説明

道路舗装材の走行騒音試験方法

【課題】複数の道路舗装材の試験サンプルに対して短時間で、かつ低コストで走行騒音の測定を行なえるようにした道路舗装材の走行騒音試験方法を提供する。
【解決手段】評価対象の道路舗装材からなるパネル状の試験サンプル2を予め工場等で多数製造しておき、この試験サンプル2を連続的に路面8にアンカーボルト3により固定して試験走行路1、1を形成し、試験走行路1、1および試験走行路1、1の長手方向前方の路面8のそれぞれ側方近傍に配置した騒音計6a、6bにより、試験走行路1、1上および路面8上を走行する試験車両9の走行騒音を測定して、それぞれの走行騒音データを比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装材の走行騒音試験方法に関し、さらに詳しくは、複数の道路舗装材の試験サンプルに対して短時間で、かつ低コストで走行騒音の測定を行なえるようにした道路舗装材の走行騒音試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路舗装材としてゴムチップを樹脂バインダにより固結して構成した弾性舗装材や排水性舗装材等の様々な舗装材の開発が進められている。例えば、弾性舗装材は走行騒音を低減するために、吸音性能、材質の多孔性、固さ、表面の滑らかさなど数多くの要素に対して所定レベルの性能を有することが求められるため、仕様を変えた多数の試験サンプルを用いて測定を行なって各性能を確認するようにしている。
【0003】
従来、舗装材の走行騒音を測定するには、試験サンプル(舗装材)を路面に敷き均して試験走行路を形成し、その試験走行路上に車両を走行させて測定をするようにしていた(例えば、特許文献1参照)。走行騒音の測定を行なう場所の広さは限られているため、この試験方法により多数の試験サンプルの測定を行なうには、走行騒音を測定した後、敷設した試験サンプルを撤去して次の試験サンプルを敷設するという作業を繰り返す必要があり、莫大な時間やコストを要するという問題があった。
【特許文献1】特開平8−136532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、複数の道路舗装材の試験サンプルに対して短時間で、かつ低コストで走行騒音の測定を行なえるようにした道路舗装材の走行騒音試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明の道路舗装材の走行騒音試験方法は、評価対象の道路舗装材からなるパネル状の試験サンプルを予め製造し、該試験サンプルを複数連続するように路面に固定して試験走行路を形成し、該試験走行路および該試験走行路の長手方向に続く路面のそれぞれ側方近傍に騒音計を配置して、該それぞれの騒音計により前記試験走行路上および路面上を走行する試験車両の走行騒音を測定し、該測定した前記試験走行路上での走行騒音データと、前記路面上での走行騒音データとの比較により前記試験走行路を形成する道路舗装材の走行騒音低減性能を評価することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の道路舗装材の走行騒音試験方法によれば、評価対象の道路舗装材からなるパネル状の試験サンプルを予め工場等で複数製造して用意しておき、この試験サンプルを連続的に路面に固定するだけで試験走行路を形成することができ、その撤去も容易にできるようになる。
【0007】
そして、試験走行路とその長手方向に続く路面のそれぞれ側方近傍に配置した騒音計により、試験走行路上および路面上を走行する試験車両の走行騒音を測定して、それぞれの走行騒音データを比較することで試験走行路を形成する道路舗装材の走行騒音低減性能を評価することができるので、評価する試験サンプルが多数ある場合であっても、迅速かつ低コストで走行騒音試験を行なうことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の道路舗装材の走行騒音試験方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0009】
図1、2に、本発明の道路舗装材の走行騒音試験方法を行なう際の試験サンプル2等の配置を例示する。アスファルト等の路面8の上には、評価対象となる多孔質の弾性道路舗装材により製造された複数のパネル状の試験サンプル2が、長手方向に連続するように固定されて2列の試験走行路1、1が形成されている。
【0010】
この試験サンプル2は、工場等において予め四角形のパネル状に製造されたものであり、幅方向両端部にボルト固定部3aを有している。試験サンプル2の構造や大きさは特に限定されるものではないが、例えば、一方面側をゴムチップを樹脂バインダにより固結した材料で構成し、他方面側を砕石等で構成した2層構造にし、幅寸法W1を1m、長さ寸法を2m、厚さ寸法を30mm程度としている。
【0011】
試験サンプル2の幅寸法W1は、試験車両9の全幅W2よりも小さいが、幅方向に所定間隔で配置され、2列の試験走行路1、1の総幅寸法Wが試験車両9の全幅W2よりも大きくなるように設定されているので、試験車両9の左右のタイヤがそれぞれ一方の試験走行路1、1上に載るようになる。
【0012】
2列の試験走行路1、1は、試験サンプル2を長手方向に、例えば、5枚〜10枚程度配置して形成され、その長さは10m〜20m程度になっている。試験サンプル2の配置数は5枚〜10枚に限定されるものではなく、必要とされる試験走行路1、1の長さに応じた枚数が配置される。安定した走行騒音データを取得するには、できる限り試験走行路1、1の長さを長くすることが好ましい。
【0013】
それぞれの試験サンプル2は、ボルト固定部3aでアンカーボルト3により路面8に対して着脱可能に固定されている。固定方法はこれに限定されるものではなく、アンカーボルト3と両面接着テープ等とを併用するなど、試験サンプル2と路面8とを着脱容易に固定できる種々の方法を用いることができる。また、形成したそれぞれの試験走行路1、1の前方先端部にはスロープ4、4が着脱可能に固設されている。
【0014】
試験走行路1の長手方向中央部および試験走行路1の長手方向前方の路面8のそれぞれ側方近傍(例えば、1m〜5m程度離れた位置)には、騒音計6a、6bに接続した集音マイク5a、5bが配置されている。路面8に配置される集音マイク5bは、例えば、試験走行路1の前方先端部から5m〜6mの位置に配置される。それぞれの騒音計6a、6bは分析装置7に接続されている。尚、集音マイク5a、5bの配置は上記に例示した位置に限定されるものではない。
【0015】
試験サンプル2の走行騒音試験を行なうには、試験走行路1、1の前方先端部からある程度距離をあけた前方位置の路面8から試験車両9を所定の速度で走行させ、この路面8上と試験走行路1、1上とを走行した際の走行騒音を、それぞれ集音マイク5b、5aにより取得する。この取得した路面8上での走行騒音データと、試験走行路1、1上での走行騒音データとを比較することにより、試験サンプル2を構成している弾性道路舗装材の走行騒音低減性能を把握することができる。
【0016】
尚、試験走行路1、1の後方先端部にスロープ4、4を固設し、集音マイク5bを試験走行路1、1の長手方向後方の路面8に配置し、試験走行路1、1上での走行騒音データと、試験走行路1、1の後方の路面8上での走行騒音データとを比較するようにしてもよい。
【0017】
走行騒音低減性能は、吸音性能、材質の多孔性(開孔率、透水率)、材質の固さ(ヤング率、硬度)、表面の滑らかさ等の要素により影響を受けるので、評価対象の各仕様の試験サンプル2について、これらの要素についての試験を行なって、各要素の試験データを取得し、走行騒音低減性能との相関関係を分析する。この分析により走行騒音に大きな影響を及ぼす要素や各要素の組み合わせを把握し、この把握した知見に基づいて最適な多孔質弾性道路舗装材の仕様を決定する。各要素の試験は、パネル状の試験サンプル2から必要な量の試験片を取り出して試験を行なうことができる。
【0018】
このように、予め製造して用意しておいたパネル状の試験サンプル2を、アンカーボルト3により路面8に締結固定するだけで試験走行路1を形成することができ、アンカーボルト3の締結を解除すれば取外しも容易にできるので、評価対象となる試験サンプル2が多数ある場合であっても、迅速に試験走行路1を形成することが可能となり、その撤去も容易にできる。
【0019】
これにより、限られた広さの試験スペースであっても多数の試験サンプル2についての走行騒音試験を短時間で終えることができ、かつ試験サンプル2を工場等で集約して製造することができるので、試験に要するコストの低減が可能となる。
【0020】
例えば、気温や天候等の測定条件がある一定条件になったときに、種々の仕様の試験サンプル2により順次、試験走行路を形成して走行騒音の測定を行なうことが可能になるため、試験サンプル2間で測定条件を一定化させて試験することが容易になり、測定条件の影響を排除した精度のよい走行騒音データを取得することが可能となる。
【0021】
上記の実施形態では、試験サンプル2の幅寸法W1を試験車両9の全幅W2よりも小さくしてコンパクトに構成することで、コストを低減しているが、走行騒音は2列の試験走行路1、1の間の路面8の影響を受けて少なからず変化する。そこで、試験サンプル2の幅寸法W1を試験車両9の全幅W2よりも大きく設定して、1列の試験走行路1を形成し、この1列の試験走行路1上に試験車両9の左右のタイヤを載せて走行騒音の測定を行なうことにより、さらに精度のよい走行騒音データを取得することができる。
【0022】
また、取得した走行騒音測定データに基づいて騒音レベルの時間波形を表示して分析するには、分析器の時定数を1msec以上20msec以下に設定し、分析の単位時間を短くして時間波形の上下変動のレスポンスを速くすることが好ましい。この時定数の設定によれば、試験車両9の前後輪がスロープ4を通過する際の衝撃音データと、試験走行路1、1上での必要な走行騒音データとの重なりを防止でき、分析が容易になる。
【0023】
分析器の時定数を1msec以上20msec以下に設定した場合には、騒音レベルの時間波形の変動が大きく騒音レベルがばらつくため、所定の平均区間を決め、この平均区間での算出平均値を騒音レベルとして、試験サンプル2間での比較をすることが好ましい。
【実施例】
【0024】
図1、2の例示と同様に試験サンプル等を配置して走行騒音試験を行なった。試験サンプルは、長さ2m、幅1m、厚さ30mmとし、表面側厚さ20mmを砕石で構成し、裏面側厚さ10mmをゴムチップを樹脂バインダで固結して構成した2層構造の弾性道路舗装材とした。この試験サンプルを長手方向に5枚ずつ連続してアスファルト路面にアンカーボルトにより固定し、幅方向に0.6m間隔をあけ、長さ10mの2列の試験走行路を形成した。それぞれの試験走行路の前方先端部にはスロープを固設した。それぞれの騒音計(RION社製:NL−32)には集音マイクを接続し、騒音データを分析装置(パソコン)へ送信するように構成した。
【0025】
試験車両を路面上および試験走行路上を約40km/hで定速走行させ、試験走行路上では左右のタイヤがそれぞれ一方の試験走行路に載るようにして、路面上および試験走行路上での走行騒音データを取得し、この走行騒音データに基づいて分析器(RION社製:1/3オクターブバンドリアルタイムアナライザSA−27(時定数10msec))により分析した騒音レベルの時間波形を図3に示す。
【0026】
図3の縦軸は騒音レベル(dB)、横軸は経過時間(sec)を示し、曲線A、Bはそれぞれ試験走行路、アスファルト路面の側方近傍で取得した走行騒音データに基づく騒音レベルの時間波形である。曲線C、Dはそれぞれ曲線A、Bを所定の平均区間で算出した平均値である。
【0027】
図3の曲線A、Bの2つの大きなピークは、試験車両の前後輪がスロープを走行した際の衝撃音に起因するものであり、分析器の時定数を10msecにすることにより、このピークと、試験走行路上での騒音データ(図3において、2つのピークの後に測定されているデータ)とは重複せずに分析が容易になっていることが確認できる。
【0028】
また、曲線C、Dに示したように、所定の平均区間での算出平均値で騒音レベルを表示することにより、データ間の比較が容易になることが分かる。図3では、曲線C、Dとの比較により、試験した弾性道路舗装材(平均65.3dB)がアスファルト(平均76.1dB)に対して10.8(dB)の騒音レベルの低減性能を有していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の走行騒音試験方法を行なう際の試験サンプル等の配置を例示する平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】分析器の時定数を10msecに設定して分析した騒音レベルの時間波形を例示するグラフ図である。
【符号の説明】
【0030】
1 試験走行路
2 試験サンプル
3 アンカーボルト 3a ボルト固定部
4 スロープ
5a、5b 集音マイク
6a、6b 騒音計
7 分析装置
8 路面
9 試験車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の道路舗装材からなるパネル状の試験サンプルを予め製造し、該試験サンプルを複数連続するように路面に固定して試験走行路を形成し、該試験走行路および該試験走行路の長手方向に続く路面のそれぞれ側方近傍に騒音計を配置して、該それぞれの騒音計により前記試験走行路上および路面上を走行する試験車両の走行騒音を測定し、該測定した前記試験走行路上での走行騒音データと、前記路面上での走行騒音データとの比較により前記試験走行路を形成する道路舗装材の走行騒音低減性能を評価する道路舗装材の走行騒音試験方法。
【請求項2】
前記試験サンプルの幅を前記試験車両の全幅以上に設定する請求項1に記載の道路舗装材の走行騒音試験方法。
【請求項3】
前記試験走行路上および路面上での走行騒音データに基づいて、騒音レベルの時間波形の分析を行なう際に、分析器の時定数を1msec以上20msec以下に設定する請求項1または2に記載の道路舗装材の走行騒音試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−298355(P2007−298355A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125628(P2006−125628)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】