説明

透湿・強制空気循環用の複合装置が付いた靴

透湿性であるかあるいは貫通孔が設けられた組み付け中底(10)と、この中底(10)の端部に取り付けられた甲革(11)と、中底(10)の下方で甲革(11)の端部に取り付けられた底革(12,112)とから構成されている、透湿・強制空気循環用の複合装置が付いた靴であって、この靴は、底革(12,112)の内側に設けられた受け部から封止された少なくとも1つの空洞部(14,114)を備え、この空洞部は、透湿性あるいは孔開きの組み付け中底(10)に対向するとともに防水性かつ透湿性である薄膜(13,113)によって構成された上方壁を有し、少なくとも1つの空洞部(14,114)は、その中に含まれた空気を入れ換えるための入口ダクト(18,118)および出口ダクト(20,120)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、透湿・強制空気循環用の複合装置が付いた靴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
孔開き底革(perforated sole)のある靴であって、防水性かつ透湿性であるとともに孔開き部を被覆するように配置され、かつ、その孔開き部を通して水が靴の中に入るのを防止するように底革へ封止された薄膜の存在によって透湿を可能にする靴が知られている。底革のある靴であって、靴の中に含まれている湿った空気を足の動き(加圧および減圧)により底革の内部で作動される吸入排出具によって引き起こされる強制吸引により排出する靴もまた、知られている。これらの靴の一方は、例えばヨーロッパ特許EP1127505号公報に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、吸入排出装置が設けられた靴には、機構的動作が必要であり、そのため歩行が行われないと作動しない、という重大な短所がある。さらにまた、これらの靴は、上記吸入排出装置が作動されると、押し下げあるいは吸引により外気の流入を受けることになり、冬季には、あるいは自然環境が高湿度の場合には、避けるべき状況が靴の内側に作り出される。冷気あるいはきわめて高い湿度の外気の流入は、足のためには間違いなく健康によくない。
【0004】
さらにまた、PVC製ビーチマツトレスを膨張させるための公知のポンプのような上記吸入排出の効果を成し遂げることのできる封止パッドを作り出すには、足の底革の下方に配置されたポリマー材料からなる層があるため、このような空気の入れ換えはきわめてしばしば役に立たなくなる、ことに留意すべきである。
【0005】
これらの非透湿性層によって結露が引き起こされて、空気の再循環にもかかわらず、足に接している中底(insole)の乾燥が妨げられる。この問題は、例えば米国特許出願US2006/0143943号明細書の中に認められる。
【0006】
この発明の目標は、上記短所を解消する靴、とりわけ、発汗によって生じた水蒸気が靴の内側から外側へ移送される作用が増大する靴を提供することである。この目標の範囲内で、この発明の主要な目的は、靴の内側の空気を入れ換えることもできる靴を提供することである。別の目的は、普通の製造方法によって困難を伴うことなく設けることのできる靴を考案することである。さらに別の目的は、製造コストが著しく増大しない靴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目標、これらの目的、およびこれ以降にいっそう明らかになる他の諸目的は、透湿性であるかあるいは貫通孔が設けられた組み付け中底と、この中底の端部に取り付けられた甲革と、前記中底の下方で前記甲革の端部に取り付けられた底革とから構成された靴であって、この靴は、前記底革の内側に設けられた受け部から封止された少なくとも1つの空洞部を備え、この少なくとも1つの空洞部は、透湿性あるいは孔開きの前記組み付け中底に対向するとともに防水性かつ透湿性である薄膜によって構成された上方壁を有し、前記少なくとも1つの空洞部は、その中に含まれた空気を入れ換えるための入口ダクトおよび出口ダクトを有していることを特徴とする靴によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
この発明のさらに別の特徴および利点は、添付図面における非限定的な例によって示された、好ましいが排他的ではないいくつかの実施形態の説明からいっそう明らかになる。
【図1】図1は、この発明による靴の第1実施形態の模式的縦断面図である。
【図2】図2は、図1の靴の中に含まれた吸入排出装置の概念図である。
【図3】図3は、この発明による靴の第2実施形態の模式的縦断面図である。
【0009】
この特許取得処理の間にすでに知られたと認められるあらゆるものは、特許請求されることがなく、また、特許放棄の対象でない、と理解されることに留意すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1および図2によれば、第1実施形態において、靴は、通常どおり、組み付け中底(assembly insole)10、下縁が中底10の周りに折り曲げられてそこへ取り付けられた甲革(upper)11、および中底10と甲革11の上記折り曲げ縁との下方に取り付けられた(例えば、射出成形されるかあるいは接着剤により接合された)底革12から構成されている。
【0011】
この発明によれば、足の前方部領域において、透湿性かつ/または孔開きの材料から作られた組み付け中底10の下方には防水性・透湿性薄膜13があるが、この薄膜13は、例えば、ポリウレタン、発泡されたポリテトラフルオロエチレンあるいはポリエステルのようなポリマー材料から作られて中底10に接している(または、スポットによるかあるいは周辺における接着剤接合で、あるいはいずれの場合も、この中底から薄膜13を介する水蒸気の通過が可能になるように、そこへ付着されている)。
【0012】
薄膜13は好都合なことに、目の詰まった型(すなわち、非多孔性層のある)のもの、あるいは微孔性型(加圧チャンバーを作り出すことのできる有孔率のある)のものであって、水蒸気を透過させることができるが防水性であるにちがいない。
【0013】
薄膜13の下方における上記底革の中には第1空洞部14が設けられ、この空洞部14は、上方領域において縁部14aで薄膜13へ封止されており、また、底革12の厚さおよび成形方法が許容されるものであるときには、予備成形して底革12の中における対応くぼみ部14bの中に挿入することができる。
【0014】
必要に応じて、第1空洞部14の中に、薄膜13の湿気吸収機能を増大させる材料(親水性材料)、従って透湿性材料(例えば、親水性フェルト、ケイ素含有材料、連続気泡フォーム、その他)を挿入することができる。
【0015】
従って、薄膜13は、これ以降でいっそう明らかになるように、空気の吸入排出を保証するために、下側にある第1空洞部14を封止するように設計されており、また、他の材料からなる適切な層によって支持しあるいは保護することができる。
【0016】
第1空洞部14には2つの開口があり、その第1のもの15は空気が第1空洞部14の中へ流入することができるように構成され、その第2のもの16は空気が外側へ向かって流出することができるように構成されている。
【0017】
底革12のかかと部には、封止された第2空洞部17が形成されている。
【0018】
第1ダクト18によって、第1空洞部14の第1開口15が靴の内側へ、好ましくはその後方部分で接続され、また、第1ダクト18には、その開口15の反対側にある端部に、靴の内側から第1空洞部14までの流れが可能になるように構成された逆止め弁19が備わっている。
【0019】
第2ダクト20によって、第1空洞部14の第2開口16が第2空洞部17へ接続され、また、第2ダクト20には、第1空洞部14から第2空洞部17までの流れが可能になるように構成された第2逆止め弁21が備わっている。
【0020】
第2空洞部17は、ダクト22によって靴の外側へ接続され、ダクト22には、外方への排出だけが可能であるように構成された逆止め弁23が備わっている。
【0021】
靴の内側からの空気は、足の上記動きと加圧および拡張の動きとのために、その加圧の間だけでなくかかと部の押し付けの間にも、中底の下方で第1空洞部14によって強制的に吸引される(矢印A)が、その理由は、第2空洞部17が、かかと部の加圧を同様に利用することによって減圧あるいは吸引を促進するように設計されているからである。
【0022】
空気吸引は、上記のように、また図1に示されたように、中底における靴の内側から生じるが、それは、外側から空気を吸引することによってもまた生じる。
【0023】
薄膜13と中底の下方に配置された第1空洞部14との封止は、重要であり、また、直接射出あるいは接地剤接合または他の適切な手段によって達成することができる。薄膜13が封止を妨げる層(例えば保護用フェルト)によって保護されているときには、そのような層は、この薄膜と上記加圧チャンバーとの間の密封性を保証するために、少なくとも周辺で封止するのに適するように作らなければならない。この目的のために、例えば、上記保護層は、周辺が除去されるか、あるいは厚さが減少されるか、または液体接着剤かポリマーで予備含浸される。
【0024】
薄膜13には、透湿性であり、従って、足の歩行運動に関係なく水蒸気が第1空洞部14に入る(矢印B)ことのできる壁が構成されており、それによって、水蒸気は、足から除去されて、その後、行われる第1運動で空気とともに外側へ放出される(矢印C)。このようにして、足に直接接する中底を乾燥状態に維持することができる。
【0025】
さて、図3によれば、第2実施形態では単一の空洞部114(吸入排出用チャンバー)が設けられていて、この空洞部114は、型成形によって中底112の中に直接設けられ、かつ、上方領域において薄膜113によって封止されている。この封止は、薄膜113を中底112の上方部分へ密封状に接合することによって行われる。
【0026】
この空洞部114にも、2つの開口があり、その第1のもの115は空気が流入する(矢印A1)ことができるように構成され、その第2のもの116は水蒸気と混合された空気が流出する(矢印C1)ことができるように構成されている。
【0027】
空気吸引はここでは、空洞部114を外側へ接続するとともに好ましくは中底のくびれ部に配置された開口へ接続するダクト118で起こり、一方、ダクト120が、好ましくは中底のくびれ部における開口で外側へ接続され、それによって空気排出が可能になっている。
【0028】
これらのダクト118および120には、逆止め弁119および121がそれぞれ配置されている。この場合において、薄膜113には、透湿性である空洞部114の壁が構成されている。
【0029】
足によって水蒸気の形態で生じた汗は、この薄膜113を通過し(矢印B1)、従って空洞部114の中へ入り、空洞部114の内側で空気の入れ換えを引き起こす足の上記運動により排出される。
【0030】
実際に、この発明が上記の意図された目標および諸目的を達成したことはわかった。具体的には、発汗によって生じた水蒸気が靴の内側から外側へ移送される作用は、靴の内部に配置された空洞部に収容された空気の吸入排出および入れ換えによって増大した。この発明によれば、靴の内側における空気を入れ換えることもまた可能である。
【0031】
このように構想されたこの発明は、そのすべてが特許請求の範囲の適用範囲内にある多数の改造および変更を行うことが可能であり、すべての細部は、技術的に等価な他の諸要素でさらに置き換えることができる。
【0032】
実際に、使用された諸材料は、それらが特定の使用と両立する限り、寸法と同様に、諸要件および最新技術に従う任意のものであってよい。
【0033】
この出願が優先権の利益を主張するイタリア特許出願PD2007A000141号明細書における開示は、参照によってこの明細書の中に組み入れられる。
【0034】
特許請求の範囲の任意の請求項で言及された技術的特徴が参照符号に従うときには、それらの参照符号は、請求項の理解度を増大させる目的だけのために含まれており、従って、そのような参照符号には、そのような参照符号による例によって識別されたそれぞれの要素の解釈に関するどのような制限的作用もない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿性であるかあるいは貫通孔が設けられた組み付け中底(10)と、この中底(10)の端部に取り付けられた甲革(11)と、前記中底(10)の下方で前記甲革(11)の端部に取り付けられた底革(12,112)とから構成された靴であって、この靴は、前記底革(12,112)の内側に設けられた受け部から封止された少なくとも1つの空洞部(14,114)を備え、この少なくとも1つの空洞部は、透湿性あるいは孔開きの前記組み付け中底(10)に対向するとともに防水性かつ透湿性である薄膜(13,113)によって構成された上方壁を有し、前記少なくとも1つの空洞部(14,114)は、その中に含まれた空気を入れ換えるための入口ダクト(18,118)および出口ダクト(20,120)を有していることを特徴とする靴。
【請求項2】
前記少なくとも1つの空洞部(14,114)は、別個に設けられて前記底革(12,112)の対応くぼみ部(14b)の中に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記少なくとも1つの空洞部(14,114)は、前記底革(12,112)のくぼみ部によって直接形成されていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項4】
前記の防水性かつ透湿性である上部薄膜(13,113)は、ポリウレタン、発泡されたポリテトラフルオロエチレンあるいはポリエステルのようなポリマー材料から作られ、かつ、前記中底(10)からの湿気が前記薄膜(13,113)を通過することができるように前記中底(10)に接していることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項5】
前記少なくとも1つの空洞部(14,114)の中に、前記薄膜(13,113)の湿気吸収機能を増大させる材料、いわゆる親水性材料、従って透湿性材料が挿入されており、この材料は、親水性フェルト、ケイ素含有材料、連続気泡フォーム、あるいは同等物の中から選択されていることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項6】
前記薄膜(13,113)は、空気の吸入排出を確保するために、下側にある前記少なくとも1つの空洞部(14,114)を封止していることを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項7】
前記薄膜(13,113)は、他の透湿性・防水性材料の層によって支持され、かつ/または、保護されていることを特徴とする請求項6に記載の靴。
【請求項8】
前記薄膜(13,113)および前記少なくとも1つの空洞部(14,114)は、足の前方部に配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の靴。
【請求項9】
前記少なくとも1つの空洞部(14,114)には2つの開口があり、その第1のもの(15,115)は空気が前記第1空洞部(14,114)の中へ流入することができるように構成され、その第2のもの(16,116)は空気が外側へ向かって流出することができるように構成され、かつ、前記開口へ接続されたダクト(15,118,20,120)に逆止め弁(19,119,21,121)が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の靴。
【請求項10】
前記入口ダクト(118)は、この靴の外側へ接続されていることを特徴とする請求項9に記載の靴。
【請求項11】
前記入口ダクト(18)は、この靴の内側へ接続されていることを特徴とする請求項9に記載の靴。
【請求項12】
前記出口ダクト(120)は、この靴の外側へ接続されていることを特徴とする請求項9に記載の靴。
【請求項13】
前記出口ダクト(20)は、この靴の外側へ接続された逆止め弁(23)付き出口ダクト(22)が設けられた少なくとも1つの他の空洞部(17)へ接続されていることを特徴とする請求項9に記載の靴。
【請求項14】
前記少なくとも1つの他の空洞部(17)は、かかと部に配置されていることを特徴とする請求項13に記載の靴。
【請求項15】
前記少なくとも1つの他の空洞部(17)は、別個に設けられて前記底革(12)の対応くぼみ部の中に挿入されていることを特徴とする請求項14に記載の靴。
【請求項16】
前記少なくとも1つの他の空洞部(17)は、前記底革(12)のくぼみ部によって直接形成されていることを特徴とする請求項14に記載の靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−524531(P2010−524531A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503452(P2010−503452)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054119
【国際公開番号】WO2008/125524
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(502346105)ジェオックス エス.ピー.エー. (27)
【氏名又は名称原語表記】GEOX S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Feltrina Centro 16,31044 MONTEBELLUNA(Treviso),Localita Biadene,ITALY
【Fターム(参考)】