説明

通信装置、通信装置の制御方法およびプログラム

【課題】 本発明ではアンテナの位置関係に応じて反射電力が変化する無線通信を行う通信装置が、反射電力に基づいてデータ信号の送信を制御することを目的とする。
【解決手段】 通信装置が有する第1のアンテナと通信相手が有する第2のアンテナとの位置関係に応じて前記第1のアンテナからの反射電力が変化する無線通信を行う通信装置であって、前記通信相手に前記第1のアンテナを介してデータ信号を送信する送信手段と、前記データ信号を前記第1のアンテナに供給した際の反射電力を判定する判定手段と、前記判定手段により判定した前記反射電力に基づいて、前記送信手段による前記データ信号の送信を制御する制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信を行う通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信で用いるアンテナのインピーダンスと、アンテナに接続している送信部のインピーダンスとの不整合(差があること)により、送信部がデータ信号をアンテナに供給すると、アンテナから反射波が返ってくる。インピーダンスの不整合が大きいほど、反射波の強度(反射電力)が強くなり、アンテナから放射する電波の電力が弱くなってしまう。そこで、特許文献1では、反射波の電力強度に基づいて、アンテナのインピーダンスと送信部のインピーダンスとの不整合が小さくなるようにを調整し、反射波の電力強度を弱める構成が開示されている。
【0003】
一方で、アンテナ同士を近接させると、通信可能となる無線通信技術がある。例えば特許文献2では、自装置と通信相手のアンテナを対向させ、対向させた1組のアンテナを1つのコンデンサとして動作させることで、アンテナ間で誘導電界を形成し、通信する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−7357号公報
【特許文献2】特開2008−271606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、反射波はアンテナのインピーダンスと送信部のインピーダンスの不整合により生じていた。しかしながら、アンテナ同士を近接させて通信する場合、自装置と通信相手で対向した1組のアンテナが1つのコンデンサとして動作するため、自装置と通信アンテナの位置関係に応じて、アンテナ間のインピーダンスが変化し、反射波が生じる。
【0006】
そこで、本発明ではアンテナの位置関係に応じて反射電力が変化する無線通信を行う通信装置が、反射電力に基づいてデータ信号の送信を制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、通信装置が有する第1のアンテナと通信相手が有する第2のアンテナとの位置関係に応じて前記第1のアンテナからの反射電力が変化する無線通信を行う通信装置であって、前記通信相手に前記第1のアンテナを介してデータ信号を送信する送信手段と、前記データ信号を前記第1のアンテナに供給した際の反射電力を判定する判定手段と、前記判定手段により判定した前記反射電力に基づいて、前記送信手段による前記データ信号の送信を制御する制御手段とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本発明ではアンテナの位置関係に応じて反射電力が変化する無線通信を行う通信装置が、反射電力に基づいてデータ信号の送信を制御するので、通信相手から何ら情報を取得することなくデータ信号の送信を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】システム構成図である。
【図2】デジタルカメラ101のハードウェア構成図である。
【図3】アンテナ間の距離およびずれ量と反射電力の関係を示す図である。
【図4】アンテナ間の距離およびずれ量を示す図である。
【図5】アンテナを対向させた状態を示す図である。
【図6】アンテナ間の距離およびずれ量とエラー率(BER)との関係を示す図である。
【図7】通信時におけるフローチャートである。
【図8】反射電力と転送レート、反射電力と送信周期の関係を示す表である。
【図9】接続処理を示すフローチャートである。
【図10】通信処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態1>
図1は、本実施形態におけるシステム構成図である。デジタルカメラ101は、後述するアンテナ225(第1のアンテナ部)を有する通信装置である。クレードル102はアンテナ103(第2のアンテナ部)を有し、アンテナ103を介してデジタルカメラ101と通信する他の通信装置(通信相手装置)である。なお、本実施形態においてデジタルカメラ101とクレードル102とは、誘導電界を利用したTransfer Jet(登録商標)で無線通信を行う。
【0011】
図2(a)に、デジタルカメラ101のハードウェア構成図を示す。なお、クレードル102も同様のハードウェア構成を有している。また、図2(b)については実施形態3で説明する。
【0012】
制御部201はCPUを有し、記憶部202に記憶された後述するプログラムを実行する。記憶部202はRAMおよびROMを有し、後述する各種テーブルやプログラム等を記憶している。表示部203は、ディスプレイでありユーザに対して通知を行う。通信部204は後述する各ハードウェアから構成され、通信相手と無線通信を行う。ここでは、デジタルカメラ101のハードウェア構成を説明しているので、通信部204はクレードル102と無線通信を行う。以下、通信部204が有するハードウェアについて説明する。
【0013】
生成部221は送信するデータ信号を生成し、生成したデータ信号を変調部222へ送信する。ここで、データ信号には、画像や音声等のペイロードを含む信号のみならず、ペイロードを含まず各種制御信号のみを含む信号も含まれる。変調部222は、生成部221から受信したデータ信号に所定の変調(位相変調および拡散符号の乗算を含む)を行う。変調されたデータ信号は、後述する検出部223、スイッチ224を介して平板状のアンテナ(導体電極)225に供給される。ここで、検出部223はデータ信号をアンテナ225に供給した際の反射波を検出する。反射波とは、高周波のデータ信号をアンテナ225に供給した際に、アンテナ225から放射されずに、アンテナ225から戻ってくる波のことである。検出部223は反射波を検出した場合、さらに検出した反射波の強度(反射電力)を判定する。
【0014】
また、スイッチ224はデータ信号をクレードル102に送信する際には変調部222とアンテナ225とを接続し、データ信号をクレードル102から受信する際には復調部226とアンテナ225とを接続する。アンテナ225はクレードル102のアンテナ103と誘導電界を形成することで、変調されたデータ信号をクレードル102と送受信する。また、スイッチ224は通信部204の電源が切断されている場合、アンテナ225と低インピーダンス素子227(ここでは、0Ω)とを接続する。なお、低インピーダンス素子に代えて高インピーダンス素子(例えば、1kΩ)と接続するようにしてもよい。
【0015】
アンテナ225を介してクレードル102から受信したデータ信号は、スイッチ224を介して復調部226に供給される。復調部226はアンテナ225から受信したデータ信号に所定の復調を行う。復調部226により復調されたデータ信号は記憶部202に送信される。
【0016】
図3(a)に、反射電力と、デジタルカメラ101とクレードル102のそれぞれのアンテナ(205および103)間の距離Dとの関係を示す。ここで、アンテナ間の距離Dとは、図4(a)に示す距離Dのことである。図3(a)によれば、反射電力が増加するほど、アンテナ間の距離Dが長くなっていることが分かる。また、図3(b)に、反射電力と、デジタルカメラ101とクレードル102のそれぞれのアンテナ(205および103)間のずれ量Lとの関係を示す。ここで、アンテナ間のずれ量Lとは、図4(b)に示すずれ量Lのことである。図3(b)によれば、反射電力が増加するほど、アンテナ間のずれ量Lが大きくなっていることが分かる。
【0017】
ここで、距離Dまたはずれ量Lと反射電力とが関係する理由を簡単に説明する。図5に、デジタルカメラ101のアンテナ225とクレードル102のアンテナ103とを対向させた際の様子を示す。ここで、両アンテナの電極を1組の平板コンデンサとみなすと、両アンテナの電極が形成する平板コンデンサの容量Cは数1で表される。
【0018】
【数1】

【0019】
ここで、εは誘電率であり、Dはアンテナの電極間の距離であり、Sはアンテナの電極が対向している部分の面積である。数1より、距離Dが長くなるほどコンデンサの容量が小さくなることが分かる。また、アンテナ同士がずれる(ずれ量Lが大きくなる)ほど、対向する部分の面積が小さくなり(Sが小さくなる)、コンデンサの容量が小さくなることが分かる。
【0020】
また、両アンテナとクレードル102側の受信回路(501に相当)の合成インピーダンスZは数2で表される。
【0021】
【数2】

【0022】
ここで、Z1は回路502の合成インピーダンスであり、Z2は回路503の合成インピーダンスであり、それぞれ固定の値である。また、ドットは、Z1およびZ2の複素インピーダンスであることを表している。jは虚数単位、ωは高周波の周波数、Cは上述のコンデンサ容量である。数2より、アンテナ同士が離れる、または、ずれることでコンデンサの容量が小さくなり、合成インピーダンスが大きくなることが分かる。
【0023】
合成インピーダンスZは、アンテナ間の距離Dが3cm程度の時に、デジタルカメラ101側の固有の合成インピーダンスZ0(回路504)と整合性が取れるようになっている。従って、アンテナ同士が離れる、または、ずれることで合成インピーダンスZが変化し、デジタルカメラ101側の固定の合成インピーダンスZ0との間で不整合が生じる。インピーダンスの不整合が大きいほど、反射波は強度を増す。従って、距離Dまたはずれ量Lが大きくなるほど、反射電力が大きくなるのである。
【0024】
次に、図6(a)にアンテナ間の距離Dとビットエラーレート(BER、Bit Error Rate)の関係を示す。図6(a)によれば、アンテナ間の距離Dが長くなるほど、BERが高くなることが分かる。また、図6(b)にアンテナ間のずれ量LとBERの関係を示す。図6(b)によれば、アンテナ間のずれ量Lが大きくなるほど、BERが高くなることが分かる。
【0025】
図3および図6から、反射電力が増加するほど、アンテナ間の距離Dもしくはずれ量Lは大きくなり、また、BERは高くなると推定される。これは、反射電力が増加するほど、アンテナから送信される電力は弱まるからである。また、通信相手の電源が切断されている場合には、反射電力が大きくなることが確認されている。これは、電源が切断されている場合には、通信相手のアンテナは低インピーダンス素子に接続されているため、インピーダンスに不整合が生じるためである。
【0026】
図7に制御部201が記憶部202に記憶されたプログラムを読み出すことで実現されるフローチャートを示す。ここでは、デジタルカメラ101が通信する際にフローチャートに示す処理を実現する。
【0027】
ステップS701において、制御部201の指示により生成部221はデータ信号を生成し、変調部222、検出部223およびスイッチ224を介してアンテナ225に供給する。また、アンテナ225は供給されたデータ信号を送信する。ステップS702において、検出部223は、データ信号を送信した際に生じた反射波を検出し、検出した反射波の強度(反射電力W)を判定する。また、検出部223は、判定した反射電力を記憶部202に記憶させる。ステップS703において制御部201は、記憶部202に記憶されている反射電力が一定閾値(W3)以上であるか否かを判定する。一定閾値以上であればステップS704に進み、一定閾値未満であればステップS705に進む。
【0028】
反射電力が一定閾値以上である場合には、図3および図6より、アンテナ間の距離またはずれ量が大きく(即ち、アンテナ同士が大きく離れている)、BERが高いと推定される。BERが高いと、例えば再送が発生しやすくなり、通信速度が低下してしまう。また、通信が切断してしまう場合もある。そこで、ステップS704において、制御部201の指示により表示部203は通信相手のアンテナが近くに無いことを示す警告表示を行う。ここでは、表示部203は「アンテナの位置を合わせて下さい」という表示を行う。これにより、ユーザは通信相手のアンテナが近くに無いことを容易に知ることができる。さらに、ユーザは警告表示に従って、各々のアンテナの位置を調整することができる。また、通信相手の電源が切断されたことで反射電力が強くなった場合にも、即座にユーザに警告表示を行うので、ユーザは異常にすぐ気付くことができる。
【0029】
ステップS705において、制御部201は、記憶部202に記憶されている反射電力と伝送レートテーブル801とに基づいて、データ信号を送信する際の伝送レート(伝送速度)を変更する。ここで、伝送レートテーブル801とは図8(a)に示すテーブルであり、反射電力と伝送レートとの関係を表している。ここでは、反射電力がW1未満であれば、伝送レートをRate1とする。また、反射電力がW1以上W2未満であれば、伝送レートをRate2とする。また、反射電力がW2以上W3未満であれば、伝送レートをRate3とする。なお、反射電力はW3が最も強く、以下、電力が強い順に、W2、W1である(W3>W2>W1)。また、伝送レートはRate1が最も早く、以下、伝送レートが早い順に、Rate2、Rate3である(Rate1>Rate2>Rate3)。本実施形態においては、変調部222が符号化方式や変調方式、拡散符号等を変更することによって伝送レートを変更する。また、伝送レートが遅くなればなるほど、エラー耐性がより向上する。
【0030】
つまり、本実施形態では反射電力が強い、即ち、アンテナ同士が離れているほど伝送レートを遅くし、エラー耐性を向上させる。これにより、通信相手の受信状態に関する情報(Ack、再送要求、BERの情報等)を通信相手から得ることなく、安定した通信が可能となる。つまり、通信相手の処理負荷を軽減することができる。また、エラーにより何度も再送することなく、一度データ信号を送信するだけで、伝送レートを変更できるので、通信装置および通信相手共に処理負荷を軽減し、省電力とすることができる。
【0031】
ステップS706において、制御部201の指示により変調部222は変更した伝送レートになるようにデータ信号を変調し、アンテナ225を介して当該データ信号を送信する。ステップS707において、制御部201はクレードル102との通信が完了したか否かを判定する。通信が完了した場合には、図7のフローチャートを抜ける。ステップS708において、制御部201は伝送レートを変更してから所定の時間が経過したか否かを判定する。所定の時間が経過していた場合には、再びステップS702に戻り、検出部223は反射電力を判定する。また、所定の時間が経過していない場合には、ステップS706に戻り、データ信号の送信を継続する。これにより、通信中におけるアンテナ同士の位置関係の変化に追従して、伝送レートを変更することができる。
【0032】
以上のように、信号を送信した際の反射電力を判定するので、通信相手の受信状態に関する情報を通信相手から得ることなく、通信装置と通信相手の位置関係またはBERを推定し、伝送レートを変更することができる。また、通信相手は受信状態に関する情報を通信相手に通知する必要が無いため、通信相手の処理負荷が軽減される。また、1度の信号の送信で伝送レートを変更することができるため、伝送レートの変更を判定するまでの時間が短くなる。特に、再送要求を何度も受信した後に変更する場合と比べ、変更までの時間を短くすることができる。また、通信相手は再送要求を何度も送信する必要が無いので、通信相手の処理負荷軽減となる。また、例えば、通信相手はBERの情報を送信する必要が無いので、通信プロトコルを簡単にすることができる。また、通信相手の電源が切断された場合には反射電力が強くなり、即座にユーザに警告表示を行うので、ユーザは異常にすぐ気付くことができる。
【0033】
なお、上述の実施形態では、反射電力から伝送レートを変更したが、これに限らない。例えば、判定した反射電力から反射係数(VSWR、Voltage Standing Wave Ratio)を算出し、算出した反射係数から伝送レートを変更するようにしてもよい。また、反射電力からアンテナ間の距離またはずれ量を判定し、判定した距離またはずれ量から伝送レートを変更するようにしてもよい。さらに、判定した距離またはずれ量からアンテナ間の伝送損失を推定し、推定した伝送損失から伝送レートを変更するようにしてもよい。ただし、いずれの場合においても、反射電力に基づいて伝送レートを変更している。
【0034】
また、上述の実施形態を通信部204のハードウェアのみで実現することもできる。その場合の各部の動作を簡単に説明する。
【0035】
生成部221がデータ信号を生成し、変調部222、検出部223およびスイッチ224を介してアンテナ225に供給する。さらに、アンテナ225は供給されたデータ信号を送信する(S701に相当)。検出部223は、データ信号を送信した際に生じた反射波を検出し、検出した反射波の強度(反射電力W)を判定する(S702に相当)。さらに、検出部223は判定した反射電力を変調部222に通知する。その後、生成部221がデータ信号を変調部222に供給すると、変調部222は、通知された反射電力と、記憶している伝送レートテーブル801とに基づいて、データ信号を変調する。さらに、変調部222は、変調したデータ信号をアンテナ225に供給する(S706に相当)。アンテナ225は、供給されたデータ信号をクレードル102に送信する。以上のように構成しても、同様の効果を得ることができる。
【0036】
<実施形態2>
実施形態1では、反射電力に基づいて伝送レートを変更した。実施形態2では、反射電力に基づいて接続要求の送信間隔を変更する。
【0037】
デジタルカメラ101のハードウェア構成は実施形態1と同じであり、図2に示されているので、同一の符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0038】
図9に制御部201が記憶部202に記憶されたプログラムを読み出すことで実現されるフローチャートを示す。ここでは、デジタルカメラ101に対してユーザから通信開始の指示がなされた際にフローチャートに示す処理を実現する。通信開始の指示は、例えば不図示の操作部(ボタン等)をユーザが押すことにより行われる。
【0039】
ステップS901において、生成部221はデータ信号としての接続要求を生成し、変調部222、検出部223およびスイッチ224を介してアンテナ225に供給する。また、アンテナ225は供給された接続要求を送信する。ステップS902において、検出部223は、接続要求を送信した際に生じた反射波を検出し、検出した反射波の強度(反射電力W)を判定する。また、検出部223は、判定した反射電力を記憶部202に記憶させる。ステップS903において制御部201は、記憶部202に記憶されている反射電力が一定閾値(W3´)以上であるか否かを判定する。一定閾値以上であればステップS904に進み、一定閾値未満であればステップS905に進む。
【0040】
反射電力が一定閾値以上である場合には、図3より、アンテナ間の距離またはずれ量が大きいと推定される。そこで、ステップS904において、表示部203は通信相手のアンテナが近くに無いことを示す警告表示を行う。これにより、複数回、接続要求を送信することなく、通信相手のアンテナが近くに無いことを判定できるので、省電力となる。
【0041】
ステップS905において制御部201は、デジタルカメラ101の電源種別が商用電源かバッテリーかを判別する。判別の結果、電源種別がバッテリーである場合にはステップS906に進み、商用電源である場合にはステップS907に進む。
【0042】
ステップS906において制御部201は、記憶部202に記憶されている反射電力と送信周期テーブル802とに基づいて、接続要求を送信する周期を変更する。ここで、送信周期テーブル802とは図8(b)に示すテーブルであり、反射電力と接続要求を送信する周期との関係を表している。ここでは、反射電力がW1´未満であれば、接続要求を送信する周期をT1とする。また、反射電力がW1´以上W2´未満であれば、接続要求を送信する周期をT2とする。また、反射電力がW2´以上W3´未満であれば、接続要求を送信する周期をT3とする。なお、反射電力はW3´が最も強く、以下、電力が強い順にW2´、W1´である(W3´>W2´>W1´)。また、周期はT1が最も短く、以下、周期が短い順にT2、T3である(T1<T2<T3)。
【0043】
つまり、デジタルカメラ101がバッテリーで駆動している場合には、アンテナ同士が離れているほど接続要求を送信する周期を長くする。
【0044】
アンテナ同士が離れているとBERが高くなってしまうため、接続要求を多く出したとしても通信相手と接続できる可能性が低い。従って、アンテナ同士が離れている場合に接続要求を多く出すことは電力の無駄となってしまう場合がある。そこで、本実施形態では、バッテリーで駆動している場合には、アンテナ同士が離れているほど接続要求を送信する周期を長くすることで、消費電力の低減を優先する。また、アンテナ同士が近い位置にある場合に接続する蓋然性が高くなるため、その後の通信における通信効率を良くすることができる。
【0045】
なお、反射電力がW2´以上W3´未満である場合には、接続要求ではない他の信号を送信するようにしてもよい。これにより、アンテナ同士が離れており、BERが高い場合には接続しない。従って、アンテナ同士が近い位置にある場合に接続する蓋然性が更に高くなり、その後の通信における通信効率を良くすることができる。
【0046】
一方、商用電源である場合、ステップS907において制御部201は、記憶部202に記憶されている反射電力と送信周期テーブル803とに基づいて、接続要求を送信する周期を変更する。ここで、送信周期テーブル803とは図8(c)に示すテーブルであり、反射電力と接続要求を送信する周期との関係を表している。ここでは、反射電力がW1´未満であれば、接続要求を送信する周期をT3´とする。また、反射電力がW1´以上W2´未満であれば、接続要求を送信する周期をT2´とする。また、反射電力がW2´以上W3´未満であれば、接続要求を送信する周期をT1´とする。なお、反射電力はW3´が最も強く、以下、電力が強い順にW2´、W1´である(W3´>W2´>W1´)。また、周期はT1´が最も短く、以下、周期が短い順にT2´、T3´である(T1´<T2´<T3´)。
【0047】
つまり、デジタルカメラ101が商用電源で駆動している場合には、アンテナ同士が離れているほど接続要求を送信する周期を短くする。従って、商用電源で駆動している場合には、通信相手との接続を優先することができる。
【0048】
ステップS908において制御部201の指示により生成部221は変更された周期で接続要求を生成し、アンテナ225を介して接続要求を送信する。ステップS909において制御部201は接続に成功したか否かを判定する。接続に成功した場合には、図9のフローチャートを抜け、実施形態1に示した図7のフローチャート(S701)に移行する。ここで、ステップS701でデータ信号を送信する際には、ステップS902において判定した反射電力と、伝送レートテーブル801とに基づいた伝送レートでデータ信号を送信する。これにより、接続直後に送信するデータから適切な伝送レートで送信することができる。従って、エラーによる再送や、BERが低いにも関わらず低レートでデータを送信してしまうことを防止(低減)できるため、通信効率を向上させ、また、省電力とすることができる。さらに、表示部203が接続に成功した旨をユーザに通知するようにしてもよい。接続に成功していない場合には、ステップS910に進む。
【0049】
ステップS910において制御部201は、所定時間、接続要求を送信したか否かを判定する。所定時間が経過していない場合には、ステップS902に戻り、検出部223は反射電力を判定する。また、所定時間が経過していた場合には、ステップS911に進み、表示部203はユーザに接続できなかった旨を通知し、図9のフローチャートを抜ける。
【0050】
以上のように、信号を送信した際の反射電力に基づいて、接続要求の送信間隔を変更する。従って、通信装置は、通信相手の受信状態に関する情報を得ることなく、アンテナ間の距離を推定し、送信間隔を変更することができる。また、バッテリーで駆動しており、アンテナ同士が離れている場合には接続要求を送信する周期を長くするので、省電力とすることができる。また、商用電源で駆動しており、アンテナ同士が離れている場合には接続要求を送信する周期を短くするので、接続性を向上させることができる。
【0051】
<実施形態3>
実施形態3では、デジタルカメラ101は、反射電力に基づいて、複数のアンテナの中から通信に使用するアンテナを選択する。
【0052】
図2(b)に本実施形態のデジタルカメラ101のハードウェア構成図を示す。なお、実施形態1、2と同じ部分については同一の符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0053】
スイッチ251は、データ信号を送信する際にはアンテナ252−a、252−b、252−cのいずれかと検出部223とを接続する。また、スイッチ251は、データ信号を受信する際にはアンテナ252−a、252−b、252−cのいずれかと復調部226とを接続する。アンテナ252はクレードル102のアンテナ103と誘導電界を形成することで、変調されたデータ信号をクレードル102と送受信する。
【0054】
また、検出部223は、それぞれのアンテナ(252−a、252−b、252−c)における反射波を検出し、検出した反射波の強度(反射電力)を判定する。
【0055】
図10に制御部201が記憶部202に記憶されたプログラムを読み出すことで実現されるフローチャートを示す。このフローチャートは、デジタルカメラ101が通信中に定期的に繰り返して行われる。また、接続前にフローチャートに示す処理を実現するようにしてもよい。
【0056】
ステップS1001において、生成部221はデータ信号を生成し、変調部222、スイッチ251を介して各々のアンテナ252−a、252−b、252−cに供給する。この際、スイッチ251は制御部201の指示により、検出部223とアンテナ252−a、252−b、252−cとの接続を順次切り替えていく。また、各々のアンテナ252−a、252−b、252−cは供給されたデータ信号を送信する。ここでは、ペイロード(内容)の無いデータ信号を送信するようにする。これにより、通信相手は何度も同じデータを受信する必要がなくなるため、通信相手の処理負荷を軽減することができる。
【0057】
ステップS1002において検出部223は、データ信号を送信した際に生じた反射波を各々のアンテナについて検出し、検出した反射波の強度(反射電力W)を判定する。また、検出部223は、判定した反射電力を記憶部202に記憶させる。ステップS1003において制御部201は、記憶部202に記憶されている反射電力が最も小さいアンテナ(ここでは、252−aとする)を選択する。ステップS1004において、制御部201の指示に従いスイッチ251は、選択されたアンテナ(ここでは、252−a)と変調部222または復調部226とを接続する。即ち、選択されたアンテナでデータ信号を送受信するようにする。これにより、反射電力に基づいて、BERが小さいと推定されるアンテナを用いて通信することができる。
【0058】
本発明は前述の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体をシステムあるいは装置に供給し、システムあるいは装置が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
101 デジタルカメラ
102 クレードル
103 アンテナ
201 制御部
202 記憶部
203 表示部
204 通信部
224 検出部
225 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置が有する第1のアンテナと通信相手が有する第2のアンテナとの位置関係に応じて前記第1のアンテナからの反射電力が変化する無線通信を行う通信装置であって、
前記通信相手に前記第1のアンテナを介してデータ信号を送信する送信手段と、
前記データ信号を前記第1のアンテナに供給した際の反射電力を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定した前記反射電力に基づいて、前記送信手段による前記データ信号の送信を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記送信手段により前記データ信号を送信する際の伝送レートを、前記反射電力に基づいて変更することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記送信手段により前記データ信号を送信する際の送信間隔を、前記反射電力に基づいて変更することを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
電源の種別を判別する判別手段をさらに有し、
前記判別手段による判別の結果、電源がバッテリーであった場合、前記反射電力が強いほど前記送信間隔を長くすることを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
電源の種別を判別する判別手段をさらに有し、
前記判別手段による判別の結果、電源が商用電源であった場合、前記反射電力が強いほど前記送信間隔を短くすることを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項6】
前記データ信号は、接続要求であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記第1のアンテナは複数のアンテナから構成され、
前記制御手段は、前記反射電力に基づいて、前記送信手段により前記データ信号を送信するアンテナを切り替えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
通信装置が有する第1のアンテナと通信相手が有する第2のアンテナとの位置関係に応じて前記第1のアンテナからの反射電力が変化する無線通信を行う通信装置の制御方法であって、
前記通信相手に前記第1のアンテナを介してデータ信号を送信する送信工程と、
前記データ信号を前記第1のアンテナに供給した際の反射電力を判定する判定工程と、
前記判定工程において判定した前記反射電力に基づいて、前記送信工程における前記データ信号の送信を制御する制御工程と、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項9】
コンピュータにより実行され、通信装置の制御を行うためのプログラムであって、請求項8に記載の制御方法を実現するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−130034(P2011−130034A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284570(P2009−284570)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】