説明

部品実装装置

【課題】部品吸着用のノズルを適正に選定することで不良の発生をより効果的に抑制することが可能な部品実装装置を提供する。
【解決手段】移動可能なヘッドユニット6に設けられた部品吸着用のノズル21により部品を吸着し、吸着された部品を搬送して基板P上に実装する部品実装装置1において、部品の種類ごとに設定された複数のノズル候補につき、その候補内のノズル21を用いて部品の実装作業を行ったときの吸着不良率を基準に定められた所定の優先度値を記憶する記憶手段(42b)と、このノズルデータ記憶部42bに記憶された優先度値に基づいて、使用すべきノズル21の種類を決定する制御手段(41)とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動可能なヘッドユニットに設けられた部品吸着用のノズルにより部品を吸着し、吸着された部品を搬送して基板上に実装する部品実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、部品吸着用のノズルを備えた移動可能なヘッドユニットにより部品を吸着して基板上に実装する表面実装機を用いた部品の実装方法において、部品の種類ごとにその種類の部品を吸着可能な複数種類のノズルを予め定めておき、一種類の部品について上記複数種類のノズルを使い分けて当該部品の実装を行うことが行われている。
【0003】
より具体的に、上記特許文献1では、部品の種類ごとにその種類の部品を吸着可能な複数種類のノズルを特定しておくとともに、これらのノズルの中から、先に基板上に実装された部品と干渉するおそれのあるノズルを、使用制約が課されたノズルとして除いた上で、実際に使用するノズルを各部品について決定するようにしている。
【特許文献1】特開2007−142216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1のように、先に基板上に実装された部品と干渉するおそれのあるものをノズル候補の中から除くようにした場合でも、ノズルの種類によっては、部品を吸着したりこれを基板上に実装したりする際に何らかの不良が発生する可能性が高いものが存在すると考えられるため、このようなノズルを除いた上で上記ノズルの選定を行うことが望まれる。しかしながら、上記特許文献1の技術では、このような要求に応える対策が特に施されていなかった。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、部品吸着用のノズルを適正に選定することで不良の発生をより効果的に抑制することが可能な部品実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、移動可能なヘッドユニットに設けられた部品吸着用のノズルにより部品を吸着し、吸着された部品を搬送して基板上に実装する部品実装装置であって、部品の種類ごとに設定された複数のノズル候補につき、そのノズルを用いて部品の実装作業を行ったときの不良発生率を基準に定められた所定の優先度値を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された優先度値に基づいて、使用すべきノズルの種類を決定する制御手段とを備えることを特徴とするものである(請求項1)。
【0007】
本発明によれば、実装動作時の不良発生率を基準に定められたノズルの優先度値に基づいて、複数のノズル候補の中から使用すべきノズルを決定するようにしたため、例えば単に部品との干渉の有無等を基準にノズルの選定を行った場合と異なり、上記ノズルを用いてより確実に部品の吸着等の動作を行うことができ、実装作業時の不良の発生をより効果的に抑制することができる。この結果、部品の実装作業をより正確かつ効率よく行うことができ、基板の品質向上やタクトタイムの短縮等を効果的に図ることができるという利点がある。
【0008】
本発明において、上記記憶手段は、実際にノズルを用いて部品の実装作業を行ったときの結果から統計的に得られる不良発生率の実績値に基づき定められた実績優先度値を記憶しており、上記制御手段は、この記憶手段に記憶された実績優先度値に基づいて、使用すべきノズルの種類を決定することが好ましい(請求項2)。
【0009】
この構成によれば、ノズルの使用実績に基づいたより信頼性の高い優先度値に基づいて使用すべきノズルを決定することができるため、不良の発生をより確実に抑制してさらに正確かつ効率的な部品の実装作業を行えるという利点がある。
【0010】
また、上記記憶手段は、ノズルに関する各種設計値から予想される不良発生率に基づき定められた設計優先度値をさらに記憶しており、上記制御手段は、この設計優先度値および上記実績優先度値を用いた所定の演算式から得られる総合優先度値に基づいて、使用すべきノズルの種類を決定することが好ましい(請求項3)。
【0011】
この構成によれば、設計上の視点と使用実績との両面からバランスよく設定されたノズルの総合優先度値を基準に、使用すべきノズルをより適正に決定することができ、そのノズルを用いて部品の実装作業をより正確かつ効率よく行えるという利点がある。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の部品実装装置によれば、部品吸着用のノズルを適正に選定することで不良の発生をより効果的に抑制することが可能な部品実装装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態にかかる部品実装装置を概略的に示す平面図である。本図に示される部品実装装置1は、基板P上に各種部品を実装する表面実装機2と、この表面実装機2用の制御プログラム(以下、実装プログラムという)等を作成するためのデータ作成機3とを備えており、これら表面実装機2およびデータ作成機3がネットワーク回線4を介して電気的に接続されることにより構成されている。
【0014】
図2は、上記表面実装機2を単体で示す概略正面図である。この図2および先の図1に示すように、上記表面実装機2の基台10上にはコンベア12が配置されており、このコンベア12によりプリント基板P(以下、単に基板Pと略す)が搬送されて所定の実装作業位置(図1の2点鎖線で示される位置)で停止するとともに、当該位置で停止した基板Pが図外のクランプ機構により位置決め・保持されるようになっている。なお、以下の説明では、コンベア12による基板Pの搬送方向をX軸方向、このX軸と水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸およびY軸に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることにする。
【0015】
上記コンベア12をY方向両側から挟む基台10上の2箇所には、部品供給用の多数列のテープフィーダー5aからなる部品供給部5が設けられている。各テープフィーダー5aは、IC、トランジスタ、コンデンサ等の小片状の部品が所定間隔(供給ピッチ)おきに収納されたテープと、これを導出するためのリール等を有しており、後述するヘッドユニット6により上記テープ内の部品がピックアップされるにつれて上記テープがリールによって間欠的に繰り出されるように構成されている。
【0016】
上記基台10の上方には、部品実装用のヘッドユニット6が設けられている。このヘッドユニット6は、X軸方向およびY軸方向に移動可能に支持されており、上記実装作業位置に位置決めされた基板Pと上記部品供給部5とにわたって自在に移動し得るように構成されている。
【0017】
すなわち、上記基台10上には、Y軸方向に延びる一対の固定レール7と、Y軸サーボモータ9により回転駆動されるボールねじ軸8とが配設され、上記ヘッドユニット6を支持するための支持部材11が上記固定レール7に沿ってY軸方向に移動可能に支持されるとともに、この支持部材11に備わるナット部分18が上記ボールねじ軸8と螺合している。また、上記支持部材11には、X軸方向に延びるガイド部材14と、X軸サーボモータ15により回転駆動されるボールねじ軸13とが配設され、このボールねじ軸13と螺合するナット部分(図示省略)を備えた上記ヘッドユニット6が上記ガイド部材14に沿ってX軸方向に移動可能に支持されている。そして、Y軸サーボモータ9が作動してボールねじ軸8が回転駆動されることにより、上記支持部材11がヘッドユニット6と一体にY軸方向に移動するとともに、X軸サーボモータ15が作動してボールねじ軸13が回転駆動されることにより、上記ヘッドユニット6が支持部材11に対しX軸方向に移動するように構成されている。
【0018】
上記ヘッドユニット6には部品を吸着して基板P上に実装するための複数の実装用ヘッド20が搭載されており、当実施形態では、3本の実装用ヘッド20がX軸方向に一列に並べられた状態で搭載されている。
【0019】
これら実装用ヘッド20は、それぞれ、ヘッドユニット6の本体部に対しZ軸方向の移動およびR軸(ノズル中心軸)回りの回転が可能なように支持され、図外のサーボモータを駆動源とする昇降駆動機構および回転駆動機構によりそれぞれ上記各方向に駆動されるようになっている。
【0020】
上記各実装用ヘッド20の先端部には、部品吸着用のノズル21がそれぞれ設けられている。各ノズル21は図外の負圧供給手段にそれぞれ接続されており、上記テープフィーダー5aからの部品取出し時には、上記ノズル21の先端に上記負圧供給手段から負圧が供給されることにより部品の吸着が行われるようになっている。
【0021】
また、上記ノズル21は、実装用ヘッド20に対して着脱可能に装着されており、必要に応じて、基台10上に設けられたノズルステーション16に収納される他のノズル21と交換されるようになっている。すなわち、上記ノズルステーション16には、先端形状や大きさの異なる複数種類のノズル21が収納されており、このノズルステーション16の上方にヘッドユニット6が配置された状態で実装用ヘッド20が昇降駆動されることにより、この実装用ヘッド20に対する上記ノズル21の脱着が行われるように構成されている。
【0022】
上記基台10上には、さらに、上記各実装用ヘッド20のノズル21が部品供給部5から部品をピックアップしたときの部品の吸着状態を画像認識するための部品認識カメラ17が設けられている。この部品認識カメラ17は、例えば図1に示すように、コンベア12とその両側の部品供給部5との間に位置する2箇所に設けられており、その上方を上記ヘッドユニット6が通過する際に、上記ノズル21の先端に吸着された部品の状態が上記部品認識カメラ17により下側から撮像されるようになっている。
【0023】
以上のように構成された表面実装機2では、例えば次のようにして部品の実装作業が進められる。
【0024】
まず、ヘッドユニット6が部品供給部5の上方に移動し、各実装用ヘッド20によりテープフィーダー5aからの部品の取出しが行われる。具体的には、部品を吸着すべき所定の実装用ヘッド20が所定のテープフィーダー5aの上方で昇降移動することにより、当該テープフィーダー5a内に収納された部品が上記実装用ヘッド20のノズル21により吸着されて取り出される。
【0025】
そして、全ての実装用ヘッド20による部品の吸着が完了すると、ヘッドユニット6が部品認識カメラ17の上方に移動し、各実装用ヘッド20に吸着された部品が当該カメラ17により下から撮像されるとともに、その撮像結果に基づき各部品の吸着状態が調べられる。次いで、上記ヘッドユニット6がプリント基板Pの上方に移動し、この基板Pの上面に設定された各実装ポイント上で実装用ヘッド20が昇降移動することにより、当該ヘッド20に吸着された部品がプリント基板P上に実装される。なお、上記部品認識カメラ17の撮像結果に基づき吸着部品の位置ずれ(吸着ずれ)が認識された場合には、その部品を基板P上に実装する際の実装用ヘッド20の目標移動量が上記吸着ずれ量の分だけ補正されることにより、ある程度の吸着ずれがあっても部品が正しく実装されるようになっている。一方、上記部品の吸着ずれ量が所定の限界値を超えるような場合には、その部品については吸着不良と判断され、当該部品は図外の廃棄ステーション等に廃棄されることになる。
【0026】
次に、上記表面実装機2の制御系について図3のブロック図を用いて説明する。本図に示すように、表面実装機2には、その作動を統括的に制御するコントローラ30が内蔵されている。このコントローラ30は、周知のCPUや各種メモリ、HDD等から構成されており、その主な機能要素として、演算処理部31、記憶部32、モータ制御部33、外部入出力部34、画像処理部35等を有している。
【0027】
上記記憶部32は、上記データ作成機3で作成された実装プログラム(詳細は後述する)や、その他必要なデータを記憶するものである。
【0028】
上記演算処理部31は、上記記憶部32に記憶された実装プログラムに基づき所定の実装作業を行うべく前記ヘッドユニット6等の動作を統括的に制御するものである。
【0029】
上記モータ制御部33は、X軸およびY軸サーボモータ15,9等のモータを制御するものであり、上記外部入出力部34は、表面実装機2内に設けられた各種センサ類23からの信号等を受け付けるものである。また、上記画像処理部35は、上記部品認識カメラ17から入力される画像データを処理するものである。
【0030】
以上のような表面実装機2とネットワーク回線4を介して接続された上記データ作成機3は、上記表面実装機2の制御動作を規定する実装プログラム等を作成するためのものであり、各種データを記憶する記憶部42と、ユーザからの所定の入力操作を受け付けるキーボードやマウス等からなる入力部43と、液晶モニタまたはCRT等からなる表示部44と、これら各部を制御する制御部41とを有している。
【0031】
上記データ作成機3の記憶部42は、上記実装プログラムの作成に必要なデータをはじめとした各種データを記憶するもので、その機能要素として、基本データ記憶部42aおよびノズルデータ記憶部42bを有している。
【0032】
このうち、基本データ記憶部42aには、外部からユーザにより入力される基板Pの設計データ(CADデータ等)や生産計画等の情報、およびその情報から得られる基板P上の各実装ポイントの位置やそこに実装される部品の種類・形状等に関する各種情報が記憶されている。
【0033】
一方、上記ノズルデータ記憶部42bには、部品の種類ごとに設定されたノズル候補データが記憶されているとともに、このノズル候補の中からどのノズル21を優先的に使用するかを判断する際の基準となる優先度値データが記憶されている。
【0034】
図4は、上記ノズルデータ記憶部42bに記憶されているノズル候補データを説明するための図である。本図に示すように、ノズル候補データは、部品の種類(部品タイプ)ごとにその部品を吸着可能なノズル21の群を定めたテーブルデータにより構成されている。なお、部品タイプとは、全部品をそのサイズ等に基づいて複数種類に分類したものであり、図4の例では部品タイプA〜Cの3種類に分類されている。上記ノズル候補は、これら部品タイプA〜Cのサイズ等との関係に基づき定められるものであり、例えば、上記表面実装機2で使用されるノズル21として、図5中の識別番号N1〜N5で表わされる合計5個のノズル21が存在する場合には、これら5個のノズル21の中から、各部品タイプA〜Cを吸着可能なものとして選別された特定のノズル21が、上記ノズル候補として選ばれるようになっている。
【0035】
また、図6は、上記ノズルデータ記憶部42bに記憶されている優先度値データを説明するための図である。本図に示すように、優先度値データには、ノズル識別番号N1〜N5ごとに定められた実績優先度値および設計優先度値が含まれている。このうち、実績優先度値とは、ある識別番号のノズル21を用いて部品の実装作業(つまり部品供給部5から部品を吸着してその部品を基板P上に搭載する作業)を行ったときの結果から統計的に得られる不良発生率の実績値に基づき定められるものであり、一方、設計優先度値とは、ノズル21に関する各種設計値から予想される不良発生率に基づき定められるものである。
【0036】
まず、実績優先度値について詳しく説明する。当実施形態における実績優先度値は、各ノズル21を使用したときの部品の吸着不良率に基づいて定められる。なお、ここでいう吸着不良率とは、該当するノズル21により吸着された部品の総数と、吸着に失敗した部品数との比で表わされるものである。このようなノズル21ごとの吸着不良率の算出は、例えば、上記データ作成装置3の制御部41により行われ、この算出された吸着不良率が記憶部42に記憶されるようになっている。より具体的には、上記表面実装機2の記憶部32に記憶されている各種データから、必要なデータ(例えば部品認識カメラ17による吸着不良の検査結果データ等)が上記データ作成装置3の制御部41によって定期的に抽出され、そのデータに基づいて、上記制御部41が上記吸着不良率を算出して記憶部42に記憶させるように構成されている。
【0037】
そして、上記のようにして算出・記憶された吸着不良率が、図7に示されるような相関グラフと照らし合わされることにより、各ノズル21の実績優先度値が算出されて上記記憶部42に記憶されるようになっている。具体的に、この図7のグラフによれば、吸着不良率が小さいノズル21ほどその実績優先度値が高く設定されることになる。すなわち、吸着不良率が小さいノズル21は、部品を正しく吸着する確率がより高いものであり、他のノズル21よりも優先的に使用されるべきであるため、その実績優先度値は高く設定される。
【0038】
なお、図6および図7の例では、吸着不良率が平均的な不良率としてあらかじめ定められた所定値(当実施形態では1.0%)であるときの実績優先度値をゼロとし、これを基準として、吸着不良率が小さいほど実績優先度値をプラスし、大きいほどマイナスするようにしている。また、図6における識別番号N5のように、使用実績がないために吸着不良率の実績値データが得られていない場合には、上記所定値(1.0%)のときと同様に、実績優先度値はゼロに設定される。
【0039】
一方、設計優先度値については、各ノズル21の開口部21a(図5参照)の開口面積に基づいて定められる。すなわち、部品を吸着する際には、可能な範囲で開口面積の大きいノズル21を用いた方が、より大きな吸引力によって確実に部品を吸着できると考えられ、その結果、上記のような吸着不良が発生する確率は小さいと予想することができる。このため、図6に示すように、開口面積が大きいノズル21ほど、他のノズル21よりも優先的に使用されるべきものとして設計優先度値が高く設定されている。
【0040】
次に、上記データ作成機3の制御部41について説明する。この制御部41は、上記記憶部42に記憶された各種データに基づいて、上記表面実装機2用の実装プログラムを作成する機能を有している。具体的に、上記制御部41は、上記記憶部42の基本データ記憶部42aに記憶された各種データに基づいて、基板P上に実装される各部品の搭載順序を決定する演算を実行するとともに、その搭載順序に沿って各部品を搭載する際に使用されるノズル21を、上記ノズルデータ記憶部42bに記憶された優先度値データ等に基づいてそれぞれ決定する演算等を実行し、その結果に沿ったプログラムを上記実装プログラムとして表面実装機2に送信する。
【0041】
図8は、上記制御部41の制御動作の具体的内容を示すフローチャートである。ユーザによる入力部43への入力操作に応じ実装プログラムを作成する旨の指示が出されて図8のフローチャートがスタートすると、制御部41は、まず、記憶部42から必要な各種データを読み込むとともに(ステップS1)、そのデータに基づいて、基板P上に実装される各部品の搭載順序を決定する演算処理を実行する(ステップS3)。
【0042】
具体的に、上記制御部41は、上記記憶部42の基本データ記憶部42aに記憶された基板P上の各実装ポイントの位置やそこに実装される部品の種類・形状、さらにはその部品を供給するテープフィーダー5aの位置等の情報から、基板P上のどの実装ポイントにどの部品をどの順番で搭載すれば効率よく実装作業を行えるかをシミュレーションで求める等により、上記搭載順序を決定する。
【0043】
図9は、上記搭載順序を決定するステップS3の演算により得られた結果を示すテーブルデータである。本図によれば、搭載が行われるべき搭載点番号(Mnt1,Mnt2…等)の順番と、これら各搭載点番号に搭載されるべき部品番号(Cmp1,Cmp2…等)の順番とが、上記のような実装作業の効率化等を考慮してそれぞれ決定されている。なお、ここでいう搭載点番号とは、基板P上の各実装ポイント(座標)に対応してあらかじめ割り振られる番号である。また、部品番号とは、その部品が何の部品でありかつ部品供給部5内のどのテープフィーダー5aから供給される部品であるか等に応じてあらかじめ割り振られる番号である。したがって、このようにして割り振られる上記部品番号としては、部品のサイズ等に応じて大まかに分類された部品タイプ(タイプA〜C)よりも多くの種類が存在することになる。
【0044】
次いで、制御部41は、図8のステップS5に移行して、各搭載順序において使用すべきノズル21の候補(ノズル候補)を読み込む処理を実行する。具体的に、このノズル候補の読み込みは、各搭載順序ごとに、その順序で搭載される部品の種類(部品タイプ)に応じたノズル候補を、上記記憶部42のノズルデータ記憶部42bに記憶されているノズル候補データ(図4)から読み込むことにより行われる。
【0045】
そして、このようなノズル候補の読み込みが完了すると、制御部41は、その読み込まれたノズル候補を、ノズル21の干渉の有無に基づいてさらに絞り込む処理を実行する(ステップS7)。すなわち、制御部41は、上記ノズル候補の中に、先に基板P上に実装された部品と干渉するノズル21が含まれるか否かを判断し、このようなノズル21がある場合には、該当するノズル21を除いてノズル候補の絞り込みを行う。なお、図10には、この絞り込み後のノズル候補を、各搭載順序における部品タイプに対応付けして得られたテーブルデータが示されている。
【0046】
次いで、制御部41は、上記ステップS7の処理によりある程度絞り込まれたノズル候補の中から、実際に使用するノズル21を決定すべく、次のステップS9〜S15の処理を実行する。すなわち、制御部41は、まず、図6に示したノズルの優先度値データから、実績優先度値および設計優先度値を読み込む処理を実行するとともに(ステップS9,S11)、これら両優先度値に基づいて、下式(1)で示される総合優先度値を算出する処理を実行する(ステップS13)。
【0047】
(総合優先度値)=(設計優先度値)+(実績優先度値)×(重み係数)・・・(1)
ここで、重み係数とは、総合優先度値に対する実績優先度値の重みを表わす係数であり、当実施形態では、この重み係数は0.5とされる。
【0048】
図11は、上記式(1)の演算により得られた総合優先度値を、実績優先度値および設計優先度値と合わせて示したテーブルデータである。この図11の例では、識別番号N3のノズル21が最も総合優先度値が高く、以下、識別番号N1,N5,N2,N4の順に総合優先度値が低くなっている。このことから、ノズル21は、識別番号N3,N1,N5,N2,N4の順に、使用優先度が高いということが分かる。
【0049】
次いで、制御部41は、図8のステップS15に移行して、各搭載順序において使用すべきノズル21を決定する処理を実行する。すなわち、図10に示した各搭載順序におけるノズル候補(干渉チェックによる絞り込み後のノズル候補)の中から、図11に示した総合優先度値が最も高いノズル識別番号を特定し、その識別番号のノズル21を、使用すべきノズルとして決定する。なお、図12には、この決定された各ノズルの識別番号を、搭載順序ごとに対応付けしたテーブルデータが示されている。
【0050】
このようにして使用ノズルの決定処理が完了すると、制御部41は、図8のステップS17に移行して、全ての搭載順序の部品に対し使用ノズルの決定を行ったか否かを判定する。そして、ここでYESと判定されて全ノズルの決定が完了したことが確認された場合には、図12に示した搭載順序等のデータ通りに表面実装機2を作動させるべく、この表面実装機2の各部の動作パラメータ等を規定する実装プログラムを図12のデータに沿って作成し、これを表面実装機2に送信する処理を実行する(ステップ19)。表面実装機2は、このような実装プログラムに基づいて実装作業を行うことにより、図12に示される使用ノズルの順にノズル21を使用しつつ、同図中の搭載点番号および部品番号の順番に沿って部品の吸着および搭載を行う。
【0051】
上記のように移動可能なヘッドユニット6に設けられた部品吸着用のノズル21により部品を吸着し、吸着された部品を搬送して基板P上に実装する部品実装装置1において、部品の種類ごとに設定された複数のノズル候補につき、その候補内のノズル21を用いて部品の実装作業を行ったときの吸着不良率を基準に定められた所定の優先度値(実績優先度値および設計優先度値)を記憶する記憶手段としてのノズルデータ記憶部42bと、このノズルデータ記憶部42bに記憶された優先度値に基づいて、使用すべきノズル21の種類を決定する制御手段としての制御部41とを設けた上記実施形態の構成によれば、部品吸着用のノズル21を適正に選定することができ、実装作業時の不良の発生をより効果的に抑制できるという利点がある。
【0052】
すなわち、上記実施形態では、部品の吸着不良率を基準に定められたノズル21の優先度値に基づいて、複数のノズル候補の中から使用すべきノズル21を決定するようにしたため、例えば単に部品との干渉の有無等を基準にノズル21の選定を行った場合と異なり、上記ノズル21を用いてより確実に部品の吸着等の動作を行うことができ、実装作業時の不良の発生をより効果的に抑制することができる。この結果、部品の実装作業をより正確かつ効率よく行うことができ、基板Pの品質向上やタクトタイムの短縮等を効果的に図ることができるという利点がある。
【0053】
特に、上記実施形態のように、実際にノズル21を用いて部品の実装作業を行ったときの結果から統計的に得られる吸着不良率の実績値に基づき定められた実績優先度値が上記ノズルデータ記憶部42bに記憶されており、このノズルデータ記憶部42bに記憶された実績優先度値に基づいて、使用すべきノズル21の種類を上記制御部41が決定するように構成されている場合には、ノズル21の使用実績に基づいたより信頼性の高い優先度値に基づいて使用すべきノズル21を決定することができるため、不良の発生をより確実に抑制してさらに正確かつ効率的な部品の実装作業を行えるという利点がある。
【0054】
また、上記実施形態では、ノズル21に関する設計値(当実施形態では開口部21aの開口面積)から予想される吸着不良率に基づき定められた設計優先度値が上記ノズルデータ記憶部42bにさらに記憶されており、この設計優先度値および上記実績優先度値を用いた所定の演算式(上記式(1))から得られる総合優先度値に基づいて、使用すべきノズルの種類を上記制御部41が決定するように構成されているため、設計上の視点と使用実績との両面からバランスよく設定されたノズル21の総合優先度値を基準に、使用すべきノズル21をより適正に決定することができ、そのノズル21を用いて部品の実装作業をより正確かつ効率よく行えるという利点がある。また、上記のような総合優先度値を用いることにより、使用実績のないノズル21に対しても同一の判断指標で容易に選定を行えるという利点もある。
【0055】
なお、上記実施形態では、部品の吸着不良率の実績値に基づいて上記ノズル21の実績優先度値を定めるようにしたが、このようなノズル21の実績優先度値は、上記のような吸着不良率に限らず、各種不良の発生率の実績値に基づいて定めることが可能である。例えば、基板P上の各実装ポイントに実装された部品の実装状態を検査する検査装置が、部品実装装置1の下流側に設けられている場合には、この検査装置の検査結果データから、ノズル21ごとの部品の実装不良率を算出・記憶し、この実装不良率に基づいて上記ノズル21の実績優先度値を定めるようにしてもよい。また、このような実装不良率と上記吸着不良率との両方を複合的に勘案して上記実績優先度値を定めるようにしてもよい。
【0056】
さらに、上記実装不良率や吸着不良率のような実装作業時の不良発生率を基準として上記実績優先度値を定める上記構成に代えて、部品の吸着や搭載が成功した率(良品率)を基準に上記実績優先度値を定めるようにしてもよい。もちろん、このように良品率を用いた場合でも、間接的には不良発生率を用いていることになり、不良発生率を基準に実績優先度値を定める上記構成と実質的には同じことである。すなわち、本発明において、「不良発生率を基準に定められた所定の優先度値」とは、良品率を基準に定められた優先度値をも含む概念として解釈すべきある。
【0057】
また、上記実施形態では、ノズル21の開口部21aの面積に基づいて上記設計優先度値を定めるようにしたが、この設計優先度値は、実装作業時の不良発生に関わる設計値であれば特に種類を問わない。このような不良の発生に関わる設計値としては、上記のような開口部21aの面積の他、例えば、ノズル21の先端部全体の面積や形状、または開口部21aの断面形状や位置等を挙げることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、部品実装装置1を構成する表面実装機2とデータ作成機3とが別々に設けられた例について説明したが、本発明の構成は、上記表面実装機2とデータ作成機3とが一体的に設けられた部品実装装置1に対しても好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態にかかる部品実装装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】表面実装機の概略正面図である。
【図3】上記部品実装装置の制御系を示すブロック図である。
【図4】ノズル候補データの一例を示す図である。
【図5】ノズルの種類に応じた形状を示す図である。
【図6】ノズルの優先度値データの一例を示す図である。
【図7】実績優先度値と吸着不良率との関係を示すグラフである。
【図8】データ作成機の制御動作の具体的内容を示すフローチャートである。
【図9】部品の搭載順序を示すテーブルデータの一例である。
【図10】干渉チェックによる絞り込み後のノズル候補を搭載順序ごとに示したテーブルデータの一例である。
【図11】実績優先度値、設計優先度値、および設計優先度値をノズルの種類ごとに示したテーブルデータの一例である。
【図12】部品の搭載順序と使用ノズルとを対応付けて示すテーブルデータの一例である。
【符号の説明】
【0060】
1 部品実装装置
6 ヘッドユニット
21 ノズル
41 制御部(制御手段)
42b ノズルデータ記憶部(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能なヘッドユニットに設けられた部品吸着用のノズルにより部品を吸着し、吸着された部品を搬送して基板上に実装する部品実装装置であって、
部品の種類ごとに設定された複数のノズル候補につき、そのノズルを用いて部品の実装作業を行ったときの不良発生率を基準に定められた所定の優先度値を記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された優先度値に基づいて、使用すべきノズルの種類を決定する制御手段とを備えることを特徴とする部品実装装置。
【請求項2】
請求項1記載の部品実装装置において、
上記記憶手段は、実際にノズルを用いて部品の実装作業を行ったときの結果から統計的に得られる不良発生率の実績値に基づき定められた実績優先度値を記憶しており、
上記制御手段は、この記憶手段に記憶された実績優先度値に基づいて、使用すべきノズルの種類を決定することを特徴とする部品実装装置。
【請求項3】
請求項2記載の部品実装装置において、
上記記憶手段は、ノズルに関する各種設計値から予想される不良発生率に基づき定められた設計優先度値をさらに記憶しており、
上記制御手段は、この設計優先度値および上記実績優先度値を用いた所定の演算式から得られる総合優先度値に基づいて、使用すべきノズルの種類を決定することを特徴とする部品実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−170531(P2009−170531A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4658(P2008−4658)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】