説明

遠隔点灯制御システム

【課題】工場等の比較的広範囲に多数の照明器具が配置された場合であっても、信号線の設置の労力を無くすことができ、使用者の遠隔操作が狭い範囲に限定されず、操作可能範囲を広げることができ、複数の照明器具の配置に制約が生じないシステムを提供すること。
【解決手段】複数の放電灯1を遠隔で点灯制御するシステムであって、放電灯1毎に設けられた安定器2が、それぞれ専用の無線部5と、この無線部5と制御情報を授受する制御部6とを有する。いずれかの無線部5が、外部からの制御用の指令信号を受信すると、受信した前記指令信号をさらに他の安定器に転送するとともに、受信した指令信号に基づく制御情報を自己の制御部6に伝達し、当該指令信号に基づいて前記放電灯の制御を行わせるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場やショッピングモールのように比較的広いエリアに配設された複数の照明器具を遠隔で制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明器具として複数の放電灯を制御するシステムとして、制御盤と、照明器具ごとに設けられた安定器とがそれぞれ有線接続されたシステムが知られている(特許文献1参照)。
また、図6のように赤外線を利用して制御信号を送信できるリモコン116を用いて、制御盤106を遠隔操作するシステムも知られている。制御盤106は、赤外線の受光部114を有し、受信した制御信号に基づき安定器110を介して各照明器具104を点灯するようになっている。この無線システムにおいて、リモコン116から送信された制御信号は、受光部114に受信され、受光部114に有線接続された制御盤106に伝送される。さらに、制御信号は、制御盤106に有線接続された安定器110へ伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−75683
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来のシステムでは、制御盤と各照明器具とが信号線で接続されるため、信号線の設置に多大な労力と費用がかかっていた。また、制御盤において照明器具を制御する場合、制御盤自体を持ち運ぶことができないので、使用者が制御盤まで行って操作する手間を要する。
一方、図6のようにリモコン116で制御盤106を遠隔操作するシステムであっても、受光部114から制御盤106までの接続、および、制御盤106から各安定器110までの接続には、依然として信号線が使用されており、信号線の設置に多大な労力と費用がかかることには変わりがない。
また、受光部114が固定され、かつ、屋内での赤外線信号の通信距離が数十mに限られているため、工場やショッピングモールのように比較的広いエリアに配設された複数の照明器具104を一括制御する場合、リモコン116の使用可能範囲が受光部周辺の比較的狭いエリアに限られてしまうことから、操作性の面で改善の余地があった。なお、特許文献1に記載のシステムのように制御信号を有線で伝達する場合、信号線の長さが数十mに限られるため、工場等の比較的広いエリアにおいて照明器具の配置に制約が生じるといった問題もあった。
【0005】
従って、本発明の目的は、工場等の比較的広範囲に多数の照明器具が配置された場合であっても、第1に、信号線の設置の労力を無くすことができ、第2に、使用者の遠隔操作や制御状況の確認作業が狭い範囲に限定されず、操作可能範囲を広げることができ、第3に、複数の照明器具の配置に制約が生じない遠隔点灯制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、発明者らは、放電灯毎の安定器に無線部を設けて、複数の無線部からなる無線ネットワークを形成することで、複数の放電灯を確実に遠隔で点灯制御できることとした。
すなわち、本発明の遠隔点灯制御システムは、複数の放電灯を遠隔で点灯制御するシステムであって、前記放電灯毎に設けられ、外部からの制御用の指令信号を受信する無線部、および、前記無線部と制御情報を授受する制御部を有する安定器を備える。指令信号は、前記複数の安定器のうちの1つを特定するための識別情報を含んでおり、無線部は、受信した前記指令信号をさらに他の安定器に転送するとともに、前記識別情報が自己の安定器を特定するかどうかを判断する判断子を有している。無線部は、前記識別情報が自己の安定器を特定するものであれば、受信した前記指令信号に基づく制御情報を自己の前記制御部に伝達し、当該指令信号に基づいて前記放電灯の制御を行わせることを特徴とする。
【0007】
ここで、指令信号とは、空間を伝播する電磁波などの無線信号そのものを示す。また、制御情報とは、無線部と制御部とが授受する各種の情報であり、例えば、制御部に含まれる降圧チョッパ回路へのPWM信号や、電流センサで検出されたランプ電流などが含まれる。
この発明によれば、安定器に設けられたいずれかの無線部が、外部からの指令信号、例えば使用者が操作する送信装置などからの指令信号を受信した際、当該無線部が受信した指令信号をさらに送信することによって、無線ネットワークに存在するすべての無線部に指令信号が転送される。このようにすれば、識別番号を指定して1つ1つの安定器に指令信号を送信する場合よりも、短時間で、指令信号を目的の安定器に届けることができる。
このように、信号線を用いずとも、遠隔での点灯制御が可能となり、信号線の設置の労力を無くすことができる。また、工場等の比較的広範囲に多数の照明器具が配置された場合であっても使用者の遠隔操作が狭い範囲に限定されず、操作可能範囲を広げることができる。さらに、複数の照明器具の配置に制約が生じないシステムを提供できる。
【0008】
ここで、持ち運び可能な送信装置を備え、この送信装置は、前記識別情報を前記指令信号に含めて送信することが好ましい。なお、無線部は、識別情報が自己の安定器を特定するものであれば、無線部は、受信した指令信号に基づく制御情報を自己の前記制御部に伝達し、識別情報が自己の安定器を特定するものでなければ、無線部は、受信した前記指令信号をさらに送信して他の安定器に転送するようにしてもよい。
このようにすれば、放電灯毎の安定器に無線部を設けたので、送信装置からの指令信号はいずれかの無線部によって、特に送信装置から近傍にある安定器の無線部に受信され得る。さらに、指令信号に識別情報を含ませて、指令信号が自己の安定器に向けられたものかどうかを判断する判断子を無線部に設けたので、他の安定器に向けられた指令信号を取り違えることがない。さらに、他の安定器に向けられた指令信号が、無線部によって改めて送信されるので、特定した安定器までの指令信号の転送が可能となる。このように複数の安定器からなる無線ネットワークが形成され、指令信号を特定の安定器に確実に送信することができる。
なお、送信装置からすべての安定器に信号が届くようにする必要がなく、送信装置から近傍にある安定器に送信できさえすればよい。近傍の安定器とは、最も近い距離の安定器であっても、数番目に近い距離の安定器であってもよい。
【0009】
また、本発明の遠隔点灯制御システムでは、前記安定器は、前記制御部から前記無線部へ供給電力の一部を送る無線部用の電力供給部を有する。電源から前記制御部への電力供給が開始され、前記制御部が放電灯の始動用あるいは再始動用の高電圧パルスを発生させている間は、前記複数の無線部からなる無線ネットワークを形成しない。放電灯が主放電に入った後、前記無線ネットワークを形成することが好ましい。
例えば、放電灯の始動において、電源を投入したら、送信装置からの指令信号を待たずに直接放電灯に高電圧パルスを印加する場合がある。電源投入によって無線ネットワークが形成されるとすると、高電圧パルスの輻射が、無線部間の信号の授受に影響を与え、互いの無線部を認識できず、無線ネットワークが形成できないといった障害が生じてしまう。上記の本発明によれば、高電圧パルスが発生している間は無線ネットワークが形成されず、点灯が安定したら無線ネットワークが形成される。従って、輻射の影響を回避でき、指令信号を確実に授受することができる。
【0010】
また、本発明の遠隔点灯制御システムでは、前記安定器は、前記制御部から前記無線部へ供給電力の一部を送る無線部用の電力供給部を有する。複数の無線部からなる無線ネットワークの形成を開始した後、1秒間以上、5秒間以内の間、高電圧パルスを発生させないで待機させることが好ましい。
この発明によれば、無線ネットワークが形成される間、高電圧パルスが発生しないので、無線ネットワークを形成する際、高電圧パルスの輻射による影響を回避できる。
【0011】
さらに、本発明の遠隔点灯制御システムでは、前記制御情報は、前記制御部に前記放電灯を調光させる調光情報を含んでいる。そして、無線部は、前記放電灯の始動から1分間以上、5分以内の間、前記調光情報を前記制御部に伝達しないことが好ましい。
また、本発明の遠隔点灯制御システムでは、前記ランプ電流を検知する電流センサを備える。無線部はランプ状態の判断子を有し、このランプ状態の判断子は、前記電流センサから取得したランプ電流の値に基づいて、前記放電灯が調光可能な状態であるかどうかを判断する。そして、ランプ状態の判断子が調光可能な状態と判断した場合に、前記調光情報を前記制御部に伝達することが好ましい。
この発明によれば、ランプ状態をタイマーだけで判断するのではなくランプ電流によっても判断するので、調光開始までの時間を短縮でき、省エネルギーの効果が得られる。
【0012】
さらに、本発明の遠隔点灯制御システムでは、前記電流センサは、前記放電灯の不点の検知に用いられることが好ましい。
この発明によれば、電流センサを兼用することによりシステムの複雑化を回避できる。
また、本発明の遠隔点灯制御システムでは、前記安定器は、前記放電灯の調光率を記録する記録部を有する。前記無線部が起動した際、当該無線部は、前記記憶部から読み取った前記調光率に基づく調光情報を前記制御情報に含めて前記制御部に伝達し、前記放電灯の調光を開始させることが好ましい。
この発明によれば、前回の設定した調光値で復帰することができ、無線ネットワーク形成には関係せず、無線機が独立で調光を開始することができる。
ここで、記録される調光率は、調光センサなどで検知される調光率であってもよく、あるいは、前回の調光において無線部から制御部に伝達された調光情報に基づく調光率であってもよい。
【0013】
さらに、本発明の遠隔点灯制御システムでは、前記複数の安定器は、1つのグループに少なくとも1つの安定器が含まれるように、複数のグループに分けられる。安定器は、当該安定器の属するグループのグループ情報を記憶するグループ情報記憶部と、記憶された前記グループ情報を変更するグループ情報操作部とを有する。また、前記指令信号は、前記グループ情報を含んでいる。指令信号を受信した前記安定器は、当該安定器の属するグループ情報と前記指令信号に含まれるグループ情報との一致、不一致を判断するグループ情報の判断子を有しており、前記グループ情報の判断子の判断結果に応じて前記放電灯を制御することが好ましい。
ここで、前記グループ情報記憶部および前記グループ情報操作部は、前記グループ情報の記憶および変更が可能なDIPスイッチであることが好ましい。
【0014】
また、本発明の遠隔点灯制御システムでは、前記安定器は、前記制御部から前記無線部に対して10〜25Vの直流電圧を供給する無線部用の電力供給部を有することが好ましい。
さらに、本発明の遠隔点灯制御システムでは、前記制御情報には、点灯、消灯、調光、不点検出、点灯回数、点灯累積時間のうちの少なくともいずれか1つが含まれていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の遠隔点灯制御システムでは、前記安定器は、前記無線部に電力が供給されていることを点灯または消灯のいずれか一方によって表示する表示灯と、前記無線部の送受信が可能な状態であるかどうかを判断する無線状態の判断部と、を有する。そして、前記無線状態の判断部は、前記無線部の送受信が可能な状態であると判断すると、前記表示灯の表示を点灯または消灯のいずれか他方に反転させることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の遠隔点灯制御システムでは、前記指令信号は、前記放電灯を消灯させる消灯指令を含んでいる。指令信号を受信した無線部は、前記放電灯の調光率の値を受信時における値から前記放電灯が立ち消える際の値まで徐々に変化させて、当該変化させる調光率に応じた調光情報を前記制御部に伝達する。そして無線部は、制御部に照明を徐々に暗くさせて、前記放電灯が立ち消える調光率にて消灯させることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明では、放電灯毎に設けられた安定器がそれぞれ専用の無線部を有し、いずれかの無線部が外部からの指令信号を受信した際、無線部は、受信した指令信号に基づく制御情報を自己の制御部に伝達するとともに、受信した指令信号をさらに送信して他の安定器に転送するように構成したので、信号線を用いずとも、遠隔での点灯制御が可能となる。従って、信号線の設置の労力を無くすことができる。また、工場等の比較的広範囲に多数の照明器具が配置された場合であっても使用者の遠隔操作が狭い範囲に限定されず、操作可能範囲を広げることができる。さらに、複数の照明器具の配置に制約が生じないシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る遠隔点灯制御システムを示すブロック図である。
【図2】前記システムにおける送信装置を示すブロック図である。
【図3】前記システムにおける安定器を示すブロック図である。
【図4】前記システムにおいて安定器をグループ分けした場合の制御方法を説明するブロック図である。
【図5】前記システムを用いて放電灯を消灯する制御方法を説明する図である。
【図6】従来の遠隔点灯制御システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の遠隔点灯制御システムに係る好適な一実施形態について説明する。
図1に示すように、遠隔点灯制御システムは、複数の放電灯1の点灯を遠隔で制御するシステムであって、HID(High Intensity Discharge)ランプなどの放電灯1、放電灯毎に設けられた安定器2、安定器2に電力を供給する電源3、および、安定器2に指令信号を送信する送信装置4、を含んで構成される。放電灯1の点灯を制御することには、例えば、放電灯1の点灯、消灯、調光、不点検出後の制御、点灯回数に基づく制御、点灯累積時間に基づく制御などが含まれる。
【0020】
電源3と複数の安定器1とは供給電力用のケーブルで接続されており、電源3から各安定器2に電力が供給される。電源3には主電源スイッチが設けられ、各安定器への電力供給の一括切替が可能である。
安定器2には、ランプ電流を制限して点灯を制御する制御部5とともに、点灯制御に用いられる制御情報を、制御部5との間で伝達し合う無線部6が設けられている。
ここで、制御情報は、点灯、消灯、調光、不点検出、点灯回数、点灯累積時間などの各種の情報のうち、少なくともいずれか1つの情報を含む。点灯情報または調光情報として、例えばPWMの波形信号が用いられている。
【0021】
(安定器の構成)
図2に示すブロック図を用いて、安定器2における制御部5と無線部6との接続形態の一例として、PWMによる調光が可能な安定器2の構成について説明する。つまり、制御部5は、電源3から放電灯1までのフロー順に、フィルタ51、降圧チョッパ回路52、フルブリッジ回路53、点灯回路54の各回路を有し、無線部6からのPWMの波形信号によって電源3からの供給電力を降圧チョッパ回路52が適正な値のランプ電流に制限し、これによって放電灯1を調光する。
【0022】
また、制御部5は、フィルタ51を通過した供給電力の一部を無線部6に供給する無線部用の電源回路55を含んでいる。この電源回路55は、本発明の無線部用の電力供給部に相当し、制御部5から無線部6に対して10〜25Vの直流電圧を供給する。
制御部5としては、調光に限らず、通常の点灯・消灯制御を行う制御部など、前述の各種の点灯制御に用いられる制御部でも構わない。
【0023】
無線部6は、DIPスイッチ61、CPU62、無線回路63、アンテナ64を有する。
アンテナ64は、いずれか他の安定器2から送信された指令信号を受信する。無線回路63は、アンテナ64が受信した指令信号に含まれる情報を読み取ってCPU62に伝達する。また、無線回路63は、受信した指令信号を改めて送信するようにCPU62の指令を受けると、受信した指令信号をアンテナ64から外部に送信する。
ここで、指令信号は、変調された電磁波であり、放電灯1の点灯を制御するために必要な各種の指令情報などを含んでいる。
CPU62は、無線回路63が読み取った指令情報に基づき、例えば調光に必要なPWMの波形信号を生成する。PWMの波形信号は、無線部用の電源回路55からの直流電圧を使用して生成され、制御情報として降圧チョッパ回路52へ伝達される。
このように無線部6は、受信した指令信号に基づく制御情報を自己の制御部5に伝達するとともに、受信した指令信号をさらに送信して他の安定器2に転送する。
【0024】
本発明の特徴的なことは、安定器2に設けられたいずれかの無線部6が、外部からの指令信号、例えば使用者が操作する送信装置などからの指令信号を受信した際、無線部6が受信した指令信号をさらに送信することによって、無線ネットワークに存在するすべての無線部6に指令信号が転送されることにある。このようにすれば、識別番号を指定して1つ1つの安定器2に指令信号を送信する場合よりも、短時間で、指令信号を目的の安定器2に届けることができる。
【0025】
なお、本実施形態において、指令信号に識別情報を含めて点灯制御を行うこともできる。
図2において、無線部6には、DIPスイッチ61が含まれている。DIPスイッチ61は、自己の安定器2の識別情報を記憶する。DIPスイッチ61はスイッチ操作することで識別番号の設定を変更できる。設定された識別番号は、CPU62に読み取られる。
ここで、指令信号は、指令情報の他に識別情報を含んでいる。この識別情報は、いずれか1つの安定器2においてDIPスイッチ61に記憶されている識別情報にのみ一致する。すなわち、予め指令信号に識別情報を含めておくことにより、指令信号の送信先となる安定器2を特定するために用いられる、いわゆる安定器2のアドレス情報である。
【0026】
本発明の特徴的なことは、無線部61が指令信号を受信すると、CPU62が指令信号に含まれている識別情報に応じて、指令信号が自己の安定器2に必要なものであるかどうかを判断する機能を有することである。すなわち、各安定器2の識別情報は、予めDIPスイッチ61に記憶されているので、CPU62は、DIPスイッチ61に記憶された識別番号と、指令信号に含まれる識別番号とを比較し、一致するかどうかを判断する。このようにCPU62は、指令信号に含まれる識別情報が自己の安定器2を特定するかどうかを判断する第1の判断子として機能する。識別情報が自己の安定器2を特定するものであると、CPU62が判断すれば、前述のPWMの波形信号を生成するようになっている。
【0027】
一方、識別情報が自己の安定器2を特定するものでない場合、CPU62は、無線回路63に受信した指令信号を改めて送信するように指令する。
以上のように、各安定器2に無線部6が設けられているので、図1のように任意の安定器2Aから指令信号が送信されると、その指令信号の届く範囲にある1つ以上の他の安定器2Bが受信し、安定器2BのCPU62によって識別情報に基づく判断が行われる。指令信号が安定器2Dを送信先とするものであれば、安定器2Bから再び送信される。このような送信が、各安定器2の無線部6によって構成される無線ネットワーク上を繰り返し実行され、指令信号を目的の安定器2Dまで確実に転送することができる。
【0028】
(送信装置)
次に、図3に基づいて送信装置4の構成を説明する。
送信装置4は、持ち運び可能で所望の指令信号を目的の安定器2に送信するために用いられる。送信装置4は、複数の安定器2のうちの1つを特定するための識別情報を指令信号に含めることができる。本実施形態では、予め特定した1つの識別情報を送信装置4に設けられたDIPスイッチ41に記憶させている点に特徴がある。具体的には、送信装置4は、DIPスイッチ41、電源回路42、操作ボタン43、CPU44、表示パネル45、無線回路46、アンテナ47、EEPROM48を有する。
【0029】
送信装置4の電源回路42は、CPU44の駆動電力を供給するもので、電源として電池などを用いている。
操作ボタン43は、指令信号の設定に必要な情報を入力するためのもので、例えば、点灯/消灯ボタンや、調光用のUP/DOWNボタンなどから構成される。
CPU44は、操作ボタン43からの情報に基づき指令信号に含める各種の情報を生成する。例えば、調光率を変更する調光情報や、消灯信号などの指令情報を生成する。また、CPU44は、DIPスイッチ41に記憶された識別情報を読み取り、生成した指令情報とともに、無線回路46に伝達し、指令情報を表示パネル45に表示させる。
無線回路46は、CPU44からの情報を指令信号として、アンテナを介して外部に送信する。
【0030】
なお、送信装置4は、生成した指令情報を記憶するEEPROM48を有する。本実施形態では、操作ボタン43が一定時間操作されないと、送信装置4の電源が自動的に切れるように設定されている。具体的には、CPU44が、操作ボタン43からの信号を一定時間受けないと、直前に生成した調光情報などの指令情報をEEPROM48に記憶させる。この際、EEPROM48に記憶された指令情報が、新しい指令情報と異なる場合にだけ、EEPROM48が新しい指令情報に書き換えられるようになっている。その後、電源回路42からの電力供給を停止させるようになっている。電源がCPU44に再び投入された際、改めて操作ボタン43からの入力がなくとも、CPU44は、EEPROM48に記憶された指令情報を読み取って、指令信号を送信することができる。
【0031】
(指令信号の流れ)
このように構成された送信装置4を用いて、指令信号の流れを説明する。
まず、操作ボタン43の操作によって新たに指令情報が生成されると、CPU44が無線回路46に対して電波出力要求信号を送信するように指令する。この電波出力要求信号を受信した安定器2は、その応答信号を送信する。
送信装置4が複数の安定器2から応答信号を受信した場合、CPU44は、もっとも受信電力の強い応答信号を判別する。このようにして、送信装置4は、至近にあると思われる安定器2を特定することができ、無線ネットワークに指令信号を送信する準備ができる。
【0032】
至近の安定器を特定した後、CPU44は、EEPROM48に記憶された指令情報と、DIPスイッチ41に記憶された識別情報とを、無線回路46に伝達する。無線回路46は、これらの情報を指令信号としてアンテナ47を介して送信する。指令信号は、必ずしも近傍の安定器に受信されなくてもよく、最も近い距離の安定器から数番目に近い距離の安定器2に受信されても構わない。
このようにして、送信装置4を用いれば、指令信号を確実に無線ネットワーク上に載せることができる。一度、指令信号が無線ネットワークに乗れば、無線ネットワーク上の転送によって、指令信号が目的の安定器に届けられる。
【0033】
以上の実施形態によれば、放電灯1毎の安定器2に無線部6を設け、送信装置4からすべての安定器2に指令信号が届くようにする必要がなくなり、送信装置4から近傍にある安定器2に指令信号を送信しさえすれば、目的の安定器2に指令信号を確実に送ることができる。従って、信号線を用いずとも、遠隔での点灯制御を確実に行うことができ、信号線の設置の労力を無くすことができる。また、工場等の比較的広範囲に多数の照明器具が配置された場合であっても使用者の遠隔操作が狭い範囲に限定されず、操作可能範囲を広げることができる。さらに、複数の照明器具の配置に制約が生じないシステムを提供できる。
【0034】
また、図4に示すように、複数の安定器2を、1つのグループに少なくとも1つの安定器2が含まれるように、複数のグループに分けることによって、グループ毎の点灯を制御することができる。
すなわち、前述の無線部6のDIPスイッチ61に記憶された識別情報には、その安定器2の属するグループ情報が含められている。例えば、安定器の識別番号の頭に、予めグループ情報を示す番号が付けられている。これによって、各安定器2にグループ情報を設定することができる。このようなDIPスイッチ61は、本発明のグループ情報記憶部およびグループ情報操作部の機能を兼ね備えたものに相当する。
無線部6に設けられたCPU62は、当該安定器2の属するグループ情報と指令信号に含まれるグループ情報との一致、不一致を判断する第2の判断子として機能させてもよい。
また、送信装置4のDIPスイッチ41を利用して、無線部6のDIPスイッチ61と同様に、自己の送信装置4が属するグループのグループ情報を設定することができる。送信装置4のグループ情報は、指令信号に付与されて送信される。
【0035】
図4にて、送信装置4から「グループ1」のグループ情報を含む指令信号が送信され、至近の「グループ3」の安定器2Aが受信した場合、安定器2AのCPU62によって、指令信号に含まれるグループ情報が自己のグループ情報ではないと判断され、指令信号が転送される。指令信号を「グループ2」に属する安定器2Bが受信すれば、識別情報による判断と同様に、再度、転送される。最終的には、目的の「グループ1」に属する安定器2C、または安定器2Dに指令信号が届くことになる。このようにして、グループ情報を付与した指令信号を用いれば、複数の放電灯1をグループ毎に一括して制御することができる。
【0036】
(高電圧パルスの影響回避)
以降において、本実施形態の無線ネットワークの形成に障害となる高電圧パルスに関し、障害を回避するための制御方法について説明する。
各安定器2に電源3の電力が供給され、各無線部5が起動した際、それぞれの無線部5は、自己の存在を他の全ての無線部5に認識させる必要があり、そのための信号を授受し合う。これを無線ネットワークの形成と呼ぶ。各無線部5が、他の全ての無線部5によって認識された状態になって、無線ネットワークの形成が完了したものとする。
【0037】
放電灯1の始動において、電源2を制御部6に投入したら、すぐに、全ての放電灯1が一括で点灯するように、無線ネットワークの形成を待たずに、直接、放電灯1に高電圧パルスを印加させたい場合がある。このような場合、高電圧パルスの輻射が、無線ネットワークの形成に影響を与え、無線ネットワークの全てまたは一部が正常に形成されないといった支障が生じてしまう。
本実施形態では、電源3から制御部6への電力供給が開始され、制御部6が放電灯1の始動用あるいは再始動用の高電圧パルスを発生させている間、無線部用の電源回路55は、無線部6へ電力を供給しないようにしたことに特徴がある。放電灯1が主放電に入った後、無線部用の電源回路55は、無線部6へ電力を供給し、無線ネットワークを形成させる。
このような実施形態によれば、高電圧パルスが発生している間は無線ネットワークが形成されず、点灯が安定したら無線ネットワークが形成される。従って、輻射の影響を回避でき、無線ネットワークを確実に形成できる。
【0038】
また、形成された無線ネットワークの中の一部の無線部6が停止状態であって、停止中の無線部6を起動させて無線ネットワークに加える場合、前述と同様に、高電圧パルスの影響を受けてしまう可能性がある。
本実施形態では、電源回路55が無線部6に電力を供給して、その無線部6を無線ネットワークに加える場合、無線部6の起動が開始した後、1秒間以上、5秒間以内の間、高電圧パルスを発生させないようにしたことに特徴がある。
このような実施形態によれば、途中から起動させた無線部6が無線ネットワークに加わるまでの間、高電圧パルスの発生が行われないので、無線ネットワークの形成に対する輻射の影響を回避でき、無線ネットワークを確実に形成できる。
【0039】
(調光制御)
また、無線部6のCPU62は、放電灯1の始動から1分間以上、5分以内の間、調光情報を制御部5の降圧チョッパ回路52に伝達しないようになっている。
この際、無線部6のCPU62を用いて時間を計測することで、制御部5側にタイマー回路を設ける必要がなく、コストダウンが可能となる。
さらに、制御部5には、ランプ電流を検知する電流センサが設けられ、無線部6のCPU62は、電流センサから取得したランプ電流の値に基づいて、放電灯1が調光可能な状態であるかどうかを判断するようになっている。すなわち、CPU62は、ランプ状態を判断する第3の判断子としても機能する。CPU62が、ランプ状態が調光可能な状態であると判断すれば、調光情報を降圧チョッパ回路52に伝達するようになっている。
このような実施形態によれば、タイマーだけで判断するのではなくランプ電流でも判断することにより、調光開始までの時間が短縮され、省エネルギーの効果を上げることができる。
なお、電流センサは、放電灯の不点の検知センサとしても用いられている。
【0040】
(記録された調光率を利用した調光制御)
また、無線部6は、過去の調光率を記録する図示しない記録部を有している。
無線部6が起動した際、CPU62は、記録部から読み取った調光率に基づく調光情報を制御情報に含めて制御部に伝達して放電灯の調光を開始させるようになっている。従って、安定器2に電源を投入した際、前回の設定した調光値に復帰することができ、無線ネットワークの形成を待たずに、無線部6が独立して調光を開始することができる。ここで、記録される調光率は、調光センサなどで検知される調光率であってもよく、あるいは、前回の調光において無線部6から制御部5に伝達された調光情報に基づく調光率であってもよい。
【0041】
(無線状態の表示)
安定器2は、電源回路55から無線部6に電力が供給されていることを点灯または消灯のいずれか一方によって表示する図示しない表示灯と、無線部6の送受信が可能な状態であるかどうかを判断する無線状態の判断部とを有する。
本実施形態では、無線部6のCPU62が、無線状態の判断部として機能し、CPU62が、無線部6の送受信が可能な状態であると判断すると、表示灯の表示を点灯または消灯のいずれか他方に反転させるようになっている。
【0042】
(消灯制御)
本実施形態では、指令信号には、放電灯1を消灯させる消灯指令が含まれている。
無線部6が指令信号を受信すると、CPU62は、図5に示すように、放電灯1の調光率の値を受信時における値から放電灯1が立ち消える際の値まで徐々に変化させる。そして、変化する調光率に応じた調光情報を制御部5に伝達し、照明を徐々に暗くする。具体的には、調光率に対応するDUTY比を、0%から100%までXX秒間かけて変化させる。DUTY比が100%に対してYY%だけ手前となる値(100%−YY%)に、立ち消えが生じる調光率を設定しておく。このようにして、放電灯1の立ち消えが生じる調光率にて、放電灯1を確実に消灯させるようになっている。
【0043】
なお、本実施形態では、携帯型の送信装置4を用いて、送信装置4が無線ネットワークを利用して指令信号を送信するシステムを説明したが、送信装置としては、いずれか1つの安定器2に有線で接続され、無線を用いないで指令信号を送信するものであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明にかかる遠隔点灯制御システムは、工場やショッピングモールのように比較的広いエリアに配設された複数の照明器具を遠隔で制御するシステムとして利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 放電灯
2 安定器
3 電源
4 送信装置
5 制御部
6 無線部
55 無線部用の電源回路(電力供給部)
61 DIPスイッチ(グループ情報記憶部、グループ情報操作部)
62 CPU(判断子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放電灯を遠隔で点灯制御するシステムであって、
前記放電灯毎に設けられ、外部からの制御用の指令信号を受信する無線部、および、前記無線部と制御情報を授受する制御部を有する安定器を備え、
前記指令信号は、前記複数の安定器のうちの1つを特定するための識別情報を含んでおり、
前記無線部は、受信した前記指令信号をさらに他の安定器に転送するとともに、前記識別情報が自己の安定器を特定するかどうかを判断する判断子を有し、
前記識別情報が自己の安定器を特定するものであれば、受信した前記指令信号に基づく制御情報を自己の前記制御部に伝達し、当該指令信号に基づいて前記放電灯の制御を行わせることを特徴とする遠隔点灯制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の遠隔点灯制御システムにおいて、
持ち運び可能な送信装置を備え、
前記送信装置は、前記識別情報を前記指令信号に含めて送信することを特徴とする遠隔点灯制御システム。
【請求項3】
請求項1または2記載の遠隔点灯制御システムにおいて、
前記安定器は、前記制御部から前記無線部へ供給電力の一部を送る無線部用の電力供給部を有し、
前記電源から前記制御部への電力供給が開始され、前記制御部が放電灯の始動用あるいは再始動用の高電圧パルスを発生させている間は、前記複数の無線部からなる無線ネットワークを形成せず、
前記放電灯が主放電に入った後、前記無線ネットワークを形成することを特徴とする遠隔点灯制御システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の遠隔点灯制御システムにおいて、
前記安定器は、前記制御部から前記無線部へ供給電力の一部を送る無線部用の電力供給部を有し、
前記複数の無線部からなる無線ネットワークの形成を開始した後、1秒間以上、5秒間以内の間、高電圧パルスを発生させないで待機させることを特徴とする遠隔点灯制御システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の遠隔点灯制御システムにおいて、
前記制御情報は、前記制御部に前記放電灯を調光させる調光情報を含んでおり、
前記無線部は、前記放電灯の始動から1分間以上、5分以内の間、前記調光情報を前記制御部に伝達しないことを特徴とする遠隔点灯制御システム。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の遠隔点灯制御システムにおいて、
前記ランプ電流を検知する電流センサを備え、
前記無線部は、前記電流センサから取得したランプ電流の値に基づいて、前記放電灯が調光可能な状態であるかどうかを判断する、ランプ状態の判断子を有し、
前記ランプ状態の判断子が調光可能な状態と判断した場合に、前記調光情報を前記制御部に伝達することを特徴とする遠隔点灯制御システム。
【請求項7】
請求項6記載の遠隔点灯制御システムにおいて、
前記電流センサは、前記放電灯の不点の検知に用いられることを特徴とする遠隔点灯制御システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の遠隔点灯制御システムにおいて、
前記安定器は、前記放電灯の調光率を記録する記録部を有し、
前記無線部が起動した際、当該無線部は、前記記憶部から読み取った前記調光率に基づく調光情報を前記制御情報に含めて前記制御部に伝達し、前記放電灯の調光を開始させることを特徴とする遠隔点灯制御システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の遠隔点灯制御システムにおいて、
前記複数の安定器は、1つのグループに少なくとも1つの安定器が含まれるように、複数のグループに分けられ、
前記安定器は、当該安定器の属するグループのグループ情報を記憶するグループ情報記憶部と、記憶された前記グループ情報を変更するグループ情報操作部とを有し、
前記指令信号は、前記グループ情報を含んでおり、
前記指令信号を受信した前記安定器は、当該安定器の属するグループ情報と前記指令信号に含まれるグループ情報との一致、不一致を判断するグループ情報の判断子を有し、
前記グループ情報の判断子の判断結果に応じて前記放電灯を制御することを特徴とする遠隔点灯制御システム。
【請求項10】
請求項9記載の遠隔点灯制御システムにおいて、
前記グループ情報記憶部および前記グループ情報操作部は、前記グループ情報の記憶および変更が可能なDIPスイッチであることを特徴とする遠隔点灯制御システム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の遠隔点灯制御システムにおいて、
前記安定器は、前記制御部から前記無線部に対して10〜25Vの直流電圧を供給する無線部用の電力供給部を有することを特徴とする遠隔点灯制御システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の遠隔点灯制御システムにおいて、
前記制御情報には、点灯、消灯、調光、不点検出、点灯回数、点灯累積時間のうちの少なくともいずれか1つが含まれていることを特徴とする遠隔点灯制御システム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の遠隔点灯制御システムにおいて、
前記安定器は、前記無線部に電力が供給されていることを点灯または消灯のいずれか一方によって表示する表示灯と、
前記無線部の送受信が可能な状態であるかどうかを判断する無線状態の判断部と、を有し、
前記無線状態の判断部は、前記無線部の送受信が可能な状態であると判断すると、前記表示灯の表示を点灯または消灯のいずれか他方に反転させることを特徴とする遠隔点灯制御システム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の遠隔点灯制御システムにおいて、
前記指令信号は、前記放電灯を消灯させる消灯指令を含んでおり、
前記指令信号を受信した無線部は、前記放電灯の調光率の値を受信時における値から前記放電灯が立ち消える際の値まで徐々に変化させて、当該変化させる調光率に応じた調光情報を前記制御部に伝達し、照明を徐々に暗くさせて、前記放電灯が立ち消える調光率にて消灯させることを特徴とする遠隔点灯制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−244985(P2010−244985A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95197(P2009−95197)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り (博覧会名) ライティング・フェア2009(第9回国際照明総合展)(主催者名) 社団法人日本照明器具工業会(主催者名) 株式会社日本経済新聞社(開催日) 平成21年3月3日から3月6日
【出願人】(000126274)株式会社アイ・ライティング・システム (56)
【出願人】(000227892)日本アンテナ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】