説明

透水性が改良された覆土層固化培土及びその利用

【課題】
例えば、播種直後において大量の潅水(例えば、15〜30L/m)や多雨天候をともなう場合においても、適量の水を床土層が接触する植物の根系部に供給することが可能となり、健全植物を育成することができる、固化状態である覆土層を非固化状態である床土層の上に積層する構造を有する培土等を提供すること。
【解決手段】
固化状態である覆土層を非固化状態である床土層の上に積層する構造を有する培土において、前記覆土層が当該覆土層を固化させるための固化剤としてアニオン度10.0mol%未満のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を含有してなることを特徴とする培土、並びに、当該培土及び当該培土の床土層が接触する根系部と当該培土の覆土層が接触する胚軸部とを有する植物本体からなることを特徴とする培土付き植物等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水性が改良された覆土層固化培土及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業経営の合理化ニーズを背景にして、省力化を重視した栽培方法が急速に普及されている。これらの技術の一つとして苗の移植機による植物の栽培技術を挙げることができる。
従来、苗の移植機による植物の栽培技術としては、機械移植に適した植物の苗の育成方法を中心に多数の提案がなされ、実際にこれらの方法が普及してきた。
具体的には例えば、紙筒に培地を充填してから植物の種子を播くことによって機械移植用苗を形成する方法(例えば、特許文献1参照)、培地を固化剤によって固めることによって土付き苗を形成する方法(例えば、特許文献2、3及び4参照)等の方法が知られている。これらの方法においては、培地を育苗容器に充填してから植物の種子を播いた後、その上から上記培地と同じ培地を用いて覆土がなされている。さらに、当該方法の改良技術として、覆土層固化培土(例えば、特許文献5参照)も知られている。
【0003】
【特許文献1】特公昭53−24325号公報
【特許文献2】特許第2876002号
【特許文献3】特開平8−172900号公報
【特許文献4】特開平5−292833号公報
【特許文献5】特開2005−229857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、植物の種子を播いた後の苗箱移動時における振動、種子の発芽時にお
ける覆土の盛り上がり、成長して大きくなった植物体の揺れ動き、苗移植時における苗の
移植機による振動、苗の移動・転倒・傾斜、苗移植後の風等の自然環境条件等の種々の原
因により覆土が失われることがある。一旦覆土が失われると、植物の胚軸部が露出し、植
物の茎葉部姿勢が不安定になり、その結果として植物の倒伏や胚軸部の湾曲等が発生し、
健全に植物を育成することができなかった。
一方、固化状態である培土を用いて、根の生育において肥大成長の占める割合が大きな
植物、例えば、ニンジン、ダイコン、甜菜等の根菜類やトウモロコシ類の苗を育苗すると
、培土の固化によって根が受ける生育ストレス障害が生じ、その結果、生産物の収量・品
質等に大きな影響を与える場合がしばしば見られた。
さらに、従来の覆土層固化培土では、播種直後において大量の潅水(例えば、15〜30L/m)や多雨天候をともなう場合には、覆土層に含有される固化剤が覆土層の細部まで間隙等を残すことなく行き渡り、全体的に均一且つ充分に拡散する結果、その後の潅水までの間における乾燥により覆土層の培土が必要以上に強固で且つ貧空隙状態(即ち、一種の膜を形成して撥水性を生じてしまうような状態)になり、次回潅水の際に前記覆土層を水が透過することができず、適量の水を床土層が接触する植物の根系部に供給することが不可能(即ち、植物の根系部が水分ストレスを受けること)となり、健全植物を育成できない(例えば、移植用苗の成苗率の低下や品質、ひいては生産物の収量や品質に大きな悪影響を与える)ことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような状況下において鋭意検討を行った結果、固化状態である覆土層を非固化状態である床土層の上に積層する構造を有する培土において、前記覆土層が当該覆土層を固化させるための固化剤としてアニオン度10.0mol%未満のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を含有してなることを特徴とする培土を用いて、植物の根系部を前記床土層に接触させ、且つ、前記植物の胚軸部を前記覆土層と接触させながら、前記植物を栽培することにより、健全植物を育成できることを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.固化状態である覆土層を非固化状態である床土層の上に積層する構造を有する培土において、前記覆土層が当該覆土層を固化させるための固化剤としてアニオン度10.0mol%未満のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を含有してなることを特徴とする培土(以下、本発明培土と記すこともある。);
2.床土層が固化剤を含有しない培土からなる床土層であり、且つ、覆土層が固化剤としてアニオン度10.0mol%未満のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を含有する培土からなる覆土層であることを特徴とする前項1記載の培土;
3.前項1記載の培土、及び、当該培土の床土層が接触する根系部と当該培土の覆土層が接触する胚軸部とを有する植物本体、からなることを特徴とする培土付き植物(以下、本発明培土付き植物と記すこともある。);
4.前項1記載の培土、及び、当該培土の床土層が接触する根系部と当該培土の覆土層が接触する胚軸部を有する苗本体とからなることを特徴とする培土付き苗;
5.前項1記載の培土、及び、当該培土の床土層が接触する根系部と当該培土の覆土層が接触する胚軸部を有する発芽種子本体とからなることを特徴とする培土付き種子;
6.前項1記載の培土を用いて、植物の根系部を前記床土層に接触させ、且つ、前記植物の胚軸部を前記覆土層と接触させながら、前記植物を栽培する工程を有することを特徴とする健全植物の育成方法(以下、本発明植物育成方法と記すこともある。);
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明培土は、例えば、播種直後において大量の潅水(例えば、15〜30L/m)や多雨天候をともなう場合においても、適量の水を床土層が接触する植物の根系部に供給することが可能となり、健全植物を育成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明培土は、固化状態である覆土層を非固化状態である床土層の上に積層する構造を有する培土において、前記覆土層が当該覆土層を固化させるための固化剤としてアニオン度10.0mol%未満のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を含有してなることを特徴とする。
ここで培土とは、植物を発芽させてその苗を育てる等のための栽培培地であって、例えば、天然土壌を含めた広義な意味である。具体的には例えば、機械移植に適したプラスチック製の連結トレー、紙筒集合体(ペーパーポット)等の栽培容器に充填されるような栽培培地から、当該容器を用いずに圃場に直接播種するような栽培方式における土壌等の栽培培地まで含むものである。
本発明培土における覆土層の厚さとしては、植物の種類、床土及び覆土の原料の種類、本発明培土の用途等に応じて変化するが、植物の発芽障害を生じないような厚さであれば特に限定されない。具体的には例えば、種子の直径程度から3cm程度までの範囲の厚さを挙げることができる。
【0008】
床土及び覆土の原料は、通常用いられる原料であれば特に限定されないが、好ましい原料としては、例えば、植壌土、黒ぼく土、粘土、ピートモス、バーミキュライト、ゼオライト、モンモリロナイト、砂、火山灰、珪藻土、シリカ、レキ、天然土壌等を挙げることができる。これらの原料は単独で用いてもよく、また複数組み合わせて用いてもよい。
本発明でいう「非固化状態」とは、上記のような原料の構成物体(例えば、微粒子)同士が間接的に繋ぎ止められておらず、外部からの力(例えば、自然環境下での重力、風の力等)によって分散し得る状態にあることを意味し、例えば、当該原料に対して約20〜30cm離れた位置から、上〜横方向から息を吹きかけた際に当該原料の全部又は一部が飛び散るような状態や、当該原料を特別な圧力を加えることなく詰めたポットを転倒させたり、傾斜させた際に当該原料の全部又は一部がポットから毀れたり、流出するような状態である。
一方、「固化状態」とは、上記のような原料の構成物体(例えば、微粒子)同士が間接的に繋ぎ止められており、外部からの力(例えば、自然環境下での重力、風の力等)によって分散し得えない状態にあることを意味し、例えば、当該原料に対して約20〜30cm離れた位置から、上〜横方向から息を吹きかけた際に当該原料の全部又は一部が飛び散らないような状態や、当該原料を特別な圧力を加えることなく詰めたポットを転倒させたり、傾斜させた際に当該原料の全部又は一部がポットから毀れず、流出しないような状態である。このような固化状態は、植物の生育を強く阻害又は抑制した結果、当該植物の生育不良等を引き起こすようなものであってはならないが、所謂ゲル状態から固体状態までの範囲の如何なる形態であってもよい。また当該形態における固化程度は、植物の種類、床土及び覆土の原料の種類、本発明培土の用途等に応じて適宜変更してもよい。
【0009】
「固化状態」を形成させるためには、例えば、床土及び覆土の原料に、農業資材分野において通常用いられているような固化剤を加えよく混合した後、当該混合物に対して水分を加えればよい。必要に応じて当該混合物を乾燥してよいが、通常は自然状態に放置するような自然乾燥が固化程度や手間・コスト等が発生しないこと等から適している場合が多い。
【0010】
このように本発明培土は、床土層が固化剤を含有しない培土からなる床土層であり、且つ、覆土層が固化剤としてアニオン度10.0mol%未満のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を含有する培土からなる覆土層であることを特徴とする培土であってもよく、当該培土を好ましいものとして挙げることができる。
【0011】
本発明において用いることができる固化剤は、アニオン度10.0mol%未満(好ましくは、アニオン度0.3mol%以上〜10.0mol%未満の範囲、より好ましくは、アニオン度0.5mol%以上〜9.9mol%以下の範囲)のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体である。
当該固化剤の覆土の原料への添加量としては、植物の種類、床土及び覆土の原料の種類、本発明培土の用途等に応じて変化するが、通常、覆土の原料1Lに対して0.1〜100g程度を挙げることができる。より具体的には、例えば、1〜20g程度が挙げられる。
前記固化剤を覆土の原料に混合する方法としては、ドラム混合機、タンブラーミキサ、ミキスタブレンダ、コンクリートミキサ等の容器回転型混合機、リボンミキサ、ナウタミキサ、ヘンシェルミキサ等の攪拌羽根式混合機等を単独で又は複数の組み合わせで用いる方法が挙げることができる。
【0012】
本発明における上記のような培土において固化状態である覆土層を形成させるには、前述の如く、固化剤を含有しない培土からなる床土層の上に前記固化剤を含有する培土からなる覆土層を覆い、当該覆土層の上面から潅水すればよい。尚、潅水は、種子の発芽・苗の育成等のための潅水であってもよい。
このような潅水によって、覆土層に含まれる前記固化剤が層内に拡散しながら、覆土の原料の構成物体(例えば、微粒子)同士を、間隙を適度に残しながら、間接的に繋ぎ止めて行くこと等により、覆土層全体が貧空隙状態になることなく固化して行く。
潅水量は、例えば、1回あたり約0.2〜10L/m程度であればよいが、植物の種類、床土及び覆土の原料の種類、本発明培土の用途等に応じて適宜変更すればよい。また播種直後において大量の潅水(例えば、15〜30L/m)や多雨天候をともなう場合にも適用可能である。尚、必要に応じて潅水後に人工的に強制乾燥してもよいが、通常は供給された水が培土中にしみ込み、自然状態に放置するような自然乾燥が空隙状態・固化程度や手間・コスト等が発生しないこと等から適している場合が多い。
このようにすることにより、通常、供給された水が培土中にしみ込みんだ直後から数時間以内に固化状態である覆土層が形成される。
【0013】
本発明は、本発明培土の利用として、本発明培土、及び、当該培土の床土層が接触する根系部と当該培土の覆土層が接触する胚軸部とを有する植物本体(例えば、苗本体、発芽種子本体等)からなることを特徴とする培土付き植物を含む。このような植物としては、例えば、本発明培土が機械移植に適したプラスチック製の連結トレー、紙筒集合体(ペーパーポット)等の栽培容器に充填されるような栽培培地である場合において、当該容器内で非固化状態である床土層の表面に播種されその上が固化状態である覆土層により覆われた種子又は苗等の培土付き植物を挙げることができる。
【0014】
このように本発明における培土付き植物は、例えば、本発明培土、及び、当該培土の床土層が接触する根系部と当該培土の覆土層が接触する胚軸部とを有する植物本体、からなることを特徴とする培土付き植物(即ち、本発明培土付き植物)であってもよく、当該培土付き植物を好ましいものとして挙げることができる。
【0015】
本発明において適用対象となる植物は特に限定されるものではないが、レタス・ゴボウ等のキク科植物、白菜・甘藍・ブロッコリー・カリフラワー・中国菜・ダイコン等のアブラナ科植物、甜菜・ホウレンソウ等のアカザ科植物、ネギ・タマネギ・ニラ等のユリ科植物、ニンジン・セロリ・パセリ等のセリ科植物、スイートコーン、トウモロコシ等のイネ科植物等が挙げられる。
【0016】
本発明は、本発明培土及び/又は本発明培土付き植物の利用として、本発明培土を用いて、植物の根系部を前記床土層に接触させ、且つ、前記植物の胚軸部を前記覆土層と接触させながら、前記植物を栽培する工程を有することを特徴とする健全植物の育成方法(即ち、本発明植物育成方法)を含む。
このような方法により、覆土層の透水性を悪化させることなく、植物の根系部に対して水分ストレスを与えることなく、なおかつ植物の茎葉部姿勢を安定状態に維持させることができる。その結果として、例えば、植物の成苗率や品質の低下・倒伏や胚軸部の湾曲などを防止することが可能となり、健全植物を育成することができる。
より詳細に説明すると、植物体が成長し地上部が大きくなった後も、適正な固化状態である覆土層によって植物の胚軸部(又はその一部)が支えられているため、当該植物の茎葉部姿勢が不安定になることがなく、その結果として植物の倒伏や胚軸部の湾曲等による障害やトラブル等が生じない。また苗移植時における苗の移植機による振動、苗の移動・転倒・傾斜においても、覆土層が植物の胚軸部(又はその一部)から剥離しないため、圃場に移植された後も苗移植後の風等の自然環境条件により覆土が失われることがなく、植物の倒伏や胚軸部の湾曲等による障害やトラブル等が生ぜず、その効果は持続する。勿論、圃場に直接種子を播くような栽培方式においても、本発明を実施することができる。この場合には、例えば、固化剤を含まない畑土壌の表面に植物の種子を播き、その上に前記固化剤を含有する培土からなる覆土層を覆う。その後、当該種子の発芽・苗の育成等のための潅水を行うことによって、覆土層に含まれる前記固化剤が層内に拡散しながら、覆土の原料の構成物体(例えば、微粒子)同士を、間隙を適度に残しながら、間接的に繋ぎ止めて行く。このような作用によって覆土層全体が貧空隙状態になることなく固化して行く。当該方法によれば、植物体が成長し地上部が大きくなった後も、適正な固化状態である覆土層によって植物の胚軸部(又はその一部)が支えられているため、当該植物の茎葉部姿勢が不安定になることがなく、その結果として植物の倒伏や胚軸部の湾曲等による障害やトラブル等が生じない。
【実施例】
【0017】
以下、実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
実施例1
市販の水稲用造粒培土とピートモスと火山灰レキ(乾燥品:篩により粒径4mm以下に調整されたもの)を、32:48:20(体積比)の割合で混合し、当該混合物に加水して含水率23fw%に調整した。
含水率が調整された混合物1Lあたり8gの割合で、固化剤としてアニオン度0.5mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を加えてよく混合することにより、覆土層の原料となる培土を調製した。
次に、テンサイ育苗用ペーパーポット(日本甜菜製糖(株)製 規格1号・1冊あたり1400本・1本あたりφ19mm×高さ13cm)に、床土層として山土(篩により粒径10mm以下に調整されたもの)を充填し、その上から覆土層として前記で調整された培土を用いて、厚さ約1cmに覆土した。
その後、バイオトロン(気温15℃に設定)内に置き、当該覆土層の上面から潅水を定期的に(1本あたり4〜5ml/1冊あたり6〜7l・週1回程度:約17〜21L/mに相当する)行った。
試験開始から20日間後の潅水直後に、前記ペーパーポットの上部に溜まった水の全量が当該ペーパーポット内の培土に浸透するまでに要した時間を測定し、これを「透水所要時間」として記録した。また潅水直後に前記ペーパーポット(100本)を反転させたうえで当該ペーパーポットを手でたたいて軽く衝撃を与えたときに覆土が落下せずに保持されていたものをカウントし、この存在比率を「覆土保持率」として記録した。
【0019】
実施例2
覆土層の原料となる培土の調製に用いられた固化剤として、アニオン度0.5mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体の代わりに、アニオン度7.7mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、覆土層の原料となる培土を調製した後、試験(本発明区)を行った。
【0020】
実施例3
覆土層の原料となる培土の調製に用いられた固化剤として、アニオン度0.5mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体の代わりに、アニオン度9.9mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、覆土層の原料となる培土を調製した後、試験(本発明区)を行った。
【0021】
比較例1
覆土層の原料となる培土の調製に用いられた固化剤として、アニオン度0.5mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体の代わりに、アニオン度12.8mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、覆土層の原料となる培土を調製した後、試験(比較区)を行った。
【0022】
比較例2
覆土層の原料となる培土の調製に用いられた固化剤として、アニオン度0.5mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体の代わりに、アニオン度16.8mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、覆土層の原料となる培土を調製した後、試験(比較区)を行った。
【0023】
比較例3
覆土層の原料となる培土の調製に用いられた固化剤として、アニオン度0.5mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体の代わりに、アニオン度18.2mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、覆土層の原料となる培土を調製した後、試験(比較区)を行った。
【0024】
比較例4
覆土層の原料となる培土の調製に固化剤を用いないこと以外は、実施例1と同様にして、覆土層の原料となる培土を調製した後、試験(比較区)を行った。
【0025】
上記の実施例1〜3及び比較例1〜4における試験結果を表1に示した。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例4
市販の水稲用造粒培土とピートモスと火山灰レキ(乾燥品:篩により粒径4mm以下に調整されたもの)を、32:48:20(体積比)の割合で混合し、当該混合物に加水して含水率23fw%に調整した。
含水率が調整された混合物1Lあたり8gの割合で、固化剤としてアニオン度0.5mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を加えてよく混合することにより、覆土層の原料となる培土を調製した。
次に、テンサイ育苗用ペーパーポット(日本甜菜製糖(株)製 規格1号・1冊あたり1400本・1本あたりφ19mm×高さ13cm)に、床土層として山土(篩により粒径10mm以下に調整されたもの)を充填し、充填された床土層の表面上にテンサイ種子を1ポット1粒ずつ播いた。次いで、その上から覆土層として前記で調整された培土を用いて、厚さ約1cmに覆土した。
その後、当該覆土層の上面から慣行法に準じて潅水を行い(播種3日間後に1冊あたり10L:約30L/mに相当する、発芽が揃った以降は凡そ1〜3日間に1回程度の頻度で培土表面から1〜2cmが乾いた時点で1冊あたり1〜2L:約3〜6L/mに相当する)、ビニールハウス内で種子の発芽・育成を60日間行った。育成された苗をペーパーポット毎(培土付き植物の状態)苗の移植機を用いて圃場に移植し、当該植物を栽培した。
【0028】
比較例5
覆土層の原料となる培土の調製に用いられた固化剤として、アニオン度0.5mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体の代わりに、アニオン度18.2mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、覆土層の原料となる培土を調製した後、試験(比較区)を行った。
【0029】
上記の実施例4及び比較例5における試験結果を表2に示した。尚、表2における各項目の定義は以下の通りである。
<表2>
(1)「発芽率」:潅水開始30日間後の発芽率(播いた種子数を母数として算出した数値)を示す。
(2)「透水所要時間」:潅水開始30日間後の潅水直後に、前記ペーパーポットの上部に溜まった水の全量が当該ペーパーポット内の培土に浸透するまでに要した時間を示す。
(3)「成苗率」:潅水開始60日間後(即ち、機械移植の直前)の、機械移植が可能な大きさにまで成長した苗の存在比率(播いた種子数を母数として算出した数値)を示す。
(4)「機械移植できた苗率」:機械移植により圃場に移植できた苗の比率(播いた種子数を母数として算出した数値)を示す。
【0030】
【表2】

【0031】
実施例5
市販の水稲用造粒培土とピートモスと火山灰レキ(乾燥品:篩により粒径4mm以下に調整されたもの)を、32:48:20(体積比)の割合で混合し、当該混合物に加水して含水率23fw%に調整した。
含水率が調整された混合物1Lあたり8gの割合で、固化剤としてアニオン度0.5mol%のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を加えてよく混合することにより、覆土層の原料となる培土を調製した。
次に、テンサイ育苗用ペーパーポット(日本甜菜製糖(株)製 規格1号・1冊あたり1400本・1本あたりφ19mm×高さ13cm)に、床土層として山土(篩により粒径10mm以下に調整されたもの)を充填し、充填された床土層の表面上にテンサイ種子を1ポット1粒ずつ播いた。次いで、その上から覆土層として前記で調整された培土を用いて、厚さ約1cmに覆土した。
その後、当該覆土層の上面から慣行法に準じて潅水を行い(播種3日間後に1冊あたり10L:約30L/mに相当する、発芽が揃った以降は凡そ1〜3日間に1回程度の頻度で培土表面から1〜2cmが乾いた時点で1冊あたり1〜2L:約3〜6L/mに相当する)、ビニールハウス内で種子の発芽・育成を60日間行った。育成された苗をペーパーポット毎(培土付き植物の状態)苗の移植機を用いて圃場に移植し、当該植物を栽培した。
【0032】
比較例6
覆土層の原料となる培土の調製に固化剤を用いないこと以外は、実施例5と同様にして、覆土層の原料となる培土を調製した後、試験(比較区)を行った。
【0033】
上記の実施例5及び比較例6における試験結果を表3に示した。尚、表3における各項目の定義は以下の通りである。
<表3>
(1)「移植後覆土保持率」:圃場への機械移植の直後まで、覆土が失われずに保持されていた苗の比率(機械移植により圃場に移植できた苗数を母数として算出した数値)を示す。
(2)「移植栽培後の健全苗率」:圃場への機械移植後自然状態下で20日間栽培した際に倒伏したり、強風によってちぎれたりせずに、健全な植物体として生育した苗の比率(機械移植により圃場に移植できた苗数を母数として算出した数値)を示す。
【0034】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明培土は、例えば、播種直後において大量の潅水(例えば、15〜30L/m)や多雨天候をともなう場合においても、適量の水を床土層が接触する植物の根系部に供給することが可能となり、健全植物を育成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固化状態である覆土層を非固化状態である床土層の上に積層する構造を有する培土において、前記覆土層が当該覆土層を固化させるための固化剤としてアニオン度10.0mol%未満のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を含有してなることを特徴とする培土。
【請求項2】
床土層が固化剤を含有しない培土からなる床土層であり、且つ、覆土層が固化剤としてアニオン度10.0mol%未満のアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合体を含有する培土からなる覆土層であることを特徴とする請求項1記載の培土。
【請求項3】
請求項1記載の培土、及び、当該培土の床土層が接触する根系部と当該培土の覆土層が接触する胚軸部とを有する植物本体、からなることを特徴とする培土付き植物。
【請求項4】
請求項1記載の培土、及び、当該培土の床土層が接触する根系部と当該培土の覆土層が接触する胚軸部を有する苗本体とからなることを特徴とする培土付き苗。
【請求項5】
請求項1記載の培土、及び、当該培土の床土層が接触する根系部と当該培土の覆土層が接触する胚軸部を有する発芽種子本体とからなることを特徴とする培土付き種子。
【請求項6】
請求項1記載の培土を用いて、植物の根系部を前記床土層に接触させ、且つ、前記植物の胚軸部を前記覆土層と接触させながら、前記植物を栽培する工程を有することを特徴とする健全植物の育成方法。

【公開番号】特開2008−167677(P2008−167677A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−2061(P2007−2061)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【出願人】(596005964)住化農業資材株式会社 (29)
【Fターム(参考)】