遠心型羽根車
【課題】 高効率の遠心型羽根車の設計に際し、翼の回転中心と翼の先端を結ぶ線を複数の翼が交差するように翼の長さを設定し、送風効率がもっとも大きくなるような遠心羽根車の基本形状を示したものである。そして、必要不可欠な3つの設計寸法から容易に、高効率の遠心型羽根車を設計することが可能となる遠心型羽根車を提供すること。
【解決手段】 モータ軸に連結した主板2と、この主板2に対向して設けた側板3とを備え、前記主板2と前記側板3との間に、反回転方向に傾斜した翼4を円周方向に一定間隔で複数設けた遠心型羽根車において、前記翼4の回転中心Oと翼4の先端T2を結ぶ線Lを複数の翼4が交差するように翼4の長さを設定した遠心型羽根車。
【解決手段】 モータ軸に連結した主板2と、この主板2に対向して設けた側板3とを備え、前記主板2と前記側板3との間に、反回転方向に傾斜した翼4を円周方向に一定間隔で複数設けた遠心型羽根車において、前記翼4の回転中心Oと翼4の先端T2を結ぶ線Lを複数の翼4が交差するように翼4の長さを設定した遠心型羽根車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後ろ向き羽根を備えた遠心型羽根車に係り、高い送風効率の空気清浄装置、空調機器、送風および換気用ファンに用いる遠心型羽根車に関する。
【背景技術】
【0002】
後ろ向き羽根の遠心型羽根車は、主に空調機器や電子機器に組み込まれて、送風および換気を行う。この羽根車には、目標の圧力と流量を発生させることの他に、高効率であること、低騒音であることが要求される。
なかでも、最近の省エネルギ化に対応するために、高効率であることが重要視されている。
高効率化を目標とした遠心型羽根車の特許としては、例えば、特許文献1(特許第4612084号)では、羽根前縁の形状を中央で凹、端部で凸形状として、羽根車内部での剥離を抑制している。
【0003】
また、特許文献2(特開2007−162465)では、回転軸が固定されるハブと、ハブに対向して配置される円環状のシュラウドを設けており、ハブとシュラウドの間に配置されるブレードを備えたターボファンで、このハブとシュラウドの空気通路を二分する仕切壁を設けている。そして、ハブの内径寸法に対するシュラウドの入り口側内径寸法の比率を均一な吹き出しにする比率にしたことを特徴としている。
特許文献3(特許第4317676号)では、低騒音、高効率のターボファンを実現するため、ファン本体部とシュラウドリングを超音波接合が可能な樹脂材で成形し、ファン本体部がガラスの入らない樹脂材で成形し、シュラウドリングをガラス入りの樹脂材で成形したものである。
【0004】
一方、特許文献4(特許第4358965号)では、後ろ向き羽根の形状を折り曲げて羽根の出口角度の最適な範囲を提唱している。特許文献5(特許第3861008号)は、主板とシュラウドの間に前縁が回転方向に傾けられた複数の羽根を有し、羽根は、シュラウドとの接合端部の位置が回転方向へずらされ、羽根のシュラウド側の端部が、回転方向へ傾斜して形成されているターボファンである。羽根の傾斜角度について回転方向に対して25〜45°の範囲と記載されているが、羽根車の外径と内径との最適な比率が抜けているため、羽根の形状が定まらないことになる。
【0005】
しかしながら、いずれにおいても、細部の改善改良であったり、翼(羽根)の形状を定めるために必要な羽根車外径と内径との比・翼入口角・翼出口角の3つの設計諸元が抜けていたりと遠心型羽根車を設計するに際して、必要不可欠な寸法については触れられていない。つまり、上記特許情報をもとにしても、高効率の遠心型羽根車を設計することは不可能である。
【0006】
一方、図21は従来の羽根車51の斜視図であり、図22は従来の羽根車51を回転(中心)軸O方向から見た図である。図23は従来の遠心型羽根車の流量特性−送風効率曲線図である。
羽根車51はモータの出力軸に取り付けられた環状の主板52と側板53との間に、円周方向に一定間隔で複数の翼(羽根)54が、反回転方向に沿って径が大きくなるように、それぞれ傾斜して設けられている。
【0007】
従来例として、公知の特許文献から効率が良いとしている値を採用した、すなわち、特許文献3の請求項の中心値として、翼54の内周を成す円56の直径をφD×0.65とした。翼54の外周を成す円55の直径φDは実施例と同じ200mmとすると、従来の羽根車51の翼54の内周を成す円56の直径は130mmとなる。また、翼54の入口角58(β1)、翼54の出口角59(β2)については、図24(a)(b)に示す特許文献5の請求項記載の範囲で明細書中の羽根の前縁・後縁における傾斜角度を示すグラフ図で羽根車中央高さでの値を採用し、入口角β1は25度、出口角β2は40度とした。57は翼中心線である。
【0008】
なお、特許文献5では、翼入口角β1を羽根の前縁における傾斜角、また、翼出口角β2を羽根の後縁における傾斜角と称している。翼数については実施例と同じ11、また、羽根車の厚さについても実施例と同じ30mmとした。図21に示す従来例は、一般に設計された例を引用しているわけではなく、公知の特許情報から得られる、効率がもっとも良くなるような設計例である。すなわち、本発明以前の設計者が到達できるもっとも効率の良い羽根車でもある。
【0009】
ここで、遠心型羽根車を設計するに際して、必要不可欠な寸法について、図22をもとに説明する。図22は遠心型羽根車を回転軸方向から見た図である。遠心型羽根車の翼の形状を決定しているのは図22の羽根車内径と羽根車外径との比と、翼入口角と翼出口角の3つの寸法である。この3つの寸法、すなわち羽根車内径と羽根車外径との比と、翼入口角と翼出口角が定まると、回転軸方向から見た羽根車の形状と翼の形状、すなわち羽根車の基本形状が定まる。
【0010】
翼数については、干渉騒音を低減するために素数にする場合が多いが、自由に設定できる。また、羽根車の厚みについても、遠心型羽根車は回転軸方向に鉛直な面での流れが支配的であるため、羽根車を回転軸方向から見た平面形状を決定した後、羽根車厚みを設定することが通例である。この際、流量は羽根車厚みに比例することから、羽根車厚みの設定は流量の調整として用いられることが多い。
【0011】
羽根車外径と羽根車内径については、相似形状の羽根車内の流れは相似になるため、羽根車内径と羽根車外径との比に所望の羽根車外径を掛けることで実際の設計寸法が得られる。
つまり、高効率の遠心型羽根車を設計するには、少なくとも、羽根車内径と羽根車外径との比と翼入口角と翼出口角を明示する必要がある。図23は従来の遠心型羽根車の流量特性−送風効率曲線図である。図24(a)(b)は、特許文献5に開示されたターボファンを構成する羽根の前縁および後縁における翼入口角および翼出口角の高さ方向の変化を示す図である。図25は従来設計の最大効率点における翼周りの圧力分布を示したものである。図26は従来設計の最大効率点における翼54周りの相対流速分布を示したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4612084号(特開2010−53803)
【特許文献2】特開2007−162465
【特許文献3】特許第4317676号(特開2003−279061)
【特許文献4】特許第4358965号(特開2001−271790)
【特許文献5】特許第3861008号(特開2003−206892)
【特許文献6】特許第3728027号(特開平10−54390)
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Cradle Viewerで見る流体工学(平成22年3月31日初版発行)[発行所 日本工業出版株式会社] 著者 御法川 学・伊藤 孝宏
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のことから、あらためて、特許文献1〜特許文献5を見てみると、上述の3つの設計条件、すなわち、羽根車内径と羽根車外径との比と翼入口角と翼出口角については、まったく触れていないか、一部で触れている程度であり、高効率の遠心型羽根車を設計するには不十分であることがわかる。また、先行技術では、羽根の長さについては、径方向の長さについて羽根車外径によって定まるだけで、円周方向の長さについて記載されていない。つまり、羽根は円周方向に順番に並ぶだけで、円周方向に互いの羽根が重なるように順次は位置される構成については、何ら記載されていない。
【0015】
なお、特許文献6は、以上の考え方を概念的に述べているが、例えば、「入口角を空気の入射角の変化に対応するように、シュラウド側の部分において小さくした」、「入口角を空気の入射角の変化に対応するように、シュラウド側における入口角をハブ側における入口角よりも小さくした」など、著しく具体性に欠ける表現であり、この特許をもとに高効率の遠心型羽根車を設計できるとは言えない。
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、高効率の遠心型羽根車の設計に際し、必要不可欠な3つの設計寸法、すなわち、羽根車内径と羽根車外径との比と翼入口角と翼出口角とを明らかにすることであり、この3つの設計寸法が明らかになれば、誰でも容易に、高効率の遠心型羽根車を設計することが可能となる。
【0017】
本発明は、高効率の遠心型羽根車の設計に際し、翼の回転中心と翼の先端を結ぶ線を複数の翼が交差するように翼の長さを設定し、送風効率がもっとも大きくなるような遠心羽根車の基本形状を示したものである。そして、具体的には、必要不可欠な3つの設計寸法から容易に、高効率の遠心型羽根車を設計することが可能となる遠心型羽根車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するため、モータ軸に連結した主板と、この主板に対向して設けた側板とを備え、前記主板と前記側板との間に、反回転方向に傾斜した翼を円周方向に一定間隔で複数設けた遠心型羽根車において、前記翼の回転中心と翼の先端位置を結ぶ線を複数の翼が交差するように翼の長さを設定している。
また本発明は、前記翼の外周を成す円の直径Dに対して、前記翼の内周を成す円の直径が0.60×D〜0.67×Dであり、前記翼の内周における翼入口角が7.5度〜12.5度であり、前記翼の外周における翼出口角が7.5度〜12.5度であることを特徴とする遠心型羽根車である。上述の、発明が解決しようとする課題にあわせて表記すると、羽根車内径と羽根車外径との比が0.60〜0.67、翼入口角が7.5度〜12.5度と、翼出口角が7.5度〜12.5度と、遠心型羽根車の設計に必要な3つの設計寸法を明示していることがわかる。
さらに、本発明は、前記翼の基端位置に対して翼の先端位置を90度以上回転させて翼の基端と先端を取り付けている。
【発明の効果】
【0019】
本発明は送風効率がもっとも大きくなるような遠心羽根車の基本形状を示したものであるため、本発明を基にすれば、誰でも容易に高効率の遠心羽根車を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態にかかる遠心型羽根車を示す斜視図である。
【図2】図1の遠心型羽根車を羽根車回転軸方向から見た平面図である。
【図3】図2の遠心型羽根車の内周側を拡大した図である。
【図4】図2の遠心型羽根車の外周側を拡大した図である。
【図5】本発明にかかる遠心型羽根車の流量特性−送風効率曲線図である。
【図6】ファン特性測定装置の概念図である。
【図7】CFD解析においてファン特性を解析する際のモデル形状を示した図である。
【図8】CFD解析によるファン特性と測定によるファン特性との違いを検証するための試作品の概略図である。
【図9】CFD解析によるファン特性と測定によるファン特性とを比較した図である。
【図10】翼入口角および翼出口角と送風効率最大値との関係を示した図である。
【図11】翼内周を成す円の直径と送風効率最大値との関係を示した図である。
【図12】翼入口角と送風効率最大値との関係を示した図である。
【図13】翼出口角と送風効率最大値との関係を示した図である。
【図14】CFD解析により求めた送風効率最大値と回帰曲線により予測した送風効率最大値との比較を示す図である。
【図15】翼入口角および翼出口角と送風効率最大値との関係を示した図である。
【図16】翼内周を成す円の直径と送風効率最大値との関係を示した図である。
【図17】本発明による実施例と従来例での最大効率点における送風出力を比較した図である。
【図18】本発明による実施例と従来例での最大効率点における翼トルクを比較した図である。
【図19】本発明による翼の配置構成と、最大効率点での圧力分布を示す図である。
【図20】本発明による実施例の最大効率点での相対流速分布図である。
【図21】従来の遠心型羽根車の斜視図である。
【図22】従来の遠心型羽根車を羽根車回転軸方向から見た平面図である。
【図23】従来の遠心型羽根車の流量特性−送風効率曲線図である。
【図24】特許第3861008号に開示されたターボファンを構成する羽根の前縁および後縁における翼入口角および翼出口角の高さ方向の変化を示す図である。
【図25】従来例の最大効率点での圧力分布図である。
【図26】従来例の最大効率点での相対流速分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図示の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明にかかる羽根車の一実施例の斜視図である。また、図2は本発明にかかる羽根車を回転軸方向から見た図である。
【0022】
図1および図2において、羽根車1は回転中心Oに図示しないモータの出力軸が配置されている。2はモータの出力軸に取り付けられた環状の主板である。この主板2に対向して環状の側板3が一定間隔を置いて設けられている。主板2と側板3との間には、円周方向に一定間隔で複数の翼(羽根)4が、内径側から外径側に向けて反回転方向に径が大きくなるように、それぞれ傾斜して設けられている。羽根車1は、軸方向から吸引した空気を径方向に昇圧して吐出するものである。
【0023】
図1,図2に示す実施例では、翼4の外周を成す円の直径φDは200mmであり、翼4の内周を成す円の直径は本発明の請求項に従い、φD×0.62=124mmである。また、翼4の入口角β1は本発明の請求項に従い、10度であり、翼4の出口角β2についても本発明の請求項に従い、10度としてある。
【0024】
ここで、翼4の入口角β1と翼4の出口角β2について、拡大図を用いて説明する。図3は翼4の入口角β1部分を拡大したものである。図3において、翼内周を成す円6と翼中心線7との交点における翼内周を成す円6の接線11と翼中心線7の接線12との成す角度、すなわち図3においては8が翼入口角β1となる。
【0025】
また、図4は翼4の出口角β2部分を拡大したものである。同様に、図4において、翼外周を成す円5と翼中心線7との交点における翼外周を成す円の接線10と翼中心線の接線13とが成す角、すなわち図4において9が翼出口角β2となる。
翼4の数については任意であるが、一般に翼4の干渉による騒音は翼数の公倍数に比例した周波数で発生するため、騒音を低減させるために翼数を素数とする例が多い。実施例においても、翼数を素数である11とした。また、羽根車1の厚さについても任意であるが、実施例では30mmとした。
【0026】
次に、本発明にかかる羽根車1の送風効率ηと従来の羽根車51の送風効率ηとを比較した結果について説明する。本発明にかかる羽根車1と従来の羽根車51とを数値流体解析により送風効率ηを求めた結果が図5(本発明)と図23(従来)である。なお、数値流体解析により送風効率を求める手法およびその結果に対する信頼性については、後述の、発明者が発明に至った技術的な経緯のなかで説明する。
【0027】
図5が本発明にかかる羽根車1の流量係数φ−送風効率ηを示したもので、送風効率ηの最大値は0.62であることがわかる。
一方、図23に示す従来の羽根車51の流量係数φ−送風効率ηから、送風効率ηの最大値は0.50であることがわかる。
【0028】
すなわち、従来の羽根車51では羽根車を回転させるエネルギのうち50%が流体エネルギに変換されているのに対して、本発明の羽根車1では羽根車を回転させるエネルギの62%が流体エネルギに変換されていることになり、12%効率が向上していることがわかる。
【0029】
なお、図5に示す本発明にかかる羽根車1の特性と図23に示す従来の羽根車51の特性とは異なるが、通常、羽根車は効率が最大となる流量で使用し、本発明にかかる羽根車1の場合、流量係数φが0.07付近で使用するように設計すればよく、流量係数φから実際の流量を得られるように設計するには羽根車の大きさや厚さ、回転速度を任意の値に設定することで、所望の流量に設定することが可能である。
【0030】
送風効率ηの最大値が大きな羽根車の基本形状さえ求まれば、流量係数φの定義に基づいて、羽根車の設計諸元を満足するように設計することは送風機設計を行う者にとっては比較的容易なことであり、高効率の遠心羽根車を設計することを困難にしていたのは、高効率となる羽根車の基本形状が与えられていなかったことに起因している。
【0031】
これに対して、本発明では高効率となる遠心羽根車の基本形状を示す設計諸元を必要十分に示してあり、誰でも容易に本発明による遠心羽根車の基本形状を基に高効率の遠心羽根車を設計できることがわかる。
【0032】
次に、発明者が本発明に至った技術的な経緯について説明する。
遠心羽根車の設計では、設計条件、すなわち羽根車1が動作する圧力、流量において羽根車内径側および羽根車外径側の速度三角形を求め、この速度三角形を満たすように羽根車外径および内径と翼入口角β1および翼出口角β2を決定する。
【0033】
したがって、設計結果が要求された設計条件を満足することはあっても、必ずしも送風効率が高いというわけではない。これは、羽根車1の設計が要求された仕様、すなわち羽根車1が発生する圧力と流量を満足することを目的としていて、送風効率を高めることは目的としていないためである。そのため、羽根車1の設計とは別に、効率の良い羽根車形状が研究されていたり、前述の特許情報のように、できあがった羽根車1で送風効率を測定し、送風効率を改善するような多少の改良を施したりしているのが実情である。
【0034】
しかしながら、本来、送風効率の高い羽根車形状というものは、存在するはずであり、これを見出せば、誰でも容易に、送風効率ηの高い羽根車1を設計することが可能であり、要求仕様は、羽根車1全体を相似形状で大きくする、あるいは、回転速度を変更するなどで、実現できるはずである。
【0035】
そこで、発明者は、最適化手法を用いて、送風効率ηの高い羽根車1の形状、すなわち、羽根車内径と羽根車外径との比および、翼入口角β1と翼出口角β2を求めることにした。なお、最適化手法では、膨大な実験が必要であり、これをCFD(computational fluid dynamics)すなわち数値流体力学により、送風効率を求めることにした。
【0036】
CFDソフトは市販の非構造格子系のソフトを用いた。コンピュータシミュレーションによる予測の信頼性については、同じソフトを用いて、実際の製品での測定結果とCFDによる予測結果を[非特許文献1]で比較を行っている。[非特許文献1]の比較結果を引用すると、図13に示すように、測定結果とCFDによる予測結果とは良く一致することがわかる。なお、図13の比較結果は圧力と流量の関係であるが、送風効率は羽根車1周囲の圧力により発生する羽根車1のトルクから求めることになり、圧力と流量の関係が実際の結果と一致すれば、送風効率についても一致する。
【0037】
ここで、送風機の特性を示す指標について、簡単に説明する。
送風機の圧力−流量特性は、回転速度や羽根車径に依存しないように、無次元化して表す。また、送風効率については、送風機の送風出力と羽根車の回転に要する軸動力との比により表し、同じく無次元量である。具体的には、下記の式で定義された流量係数φ、圧力係数ψ、送風効率ηを用いる。
【0038】
【数1】
【0039】
ここで、Q、Ptおよびρは、それぞれ流量、全圧および空気密度であり、Dは羽根車外径、Hは羽根車厚、uは羽根車外周の速度である。また、Tは羽根車の回転に要するトルクであり、ωは羽根車の回転角速度である。
【0040】
CFDによる送風機の評価は、送風機および、実際の送風機の特性測定装置をCFDソフト内にモデリングし、CFD解析結果から前述の流量係数、圧力係数、効率を求める。図5、図23(従来)は、このようにして、予測された流量係数φ−送風効率ηである。送風効率ηの最大値は、流量係数−送風効率曲線で送風効率が最大となる値であり、送風機を設計する際は、送風効率が最大となる流量係数で使用するようにしている。また、送風効率の最大値は設計により変化し、送風効率の最大値の大きな送風機の形状を見出すことが求められている。
【0041】
発明者はこの送風効率の最大値の大きな送風機形状を見出す方法として、最適化手法のうち、応答曲面法を使用した。
ここで、応答曲面法について、簡単に説明する。
応答曲面法とは、設計パラメータを変数として結果を2次曲面などの回帰曲面として求め、この回帰式を最大化する値を求める方法である。例えば、翼入口角をβ1、翼出口角をβ2とすると、送風効率ηは
【0042】
【数2】
【0043】
と表され、実験やCFD解析結果から、a1〜a6の各係数を決定し、回帰曲面を最大化する条件を見つけ出せば、最適設計条件となる。その際、β1とβ2のいくつかの組合せをもとにモデルを作成するが、一般にモデルの数は係数a1〜a6の数の2倍程度は必要となる。すなわち、この場合、12種類のモデルを作成し、CFD解析を行う。このように、最適化手法では、多くの実験が必要とされるため、CFDなどのコンピュータシミュレーションによる低コストの代替手法が発達するとともに、実際の設計にも使われるようになっている。
また、応答曲面法はモデルの種類が多くなるのと、広い範囲では必ずしも2次曲面により近似が有効でない場合がある。そこで、一度にすべての設計条件を組み合わせるのではなく、応答曲面法を何度か組み合わせて、最適解を得ることになる。
【0044】
以下、本発明者が送風効率ηを最大化する羽根車内径、羽根車外径、翼入口角β1、翼出口角β2を見つけ出すまでを簡単に説明する。
はじめに、発明者は翼入口角β1と翼出口角β2の最適値を探索することから着手した。その他の諸元については、羽根車外径が190mm、羽根車内径が120mm、羽根車厚さが40mm、翼数は11とした。
【0045】
最適化の手順を説明すると、翼入口角β1と翼出口角β2の組合せを作成する。この際、回帰曲面の誤差が最小となるように組合せを設定する。次に、翼入口角β1と翼出口角β2の組合せに基づいて、羽根車を設計し、CFDモデルを作成する。それぞれのモデルで、CFD解析を行い、最大送風効率を求め、羽根車の翼入口角β1と翼出口角β2を独立変数、最大送風効率を従属変数として、回帰式を求める。この回帰式の従属変数、すなわち最大効率がもっとも大きくなる独立変数、すなわち翼入口角β1と翼出口角β2を求めると、羽根車の翼入口角β1と翼出口角β2に関する最適設計条件が求まる。
【0046】
ここで、CFDにより最大効率を求める方法について説明し、得られた結果についての信頼性、すなわち、実際の測定結果との違いについて説明する。
送風効率ηは下式[数3]で示すようにファンの送風出力すなわち圧力と流量との積と、羽根車の動力すなわち、トルクと回転角速度との積との比となる。
【0047】
【数3】
【0048】
実際の計測では、図6に示すファン特性測定装置にて、流量を変化させ、圧力、トルク、回転速度を計測し、送風効率ηを計算する。送風効率ηは流量により変化し、概ね最大流量の50%付近で送風効率ηは最大となる。ファン特性測定装置は、ダブルチャンバ30に吸い込みファン31と試験ファン32をそれぞれ設け、タコメータ33により回転速度を計測し、A/Dコンバータ34により、変換したデータをパーソナルコンピュータ35によって圧力、トルクを検出するものである。ダブルチャンバ30は、マルチノズル36を挟んで両側に整流格子37が設けられ、マルチノズル36を閉じた状態でチャンバ内の最大静圧を測定してからチャンバ内の圧力を自動制御することで、送風抵抗0の状態を作り出し、空気流を平均化して最大風量を測定する。
【0049】
CFDにより、最大効率を求める方法もこれと同じであり、図7に示す計測装置を模したモデルで、各種の流量での圧力、トルクをCFD解析により求める。回転速度については一定値として与えられる。ここで、トルクは翼周辺の圧力差により生み出されるため、圧力が一致すれば、トルクについても一致することになる。図7において、ファン特性測定装置40は遠心羽根車41の片側に流入側境界面42、反対側に流出側境界面43を設けて、遠心羽根車41の流量を求め、圧力、トルクをCFD解析により求めることができる。
【0050】
したがって、ファン特性、すなわち圧力−流量特性が、CFDによる解析結果と実際の測定結果とが一致すれば、CFDにより求めた送風効率ηは信頼できるものと考えられる。そこで、発明者は図8に示すCFD用のモデルから試作した遠心送風機44で圧力−流量特性を計測した結果とCFDにより求めた圧力−流量特性との比較を行ったところ、図9に示すように、CFDにより求めた圧力−流量特性と実際に計測された圧力−流量特性とは概ね一致することを確認した。すなわち、本発明で実験計測を代用したCFD解析による結果は信頼できるものと考えても良い。
[非特許文献1:CradeleViewerで見る流体工学、日本工業出版]
【0051】
以上のようにして、表1に示す組合せで図7に示すモデルを設計し、各モデルの最大効率をCFD解析により求める。なお、その他の羽根車諸元については、前述のように、羽根車外径が190mm、羽根車内径が120mm、羽根車厚さが40mm、翼数が11で、これらは各モデルとも同じである。次に、最大効率がもっとも大きくなる入口角β1と出口角β2とを求めると、図10に示すように、入口角β1と出口角β2は小さいほど最大効率が大きくなることが判明した。
【0052】
【表1】
【0053】
そこで、次の段階として、入口角β1と出口角β2を先の実験結果の最小値、すなわち30度よりも小さな範囲で、これに、翼内周を成す円の直径とを組み合わせた表2に示すモデルを設計し、各モデルでの最大効率をCFDにより求めた。
翼入口角β1と出口角β2と翼内周を成す円の直径以外の諸元、すなわち、翼内周を成す円の直径は200mm、翼数は11、羽根車厚さは30mmとした。
【0054】
【表2】
【0055】
ここで、羽根車外径すなわち、翼内周を成す円の直径が最初の解析では190mmで、今回の解析では200mmとしているが、前述のように、羽根車外径と羽根車内径については、相似形状の羽根車内の流れは相似になることから、羽根車内径と羽根車外径の絶対値ではなく、羽根車内径と外形との比が問題となる。そのため、本発明に至る解析において、羽根車外径が異なっていても、羽根車内径と外径との比率を求めることが目的であり、羽根車外径が一部異なっていても、その影響はないと言える。
【0056】
その結果、翼内周を成す円の直径については、翼外径を成す円の直径が200mmでの解析で、図11に示すように、124mmで送風効率の最大値がもっとも大きくなることがわかった。一連の解析での翼外周を成す円の直径は200mmであるから、翼内周を成す円の直径が、翼外周を成す円の直径の、0.62倍のときに、送風効率ηがもっとも大きくなることがわかる。
【0057】
また、翼入口角β1については、図12に示すように、10度で送風効率ηがもっとも大きくなることが、翼出口角β2についても、図13に示すように、10度で送風効率ηがもっとも大きくなることがわかった。
図14は、CFD解析により求めた送風効率最大値と同条件での応答曲面から求めた回帰式による予測値とを比較したものである。図14を見ると、すべての解析結果が、CFD解析による値と回帰式での予測値とが一致する線、すなわち図14の鎖線の付近にあることがわかる。また、相関係数は0.94であり、回帰式による予測値が十分信頼できることを示す値である。すなわち、本発明で採用した応答曲面法により得られた羽根車の最適寸法は十分信頼できることを示している。
【0058】
翼入口角β1と翼出口角β2については、10度で送風効率ηがもっとも大きくなることがわかったが、図12、図13を見ると、10度よりもさらに小さな角度で送風効率が大きくなる可能性がある。そこで、翼内周を成す円の直径を最適値、すなわち、翼外周を成す円の直径の0.62倍として、翼入口角β1と翼出口角β2をそれぞれ5度から15度まで、表3にしたがって変化させたモデルを設計し、CFD解析により、送風効率最大値を求めた。
【0059】
【表3】
【0060】
その結果、図15に示すように、送風効率最大値は、翼入口角β1と翼出口角β2が10度で最大となり、翼入口角β1と翼出口角β2が7.5度および12.5度でも、その差は非常に小さいことがわかる。計算結果を列記すると、翼入口角β1と出口角β2が5度のときの最大効率は0.596、同じく7.5度のときの最大効率は0.629、10度のときの最大効率は0.637、12.5度のときの最大効率は0.632、15度のときの最大効率は0.621となる。羽根車製造上、翼入口角β1と出口角β2の製作誤差は避けられず、必ずしも理想の角度とまったく同じになるとは限らない。
【0061】
したがって、効率が大きく変化しない範囲で最適角度を設定する必要がある。この目安として、効率差が1%未満すなわち、0.01未満であれば、実質同等とみなすとすると、翼入口角β1と出口角β2が7.5度から12.5度で、最大効率の違いは0.01未満となり、同等の効率とみなせる。すなわち、羽根車の翼入口角β1と翼出口角β2の最適角度は7.5度〜12.5度であり、前記最適角度の範囲で送風効率ηの違いは0.01未満となり、実質同等の効率となる。これが本願請求項にある翼入口角β1が7.5度〜12.5度と翼出口角β2が7.5度〜12.5度とする技術的根拠である。
【0062】
また、翼内周の成す円の直径についても、羽根車製造上の誤差を許容する必要がある。そのため、翼入口角β1と翼出口角β2をそれぞれ10度として、翼内周を成す円の直径を115mm〜140mmまで、表4にしたがって変化させたモデルを設計し、CFD解析により、送風効率最大値を求めた。
【0063】
【表4】
【0064】
その結果、図16に示すように、送風効率最大値は、翼内周の成す円の直径が120mm〜135mmの範囲でほとんど差がないことがわかった。一連の解析での翼外周を成す円の直径は200mmであるから、翼内周の成す円の直径が、翼外周を成す円の直径の0.60〜0.67倍において、送風効率はもっとも大きくなることがわかる。計算結果を列記すると、翼内周の成す円の直径が115mmのときの最大効率は0.618、同じく120mmのときの最大効率は0.631、124mmのときの最大効率は0.637、130mmのときの最大効率は0.636、135mmのときの最大効率は0.636、140mmのときの最大効率は0.610となる。羽根車製造上、翼の内周および外周を成す円の直径の製作誤差は避けられず、必ずしも理想の寸法とまったく同じになるとは限らない。
【0065】
したがって、効率が大きく変化しない範囲で最適寸法を設定する必要がある。翼入口角と出口角での計算と同様に、効率差が0.01未満であれば、実質同等とみなすとすると、翼の内周を成す円の直径が120mmから135mmの範囲で、最大効率の違いは0.01未満となり、同等の効率とみなせる。翼外周の成す円の直径はいずれでも200mmであるから、翼外周を成す円の直径に対する翼内周を成す円の直径の最適割合は、0.60から0.67となり、前記最適寸法の範囲で送風効率ηの違いは0.01未満となり、実質同等の効率となる。これが本願請求項にある翼の外周を成す円の直径Dに対して、翼の内周を成す円の直径が0.60×D〜0.67×Dとする技術的根拠である。
【0066】
次に、本発明の実施例における最大効率が、従来設計における最大効率よりも大きくなる技術的な理由について、流体解析結果をもとに説明する。はじめに、効率を構成する要素にどのような違いがあるかを見てみる。前述のように、効率は[数4]で示すように表され、このうち、角速度は同一であるため、下記の式の圧力と流量との積、および、トルクが従来例と本発明の実施例でどのように変化するかを見れば良いことになる。
【0067】
【数4】
【0068】
図17が、本発明の実施例と従来設計における圧力と流量との積、すなわち送風出力を棒グラフで表示したものであり、図18が、本発明の実施例と従来設計における翼トルクを棒グラフで表示したものである。図17から、本発明の実施例における送風出力は、0.215[W]で、従来設計における送風出力0.425[W]の約1/2であることがわかる。
【0069】
これは、本発明の実施例と従来設計における流量の差に起因したものであり、流量そのものは、前述のように、用途に応じて、羽根車の厚さや回転速度などにより、自由に設定可能である。一方、図18からわかるように、翼トルクが従来設計では0.012[Nm]で、本発明の実施例の0.005[Nm]に対して、2.4倍と、送風出力の違い以上に翼トルクが大きいことがわかる。つまり、従来設計と比べて、本発明の実施例において効率が高い理由、言い換えると、従来設計では効率が低い理由は、翼トルクが大きいことに起因していることがわかる。
【0070】
そこで、従来設計と本発明の実施例における翼トルクの違いが何に起因しているのかを見るために、翼周りの圧力分布を見てみる。図25は従来設計の最大効率点における翼周りの圧力分布を示したものであり、図19は同様に、本発明の実施例の最大効率点における翼周りの圧力分布を示したものである。
【0071】
図25,図19において、白から黒になるほど、圧力が高いことを表している。図25の右上の翼54を見ると、翼54の左右において、濃淡が異なっていることがわかる。黒色に近い、すなわち圧力の高い領域と、白色に近い、すなわち圧力の低い領域が、翼54を境に隣り合っているため、翼54に対して、図25の矢印Bの方向に力が加わることになる。このうち、矢印Bの力成分のうち、円周方向成分が翼トルクとなる。これに対して、図19に示す本発明の実施例での翼4周りの圧力分布は、同心円状に白色から黒色に変化し、圧力が同心円状に上昇していることがわかる。すなわち、翼4に加わる力は、図19の矢印Aのように径方向中心に向かう力となり、円周方向成分は少ないことがわかる。このため、翼トルクが小さくなっていることがわかる。
【0072】
つぎに、従来設計において、翼54の左右で圧力に差が生じてしまう理由について考察するために、翼54周りの相対流速分布を見てみる。相対流速分布とは、流速から翼54の回転速度分を差し引いたもので、回転する翼54から見た流速を表す。図26が従来設計の最大効率点における翼54周りの相対流速分布を示したものであり、図20は同様に、本発明の実施例における翼4周りの相対流速分布を示したものである。図26から、図中54Cの部分で相対流速が低下していることがわかる。遠心羽根車での圧力は、空気の回転成分、すなわち空気の円周方向の速度成分により発生する遠心力に基づいているため、図中、54Cで示した部分の流速低下により、空気に生ずる遠心力が低下し、圧力の発生が低下したものと考えられる。図26中54Cの部分の流速低下は流れの剥離によるものであり、相対流速の向きと翼54の向きとが大きく異なることにより発生したものと考えられる。これに対して、図20に示す本発明の実施例における相対流速分布では、相対流速の向きと翼4の向きとは、ほぼ一致し、流れの剥離は見られない。結果として、全域にわたって、安定した円周方向の速度成分が得られ、同心円状に圧力が上昇しているものと考えられる。
【0073】
以上をまとめると、本発明の実施例が高効率である理由は、従来設計において、発生する流れの剥離がなく、全域にわたって安定した円周方向の流速が得られ、このため、圧力が同心円状に発生し、翼4に対して円周方向に加わる力成分が小さくなり、結果として、翼トルクが低下したためであると考えられる。
【0074】
以上、本発明の実施例における送風効率は62%であり、従来例での送風効率50%に対して、12%効率が向上している。これは、従来例と同等の特性を得るには、0.5/0.62=80.6%のエネルギで十分であることを示し、エネルギを20%ほど削減できることがわかる。
また、本発明は送風効率ηがもっとも大きくなるような遠心羽根車の基本形状を示したものであるため、本発明を基にすれば、誰でも容易に高効率の遠心羽根車を設計できる。
【0075】
上記実施の形態で説明した本発明の遠心羽根車の構成を別の観点から記載すると、図19に示すように、翼4の回転中心Oと翼4の先端位置T2を結ぶ線Lを複数の翼4が交差するように翼4の長さを設定することができる。図19では、3つの翼4がこの線Lを通過していることが示されている。また、前記翼4の基端位置T1に対して翼の先端位置T2を90度以上回転させて翼4の基端と先端を取り付けている。具体的には、翼の枚数が11とすると、各翼4の基端位置T1と先端位置T2は90度<α<約105度の角度で取り付けられている。すなわち、従来の翼54の長さに比べて円周方向に格段に長い翼4を用いている。
【0076】
なお、送風効率改善の手法は、前述の特許文献にあるように、翼の形状を厚さ方向で変化させたり、側板の形状を厚さ方向で変化させたりといった各種の方法がある。しかしながら、本来、羽根車回転軸から見た平面形状が基本となり、翼の形状や側板の形状を厚さ方向で変化させるといった手法はあくまで、副次的なものである。すなわち、それら副次的な送風効率改善の方法により、羽根車の回転軸から見た形状に関する本発明の実施形態や効果が変わるものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1 モータ軸
2 主板
3 側板
4 翼
5 翼の外周を成す円
6 翼の内周を成す円
7 翼中心線
8 翼入口角
9 翼出口角
10 翼の外周を成す円の接線
11 翼の内周を成す円の接線
12 翼中心線の内周側の接線
13 翼中心線の外周側の接線
14 流れが剥離した部分
O 翼の回転中心
T2 翼の先端位置
L 翼の回転中心と翼の先端を結ぶ線
【技術分野】
【0001】
本発明は、後ろ向き羽根を備えた遠心型羽根車に係り、高い送風効率の空気清浄装置、空調機器、送風および換気用ファンに用いる遠心型羽根車に関する。
【背景技術】
【0002】
後ろ向き羽根の遠心型羽根車は、主に空調機器や電子機器に組み込まれて、送風および換気を行う。この羽根車には、目標の圧力と流量を発生させることの他に、高効率であること、低騒音であることが要求される。
なかでも、最近の省エネルギ化に対応するために、高効率であることが重要視されている。
高効率化を目標とした遠心型羽根車の特許としては、例えば、特許文献1(特許第4612084号)では、羽根前縁の形状を中央で凹、端部で凸形状として、羽根車内部での剥離を抑制している。
【0003】
また、特許文献2(特開2007−162465)では、回転軸が固定されるハブと、ハブに対向して配置される円環状のシュラウドを設けており、ハブとシュラウドの間に配置されるブレードを備えたターボファンで、このハブとシュラウドの空気通路を二分する仕切壁を設けている。そして、ハブの内径寸法に対するシュラウドの入り口側内径寸法の比率を均一な吹き出しにする比率にしたことを特徴としている。
特許文献3(特許第4317676号)では、低騒音、高効率のターボファンを実現するため、ファン本体部とシュラウドリングを超音波接合が可能な樹脂材で成形し、ファン本体部がガラスの入らない樹脂材で成形し、シュラウドリングをガラス入りの樹脂材で成形したものである。
【0004】
一方、特許文献4(特許第4358965号)では、後ろ向き羽根の形状を折り曲げて羽根の出口角度の最適な範囲を提唱している。特許文献5(特許第3861008号)は、主板とシュラウドの間に前縁が回転方向に傾けられた複数の羽根を有し、羽根は、シュラウドとの接合端部の位置が回転方向へずらされ、羽根のシュラウド側の端部が、回転方向へ傾斜して形成されているターボファンである。羽根の傾斜角度について回転方向に対して25〜45°の範囲と記載されているが、羽根車の外径と内径との最適な比率が抜けているため、羽根の形状が定まらないことになる。
【0005】
しかしながら、いずれにおいても、細部の改善改良であったり、翼(羽根)の形状を定めるために必要な羽根車外径と内径との比・翼入口角・翼出口角の3つの設計諸元が抜けていたりと遠心型羽根車を設計するに際して、必要不可欠な寸法については触れられていない。つまり、上記特許情報をもとにしても、高効率の遠心型羽根車を設計することは不可能である。
【0006】
一方、図21は従来の羽根車51の斜視図であり、図22は従来の羽根車51を回転(中心)軸O方向から見た図である。図23は従来の遠心型羽根車の流量特性−送風効率曲線図である。
羽根車51はモータの出力軸に取り付けられた環状の主板52と側板53との間に、円周方向に一定間隔で複数の翼(羽根)54が、反回転方向に沿って径が大きくなるように、それぞれ傾斜して設けられている。
【0007】
従来例として、公知の特許文献から効率が良いとしている値を採用した、すなわち、特許文献3の請求項の中心値として、翼54の内周を成す円56の直径をφD×0.65とした。翼54の外周を成す円55の直径φDは実施例と同じ200mmとすると、従来の羽根車51の翼54の内周を成す円56の直径は130mmとなる。また、翼54の入口角58(β1)、翼54の出口角59(β2)については、図24(a)(b)に示す特許文献5の請求項記載の範囲で明細書中の羽根の前縁・後縁における傾斜角度を示すグラフ図で羽根車中央高さでの値を採用し、入口角β1は25度、出口角β2は40度とした。57は翼中心線である。
【0008】
なお、特許文献5では、翼入口角β1を羽根の前縁における傾斜角、また、翼出口角β2を羽根の後縁における傾斜角と称している。翼数については実施例と同じ11、また、羽根車の厚さについても実施例と同じ30mmとした。図21に示す従来例は、一般に設計された例を引用しているわけではなく、公知の特許情報から得られる、効率がもっとも良くなるような設計例である。すなわち、本発明以前の設計者が到達できるもっとも効率の良い羽根車でもある。
【0009】
ここで、遠心型羽根車を設計するに際して、必要不可欠な寸法について、図22をもとに説明する。図22は遠心型羽根車を回転軸方向から見た図である。遠心型羽根車の翼の形状を決定しているのは図22の羽根車内径と羽根車外径との比と、翼入口角と翼出口角の3つの寸法である。この3つの寸法、すなわち羽根車内径と羽根車外径との比と、翼入口角と翼出口角が定まると、回転軸方向から見た羽根車の形状と翼の形状、すなわち羽根車の基本形状が定まる。
【0010】
翼数については、干渉騒音を低減するために素数にする場合が多いが、自由に設定できる。また、羽根車の厚みについても、遠心型羽根車は回転軸方向に鉛直な面での流れが支配的であるため、羽根車を回転軸方向から見た平面形状を決定した後、羽根車厚みを設定することが通例である。この際、流量は羽根車厚みに比例することから、羽根車厚みの設定は流量の調整として用いられることが多い。
【0011】
羽根車外径と羽根車内径については、相似形状の羽根車内の流れは相似になるため、羽根車内径と羽根車外径との比に所望の羽根車外径を掛けることで実際の設計寸法が得られる。
つまり、高効率の遠心型羽根車を設計するには、少なくとも、羽根車内径と羽根車外径との比と翼入口角と翼出口角を明示する必要がある。図23は従来の遠心型羽根車の流量特性−送風効率曲線図である。図24(a)(b)は、特許文献5に開示されたターボファンを構成する羽根の前縁および後縁における翼入口角および翼出口角の高さ方向の変化を示す図である。図25は従来設計の最大効率点における翼周りの圧力分布を示したものである。図26は従来設計の最大効率点における翼54周りの相対流速分布を示したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4612084号(特開2010−53803)
【特許文献2】特開2007−162465
【特許文献3】特許第4317676号(特開2003−279061)
【特許文献4】特許第4358965号(特開2001−271790)
【特許文献5】特許第3861008号(特開2003−206892)
【特許文献6】特許第3728027号(特開平10−54390)
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Cradle Viewerで見る流体工学(平成22年3月31日初版発行)[発行所 日本工業出版株式会社] 著者 御法川 学・伊藤 孝宏
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のことから、あらためて、特許文献1〜特許文献5を見てみると、上述の3つの設計条件、すなわち、羽根車内径と羽根車外径との比と翼入口角と翼出口角については、まったく触れていないか、一部で触れている程度であり、高効率の遠心型羽根車を設計するには不十分であることがわかる。また、先行技術では、羽根の長さについては、径方向の長さについて羽根車外径によって定まるだけで、円周方向の長さについて記載されていない。つまり、羽根は円周方向に順番に並ぶだけで、円周方向に互いの羽根が重なるように順次は位置される構成については、何ら記載されていない。
【0015】
なお、特許文献6は、以上の考え方を概念的に述べているが、例えば、「入口角を空気の入射角の変化に対応するように、シュラウド側の部分において小さくした」、「入口角を空気の入射角の変化に対応するように、シュラウド側における入口角をハブ側における入口角よりも小さくした」など、著しく具体性に欠ける表現であり、この特許をもとに高効率の遠心型羽根車を設計できるとは言えない。
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、高効率の遠心型羽根車の設計に際し、必要不可欠な3つの設計寸法、すなわち、羽根車内径と羽根車外径との比と翼入口角と翼出口角とを明らかにすることであり、この3つの設計寸法が明らかになれば、誰でも容易に、高効率の遠心型羽根車を設計することが可能となる。
【0017】
本発明は、高効率の遠心型羽根車の設計に際し、翼の回転中心と翼の先端を結ぶ線を複数の翼が交差するように翼の長さを設定し、送風効率がもっとも大きくなるような遠心羽根車の基本形状を示したものである。そして、具体的には、必要不可欠な3つの設計寸法から容易に、高効率の遠心型羽根車を設計することが可能となる遠心型羽根車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、上記課題を解決するため、モータ軸に連結した主板と、この主板に対向して設けた側板とを備え、前記主板と前記側板との間に、反回転方向に傾斜した翼を円周方向に一定間隔で複数設けた遠心型羽根車において、前記翼の回転中心と翼の先端位置を結ぶ線を複数の翼が交差するように翼の長さを設定している。
また本発明は、前記翼の外周を成す円の直径Dに対して、前記翼の内周を成す円の直径が0.60×D〜0.67×Dであり、前記翼の内周における翼入口角が7.5度〜12.5度であり、前記翼の外周における翼出口角が7.5度〜12.5度であることを特徴とする遠心型羽根車である。上述の、発明が解決しようとする課題にあわせて表記すると、羽根車内径と羽根車外径との比が0.60〜0.67、翼入口角が7.5度〜12.5度と、翼出口角が7.5度〜12.5度と、遠心型羽根車の設計に必要な3つの設計寸法を明示していることがわかる。
さらに、本発明は、前記翼の基端位置に対して翼の先端位置を90度以上回転させて翼の基端と先端を取り付けている。
【発明の効果】
【0019】
本発明は送風効率がもっとも大きくなるような遠心羽根車の基本形状を示したものであるため、本発明を基にすれば、誰でも容易に高効率の遠心羽根車を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態にかかる遠心型羽根車を示す斜視図である。
【図2】図1の遠心型羽根車を羽根車回転軸方向から見た平面図である。
【図3】図2の遠心型羽根車の内周側を拡大した図である。
【図4】図2の遠心型羽根車の外周側を拡大した図である。
【図5】本発明にかかる遠心型羽根車の流量特性−送風効率曲線図である。
【図6】ファン特性測定装置の概念図である。
【図7】CFD解析においてファン特性を解析する際のモデル形状を示した図である。
【図8】CFD解析によるファン特性と測定によるファン特性との違いを検証するための試作品の概略図である。
【図9】CFD解析によるファン特性と測定によるファン特性とを比較した図である。
【図10】翼入口角および翼出口角と送風効率最大値との関係を示した図である。
【図11】翼内周を成す円の直径と送風効率最大値との関係を示した図である。
【図12】翼入口角と送風効率最大値との関係を示した図である。
【図13】翼出口角と送風効率最大値との関係を示した図である。
【図14】CFD解析により求めた送風効率最大値と回帰曲線により予測した送風効率最大値との比較を示す図である。
【図15】翼入口角および翼出口角と送風効率最大値との関係を示した図である。
【図16】翼内周を成す円の直径と送風効率最大値との関係を示した図である。
【図17】本発明による実施例と従来例での最大効率点における送風出力を比較した図である。
【図18】本発明による実施例と従来例での最大効率点における翼トルクを比較した図である。
【図19】本発明による翼の配置構成と、最大効率点での圧力分布を示す図である。
【図20】本発明による実施例の最大効率点での相対流速分布図である。
【図21】従来の遠心型羽根車の斜視図である。
【図22】従来の遠心型羽根車を羽根車回転軸方向から見た平面図である。
【図23】従来の遠心型羽根車の流量特性−送風効率曲線図である。
【図24】特許第3861008号に開示されたターボファンを構成する羽根の前縁および後縁における翼入口角および翼出口角の高さ方向の変化を示す図である。
【図25】従来例の最大効率点での圧力分布図である。
【図26】従来例の最大効率点での相対流速分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図示の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明にかかる羽根車の一実施例の斜視図である。また、図2は本発明にかかる羽根車を回転軸方向から見た図である。
【0022】
図1および図2において、羽根車1は回転中心Oに図示しないモータの出力軸が配置されている。2はモータの出力軸に取り付けられた環状の主板である。この主板2に対向して環状の側板3が一定間隔を置いて設けられている。主板2と側板3との間には、円周方向に一定間隔で複数の翼(羽根)4が、内径側から外径側に向けて反回転方向に径が大きくなるように、それぞれ傾斜して設けられている。羽根車1は、軸方向から吸引した空気を径方向に昇圧して吐出するものである。
【0023】
図1,図2に示す実施例では、翼4の外周を成す円の直径φDは200mmであり、翼4の内周を成す円の直径は本発明の請求項に従い、φD×0.62=124mmである。また、翼4の入口角β1は本発明の請求項に従い、10度であり、翼4の出口角β2についても本発明の請求項に従い、10度としてある。
【0024】
ここで、翼4の入口角β1と翼4の出口角β2について、拡大図を用いて説明する。図3は翼4の入口角β1部分を拡大したものである。図3において、翼内周を成す円6と翼中心線7との交点における翼内周を成す円6の接線11と翼中心線7の接線12との成す角度、すなわち図3においては8が翼入口角β1となる。
【0025】
また、図4は翼4の出口角β2部分を拡大したものである。同様に、図4において、翼外周を成す円5と翼中心線7との交点における翼外周を成す円の接線10と翼中心線の接線13とが成す角、すなわち図4において9が翼出口角β2となる。
翼4の数については任意であるが、一般に翼4の干渉による騒音は翼数の公倍数に比例した周波数で発生するため、騒音を低減させるために翼数を素数とする例が多い。実施例においても、翼数を素数である11とした。また、羽根車1の厚さについても任意であるが、実施例では30mmとした。
【0026】
次に、本発明にかかる羽根車1の送風効率ηと従来の羽根車51の送風効率ηとを比較した結果について説明する。本発明にかかる羽根車1と従来の羽根車51とを数値流体解析により送風効率ηを求めた結果が図5(本発明)と図23(従来)である。なお、数値流体解析により送風効率を求める手法およびその結果に対する信頼性については、後述の、発明者が発明に至った技術的な経緯のなかで説明する。
【0027】
図5が本発明にかかる羽根車1の流量係数φ−送風効率ηを示したもので、送風効率ηの最大値は0.62であることがわかる。
一方、図23に示す従来の羽根車51の流量係数φ−送風効率ηから、送風効率ηの最大値は0.50であることがわかる。
【0028】
すなわち、従来の羽根車51では羽根車を回転させるエネルギのうち50%が流体エネルギに変換されているのに対して、本発明の羽根車1では羽根車を回転させるエネルギの62%が流体エネルギに変換されていることになり、12%効率が向上していることがわかる。
【0029】
なお、図5に示す本発明にかかる羽根車1の特性と図23に示す従来の羽根車51の特性とは異なるが、通常、羽根車は効率が最大となる流量で使用し、本発明にかかる羽根車1の場合、流量係数φが0.07付近で使用するように設計すればよく、流量係数φから実際の流量を得られるように設計するには羽根車の大きさや厚さ、回転速度を任意の値に設定することで、所望の流量に設定することが可能である。
【0030】
送風効率ηの最大値が大きな羽根車の基本形状さえ求まれば、流量係数φの定義に基づいて、羽根車の設計諸元を満足するように設計することは送風機設計を行う者にとっては比較的容易なことであり、高効率の遠心羽根車を設計することを困難にしていたのは、高効率となる羽根車の基本形状が与えられていなかったことに起因している。
【0031】
これに対して、本発明では高効率となる遠心羽根車の基本形状を示す設計諸元を必要十分に示してあり、誰でも容易に本発明による遠心羽根車の基本形状を基に高効率の遠心羽根車を設計できることがわかる。
【0032】
次に、発明者が本発明に至った技術的な経緯について説明する。
遠心羽根車の設計では、設計条件、すなわち羽根車1が動作する圧力、流量において羽根車内径側および羽根車外径側の速度三角形を求め、この速度三角形を満たすように羽根車外径および内径と翼入口角β1および翼出口角β2を決定する。
【0033】
したがって、設計結果が要求された設計条件を満足することはあっても、必ずしも送風効率が高いというわけではない。これは、羽根車1の設計が要求された仕様、すなわち羽根車1が発生する圧力と流量を満足することを目的としていて、送風効率を高めることは目的としていないためである。そのため、羽根車1の設計とは別に、効率の良い羽根車形状が研究されていたり、前述の特許情報のように、できあがった羽根車1で送風効率を測定し、送風効率を改善するような多少の改良を施したりしているのが実情である。
【0034】
しかしながら、本来、送風効率の高い羽根車形状というものは、存在するはずであり、これを見出せば、誰でも容易に、送風効率ηの高い羽根車1を設計することが可能であり、要求仕様は、羽根車1全体を相似形状で大きくする、あるいは、回転速度を変更するなどで、実現できるはずである。
【0035】
そこで、発明者は、最適化手法を用いて、送風効率ηの高い羽根車1の形状、すなわち、羽根車内径と羽根車外径との比および、翼入口角β1と翼出口角β2を求めることにした。なお、最適化手法では、膨大な実験が必要であり、これをCFD(computational fluid dynamics)すなわち数値流体力学により、送風効率を求めることにした。
【0036】
CFDソフトは市販の非構造格子系のソフトを用いた。コンピュータシミュレーションによる予測の信頼性については、同じソフトを用いて、実際の製品での測定結果とCFDによる予測結果を[非特許文献1]で比較を行っている。[非特許文献1]の比較結果を引用すると、図13に示すように、測定結果とCFDによる予測結果とは良く一致することがわかる。なお、図13の比較結果は圧力と流量の関係であるが、送風効率は羽根車1周囲の圧力により発生する羽根車1のトルクから求めることになり、圧力と流量の関係が実際の結果と一致すれば、送風効率についても一致する。
【0037】
ここで、送風機の特性を示す指標について、簡単に説明する。
送風機の圧力−流量特性は、回転速度や羽根車径に依存しないように、無次元化して表す。また、送風効率については、送風機の送風出力と羽根車の回転に要する軸動力との比により表し、同じく無次元量である。具体的には、下記の式で定義された流量係数φ、圧力係数ψ、送風効率ηを用いる。
【0038】
【数1】
【0039】
ここで、Q、Ptおよびρは、それぞれ流量、全圧および空気密度であり、Dは羽根車外径、Hは羽根車厚、uは羽根車外周の速度である。また、Tは羽根車の回転に要するトルクであり、ωは羽根車の回転角速度である。
【0040】
CFDによる送風機の評価は、送風機および、実際の送風機の特性測定装置をCFDソフト内にモデリングし、CFD解析結果から前述の流量係数、圧力係数、効率を求める。図5、図23(従来)は、このようにして、予測された流量係数φ−送風効率ηである。送風効率ηの最大値は、流量係数−送風効率曲線で送風効率が最大となる値であり、送風機を設計する際は、送風効率が最大となる流量係数で使用するようにしている。また、送風効率の最大値は設計により変化し、送風効率の最大値の大きな送風機の形状を見出すことが求められている。
【0041】
発明者はこの送風効率の最大値の大きな送風機形状を見出す方法として、最適化手法のうち、応答曲面法を使用した。
ここで、応答曲面法について、簡単に説明する。
応答曲面法とは、設計パラメータを変数として結果を2次曲面などの回帰曲面として求め、この回帰式を最大化する値を求める方法である。例えば、翼入口角をβ1、翼出口角をβ2とすると、送風効率ηは
【0042】
【数2】
【0043】
と表され、実験やCFD解析結果から、a1〜a6の各係数を決定し、回帰曲面を最大化する条件を見つけ出せば、最適設計条件となる。その際、β1とβ2のいくつかの組合せをもとにモデルを作成するが、一般にモデルの数は係数a1〜a6の数の2倍程度は必要となる。すなわち、この場合、12種類のモデルを作成し、CFD解析を行う。このように、最適化手法では、多くの実験が必要とされるため、CFDなどのコンピュータシミュレーションによる低コストの代替手法が発達するとともに、実際の設計にも使われるようになっている。
また、応答曲面法はモデルの種類が多くなるのと、広い範囲では必ずしも2次曲面により近似が有効でない場合がある。そこで、一度にすべての設計条件を組み合わせるのではなく、応答曲面法を何度か組み合わせて、最適解を得ることになる。
【0044】
以下、本発明者が送風効率ηを最大化する羽根車内径、羽根車外径、翼入口角β1、翼出口角β2を見つけ出すまでを簡単に説明する。
はじめに、発明者は翼入口角β1と翼出口角β2の最適値を探索することから着手した。その他の諸元については、羽根車外径が190mm、羽根車内径が120mm、羽根車厚さが40mm、翼数は11とした。
【0045】
最適化の手順を説明すると、翼入口角β1と翼出口角β2の組合せを作成する。この際、回帰曲面の誤差が最小となるように組合せを設定する。次に、翼入口角β1と翼出口角β2の組合せに基づいて、羽根車を設計し、CFDモデルを作成する。それぞれのモデルで、CFD解析を行い、最大送風効率を求め、羽根車の翼入口角β1と翼出口角β2を独立変数、最大送風効率を従属変数として、回帰式を求める。この回帰式の従属変数、すなわち最大効率がもっとも大きくなる独立変数、すなわち翼入口角β1と翼出口角β2を求めると、羽根車の翼入口角β1と翼出口角β2に関する最適設計条件が求まる。
【0046】
ここで、CFDにより最大効率を求める方法について説明し、得られた結果についての信頼性、すなわち、実際の測定結果との違いについて説明する。
送風効率ηは下式[数3]で示すようにファンの送風出力すなわち圧力と流量との積と、羽根車の動力すなわち、トルクと回転角速度との積との比となる。
【0047】
【数3】
【0048】
実際の計測では、図6に示すファン特性測定装置にて、流量を変化させ、圧力、トルク、回転速度を計測し、送風効率ηを計算する。送風効率ηは流量により変化し、概ね最大流量の50%付近で送風効率ηは最大となる。ファン特性測定装置は、ダブルチャンバ30に吸い込みファン31と試験ファン32をそれぞれ設け、タコメータ33により回転速度を計測し、A/Dコンバータ34により、変換したデータをパーソナルコンピュータ35によって圧力、トルクを検出するものである。ダブルチャンバ30は、マルチノズル36を挟んで両側に整流格子37が設けられ、マルチノズル36を閉じた状態でチャンバ内の最大静圧を測定してからチャンバ内の圧力を自動制御することで、送風抵抗0の状態を作り出し、空気流を平均化して最大風量を測定する。
【0049】
CFDにより、最大効率を求める方法もこれと同じであり、図7に示す計測装置を模したモデルで、各種の流量での圧力、トルクをCFD解析により求める。回転速度については一定値として与えられる。ここで、トルクは翼周辺の圧力差により生み出されるため、圧力が一致すれば、トルクについても一致することになる。図7において、ファン特性測定装置40は遠心羽根車41の片側に流入側境界面42、反対側に流出側境界面43を設けて、遠心羽根車41の流量を求め、圧力、トルクをCFD解析により求めることができる。
【0050】
したがって、ファン特性、すなわち圧力−流量特性が、CFDによる解析結果と実際の測定結果とが一致すれば、CFDにより求めた送風効率ηは信頼できるものと考えられる。そこで、発明者は図8に示すCFD用のモデルから試作した遠心送風機44で圧力−流量特性を計測した結果とCFDにより求めた圧力−流量特性との比較を行ったところ、図9に示すように、CFDにより求めた圧力−流量特性と実際に計測された圧力−流量特性とは概ね一致することを確認した。すなわち、本発明で実験計測を代用したCFD解析による結果は信頼できるものと考えても良い。
[非特許文献1:CradeleViewerで見る流体工学、日本工業出版]
【0051】
以上のようにして、表1に示す組合せで図7に示すモデルを設計し、各モデルの最大効率をCFD解析により求める。なお、その他の羽根車諸元については、前述のように、羽根車外径が190mm、羽根車内径が120mm、羽根車厚さが40mm、翼数が11で、これらは各モデルとも同じである。次に、最大効率がもっとも大きくなる入口角β1と出口角β2とを求めると、図10に示すように、入口角β1と出口角β2は小さいほど最大効率が大きくなることが判明した。
【0052】
【表1】
【0053】
そこで、次の段階として、入口角β1と出口角β2を先の実験結果の最小値、すなわち30度よりも小さな範囲で、これに、翼内周を成す円の直径とを組み合わせた表2に示すモデルを設計し、各モデルでの最大効率をCFDにより求めた。
翼入口角β1と出口角β2と翼内周を成す円の直径以外の諸元、すなわち、翼内周を成す円の直径は200mm、翼数は11、羽根車厚さは30mmとした。
【0054】
【表2】
【0055】
ここで、羽根車外径すなわち、翼内周を成す円の直径が最初の解析では190mmで、今回の解析では200mmとしているが、前述のように、羽根車外径と羽根車内径については、相似形状の羽根車内の流れは相似になることから、羽根車内径と羽根車外径の絶対値ではなく、羽根車内径と外形との比が問題となる。そのため、本発明に至る解析において、羽根車外径が異なっていても、羽根車内径と外径との比率を求めることが目的であり、羽根車外径が一部異なっていても、その影響はないと言える。
【0056】
その結果、翼内周を成す円の直径については、翼外径を成す円の直径が200mmでの解析で、図11に示すように、124mmで送風効率の最大値がもっとも大きくなることがわかった。一連の解析での翼外周を成す円の直径は200mmであるから、翼内周を成す円の直径が、翼外周を成す円の直径の、0.62倍のときに、送風効率ηがもっとも大きくなることがわかる。
【0057】
また、翼入口角β1については、図12に示すように、10度で送風効率ηがもっとも大きくなることが、翼出口角β2についても、図13に示すように、10度で送風効率ηがもっとも大きくなることがわかった。
図14は、CFD解析により求めた送風効率最大値と同条件での応答曲面から求めた回帰式による予測値とを比較したものである。図14を見ると、すべての解析結果が、CFD解析による値と回帰式での予測値とが一致する線、すなわち図14の鎖線の付近にあることがわかる。また、相関係数は0.94であり、回帰式による予測値が十分信頼できることを示す値である。すなわち、本発明で採用した応答曲面法により得られた羽根車の最適寸法は十分信頼できることを示している。
【0058】
翼入口角β1と翼出口角β2については、10度で送風効率ηがもっとも大きくなることがわかったが、図12、図13を見ると、10度よりもさらに小さな角度で送風効率が大きくなる可能性がある。そこで、翼内周を成す円の直径を最適値、すなわち、翼外周を成す円の直径の0.62倍として、翼入口角β1と翼出口角β2をそれぞれ5度から15度まで、表3にしたがって変化させたモデルを設計し、CFD解析により、送風効率最大値を求めた。
【0059】
【表3】
【0060】
その結果、図15に示すように、送風効率最大値は、翼入口角β1と翼出口角β2が10度で最大となり、翼入口角β1と翼出口角β2が7.5度および12.5度でも、その差は非常に小さいことがわかる。計算結果を列記すると、翼入口角β1と出口角β2が5度のときの最大効率は0.596、同じく7.5度のときの最大効率は0.629、10度のときの最大効率は0.637、12.5度のときの最大効率は0.632、15度のときの最大効率は0.621となる。羽根車製造上、翼入口角β1と出口角β2の製作誤差は避けられず、必ずしも理想の角度とまったく同じになるとは限らない。
【0061】
したがって、効率が大きく変化しない範囲で最適角度を設定する必要がある。この目安として、効率差が1%未満すなわち、0.01未満であれば、実質同等とみなすとすると、翼入口角β1と出口角β2が7.5度から12.5度で、最大効率の違いは0.01未満となり、同等の効率とみなせる。すなわち、羽根車の翼入口角β1と翼出口角β2の最適角度は7.5度〜12.5度であり、前記最適角度の範囲で送風効率ηの違いは0.01未満となり、実質同等の効率となる。これが本願請求項にある翼入口角β1が7.5度〜12.5度と翼出口角β2が7.5度〜12.5度とする技術的根拠である。
【0062】
また、翼内周の成す円の直径についても、羽根車製造上の誤差を許容する必要がある。そのため、翼入口角β1と翼出口角β2をそれぞれ10度として、翼内周を成す円の直径を115mm〜140mmまで、表4にしたがって変化させたモデルを設計し、CFD解析により、送風効率最大値を求めた。
【0063】
【表4】
【0064】
その結果、図16に示すように、送風効率最大値は、翼内周の成す円の直径が120mm〜135mmの範囲でほとんど差がないことがわかった。一連の解析での翼外周を成す円の直径は200mmであるから、翼内周の成す円の直径が、翼外周を成す円の直径の0.60〜0.67倍において、送風効率はもっとも大きくなることがわかる。計算結果を列記すると、翼内周の成す円の直径が115mmのときの最大効率は0.618、同じく120mmのときの最大効率は0.631、124mmのときの最大効率は0.637、130mmのときの最大効率は0.636、135mmのときの最大効率は0.636、140mmのときの最大効率は0.610となる。羽根車製造上、翼の内周および外周を成す円の直径の製作誤差は避けられず、必ずしも理想の寸法とまったく同じになるとは限らない。
【0065】
したがって、効率が大きく変化しない範囲で最適寸法を設定する必要がある。翼入口角と出口角での計算と同様に、効率差が0.01未満であれば、実質同等とみなすとすると、翼の内周を成す円の直径が120mmから135mmの範囲で、最大効率の違いは0.01未満となり、同等の効率とみなせる。翼外周の成す円の直径はいずれでも200mmであるから、翼外周を成す円の直径に対する翼内周を成す円の直径の最適割合は、0.60から0.67となり、前記最適寸法の範囲で送風効率ηの違いは0.01未満となり、実質同等の効率となる。これが本願請求項にある翼の外周を成す円の直径Dに対して、翼の内周を成す円の直径が0.60×D〜0.67×Dとする技術的根拠である。
【0066】
次に、本発明の実施例における最大効率が、従来設計における最大効率よりも大きくなる技術的な理由について、流体解析結果をもとに説明する。はじめに、効率を構成する要素にどのような違いがあるかを見てみる。前述のように、効率は[数4]で示すように表され、このうち、角速度は同一であるため、下記の式の圧力と流量との積、および、トルクが従来例と本発明の実施例でどのように変化するかを見れば良いことになる。
【0067】
【数4】
【0068】
図17が、本発明の実施例と従来設計における圧力と流量との積、すなわち送風出力を棒グラフで表示したものであり、図18が、本発明の実施例と従来設計における翼トルクを棒グラフで表示したものである。図17から、本発明の実施例における送風出力は、0.215[W]で、従来設計における送風出力0.425[W]の約1/2であることがわかる。
【0069】
これは、本発明の実施例と従来設計における流量の差に起因したものであり、流量そのものは、前述のように、用途に応じて、羽根車の厚さや回転速度などにより、自由に設定可能である。一方、図18からわかるように、翼トルクが従来設計では0.012[Nm]で、本発明の実施例の0.005[Nm]に対して、2.4倍と、送風出力の違い以上に翼トルクが大きいことがわかる。つまり、従来設計と比べて、本発明の実施例において効率が高い理由、言い換えると、従来設計では効率が低い理由は、翼トルクが大きいことに起因していることがわかる。
【0070】
そこで、従来設計と本発明の実施例における翼トルクの違いが何に起因しているのかを見るために、翼周りの圧力分布を見てみる。図25は従来設計の最大効率点における翼周りの圧力分布を示したものであり、図19は同様に、本発明の実施例の最大効率点における翼周りの圧力分布を示したものである。
【0071】
図25,図19において、白から黒になるほど、圧力が高いことを表している。図25の右上の翼54を見ると、翼54の左右において、濃淡が異なっていることがわかる。黒色に近い、すなわち圧力の高い領域と、白色に近い、すなわち圧力の低い領域が、翼54を境に隣り合っているため、翼54に対して、図25の矢印Bの方向に力が加わることになる。このうち、矢印Bの力成分のうち、円周方向成分が翼トルクとなる。これに対して、図19に示す本発明の実施例での翼4周りの圧力分布は、同心円状に白色から黒色に変化し、圧力が同心円状に上昇していることがわかる。すなわち、翼4に加わる力は、図19の矢印Aのように径方向中心に向かう力となり、円周方向成分は少ないことがわかる。このため、翼トルクが小さくなっていることがわかる。
【0072】
つぎに、従来設計において、翼54の左右で圧力に差が生じてしまう理由について考察するために、翼54周りの相対流速分布を見てみる。相対流速分布とは、流速から翼54の回転速度分を差し引いたもので、回転する翼54から見た流速を表す。図26が従来設計の最大効率点における翼54周りの相対流速分布を示したものであり、図20は同様に、本発明の実施例における翼4周りの相対流速分布を示したものである。図26から、図中54Cの部分で相対流速が低下していることがわかる。遠心羽根車での圧力は、空気の回転成分、すなわち空気の円周方向の速度成分により発生する遠心力に基づいているため、図中、54Cで示した部分の流速低下により、空気に生ずる遠心力が低下し、圧力の発生が低下したものと考えられる。図26中54Cの部分の流速低下は流れの剥離によるものであり、相対流速の向きと翼54の向きとが大きく異なることにより発生したものと考えられる。これに対して、図20に示す本発明の実施例における相対流速分布では、相対流速の向きと翼4の向きとは、ほぼ一致し、流れの剥離は見られない。結果として、全域にわたって、安定した円周方向の速度成分が得られ、同心円状に圧力が上昇しているものと考えられる。
【0073】
以上をまとめると、本発明の実施例が高効率である理由は、従来設計において、発生する流れの剥離がなく、全域にわたって安定した円周方向の流速が得られ、このため、圧力が同心円状に発生し、翼4に対して円周方向に加わる力成分が小さくなり、結果として、翼トルクが低下したためであると考えられる。
【0074】
以上、本発明の実施例における送風効率は62%であり、従来例での送風効率50%に対して、12%効率が向上している。これは、従来例と同等の特性を得るには、0.5/0.62=80.6%のエネルギで十分であることを示し、エネルギを20%ほど削減できることがわかる。
また、本発明は送風効率ηがもっとも大きくなるような遠心羽根車の基本形状を示したものであるため、本発明を基にすれば、誰でも容易に高効率の遠心羽根車を設計できる。
【0075】
上記実施の形態で説明した本発明の遠心羽根車の構成を別の観点から記載すると、図19に示すように、翼4の回転中心Oと翼4の先端位置T2を結ぶ線Lを複数の翼4が交差するように翼4の長さを設定することができる。図19では、3つの翼4がこの線Lを通過していることが示されている。また、前記翼4の基端位置T1に対して翼の先端位置T2を90度以上回転させて翼4の基端と先端を取り付けている。具体的には、翼の枚数が11とすると、各翼4の基端位置T1と先端位置T2は90度<α<約105度の角度で取り付けられている。すなわち、従来の翼54の長さに比べて円周方向に格段に長い翼4を用いている。
【0076】
なお、送風効率改善の手法は、前述の特許文献にあるように、翼の形状を厚さ方向で変化させたり、側板の形状を厚さ方向で変化させたりといった各種の方法がある。しかしながら、本来、羽根車回転軸から見た平面形状が基本となり、翼の形状や側板の形状を厚さ方向で変化させるといった手法はあくまで、副次的なものである。すなわち、それら副次的な送風効率改善の方法により、羽根車の回転軸から見た形状に関する本発明の実施形態や効果が変わるものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
1 モータ軸
2 主板
3 側板
4 翼
5 翼の外周を成す円
6 翼の内周を成す円
7 翼中心線
8 翼入口角
9 翼出口角
10 翼の外周を成す円の接線
11 翼の内周を成す円の接線
12 翼中心線の内周側の接線
13 翼中心線の外周側の接線
14 流れが剥離した部分
O 翼の回転中心
T2 翼の先端位置
L 翼の回転中心と翼の先端を結ぶ線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸に連結した主板と、この主板に対向して設けた側板とを備え、前記主板と前記側板との間に、反回転方向に径を拡大するように傾斜した翼を円周方向に一定間隔で複数設けた遠心型羽根車において、前記翼の回転中心と翼の先端を結ぶ線を複数の翼が交差するように翼の長さを設定したことを特徴とする遠心型羽根車。
【請求項2】
前記翼の外周を成す円の直径Dに対して、前記翼の内周を成す円の直径が0.60×D〜0.67×Dであり、前記翼の内周における翼入口角が7.5度〜12.5度であり、前記翼の外周における翼出口角が7.5度〜12.5度であることを特徴とする請求項1に記載の遠心型羽根車。
【請求項3】
前記翼の基端位置に対して翼の先端位置を90度以上回転させて翼の基端と先端を取り付けたことを特徴とする請求項1または2に記載の遠心型羽根車。
【請求項1】
モータ軸に連結した主板と、この主板に対向して設けた側板とを備え、前記主板と前記側板との間に、反回転方向に径を拡大するように傾斜した翼を円周方向に一定間隔で複数設けた遠心型羽根車において、前記翼の回転中心と翼の先端を結ぶ線を複数の翼が交差するように翼の長さを設定したことを特徴とする遠心型羽根車。
【請求項2】
前記翼の外周を成す円の直径Dに対して、前記翼の内周を成す円の直径が0.60×D〜0.67×Dであり、前記翼の内周における翼入口角が7.5度〜12.5度であり、前記翼の外周における翼出口角が7.5度〜12.5度であることを特徴とする請求項1に記載の遠心型羽根車。
【請求項3】
前記翼の基端位置に対して翼の先端位置を90度以上回転させて翼の基端と先端を取り付けたことを特徴とする請求項1または2に記載の遠心型羽根車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図19】
【図20】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図19】
【図20】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2013−19288(P2013−19288A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151847(P2011−151847)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】
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