説明

遮断弁およびその遮断弁を備えた燃料電池システム

【課題】遮断弁において、開弁性を向上させながら、小型化、簡素化、コスト低減を図る。
【解決手段】遮断弁30は、連通穴31c1と対向して形成された第1および第2開口31d,31eを備えた弁本体31と、第2室31b内に配設され弁座31c2に当接して閉状態をなす弁体本体32aと、弁体本体32aに固定された弁軸32bと、を備えた弁体32と、弁軸32bに固定された第1ダイヤフラム33と第1蓋部材34との間に形成され、圧力供給源から圧力が供給された際に付勢手段39による付勢力に抗して弁体32を付勢する変圧室R1と、弁軸32bに固定された第2ダイヤフラム36と第2蓋部材37との間に形成され、大気に開放された大気圧室R2と、第1蓋部材34に固定され弁軸32bの一端を往復動可能に支持する第1支持部材35と、第2蓋部材37に固定され弁軸32bの他端を往復動可能に支持する第2支持部材38と、を備えたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断弁およびその遮断弁を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムの一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1に示されているように、燃料電池システム11は、燃料電池13内の空気流路(酸化剤流路)と大気との間に設けられる遮断弁50,60とを含んでいる。各遮断弁50,60は、各弁座58,68と、各弁座58,68に当接して空気のシールを行う各弁体56,66とを含み、各弁体56,66は、燃料電池13内の空気流路の負圧によって各弁座58,68の方向に吸引されるよう構成されている。また、燃料電池13内の空気流路と各遮断弁50,60との間に設けられ、燃料電池13内の空気流路の負圧を大気圧に開放する大気開放弁47を備え、燃料電池の起動の際に燃料電池13の空気流路内の負圧を開放してから各遮断弁50,60を開弁するようになっている。
【0003】
また、遮断弁の他の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1に示されているように、制御弁1(遮断弁)においては、比例ソレノイド3で開閉される弁体5の上流および下流側に貫通穴28,66のある仕切り板(下部室17の上壁,上部室49の下壁)を設けて、その仕切られた部屋(下部室17,上部室49)にダイヤフラム27,62を設置するようになっている。また、制御弁1においては、上部連通室67の圧力が、弁体5の弁部44におよぼす力と、ダイヤフラム62及び円板61におよぼす力とが逆向きに作用するように構成されており、両者の力を相殺されるように設定されている。また、ダイヤフラム27,62で仕切られた下部大気室31,上部大気室65は大気開放にするようになっている。さらに、流路内には弁軸(軸部43とシャフト24からなる)を案内するための軸受けとして下方円筒部22、上方円筒部50が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−269857号公報
【特許文献2】特開平10−196833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の燃料電池システムにおいては、燃料電池システムの停止中に酸化剤流路が負圧となるが、停止中の燃料電池システムを起動する際に、大気開放弁47を開状態として燃料電池13の空気流路内の負圧を開放してから各遮断弁50,60を開弁するので、遮断弁の開弁性を向上させることができる。しかし、大気開放弁47を別途設けるので、システムが複雑化、コスト高であるという問題がある。
【0006】
特許文献2に記載の遮断弁においては、上部連通室67の圧力が、弁体5の弁部44におよぼす力と、ダイヤフラム62及び円板61におよぼす力とが逆向きに作用するように構成されており、両者の力を相殺されるように設定されている。よって、遮断弁を開弁する際に、流出路7や上部連通室67の圧力による影響を抑制するため、特許文献1のように別途部材(大気開放弁47)を設けることなく遮断弁の開弁性を向上させることができる。しかし、その構造は複雑であり、コスト高であるという問題がある。また、軸部43を支持する上方円筒部50、およびシャフト24を支持する下方円筒部22は、流路内にありその流路を流れる流体に接触するようになっている。流体に水蒸気や水を含む場合に
は、低温時に凍結固着してしまう。この場合、開弁する際に大きな力が必要となり、弁体を駆動させるアクチュエータの大型化、重量増、電力増を招くこととなる。
【0007】
本発明は、上述した各問題を解消するためになされたもので、遮断弁において、開弁性を向上させながら、小型化、簡素化、コスト低減を図り、その遮断弁を備えた燃料電池システムにおいて、簡素化、コスト低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、第1入出口が形成された第1室と、第2入出口が形成された第2室と、第1室と第2室とを連通する連通穴と、連通穴と対向する第1室の壁に形成された第1開口と、連通穴と対向する第2室の壁に形成された第2開口と、を備えた弁本体と、第1開口を閉塞する第1蓋部材と、第2開口を閉塞する第2蓋部材と、連通穴の第2室側の開口周縁に設けられた弁座と、第2室内に配設され弁座に当接して閉状態をなし一方離間されて開状態をなす弁体本体と、弁体本体に固定され一端が第1開口に向かって延設されるとともに他端が第2開口に向かって延設された弁軸と、を備えた弁体と、弁体と弁本体との間に介装され弁体本体が弁座に当接する方向に弁体を付勢する付勢部材と、第1蓋部材の内側に配設され第1開口を閉塞しかつ弁軸に固定された第1ダイヤフラムと第1蓋部材との間および第2蓋部材の内側に配設され第2開口を閉塞しかつ弁軸に固定された第2ダイヤフラムと第2蓋部材との間の少なくとも何れか一方に形成された区画であって、圧力供給源と連通され該圧力供給源から圧力が供給された際に付勢手段による付勢方向と反対方向に弁体を付勢する変圧室と、第1蓋部材に固定され弁軸の一端を軸方向に往復動可能に支持する第1支持部材と、第2蓋部材に固定され弁軸の他端を軸方向に往復動可能に支持する第2支持部材と、を備えたことである。
【0009】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、変圧室が第1蓋部材と第1ダイヤフラムとの間に形成され、第2蓋部材の内側に配設され第2開口を閉塞しかつ弁軸に固定された第2ダイヤフラムと第2蓋部材との間に形成され大気に開放された大気圧室をさらに備えたことである。
【0010】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、変圧室が第2蓋部材と第2ダイヤフラムとの間に形成され、第1蓋部材の内側に配設され第1開口を閉塞しかつ弁軸に固定された第1ダイヤフラムと第1蓋部材との間に形成され大気に開放された大気圧室をさらに備えたことである。
【0011】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項3の何れか一項において、弁軸は中空の軸であり、第1支持部材と第2支持部材は一体的に軸状に形成されたことである。
【0012】
また請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項4の何れか一項において、変圧室が第1蓋部材と第1ダイヤフラムとの間に形成された場合には、圧力供給源は正圧を供給するものであることである。
【0013】
また請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項4の何れか一項において、変圧室が第2蓋部材と第2ダイヤフラムとの間に形成された場合には、圧力供給源は負圧を供給するものであることである。
【0014】
また請求項7に係る発明の構成上の特徴は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項5および請求項6の何れか一項において、第1蓋部材または第2蓋部材に設けられ、軸方向に沿って往復動して位置決め固定される出力軸を有する電動モータをさらに備え、出力軸
が弁軸に係合されるとともに第1支持部材または第2支持部材として機能することである。
【0015】
また請求項8に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項7の何れか一項において、第1ダイヤフラムが設けられた場合、第1支持部材が弁軸の一端を支持している支持部分と第1室とを第1ダイヤフラムによって隔てるような構造とすることである。
【0016】
また請求項9に係る発明の構成上の特徴は、請求項1乃至請求項7の何れか一項において、第2ダイヤフラムが設けられた場合、第2支持部材が弁軸の他端を支持している支持部分と第2室とを第2ダイヤフラムによって隔てるような構造とすることである。
【0017】
また請求項10に係る発明の構成上の特徴は、燃料が供給される燃料流路と酸化剤ガスが供給される酸化剤流路を有する燃料電池と、酸化剤流路の酸化剤ガスを導入する導入口に酸化剤ガスを圧送する圧送装置と、圧送装置と酸化剤流路との間に介装され圧送装置と酸化剤流路との連通を遮断する第1遮断装置と、酸化剤流路からオフガスを導出する導出口を遮断する第2遮断装置と、を備え、第1遮断装置として請求項2乃至請求項9の何れか一項に記載の遮断弁のうち変圧室および大気圧室を備えたものを使用し、圧送装置は第1遮断装置の第2入出口に連通されるとともに第1遮断装置の変圧室に連通され、導入口は第1遮断装置の第1入出口に連通され、第2遮断装置として請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の遮断弁を使用し、導出口は第2遮断装置の第1入出口に連通され、圧送装置は第2遮断装置の変圧室に連通され、第2遮断装置の第2入出口は大気に開放されたことである。
【0018】
また請求項11に係る発明の構成上の特徴は、請求項10において、圧送装置と第1遮断装置の変圧室との間に配設され両者間を開閉する第1開閉弁と、圧送装置と第2遮断装置の変圧室との間に配設され両者間を開閉する第2開閉弁と、をさらに備えたことである。
【0019】
また請求項12に係る発明の構成上の特徴は、請求項11において、変圧室を加圧する際には、圧送装置を駆動させるとともに第1および第2開閉弁を開き、変圧室を加圧した状態で密封する際には、第1および第2開閉弁を閉じ、変圧室を大気に開放する際には、圧送装置の駆動を停止させるとともに第1および第2開閉弁を開くことである。
【発明の効果】
【0020】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、弁軸には、弁体本体と第1ダイヤフラムおよび第2ダイヤフラムの少なくとも何れか一方とが固定されている。第1ダイヤフラムが設けられた場合、第1室内の圧力が、弁体本体に及ぼす力と、第1ダイヤフラムに及ぼす力が逆向きに作用するので、弁体においては両者の力が相殺される。また、第2ダイヤフラムが設けられた場合、第2室内の圧力が、弁体本体に及ぼす力と、第2ダイヤフラムに及ぼす力が逆向きに作用するので、弁体においては両者の力が相殺される。これにより、当該遮断弁を開弁する際(弁体を開方向に移動する際)に、第1室内および第2室内の圧力による影響を抑制することができる。したがって、付勢部材による付勢力に相当する力を付勢方向と反対方向に少なくとも弁体本体に作用させることで、遮断弁を開弁させることができる。
【0021】
また、圧力供給源からの圧力が変圧室に供給されると、遮断弁が開弁される。このとき、比較的低い圧力で開弁が可能であり、圧力供給源の供給能力を低く抑制でき、ひいては装置を小型化することができる。
【0022】
さらに、弁体の弁軸の一端が、第1開口を閉塞する第1蓋部材に固定された第1支持部
材によって軸方向に往復動可能に支持され、弁軸の他端が、第2開口を閉塞する第2蓋部材に固定された第2支持部材によって軸方向に往復動可能に支持されるようになっている。よって、弁軸の両端を第1および第2支持部材で支持しているので、弁体本体と第1ダイヤフラムおよび/または第2ダイヤフラムとの間で弁軸を支持する複雑な構造でなく、簡単な構造で弁軸を支持することができ、遮断弁を簡素化、小型化、コスト低減することができる。
【0023】
以上のことから、遮断弁において、開弁性を向上させながら、小型化、簡素化、コスト低減を図ることができ、ひいては、その遮断弁を備えた燃料電池システムにおいて、簡素化、コスト低減を図ることができる。
【0024】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、請求項1において、変圧室が第1蓋部材と第1ダイヤフラムとの間に形成され、第2蓋部材の内側に配設され第2開口を閉塞しかつ弁軸に固定された第2ダイヤフラムと第2蓋部材との間に形成され大気に開放された大気圧室をさらに備えた。このように、変圧室を設けた側の反対側に大気圧室を設けることにより、第1室と第2室内の圧力による影響を受けることなく、遮断弁を開弁させることができる。
【0025】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、請求項1において、変圧室が第2蓋部材と第2ダイヤフラムとの間に形成され、第1蓋部材の内側に配設され第1開口を閉塞しかつ弁軸に固定された第1ダイヤフラムと第1蓋部材との間に形成され大気に開放された大気圧室をさらに備えた。このように、変圧室を設けた側の反対側に大気圧室を設けることにより、第1室と第2室内の圧力による影響を受けることなく、遮断弁を開弁させることができる。
【0026】
第1支持部材と第2支持部材が別部材である場合には両者の軸心ずれによって弁軸が斜めになり弁軸に固定された弁体本体も斜めになることで、弁体本体が弁座に確実に当接できないおそれがあった。しかし、上記のように構成した請求項4に係る発明においては、請求項1乃至請求項3の何れか一項において、弁軸は中空の軸であり、第1支持部材と第2支持部材は一体的に軸状に形成された。これにより、弁軸が斜めに固定されるのを抑制することができ、ひいては弁体本体を弁座に確実に当接することができるので、閉弁時のシール性をより向上させることができる。
【0027】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、請求項1乃至請求項4の何れか一項において、変圧室が第1蓋部材と第1ダイヤフラムとの間に形成された場合には、圧力供給源は正圧を供給するものである。これにより、遮断弁を備えたシステムがすでに正圧の圧力供給源を備えている場合には、圧力供給源を別途設ける必要がないので、簡易かつ低コストである遮断弁を提供することができる。
【0028】
上記のように構成した請求項6に係る発明においては、請求項1乃至請求項4の何れか一項において、変圧室が第2蓋部材と第2ダイヤフラムとの間に形成された場合には、圧力供給源は負圧を供給するものである。これにより、遮断弁を備えたシステムがすでに負圧の圧力供給源を備えている場合には、圧力供給源を別途設ける必要がないので、簡易かつ低コストである遮断弁を提供することができる。
【0029】
上記のように構成した請求項7に係る発明においては、請求項1、請求項2、請求項3、請求項5および請求項6の何れか一項において、第1蓋部材または第2蓋部材に設けられ、軸方向に沿って往復動して位置決め固定される出力軸を有する電動モータをさらに備え、出力軸が弁軸に係合されるとともに第1支持部材または第2支持部材として機能する。これにより、電動モータによって弁体が軸方向に位置決め固定され開弁量を調節できる
ので、遮断弁を流量調整可能な弁とすることができる。
【0030】
上記のように構成した請求項8に係る発明においては、請求項1乃至請求項7の何れか一項において、第1ダイヤフラムが設けられた場合、第1支持部材が弁軸の一端を支持している支持部分と第1室とを第1ダイヤフラムによって隔てるような構造とする。これにより、第1支持部材によって弁軸が支持される支持部分が、流体が流れる第1室外に配置することとなる。したがって、流体に水蒸気や水を含んでいても、低温時に支持部分が凍結固着するのを防止することができる。よって、開弁する際に大きな力が不要となり、弁体を駆動させるアクチュエータ(圧力供給源を含む)の大型化、重量増、電力増を抑制することができる。
【0031】
上記のように構成した請求項9に係る発明においては、請求項1乃至請求項7の何れか一項において、第2ダイヤフラムが設けられた場合、第2支持部材が弁軸の他端を支持している支持部分と第2室とを第2ダイヤフラムによって隔てるような構造とする。これにより、第2支持部材によって弁軸が支持される支持部分が、流体が流れる第2室外に配置することとなる。したがって、流体に水蒸気や水を含んでいても、低温時に支持部分が凍結固着するのを防止することができる。よって、開弁する際に大きな力が不要となり、弁体を駆動させるアクチュエータ(圧力供給源を含む)の大型化、重量増、電力増を抑制することができる。
【0032】
上記のように構成した請求項10に係る発明においては、燃料電池の酸化剤流路の導入口とその導入口に酸化剤ガスを圧送する圧送装置との間に、第1遮断装置として請求項2乃至請求項9の何れか一項に記載の遮断弁のうち変圧室および大気圧室を備えたものが介装されている。また、燃料電池の酸化剤流路の導出口には、大気に開放された請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の遮断弁が接続されている。すでに燃料電池システムで使用されている圧送装置が正圧を供給する圧力供給源として使用されている。これにより、燃料電池システムの停止運転の際に、酸化剤流路への酸化剤ガスの供給を停止することで、第1および第2遮断装置を閉弁することができる。また、燃料電池システムの停止中に、第1および第2遮断装置を遮断することで、燃料電池の酸化剤流路を密封することができる。さらに、起動運転する際に、酸化剤流路への酸化剤ガスの供給を開始することで、第1室および第2室における酸化剤流路の負圧および圧送装置からの正圧による影響を受けることなく、第1および第2遮断装置を閉弁することができる。したがって、開弁性を向上させながら、小型化、簡素化、コスト低減を図ることができる遮断弁を備えることで、燃料電池システムにおいて、簡素化、コスト低減を図ることができる。
【0033】
上記のように構成した請求項11に係る発明においては、請求項10において、圧送装置と第1遮断装置の変圧室との間に配設され両者間を開閉する第1開閉弁と、圧送装置と第2遮断装置の変圧室との間に配設され両者間を開閉する第2開閉弁と、をさらに備えた。これにより、圧送装置を駆動させた上で、第1および第2開閉弁を開閉することで第1および第2遮断装置をそれぞれ独立して開閉させることができる。
【0034】
上記のように構成した請求項12に係る発明においては、請求項11において、変圧室を加圧する際には、圧送装置を駆動させるとともに第1および第2開閉弁を開き、変圧室を加圧した状態で密封する際には、第1および第2開閉弁を閉じ、変圧室を大気に開放する際には、圧送装置の駆動を停止させるとともに第1および第2開閉弁を開く。これにより、圧送装置と1つの開閉弁の駆動状態によって制御することで、遮断弁を3つのモードに適切に制御することができるので、システムの簡素化、低コスト化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による遮断弁および燃料電池システムの第1の実施形態の概要を示す概要図である。
【図2】図1に示す開弁状態の遮断弁を示す断面図である。
【図3】図1に示す閉弁状態の遮断弁を示す断面図である。
【図4】図1に示した燃料電池システムの作動を示すタイムチャートである。
【図5】図1に示す閉弁状態の遮断弁の他の実施例を示す断面図である。
【図6】本発明による燃料電池システムの第2の実施形態の概要を示す概要図である。
【図7】本発明による燃料電池システムの第3の実施形態の概要を示す概要図である。
【図8】図7に示す閉弁状態の遮断弁を示す断面図である。
【図9】本発明による燃料電池システムの第4の実施形態の概要を示す概要図である。
【図10】図9に示す閉弁状態の遮断弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
1)第1の実施形態
以下、本発明による遮断弁およびその遮断弁を備えた燃料電池システムの第1の実施形態について説明する。図1はこの燃料電池システムの概要を示す概要図である。この燃料電池システムは、燃料電池10、圧送装置21、第1および第2遮断装置22,23、および制御装置24を備えている。
【0037】
燃料電池10は、燃料が供給される燃料流路11と酸化剤ガスが供給される酸化剤流路12を有している。燃料流路11は、燃料極に燃料を供給するものであり、酸化剤流路12は、酸化剤極に酸化剤ガスを供給するものである。燃料極と酸化剤極との間には電解質が介装されている。本第1の実施形態では、燃料は水素ガスであり、酸化剤ガスは空気である。燃料電池10は、水素ガスと空気が化学反応して発電するものである。
【0038】
圧送装置21は、燃料電池10の酸化剤流路12に空気を圧送するものである。圧送装置21は、制御装置24からの駆動指令によって駆動されて空気を圧送し、制御装置24からの駆動停止指令によって駆動停止されて空気を送らない。なお、駆動が停止されると、圧送装置21の吐出口は大気に開放される。本第1の実施形態では、圧送装置21はコンプレッサである。
【0039】
燃料電池10の酸化剤流路12に酸化剤を導入する導入口12aは、酸化剤供給管25を介して圧送装置21の吐出口に接続されている。酸化剤供給管25の途中には、酸化剤供給管25を開閉する第1遮断装置22が設けられている。燃料電池10の導入口12aは、第1遮断装置22の第1入出口31a1に連通しており、圧送装置21の吐出口は、第1遮断装置22の第2入出口31b1に連通している。
【0040】
燃料電池10の酸化剤流路12から酸化剤オフガスを導出する導出口12bは、オフガス排出管26を介して大気に開放されている。オフガス排出管26の途中には、オフガス排出管26を開閉する第2遮断装置23が設けられている。燃料電池10の導出口12bは、第2遮断装置23の第1入出口31a1に連通しており、第2遮断装置23の第2入出口31b1は大気に開放されている。
【0041】
圧送装置21と第1遮断装置22との間の酸化剤供給管25からは第1圧縮空気供給管27が分岐され、第1遮断装置22の変圧室R1に接続されている。第1圧縮空気供給管27の途中には、第1圧縮空気供給管27を開閉する第1開閉弁27aが設けられている。第1開閉弁27aは、制御装置24からの指示に従って開閉制御されるものである。本
第1の実施形態では、第1開閉弁27aはノーマルクローズ型の電磁弁である。
【0042】
圧送装置21と第1遮断装置22との間の酸化剤供給管25からは第2圧縮空気供給管28が分岐され、第2遮断装置23の変圧室R1に接続されている。第2圧縮空気供給管28の途中には、第2圧縮空気供給管28を開閉する第2開閉弁28aが設けられている。第2開閉弁28aは、制御装置24からの指示に従って開閉制御されるものである。本第1の実施形態では、第2開閉弁28aはノーマルクローズ型の電磁弁である。
【0043】
第1遮断装置22は、図2、図3に示すように、遮断弁30である。図2は、遮断弁30の開状態を示し、図3は、遮断弁30の閉状態を示している。遮断弁30は、弁本体31、弁体32、第1ダイヤフラム33、第1蓋部材34、第1支持部材35、第2ダイヤフラム36、第2蓋部材37、第2支持部材38、ばね39、変圧室R1および大気圧室R2を備えている。
【0044】
弁本体31は、第1入出口31a1が形成された第1室31aと、第2入出口31b1が形成された第2室31bと、を備えている。第1室31aと第2室31bは隔壁31cで仕切られており、隔壁31cには第1室31aと第2室31bを連通する連通穴31c1が形成されている。連通穴31c1と対向する第1室31aの壁31a2には、第1開口31dが形成され、連通穴31c1と対向する第2室31bの壁31b2には、第2開口31eが形成されている。連通穴31c1の第2室31b側の開口周縁には、弁座31c2が設けられている。
【0045】
弁体32は、第2室31b内に配設され弁座31c2に当接して閉状態をなし一方離間されて開状態をなす弁体本体32aを備えている。弁体本体32aは、円板状に形成されており、弁座31c2に当接する面(上面)の周縁部に環状のシール32a1が凸設されている。シール32a1の先端部と弁座31c2が当接することでシール性を確保している。
【0046】
弁体本体32aの中央部には、弁軸32bが貫通して固定されている。弁軸32bは弁体本体32aに対して直交している。弁軸32bは、連通穴31c1を貫通するように配設されている。弁軸32bの一端(上端)は、第1開口31dに向かって延設されるとともに、弁軸32bの他端(下端)は、第2開口31eに向かって延設されている。
【0047】
弁軸32bの一端部には、軸方向に延在する軸孔32b1が形成されている。その軸孔32b1に第1支持部材35の先端部(下端部)が摺動可能に係合することで、弁軸32bの一端が第1支持部材35の先端部(下端部)により軸方向に摺動自在に支持されている。また、弁軸32bの一端部には、円板状のフランジ32b2が外嵌固定されている。フランジ32b2は弁軸32bに対して直交している。フランジ32b2は、第1開口31dより小径であり、第1開口31dに対して弁軸32bの軸方向に往復動する。
【0048】
第1開口31dとフランジ32b2の間は、第1ダイヤフラム33で閉塞されている。第1ダイヤフラム33は弾性材(例えば、基布入りゴム:材質EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム))で環状に形成されている。第1ダイヤフラム33の外周縁は、第1蓋部材34の外周縁と第1開口31dの内周縁の間に挟持され固定されている。第1ダイヤフラム33の内周縁は、フランジ32b2の外周縁に接着などで固定されている。よって、第1支持部材35が弁軸32bの一端を支持している支持部分は、第1ダイヤフラム33によって第1室31aから隔てられるような構造となっている。
【0049】
第1蓋部材34は、第1開口31dを閉塞する部材であり、断面中央部が膨出されて下方に開放された形状に形成されている。第1蓋部材34の外周縁は第1開口31dの周縁
(弁本体31)に溶接、ねじ止めにより固定されている。第1蓋部材34には、弁軸32bの一端を軸方向に往復動可能に支持する第1支持部材35の基端(上端)が固定されている。第1蓋部材34には、第1圧縮空気供給管27が接続されて圧縮空気が入出する入出管34aが設けられている。
【0050】
このように、第1ダイヤフラム33は、第1蓋部材34の内側に配設され第1開口31dを閉塞しかつ弁軸32bに固定されている。変圧室R1は、この第1ダイヤフラム33と第1蓋部材34で区画されて形成されている。変圧室R1は、第1圧縮空気供給管27を介して圧力供給源である圧送装置21と連通されている。圧送装置21から圧縮空気が変圧室R1に供給されると、変圧室R1内の圧力が増大するので、ばね39による付勢方向(図2で上方向)と反対方向に弁体32が付勢される。一方、変圧室R1の圧力が減少すると、ばね39による付勢力で付勢方向に弁体32が付勢される。
【0051】
弁軸32bの他端部には、軸方向に延在する軸孔32b3が形成されている。その軸孔32b3に第2支持部材38の先端部(上端部)が摺動可能に係合することで、弁軸32bの他端が第2支持部材38の先端部(上端部)により軸方向に摺動自在に支持されている。また、弁軸32bの他端部には、円板状のフランジ32b4が外嵌固定されている。フランジ32b4は弁軸32bに対して直交している。フランジ32b4は、第2開口31eより小径であり、第2開口31eに対して弁軸32bの軸方向に往復動する。
【0052】
第2開口31eとフランジ32b4の間は、第2ダイヤフラム36で閉塞されている。第2ダイヤフラム36は弾性材(例えば、基布入りゴム:材質EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム))で環状に形成されている。第2ダイヤフラム36の外周縁は、第2蓋部材37の外周縁と第2開口31eの内周縁の間に挟持され固定されている。第2ダイヤフラム36の内周縁は、フランジ32b4の外周縁に接着などで固定されている。よって、第2支持部材38が弁軸32bの他端を支持している支持部分と第2室31bとが第2ダイヤフラム36によって隔てられるような構造となっている。
【0053】
第2蓋部材37は、第2開口31eを閉塞する部材であり、断面中央部が膨出されて上方に開放された形状に形成されている。第2蓋部材37の外周縁は第2開口31eの周縁(弁本体31)に溶接、ねじ止めにより固定されている。第2蓋部材37には、弁軸32bの他端を軸方向に往復動可能に支持する第2支持部材38の基端(下端)が固定されている。第2蓋部材37には、大気に開放された入出管37aが設けられている。
【0054】
このように、第2ダイヤフラム36は、第2蓋部材37の内側に配設され第2開口31eを閉塞しかつ弁軸32bに固定されている。大気圧室R2は、この第2ダイヤフラム36と第2蓋部材37で区画されて形成されている。大気圧室R2は、大気に開放されている。
【0055】
また、大気圧室R2内には、付勢手段であるばね39が配設されている。ばね39は、弁軸32bに固定されたフランジ32b4と弁本体31に固定された第2蓋部材37との間に介装されている。ばね39は、弁体本体32aを弁座に当接させる方向(図2で上方向)に付勢するものである。
【0056】
このように構成された遮断弁30において、弁体32の受圧面積Avは、シール32a1までの半径Rvで規定される(Av=πRv)。第1ダイヤフラム33の受圧面積Ad1は、第1ダイヤフラム33の有効受圧径Rd1で規定される(Ad1=πRd1)。第2ダイヤフラム36の受圧面積Ad2は、第2ダイヤフラム36の有効受圧径Rd2で規定される(Ad2=πRd2)。有効受圧径とは、ダイヤフラムの最下点から中心までの距離であり、ダイヤフラムの状態によって異なる値をとるものである。遮断弁30
では、閉状態と比較して開状態のほうが最下点が内側に来るように、すなわち有効受圧径が小さくなっている。
【0057】
また、本第1の実施形態の遮断弁30は、閉弁状態の時に、各ダイヤフラム33,36の有効受圧径Rd1,Rd2が弁体32の半径Rvと同一となるように構成されている。よって、遮断弁30を開弁する際に、第1室31a内の圧力が、弁体本体32aに及ぼす力(図3で下方向)と、第1ダイヤフラム33に及ぼす力(上方向)が逆向きに作用するので、弁体32においては両者の力が相殺される。また、第2室31b内の圧力が、弁体本体32aに及ぼす力(上方向)と、第2ダイヤフラム36に及ぼす力(下方向)が逆向きに作用するので、弁体32においては両者の力が相殺される。これにより、当該遮断弁30を開弁する際(弁体を開方向に移動する際)に、第1室31a内および第2室31b内の圧力による影響を抑制することができる。
【0058】
さらに、第1ダイヤフラム33の有効受圧径Rd1と弁体32の半径Rvは、弁体受圧力+ばね力>ダイヤフラム受圧力となるように設定されている。第1室31aが負圧の時に閉状態を保持するため、弁体受圧力が閉弁方向に吸引されるようにするためである。
【0059】
次に、このように構成された燃料電池システムの作動について図4を参照しながら説明する。燃料電池システムが起動されると(通常運転が開始されると;時刻t1)、第1および第2開閉弁27a,28aが閉状態から開状態とされる。
【0060】
その後、時刻t2に圧送装置21が駆動される。変圧室R1の圧力が開閉作動圧以上となれば(時刻t3)、第1および第2遮断装置22,23は開弁される。その後、圧送装置21からの吐出圧が切替圧力以上となれば(時刻t4)、第1および第2開閉弁27a,28aが開状態から閉状態とされる。
【0061】
その後、定期的に変圧室R1への圧力供給が行われる。例えば、時刻t4から所定時間経過した時点(時刻t5)に、第1および第2開閉弁27a,28aが閉状態から開状態とされる。そして、時刻t5から所定時間経過した時点(時刻t6)に、第1および第2開閉弁27a,28aが開状態から閉状態とされる。この間、圧送装置21から圧縮空気の供給が行われる。これにより、変圧室R1の外部気密性能を高く維持することができる。
【0062】
そして、燃料電池システムの通常運転を停止する停止処理が開始されると(時刻t7)、第1および第2開閉弁27a,28aが閉状態から開状態とされるとともに、圧送装置21の駆動が停止される。よって、変圧室R1が圧送装置21を介して大気に開放されるため、変圧室R1の圧力が低下する。
【0063】
変圧室R1の圧力が開閉作動圧未満となれば(時刻t8)、第1および第2遮断装置22,23は閉弁される。その後、時刻t9に第1および第2開閉弁27a,28aが開状態から閉状態とされる。
【0064】
なお、通常運転中に圧送装置21の吐出圧が切替圧より低下した後、再び切替圧以上となった場合、変圧室R1への圧力供給が行われる。例えば、再び切替圧以上となった時点(時刻t11)に、第1および第2開閉弁27a,28aが閉状態から開状態とされる。そして、時刻t11から所定時間経過した時点(時刻t12)に、第1および第2開閉弁27a,28aが開状態から閉状態とされる。なお、圧送装置21の吐出圧が切替圧より低下した場合、その状態が所定時間継続された場合に限ることが好ましい。
【0065】
上述した作動によれば、変圧室R1を加圧する際には、圧送装置21を駆動させるとと
もに第1および第2開閉弁27a,28aを開き、変圧室R1を加圧した状態で密封する際には、第1および第2開閉弁27a,28aを閉じ、変圧室R1を大気に開放する際には、圧送装置21の駆動を停止させるとともに第1および第2開閉弁27a,28aを開く。
【0066】
上述した説明から明らかなように、本第1の実施形態においては、弁軸32bには、弁体本体32aと第1ダイヤフラム33および第2ダイヤフラム36が固定されている。第1室31a内の圧力が、弁体本体32aに及ぼす力と、第1ダイヤフラム33に及ぼす力が逆向きに作用するので、弁体32においては両者の力が相殺される。また、第2室31b内の圧力が、弁体本体32aに及ぼす力と、第2ダイヤフラム36に及ぼす力が逆向きに作用するので、弁体32においては両者の力が相殺される。これにより、当該遮断弁30を開弁する際(弁体を開方向に移動する際)に、第1室31a内および第2室31b内の圧力による影響を抑制することができる。したがって、ばね39(付勢部材)による付勢力に相当する力を付勢方向と反対方向に少なくとも弁体本体32aに作用させることで、遮断弁30を開弁させることができる。また、このようにノーマルクローズのためのばね力を越えるだけで、言い換えれば、変圧室R1への供給圧が小さくとも開弁が可能なので、開弁に必要な時間が短く、良好な応答性となる。
【0067】
また、圧送装置21(圧力供給源)からの圧力が変圧室R1に供給されると、遮断弁30が開弁される。このとき、比較的低い圧力で開弁が可能であり、圧送装置21の供給能力を低く抑制でき、ひいては装置を小型化することができる。
【0068】
さらに、弁体32の弁軸32bの一端が、第1開口31dを閉塞する第1蓋部材34に固定された第1支持部材35によって軸方向に往復動可能に支持され、弁軸32bの他端が、第2開口31eを閉塞する第2蓋部材37に固定された第2支持部材38によって軸方向に往復動可能に支持されるようになっている。よって、弁軸32bの両端を第1および第2支持部材35,38で支持しているので、弁体本体32aと第1ダイヤフラム33および/または第2ダイヤフラム36との間で弁軸32bを支持する複雑な構造でなく、簡単な構造で弁軸32bを支持することができ、遮断弁30を簡素化、小型化、コスト低減することができる。
【0069】
以上のことから、遮断弁30において、開弁性を向上させながら、小型化、簡素化、コスト低減を図ることができ、ひいては、その遮断弁30を備えた燃料電池システムにおいて、簡素化、コスト低減を図ることができる。
【0070】
また、変圧室R1が第1蓋部材34と第1ダイヤフラム33との間に形成された場合には、第2蓋部材37の内側に配設され第2開口31eを閉塞しかつ弁軸32bに固定された第2ダイヤフラム36と第2蓋部材37との間に形成された区画であって、大気に開放された大気圧室R2をさらに備えた。このように、変圧室R1を設けた側の反対側に大気圧室R2を設けることにより、第1室31aと第2室31b内の圧力による影響を受けることなく、遮断弁30を開弁させることができる。
【0071】
また、変圧室R1が第1蓋部材34と第1ダイヤフラム33との間に形成された場合には、圧送装置21(圧力供給源)は正圧を供給するものである。これにより、遮断弁30を備えたシステムがすでに正圧の圧力供給源を備えている場合には、圧力供給源を別途設ける必要がないので、簡易かつ低コストである遮断弁を提供することができる。
【0072】
また、第1ダイヤフラム33が設けられた場合、第1支持部材35が弁軸32bの一端を支持している支持部分と第1室31aとを第1ダイヤフラム33によって隔てるような構造とする。これにより、第1支持部材35によって弁軸32bが支持される支持部分が
、流体が流れる第1室31a外に配置することとなる。したがって、流体に水蒸気や水を含んでいても、低温時に支持部分が凍結固着するのを防止することができる。よって、開弁する際に大きな力が不要となり、弁体を駆動させるアクチュエータ(圧力供給源を含む)の大型化、重量増、電力増を抑制することができる。
【0073】
また、第2ダイヤフラム36が設けられた場合、第2支持部材38が弁軸32bの他端を支持している支持部分と第2室31bとを第2ダイヤフラム36によって隔てるような構造とする。これにより、第2支持部材38によって弁軸32bが支持される支持部分が、流体が流れる第2室31b外に配置することとなる。したがって、流体に水蒸気や水を含んでいても、低温時に支持部分が凍結固着するのを防止することができる。よって、開弁する際に大きな力が不要となり、弁体を駆動させるアクチュエータ(圧力供給源を含む)の大型化、重量増、電力増を抑制することができる。
【0074】
また、燃料電池10の酸化剤流路12の導入口12aとその導入口12aに酸化剤ガスを圧送する圧送装置21との間に、第1遮断装置22として上記遮断弁30のうち変圧室R1および大気圧室R2を備えたものが介装されている。また、燃料電池10の酸化剤流路12の導出口12bには、大気に開放された上記遮断弁30が接続されている。すでに燃料電池システムで使用されている圧送装置21が正圧を供給する圧力供給源として使用されている。これにより、燃料電池システムの停止運転の際に、酸化剤流路12への酸化剤ガスの供給を停止することで、第1および第2遮断装置22,23を閉弁することができる。また、燃料電池システムの停止中に、第1および第2遮断装置22,23を遮断することで、燃料電池の酸化剤流路12を密封することができる。さらに、起動運転する際に、酸化剤流路12への酸化剤ガスの供給を開始することで、第1室31aおよび第2室31bにおける酸化剤流路12の負圧および圧送装置21からの正圧による影響を受けることなく、第1および第2遮断装置22,23を閉弁することができる。したがって、開弁性を向上させながら、小型化、簡素化、コスト低減を図ることができる遮断弁を備えることで、燃料電池システムにおいて、簡素化、コスト低減を図ることができる。
【0075】
また、燃料電池システムの停止中に、第1および第2遮断装置22,23を遮断することで、燃料電池の酸化剤流路12を密封することができる。すなわち、第1および第2開閉弁27a,28aを閉じることで、燃料電池の酸化剤流路12を密封することができる。よって、ダイヤフラム33,36の経年劣化により気密性が悪化した場合にも、第1および第2開閉弁27a,28aにより気密性が保たれるので、外部からの空気の流入は抑制され、燃料電池のカーボン劣化を抑制できる。
【0076】
また、圧送装置21と第1遮断装置22の変圧室R1との間に配設され両者間を開閉する第1開閉弁27aと、圧送装置21と第2遮断装置23の変圧室R1との間に配設され両者間を開閉する第2開閉弁28aと、をさらに備えた。これにより、圧送装置21を駆動させた上で、第1および第2開閉弁27a,28aを開閉することで第1および第2遮断装置22,23をそれぞれ独立して開閉させることができる。
【0077】
また、変圧室R1を加圧する際には、圧送装置21を駆動させるとともに第1および第2開閉弁27a,28aを開き、変圧室R1を加圧した状態で密封する際には、加圧した状態で第1および第2開閉弁27a,28aを閉じ、変圧室R1を大気に開放する際には、圧送装置21の駆動を停止させるとともに第1および第2開閉弁27a,28aを開く。このように、圧送装置21と1つの開閉弁(27aまたは28a)の駆動状態によって制御することで、遮断弁30を3つのモードに適切に制御することができるので、システムの簡素化、低コスト化を達成することができる。また、電力消費も小さくできる。
【0078】
なお、上述した第1の実施形態においては、第1支持部材35および第2支持部材38
が別部材であるが、この場合には両者の軸心ずれによって弁軸32bが斜めになり弁軸32bに固定された弁体本体32aも斜めになることで、弁体本体32aが弁座31c2に確実に当接できないおそれがあった。そこで、図5に示すように、弁軸32bは中空の軸132bとし、第1支持部材35と第2支持部材38は一体的に軸状部材135に形成されるようにしてもよい。これにより、弁軸32bが斜めに固定されるのを抑制することができ、ひいては弁体本体32aを弁座31c2に確実に当接することができるので、閉弁時のシール性をより向上させることができる。
【0079】
また、上述した第1の実施形態においては、第1および第2遮断装置として遮断弁30を使用するようにしたが、圧送装置21から供給される圧力で開閉される他の形式の遮断弁を使用するようにしてもよい。この場合、圧送装置21の駆動状態に関係なく、第1および第2開閉弁27a,28aを開閉することで第1および第2遮断装置22,23をそれぞれ独立して開閉させることができる。
【0080】
また、変圧室R1を加圧する際には、圧送装置21を駆動させるとともに第1および第2開閉弁27a,28aを開き、変圧室R1を加圧した状態で密封する際には、加圧した状態で第1および第2開閉弁27a,28aを閉じ、変圧室R1を大気に開放する際には、圧送装置21の駆動を停止させるとともに第1および第2開閉弁27a,28aを開く。このように、圧送装置21と1つの開閉弁(27aまたは28a)の駆動状態を制御することで、遮断弁30を3つのモードに適切に制御することができるので、システムの簡素化、低コスト化を達成することができる。また、電力消費も小さくできる。
【0081】
2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態について図6を参照して説明する。本第2の実施形態は、上述した第1の実施形態から第1および第2開閉弁27a,28aを削除した燃料電池システムである。この場合、圧送装置21の駆動が開始されて、変圧室R1の圧力が開閉作動圧以上であれば、第1および第2遮断装置22,23は開弁し、そうでなければ閉弁する。
【0082】
3)第3の実施形態
さらに、第3の実施形態について図7、図8を参照して説明する。本第3の実施形態は、上述した第1の実施形態の第1遮断装置22を遮断弁30に代えて電動モータ付の遮断弁130が使用する燃料電池システムである。第1の実施形態と異なる部材のみ説明し、同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
【0083】
遮断弁130は、図8に示すように、第1蓋部材34に代えてほぼ同様に構成された第1蓋部材134を備えている。第1蓋部材134には、電動モータ40の本体41が取付けられている点で第1蓋部材34と異なる。電動モータ40は、制御装置24の指示により軸方向に沿って往復動して位置決め固定される出力軸42を有している。この出力軸42は、弁軸32bの一端部に形成された軸孔32b1に係合されている。出力軸42の先端は、軸孔32b1の底面に当接している。弁軸32bはばね39の付勢力で出力軸42側に押圧されており、出力軸42と弁軸32bとの係合が維持されている。このように、出力軸42は、第1支持部材35として機能する。これにより、電動モータ40によって弁体32が軸方向に位置決め固定され開弁量を調節できるので、遮断弁130を流量調整可能な弁とすることができる。
【0084】
なお、第1遮断装置22だけでなく、第2遮断装置23も電動モータ付の遮断弁130を使用するようにしてもよく、第2遮断装置23のみ遮断弁130を使用するようにしてもよい。
【0085】
また、第3の実施形態においては、電動モータ40を第2蓋部材37に設けるようにし
てもよい。この場合には、出力軸42が第2支持部材38に係合するように構成しなければならない。出力軸は、第2支持部材38として機能する。
【0086】
4)第4の実施形態
さらに、第4の実施形態について図9、図10を参照して説明する。本第4の実施形態は、上述した第1の実施形態の第2遮断装置23を遮断弁30に代えて第2ダイヤフラム36が削除された遮断弁230を使用する燃料電池システムである。第1の実施形態と異なる部材のみ説明し、同一部材については同一符号を付して説明を省略する。
【0087】
遮断弁230は、図10に示すように、上述した第2ダイヤフラム36およびフランジ32b4が削除されたものである。第2蓋部材237はほぼ平板状に形成されており、その点が第2蓋部材37と異なる。ばね39は、第2蓋部材237と弁体本体32aとの間に介装されている。これによれば、第2室31bが大気に開放されている場合には、遮断弁30でなく、構造が簡単であり低コストの遮断弁230を使用することで、システム全体を低コストとすることができる。
【0088】
5)第5の実施形態
さらに、第5の実施形態について説明する。本第5の実施形態は、上述した各実施形態では正圧を供給する圧力供給源を使用したが、これに代えて負圧を供給する圧力供給源を使用するようにしてもよい。この場合、圧力供給源から負圧が供給された際に、ばね39の付勢力に抗する力を弁体32に作用させるために、第1室31a側でなく第2室31b側に変圧室R1を設ければよい。なお、第1室31a側に大気圧室R2が設けられる。これにより、圧力供給源から負圧が供給されると、変圧室R1内の圧力が低下し、ばね39の付勢力に抗する力が弁体32に作用して開弁される。
【0089】
このように、変圧室R1が第2蓋部材37と第2ダイヤフラム36との間に形成された場合には、圧力供給源は負圧を供給するものである。これにより、遮断弁を備えたシステムがすでに負圧の圧力供給源を備えている場合には、圧力供給源を別途設ける必要がないので、簡易かつ低コストである遮断弁を提供することができる。
【0090】
また、変圧室R1が第2蓋部材37と第2ダイヤフラム36との間に形成された場合には、第1蓋部材34の内側に配設され第1開口31dを閉塞しかつ弁軸32bに固定された第1ダイヤフラム33と第1蓋部材34との間に形成された区画であって、大気に開放された大気圧室R2をさらに備えた。このように、変圧室R1を設けた側の反対側に大気圧室R2を設けることにより、第1室31aと第2室31b内の圧力による影響を受けることなく、遮断弁30を開弁させることができる。
【0091】
なお、正圧と負圧を両方供給するようにしてもよい。この場合、大気圧室R2に代えて別の変圧室を設けるようにすればよい。第1室31a側に正圧が供給される変圧室を設け、第2室31b側に負圧が供給される変圧室を設ければよい。
【0092】
上述した各実施形態によれば、弁軸32bには、弁体本体32aと第1ダイヤフラム33および第2ダイヤフラム36の少なくとも何れか一方とが固定されている。第1ダイヤフラム33が設けられた場合、第1室31a内の圧力が、弁体本体32aに及ぼす力と、第1ダイヤフラム33に及ぼす力が逆向きに作用するので、弁体32においては両者の力が相殺される。また、第2ダイヤフラム36が設けられた場合、第2室31b内の圧力が、弁体本体32aに及ぼす力と、第2ダイヤフラム36に及ぼす力が逆向きに作用するので、弁体32においては両者の力が相殺される。これにより、当該遮断弁を開弁する際(弁体を開方向に移動する際)に、第1室31a内および第2室31b内の圧力による影響を抑制することができる。したがって、ばね39(付勢部材)による付勢力を少なくとも
弁体本体32aに作用させることで、遮断弁を開弁させることができる。
【符号の説明】
【0093】
10…燃料電池、11…燃料流路、12…酸化剤流路、12a…導入口、12b…導出口、21…圧送装置(圧力供給源)、22,23…第1および第2遮断装置、24…制御装置、25…酸化剤供給管、26…オフガス排出管、27…第1圧縮空気供給管、27a…第1開閉弁、28…第2圧縮空気供給管、28a…第2開閉弁、30,130,230…遮断弁、31…弁本体、31a1…第1入出口、31a…第1室、31b1…第2入出口、31b…第2室、31c…隔壁、31c1…連通穴、31a2…壁、31d…第1開口、31b2…壁、31e…第2開口、31c2…弁座、32…弁体、32a…弁体本体、32b…弁軸、32b1…軸孔、32b2…フランジ、32b3…軸孔、32b4…フランジ、33…第1ダイヤフラム、34,134…第1蓋部材、34a…入出管、35…第1支持部材、36…第2ダイヤフラム、37,237…第2蓋部材、37a…入出管、38…第2支持部材、39…ばね、40…電動モータ、41…本体、42…出力軸、R1…変圧室、R2…大気圧室。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入出口が形成された第1室と、第2入出口が形成された第2室と、前記第1室と前記第2室とを連通する連通穴と、前記連通穴と対向する前記第1室の壁に形成された第1開口と、前記連通穴と対向する前記第2室の壁に形成された第2開口と、を備えた弁本体と、
前記第1開口を閉塞する第1蓋部材と、
前記第2開口を閉塞する第2蓋部材と、
前記連通穴の前記第2室側の開口周縁に設けられた弁座と、
前記第2室内に配設され前記弁座に当接して閉状態をなし一方離間されて開状態をなす弁体本体と、前記弁体本体に固定され一端が前記第1開口に向かって延設されるとともに他端が前記第2開口に向かって延設された弁軸と、を備えた弁体と、
前記弁体と前記弁本体との間に介装され前記弁体本体が前記弁座に当接する方向に前記弁体を付勢する付勢部材と、
前記第1蓋部材の内側に配設され前記第1開口を閉塞しかつ前記弁軸に固定された第1ダイヤフラムと前記第1蓋部材との間および前記第2蓋部材の内側に配設され前記第2開口を閉塞しかつ前記弁軸に固定された第2ダイヤフラムと前記第2蓋部材との間の少なくとも何れか一方に形成された区画であって、圧力供給源と連通され該圧力供給源から圧力が供給された際に前記付勢手段による付勢方向と反対方向に前記弁体を付勢する変圧室と、
前記第1蓋部材に固定され前記弁軸の一端を軸方向に往復動可能に支持する第1支持部材と、
前記第2蓋部材に固定され前記弁軸の他端を軸方向に往復動可能に支持する第2支持部材と、
を備えたことを特徴とする遮断弁。
【請求項2】
請求項1において、前記変圧室が前記第1蓋部材と前記第1ダイヤフラムとの間に形成され、前記第2蓋部材の内側に配設され前記第2開口を閉塞しかつ弁軸に固定された前記第2ダイヤフラムと前記第2蓋部材との間に形成され大気に開放された大気圧室をさらに備えたことを特徴とする遮断弁。
【請求項3】
請求項1において、前記変圧室が前記第2蓋部材と前記第2ダイヤフラムとの間に形成され、前記第1蓋部材の内側に配設され前記第1開口を閉塞しかつ弁軸に固定された前記第1ダイヤフラムと前記第1蓋部材との間に形成され大気に開放された大気圧室をさらに備えたことを特徴とする遮断弁。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項において、前記弁軸は中空の軸であり、前記第1支持部材と前記第2支持部材は一体的に軸状に形成されたことを特徴とする遮断弁。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項において、前記変圧室が前記第1蓋部材と前記第1ダイヤフラムとの間に形成された場合には、前記圧力供給源は正圧を供給するものであることを特徴とする遮断弁。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4の何れか一項において、前記変圧室が前記第2蓋部材と前記第2ダイヤフラムとの間に形成された場合には、前記圧力供給源は負圧を供給するものであることを特徴とする遮断弁。
【請求項7】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項5および請求項6の何れか一項において、前記第1蓋部材または前記第2蓋部材に設けられ、軸方向に沿って往復動して位置決め固定される出力軸を有する電動モータをさらに備え、
前記出力軸が前記弁軸に係合されるとともに前記第1支持部材または前記第2支持部材として機能することを特徴とする遮断弁。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れか一項において、前記第1ダイヤフラムが設けられた場合、前記第1支持部材が前記弁軸の一端を支持している支持部分と前記第1室とを前記第1ダイヤフラムによって隔てるような構造とすることを特徴とする遮断弁。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7の何れか一項において、前記第2ダイヤフラムが設けられた場合、前記第2支持部材が前記弁軸の他端を支持している支持部分と前記第2室とを前記第2ダイヤフラムによって隔てるような構造とすることを特徴とする遮断弁。
【請求項10】
燃料が供給される燃料流路と酸化剤ガスが供給される酸化剤流路を有する燃料電池と、
前記酸化剤流路の前記酸化剤ガスを導入する導入口に前記酸化剤ガスを圧送する圧送装置と、
前記圧送装置と前記酸化剤流路との間に介装され前記圧送装置と前記酸化剤流路との連通を遮断する第1遮断装置と、
前記酸化剤流路からオフガスを導出する導出口を遮断する第2遮断装置と、を備え、
前記第1遮断装置として請求項2乃至請求項9の何れか一項に記載の遮断弁のうち前記変圧室および前記大気圧室を備えたものを使用し、
前記圧送装置は前記第1遮断装置の前記第2入出口に連通されるとともに前記第1遮断装置の前記変圧室に連通され、
前記導入口は前記第1遮断装置の前記第1入出口に連通され、
前記第2遮断装置として請求項1乃至請求項9の何れか一項に記載の遮断弁を使用し、
前記導出口は前記第2遮断装置の前記第1入出口に連通され、
前記圧送装置は前記第2遮断装置の前記変圧室に連通され、
前記第2遮断装置の前記第2入出口は大気に開放されたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項11】
請求項10において、前記圧送装置と前記第1遮断装置の前記変圧室との間に配設され両者間を開閉する第1開閉弁と、
前記圧送装置と前記第2遮断装置の前記変圧室との間に配設され両者間を開閉する第2開閉弁と、をさらに備えたことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項12】
請求項11において、前記変圧室を加圧する際には、前記圧送装置を駆動させるとともに前記第1および第2開閉弁を開き、
前記変圧室を加圧した状態で密封する際には、前記第1および第2開閉弁を閉じ、
前記変圧室を大気に開放する際には、前記圧送装置の駆動を停止させるとともに前記第1および第2開閉弁を開くことを特徴とする燃料電池システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−106658(P2011−106658A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265606(P2009−265606)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】