変動に合わせて、多量の磁力線がコイル60をとおり、コイル60に良好に誘電起電力が発生する。特に、コイル60と、共鳴コイル24とは、コイル60の巻回中心線と、送電装置41の共鳴コイル24の巻回中心線とが一致するように同軸上に配置されており、コイル60と共鳴コイル24とは互いに対向するように配置されている。このため、送電装置41の周囲に形成されるエバネッセント場からコイル60に良好に磁束が供給される。
【0100】
このため、コイル60にフェライトコアを挿入していない状態においても、コイル60に誘電起電力を生じさせることができ、フェライトコアを省略することができる。これに伴い、フェライトコアが高温となる等の弊害が発生することがない。
【0101】
このように、コイル60に誘電起電力が発生することで、コイル60には、電流I1が流れる。コイル61はコイル60に接続されており、コイル60にも電流I2が流れる。ここで、本実施の形態においては、コイル61とコイル60とが互いに対向し、コイル61と共鳴コイル24とが互いに対向するように、共鳴コイル24、コイル61およびコイル60が同軸上に配置されている。ここで、図6において、コイル61の端部65は、正の電位が印加され、端部66には負の電位が印加されるため、電流I2の流れる方向と、電流I1の流れる方向とは反対方向となる。
【0102】
このため、コイル61から放射される磁力線の方向と、コイル60から放射される磁力線の方向とは反対方向となり、コイルユニット23から共鳴コイル24に向けて放射される磁束量は、コイル60からの磁束量からコイル61からの磁束量を引いたものとなる。
【0103】
換言すれば、コイル61の巻数を調整することで、送電部28に供給する磁束量を調整することができ、送電側のインピーダンスを調整することができる。
【0104】
これにより、車両の受電側のインピーダンスと、送電側のインピーダンスとの整合を図ることができ、送電装置41から受電装置40に電力を伝送するときの伝送効率を高めることができる。
【0105】
図6において、コイルユニット23から共鳴コイル24に向けて放射される磁束の変動は、コイルユニット23に供給される電流の周波数によって決まる。コイルユニット23から共鳴コイル24に放射される磁束が変化することで、共鳴コイル24に誘電起電力が生じる。これにより、共鳴コイル24に交流電流が流れる。この際、共鳴コイル24内を流れる交流電流の周波数は、電力伝送効率が高くなる特定の周波数である。
【0106】
このように、共鳴コイル24に特定の周波数の交流電流が流れることで、共鳴コイル24の周囲には、周波数が特定の周波数の磁界が形成される。そして、受電部27(共鳴コイル11)が当該磁界から電力を受け取る。共鳴コイル11には、特定の周波数の交流電流が流れる。
【0107】
共鳴コイル11に交流電流が流れると、共鳴コイル11からコイルユニット12に向けて流れる磁束が変化する。これにより、コイル161〜164の各々に電流が流れる。
【0108】
図8は、コイルユニット12およびバッテリ15などを示す電気回路図である。図8において、コイル161の長さ方向の中央部を中央部C1とする。この図8においては、模式的に、コイル161は、中央部C1において、コイル161aとコイル161bとに分割している。
【0109】
共鳴コイル11から磁束の変化によって、コイル161に誘導起電力が生じる。誘導起電力によって、コイル161内を流れる電流は、平衡電流であり、端部166および端部165の間には、−B(V)〜B(V)の間の電圧が印加される。中央部C1の電位は、0Vである。
【0110】
ここで、単位コイル164および単位コイル163は、コイル161と並行に接続されているため、単位コイル164の端部172と、単位コイル163の端部169との間にも、−B(V)〜B(V)の間の電圧が印加される。
【0111】
単位コイル163と単位コイル164とは同じ形状のコイルであるため、各単位コイルに印加される電圧が等しくなる。単位コイル163の端部170は、アースされているため、単位コイル163の端部170および端部169の間の電位差は、B(V)となる。
【0112】
ここで、単位コイル162と単位コイル163とは、同一のコイルであるため、単位コイル162の端部168および端部167の間の電位差もB(V)となる。
【0113】
単位コイル163の端部170は0Vであるため、単位コイル162および単位コイル163を一体のコイルと見なすと、当該コイルには、0(V)〜2B(V)の不平衡電流が流れる。
【0114】
そして、この不平衡電流が整流器13およびコンバータ14に供給される。整流器13は、不平衡の電力を直流の電力に変換して、バッテリ15を充電する。なお、外側導体153には、0(V)が印加されているため、外側導体153にコモンモード電流が流れることが抑制されている。このため、図6に示す同軸ケーブル150からもノイズが発生することが抑制されている。
【0115】
図6において、コイル160は、受電部27の周囲に配置されている。電力伝送時には、受電部27の周囲にも、エネルギの高いエバネッセント場が形成されている。コイル160は、受電部27の周囲に配置されているため、エバネッセント場から良好に磁束が供給される。これにより、各単位コイル162〜単位コイル164が機能し、コイル160が平衡電流を不平衡電流に変換するバランとして機能する。このため、コイル160においても、フェライトコアを省略することができる。
【0116】
さらに、コイル161と、コイル160とは、互いに対向するように配置されている。これにより、たとえば、コイル161の巻き数などを調整することで、受電部27側のインピーダンスを調整することができる。これにより、車両側のインピーダンスと、送電側のインピーダンスとの整合を取ることができる。
【0117】
図9は、図6に示す送電部28の変形例を示す模式図である。この図9に示す例においては、コイル61は2巻程度とされている。これにより、コイルユニット23から送電部28に供給される磁束量は、図6に示すコイルユニット23から送電部28に供給される磁束量から変化する。
【0118】
この図9に示す例においては、コイル61の巻数を変更することで、送電側のインピーダンスを変化させているが、当然のことながら、図6に示すコイル60の巻数およびコイル61の巻数をそれぞれ整数倍させることでも送電側のインピーダンスを調整することができる。
【0119】
図10は、図8に示す送電装置41が採用された電力伝送システムを示す。図10に示す電力伝送システムは、送電部28とコイルユニット23とを含む送電装置41と、この送電装置41と実質的に同じ構成の受電装置40とを備える。受電装置40には同軸ケーブル90が接続されており、受電装置40は、コイルユニット80と、受電器27とを含む。
【0120】
同軸ケーブル90は、内側導体91と、この内側導体91の外周面を覆うように形成された絶縁体92と、絶縁体92の外周面上に形成された外側導体93と、外側導体93の外周面を覆う保護被膜94とを含む。
【0121】
受電器27は、複数巻された共鳴コイル11と、共鳴コイル11の両端部に接続されたキャパシタ19とを含む。受電器27の固有振動数と、送電部28の固有振動数とは一致している。
【0122】
コイルユニット80は、コイル81と、コイル81および同軸ケーブル90に接続されたコイル85とを含む。コイル81の巻数も、コイル61と同様に略2巻とされている。
【0123】
コイル85は、コイル60と実質的に同一の構成となっている。具体的には、コイル85は、単位コイル82と、単位コイル83と、単位コイル84とを含む。単位コイル82の一端は、外側導体93に接続されており、単位コイル82の他方の端部は、コイル81の一方の端部に接続されている。そして、単位コイル82とコイル81との接続部には、単位コイル83の一方の端部が接続されている。
【0124】
単位コイル83の他方の端部には内側導体91が接続されている。この単位コイル83の他方の端部には、単位コイル84の一方の端部が接続されている。単位コイル84の他方の端部には、コイル81の他方の端部が接続されている。なお、単位コイル82〜84の巻数は、いずれも、1巻とされている。
【0125】
そして、同軸ケーブル90および受電装置40のインピーダンスと、同軸ケーブル50および送電装置41のインピーダンスとが実質的に一致している。
【0126】
図11は、比較例としての電力伝送システムを模式的に示す模式図である。この図11に示す比較例は、送電装置86と、受電装置87とを含む。送電装置86は、コイル95と、共鳴器96とを含む。共鳴器96は、図10に示す送電部28と同じ構成とされている。コイル95は、略1巻のコイルであって、電源から電力を電磁誘導で共鳴器96に供給する。
【0127】
受電装置87は、共鳴器97と、コイル98とを含む。共鳴器97は、図10に示す受電器27と同じ構成となっている。コイル98は、略1巻のコイルであり、共鳴器97が受電した電力を電磁誘導で受電する。
【0128】
図12は、図11に示す比較例としての電力伝送システムにおける電力伝送効率を示すグラフである。図13は、図10に示す電力伝送システムにおける電力伝送効率を示すグラフである。
【0129】
なお、図12および図13において、横軸は供給される電力の周波数fを示す。縦軸は、電力伝送効率S11(dB)を示す。
【0130】
図12に示すように、比較例の電力伝送システムは、周波数f1および周波数f2のときに電力で伝送効率が最大となる。図10に示す電力伝送システムは、周波数f3および周波数f4のときに電力伝送効率が最大となる。
【0131】
さらに、比較例の電力伝送システムの電力伝送効率の最大値と、図10に示す電力伝送システムの電力伝送効率の最大値は、略一致している。
【0132】
このため、図10に示す電力伝送システムと、比較例の電力伝送システムとは、電力伝送効率がピークとなるときの周波数が互いにずれていることがわかる。
【0133】
換言すれば、図10に示すように、コイルユニット23およびコイルユニット80を採用することで、送電効率のピーク値を維持しつつも、送電側および受電側のインピーダンスを変更することができることがわかる。
【0134】
さらに、コイルユニット23およびコイルユニット80を採用することで、同軸ケーブル90および同軸ケーブル50からノイズが放射されることを抑制することができる。なお、本実施の形態においては、共鳴コイル24と、コイル61と、コイル60とがいずれも、同軸上に配置されている例について説明しているが、コイル60が、送電装置41およびコイル61と同軸上に配置されている必要はない。
【0135】
たとえば、図9において、コイル61と共鳴コイル24とを同軸上に対向配置する一方で、コイル60を送電装置41の側方に配置するようにしてもよい。この場合には、コイル61と、共鳴コイル24とが同軸上に配置されているので、共鳴コイル24とコイル61とが良好に電磁誘導によって結合する。その一方で、コイル60には、共鳴コイル24の周囲に形成されるエバネッセント場から良好に磁束が供給される。これにより、コイル60は、交流電源21から供給される不平衡電流を良好に平衡電流に変換して、コイル61に供給することができる。
【0136】
さらに、本実施の形態においては、送電装置41および受電装置40に同軸ケーブルが採用された例について説明したが、同軸ケーブルにかえて、平行線路、ストリップライン(Stripline)やマイクロストリップラインなども採用することができる。なお、整流器13が平衡電流を変換して、バッテリ15を充電する場合には、受電装置40にコイルユニット12を採用せずに、電磁誘導コイルを採用することができる。この場合には、同軸ケーブル150にかえて、ツイストケーブルなどを採用することができる。
【0137】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。さらに、上記数値などは、例示であり、上記数値および範囲にかぎられない。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、送電装置、車両および電力伝送システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0139】
10 電動車両、11,24 共鳴コイル、12 電磁誘導コイル、13 整流器、14 コンバータ、15 バッテリ、16 パワーコントロールユニット、17 モータユニット、19,25 キャパシタ、20 外部給電装置、21 交流電源、22 高周波電力ドライバ、23,80 コイルユニット、26 制御部、27 受電器、28 送電部、31 高周波電源、32 一次コイル、33 一次共鳴コイル、34 二次共鳴コイル、35 二次コイル、36 負荷、40,87 受電装置、41,86 送電装置、42 駐車スペース、50,90 同軸ケーブル、51,91 内側導体、52,92 絶縁体、53,93 外側導体、60,61,81,85,95,98 コイル、62,63,64,82,83,84 単位コイル、65,66,67,68,69,70,71,72 端部、94 保護被膜、96,97 共鳴器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電装置、車両および電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮からバッテリなどの電力を用いて駆動輪を駆動させるハイブリッド車両や電気自動車などが着目されている。
【0003】
特に近年は、上記のようなバッテリを搭載した電動車両において、プラグなどを用いずに非接触でバッテリを充電可能なワイヤレス充電が着目されている。そして、最近では非接触の充電方式においても各種の充電方式が提案されており、特に、共鳴現象を利用することで非接触で電力を伝送する技術が脚光を浴びている。
【0004】
電磁共鳴を利用したワイヤレス電力伝送システムとしては、たとえば、特開2010−73976号公報に記載されたワイヤレス電力伝送システムが挙げられる。このワイヤレス電力伝送システムは、給電コイルを含む給電装置と、受電コイルを含む受電装置とを備える。そして、給電コイルと受電コイルとの間は、電磁共鳴によって電力の伝送がなされている。
【0005】
なお、一般に、特開2003−79597号公報、特開2008−67807号公報および特開2004−129689号公報に記載されているように、磁気共鳴撮像装置が従来から各種提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−73976号公報
【特許文献2】特開2003−79597号公報
【特許文献3】特開2008−67807号公報
【特許文献4】特開2004−129689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2010−73976号公報に記載されたワイヤレス電力伝送システムにおいては、電磁誘導コイルを用いて、送電コイルに電力を伝達している。電力伝送時には、電磁誘導コイルに電磁誘導による逆起電力による電圧が印加され、電磁誘導コイルを流れる電流は平衡状態の高周波電流となる。
【0008】
通常の配線に高周波の電流を流したのでは、配線自体がアンテナとして機能し、配線の周囲に電磁波が形成され、配線がノイズの発生源となるおそれがある。
【0009】
そこで、配線自体がノイズの発生源となることを抑制するために、電磁誘導コイルと電源とを接続する配線として、同軸ケーブルを採用することが考えられる。
【0010】
この同軸ケーブルは、内側導体と、この内側導体の外周を覆うように設けられた絶縁体と、絶縁体の外周に設けられた外側導体とを含み、外側導体はアースされる。
【0011】
一般的に、同軸ケーブルの外側導体がアースされると、内側導体を電流が流れたとしても、当該電流による磁界が外部に漏れることが抑制される。
【0012】
さらに、表面効果により、外側導体の内表面に電流が流れ、外側導体の外表面には電流が流れず、同軸ケーブルから電磁界が外部に放射されることが抑制されている。
【0013】
このように電磁誘導コイル内を流れる電流は、電流が平衡状態となる一方で、同軸ケーブルは、上記のように不平衡状態となっている。
【0014】
このため、単に、電磁誘導コイルに同軸ケーブルを接続して、電源からの電力を送電器に供給すると、同軸ケーブルの外側導体の外表面にコモンモード電流が流れる。コモンモード電流が流れると、同軸ケーブルから電磁波が放射され、ノイズの原因となる。
【0015】
このようなコモンモード電流を抑制する手法として、バランを同軸ケーブルと、送電器との間に配置することが考えられる。一般的に、バランは、フェライトコアと、このフェライトコアに巻き回されたコイルとを含む。
【0016】
その一方で、バランに高周波の電流が流れると、フェライトコアが加熱して高温となるという問題が生じる。
【0017】
特開2003−79597号公報などに記載された磁気共鳴撮像装置は、核磁気共鳴を利用して、身体の断面画像などを撮像する装置である。核磁気共鳴とは、水や脂肪の水素原子に外部から強い磁界をかけると、電磁波のエネルギーが水素原子だけに吸収され、エネルギー状態が高いほうへ励起する。このような現象を核磁気共鳴という。
【0018】
そして、励起した状態から元のエネルギ状態に戻る際に、水素原子の周囲に振動する磁場(電磁波)を発生する。元に戻るまでの時間(緩和時間)が組織やその状態、例えば正常細胞と癌細胞によって異なる。磁気共鳴撮像装置は、その情報を受信して、受信した情報に基づいてコンピュータによって画像化する。
【0019】
このように、磁気共鳴撮像装置は、非接触で電力を伝送する電力伝送システムとは全く異なる技術分に属している。
【0020】
特開2003−79597号公報などには、受電器に非接触で電力を送電する送電器に同軸ケーブルやバランを接続することについてすら記載されておらず、バランを接続することで、バランのコアが高温となることについて記載も示唆もされていない。
【0021】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、送電器に同軸ケーブルを接続したとしても、外部に放射されるノイズを低減することができると共に、特定の部材が高温となることを抑制することができる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る送電装置は、間隔をあけて設けられた受電部に電力を非接触で送電する送電部と、送電部と間隔をあけて設けられ、送電部に電力を供給する第1コイルユニットと、第1コイルユニットに接続され、電源からの電力を第1コイルユニットに供給する供給ケーブルとを備える。
【0023】
好ましくは、上記第1コイルユニットは、供給ケーブルに接続された第1コイルと、第1コイルに接続された第2コイルとを含む。上記第1コイルは、送電部の周囲に配置されると共に、電源から供給される不平衡電流を平衡電流に変換して第2コイルに供給する。好ましくは、上記送電部は、送電コイルを含み、送電コイルと第1コイルとは互いに対向するように配置される。
【0024】
好ましくは、上記送電コイルと第2コイルとは、互いに対向するように配置され、上記第1コイルを流れる電流方向と、第2コイルを流れる電流方向とを異ならせる。好ましくは、上記供給ケーブルは、内側導体と、内側導体の外周を覆うように設けられた絶縁体と、絶縁体上に配置され、アースされた外側導体とを含む。
【0025】
好ましくは、上記第1コイルは、第1単位コイルと、第1単位コイルに接続された第2単位コイルと、第2単位コイルに接続された第3単位コイルとを含む。上記第2コイルは、第1端部および第2端部を含む。上記第1単位コイルは、内側導体に接続された第3端部と、第1端部に接続された第4端部とを含む。上記第2単位コイルは、第4端部に接続された第5端部と、外側導体に接続された第6端部とを含む。上記第3単位コイルは、第6端部に接続された第7端部と、第2端部に接続された第8端部とを含む。
【0026】
好ましくは、上記第1単位コイルと、第2単位コイルと、第3単位コイルとは、互いに同軸上に配置される。好ましくは、上記第1単位コイルと、第2単位コイルと、第3単位コイルとは、同一形状とされる。
【0027】
好ましくは、上記送電部は、受電部と送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界と、受電部と送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて、受電部に電力を送電する。好ましくは、上記受電部と送電部との結合係数は、0.1以下である。好ましくは、上記送電部の固有周波数と受電部の固有周波数との差は、受電部の固有周波数の10%以下である。
【0028】
本発明に係る車両は、間隔をあけて設けられた送電部から非接触で電力を受電する受電部と、受電部と間隔をあけて設けられ、受電部から電力を受け取る第2コイルユニットと、第2コイルユニットに接続された受電ケーブルと、受電ケーブルに接続された変換器と、変換器に接続されたバッテリとを備える。上記第2コイルユニットは、受電ケーブルに接続された第3コイルと、第3コイルに接続された第4コイルとを含む。上記第3コイルは、受電部の周囲に配置されると共に、第4コイルから供給される平衡電流を不平衡電流に変換して、変換器に供給する。
【0029】
好ましくは、上記受電部は、受電コイルを含み、受電コイルと第3コイルとは互いに対向するように配置される。好ましくは、上記受電コイルと第4コイルとは、互いに対向するように配置される。上記第3コイルを流れる電流方向と、第4コイルを流れる電流方向とを異ならせる。好ましくは、上記受電ケーブルは、内側導体と、内側導体の外周を覆うように設けられた絶縁体と、絶縁体上に配置され、アースされた外側導体とを含む。
【0030】
好ましくは、上記第3コイルは、第4単位コイルと、第4単位コイルに接続された第5単位コイルと、第5単位コイルに接続された第6単位コイルとを含む。上記第4コイルは、第9端部および第10端部を含む。上記第4単位コイルは、内側導体に接続された第11端部と、第9端部に接続された第12端部とを含む。上記第5単位コイルは、第12端部に接続された第13端部と、外側導体に接続された第14端部とを含む。上記第6単位コイルは、第14端部に接続された第15端部と、第10端部に接続された第16端部とを含む。
【0031】
好ましくは、上記第4単位コイルと、第5単位コイルと、第6単位コイルとは、互いに同軸上に配置される。好ましくは、上記第4単位コイルと、第5単位コイルと、第6単位コイルとは、同一形状とされる。
【0032】
好ましくは、上記受電部は、受電部と送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界と、受電部と送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて送電部から電力を受電する。好ましくは、上記受電部と送電部との結合係数は、0.1以下である。好ましくは、上記送電部の固有周波数と受電部の固有周波数との差は、受電部の固有周波数の10%以下である。
【0033】
本発明に係る電力伝送システムは、受電部を含む車両と、送電装置とを備えた、電力伝送システムである。上記送電装置は、受電部に電力を非接触で送電する送電部と、送電部と間隔をあけて設けられ、送電部に電力を供給する第1コイルユニットと、第1コイルユニットに接続され、電源からの電力を第1コイルユニットに供給する供給ケーブルとを備える。上記第1コイルユニットは、供給ケーブルに接続された第1コイルと、第1コイルに接続された第2コイルとを含む。上記第1コイルは、送電部の周囲に配置されると共に、電源から供給される不平衡電流を平衡電流に変換して第2コイルに供給する。
【0034】
本発明に係る電力伝送システムは、上記送電部を含む送電装置と、受電装置を含む車両とを備えた、電力伝送システムである。上記車両は、送電部から非接触で電力を受電する受電部と、受電部と間隔をあけて設けられ、受電部から電力を受け取る第2コイルユニットと、第2コイルユニットに接続された受電ケーブルと、受電ケーブルに接続された変換器と、変換器に接続されたバッテリとを備える。上記第2コイルユニットは、受電ケーブルに接続された第3コイルと、第3コイルに接続された第4コイルとを含む。上記第3コイルは、受電部の周囲に配置されると共に、第4コイルから供給される平衡電流を不平衡電流に変換して、変換器に供給する。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る送電装置、車両および電力伝送システムによれば、同軸ケーブルから放射されるノイズを低減することができると共に、特定の部位が高温となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施の形態1に係る受電装置と、送電装置と、電力伝送システムとを模式的に示す模式図である。
【図2】電力伝送システムのシミュレーションモデルを示す図である。
【図3】シミュレーション結果をしめすグラフである。
【図4】固有周波数を固定した状態で、エアギャップを変化させたときの電力伝送効率と、共鳴コイルに供給される電流の周波数fとの関係を示すグラフである。
【図5】電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。
【図6】送電部28の構成を模式的に示す斜視図である。
【図7】図6に示すコイルユニット23および交流電源21などを示す電気回路図である。
【図8】コイルユニット12およびバッテリ15などを示す電気回路図である。
【図9】図6に示す送電部28の変形例を示す模式図である。
【図10】図8に示す送電装置41が採用された電力伝送システムを示す図である。
【図11】比較例としての電力伝送システムを模式的に示す模式図である。
【図12】図11に示す比較例としての電力伝送システムにおける電力伝送効率を示すグラフである。
【図13】図10に示す電力伝送システムにおける電力伝送効率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1から図13を用いて、本発明の実施の形態に係る受電装置と送電装置と、この送電装置および受電装置を含む電力伝送システムについて説明する。図1は、本実施の形態に係る受電装置と、送電装置と、電力伝送システムとを模式的に示す模式図である。
【0038】
本実施の形態1に係る電力伝送システムは、受電装置40を含む電動車両10と、送電装置41を含む外部給電装置20とを有する。電動車両10の受電装置40は、送電装置41が設けられた駐車スペース42の所定位置に停車して、主に、送電装置41から電力を受電する。
【0039】
駐車スペース42には、電動車両10を所定の位置に停車するように、輪止やラインが設けられている。
【0040】
外部給電装置20は、交流電源21に接続された高周波電力ドライバ22と、高周波電力ドライバ22などの駆動を制御する制御部26と、この高周波電力ドライバ22に接続された同軸ケーブル50と、同軸ケーブル50に接続された送電装置41とを含む。送電装置41は、送電部28と、コイルユニット23とを含む。送電部28は、共鳴コイル24と、共鳴コイル24に接続されたキャパシタ25とを含む。コイルユニット23は、高周波電力ドライバ22に電気的に接続されている。なお、この図1に示す例においては、キャパシタ25が設けられているが、キャパシタ25は必ずしも必須の構成ではない。
【0041】
送電部28は、共鳴コイル24のインダクタンスLと、共鳴コイル24の浮遊容量およびキャパシタ25のキャパシタンスとから形成された電気回路を含む。
【0042】
電動車両10は、受電装置40と、受電装置40に接続された整流器13と、この整流器13に接続されたDC/DCコンバータ14と、このDC/DCコンバータ14に接続されたバッテリ15と、パワーコントロールユニット(PCU(Power Control Unit))16と、このパワーコントロールユニット16に接続されたモータユニット17と、DC/DCコンバータ14やパワーコントロールユニット16などの駆動を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)18とを備える。なお、本実施の形態に係る電動車両10は、図示しないエンジンを備えたハイブリッド車両であるが、モータにより駆動される車両であれば、電気自動車や燃料電池車両も含む。
【0043】
整流器13は、コイルユニット12に接続されており、コイルユニット12から供給される交流電流を直流電流に変換して、DC/DCコンバータ14に供給する。
【0044】
DC/DCコンバータ14は、整流器13から供給された直流電流の電圧を調整して、バッテリ15に供給する。なお、DC/DCコンバータ14は必須の構成ではなく省略してもよい。この場合には、外部給電装置20にインピーダンスを整合するための整合器を設けることで、DC/DCコンバータ14の代用をすることができる。
【0045】
パワーコントロールユニット16は、バッテリ15に接続されたコンバータと、このコンバータに接続されたインバータとを含み、コンバータは、バッテリ15から供給される直流電流を調整(昇圧)して、インバータに供給する。インバータは、コンバータから供給される直流電流を交流電流に変換して、モータユニット17に供給する。
【0046】
モータユニット17は、たとえば、三相交流モータなどが採用されており、パワーコントロールユニット16のインバータから供給される交流電流によって駆動する。
【0047】
なお、電動車両10がハイブリッド車両の場合には、電動車両10は、エンジン、動力分割機構とをさらに備え、モータユニット17は、発電機として主に機能するモータジェネレータと、電動機として主に機能するモータジェネレータとを含む。
【0048】
受電装置40は、受電部27と、コイルユニット12とを含む。受電部27は、共鳴コイル11とキャパシタ19とを含む。共鳴コイル11は浮遊容量を有する。このため、受電部27は、共鳴コイル11のインダクタンスと、共鳴コイル11およびキャパシタ19のキャパシタンスとによって形成された電気回路を有する。
【0049】
本実施の形態に係る電力伝送システムにおいては、送電部28の固有周波数と、受電部27の固有周波数との差は、受電部27または送電部28の固有周波数の10%以下である。このような範囲に各送電部28および受電部27の固有周波数を設定することで、電力伝送効率を高めることができる。その一方で、固有周波数の差が受電部27または送電部28の固有周波数の10%よりも大きくなると、電力伝送効率が10%より小さくなり、バッテリ15の充電時間が長くなるなどの弊害が生じる。
【0050】
ここで、送電部28の固有周波数とは、キャパシタ25が設けられていない場合には、共鳴コイル24のインダクタンスと、共鳴コイル24のキャパシタンスとから形成された電気回路が自由振動する場合の振動周波数を意味する。キャパシタ25が設けられた場合には、送電部28の固有周波数とは、共鳴コイル24およびキャパシタ25のキャパシタンスと、共鳴コイル24のインダクタンスとによって形成された電気回路が自由振動する場合の振動周波数を意味する。上記電気回路において、制動力および電気抵抗をゼロもしくは実質的にゼロとしたときの固有周波数は、送電部28の共振周波数とも呼ばれる。
【0051】
同様に、受電部27の固有周波数とは、キャパシタ19が設けられていない場合には、共鳴コイル11のインダクタンスと、共鳴コイル11のキャパシタンスとから形成された電気回路が自由振動する場合の振動周波数を意味する。キャパシタ19が設けられた場合には、受電部27の固有周波数とは、共鳴コイル11およびキャパシタ19のキャパシタンスと、共鳴コイル11のインダクタンスとによって形成された電気回路が自由振動する場合の振動周波数を意味する。上記電気回路において、制動力および電気抵抗をゼロもしくは実質的にゼロとしたときの固有周波数は、受電部27の共振周波数とも呼ばれる。
【0052】
図2および図3を用いて、固有周波数の差と電力伝送効率との関係とを解析したシミュレーション結果について説明する。図2は、電力伝送システムのシミュレーションモデルを示す。電力伝送システム89は、送電装置90と、受電装置91とを備え、送電装置90は、電磁誘導コイル92と、送電部93とを含む。送電部93は、共鳴コイル94と、共鳴コイル94に設けられたキャパシタ95とを含む。
【0053】
受電装置91は、受電部96と、電磁誘導コイル97とを備える。受電部96は、共鳴コイル99とこの共鳴コイル99に接続されたキャパシタ98とを含む。
【0054】
共鳴コイル94のインダクタンスをインダクタンスLtとし、キャパシタ95のキャパシタンスをキャパシタンスC1とする。共鳴コイル99のインダクタンスをインダクタンスLrとし、キャパシタ98のキャパシタンスをキャパシタンスC2とする。このように各パラメータを設定すると、送電部93の固有周波数f1は、下記の式(1)によって示され、受電部96の固有周波数f2は、下記の式(2)によって示される。
【0055】
f1=1/{2π(Lt×C1)1/2}・・・(1)
f2=1/{2π(Lr×C2)1/2}・・・(2)
ここで、インダクタンスLrおよびキャパシタンスC1,C2を固定して、インダクタンスLtのみを変化させた場合において、送電部93および受電部96の固有周波数のズレと、電力伝送効率との関係を図3に示す。なお、このシミュレーションにおいては、共鳴コイル94および共鳴コイル99の相対的な位置関係は固定した状態であって、さらに、送電部93に供給される電流の周波数は一定である。
【0056】
図3に示すグラフのうち、横軸は、固有周波数のズレ(%)を示し、縦軸は、一定周波数での伝送効率(%)を示す。固有周波数のズレ(%)は、下記式(3)によって示される。
【0057】
(固有周波数のズレ)={(f1−f2)/f2}×100(%)・・・(3)
図3からも明らかなように、固有周波数のズレ(%)が±0%の場合には、電力伝送効率は、100%近くとなる。固有周波数のズレ(%)が±5%の場合には、電力伝送効率は、40%となる。固有周波数のズレ(%)が±10%の場合には、電力伝送効率は、10%となる。固有周波数のズレ(%)が±15%の場合には、電力伝送効率は、5%となる。すなわち、固有周波数のズレ(%)の絶対値(固有周波数の差)が、受電部96の固有周波数の10%以下の範囲となるように各送電部および受電部の固有周波数を設定することで電力伝送効率を高めることができることがわかる。さらに、固有周波数のズレ(%)の絶対値が受電部96の固有周波数の5%以下となるように、各送電部および受電部の固有周波数を設定することで電力伝送効率をより高めることができることがわかる。なお、シミュレーションソフトしては、電磁界解析ソフトウェア(JMAG(登録商標):株式会社JSOL製)を採用している。
【0058】
次に、本実施の形態に係る電力伝送システムの動作について説明する。
コイルユニット23には、高周波電力ドライバ22から交流の電力が供給される。コイルユニット23に所定の交流電流が流れると、電磁誘導によって共鳴コイル24にも交流電流が流れる。この際、共鳴コイル24を流れる交流電流の周波数が特定の周波数となるように、コイルユニット23に電力が供給されている。
【0059】
共鳴コイル24に特定の周波数の電流が流れると、共鳴コイル24の周囲には特定の周波数で振動する電磁界が形成される。
【0060】
共鳴コイル11は、共鳴コイル24から所定範囲内に配置されており、共鳴コイル11は共鳴コイル24の周囲に形成された電磁界から電力を受け取る。
【0061】
本実施の形態においては、共鳴コイル11および共鳴コイル24は、所謂、ヘリカルコイルが採用されている。このため、共鳴コイル11の周囲には、特定の周波数で振動する磁界が主に形成され、共鳴コイル24は当該磁界から電力を受け取る。
【0062】
ここで、共鳴コイル24の周囲に形成される特定の周波数の磁界について説明する。「特定の周波数の磁界」は、典型的には、電力伝送効率と共鳴コイル24に供給される電流の周波数と関連性を有する。そこで、まず、電力伝送効率と、共鳴コイル24に供給される電流の周波数との関係について説明する。共鳴コイル24から共鳴コイル11に電力を伝送するときの電力伝送効率は、共鳴コイル24および共鳴コイル11の間の距離などの様々な要因よって変化する。たとえば、送電部28および受電部27の固有周波数(共振周波数)を固有周波数f0とし、共鳴コイル24に供給される電流の周波数を周波数f3とし、共鳴コイル11および共鳴コイル24の間のエアギャップをエアギャップAGとする。
【0063】
図4は、固有周波数f0を固定した状態で、エアギャップAGを変化させたときの電力伝送効率と、共鳴コイル24に供給される電流の周波数f3との関係を示すグラフである。
【0064】
図4に示すグラフにおいて、横軸は、共鳴コイル24に供給する電流の周波数f3を示し、縦軸は、電力伝送効率(%)を示す。効率曲線L1は、エアギャップAGが小さいときの電力伝送効率と、共鳴コイル24に供給する電流の周波数f3との関係を模式的に示す。この効率曲線L1に示すように、エアギャップAGが小さい場合には、電力伝送効率のピークは周波数f4,f5(f4<f5)において生じる。エアギャップAGを大きくすると、電力伝送効率が高くなるときの2つのピークは、互いに近づくように変化する。そして、効率曲線L2に示すように、エアギャップAGを所定距離よりも大きくすると、電力伝送効率のピークは1つとなり、共鳴コイル24に供給する電流の周波数が周波数f6のときに電力伝送効率がピークとなる。エアギャップAGを効率曲線L2の状態よりもさらに大きくすると、効率曲線L3に示すように電力伝送効率のピークが小さくなる。
【0065】
たとえば、電力伝送効率の向上を図るため手法として次のような第1の手法が考えられる。第1の手法としては、エアギャップAGにあわせて、図1に示す共鳴コイル24に供給する電流の周波数を一定として、キャパシタ25やキャパシタ19のキャパシタンスを変化させることで、送電部28と受電部27との間での電力伝送効率の特性を変化させる手法が考えられる。具体的には、共鳴コイル24に供給される電流の周波数を一定とした状態で、電力伝送効率がピークとなるように、キャパシタ25およびキャパシタ19のキャパシタンスを調整する。この手法では、エアギャップAGの大きさに関係なく、共鳴コイル24および共鳴コイル11に流れる電流の周波数は一定である。なお、電力伝送効率の特性を変化させる手法としては、送電装置41と高周波電力ドライバ22との間に設けられた整合器を利用する手法や、コンバータ14を利用する手法などを採用することもできる。
【0066】
また、第2の手法としては、エアギャップAGの大きさに基づいて、共鳴コイル24に供給する電流の周波数を調整する手法である。たとえば、図4において、電力伝送特性が効率曲線L1となる場合には、共鳴コイル24には周波数が周波数f4または周波数f5の電流を共鳴コイル24を供給する。そして、周波数特性が効率曲線L2,L3となる場合には、周波数が周波数f6の電流を共鳴コイル24に供給する。この場合では、エアギャップAGの大きさに合わせて共鳴コイル24および共鳴コイル11に流れる電流の周波数を変化させることになる。
【0067】
第1の手法では、共鳴コイル24を流れる電流の周波数は、固定された一定の周波数となり、第2の手法では、共鳴コイル24を流れる周波数は、エアギャップAGによって適宜変化する周波数となる。第1の手法や第2の手法などによって、電力伝送効率が高くなるように設定された特定の周波数の電流が共鳴コイル24に供給される。共鳴コイル24に特定の周波数の電流が流れることで、共鳴コイル24の周囲には、特定の周波数で振動する磁界(電磁界)が形成される。受電部27は、受電部27と送電部28の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界を通じて送電部28から電力を受電している。したがって、「特定の周波数で振動する磁界」とは、必ずしも固定された周波数の磁界とは限らない。なお、上記の例では、エアギャップAGに着目して、共鳴コイル24に供給する電流の周波数を設定するようにしているが、電力伝送効率は、共鳴コイル24および共鳴コイル11の水平方向のずれ等のように他の要因によっても変化するものであり、当該他の要因に基づいて、共鳴コイル24に供給する電流の周波数を調整する場合がある。
【0068】
なお、本実施の形態では、共鳴コイルとしてヘリカルコイルを採用した例について説明したが、共鳴コイルとして、メアンダラインなどのアンテナなどを採用した場合には、共鳴コイル24に特定の周波数の電流が流れることで、特定の周波数の電界が共鳴コイル24の周囲に形成される。そして、この電界をとおして、送電部28と受電部27との間で電力伝送が行われる。
【0069】
本実施の形態に係る電力伝送システムにおいては、電磁界の「静電界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用することで、送電および受電効率の向上が図られている。
【0070】
図5は、電流源(磁流源)からの距離と電磁界の強度との関係を示した図である。図5を参照して、電磁界は3つの成分から成る。曲線k1は、波源からの距離に反比例した成分であり、「輻射電界」と称される。曲線k2は、波源からの距離の2乗に反比例した成分であり、「誘導電界」と称される。また、曲線k3は、波源からの距離の3乗に反比例した成分であり、「静電界」と称される。なお、電磁界の波長を「λ」とすると、「輻射電界」と「誘導電界」と「静電界」との強さが略等しくなる距離は、λ/2πとあらわすことができる。
【0071】
「静電界」は、波源からの距離とともに急激に電磁波の強度が減少する領域であり、本実施の形態に係る電力伝送システムでは、この「静電界」が支配的な近接場(エバネッセント場)を利用してエネルギー(電力)の伝送が行なわれる。すなわち、「静電界」が支配的な近接場において、同じ固有周波数を有する送電部28および受電部27(たとえば一対のLC共振コイル)を共鳴させることにより、送電部28から他方の受電部27へエネルギー(電力)を伝送する。この「静電界」は遠方にエネルギーを伝播しないので、遠方までエネルギーを伝播する「輻射電界」によってエネルギー(電力)を伝送する電磁波に比べて、共鳴法は、より少ないエネルギー損失で送電することができる。
【0072】
このように、本実施の形態に係る電力伝送システムにおいては、送電部28と受電部27とを電磁界によって共振させることで送電装置41から受電装置40に電力を送電している。そして、送電部28と受電部27との間の結合係数(κ)は、0.1以下である。なお、一般的に電磁誘導を利用した電力伝送では、送電部と受電部と間の結合係数(κ)は1.0に近いものとなっている。
【0073】
本実施の形態の電力伝送における送電部28と受電部27との結合を、たとえば、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電磁界(電磁場)共振結合」または「電界(電場)共振結合」という。
【0074】
「電磁界(電磁場)共振結合」は、「磁気共鳴結合」、「磁界(磁場)共鳴結合」、「電界(電場)共振結合」のいずれも含む結合を意味する。
【0075】
本明細書中で説明した送電部28の共鳴コイル24と受電部27の共鳴コイル11とは、コイル形状のアンテナが採用されているため、送電部28と受電部27とは主に、磁界によって結合しており、送電部28と受電部27とは、「磁気共鳴結合」または「磁界(磁場)共鳴結合」している。
【0076】
なお、共鳴コイル24,11として、たとえば、メアンダラインなどのアンテナを採用することも可能であり、この場合には、送電部28と受電部27とは主に、電界によって結合している。このときには、送電部28と受電部27とは、「電界(電場)共振結合」している。
【0077】
図6は、送電部28および受電部27の構成を模式的に示す斜視図である。この図6に示すように、送電部28のコイルユニット23には、同軸ケーブル50が接続されている。同軸ケーブル50は、内側導体51と、内側導体51の外周を被覆する絶縁体52と、絶縁体の外周を覆うように形成された外側導体53と、外側導体53の外周を覆うように形成された保護被膜(シース)54とを含む。内側導体51は、高周波電力ドライバ22に接続されており、外側導体53は、アースされている。このため、外側導体53の電位は0Vとされている。その一方で、内側導体51には、たとえば、0(V)〜A(V)(A:正の数)の電圧が印加されている。
【0078】
コイルユニット23は、共鳴コイル24の周囲に配置され、コイル線を複数巻回して形成されたコイル60と、このコイル60に接続されたコイル61とを含む。コイル60は、単位コイル62と、単位コイル62に接続された単位コイル63と、単位コイル63に接続された単位コイル64とを含む。
【0079】
単位コイル62の巻数と、単位コイル63の巻数と、単位コイル64の巻数とは、いずれも、1巻とされており、各単位コイルの巻数は一致している。そして、単位コイル62と、単位コイル63と、単位コイル64とは、いずれも、同軸上に配置されており、単位コイル62と単位コイル63と単位コイル64の巻径は、いずれも、一致している。すなわち、単位コイル62と、単位コイル63と、単位コイル64とは互いに同一形状ある。このため、各単位コイル62〜64を通る磁束は共通する。
【0080】
コイル61は、この図6に示す例においては、略1巻に形成されている。このコイル61は、端部65および端部66を含む。単位コイル62は、同軸ケーブル50の内側導体51に接続された端部67と、コイル61の端部65に接続された端部68とを含む。
【0081】
単位コイル63は、単位コイル62の端部68に接続された端部69と、同軸ケーブル50の外側導体53に接続された端部70とを含む。単位コイル64は、単位コイル63の端部70に接続された端部71と、コイル61の端部66に接続された端部72とを含む。
【0082】
受電部27のコイルユニット12には、同軸ケーブル150が接続されている。同軸ケーブル150は、内側導体151と、内側導体151の外周を被覆する絶縁体152と、絶縁体の外周を覆うように形成された外側導体153と、外側導体153の外周を覆うように形成された保護被膜(シース)154とを含む。内側導体151は、整流器13に接続されており、外側導体153は、アースされている。このため、外側導体153の電位は0Vとされている。
【0083】
コイルユニット12は、共鳴コイル27の周囲に配置され、コイル線を複数巻回して形成されたコイル160と、このコイル160に接続されたコイル161とを含む。コイル160は、単位コイル162と、単位コイル162に接続された単位コイル163と、単位コイル163に接続された単位コイル164とを含む。
【0084】
単位コイル162の巻数と、単位コイル163の巻数と、単位コイル164の巻数とは、いずれも、1巻とされており、各単位コイルの巻数は一致している。そして、単位コイル162と、単位コイル163と、単位コイル164とは、いずれも、同軸上に配置されており、単位コイル162と単位コイル163と単位コイル164の巻径は、いずれも、一致している。すなわち、単位コイル162と、単位コイル163と、単位コイル164とは互いに同一形状ある。
【0085】
コイル161は、この図6に示す例においては、略1巻に形成されている。このコイル161は、端部165および端部166を含む。単位コイル162は、同軸ケーブル150の内側導体151に接続された端部167と、コイル161の端部165に接続された端部168とを含む。
【0086】
単位コイル163は、単位コイル162の端部168に接続された端部169と、同軸ケーブル150の外側導体153に接続された端部170とを含む。単位コイル164は、単位コイル163の端部170に接続された端部171と、コイル161の端部166に接続された端部172とを含む。
【0087】
上記のように構成された送電部28および受電部27を用いて、電力を伝送するときに、各コイルに流れる電流などについて説明する。
【0088】
図7は、図6に示すコイルユニット23および交流電源21などを示す電気回路図である。ここで、コイル60に交流電源21からの交流電流が供給されると、電磁誘導によってコイル60に誘導起電力が生じ、各単位コイル62〜64は、所定の範囲内で電位が変動する。
【0089】
そこで、各単位コイル62〜64の電位変動について説明する。この図7および図6において、交流電源21から、たとえば、0(V)〜A(V)の電圧の不平衡電流がコイルユニット23に供給されると、単位コイル62の端部67と、単位コイル63の端部70との間は、電圧が0(V)〜A(V)で変動する。
【0090】
さらに、単位コイル63と単位コイル64とは同軸上に配置されており、単位コイル63の巻数と、単位コイル64の巻数とは一致している。このため、単位コイル63の端部70と端部69の間に生じる電位差と、単位コイル64の端部71と端部72の間に生じる電位差は等しくなる。
【0091】
単位コイル64の端部71は、アースされているので、単位コイル64の端部71と端部72との間には、電圧が−A/2(V)〜0(V)の範囲で変動する。
【0092】
そして、コイル61の端部66は、端部72に接続されており、端部65は端部69に接続されているため、コイル61には、電圧が−A/2(V)〜A/2(V)の範囲で振動する交流電流が流れることになる。
【0093】
この図7においては、模式的にコイル61を中央部で2つのコイル61aとコイル61bとに分割している。そして、コイル61の長さ方向の中央部を中央部Cとすると、この中央部Cの電位は0(V)となる。このように、コイル60は、交流電源21からの不平衡な電流を平衡な電流に変換してコイル61に供給している。
【0094】
その一方で、単位コイル62および単位コイル63を一体のコイルとしてみると、当該コイルの端部67は、−A(V)〜A(V)の電圧が印加され、他方の端部70は0(A)とされている。このため、単位コイル62および単位コイル63から形成されたコイルには、不平衡な電流が流れており、同軸ケーブル50は当該コイルに接続されているため、外側導体53にコモンモード電流が流れることが抑制されている。
【0095】
このように、同軸ケーブル50の外側導体53にコモンモード電流が流れることが抑制されているので、同軸ケーブル50から外部に向けてノイズが放射されることが抑制されている。
【0096】
図6において、送電部28は、多層巻のコイルが採用されている。そして、コイル60は、送電部28の周囲に配置されている。電力伝送時において、送電部28の周囲にはエバネッセント場(近傍場)が形成されている。
【0097】
ここで、単位コイル62〜64の電位は誘導起電力によって決まるものであり、当該誘電起電力はコイル60をとおる磁束量によって決まるものである。
【0098】
本実施の形態においては、コイル60は、送電部28の周囲に配置されているため、エネルギの高いエバネッセント場から多くの磁力線が供給されやすくなっている。
【0099】
このため、交流電源21から供給される電位変動に合わせて、多量の磁力線がコイル60をとおり、コイル60に良好に誘電起電力が発生する。特に、コイル60と、共鳴コイル24とは、コイル60の巻回中心線と、送電装置41の共鳴コイル24の巻回中心線とが一致するように同軸上に配置されており、コイル60と共鳴コイル24とは互いに対向するように配置されている。このため、送電装置41の周囲に形成されるエバネッセント場からコイル60に良好に磁束が供給される。
【0100】
このため、コイル60にフェライトコアを挿入していない状態においても、コイル60に誘電起電力を生じさせることができ、フェライトコアを省略することができる。これに伴い、フェライトコアが高温となる等の弊害が発生することがない。
【0101】
このように、コイル60に誘電起電力が発生することで、コイル60には、電流I1が流れる。コイル61はコイル60に接続されており、コイル60にも電流I2が流れる。ここで、本実施の形態においては、コイル61とコイル60とが互いに対向し、コイル61と共鳴コイル24とが互いに対向するように、共鳴コイル24、コイル61およびコイル60が同軸上に配置されている。ここで、図6において、コイル61の端部65は、正の電位が印加され、端部66には負の電位が印加されるため、電流I2の流れる方向と、電流I1の流れる方向とは反対方向となる。
【0102】
このため、コイル61から放射される磁力線の方向と、コイル60から放射される磁力線の方向とは反対方向となり、コイルユニット23から共鳴コイル24に向けて放射される磁束量は、コイル60からの磁束量からコイル61からの磁束量を引いたものとなる。
【0103】
換言すれば、コイル61の巻数を調整することで、送電部28に供給する磁束量を調整することができ、送電側のインピーダンスを調整することができる。
【0104】
これにより、車両の受電側のインピーダンスと、送電側のインピーダンスとの整合を図ることができ、送電装置41から受電装置40に電力を伝送するときの伝送効率を高めることができる。
【0105】
図6において、コイルユニット23から共鳴コイル24に向けて放射される磁束の変動は、コイルユニット23に供給される電流の周波数によって決まる。コイルユニット23から共鳴コイル24に放射される磁束が変化することで、共鳴コイル24に誘電起電力が生じる。これにより、共鳴コイル24に交流電流が流れる。この際、共鳴コイル24内を流れる交流電流の周波数は、電力伝送効率が高くなる特定の周波数である。
【0106】
このように、共鳴コイル24に特定の周波数の交流電流が流れることで、共鳴コイル24の周囲には、周波数が特定の周波数の磁界が形成される。そして、受電部27(共鳴コイル11)が当該磁界から電力を受け取る。共鳴コイル11には、特定の周波数の交流電流が流れる。
【0107】
共鳴コイル11に交流電流が流れると、共鳴コイル11からコイルユニット12に向けて流れる磁束が変化する。これにより、コイル161〜164の各々に電流が流れる。
【0108】
図8は、コイルユニット12およびバッテリ15などを示す電気回路図である。図8において、コイル161の長さ方向の中央部を中央部C1とする。この図8においては、模式的に、コイル161は、中央部C1において、コイル161aとコイル161bとに分割している。
【0109】
共鳴コイル11から磁束の変化によって、コイル161に誘導起電力が生じる。誘導起電力によって、コイル161内を流れる電流は、平衡電流であり、端部166および端部165の間には、−B(V)〜B(V)の間の電圧が印加される。中央部C1の電位は、0Vである。
【0110】
ここで、単位コイル164および単位コイル163は、コイル161と並行に接続されているため、単位コイル164の端部172と、単位コイル163の端部169との間にも、−B(V)〜B(V)の間の電圧が印加される。
【0111】
単位コイル163と単位コイル164とは同じ形状のコイルであるため、各単位コイルに印加される電圧が等しくなる。単位コイル163の端部170は、アースされているため、単位コイル163の端部170および端部169の間の電位差は、B(V)となる。
【0112】
ここで、単位コイル162と単位コイル163とは、同一のコイルであるため、単位コイル162の端部168および端部167の間の電位差もB(V)となる。
【0113】
単位コイル163の端部170は0Vであるため、単位コイル162および単位コイル163を一体のコイルと見なすと、当該コイルには、0(V)〜2B(V)の不平衡電流が流れる。
【0114】
そして、この不平衡電流が整流器13およびコンバータ14に供給される。整流器13は、不平衡の電力を直流の電力に変換して、バッテリ15を充電する。なお、外側導体153には、0(V)が印加されているため、外側導体153にコモンモード電流が流れることが抑制されている。このため、図6に示す同軸ケーブル150からもノイズが発生することが抑制されている。
【0115】
図6において、コイル160は、受電部27の周囲に配置されている。電力伝送時には、受電部27の周囲にも、エネルギの高いエバネッセント場が形成されている。コイル160は、受電部27の周囲に配置されているため、エバネッセント場から良好に磁束が供給される。これにより、各単位コイル162〜単位コイル164が機能し、コイル160が平衡電流を不平衡電流に変換するバランとして機能する。このため、コイル160においても、フェライトコアを省略することができる。
【0116】
さらに、コイル161と、コイル160とは、互いに対向するように配置されている。これにより、たとえば、コイル161の巻き数などを調整することで、受電部27側のインピーダンスを調整することができる。これにより、車両側のインピーダンスと、送電側のインピーダンスとの整合を取ることができる。
【0117】
図9は、図6に示す送電部28の変形例を示す模式図である。この図9に示す例においては、コイル61は2巻程度とされている。これにより、コイルユニット23から送電部28に供給される磁束量は、図6に示すコイルユニット23から送電部28に供給される磁束量から変化する。
【0118】
この図9に示す例においては、コイル61の巻数を変更することで、送電側のインピーダンスを変化させているが、当然のことながら、図6に示すコイル60の巻数およびコイル61の巻数をそれぞれ整数倍させることでも送電側のインピーダンスを調整することができる。
【0119】
図10は、図8に示す送電装置41が採用された電力伝送システムを示す。図10に示す電力伝送システムは、送電部28とコイルユニット23とを含む送電装置41と、この送電装置41と実質的に同じ構成の受電装置40とを備える。受電装置40には同軸ケーブル90が接続されており、受電装置40は、コイルユニット80と、受電器27とを含む。
【0120】
同軸ケーブル90は、内側導体91と、この内側導体91の外周面を覆うように形成された絶縁体92と、絶縁体92の外周面上に形成された外側導体93と、外側導体93の外周面を覆う保護被膜94とを含む。
【0121】
受電器27は、複数巻された共鳴コイル11と、共鳴コイル11の両端部に接続されたキャパシタ19とを含む。受電器27の固有振動数と、送電部28の固有振動数とは一致している。
【0122】
コイルユニット80は、コイル81と、コイル81および同軸ケーブル90に接続されたコイル85とを含む。コイル81の巻数も、コイル61と同様に略2巻とされている。
【0123】
コイル85は、コイル60と実質的に同一の構成となっている。具体的には、コイル85は、単位コイル82と、単位コイル83と、単位コイル84とを含む。単位コイル82の一端は、外側導体93に接続されており、単位コイル82の他方の端部は、コイル81の一方の端部に接続されている。そして、単位コイル82とコイル81との接続部には、単位コイル83の一方の端部が接続されている。
【0124】
単位コイル83の他方の端部には内側導体91が接続されている。この単位コイル83の他方の端部には、単位コイル84の一方の端部が接続されている。単位コイル84の他方の端部には、コイル81の他方の端部が接続されている。なお、単位コイル82〜84の巻数は、いずれも、1巻とされている。
【0125】
そして、同軸ケーブル90および受電装置40のインピーダンスと、同軸ケーブル50および送電装置41のインピーダンスとが実質的に一致している。
【0126】
図11は、比較例としての電力伝送システムを模式的に示す模式図である。この図11に示す比較例は、送電装置86と、受電装置87とを含む。送電装置86は、コイル95と、共鳴器96とを含む。共鳴器96は、図10に示す送電部28と同じ構成とされている。コイル95は、略1巻のコイルであって、電源から電力を電磁誘導で共鳴器96に供給する。
【0127】
受電装置87は、共鳴器97と、コイル98とを含む。共鳴器97は、図10に示す受電器27と同じ構成となっている。コイル98は、略1巻のコイルであり、共鳴器97が受電した電力を電磁誘導で受電する。
【0128】
図12は、図11に示す比較例としての電力伝送システムにおける電力伝送効率を示すグラフである。図13は、図10に示す電力伝送システムにおける電力伝送効率を示すグラフである。
【0129】
なお、図12および図13において、横軸は供給される電力の周波数fを示す。縦軸は、電力伝送効率S11(dB)を示す。
【0130】
図12に示すように、比較例の電力伝送システムは、周波数f1および周波数f2のときに電力で伝送効率が最大となる。図10に示す電力伝送システムは、周波数f3および周波数f4のときに電力伝送効率が最大となる。
【0131】
さらに、比較例の電力伝送システムの電力伝送効率の最大値と、図10に示す電力伝送システムの電力伝送効率の最大値は、略一致している。
【0132】
このため、図10に示す電力伝送システムと、比較例の電力伝送システムとは、電力伝送効率がピークとなるときの周波数が互いにずれていることがわかる。
【0133】
換言すれば、図10に示すように、コイルユニット23およびコイルユニット80を採用することで、送電効率のピーク値を維持しつつも、送電側および受電側のインピーダンスを変更することができることがわかる。
【0134】
さらに、コイルユニット23およびコイルユニット80を採用することで、同軸ケーブル90および同軸ケーブル50からノイズが放射されることを抑制することができる。なお、本実施の形態においては、共鳴コイル24と、コイル61と、コイル60とがいずれも、同軸上に配置されている例について説明しているが、コイル60が、送電装置41およびコイル61と同軸上に配置されている必要はない。
【0135】
たとえば、図9において、コイル61と共鳴コイル24とを同軸上に対向配置する一方で、コイル60を送電装置41の側方に配置するようにしてもよい。この場合には、コイル61と、共鳴コイル24とが同軸上に配置されているので、共鳴コイル24とコイル61とが良好に電磁誘導によって結合する。その一方で、コイル60には、共鳴コイル24の周囲に形成されるエバネッセント場から良好に磁束が供給される。これにより、コイル60は、交流電源21から供給される不平衡電流を良好に平衡電流に変換して、コイル61に供給することができる。
【0136】
さらに、本実施の形態においては、送電装置41および受電装置40に同軸ケーブルが採用された例について説明したが、同軸ケーブルにかえて、平行線路、ストリップライン(Stripline)やマイクロストリップラインなども採用することができる。なお、整流器13が平衡電流を変換して、バッテリ15を充電する場合には、受電装置40にコイルユニット12を採用せずに、電磁誘導コイルを採用することができる。この場合には、同軸ケーブル150にかえて、ツイストケーブルなどを採用することができる。
【0137】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。さらに、上記数値などは、例示であり、上記数値および範囲にかぎられない。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、送電装置、車両および電力伝送システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0139】
10 電動車両、11,24 共鳴コイル、12 電磁誘導コイル、13 整流器、14 コンバータ、15 バッテリ、16 パワーコントロールユニット、17 モータユニット、19,25 キャパシタ、20 外部給電装置、21 交流電源、22 高周波電力ドライバ、23,80 コイルユニット、26 制御部、27 受電器、28 送電部、31 高周波電源、32 一次コイル、33 一次共鳴コイル、34 二次共鳴コイル、35 二次コイル、36 負荷、40,87 受電装置、41,86 送電装置、42 駐車スペース、50,90 同軸ケーブル、51,91 内側導体、52,92 絶縁体、53,93 外側導体、60,61,81,85,95,98 コイル、62,63,64,82,83,84 単位コイル、65,66,67,68,69,70,71,72 端部、94 保護被膜、96,97 共鳴器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて設けられた受電部に電力を非接触で送電する送電部と、
前記送電部と間隔をあけて設けられ、前記送電部に電力を供給する第1コイルユニットと、
前記第1コイルユニットに接続され、電源からの電力を前記第1コイルユニットに供給する供給ケーブルと、
を備え、
前記第1コイルユニットは、前記供給ケーブルに接続された第1コイルと、前記第1コイルに接続された第2コイルとを含み、
前記第1コイルは、前記送電部の周囲に配置されると共に、前記電源から供給される不平衡電流を平衡電流に変換して前記第2コイルに供給する、送電装置。
【請求項2】
前記送電部は、送電コイルを含み、
前記送電コイルと前記第1コイルとは互いに対向するように配置された、請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記送電コイルと前記第2コイルとは、互いに対向するように配置され、
前記第1コイルを流れる電流方向と、前記第2コイルを流れる電流方向とを異ならせた、請求項2に記載の送電装置。
【請求項4】
前記供給ケーブルは、内側導体と、前記内側導体の外周を覆うように設けられた絶縁体と、前記絶縁体上に配置され、アースされた外側導体とを含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の送電装置。
【請求項5】
前記第1コイルは、第1単位コイルと、前記第1単位コイルに接続された第2単位コイルと、前記第2単位コイルに接続された第3単位コイルとを含み、
前記第2コイルは、第1端部および第2端部を含み、
前記第1単位コイルは、前記内側導体に接続された第3端部と、前記第1端部に接続された第4端部とを含み、
前記第2単位コイルは、前記第4端部に接続された第5端部と、前記外側導体に接続された第6端部とを含み、
前記第3単位コイルは、前記第6端部に接続された第7端部と、前記第2端部に接続された第8端部とを含む、請求項4に記載の送電装置。
【請求項6】
前記第1単位コイルと、前記第2単位コイルと、前記第3単位コイルとは、互いに同軸上に配置された、請求項5に記載の送電装置。
【請求項7】
前記第1単位コイルと、前記第2単位コイルと、前記第3単位コイルとは、同一形状とされた、請求項5または請求項6に記載の送電装置。
【請求項8】
前記送電部は、前記受電部と前記送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界と、前記受電部と前記送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて、前記受電部に電力を送電する、請求項1から請求項7のいずれかに記載の送電装置。
【請求項9】
前記受電部と前記送電部との結合係数は、0.1以下である、請求項1から請求項8のいずれかに記載の送電装置。
【請求項10】
前記送電部の固有周波数と前記受電部の固有周波数との差は、前記受電部の固有周波数の10%以下である、請求項1から請求項9のいずれかに記載の送電装置。
【請求項11】
間隔をあけて設けられた送電部から非接触で電力を受電する受電部と、
前記受電部と間隔をあけて設けられ、前記受電部から電力を受け取る第2コイルユニットと、
前記第2コイルユニットに接続された受電ケーブルと、
前記受電ケーブルに接続された変換器と、
前記変換器に接続されたバッテリと、
を備え、
前記第2コイルユニットは、前記受電ケーブルに接続された第3コイルと、前記第3コイルに接続された第4コイルとを含み、
前記第3コイルは、前記受電部の周囲に配置されると共に、前記第4コイルから供給される平衡電流を不平衡電流に変換して、前記変換器に供給する、車両。
【請求項12】
前記受電部は、受電コイルを含み、
前記受電コイルと前記第3コイルとは互いに対向するように配置された、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
前記受電コイルと前記第4コイルとは、互いに対向するように配置され、
前記第3コイルを流れる電流方向と、前記第4コイルを流れる電流方向とを異ならせた、請求項12に記載の車両。
【請求項14】
前記受電ケーブルは、内側導体と、前記内側導体の外周を覆うように設けられた絶縁体と、前記絶縁体上に配置され、アースされた外側導体とを含む、請求項11から請求項13のいずれかに記載の車両。
【請求項15】
前記第3コイルは、第4単位コイルと、前記第4単位コイルに接続された第5単位コイルと、前記第5単位コイルに接続された第6単位コイルとを含み、
前記第4コイルは、第9端部および第10端部を含み、
前記第4単位コイルは、前記内側導体に接続された第11端部と、前記第9端部に接続された第12端部とを含み、
前記第5単位コイルは、前記第12端部に接続された第13端部と、前記外側導体に接続された第14端部とを含み、
前記第6単位コイルは、前記第14端部に接続された第15端部と、前記第10端部に接続された第16端部とを含む、請求項14に記載の車両。
【請求項16】
前記第4単位コイルと、前記第5単位コイルと、前記第6単位コイルとは、互いに同軸上に配置された、請求項15に記載の車両。
【請求項17】
前記第4単位コイルと、前記第5単位コイルと、前記第6単位コイルとは、同一形状とされた、請求項15または請求項16に記載の車両。
【請求項18】
前記受電部は、前記受電部と前記送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界と、前記受電部と前記送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて前記送電部から電力を受電する、請求項11から請求項17のいずれかに記載の車両。
【請求項19】
前記受電部と前記送電部との結合係数は、0.1以下である、請求項11から請求項18のいずれかに記載の車両。
【請求項20】
前記送電部の固有周波数と前記受電部の固有周波数との差は、前記受電部の固有周波数の10%以下である、請求項11から請求項19のいずれかに記載の車両。
【請求項21】
受電部を含む車両と、送電装置とを備えた、電力伝送システムであって、
前記送電装置は、前記受電部に電力を非接触で送電する送電部と、
前記送電部と間隔をあけて設けられ、前記送電部に電力を供給する第1コイルユニットと、
前記第1コイルユニットに接続され、電源からの電力を前記第1コイルユニットに供給する供給ケーブルと、
を備え、
前記第1コイルユニットは、前記供給ケーブルに接続された第1コイルと、前記第1コイルに接続された第2コイルとを含み、
前記第1コイルは、前記送電部の周囲に配置されると共に、前記電源から供給される不平衡電流を平衡電流に変換して前記第2コイルに供給する、電力伝送システム。
【請求項22】
送電部を含む送電装置と、受電装置を含む車両とを備えた、電力伝送システムであって、
前記車両は、前記送電部から非接触で電力を受電する受電部と、
前記受電部と間隔をあけて設けられ、前記受電部から電力を受け取る第2コイルユニットと、
前記第2コイルユニットに接続された受電ケーブルと、
前記受電ケーブルに接続された変換器と、
前記変換器に接続されたバッテリと、
を備え、
前記第2コイルユニットは、前記受電ケーブルに接続された第3コイルと、前記第3コイルに接続された第4コイルとを含み、
前記第3コイルは、前記受電部の周囲に配置されると共に、前記第4コイルから供給される平衡電流を不平衡電流に変換して、前記変換器に供給する、電力伝送システム。
【請求項1】
間隔をあけて設けられた受電部に電力を非接触で送電する送電部と、
前記送電部と間隔をあけて設けられ、前記送電部に電力を供給する第1コイルユニットと、
前記第1コイルユニットに接続され、電源からの電力を前記第1コイルユニットに供給する供給ケーブルと、
を備え、
前記第1コイルユニットは、前記供給ケーブルに接続された第1コイルと、前記第1コイルに接続された第2コイルとを含み、
前記第1コイルは、前記送電部の周囲に配置されると共に、前記電源から供給される不平衡電流を平衡電流に変換して前記第2コイルに供給する、送電装置。
【請求項2】
前記送電部は、送電コイルを含み、
前記送電コイルと前記第1コイルとは互いに対向するように配置された、請求項1に記載の送電装置。
【請求項3】
前記送電コイルと前記第2コイルとは、互いに対向するように配置され、
前記第1コイルを流れる電流方向と、前記第2コイルを流れる電流方向とを異ならせた、請求項2に記載の送電装置。
【請求項4】
前記供給ケーブルは、内側導体と、前記内側導体の外周を覆うように設けられた絶縁体と、前記絶縁体上に配置され、アースされた外側導体とを含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の送電装置。
【請求項5】
前記第1コイルは、第1単位コイルと、前記第1単位コイルに接続された第2単位コイルと、前記第2単位コイルに接続された第3単位コイルとを含み、
前記第2コイルは、第1端部および第2端部を含み、
前記第1単位コイルは、前記内側導体に接続された第3端部と、前記第1端部に接続された第4端部とを含み、
前記第2単位コイルは、前記第4端部に接続された第5端部と、前記外側導体に接続された第6端部とを含み、
前記第3単位コイルは、前記第6端部に接続された第7端部と、前記第2端部に接続された第8端部とを含む、請求項4に記載の送電装置。
【請求項6】
前記第1単位コイルと、前記第2単位コイルと、前記第3単位コイルとは、互いに同軸上に配置された、請求項5に記載の送電装置。
【請求項7】
前記第1単位コイルと、前記第2単位コイルと、前記第3単位コイルとは、同一形状とされた、請求項5または請求項6に記載の送電装置。
【請求項8】
前記送電部は、前記受電部と前記送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界と、前記受電部と前記送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて、前記受電部に電力を送電する、請求項1から請求項7のいずれかに記載の送電装置。
【請求項9】
前記受電部と前記送電部との結合係数は、0.1以下である、請求項1から請求項8のいずれかに記載の送電装置。
【請求項10】
前記送電部の固有周波数と前記受電部の固有周波数との差は、前記受電部の固有周波数の10%以下である、請求項1から請求項9のいずれかに記載の送電装置。
【請求項11】
間隔をあけて設けられた送電部から非接触で電力を受電する受電部と、
前記受電部と間隔をあけて設けられ、前記受電部から電力を受け取る第2コイルユニットと、
前記第2コイルユニットに接続された受電ケーブルと、
前記受電ケーブルに接続された変換器と、
前記変換器に接続されたバッテリと、
を備え、
前記第2コイルユニットは、前記受電ケーブルに接続された第3コイルと、前記第3コイルに接続された第4コイルとを含み、
前記第3コイルは、前記受電部の周囲に配置されると共に、前記第4コイルから供給される平衡電流を不平衡電流に変換して、前記変換器に供給する、車両。
【請求項12】
前記受電部は、受電コイルを含み、
前記受電コイルと前記第3コイルとは互いに対向するように配置された、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
前記受電コイルと前記第4コイルとは、互いに対向するように配置され、
前記第3コイルを流れる電流方向と、前記第4コイルを流れる電流方向とを異ならせた、請求項12に記載の車両。
【請求項14】
前記受電ケーブルは、内側導体と、前記内側導体の外周を覆うように設けられた絶縁体と、前記絶縁体上に配置され、アースされた外側導体とを含む、請求項11から請求項13のいずれかに記載の車両。
【請求項15】
前記第3コイルは、第4単位コイルと、前記第4単位コイルに接続された第5単位コイルと、前記第5単位コイルに接続された第6単位コイルとを含み、
前記第4コイルは、第9端部および第10端部を含み、
前記第4単位コイルは、前記内側導体に接続された第11端部と、前記第9端部に接続された第12端部とを含み、
前記第5単位コイルは、前記第12端部に接続された第13端部と、前記外側導体に接続された第14端部とを含み、
前記第6単位コイルは、前記第14端部に接続された第15端部と、前記第10端部に接続された第16端部とを含む、請求項14に記載の車両。
【請求項16】
前記第4単位コイルと、前記第5単位コイルと、前記第6単位コイルとは、互いに同軸上に配置された、請求項15に記載の車両。
【請求項17】
前記第4単位コイルと、前記第5単位コイルと、前記第6単位コイルとは、同一形状とされた、請求項15または請求項16に記載の車両。
【請求項18】
前記受電部は、前記受電部と前記送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する磁界と、前記受電部と前記送電部の間に形成され、かつ特定の周波数で振動する電界との少なくとも一方を通じて前記送電部から電力を受電する、請求項11から請求項17のいずれかに記載の車両。
【請求項19】
前記受電部と前記送電部との結合係数は、0.1以下である、請求項11から請求項18のいずれかに記載の車両。
【請求項20】
前記送電部の固有周波数と前記受電部の固有周波数との差は、前記受電部の固有周波数の10%以下である、請求項11から請求項19のいずれかに記載の車両。
【請求項21】
受電部を含む車両と、送電装置とを備えた、電力伝送システムであって、
前記送電装置は、前記受電部に電力を非接触で送電する送電部と、
前記送電部と間隔をあけて設けられ、前記送電部に電力を供給する第1コイルユニットと、
前記第1コイルユニットに接続され、電源からの電力を前記第1コイルユニットに供給する供給ケーブルと、
を備え、
前記第1コイルユニットは、前記供給ケーブルに接続された第1コイルと、前記第1コイルに接続された第2コイルとを含み、
前記第1コイルは、前記送電部の周囲に配置されると共に、前記電源から供給される不平衡電流を平衡電流に変換して前記第2コイルに供給する、電力伝送システム。
【請求項22】
送電部を含む送電装置と、受電装置を含む車両とを備えた、電力伝送システムであって、
前記車両は、前記送電部から非接触で電力を受電する受電部と、
前記受電部と間隔をあけて設けられ、前記受電部から電力を受け取る第2コイルユニットと、
前記第2コイルユニットに接続された受電ケーブルと、
前記受電ケーブルに接続された変換器と、
前記変換器に接続されたバッテリと、
を備え、
前記第2コイルユニットは、前記受電ケーブルに接続された第3コイルと、前記第3コイルに接続された第4コイルとを含み、
前記第3コイルは、前記受電部の周囲に配置されると共に、前記第4コイルから供給される平衡電流を不平衡電流に変換して、前記変換器に供給する、電力伝送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−74773(P2013−74773A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214176(P2011−214176)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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