説明

遠心乾燥装置

【課題】 振動を低減して被処理物の損傷を防止できると共に、被処理物の乾燥処理能力を向上できる遠心乾燥装置を提供すること。
【解決手段】 チャンバ内に収容され、回転軸12回りに回転するターンテーブル13と、回転軸に関し対称な位置に2対が等角度間隔でターンテーブルに配置され、それぞれに基板18を保持するクレードル15Aと15B、クレードル16Aと16Bと、チャンバの外側下方で、クレードル15Aと15Bに対応して設けられ、回転軸に直交する方向に移動可能なウェイト33を備えた上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bと、チャンバの外側下方で、クレードルクレードル16Aと16Bに対応して設けられ、回転軸に直交する方向に移動可能なウェイト38を備えた上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bとを有し、ターンテーブルの回転により、クレードルに保持された基板を乾燥するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄後の基板などの被処理物の表面に付着している水分を遠心力により飛散させて、上記被処理物を乾燥処理する遠心乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板表面に付着した水分を遠心力により飛散させて乾燥させる遠心乾燥装置として、例えば、特許文献1に記載された装置がある。この遠心乾燥装置は、チャンバ内に収容されて回転軸回りに回転するターンテーブルと、このターンテーブルにおいて上記回転軸に関し対称な位置に一対配置され、それぞれが基板を保持するクレードルと、回転軸に関し対称な位置で、且つ上記一対のクレードルに直交して配置された一対のバランス機構部とを有するものである。
【0003】
一対のクレードルに収納される基板の枚数が同数であれば、クレードルを含めたターンテーブルの回転時の重量バランスは適切となるが、製造工程において不良の基板が除かれるなどの理由で、一対のクレードルに収納される基板の枚数が異なる場合がある。特許文献1の遠心乾燥装置は、このような場合に、一対のクレードル内に収納された基板の枚数を検出し、この枚数差に応じて一対のバランス機構部のウェイトの位置を変更することで、クレードルを含むターンテーブルの重量バランスを適切化し、ターンテーブルの高速回転時における振動及び騒音を低減している。
【0004】
【特許文献1】特許第3129895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述の特許文献1の遠心乾燥装置では、ターンテーブルにクレードルが一対しか配置されていないため、一度の乾燥工程で処理できる基板の枚数が少なく、能率的な乾燥処理を実施することができない。
【0006】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、振動を低減して被処理物の損傷を防止できると共に、被処理物を乾燥処理する処理能力を向上させることができる遠心乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る遠心乾燥装置は、チャンバ内に収容され、回転軸回りに回転するターンテーブルと、上記回転軸に関して対称な位置に複数対、それぞれの対が等角度間隔で上記ターンテーブルに配置され、それぞれに被処理物を保持する保持部材と、上記チャンバの外側で、上記回転軸の軸方向に沿って当該回転軸に複数段取り付けられた支持部材と、これらの支持部材のそれぞれに上記保持部材の各対に対応して設けられ、上記回転軸に直交する方向に移動可能なウェイトを備えたバランス機構部とを有し、上記ターンテーブルの回転により、上記保持部材に保持された被処理物を乾燥処理することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る遠心乾燥装置は、チャンバ内に収容され、回転軸回りに回転するターンテーブルと、このターンテーブルにおいて上記回転軸に関し対称な位置に一対配置され、それぞれに被処理物を保持する保持部材と、上記チャンバの外側で、上記回転軸の軸方向に沿って当該回転軸に複数段取り付けられた支持部材と、これらの支持部材のそれぞれに上記保持部材の各対に対応して設けられ、上記回転軸に直交する方向に移動可能なウェイトを備えたバランス機構部とを有し、上記ターンテーブルの回転により、上記保持部材に保持された被処理物を乾燥処理することを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載の発明に係る遠心乾燥装置は、請求項1に記載の発明において、上記保持部材は、回転軸に関し対称な位置に2対がそれぞれ直交して配置されたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載の発明に係る遠心乾燥装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、上記支持部材は上下2段設けられ、上段支持部材に上段バランス機構部が、下段支持部材に下段バランス機構部がそれぞれ設けられたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に記載の発明に係る遠心乾燥装置は、請求項4に記載の発明において、上記上段バランス機構部のウェイトは、対応する一対の保持部材のうち被処理物が多く保持された保持部材に対し回転軸に関し反対側に位置づけられ、また、下段バランス機構部のウェイトは、被処理物が多く保持された上記保持部材に対し上記回転軸に関し同じ側に位置づけられることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6に記載の発明に係る遠心乾燥装置は、請求項4に記載の発明において、上記上段バランス機構部のウェイトは回転軸に関し両側に設けられ、対応する一対の保持部材のうち被処理物が多く保持された保持部材と同じ側の上記ウェイトが、上記回転軸に最も近く位置づけられ、また、下段バランス機構部のウェイトは上記回転軸に関し両側に設けられ、対応する一対の上記保持部材のうち被処理物が多く保持された保持部材と反対側の上記ウェイトが、上記回転軸に最も近く位置づけられることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に記載の発明に係る遠心乾燥装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、上記バランス機構部は、回転軸に直交する方向に延びるボールねじにウェイトが螺合され、ターンテーブルの回転に伴う所定位置で、上記ボールねじがウェイト駆動部に結合されて回転駆動されることで、上記ウェイトが所望位置に位置づけられることを特徴とするものである。
【0014】
請求項8に記載の発明に係る遠心乾燥装置は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明において、一対の上記保持部材に保持された被処理物の数は、ターンテーブルの回転に伴う所定位置で、チャンバの外側に配置された検出器により検出され、これらの一対の保持部材における被処理物の数の差に基づき、この一対の保持部材に対応するバランス機構部のウェイトの位置が所望位置に位置づけられることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至7に記載の発明によれば、一対または複数対の保持部材が配置されたターンテーブルを収容するチャンバの外側に、複数段の支持部材が回転軸の軸方向に沿って当該回転軸に設けられ、各支持部材に、ウェイトを備えたバランス機構部が配置されたことから、ターンテーブルの直径方向の重量バランスのみならず、ターンテーブルの回転軸方向の重量バランスも良好に設定できるので、乾燥処理時における振動を低減でき、保持部材に保持される被処理物の損傷を防止できる。
【0016】
また、ターンテーブルに保持部材が複数対設けられた場合には、ターンテーブルの回転による一度の乾燥処理によって多数の被処理物を乾燥できるので、処理能力を向上させることができる。
【0017】
バランス機構部がターンテーブルを収容するチャンバの外側に配置されたことから、このバランス機構部により発生する塵埃がチャンバ内へ流入せず、従って、チャンバ内のターンテーブルにおける保持部材に保持された被処理物に対し塵埃の影響を極めて低減できる。
【0018】
請求項8に記載の発明によれば、一対の保持部材に保持された被処理物の数が、チャンバの外側に配置された検出器により検出され、これらの被処理物の数の差に基づきバランス機構部のウェイトの位置が所望位置に位置づけられ、ターンテーブルの回転により被処理物の乾燥処理が実施されるので、被処理物の数の検出から乾燥までの一連の処理を単一の装置で自動的に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る遠心乾燥装置の一実施の形態を示す概略側面図である。図2は、図1の遠心乾燥装置の要部を示す斜視図である。図3は、図1のIII矢視図である。
【0021】
これらの図1〜図3に示す遠心乾燥装置10は、チャンバ11内に収納されて回転軸12回りに回転駆動されるターンテーブル13と、チャンバ11の下方に配置されたバランスユニット14とを有して構成され、ターンテーブル13に設置された保持部材としてのクレードル15A、15B、16A、16Bのそれぞれに収納された基板カセット17内の基板18を、ターンテーブル13の高速回転による遠心力の作用で水分を飛散させて乾燥するものである。ここで、上記基板18は、半導体基板(シリコンウェハ)やガラス基板などの被処理物である。
【0022】
チャンバ11は有底筒形状であり、上部開口が図示しない蓋により開閉可能とされる。また、ターンテーブル13は略有底円筒形状であり、底部19の中央位置に回転軸12が固定される。この回転軸12は、ターンテーブル13の底部19の下方へ垂直に延び、プーリ20及びタイミングベルト21を介して駆動モータ22により回転駆動される。この駆動モータ22は、チャンバ11と同様にフレーム23に支持される。また、回転軸12も、このフレーム23に回転自在に支持されている。
【0023】
上記基板カセット17は、図2に示すように、複数枚の基板18を平行に等ピッチで積載して収納するものであり、例えば最大25枚の基板18を収納可能である。この基板カセット17を搬入して保持するクレードル15A、15B、16A及び16Bは、図3に示すように、ターンテーブル13において、回転軸12に関し対称な位置に2対がそれぞれ直交して配置される。つまり、ターンテーブル13において、一対のクレードル15Aと15Bが回転軸12に関し対称な位置に配置され、他の一対のクレードル16Aと16Bが、回転軸12に関し対称な位置で、且つクレードル15Aと15Bの並ぶ方向に直交する方向に配置される。
【0024】
各クレードル15A、15B、16A、16Bは、図1及び図3に示すように、枢支軸24を用いてターンテーブル13に枢支され、基板カセット17を介して収納保持する基板18の主面が、ターンテーブル13の回転軸12に対しほぼ直交する定位置αと、ターンテーブル13の回転軸12に対し平行となる搬入出位置βとの間で、シリンダ等の駆動手段(不図示)を用いて約90度回動可能に設けられる。クレードル15A、15B、16A及び16Bは、基板カセット17の搬入または搬出時には搬入出位置βに設定され、搬入出時以外の時(乾燥処理時を含む)には定位置αに設定される。この定位置αにおいて、基板18は水平状態に配置されることになる。
【0025】
ところで、前記バランスユニット14は、図1、図2及び図4に示すように、チャンバ11の外側下方で、回転軸12の軸方向に沿い所定距離離間して当該回転軸12に2段設けられた支持部材(上段支持部材25、下段支持部材26)と、これらの上段支持部材25及び下段支持部材26に支持されたバランス機構部(上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27B、上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28B)とを有して構成される。
【0026】
上段支持部材25及び下段支持部材26は、図2に示すように、互いに直交配置された支持フレーム29及び30が交差部分で回転軸12に固定され、これらの支持フレーム29及び30の両端部が支持アーム31により連結されたものである。
【0027】
上段支持部材25に、上段バランス機構部27Aが支持フレーム29に沿って配設されると共に、上段バランス機構部28Aが支持フレーム30に沿って、上段バランス機構部27Aと直交して配設される。また、下段支持部材26に、下段バランス機構部27Bが支持フレーム29に沿って配設されると共に、下段バランス機構部28Bが支持フレーム30に沿って、上段バランス機構部28Aと直交して配設される。上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bは、一対のクレードル15Aと15Bに対応して配置されたものであり、また、上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bは、他の一対のクレードル16Aと16Bに対応して配置されたものである。
【0028】
上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bは、支持フレーム29の両側で回転軸12に直交する方向に延びる2本のボールねじ32のそれぞれに、ウェイト33が螺合されたものである。ボールねじ32の回転によりウェイト33が、回転軸12に直交する方向に移動可能とされる。ボールねじ32の両端部は支持フレーム29に回転自在に支持され、このボールねじ32の一端部に従動ギア34が結合される。これらの従動ギア34は、ロック穴36を備えた駆動ギア35により噛合い連結される。
【0029】
上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bは、支持フレーム30の両側で、ボールねじ32及び支持フレーム29を避けるべく上下に設けられ、回転軸12に直交する方向に延びる2本のボールねじ37のそれぞれに、ウェイト38が螺合されたものである。ボールねじ37の回転によりウェイト38が、回転軸12と直交する方向に移動可能とされる。ボールねじ37の両端部は支持フレーム30に回転自在に支持され、ボールねじ37の一端部に従動ギア34が結合される。これらの従動ギア34が駆動ギア35に噛合い連結される。
【0030】
上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bのボールねじ32、並びに上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bのボールねじ37は、ターンテーブル13の回転に伴う所定位置でウェイト駆動部39により回転駆動される。つまり、ウェイト駆動部39は、図1に示すようにフレーム23の同一の鉛直線上で上下2箇所に設置される。
【0031】
このウェイト駆動部39は、図4に示すように、駆動モータ40のモータシャフト(不図示)に、ロックピン41を備えたリボルバ42が取り付けられ、駆動モータ40がスライダ43を介して基台44に設けられたものである。基台44にはシリンダ45が設置され、このシリンダ45のロッド46の移動によりスライダ43が基台44に対し往復移動して、駆動モータ40が進退する。駆動モータ40の進退移動によりリボルバ42のロックピン41が、上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27B、並びに上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bにおける駆動ギア35のロック穴36に噛み合い、この状態で駆動モータ40が起動することによりボールねじ32、37が回転する。
【0032】
上記駆動モータ40はたとえばステッピングモータであり、ボールねじ32、37のリード(ピッチ)を基準としてこれらのボールねじ32、37を正転または逆転させることで、ウェイト33、38を所望位置(後述)に位置付ける。
【0033】
図6(A)に示すように、上段バランス機構部27Aのウェイト33は、対応する一対のクレードル15Aと15Bのうち、基板ホルダ17を介して基板18が多く保持されたクレードル15Aまたは15B(図6ではクレードル15A)に対して回転軸12に関し反対側に位置づけられる。また、下段バランス機構部27Bのウェイト33は、対応する一対のクレードル15Aと15Bのうち、基板カセット17を介して基板18が多く保持されたクレードル15Aまたは15B(図6ではクレードル15A)に対して回転軸12に関し同じ側に位置づけられる。
【0034】
同様にして、上段バランス機構部28Aのウェイト38は、対応する他の一対のクレードル16Aと16Bのうち、基板カセット17を介してウェイト18が多く保持されたクレードル16Aまたは16B(図6ではクレードル16A)に対し、回転軸12に関し反対側に位置づけられる。また、下段バランス機構部28Bのウェイト38は、対応する他の一対のクレードル16Aと16Bのうち、基板カセット17を介して基板18が多く保持されたクレードル16Aまたは16B(図6ではクレードル16A)に対して回転軸12に関し同じ側に位置づけられる。
【0035】
図2に示すように、一対のクレードル15Aと15B、他の一対のクレードル16Aと16Bにそれぞれ保持された基板18の枚数は、ターンテーブル13の回転に伴う所定位置で、チャンバ11の外側の図示しないフレームに対向して配置された2個の枚数検出器47により検出される。このうちの一つの枚数検出器47は、前記ウェイト駆動部39の直上位置に設置される。この枚数検出器47は、図5に示すように、センサモータ48により駆動されるボールねじ49にナットブロック50が螺合され、このナットブロック50にフォトセンサ51が取り付けられたものである。センサモータ48の起動によりボールねじ49及びナットブロック50を介してフォトセンサ51が、クレードル15A、15B、16A、16Bに基板ホルダ17を介して保持された基板18の積載方向に沿って移動し、各基板ホルダ17内の基板18の枚数を検出する。
【0036】
このようにして枚数検出器47により検出された一対のクレードル15Aと15B内の基板18の枚数から、この一対のクレードル15Aと15Bにおける基板18の枚数差が算出され、この枚数差に基づき相関テーブル(後に詳説)を用いて、この一対のクレードル15Aと15Bに対応する上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bのそれぞれにおけるウェイト33の位置(前記所望位置)が決定される。同様にして、枚数検出器47により検出された他の一対のクレードル16Aと16B内の基板18の枚数から、この他の一対のクレードル16Aと16Bにおける基板18の枚数差が算出され、この枚数差に基づき相関テーブルを用いて、この他の一対のクレードル16Aと16Bに対応する上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bのそれぞれにおけるウェイト38の位置(前記所望位置)が決定される。
【0037】
上記相関テーブルは、例えば図6(B)に示すように、一対のクレードル15Aと15B(または他の一対のクレードル16Aと16B)における基板18の枚数差と、上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bのウェイト33(または上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bのウェイト38)の位置との関係を示すものであり、ウェイト33(またはウェイト38)の位置は、回転軸12の位置をゼロとして示されている。図6(B)の相関テーブルの算出手順を、一対のクレードル15Aと15Bに対応する上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bについて具体的に述べる。他の一対のクレードル16Aと16Bに対応する上段バランス機構部28A及び28Bについても同様である。
【0038】
回転軸12が軸振れせずに回転するためには、基板18を保持したクレードル15Aと15Bに作用する向心力と、下段バランス機構部27Bのウェイト33に作用する向心力との和が、上段バランス機構部27Aのウェイト33に作用する向心力と等しくなる必要がある。ここで、一般に、向心力FはF=mrω(m:質量、r:半径、ω:角速度)であるが、一つの回転軸12上の回転を考えるのでωは全て共通であり省略できる。従って、回転軸12回りの力のモーメントを釣り合わせ、且つ上段バランス機構部27Aのウェイト33を支点としたクレードル15A及び15Bと下段バランス機構部27Bのウェイト33との力のモーメントを釣り合わせればよい。
【0039】
ここで、基板18を保持したクレードル15A、15Bのそれぞれの重さをMW1(基板枚数:W1)、MW2(基板枚数:W2)とし、クレードル15A、15Bの回転軸12からの距離をLとし、上段バランス機構部27Aのウェイト33の重さをA、この上段バランス機構部27Aのウェイト33の回転軸12からの距離をLとし、下段バランス機構部27Bのウェイト33の重さをB、下段バランス機構部27Bのウェイト33の回転軸12からの距離をLとし、上段バランス機構部27Aのボールねじ32からターンテーブル13の底部19までの距離をH、上段バランス機構部27Aのボールねじ32から下段バランス機構部27Bのボールねじ32までの距離をHとすると、上述の2つの釣り合い式は
(MW1・L−MW2・L)+B・L=A・L ………(1)
H(MW1・L−MW2・L)=H・B・L ………(2)
となる。
A=M、B=mとすると、式(1)、式(2)はそれぞれ
L(MW1−MW2)+m・L=M・L ………(3)
H(MW1−MW2)L=H・m・L ………(4)
となる。
【0040】
基板18を保持したクレードル15Aの方が基板18の枚数が多い場合に、上段バランス機構部27A、下段バランス機構部27Bのウェイト33の可動距離(0≦L≦200mm、0≦L≦200mm)を考慮して、この上段バランス機構部27A、下段バランス機構部27Bのウェイト33の重さを求める。
【0041】
まず、式(4)から
0≦L=(MW1−MW2)H・L/(H・m)≦200 ……(5)
次に、式(3)から
0≦L=(MW1−MW2)L/M+m・L/M≦200……(6)
式(5)を代入して距離Lを消去すると
(MW1−MW2)・(H+H)・L/H≦200M ………(7)
ここで、H=290mm、H=300mm、L=197.5mm、基板18の重さ640g/25枚とする。また、条件が1番厳しい場合であるクレードル15Aと15B内の基板18の枚数差が25枚のときは、MW1−MW2=640gとなるので、
式(5)から m≧0.61kg、
式(7)から M≧1.24kgなる。
【0042】
従って、上段バランス機構部27Aのウェイト33をM=1.3kg、下段バランス機構部27Bのウェイト33をm=0.65kgとしたときに、図6(B)の相関テーブルを得ることが可能となる。尚、上述のように、基板18が最も多く保持されたときのクレードル15A、15B、16A、16Bの重さを基準値としたとき、上段バランス機構部27Aのウェイト33と上段バランス機構部28Aのウェイト38の重さは基準値の約2倍に設定され、下段バランス機構部27Bのウェイト33と下段バランス機構部28Bのウェイト38は、基準値とほぼ等しい重さに設定される。
【0043】
次に、遠心乾燥装置10の動作を図7及び図8を用いて説明する。
【0044】
基板18が収納された基板カセット17を一対のクレードル15A及び15Bに移送ロボットなどを用いて搬入する(S1)。次に、ターンテーブル13を回転して一対のクレードル15Aと15Bのそれぞれを枚数検出器47に位置合わせする(S2)。
【0045】
その後、ウェイト駆動部39のシリンダー45を作動させて、リボルバ42のロックピン41を上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bの駆動ギア35のロック穴36に嵌合させ、リボルバ42と駆動ギア35を結合させる(S3)。次に、一対のクレードル15Aと15Bにおける基板カセット17内の基板18の枚数を枚数検出器47にて検出する(S4)。
【0046】
この枚数検出器47にて検出された、一対のクレードル15Aと15Bにおける各基板カセット17内の基板18の枚数差から、当該クレードル15Aと15Bに対応する上段バランス機構部27Aと下段バランス機構部27Bにおけるウェイト33の移動量を、回転軸12位置を基準(位置0)として図6(B)の相関テーブルに基づき決定する(S5)。
【0047】
次に、上記ウェイト駆動部39の駆動モータ40を正転または逆転させて、上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bのウェイト33を、相関テーブルで決定された所望位置まで移動させる(S6)。この上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bのウェイト33の移動後、ウェイト駆動部39のシリンダ45を作動させて、当該ウェイト駆動部39のリボルバ42を上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bの駆動ギア35から切り離す(S7)。
【0048】
次に、ターンテーブル13を90度回転させて(S8)、基板18が収納された基板カセット17を、他の一対のクレードル16A及び16Bに移送ロボットなどを用いて搬入する(S9)。その後、ウェイト駆動部39のシリンダ45を作動させて、リボルバ42のロックピン41を上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bの駆動ギア35のロック穴36に嵌合させ、リボルバ42と駆動ギア35を結合させる(S10)。
【0049】
次に、一対のクレードル16Aと16Bにおける基板カセット17内の基板18の枚数を枚数検出器47にて検出する(S11)。この基板検出器47にて検出された、一対のクレードル16Aと16Bにおける各基板カセット17内の基板18の枚数差から、当該クレードル16Aと16Bに対応する上段バランス機構部28Aと下段バランス機構部28Bにおけるウェイト38の移動量を、回転軸12位置を基準(位置0)として図6(B)の相関テーブルに基づいて決定する(S12)。
【0050】
その後、上記ウェイト駆動部39の駆動モータ40を正転または逆転させて、上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bのウェイト38を、相関テーブルで決定された所望位置まで移動させる(S13)。この上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bのウェイト38の移動後、ウェイト駆動部39のシリンダ45を作動させて、当該ウェイト駆動部39のリボルバ42を上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bの駆動ギア35から切り離す(S14)。
【0051】
次に、ターンテーブル13を高速回転させ、クレードル15A、15B、16A、16B内のそれぞれに基板カセット17を介して収納された基板18に付着した水分を飛散させ、この基板18を乾燥させる(S15)。ターンテーブル13の高速回転開始後所定時間経過した後に、ターンテーブル13の回転を停止し(S16)、基板18が収納された基板カセット17をクレードル15A、15B、16A、16Bから搬出して(S17)、乾燥処理を終了する。
【0052】
以上のように構成されたことから、上記実施の形態によれば、次の効果(1)〜(4)を奏する。
【0053】
(1)一対のクレードル15Aと15B及び他の一対のクレードル16Aと16Bが配置されたターンテーブル13を収容するチャンバ11の外側下方に、ウェイト33を備えた上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bが、一対のクレードル15Aと15Bに対応して配置され、また、ウェイト38を備えた上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bが、他の一対のクレードル16Aと16Bに対応して配置されたことから、ターンテーブル13の直径方向の重量バランスのみならず、ターンテーブル13の回転軸12方向の重量バランスも良好に設定できるので、乾燥処理時における振動を低減でき、クレードル15A、15B、16A、16Bに保持される基板18の損傷を防止できる。
【0054】
(2)ターンテーブル13に2対のクレードル(クレードル15Aと15B、クレードル16Aと16B)が設けられたことから、ターンテーブル13の回転による一度の乾燥処理によって多数枚の基板18を乾燥できるので、処理能力を向上させることができる。
【0055】
(3)バランスユニット14(上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27B、並びに上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28B)がターンテーブル13を収容するチャンバ11の外側下方に配置されたことから、このバランスユニット14により発生する塵埃がチャンバ11内へ流入せず、従って、チャンバ11内のターンテーブル13におけるクレードル15A、15B、16A、16Bに保持された基板18に対し塵埃の影響を極めて低減できる。
【0056】
(4)一対のクレードル15Aと15B、他の一対のクレードル16Aと16Bに保持された基板18の枚数が、チャンバ11の外側に配置された枚数検出器47により検出され、これらの基板18の枚数差に基づき、上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bのウェイト33の位置が、上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bのウェイト38の位置がそれぞれ所望位置に位置づけられ、ターンテーブル13の回転により基板18の乾燥処理が実施されるので、基板18の枚数の検出から乾燥までの一連の処理を、単一の遠心乾燥装置10を用いて自動的に実施できる。
【0057】
図9(A)は、本発明に係る遠心乾燥装置における他の実施の形態であって、一対の基板カセット、上段バランス機構部及び下段バランス機構部を模式的に示す側面図であり、図9(B)は図9(A)の他の実施の形態について、一対のクレードル内の基板カセットにおける基板の枚数差と、上段及び下段バランス機構部のウェイト位置との関係を示す相関テーブルである。この他の実施の形態において、前記一実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0058】
この他の実施の形態が前記一実施の形態と異なる点は、バランスユニット14において、上段バランス機構部27Aのウェイト33が回転軸12に関し両側に設けられ、対応する一対のクレードル15Aと15Bのうち基板18が多く保持されたクレードル15Aまたは15B(図9ではクレードル15A)と同じ側の上記ウェイト33が基板12に最も近く設定され(距離LAA)、また、下段バランス機構部27Bのウェイト33が回転軸12に関し両側に設けられ、対応する一対のクレードル15Aと15Bのうち基板18が多く保持されたクレードル15Aまたは15B(図9ではクレードル15A)と反対側の上記ウェイト33が、回転軸12に最も近く設定された(距離LBB)点である。
【0059】
更に、上段バランス機構部28Aのウェイト38が回転軸12に関し両側に設けられ、対応する他の一対のクレードル16Aと16Bのうち基板18が多く保持されたクレードル16Aまたは16B(図9ではクレードル16A)と同じ側の上記ウェイト38が回転軸12に最も近く設定され(距離LAA)、また、下段バランス機構部28Bのウェイト38が回転軸12に関し両側に設けられ、対応する他の一対のクレードル16Aと16Bのうち基板18が多く保持されたクレードル16Aまたは16B(図9ではクレードル16A)と反対側の上記ウェイト38が、回転軸12に最も近く設定された(距離LBB)点も、前記一実施の形態と異なる。
【0060】
この他の実施の形態においては、ウェイト33と38の可動距離(L、LAA、L、LBB)が85mm〜200mmとなることから、前記一実施の形態と同様に算出して、上段バランス機構部27Aのウェイト33及び上段バランス機構部28Aのウェイト38の重さを例えば2.2kg、下段バランス機構部27Bのウェイト33及び下段バランス機構部28Bのウェイト38の重さを例えば1.2kgとすることで、図9(B)に示す相関テーブルが得られる。
【0061】
従って、この実施の形態においても、一対のクレードル15Aと15Bのそれぞれに収納された基板18の枚数差に基づき、上記相関テーブルを用いて上段バランス機構部27A及び下段バランス機構部27Bのウェイト33の位置を設定し、また、他の一対のクレードル16Aと16Bのそれぞれに収納された基板18の枚数差に基づき、上記相関テーブルを用いて上段バランス機構部28A及び下段バランス機構部28Bのウェイト38の位置を設定することから、前記一実施の形態の効果(1)〜(4)と同様な効果を奏する。
【0062】
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記両実施の形態では、ターンテーブル13において回転軸12に関し対称な位置に2対のクレードル(クレードル15Aと15B、クレードル16Aと16B)が配置されたものを述べたが、3対以上の複数対のクレードルが、回転軸12回りに等角度間隔で配置されてもよく、或いは一対のクレードルが回転軸12と対称に配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る遠心乾燥装置の一実施の形態を示す概略側面図である。
【図2】図1の遠心乾燥装置の要部を示す斜視図である。
【図3】図1のIII矢視図である。
【図4】図1のIV矢視図である。
【図5】図1に示すフォトセンサを備えた枚数検出器を示し、(A)が正面図、(B)が側面図である。
【図6】(A)は図1の一対の基板カセット、上段バランス機構部及び下段バランス機構部を模式的に示す側面図であり、(B)は一対のクレードル内の基板カセットにおける基板の枚数差と、上段及び下段バランス機構部のウェイト位置との関係を示す相関テーブルである。
【図7】図1の遠心乾燥装置における動作の一部を示すフローチャートである。
【図8】図1の遠心乾燥装置における動作の残部を示すフローチャートである。
【図9】(A)は、本発明に係る遠心乾燥装置における他の実施の形態であって、一対の基板カセット、上段バランス機構部及び下段バランス機構部を模式的に示す側面図であり、(B)は図9(A)の他の実施の形態について、一対のクレードル内の基板カセットにおける基板の枚数差と、上段及び下段バランス機構部のウェイト位置との関係を示す相関テーブルである。
【符号の説明】
【0064】
10 遠心乾燥装置
11 チャンバ
12 回転軸
13 ターンテーブル
14 バランスユニット
15A、15B クレードル(保持部材)
16A、16B クレードル(保持部材)
17 基板カセット
18 基板(被処理物)
25 上段支持部材
26 下段支持部材
27A 上段バランス機構部
27B 下段バランス機構部
28A 上段バランス機構部
28B 下段バランス機構部
32、37 ボールねじ
33、38 ウェイト
39 ウェイト駆動部
47 枚数検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内に収容され、回転軸回りに回転するターンテーブルと、
上記回転軸に関して対称な位置に複数対、それぞれの対が等角度間隔で上記ターンテーブルに配置され、それぞれに被処理物を保持する保持部材と、
上記チャンバの外側で、上記回転軸の軸方向に沿って当該回転軸に複数段取り付けられた支持部材と、
これらの支持部材のそれぞれに上記保持部材の各対に対応して設けられ、上記回転軸に直交する方向に移動可能なウェイトを備えたバランス機構部とを有し、
上記ターンテーブルの回転により、上記保持部材に保持された被処理物を乾燥処理することを特徴とする遠心乾燥装置。
【請求項2】
チャンバ内に収容され、回転軸回りに回転するターンテーブルと、
このターンテーブルにおいて上記回転軸に関し対称な位置に一対配置され、それぞれに被処理物を保持する保持部材と、
上記チャンバの外側で、上記回転軸の軸方向に沿って当該回転軸に複数段取り付けられた支持部材と、
これらの支持部材のそれぞれに上記保持部材の各対に対応して設けられ、上記回転軸に直交する方向に移動可能なウェイトを備えたバランス機構部とを有し、
上記ターンテーブルの回転により、上記保持部材に保持された被処理物を乾燥処理することを特徴とする遠心乾燥装置。
【請求項3】
上記保持部材は、回転軸に関し対称な位置に2対が、それぞれ直交して配置されたことを特徴とする請求項1に記載の遠心乾燥装置。
【請求項4】
上記支持部材は上下2段設けられ、上段支持部材に上段バランス機構部が、下段支持部材に下段バランス機構部がそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の遠心乾燥装置。
【請求項5】
上記上段バランス機構部のウェイトは、対応する一対の保持部材のうち被処理物が多く保持された保持部材に対し回転軸に関し反対側に位置づけられ、
また、下段バランス機構部のウェイトは、被処理物が多く保持された上記保持部材に対し上記回転軸に関し同じ側に位置づけられることを特徴とする請求項4に記載の遠心乾燥装置。
【請求項6】
上記上段バランス機構部のウェイトは回転軸に関し両側に設けられ、対応する一対の保持部材のうち被処理物が多く保持された保持部材と同じ側の上記ウェイトが、上記回転軸に最も近く位置づけられ、
また、下段バランス機構部のウェイトは上記回転軸に関し両側に設けられ、対応する一対の上記保持部材のうち被処理物が多く保持された保持部材と反対側の上記ウェイトが、上記回転軸に最も近く位置づけられることを特徴とする請求項4に記載の遠心乾燥装置。
【請求項7】
上記バランス機構部は、回転軸に直交する方向に延びるボールねじにウェイトが螺合され、ターンテーブルの回転に伴う所定位置で、上記ボールねじがウェイト駆動部に結合されて回転駆動されることで、上記ウェイトが所望位置に位置づけられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の遠心乾燥装置。
【請求項8】
一対の上記保持部材に保持された被処理物の数は、ターンテーブルの回転に伴う所定位置で、チャンバの外側に配置された検出器により検出され、これらの一対の保持部材における被処理物の数の差に基づき、この一対の保持部材に対応するバランス機構部のウェイトの位置が所望位置に位置づけられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の遠心乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−242433(P2006−242433A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−56689(P2005−56689)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【出願人】(000124959)株式会社カイジョー (83)
【出願人】(301033374)株式会社ダイナミックス (1)
【Fターム(参考)】