説明

通信端末装置

【課題】 主電源OFF/ON時にも同一のSIPサーバに対して登録の削除、再登録を可能にする。
【解決手段】 クライアント端末3は、SIPサーバ1に対して登録を行うたびに、SIPサーバにアクセスするために必要なパラメータ(「ユーザ名称」など)を不揮発性メモリからなる記憶部5に記憶しておく。主電源OFF/ON等の突発的な操作後にも当該登録の削除、再登録処理を行うことができる。また、SIPサーバ1への登録削除及び再登録に失敗した場合は、スペアとして登録してあるSIPサーバ6のアドレスへ登録動作を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク上でSIP等のセッション開始通信プロトコルを用いる通信端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネット等のネットワーク上における各通信端末がセッションを開始するための双方向通信プロトコルとして、SIP(Session Initiation Protocol)と呼ばれるものがある。従来より、このようなSIPを用いた通信制御装置及び通信システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
SIPを用いるネットワーク上には、SIPサーバ(レジストラサーバ)と呼ばれるサーバがある。SIPサーバには、各クライアント端末(通信端末)に関する情報(「IPアドレス」「ユーザ名称」「待ち受けポート番号」「expires(登録の期限)」など)が登録されている。クライアント端末が当該サーバに対して登録の更新(登録期限延長)、登録削除などを行うときに、これらの情報が照合される。
【特許文献1】特開2002−152805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
SIPサーバに対して上記のような情報が照合されるため、例えば、登録の削除処理を行う前に、不意に「ユーザ名称」の設定値がクライアント端末側で変わってしまった場合、以降登録期限が満了するまでは当該SIPサーバに対して登録の更新、削除などのリクエストを受け付けてもらえなくなる場合がある。例えば、オペレータが「ユーザ名称」の設定値を変更し、直後に主電源をOFFしたような場合である。即ち、クライアント端末内部のソフトウェアが「ユーザ名称」が変更されたことを検出するが、「旧ユーザ名称」をもってSIPサーバから登録削除を行う前に電源が落とされてしまったような場合である。この場合では、再び主電源がONされたときには、SIPサーバに登録されている「旧ユーザ名称」とクライアント端末がもつ「新ユーザ名称」とが異なってしまっており、SIPサーバ内の登録情報が期限満了で消去されるまでは、発呼・着呼ができない状態に陥ってしまう。尚、実際に上記の状態に陥るか否かはサーバ側の仕様もによるが、このような事態に配慮して、登録が上書き可能なものもあれば、セキュリティの観点から厳しいものもある。
従って、本発明は上記のような突発的な電源操作後にも当該登録の削除、再登録処理が行えるように備えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、ネットワーク上でセッション開始通信プロトコルを用いる場合の自端末のユーザを特定するユーザ特定情報と前記ネットワーク上における自端末を特定する端末特定情報とを関連付けてレジストラサーバに登録する登録制御手段を有する通信端末装置において、前記登録を行う毎に前記レジストラサーバから受信するメッセージのヘッダ情報を記憶する記憶手段を設けたことを特徴とする。
【0005】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記レジストラサーバへの自端末の登録削除及び再登録に失敗した場合、前記登録制御手段は、予めスペアとして登録してある他のレジストラサーバのアドレスへ登録動作を行うことを特徴とする。
【0006】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前回登録時に前記レジストラサーバから受信したメッセージのヘッダ情報に基づいて当該レジストラサーバへの登録の削除、再登録を行う機能の有効/無効を選択設定する設定手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記登録制御手段は、主電源OFF/ON時に前記記憶手段に最後に記憶されたヘッダ情報に基づいて前記レジストラサーバに対して登録の削除、再登録を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、最後に登録したときレジストラサーバから受信するメッセージのヘッダ情報を記憶しておくことで、突発的な電源操作時にも同一のSIPサーバに対して登録の削除、再登録が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
本実施の形態は、クライアント端末は、SIPサーバに対して登録を行うたびに、SIPサーバにアクセスするために必要なパラメータ(「ユーザ名称」など)を不揮発性メモリに記憶しておくことにより、上記のような突発的な電源操作後にも当該登録の削除、再登録処理が行えるようにしたものである。
【0010】
図1は本発明の実施の形態による通信端末とSIPサーバを有するネットワークの構成を示すブロック図である。
図1において、SIPサーバ(レジストラサーバ)1、6は、「IPアドレス」「ユーザ名称」「待ち受けポート番号」「expires(登録の期限)」などの登録処理を担うサーバである。即ち、自端末のユーザを特定するユーザ特定情報と前記ネットワーク上における自端末を特定する端末特定情報とを関連付けて登録する機能を有するサーバである。ロケーションサーバ2、7は、SIPサーバ1,6により登録された関連付けデータを管理する機能を持つサーバである。エンドポイントで示す通信端末3は、SIPによる登録機能を有する通信端末(クライアント端末)であり、SIPサーバ1、6に対して自端末の登録要求を行う。SIPサーバ1、通信端末3はインターネット4に接続されている。記憶部5は、通信端末3が有する記憶装置で、SIPサーバ1,6と交わす登録メッセージ(REGISTER,200_OK)のヘッダ情報及び当該メッセージ受信時の自端末の各種設定パラメータを記憶しておく部分であり、主電源OFF/ONでもデータが消去しない不揮発性記憶装置である。
【0011】
次に、上記構成による動作について図2、図3、図4のフローチャートに沿って説明する。
[準備]
通信端末3を管理するユーザは、下記の値を予め自端末に設定しておく。
・接続するメインのSIPサーバ1のアドレス
・スペア用のSIPサーバ6のアドレス
・SIPサーバ1,6と接続するトランスポート種別(UDP or TCP)
・SIPサーバ1,6へ登録する自端末の「ユーザ名称」
・SIPサーバ1,6へ登録する自端末の待ち受けポート番号
【0012】
本実施の形態による通信端末3は、接続先のSIPサーバ1に対して予め設定されたトランスポート種別UDP、またはTCPでセッションをオープンする(S101)。セッションのオープンに成功した場合、SIPサーバ1へ自端末の登録のためにSIPメッセージREGISTER (expires!=0)を送信する(S102)。通信端末3はSIPサーバ1からリクエストREGISTERに対する最終応答を受信する。受信した最終応答が200_OKであった場合は(S103のYes)、応答メッセージのヘッダ情報(via-branch,to-tag,from-tag,CallID,シーケンス番号)と自端末の設定パラメータ(接続先のSIPサーバ1のアドレス、トランスポート種別、ユーザ名称、自端末の待ち受けポート番号)を記憶部5へ記憶する(S104)。最終応答メッセージで指定されたexpires時間ウエイトした後(S105)、S102の処理を繰り返す。
【0013】
一方、200_OK以外に最終応答を受信した場合(S103のNo)、そのセッションをクローズして、S101の処理を繰り返す。 SIPサーバ1へ登録成功後、オペレータが通信端末3の設定値(例えば、「ユーザ名称」、「トランスポート種別」など)を変更する。変更が当該端末内部で反映された直後、SIPサーバ1へ反映する前に、当該端末の主電源をOFFする。
【0014】
図3は主電源をONする場合のフローチャートである。
「前回SIPサーバへ登録成功時のパラメータ(登録した「SIPサーバのアドレス」、「トランスポート種別」「ユーザ名称」「自端末の待ち受けポート番号」など)と現在のパラメータとの間に違いが発生していた場合、前回の登録を削除する機能(請求項1の発明に関する機能)」が有効設定であるか?をチェックする(S201,請求項3の発明に関する機能)。無効(S201 No)である場合、現在の設定値を持って、SIPサーバ1とセッションをオープンし、REGISTERを作成し、これを送信する。
【0015】
一方、S201 Yesの場合は、請求項1の発明に関する機能が有効であり、その場合は、記憶部5から、前回登録成功時の自端末の設定パラメータ(登録した「SIPサーバ1のアドレス」、「トランスポート種別」「ユーザ名称」「自端末の待ち受けポート番号」など)を読み出し、これと現在の当該端末の設定パラメータとの間に違いが発生していないか?をチェックする(S202)。変更がなかった場合(S203 No)、現在の設定パラメータを以ってSIPサーバ1とセッションをオープンし(S206)、REGISTER(expires!=0)メッセージを作成し、これを送信する(S207)。
【0016】
一方、なんらかのパラメータに変更が発生していた場合(S203 Yes)、記憶部5から前回登録成功時のパラメータ(「登録先のSIPサーバ1のアドレス」「ユーザ名称」「自端末の待ち受けポート番号」「200_OKのヘッダ情報(via-branch,to-tag,from-tag,CallID,シーケンス番号など)」など)を読み込む。前回登録成功時のトランスポート種別で、SIPサーバ1とセッションをオープンする(S204)。前回登録成功時の200_OKのヘッダ情報を以って(ダイヤログ情報を継承する)、登録削除要求REGISTER(expires=0)メッセージを作成し、これを送信する(S205)。
【0017】
図4において、レスポンス200_OKを受信した場合(S208 Yes)、セッションをクローズして(S209)、更新された現在の設定パラメータをもってSIPサーバ1とセッションを再オープンし(S210)、リクエストREISTER(expires!=0)を作成し、これを送信する(S211)。一方、登録削除要求REGISTER(expires=0)に対して200_OK以外の最終応答を受信した場合(S208 No)、そのセッションをクローズ(S212)後、スペアとして通信端末3に登録してあるSIPサーバ6に対してセッションをオープンして(S213)、REGISTER(expires!=0)を送信する(S214)。
【0018】
ここで、ISIPメッセージのヘッダに含まれる情報について説明する。
・via-branch: トランザクションを識別するための情報。トランザクションとは、リクエスト-レスポンスの対を識別するための情報である。呼が多重する場合は、シーケンス番号とvia-branch等からトランザクションを識別する。
・to-tag: 発呼側を識別するための情報。本実施の形態では、リクエストを送信しているのが通信端末3であるため、通信端末3が発呼側となる。
・from-tag: 着呼側を識別するための情報。本実施の形態では、SIPサーバがリクエストの受け手であるため、SIPサーバが着呼側となる。
【0019】
以上説明した本実施の形態によれば、次の効果を得ることができる。
請求項1に関しては、最後に登録したときのSIPメッセージのヘッダ情報を記憶しておくことで、主電源OFF/ON時にも同一のSIPサーバに対して登録の削除、再登録を可能とし、端末の可用性を高めることができる。
【0020】
請求項2に関しては、SIPサーバへの自端末の登録削除及び再登録に失敗した場合、予めスペアとして登録してあるSIPサーバアドレスへ登録動作を行う機能を有することによって、当該通信端末が発呼・着呼できないような状態を避けることができる。通信端末を取り巻く環境はさまざまであり、場合によっては請求項1の機能の上でも不具合が発生するSIPサーバの存在もあり得る。このような場合、一時的に別のSIPサーバに登録を行うことが望ましい。
【0021】
請求項3に関しては、前回登録時のSIPメッセージのヘッダ情報に基づいて当該SIPサーバへの登録の削除、再登録を行う機能の有効/無効を設定できる機能を有することによって、ユーザの環境に合わせた発明の利用をすることができる。ユーザを取り巻く環境もまたさまざまであり、場合によっては本機能を無効化したい状況も考慮すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態による通信端末を用いた通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】通信端末の処理を示すフローチャートである。
【図3】主電源をONする場合の処理を示すフローチャートである。
【図4】図3の処理の続きを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
1、6 レジストラサーバ
3 通信端末(エンドポイント)
4 ネットワーク
5 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク上でセッション開始通信プロトコルを用いる場合の自端末のユーザを特定するユーザ特定情報と前記ネットワーク上における自端末を特定する端末特定情報とを関連付けてレジストラサーバに登録する登録制御手段を有する通信端末装置において、
前記登録を行う毎に前記レジストラサーバから受信するメッセージのヘッダ情報を記憶する記憶手段を設けたことを特徴とする通信端末装置。
【請求項2】
前記レジストラサーバへの自端末の登録削除及び再登録に失敗した場合、前記登録制御手段は、予めスペアとして登録してある他のレジストラサーバのアドレスへ登録動作を行うことを特徴とする請求項1記載の通信端末装置。
【請求項3】
前回登録時に前記レジストラサーバから受信したメッセージのヘッダ情報に基づいて当該レジストラサーバへの登録の削除、再登録を行う機能の有効/無効を選択設定する設定手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の通信端末装置。
【請求項4】
前記登録制御手段は、主電源OFF/ON時に前記記憶手段に最後に記憶されたヘッダ情報に基づいて前記レジストラサーバに対して登録の削除、再登録を行うことを特徴とする請求項1記載の通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−54509(P2006−54509A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232664(P2004−232664)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】