説明

逃げ芯棒用支持具及び杭芯チェック装置

【課題】逃げ芯棒を用いて杭芯のチェックを行う場合に、逃げ芯棒を垂直に維持すること。
【解決手段】杭芯と逃げ芯との距離をチェックする杭芯チェックにおいて用いる逃げ芯棒を垂直に支持する逃げ芯棒用支持具10である。この逃げ芯棒用支持具10は、それぞれ逃げ芯棒18が嵌挿する孔20b、22bを備えた平面視三角形状の上・下枠部材12、14を、その各頂点同士を3本の柱状部材16で連結して形成し、下枠部材14の下端から下方に延びた柱状部材16の据え付け脚部分を有する。杭芯チェック時には、逃げ芯棒18を、上記孔20b、22b(24b)に挿通して地面に打ち込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の建て込み作業時に行う杭芯チェックに用いる逃げ芯棒用支持具及び前記逃げ芯棒用支持具を備えた杭芯チェック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤に杭を建て込む際に、建て込み作業中それが正規の位置に建て込めているか否かをチェックする必要がある。その確認は、従来、例えば、杭芯に対してそこから所定の角度で延長する線上に逃げ芯を設定し、逃げ芯の位置にPC鋼棒(高強度鋼製の棒:逃げ芯棒)を立てて、その逃げ芯棒と例えば杭の周面との間の距離(最短距離)が一定であるか否かチェックすることにより行っている。その場合、上記逃げ芯棒と杭の周面との間の距離を測るため、検尺用の棒状部材(検尺棒)を用いて、その検尺棒の先端を上記杭の周面に当接すると共に、他端側を逃げ芯棒の側面に当ててその距離が変化するか否かをチェックし、距離に変化がなければ杭の建て込みが正常、つまり杭は正規の位置であると判断する。
【0003】
この杭の建て込みチェック方法では、検尺を行うとき、逃げ芯棒は垂直でありかつ、検尺棒は水平であることが前提である。しかし、これを全て手作業で行うと、煩雑である上誤差が出ることから、その作業の精度を向上しかつ作業をし易くするためのチェック方法及びそのための補助用具が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
図6は、この従来の「杭芯位置の確認方法」において用いられる杭芯チェック用補助具である。
この従来の杭芯チェック用補助具は、検尺棒4を杭芯1の直角方向の2箇所に合わせて、杭或いは掘削ロッド5を前記杭芯1にセットし、前記検尺棒4を水平になるように各逃げ芯(棒)2、3に合わせながら該検尺棒4の端部を杭或いは掘削ロッドに当てて杭芯位置の確認を行うものである。
【0005】
即ち、予め設定された杭芯1の位置に対応して、ここでは、逃げ芯(逃げ芯棒)2、3を立設し、この逃げ芯2、3には、それぞれ検尺棒4を遊動自在に支持する支持部材7a、7bを設けている。
この従来の杭芯チェック用補助具においては、前後2本の逃げ芯2,3に取り付けた支持部材7a、7bで検尺棒4をその長手方向に遊動自在に支持し、検尺棒4の先端を杭或いは掘削ロッド5の周面に当接し、そのときの検尺棒4と逃げ芯2、3との相対位置ずれをみることで、杭或いは掘削ロッド5が正規の位置に建て込まれているか否かをチェックしている。
【0006】
この従来の杭芯チェック用補助具を用いた場合、人手を使うのは、検尺棒4の移動だけであるため、そのチェック作業負担は全て人手で行う場合に比して大幅に軽減できる。
しかしながら、逃げ芯2、3は、その逃げ芯2、3近傍で掘削などの作業を行うため、その振動や衝撃などもあり垂直な状態を維持することは容易ではない。また、逃げ芯2、3に人や物が当たると容易にその傾きが変わるおそれがあり、その垂直度維持は容易ではない。また、逃げ芯の垂直度が維持できなくなったときには、逃げ芯を再度垂直に立設する作業を行わなければならず、その作業自体煩雑である上、杭芯との位置がずれるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−174124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の杭芯チェック時における上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来と同様に検尺棒を用いて杭或いは掘削ロッド等が正規の位置に建て込まれているか否かをチェックする場合に、逃げ芯棒を容易に垂直に維持し、かつ逃げ芯棒が人や物に当たってもその垂直度が維持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、杭芯と逃げ芯との距離をチェックする杭芯チェックにおいて用いる逃げ芯棒を垂直に支持する逃げ芯棒用支持具であって、前記逃げ芯棒が貫通する孔を有する面板と、前記面板と前記面板に連結された支持枠で構成された枠部材と、前記枠部材を上下所定位置で支持する複数の柱状部材と、下枠部材に一体に取り付けられ地面への据付部を構成する据え付け脚部分と、を有することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された逃げ芯棒用支持具において、前記柱状部材は据え付け脚部分と一体に形成されていることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載された逃げ芯棒用支持具において、前記支持枠は、所定角度で一端部を接合した枠体の他端部に前記面板を接合した三角形状をなしており、前記三角形状の各頂点近傍に柱状部材が挿入固定されていることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された逃げ芯棒用支持具において、水準器を備えたことを特徴とする。
請求項5の発明は杭芯チェック装置であって、請求項1ないし4のいずれかに記載された逃げ芯棒用支持具と、逃げ芯と、杭芯被検出体と、逃げ芯棒用支持具に支持された逃げ芯との距離を検出する検尺棒とからなることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5に記載された杭芯チェック装置において、前記検尺棒が水準器を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、逃げ芯棒は所定間隔を置いて配置された上・下枠部材の面板によって保持されおり、上記枠部材(面板)はそれぞれ柱状部材によって上下の所定の位置に配置されているので、面板を水平に設置すれば、設置後は、逃げ芯は垂直に維持される。また、逃げ芯棒は上下に所定間隔を隔てた枠部材で支持されるため、立設した逃げ芯棒に人や物が当たっても、それによって逃げ芯棒が傾いたり変形したりすることが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る逃げ芯棒用支持具の斜視図である。
【図2】図2Aは図1に示す逃げ芯棒用支持具の上枠部材の平面図、図2Bは下枠部材の平面図、図2Cは逃げ芯棒用支持具の側面図、図2Dはその正面図である。
【図3】別の実施形態の逃げ芯棒用支持具の斜視図である。
【図4】逃げ芯を逃げ芯棒用支持具で支持して地面に立設した状態を示す斜視図である。
【図5】逃げ芯棒用支持具で支持した逃げ芯を用いて掘削ドラムの垂直度をチェックする状態を示す斜視図である。
【図6】図6A,図6Bは杭芯位置の確認方法を説明する平面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る逃げ芯棒用支持具の斜視図であり、図2Aは図1に示す逃げ芯棒用支持具の上枠部材の平面図、図2Bは下枠部材の平面図、図2Cは逃げ芯棒用支持具の側面図、図2Dはその正面図である。
本実施形態に係る逃げ芯棒用支持具10は、図1に示すように、上枠部材12と、下枠部材14及び上・下枠部材12、14と連結し、かつそれらを所定間隔で支持する例えばPC鋼から成る柱状部材16で構成されている。
上枠部材12は、図2Aに示すように、2本の支持枠である例えば細長い鉄製アングル材12a(パイプ状或いは板状の部材でもよい)と鉄製面板20で平面視三角形状を構成するように、上記2本のアングル材12aの一端を所定の角度で、例えば溶接など任意の手段で一体化し、同アングル材12aの開放他端側に面板20が同様に溶接などで連結されている。また、上記2本のアングル材の接合部には、上下部の枠部材12、14を所定間隔で連結する、例えばPC(プレキャストコンクリート)鋼棒でできた柱状部材16が貫通する孔12dがそれぞれ穿設されており、柱状部材16はこの孔12dの周りで溶接などの適宜の手段でアングル材12aや面板20に一体に固定されている(図1)。
【0013】
上側の面板20は、図2Aに示すように、これも例えば上記アングル材と同様細長い鉄製のアングル材又は板状部材で構成され、その平面板部20(1)には、上記柱状部材16が貫通する孔20aがその両端部に穿設され、かつその中央には、後述する逃げ芯棒18を嵌挿する孔20bが穿設されている。
上枠部材12のアングル材12a間に渡した板状体12bに水準器12cをネジ止めなどの適宜の手段で設けておくことができる。このようにすることで、逃げ芯棒用支持具10が水平であるか否かを容易に判定することができ、これを水平に設置することが容易になる。
なお、水準器12cは必ずしも付設しておくことを要せず、必要に応じて上部アングル材12a上に置いて、その水平をみるようにしてもよい。
【0014】
下枠部材14は、図2Bに示すように、基本的には上枠部材12と同じ構造であり、2本の例えば鉄製アングル材14aと鉄製下部面板22を、三角形状になるように、アングル材14aを所定の角度でその一端で溶接など任意の手段により一体化し、アングル材14aのその反対側端部に面板22を溶接などにより連結して構成されている。下枠部材14にも、上枠部材12と同様に面板22の平面板部22(1)には、上記柱状部材16が貫通する孔22aがその両端部に穿設され、かつその中央には、逃げ芯棒18を嵌挿する孔22bが穿設されている。
【0015】
柱状部材16は、図2Cに示すように、その下端は地盤に立設するため尖端となっており、図1に示すように、上枠部材12、下枠部材14のそれぞれの貫通孔20b、22bに挿入され、例えば溶接等により上記各枠部材12、14と一体に取り付けられている。なお、柱状部材16の下枠部材14の下側の据え付け用脚部分の長さは立設する地盤により適宜選択することができる。
【0016】
図2Dに示すように、例えばPC鋼棒でできた逃げ芯棒18は、上記柱状部材16と同様に一端が尖端部として形成され、逃げ芯棒用支持具10の上下の面板20、22の孔20b、22bに挿通される。
図3は、上記構成の逃げ芯棒用支持具10を、逃げ芯棒18と共に地面に設置した状態を示す斜視図である。
この状態では、逃げ芯棒18は垂直に立設されていると共に、逃げ芯棒18は、逃げ芯棒用支持具10の一定の間隔を置いて設けた上・下枠部材12、14の面板20、22の貫通孔20b、22bによって2点で支持されるため、傾き難く、したがって位置ズレの防止ができる。
【0017】
なお、上・下枠部材12、14間の間隔、つまり、この逃げ芯棒用支持具10を地面に立設したときの上枠部材12の高さは任意であるが、高くした方が、逃げ芯棒18に鉛直方向以外の力が作用したときに受ける力のモーメントが小さくなるため、逃げ芯棒18の位置ズレが起こり難くなる。したがって、高くしたい場合は、図4に示すように、上・下枠部材12、14間に、逃げ芯棒18の貫通孔24bをその中央部に備えた中間面材24を設け、或いは、上記面板20と同様の面板を取り付けて柱状部材16を補強するのが好ましい。
【0018】
次に、以上で説明した逃げ芯棒用支持具10を用いて、例えば杭を建て込む場合の杭芯チェックを行う方法について説明する。
まず、杭を建て込む地盤に杭芯となる位置を設定する。次に、杭の建て込みの障害とならない位置に逃げ芯棒18の建て込み位置を設定する。同様に、逃げ芯棒18の建て込み位置と杭芯を結ぶ仮想線に対して、そこから例えば90°回転した第2の仮想線を設定し、その線上の上記中心から最初に設定した逃げ芯棒18の建て込み位置から等距離のところに第2の逃げ芯棒18の建て込み位置を設定する。
【0019】
続いて、それぞれの逃げ芯棒18の建て込み位置を平らに均した後、上記逃げ芯棒用支持具10を配置して、その面板20、22、(24)の孔に逃げ芯棒18を挿入し、その尖端を逃げ芯設置位置に合わせる。
その状態で、逃げ芯棒用支持具10の下端部分を地面に打ち込むと共に、その上枠部材12に取り付けた水準器12cで逃げ芯棒用支持具が水平に設置されたか否か確認する。水平が出ていないときは、3本の柱状部材16の打ち込み深さを調整して水平にする。
その状態で、逃げ芯棒を上記面板20、22の孔20b、22bに挿入して地面に打ち込む。
【0020】
このように逃げ芯棒用支持具10及び逃げ芯棒18を設置した後、例えば掘削ロッドの中心を杭芯に合わせて設置し、図5に示すように、その状態で作業者は手に持った検尺棒30を、上記のようにして設置された逃げ芯の最も手前側にある掘削ロッド40の周面に向かって、その先端を上記仮想線に沿って送り、掘削ロッド40の周壁面に当接させて、検尺棒30で掘削ロッド40の周面と逃げ芯棒18間の距離が変化しているか否かをチェックする。この作業を掘削中に繰り返し、変化していなければ掘削ロッド40は正規の位置で掘削していると判断する。
このチェックを行うに当たり、予め地面に仮想線に沿って線を引いておくと検尺棒30の先端方向が容易に分かり、また、検尺棒30に水準器(図示せず)を備えることで、検尺棒30を容易に水平に支えることができる。更に、検尺棒30の逃げ芯棒18の側面に当接した位置に目盛りや印を付しておくとその後の杭芯チェックが容易である。
【0021】
以上の説明では、検尺棒30での測定は、杭芯に対して90°の角度で配置された二つの逃げ芯棒18を用いて行うものとして説明したが、これに限らず、三つ以上の逃げ芯を用いて杭芯を測定してもよい。ただ、杭芯測定のための逃げ芯の数を増やすと、その精度は向上するものの測定は煩雑になる。
【0022】
また、上・下枠部材12、14は、平面視三角形状のものとして説明したが、これに限らず、柱状部材16を補強しかつ、面板20、22、24が取付可能であればその形は矩形その他任意である。
その材料も鉄系材料に限らず、他の金属、例えばアルミニウムなどの金属或いは強度上問題がなければ合成樹脂材料を用いることで軽量化することができる。その場合の柱状部材16と上・下枠部材12、14との取付は溶接以外のネジ止め、その他の任意の固定手段を用いることができる。
以上の説明では、柱状部材16が上・下枠部材12、14を支持すると共に、下枠部材14の下側では、逃げ芯棒用支持具10の据え付け用脚部分としての機能を有するものとして説明したが、これに限らず、上記据え付け用脚部分と上記柱状部材16とを別体の部材として構成することもできる。
この場合、上記据え付け用脚部分は必ずしも柱状部材16と同数でなくともよく、逃げ芯棒用支持具が容易に傾くことがなければ、柱状部材16よりも少なくしてもよく、逆に軟弱な地盤などで用いる場合等においては、より多くする構成を採ることもできる。
本発明に係る逃げ芯用支持具は、当然のことながら掘削ロッド以外に、既製杭等の建て込作業を伴う全ての被建て込み体に適用可能である。
【符号の説明】
【0023】
10・・・逃げ芯棒用支持具、12・・・上枠部材、12a・・・アングル材、12c・・・水準器、14・・・下枠部材、14a・・・アングル材、16・・・柱状部材、18・・・逃げ芯棒、20、22、24・・・面板、30・・・検尺棒、40・・・掘削ロッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭芯と逃げ芯との距離をチェックする杭芯チェックにおいて用いる逃げ芯棒を垂直に支持する逃げ芯棒用支持具であって、前記逃げ芯棒が貫通する孔を有する面板と、前記面板と前記面板に連結された支持枠で構成された枠部材と、前記枠部材を上下所定位置で支持する複数の柱状部材と、下枠部材に一体に取り付けられ地面への据付部を構成する据え付け脚部分と、を有することを特徴とする逃げ芯棒用支持具。
【請求項2】
請求項1に記載された逃げ芯棒用支持具において、
前記柱状部材は据え付け脚部分と一体に形成されていることを特徴とする逃げ芯棒用支持具。
【請求項3】
請求項2に記載された逃げ芯棒用支持具において、
前記支持枠は、所定角度で一端部を接合した枠体の他端部に前記面板を接合した三角形状をなしており、前記三角形状の各頂点近傍に柱状部材が挿入固定されていることを特徴とする逃げ芯棒用支持具。
【請求項4】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された逃げ芯棒用支持具において、水準器を備えたことを特徴とする逃げ芯棒用支持具。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載された逃げ芯棒用支持具と、逃げ芯と、杭芯被検出体と、逃げ芯棒用支持具に支持された逃げ芯との距離を検出する検尺棒とからなることを特徴とする杭芯チェック装置。
【請求項6】
請求項5に記載された杭芯チェック装置において、
前記検尺棒が水準器を有することを特徴とする杭芯チェック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−69074(P2011−69074A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219527(P2009−219527)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(505408686)ジャパンパイル株式会社 (67)
【Fターム(参考)】