酵素基質および酵素生成物の分配差による生体分子の検出
【課題】試料中の酵素活性に関連する生物分子を検出するための方法および装置を提供する。
【解決手段】試料中の少なくとも1つの酵素12の活性に関連する生物分子を検出するための方法であって、少なくとも1つの酵素12を少なくとも1つの基質10と、酵素12が基質10と反応することができる条件下で、混合する段階;生物分子を分配するための分配要素3を提供する段階;および分配要素3中の生物分子の蛍光を検出するための段階;を含み、検出される蛍光が試料中の酵素活性を示す、方法。分子の蛍光を検出するための光学プローブ2であって、光導波管;および光導波管の一端に配置された分配要素3;を含み、分子が、選択的に分配要素3中に分配され、分子の蛍光が導波管内に結合される、光学プローブ2。
【解決手段】試料中の少なくとも1つの酵素12の活性に関連する生物分子を検出するための方法であって、少なくとも1つの酵素12を少なくとも1つの基質10と、酵素12が基質10と反応することができる条件下で、混合する段階;生物分子を分配するための分配要素3を提供する段階;および分配要素3中の生物分子の蛍光を検出するための段階;を含み、検出される蛍光が試料中の酵素活性を示す、方法。分子の蛍光を検出するための光学プローブ2であって、光導波管;および光導波管の一端に配置された分配要素3;を含み、分子が、選択的に分配要素3中に分配され、分子の蛍光が導波管内に結合される、光学プローブ2。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、試料、例えば水および食品中の生物汚染物質に関連する酵素などの生体分子を、酵素基質および生成物の分配差(differential partitioning)により検出するための方法および装置に関する。特に、本発明は酵素活性を検出するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
酵素活性に関連する生体分子を検出する能力は、水および食品の生物学的汚染に対する試験などの分野で使用される。水の生物学的汚染(例えば、細菌)を検出することができることが特に興味深い。通常、大腸菌(Escherichia coli、E.coliまたはEC)および大腸菌群(total coliform、TC)などの細菌の検出法は、標的生物の増殖を促進するように設計されたブロス内での指標酵素活性の検出に基づく。許容される指標酵素は、ECおよびTCに対し、それぞれ、β-グルクロニダーゼ(β-glu)およびβ-ガラクトシダーゼ(β-gal)である。これらの酵素を使用する方法は、酵素活性を測定するための酵素と色素生産性または蛍光発生化合物との反応に依存する(再考のため、引用文献1および2を参照のこと)。β-gluまたはβ-galの場合、染料化合物のグルクロニドまたはガラクトシド複合体(conjugate)を試料ブロスに基質として添加し、標的酵素が存在する場合、複合体は遊離染料分子に変換される。酵素に依存する変換は、複合体と比較した場合の遊離染料分子の色または蛍光変化により検出される。いくつかの試験では、溶液中で検出される可溶性生成物を使用し、この場合大腸菌細胞もまた通常溶液中に懸濁している。他の試験では、フィルタ、膜、またはゲル表面の大腸菌細胞を使用し、支持体上に吸着する不溶性染料生成物と共に、標的生物のコロニー周辺で着色または蛍光スポットを形成する。いくつかの支持フォーマットは複数の染料基質を使用し、生物の存在により、様々な色を発する。
【0003】
しかしながら、上記アプローチは、エラー源、例えば、ブロスの適切性および全ての標的大腸菌型に対するインキュベーション条件、ならびに指標酵素活性に寄与することがある非標的生物の存在を受けやすい。それにも関わらず、確立された方法の信頼性は十分高く、肉製品から飲料水に及ぶ試料の評価に対しこれらの方法は広く許容されている。
【0004】
さらに、そのような基質のルーチンまたは市販の使用では、検出は通常ヒトの目で視覚的に実施され、性能にかなりの制限がある。基質が視認できる生成物に変換される前に、多くの大腸菌細胞が存在しなければならない。このため、最初の数の少ない細胞を検出するにはかなりのインキュベーションおよび増殖が必要となり、標準100mLの試料を24時間インキュベートすると、最初の試料内の1つの大腸菌細胞の検出限界が得られる。いくつかの場合、より迅速な検出が報告されているが、通常、より高い検出限界が許容されるのみである(例えば、100mL試料中100〜300の細胞(4、5、6))。また、視覚的な検出は定量的ではなく、これらの試験は通常「有無」の様式で使用され、大腸菌細胞の実際の数は決定されない。後者の例外は、いくつかのプレーティング法であり、この場合、コロニーの数が計数され、そのため、試料中の細胞数が定量的に決定される(3)。しかしながら、これは非常に手間および時間がかかるプロセスであり、この場合でも、長いインキュベーションが必要であり、ダイナミックレンジが限定される。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの局面によれば、試料中の少なくとも1つの酵素活性と関連する生体分子を検出するための方法であって、少なくとも1つの酵素を少なくとも1つの基質と、酵素が基質と反応することができる条件下で、混合する段階;生体分子をその中に分配させるための分配要素を提供する段階;および、分配要素中の生体分子の蛍光を検出する段階;を含み、蛍光は酵素活性を示す、方法が提供される。
【0006】
1つの態様では、分配要素は、光学プローブを含む。別の態様では、分配要素はポリマ膜、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。好ましい態様では、酵素が基質と反応することができる条件は水性条件を含む。
【0007】
1つの態様では、生体分子は基質であり、蛍光検出段階は、蛍光の量の変化を検出する段階を含む。好ましい態様では、生体分子は酵素-基質反応の生成物である。
【0008】
1つの態様では、酵素活性は微生物と関連する。好ましい態様では、微生物は生物汚染物質である。別の態様では、少なくとも1つの酵素が、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される。好ましい態様では、微生物は大腸菌および総大腸菌群から選択される。様々な態様では、少なくとも1つの基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択され、酵素活性は、水、生物試料、食品および土壌から選択される試料中で検出される。
【0009】
1つの態様では、酵素および基質は、分配要素を含むカートリッジ内で混合される。
【0010】
本発明の第2の局面によれば、試料中の生物汚染物質を検出するための方法であって、試料を少なくとも1つの基質と、生物汚染物質と関連する酵素が基質と反応することができる条件下で、混合する段階;および酵素-基質反応の生成物の蛍光を検出する段階を含み、蛍光は試料中の生物汚染物質を示す、方法が提供される。
【0011】
様々な態様では、試料は、水、生物試料、食品および土壌から選択される。好ましい態様では、酵素-基質反応の生成物の蛍光は生成物を光学プローブ中に分配させることにより検出される。
【0012】
1つの態様では、酵素が基質と反応することができる水性条件を含む。別の態様では、酵素はβ-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼのうちの少なくとも1つである。さらに別の態様では、微生物は大腸菌および総大腸菌群から選択される。さらに別の態様では、少なくとも1つの基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、およびピレン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される。
【0013】
本発明の第3の局面によれば、分子の蛍光を検出するための光学プローブであって、光導波管;および光導波管の一端上に配置された分配要素を備え、蛍光分子は、選択的に分配要素中に分配され、そのため、蛍光は導波管内に結合される、光学プローブが提供される。
【0014】
1つの態様では、蛍光分子は酵素基質および酵素-基質反応の生成物から選択される。別の態様では、分配要素はポリマ膜である、好ましい態様では、ポリマ膜はポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。別の態様では、光学プローブはさらに、蛍光を測定するための分光計を含む。
【0015】
本発明の第4の局面では、分子の蛍光を検出するための装置であって、上記のような光学プローブ;励起光源;および分子の蛍光を測定するための分光計を備え、蛍光が分子を示す、装置が提供される。
【0016】
好ましい態様では、蛍光分子は、酵素基質および酵素−基質反応生成物から選択される。1つの態様では、酵素は微生物と関連する。様々な態様では、酵素は、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される。別の態様では、微生物は大腸菌および総大腸菌群から選択される。様々な態様では、基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、およびピレン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される。
【0017】
本発明の別の局面によれば、試料中の生物汚染物質を検出するための自動化システムであって、試料を少なくとも1つの基質と、微生物と関連する酵素が基質と反応することができる条件下でインキュベートするための試料インキュベータ;酵素-基質反応生成物の蛍光を検出するための上記装置;およびシステムの動作を制御し、蛍光の検出に関連するデータを保存および出力するための制御ユニット;を備え、検出された蛍光は試料中の生物汚染物質を示す、システムが提供される。
【0018】
1つの態様では、システムはさらに、試料の生物汚染物質に関連するデータを中継するための通信ユニットを備える。様々な態様では、試料は、水、生物試料、食品および土壌から選択される。好ましい態様では、酵素が基質と反応することができる条件は水性条件を含む。別の態様では、酵素は、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択され、微生物は大腸菌および総大腸菌群から選択される。様々な態様では、少なくとも1つの基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、およびピレン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される。
【0019】
本発明の別の局面によれば、試料中の生物汚染物質を検出するためのキットであって、上記装置;生物汚染物質と関連する酵素に対する基質;ならびに試料および基質をインキュベートするためのインキュベータ;を備え、試料中の生物汚染物質を示す、キットが提供される。
【0020】
様々な態様では、試料は、水、食品、生物試料および土壌から選択される。好ましい態様では、生物汚染物質は大腸菌および総大腸菌群から選択される少なくとも1つの微生物である。
【0021】
1つの態様では、酵素はβ-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される少なくとも1つの酵素である。別の態様では、基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、およびピレン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される少なくとも1つの基質である。
【0022】
本発明の別の局面によれば、分子の蛍光を検出するための光学プローブであって、光導波管;および光導波管の一端上に配置された分配要素を備え、分子は選択的に分配要素中に分配され、分子の蛍光は導波管内に結合される、光学プローブが提供される。
【0023】
1つの態様では、蛍光分子は、酵素基質および酵素-基質反応生成物から選択される。別の態様では、分配要素はポリマ膜である。好ましい態様では、ポリマ膜はポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。別の態様では、光導波管は光ファイバである。
【0024】
本発明の別の局面では、分子の存在を検出するための装置であって、上記光学プローブ;励起光源;および分子の蛍光を検出するための検出器;を備え、検出された蛍光は分子の存在を示す、装置が提供される。
【0025】
1つの態様では、蛍光分子は、酵素基質および酵素-基質反応生成物から選択される。別の態様では、酵素は微生物と関連する。さらに別の態様では、酵素はβ-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される。
【0026】
1つの態様では、微生物は大腸菌および総大腸菌群から選択される。別の態様では、基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される
【0027】
本発明の別の局面によれば、試料中の少なくとも1つの酵素活性と関連する生体分子を検出するためのシステムであって、試料および少なくとも1つの基質とをインキュベートし、酵素を基質と反応させ、生体分子を生成させるための容器;生体分子を分配させるための分配要素;分配要素に分配された生体分子に照射する励起光源;分配要素に分配された生体分子の蛍光を検出する検出器;および制御ユニット;を備え、検出された蛍光は試料中の酵素活性を示す、システムが提供される。
【0028】
1つの態様では、制御ユニットは、システムの動作制御、蛍光検出に関連するデータの保存、および蛍光検出に関連するデータの出力から選択される少なくとも1つの機能を実施する。別の態様では、容器は試料および基質を含むための取り外し可能なカートリッジを備える。
【0029】
別の態様では、分配要素は取り外し可能なカートリッジ内に配置される。さらに別の態様では、システムは蛍光検出に関連するデータを通信ネットワークに中継する通信ユニットを備える。別の態様では、酵素は生体汚染物質と関連する。さらに別の態様では、試料は水、生物試料、食品および土壌から選択される。別の態様では、酵素はβ-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択され、生物汚染物質は大腸菌および総大腸菌群から選択される。様々な態様では、少なくとも1つの基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される。別の態様では、システムはさらに、システムの分配要素および光学部品を較正し、または蛍光検出をモニタする、またはそれらの両方を実施する手段を備える。
【0030】
1つの態様では、分配要素を較正し、蛍光検出をモニタするための手段は、分配要素中に分配し、生体分子とは異なる波長で蛍光を発するフルオロフォアを含み、フルオロフォアの蛍光は、検出器により検出され、制御ユニットは検出された蛍光を用いシステムの分配要素および光学部品を較正し、またはシステムの蛍光検出をモニタする。
【0031】
本発明の別の局面によれば、試料中の生物汚染物質を検出するためのキットであって、上記装置;および生物汚染物質と関連する酵素に対する基質を含み、キットは試料中の生物汚染物質の存在または量を示す、キットが提供される。
【0032】
別の態様では、キットは、試料および基質をインキュベートするための容器をさらに備える。1つの態様では、試料は水、食品、生物試料、よび土壌から選択される。別の態様では、生物汚染物質は大腸菌および総大腸菌群から選択される少なくとも1つの微生物である。別の態様では、酵素はβ-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される少なくとも1つの酵素である。別の態様では、基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される少なくとも1つの基質である。
【0033】
本発明の別の局面によれば、標的種を検出するための方法であって、標的種に特異的な抗体を試料に、抗体が標的種に結合することができる条件下で、混合する段階;蛍光分子の生成により、結合した抗体の定量が可能な酵素を提供する段階;蛍光分子を分配させるための分配要素を提供する段階;および分配要素中で蛍光分子の蛍光を検出する段階;を含み、検出された蛍光は試料中の酵素活性を示す、方法が提供される。
【0034】
1つの態様では、抗体は酵素に結合する。別の態様では、酵素は、標的種に特異的な抗体に特異的な第2抗体に結合し、複合体は標的種に特異的な抗体および試料の組み合わせと混合される。別の態様では、蛍光は酵素-基質反応により連続して検出される。別の態様では、蛍光は、酵素-基質反応中の設定時間後に検出される。さらに別の態様では、標的種は生物または化学汚染物質である。別の態様では、標的種は、細菌、原虫およびウイルスからなる群から選択される。
【0035】
本発明について、例として、添付の図面を参照して、以下、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による酵素活性の光学プローブ検出のための概略図である。
【図2】(A)本発明による光学プローブの1つの態様の写真であり、(B)本発明による光学プローブの別の態様の概略図である。
【図3A】(A)本発明の1つの態様による光学プローブおよび関連する光学部品を示した図である。
【図3B】(B)本発明による酵素活性をモニタするための自動化システムの概略図である。
【図3C】(C)本発明の自動サンプラーユニットにおいて使用するための試験カートリッジの概略図である。
【図3D】(D)図3Cで示した1または複数の試験カートリッジを保持するためのマガジンの概略図である。
【図3E】(E)本発明による自動サンプラーユニットの概略図であり、点線は光学経路を示す。
【図4】酵素活性を検出する様に構成された光学プローブおよび装置の概略図である。
【図5】本発明の1つの態様によるPDMS光学プローブ内へのヒドロキシピレンの分配速度を示したプロットである。
【図6】ヒドロキシピレンに対する光学プローブ検量線である。
【図7】酵素存在下、および不存在下での本発明の光学プローブにより検出された蛍光を比較するプロットである。
【図8】酵素グルクロニダーゼに対する、基質濃度の関数としての、本発明の光学プローブにより検出される標的分子形成速度のプロットである。
【図9】本発明の1つの態様による光学プローブにより検出される蛍光に基づくグルクロニダーゼ活性の検量線である。
【図10】様々な初期濃度の大腸菌細胞に対する大腸菌の光学プローブ検出を示すプロットである。
【図11A】(A〜D)基質および本発明による光学プローブを使用した、大腸菌または総大腸菌群の検出時間に対する動力学的モデルを説明するプロットであり、(A)ピレン-β-D-グルクロニド基質を用いた場合の様々な初期細胞数での大腸菌検出時間を示した図である。
【図11B】(A〜D)基質および本発明による光学プローブを使用した、大腸菌または総大腸菌群の検出時間に対する動力学的モデルを説明するプロットであり、(B)アントラセン-β-D-グルクロニド基質を用いた場合の様々な初期細胞数での大腸菌検出時間を示した図である。
【図11C】(A〜D)基質および本発明による光学プローブを使用した、大腸菌または総大腸菌群の検出時間に対する動力学的モデルを説明するプロットであり、(C)ピレン-β-D-ガラクトピラノシド基質を用いた場合の様々な細胞数での総大腸菌群検出時間を示した図である。
【図11D】(A〜D)基質および本発明による光学プローブを使用した、大腸菌または総大腸菌群の検出時間に対する動力学的モデルを説明するプロットであり、(D)アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド基質を用いた場合の様々な細胞数での総大腸菌群検出時間を示した図である。
【図12】(A)本発明による光学プローブを用いた、大腸菌のATCC株に対する細胞数の関数としての検出時間変化を示す図であり、(B)本発明による光学プローブを用いた、大腸菌の野生株に対する細胞数の関数としての検出時間変化を示す図である。
【図13】(A)何百万もの細胞を含む試料中の大腸菌の検出に対する、時間の関数としての光学プローブ信号強度を示したプロットであり、(B)何千もの細胞を含む試料中の大腸菌の検出に対する、時間の関数としての光学プローブ信号強度を示したプロットである。
【図14】それぞれ、グルクロニダーゼおよびガラクトシダーゼ活性の検出を用いた、大腸菌および総大腸菌群に対する検出時間に対する検量線を示す図である。
【図15】2-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシドを合成するためのスキームを示した図である。
【図16】1-ピレニル-β-D-ガラクトピラノシドを合成するためのスキームを示した図である。
【図17】2-ヒドロキシアントラセンおよび1-ヒドロキシピレンのグリコシル化に対する別のスキームを示した図である。
【図18】アントラセングルクロニドを調製するためのスキームを示した図である。
【図19】アントラセンのグルクロニドを調製するための別のスキームを示した図である。
【図20】本発明による光学プローブを用いた17-β-エストラジオールの検出のためのイムノアッセイに対する基質変換速度(v)対初期1-ピレンホスフェート(PP)基質濃度([S])を示すプロットであり、vに対する値は、様々な初期PP基質濃度に対する、1000秒後の、光学プローブ信号対時間のプロットの勾配から得られ、2×10-4Mでのデータポイントは阻害を示し、更なる解析から除外し、最もよく適合するミカエリス-メンテン動力学的パラメータを用いて曲線を描いた(実施例20を参照のこと)。
【図21】終点モードでの17-β-エストラジオール定量に対するイムノアッセイ結合曲線であり、BおよびB0値は、様々な初期PP基質濃度に対する、2400秒後の、光学プローブ信号対時間のプロットの勾配から決定され、100pg/mLでのデータポイント上の誤差バーは2度の実行から推定した。
【図22】動力学的モードでのE17-β-エストラジオール定量に対するイムノアッセイ結合曲線であり、BおよびB0値は、様々な初期PP基質濃度に対する、5000〜6000秒後の、光学プローブ信号対時間のプロットの勾配から決定した。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明の広範囲にわたる局面によれば、酵素活性に関連する生体分子の信頼性のある迅速検出のための方法および装置が提供される。本発明は、生物汚染物質、例えば微生物の酵素活性に関連する生体分子の検出に適用することができる。そのため、本発明の1つの実際の適用は、水および食品などの試料中の生物汚染物質の検出に関連し、この場合、汚染された水および食品の消費による汚染の蔓延および個人への感染を阻止するために、迅速な検出が重要である。本発明の別の実際の適用は、酵素レベルを決定するための、酵素免疫測定法(ELISA)などのアッセイ法における使用である。
【0038】
本明細書で使用されるように、「生体分子」という用語は、分子が自然で見出されるかどうかに関わらず、酵素反応の基質として機能することができる任意の分子、または酵素反応により生成させることができる任意の分子を表すことを意図する。むしろ、分子は「生物学的」であるとされる。(a)効果的に、酵素に結合する、または酵素により代謝される、または(b)酵素触媒反応により効果的に生成する、のいずれかであるからである。このように、合成基質およびその生成物は、この開示の目的では「生物学的」である。
【0039】
特に、本発明は、信頼性のある、迅速な酵素活性の検出を提供する。本発明によれば、標的酵素活性は、酵素に、フルオロフォアを含む基質を提供し、非常に低い生成物濃度の酵素-基質反応蛍光生成物の蛍光を選択的に検出することにより、検出される。また、標的酵素活性は、酵素に、フルオロフォアを含む基質を提供し、基質の蛍光を選択的に検出することにより検出される。この速度は酵素-基質反応が進むにつれ減少する。蛍光生成物または基質の選択的検出は、分配要素を有する光学プローブ、または単に分配要素を提供することにより達成される。この場合、生成物または基質は分配要素内に分配される。分配要素を有する光学プローブ、または分配要素は、分配要素に分配された生成物または基質の蛍光を検出するための適した光学ハードウエアに光学的に結合される。
【0040】
非常に低い生成物濃度での酵素-基質相互作用の生成物または基質濃度のわずかな変化を検出することができると、迅速な検出が得られる。ほんの少量の生成物を生成させる、または少量の基質を除去するのに必要とされる時間は短いからである。そのため、微生物の存在が検出される態様では、検出に必要とされるのは、ほんの小数の微生物であり、このためインキュベーション時間は短くなる。本発明について主に酵素-基質生成物の検出を参照して説明するが、本発明は基質の検出に同様に適用できることは理解されるであろう。
【0041】
本発明による酵素活性の検出は、標的酵素が活性である任意の培地(medium)中で実施することができる。この培地は対象分子、例えば酵素-基質反応生成物の分配要素中への分配が可能なように十分流動性がある。適した培地は水性であり、流体(例えば、液体)または半固体(例えば、生物組織、ゲル)であってもよい。一般に、本発明を使用して試料、例えば、水、食品、組織および体液などの生物試料、ならびに土壌中の標的酵素を検出する。いくつかの試料、例えば、一定の食品、生物および土壌試料の分析では、試料を適した培地と混合させる必要がある。
【0042】
本明細書で使用されるように、「検出(detectionまたはdetectioning)」および「モニタリング」は交換可能であり、オン-オフに基づき(例えば、離散試料)、または連続して(例えば、定期的なまたはランダムな間隔での連続サンプリング)、酵素活性および/または微生物の存在を検出することを意味するものである。
【0043】
迅速検出のための酵素活性検出スキームを最適化するために、下記3つの基準を満たすべきである:
1)基質は高い速度定数で標的酵素と反応すべきである;
2)生成物は高蛍光性で、微量でも容易に検出される;
3)基質と生成物の間の蛍光の差は大きくなければならず、そのため溶液からの蛍光信号は酵素変換により変化する。
これらの基準のため、従来の検出スキームの最適化にはかなりの制約がかかる。例えば、蛍光変化が必要なので、酵素による変換速度または生成物の検出限界の観点から所定の基質は最適でない場合もある。酵素に対しより良好な基質であり、または非常に蛍光性の生成物を有する蛍光発生性の候補は、基質自体が蛍光を発する場合、変換の検出を阻害し、適切でないかもしれない。本発明はそのような制約を克服する。
【0044】
フルオロフォアに対し報告されている最も低い検出限界の多くには、多環式芳香族炭化水素、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、または有機金属化合物、例えばキレートランタニドが関係する。そのようなフルオロフォアは、従来の検出スキームでは、β-グルクロニダーゼ(glu)またはβ-ガラクトシダーゼ(gal)活性を検出するための基質において使用されていない。生成物に対しかなり異なる蛍光スペクトルまたは強度を有する対応する糖類(グルクロニドおよびガラクトシド)との誘導体は知られていないからである。代わりに、現在使用されているフルオロフォアはほとんど全てのクマリン誘導体、例えばウンベリフェロン(umbelliferone)であり、これらはグルクロニドまたはガラクトシドとの複合体として許容される蛍光強度を有するが蛍光はずっと低い。対照的に、本発明は基質中でずっと広範囲のフルオロフォアを使用することができる。
【0045】
広範囲にわたる基質が報告されており、それらの多くが市販の検出用途で使用されている。溶液中の変換生成物の検出には、蛍光発生染料が好ましい。例えば、ウンベリフェロンおよびウンベリフェロン誘導体(例えば、4-メチルウンベリフェロン、トリフルオロメチルウンベリフェロン(7))の複合体は、生成物と基質との間の蛍光の対比が良好であり、複合体のβ-gluまたはβ-gal酵素のいずれかとの反応に対する速度が迅速であるため、好ましい。他の基質、例えばジオキセタン(8)もまた報告されている。溶解検出スキームでは色素生産性基質が使用されているが、膜またはゲル-担持細胞検出において使用するのが好ましい傾向がある。例としてはインドリル(9)およびインドキシル複合体(10)が挙げられる。
【0046】
本発明の1つの局面によれば、試料中の酵素活性に関連する生体分子を検出する方法が提供される。本明細書で使用されるように、「生体分子」という用語は、酵素基質または酵素-基質反応の任意の生成物を意味するものとする。方法は、標的酵素または標的酵素と関連する生物汚染物質と基質とを混合する段階、混合物に励起光(すなわち、基質および生成物のいずれかまたは両方において蛍光を発生させる波長の光)を照射する段階、および基質または酵素-基質反応の任意の生成物のいずれかの蛍光を選択的に検出する段階を含む。好ましくは、酵素-基質反応の蛍光生成物の蛍光が検出される。試料が実質的に液体または半固体(例えば、ゲル)でない場合、基質および試料は溶液中で混合することが好ましい。適した溶液としては、酵素活性を支持および/または促進することができる任意の溶液が挙げられる。細胞を使用する場合、適した溶液は、例えば、研究中の細胞の増殖を支持および促進するように選択される、適切な培地(すなわち、「ブロス」)としてもよい。細胞およびほとんど酵素に対し、そのような溶液は水性である。酵素-基質反応の生成物は、例えば、遊離蛍光(染料)分子とすることができ、その蛍光が検出される。
【0047】
本発明によれば、蛍光は、生成物と基質を区別する光学プローブにより検出され、そのため、生成物または基質の蛍光のみが検出される。特に、生成物または基質のいずれかの蛍光は、分配要素を単独で、または光学プローブと結合させて提供することにより検出される。分配要素により、生成物または基質のいずれかをその中に分配させることができる。蛍光(すなわち、光)を測定するための適した装置、例えば分光計またはフィルタ光度計に接続させると、分配要素/光学プローブは、蛍光強度に伴い予測通りに(例えば、線形に)変動する大きさを有し、生成物または基質濃度の関数である信号を発生させる。好ましい態様では、基質、生成物および分配要素の組み合わせが選択され、基質は検出されず、生成物が最低限の濃度で検出される。このように、生成物と基質の蛍光を区別することにより、上記第3の最適化基準が克服される。
【0048】
本発明は、任意の酵素活性の検出に適用することができ、ただし、(1)そのような標的酵素に対する基質はフルオロフォアと結合することができること、(2)標的酵素-基質反応により蛍光生成物が生成すること、および(3)蛍光生成物は本発明の分配要素/光学プローブにより選択的に検出できることを条件とすることは認識されるであろう。化学結合を開裂させる酵素では、基質は酵素に結合する部分を含まなければならず、酵素が開裂する結合を介して蛍光生成物に結合される。他の酵素反応、例えば、生成物を形成させるための基質の化学変換のみが存在するいくつかのペルオキシダーゼ反応では、適した基質は、分配要素中に分配される生成物を提供するものである。
【0049】
本発明を使用して1を超える酵素の存在を検出することができ、これは、同時に1を超える微生物の種または株に対応するかもしれない。この場合、考慮中の各酵素に対し適した基質の使用が必要である。各異なる酵素-基質反応の蛍光生成物が異なる波長で蛍光を発する場合、考慮中の各酵素の活性を検出することができる。また、各異なる酵素-基質反応の蛍光生成物が同じ波長で蛍光を発する場合、少なくとも1つの酵素活性を検出することができる。
【0050】
好ましい態様では、本発明が関する酵素は、β-グルクロニダーゼ(glu)またはβ-ガラクトシダーゼ(gal)である。そのような態様では、本発明は、水および食品などの試料中における、様々な株(例えば、ATCC25922:ATCC35150血清型O157:H7)、ならびにストックNo.413、E.coli B-型(カナダオンタリオ州キングストン、キングストンのQueen’s大学)および汚水分離ストックNos.KS1およびKS2(Kingston)(実施例6を参照のこと)を含む大腸菌、および他の微生物、例えば、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)(ATCC13047)、シトロバクター・フレウンデー(Citrobacter freundii)(ATCC8090)、クブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumoniae)(ATCC 13883)、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC27853)、および総大腸菌群の存在を検出するための方法を提供する。
【0051】
β-gluおよびβ-galに対する適した基質は、それぞれ、グルクロニドまたはガラクトシド部分を有する任意の基質であり、ここで、「グルクロニド」という用語は、それらの任意の塩および遊離酸を含むものとする。適した基質の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:
ピレン-β-D-グルクロニド(例えば、1-または2-ピレニル-β-D-グルクロニド);
アントラセン-β-D-グルクロニド(例えば、1-、2-、または9-アントラセニル-β-D-グルクロニド);
ピロメテン-β-D-グルクロニド(例えば、1-ヒドロキシメチル-3,5,7-トリメチルピロメタンジフルオロボレート-β-D-グルクロニド);
ピレン-β-D-ガラクトピラノシド(例えば、1-または2-ピレニル-β-D-ガラクトピラノシド);および
アントラセン-β-D-ガラクトピラノシド(例えば、1-、2-、または9-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド)。
【0052】
例えば、下記反応スキームで示されるように、β-glu活性は、ピレン-β-D-グルクロニド(pyr-glu)を用いて検出され、検出される生成物はヒドロキシピレン(HP)である:
【0053】
β-glu活性をアントラセン-β-D-グルクロニド(ant-glu)で検出する場合、下記反応スキームで示されるように、検出される生成物はヒドロキシアントラセンである。
【0054】
β-glu活性をピロロメテン-β-D-グルクロニドで検出する場合、下記反応スキームで示されるように、検出される生成物はヒドロキシピロメテンである。
【0055】
β-gal活性をピレン-β-D-ガラクトピラノシド(pyr-gal)で検出する場合、下記反応スキームで示されるように、検出される生成物はヒドロキシピレン(HP)である。
【0056】
実施例15〜19は、多くのこれらの基質およびそれらの中間体のための合成を提供する。
【0057】
本発明の第2の局面によれば、蛍光分子を選択的に検出するための光学プローブが提供される。特に、光学プローブは分子のプローブ中への分配を提供し、この場合、検出された蛍光は、主にプローブ中に分配された分子の蛍光である。分子のそのような分配は、光学プローブの端に分配要素を配置することにより達成される。分配要素により、対象分子のみがその中に分配される。
【0058】
例えば、蛍光発生基質および蛍光酵素-基質生成物を用いて酵素活性を検出するために、本発明は、基質または生成物分子のみが分配される分配要素を有する光学プローブを提供し、このため、基質または生成物のいずれかの蛍光が検出される。このように、光学プローブは基質および生成物のうちの1つのみからの蛍光を検出するので、基質および生成物の両方ともが蛍光性かどうかは重要ではない。基質の蛍光の消失速度、または生成物の蛍光の出現速度を測定することにより、酵素活性を測定することができる。好ましい態様では、生成物分子は分配要素に分配され、酵素活性は生成物の蛍光の出現速度を測定することにより決定される。上記のように、本発明による酵素活性の検出は、標的酵素が活性である任意の培地中で実施することができる。一般に、そのような培地は水性であり、流体(例えば、液体)であっても半固体(例えば、生物組織、ゲル)であってもよい。
【0059】
図1に示される、1つの態様によれば、本発明の光学プローブ2は、一端に配置された分配要素3を有する光導波管、例えば光ファイバを備える。励起光源4および分光計6または光を検出するための他の適した装置を、カプラ7を介して光ファイバの反対端に結合させ、光が光源4から分配要素3まで進み、分配要素により受理された光は光学検出器6(例えば、分光計またはCCD装置)まで進むようにする。光源4の波長は対象の蛍光性標的分子の励起に適するように選択され、通常生体分子に対しては紫外線(UV)領域である。しかしながら、本発明は他の波長および標的分子に適用できる。適した光源の例は、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード、およびレーザである。別の態様では、励起光源4はプローブと別々であり、そのためカプラ7は必要ない。標的分子に特異的な励起波長の選択および/または標的分子に特異的な発光波長のモニタリングにより、検出の特異性および選択性が改善される。
【0060】
図1の実施例では、プローブ2が、基質分子10および標的酵素12、または酵素を有する細胞(例えば、微生物)12を含む試料溶液8中に浸漬される。細胞を使用する場合、膜18は任意に、細胞接着のために提供されていてもよい。基質分子10は標的酵素12により生成物分子14および蛍光性生成物分子(すなわち、標的分子)16に変換される。分配要素3は基質分子または蛍光性生成物分子のいずれか、好ましくは後者をその中に分配させる。このように、生成物分子16は分配要素3中に分配され、そこで、光源4からの励起光が照射される。標的分子16から発光される蛍光は分光計6または他の適した装置により検出される。
【0061】
1つの態様によれば、光学プローブの分配要素は、光ファイバの一端に配置されたポリマ膜を含み、そのため、光ファイバのその端の光学開口(optical aperture)が被覆される。図2Aは直径600μmの光ファイバ製のそのような光ファイバプローブの顕微鏡写真である(実施例1を参照のこと)。ポリマの物理特性(例えば、粘度および硬度(shore A))を決定するポリマ材料の特性、例えば分子量および架橋度は、対象の蛍光性分子を選択的に分配させるように選択される。
【0062】
図2Bで示される好ましい態様では、光学プローブ100は光ファイバの一端に取り付けられた球状分配要素104を備える。光ファイバはコア102a、コーティング102bおよびジャケット102cを有する。光ファイバは、関連機器に容易に接続されるように、もう一方の端で適したコネクタ、例えば、SMAコネクタ(図示せず)により終端処理される。球状分配要素は、異なるポリマ調合物を用いて様々なサイズ、様々な剛性で調製することができる。一般に、約0.2mg〜約0.3mgの球状分配要素を使用することができる。好ましくは、球状分配要素の直径は実質的には、使用した光ファイバの直径と一致する。発明者らは、600μmの光ファイバでは、実質的に等しい直径を有する球状分配要素を取り付けると、良好な性能が得られることを見出した。半球分配要素を光ファイバにとりつけることにより、性能をさらに改善させることができる。球の直径を損なうことなく、分配要素の体積を減少させるからである。
【0063】
図2Bに示されるように、例えば、ステンレス鋼製の剛性チューブ106を使用して、ファイバコア12aおよび球状ファイバジョイント108を保護することができる。ステンレス鋼はその強度および腐食耐性のため、剛性チューブ106のための好ましい材料である。球状ファイバジョイント108は分配要素104と実質的に同じ特性、例えば、屈折率を有するポリマ材料で作製され、球104を光ファイバおよび剛性チューブに取り付けるのに使用される。ポリマジョイントは剛性チューブの端を塞ぎ、液体が、チューブと、ファイバコーティングおよびジャケットの間に入らないようにする。そのような光ファイバプローブの作製方法を下記、実施例19において示す。
【0064】
例えば、上記pyr-glu基質を用いた水溶液中のヒドロキシピレン生成物分子の検出に適した態様では、分配要素は、透明な疎水性ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマーから構成される。ヒドロキシピレンは水溶液からPDMS中に分配され、一方、pyr-glu基質はPDMS中に分配されない。このように、ヒドロキシピレンの蛍光は光学プローブにより検出される。PDMS膜中のヒドロキシピレンの出現速度は、試料溶液中の酵素濃度に対して直線性を有し、そのため、光学プローブからの信号対時間のモニタリングにより、酵素活性が測定される。
【0065】
異なる分子量および異なる架橋度を有する3つの適したPDMS材料の例はGE RTV118(General Elecrtic)、Sylguard186(Dow)、およびSylguard184(Dow)である。前駆体材料および硬化剤が提供されるポリマでは、前駆体材料の硬化剤に対する比率、硬化条件などの変数を変化させることができ、ポリマの物理特性が操作できる。他のポリマ、例えばGE RTV118はすでに混合して供給され、空気に曝露されると重合する。
【0066】
分配要素に適した他の材料の例としては、ゾルゲル、樹脂、ゲル、複合物、吸着剤、PDMS以外のポリマ、ポリウレタン、ポリアクリレート、分子鋳型膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
検出限界を最適化する(すなわち、試料中で最小酵素濃度で標的酵素活性を検出する、または試料中で最小濃度で標的分子蛍光を検出する)ためには、ファイバの光学開口における分配要素の体積を最大とするべきであり、一方応答時間を最小にするには、分配要素材料の断面を狭くすべきである。例えば、分配要素が膜である場合(例えば、図2A)、要素の断面は約400μm〜約800μm、好ましくは約500μm〜約700μmとするべきであり、厚さは約800μm未満、好ましくは約600μm未満とするべきである。所定の標的(すなわち、生成物または基質)分子を検出するために満足のいく性能を有する分配要素は、これらの特徴の間で妥協を示すであろう。ポリマ膜分配要素を円錐、球、または半球形状とすることにより性能をさらに増強させることができる。これにより、ポリマ膜中に分配されない標的分子の検出を阻害することによりプローブの選択性が増強され、試料からのバックグラウンド信号が制限される。
【0068】
検出時間を最小に抑えるための方策としては、例えば、増殖条件(例えば、温度、栄養培地)を最適化することにより細胞のインキュベーション時間を減少させること、分配要素/光学プローブによる信号の発生に必要な細胞数を減少させることが挙げられる。後者は、生成物用の励起光源および検出器、細胞による生成物への基質変換速度、および生成物用の分配要素の1または複数の適合性を最適化することにより達成できる。本発明をそのように最適化すると、1つの細胞の検出時間が3〜4倍、2〜4時間に、改善される(減少する)。
【0069】
蛍光性標的分子に関して詳細に説明してきたが、蛍光以外の光、例えば、バイオルミネセンスまたはケミルミネセンスを検出することにより、本発明を、酵素活性および微生物の存在の検出に適用することができるが、ただし、バイオルミネセンスまたはケミルミネセンス標的分子(基質または生成物)が光学プローブの分配要素中に分配できることを条件とする。
【0070】
本発明の1つの局面によれば、酵素活性を検出するための自動化システムが提供される。例えば、本発明による自動化システムを使用して、上記で詳細に記述したように、適した基質を使用すると、水、食品、または土壌試料中のグルクロニダーゼおよび/またはガラクトシダーゼ活性を検出し、大腸菌および総大腸菌群を検出することができる。自動化システムの1つの態様について、その概略図を図3Aおよび3Bに示す。システムは上記のような、分配要素を備えた光ファイバ2から作製される少なくとも1つの光学プローブ3、および関連光学部品、例えば適した光源4、分光計6または光を検出するための他の装置(例えば、電荷結合装置)、光ファイバ束7、コネクタ8、カプラ5、など、試料入口および廃棄出口を備える容器(試料インキュベータ)26、適したハードウエア(例えば、ポンプ、バルブなど、図示せず)、ならびに光学プローブおよび試料インキュベータに接続され、例えば、試料インキュベータへの基質の添加および試料流速を制御するための制御ユニット/コンピュータインタフェース22を備える。自動化システムはさらに、試料の温度、塩素濃度、pH、および濁度などの変数をモニタするための1または複数の追加のプローブ28を備えることができる。これらの変数は大腸菌および総大腸菌試験の時間および信号しきい値に影響することがあるからである。コンピュータインタフェース22はシステムの動作を制御し、対象となる酵素、このため微生物の有無に関連するデータを収集し、報告する。自動化システムのいくつかの用途では、例えば、水中の大腸菌および/または総大腸菌群の有無をモニタするために使用する場合、コンピュータインタフェースは、そのような微生物が検出された場合、水の流れを遮断するように構成することができる。
【0071】
図3Aに示されるように、システムは、光源からの励起光を光学プローブ/分配要素に送達し、光学プローブから光検出装置、例えば分光計または電荷結合装置(CCD)に蛍光を送達する光学パッケージ(optics package)を備える。1つの態様では、光学パッケージは二股ファイバ束である;すなわち、第1の光ファイバは第2および第3の光ファイバン端に一端で結合され;第2の光ファイバは光源と結合され、第3のファイバは光検出装置と結合される。3つのファイバの結合領域に、適合する屈折率流体が任意に提供されてもよく、散乱光が減少する。好ましくは、図3Aで示した部品は全て、光学プローブを除き、共通のシャシーまたはエンクロージャ内に備えられる。
【0072】
好ましい態様では、第1の光ファイバは600μmファイバ(例えば、AS600/660UVPI、FiberTech Optika、Kichener、Ontario、Canadaから入手可能)、ポリイミドコーティングおよびナイロンジャケットを備えた低OHファイバである。このファイバは、一端で適したコネクタ、例えばSMAアダプタにより終端処理され、光学プローブに接続される。第1のファイバの他端は第2および第3のファイバに結合される。第2および第3のファイバは第1のファイバと同じ直径であってもよいが、第2および第3のファイバのためにより小さな直径のファイバ(例えば、300または400μmコア)を使用すると、より良好な結合が得られる。特に、第2および第3のファイバ用に、400μmコア(FiberTech Optika AS400/440UVPI)、ポリイミドコーティングおよびナイロンジャケットを備える低OHファイバを使用すると、600μmの第1のファイバに結合した場合に非常に良好な性能が得られる。励起光、例えば、UV光の第2ファイバの自由端内への結合は、ファイバの端と光源の間にレンズを配置することにより増強される。1つの態様では、レンズは球面レンズであり、例えば、Melles Griot、Ottawa、Ontario、Canadaから入手可能なサファイアボールレンズである。第3ファイバの自由端は光検出装置に結合される。光検出装置がCCDである態様では、第3ファイバの自由端は、光源の波長の光がCCDに到達するのを阻止するロングパス光学フィルタを介してCCD上の1または複数の画素と整合される。
【0073】
微生物の有無を調べるための水をモニタするための自動化システムは、一家族住宅、学校、病院、市営の建物など、および特に井戸を備えたそのような住居および施設、ならびに市の上水配給ネットワークに据え付けることができる。後者では、自動化システムは水源(例えば、水処理プラント)に、ポンピングステーションに、および配給ネットワーク内の様々な分岐点で取り付けられ、各自動化システムは適した通信ハードウエア/ソフトウエア24(図3B)を用いて通信ネットワークに接続されることが予測される。そのような自動化システムは、汚染が許容されないレベルに到達した時、警告として、許容範囲と共に、様々な緊急レベル時に、および配給ネットワーク内で汚染が検出された場合、例えば、リアルタイム情報をオペレータに提供する。システムはまた、自動的に、影響を受けた分岐点で汚染された水の配給を遮断することもできるであろう。新規のまたは現存の水の配給システムへの据え付けを容易にするために、自動化システムは好ましくは、小型装置(例えば、発光ダイオード(LED)光源CCD分光計)を用いてコンパクトな構造で提供される。
【0074】
1つの態様では、システムは、大腸菌および総大腸菌群(これらに限定されない)を含む広範囲にわたる病原体に対する有無および細菌学的計数評価を送達することができる一体化された分配要素を備える試験カートリッジを使用する自動サンプラーユニットである。好ましくは、試験カートリッジは使い捨てカートリッジである。システムは上記原理に基づくが、光ファイバではなく、個々の試料が含有される一体分配要素を備えるカートリッジを使用する。分配要素は、光学プローブを用いて実施されるように、複数の試料と接触せず、このため、試料間での二次汚染の潜在的な原因が排除される。設計により、試験と試験の間に、光学プローブを洗浄する必要も排除される。好ましい態様では、システムは、連続光学経路完全性モニタリングおよび自己較正を提供する複数のフルオロフォアに基づく較正法を含む。システムは任意に、異なる病原体に対する複数の試験の実施を提供する。
【0075】
試験カートリッジは、特定の標的病原体、例えば大腸菌および総大腸菌群(これらに限定されない)に対する細菌学的試験を実施するのに必要な要素を組み入れる。図3Cに示されるように、試験カートリッジ200は、自動化システムにおいて簡単な構造により容易に操作することができる滅菌内部含む密閉ケーシング202を備える。分配要素204、および粉末または液体形態の試験培地はハウジング202内に含まれる。
【0076】
上述ように、試験培地は1または複数のグルクロニドまたはガラクトシド基質材料を含み、各基質材料は標的フルオロフォアを含む。試験培地はまた、水性環境に溶解し較正および光学信号経路完全性のモニタリングのためのベースライン光学信号を提供する第2のフルオロフォア(すなわち、較正フルオロフォア)、ならびに標的生物の増殖を支持するための増殖培地を含む。試験培地は任意に、水試料から遊離塩素を除去するためのチオ硫酸ナトリウム;非標的微生物の増殖を阻害するための抗生物質;および標的病原体の存在下で反応し、試料中の標的病原体の存在を視覚的に確認できるように色の変化を生成する化合物を含んでもよい。
【0077】
図3Cに示されるように、ケーシング202のホールまたはポート206は、膜または隔膜により被覆され、この膜により、ケーシング内の滅菌野を保存するように、例えば、針を使用して隔膜を通して試料を注入することにより、試料をカートリッジ内に導入することができる。ケーシング202上には、整合または指標付マーク208も配置され、これらは自動的に(例えば、光電子工学的に)感知することができ、自動化システムによるカートリッジの操作および配向が容易になり(例えば、試料を注入するためのポート106の正確な整合が容易になり)、カートリッジの識別が可能となり(例えば、その中に含まれる試験培地の型の識別が可能となり)、サンプリングユニットを様々な標的病原体に対する様々な試験の型に適合させることができる。カートリッジには任意にさらに、その1または複数の内面にフィン、チャネルまたはボス210を備えることができ、カートリッジを回転または撹拌させる際に試料の混合が容易になる。
【0078】
図3Dでは、複数の試験カートリッジ200を保持するためのマガジン220が図示されており、カートリッジを端に向かって偏らせるためにスプリング222などが備えられる。図3Eは本発明の自動サンプラー装置の1つの態様の概略図である。装置は、試験チャンバ内に1または複数の試験カートリッジ200を保持するためのホルダ230を備える。試験カートリッジは、図3Dに示したようなマガジンから手動で、または自動的にホルダ内に装着されてもよい。マガジン内に装着された試験カートリッジは、たった1つの型の標的病原体のためのものであってもよく、または様々な標的生物のための試験カートリッジの混合が存在してもよい。例えば、試験カートリッジは大腸菌のみ、大腸菌と総大腸菌群の組み合わせ、および同様に、場合によっては他の標的病原体のためのものであってもよい。光電子工学試験/整合センサ232と共に、試験カートリッジ上の指示器208により、装置は異なるカートリッジ間で識別することができる。ホルダ230はモータおよび駆動システム238を介して、カートリッジ200を保持、回転および/または撹拌させるための支持ローラ234、236を有する。装置はまた、水または他の試料をカートリッジ取り入れポート206を介して注入する試料注入器240を含んでもよい。また、カートリッジには、装置内に装着される前に、試料を注入してもよい。装置はまた、試料のインキュベーションのための加熱システム260を含んでもよく、その場合、例えば、加熱された空気がホルダ230を通って流される。
【0079】
装置は対象のフルオロフォア(例えば、標的酵素作用による基質の分解が起こると生じるフルオロフォア)を検出するための光学部品を含む。光学部品は分配要素と共に、上記と同じ原理で機能し、光学経路は図3Eの点線により表される。このように、装置は、カートリッジ200の分配要素204を照射するための光源242、例えばUV光源、および分配要素中に分配された標的フルオロフォアの蛍光を検出するための光学検出器244、例えばCCDを含む。装置はまた、上記、較正フルオロフォアの照射および検出を行う光学部品を含んでもよく、これにより、較正および/または光学信号経路完全性のモニタリングのためのベースライン光学信号が提供される。そのような態様では、標的および較正フルオロフォアにより生成する蛍光は区別され、検出されなければならない。このように、例えば、分配要素から放射される蛍光を検出するための光学経路は、光学経路を2つのチャネルに分割するビームスプリッター250およびミラー252である。各チャネルは、対象のフルオロフォア(すなわち、標的および較正フルオロフォア)の波長で光学フィルタ254、256を用いてフィルタ処理され、フィルタ処理された信号が検出される。
【0080】
装置は任意に、オペレータによる動作制御を可能とするコントロールパネル、データ収集/処理/表示装置、およびリモートコントロールインタフェース(例えば、インターネットまたはテレメトリ経由)を含み、装置は監視制御およびモニタリング、データロギング、および診断システム、通常SCADAシステムと呼ばれる、とインタフェースされる。
【0081】
本発明の自動化水サンプラーユニットは、検出結果の信頼性を保証するいくつかの特徴を有する。例えば、上記のように、試験カートリッジは追加の蛍光分子(すなわち、較正フルオロフォア)を使用する。これにより、各試験カートリッジの分配要素およびシステムの光学部品の較正が提供でき、好都合である。較正フルオロフォアの別の好都合な機能は、試験を通して光学経路の連続完全性モニタリングを提供することである。光学経路の不具合により検出フルオロフォアのルミネセンスの検出ができなくなり、誤った否定的な(negative)結果が得られるからである。光学経路の完全性は、CCD-系検出器を使用することにより保証される。ここで、CCDアレイ上の複数の画素を横切る照射により検出の冗長性が得られる。
【0082】
システムには任意に、下記のうちの1または複数が備えられてもよい:
1.肯定的な(有害)結果が得られるた場合の試料の再試験
2.有害水試料のバイオハザードの可能性を軽減するために、完了した水試験への塩素の注入
3.有害水試料の視覚的な確認を提供するための、基質への色指示薬の導入
4.試験カートリッジに埋め込んだ分配要素からの光学信号を収集するための自由空間光学感知技術の使用、または分配要素に摩擦により適合するインタフェースを提供するための研磨光ファイバセグメントの使用
5.試料の時間カスケーディング(例えば、2または4時間毎)を提供する、または複数の標的病原体試験を提供する(例えば、大腸菌および総大腸菌群は同時に同じ装置で実施)、のいずれかのため、複数の試験が平行して実施できる、試料注入器、加熱システム、および分配要素用の光学検出器からなる同じ装置内での複数の試験チャンバの含有
【0083】
下記は、試験サイクル中、本発明の自動化水サンプラーユニット(AWSU)により実施される主な段階の例である:
1.試験サイクルは、コントロールパネルを使用して、またはSCADAインタフェースを介する遠隔起動コマンドにより作動される
2.試験チャンバは必要な温度(例えば、35〜42℃)まで予め加熱される
3.試験カートリッジはカートリッジマガジンから選択され、試験チャンバに装着される
4.試験カートリッジは、カートリッジを回転させカートリッジを整合させ、試験サイクル中に撹拌するローラ機構により係合される
5.整合/試験ID指示器を用いて試験カートリッジを整合させ、隔膜を針注入器と整合させる
6.必要とされる体積(例えば、100mL)の水試料を試験カートリッジに注入する(試料ライン中の残留水の枯渇後)。インライン流量計を使用して必要な試料体積を測定する
7.針注入器を、塩素またはアルコール溶液を用いて清浄にし、滅菌する
8.内部タイマーを作動させ、SCADA信号を試験型IDと試料開始時間と共に送る
9.試験カートリッジを連続して回転させ、確実に、基質を溶解させ、試験水試料と混合させる
10.水試料は、水溶性較正フルオロフォアを含む基質混合物を溶解する
11.光学経路を作動させ、較正フルオロフォアのベースライン示度に対しモニタする
12.試料の回転および撹拌を20時間までの試験時間の間維持する
13.試験時間全体を通して、較正フルオロフォア(連続光学完全性経路モニタリングを提供するため)および標的フルオロフォア(水試料中の標的病原体の存在を指示)の両方の示度に対しモニタする
14.光学経路ステータス、病原体検出ステータス、および診断ステータスデータを、ロギングおよび報告のためにSCADAデータチャネルを介して定期的に送る
15.標的病原体の存在および推定数に対する警告を、聴覚および視覚的に、ユニットのフロントパネルに提供し、ロギング、報告、および運転動作のためにSCADAデータチャネルを介して送る
16.試験時間の終わりに、試料試験カートリッジを廃棄容器内に排出し、システムをリセットし別の試験を実施する
【0084】
本発明のさらに別の局面によれば、酵素活性を検出するためのキットが提供される。キットは、上記のように、光学プローブ、関連する光学部品および任意に、他の部品、例えばインキュベータを備え、好ましくはコンパクトで低コストであり、水や他の試料について大腸菌および総大腸菌群などの汚染微生物の存在に対し試験、モニタしたいと考える世帯主などの個人にとって、使用可能で手頃である。
【0085】
本発明のさらに別の局面では、酵素活性の測定が酵素結合免疫測定法(EIA)と連結され、試料、例えば水中の様々な標的種、例えば化学および微生物汚染物質(これらに限定されない)の検出が可能となる。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)が好ましい態様である。標的種の認識における特異性および選択性は、イムノアッセイ法において使用される抗体により与えられる。標的種の定量は酵素により生成する蛍光性種(標識)の検出により与えられる。標識は、分配要素を使用することにより上記のように検出される。
【0086】
本発明のアッセイ法は、任意の標準イムノアッセイ法において使用される任意の酵素、例えば、アルカリホスファターゼ(AP)を使用することができる。APまたは他の酵素活性をモニタするために、蛍光性化合物に結合されたリン酸部分を有する基質を使用する。この場合、生成蛍光化合物は、光学プローブの分配要素に分配されるものである。
【0087】
イムノアッセイ法により検出することができる汚染物質のクラスとしては、ホルモン、エストロゲン化合物、殺虫薬、生物毒素、多核芳香族化合物、およびポリ塩化ビフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本発明のこの局面のいくつかの態様では、EIAは「競合的結合」アッセイ法を含む。第1の態様では、酵素は化合物に結合され、複合体は、抗体への結合に対し、標的化合物と競合することができる。これにより抗体と錯化された一定量の複合体が得られ、この量は存在する標的化合物の量に逆比例する。較正または「競合的結合」プロットは、最初に未結合複合体から抗体錯体を単離し、一連の標準標的汚染物質濃度に対し酵素活性を測定することにより作成される。下記実施例20を参照のこと。
【0089】
競合的結合を使用する第2の態様では、第2の標識(しばしば、蛋白質、例えばウシ血清アルブミン、または化学種)を化合物に結合させ、第2の標識/化合物複合体が、抗体への結合に対し、標的化合物と競合することができるようにする。競合的結合段階後、第2の標識に結合する第2の抗体を添加し、第2の抗体は酵素に結合する。上記のように、抗体錯体は未結合複合体から分離され、錯化標識の量は元の試料中の標的化合物の量に逆比例する。
【0090】
本発明の別の態様では、EIAは標的化合物の検出のために「サンドイッチ」アッセイ法(例えば、ELISA)を含む。そのような態様は一般に、生物汚染物質の検出に好ましい。サンドイッチアッセイ法の例では、対象の標的に特異的な抗体が固体担体上に固定される。試料を担体表面上に導入する。標的を有する汚染物質(細胞であってもよい)が抗体に結合し、固定される。固定された汚染物質の数を決定するために、汚染物質を認識しそれらに結合する第2の抗体を添加する。第2の抗体は、非標識であってもよく、または前もって酵素に結合させることができる。第2の抗体が非標識である場合、酵素に結合する第3の抗体を添加し、第3の抗体は第2の抗体を認識し、それに結合する。いずれにせよ、この手順の結果は、元の試料中に存在する標的汚染物質の数に正比例する固定酵素の量である。選択した酵素により生成物、好ましくは蛍光生成物が生成し、これが本明細書で記述されるように検出される。周知の汚染物質(例えば、細胞)レベルを含む一連の標準溶液に対し酵素活性を測定することにより検量線プロットを作成する。
【0091】
本発明のこの局面によれば、EIAを使用して、試料、例えば水、食品、生物試料および土壌中の生物汚染物質(例えば、大腸菌、総大腸菌群、ギアルジア・ランブリア(Giardia lamblia)、クリプトスポリジウム・アルブウム(Chryptosporidium arvuum)、およびシュードモナス・アエリギノーザ(Pseudomonas aeriginosa)(これらに限定されない))を検出することができる。好都合なことに、汚染物質自体の生物活性の測定では検出できない生物汚染物質の検出に使用することができる。イムノアッセイを都合よく使用することができる生物汚染物質のクラスとしては、細菌、原虫、およびウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。各クラスの特定の例としては、細菌については、大腸菌(Escherichia coli)0157:H7、シュードモナス・アエルギノーザ;原虫については、クリプトスポリジウム・パルブウムおよびギアルジア・ランブリア;ならびにウイルスについては、ノーウォーク(Norwalk)およびSARSウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。特に、アッセイ法は試料中のギアルジア・ランブリア、クリプトスポリジウム・アルブウムおよびシュードモナス・アエリギノーザを検出するのに有益である。これらの生物はグルクロニダーゼまたはガラクトシダーゼを有しておらず、このため、上記これらの酵素に基づく検出スキームに適しているからである。
【0092】
本発明は酵素活性の測定に対し、現在の方法を超える明確な利点を有する。例えば、通常使用される方法は、基質が生成物に変換されると、光学特性(光の吸光度または蛍光発光)が変化する基質/生成物の組み合わせを使用する。いくつかの基質は入手可能であり、酵素変換でかなりの光学変化が起こるが、この変化に対する要件により使用できる基質がかなり制限される。β-gluなどの酵素は、通常加水分解による化学結合の開裂を触媒するが、これは基質からの酸素結合置換基が除去され、ヒドロキシ基にとって代わられることを意味する(すなわち、エーテルからヒドロキシル化形態への変換)。そのため、従来の基質は、エーテルからヒドロキシル形態への変換において、かなりの光学変化をうける化合物に限定される。いくつかの化合物、例えばヒドロキシクマリン化合物はそのような変化を受ける。多環式芳香族炭化水素(PAH)を含む、より感度よく検出することができる多くの他の化合物は、そのような変換では、光学特性の有意の変化が起こらない。
【0093】
対照的に、本発明では、生成物は、光学プローブの分配要素への分配差に基づき基質から区別される。これは、化合物の化学特性の変化が必要とされる、すなわち、分配要素に分配されない形態から分配される形態への変化が必要とされるが、光学特性の変化は必要ないことを意味する。その結果、従来の方法では使用できない広範囲の化合物が、本発明による基質として使用することができる。例えば、PAHは生成物への変換前後の両方で蛍光を発する、適した基質である。β-glu活性の検出に関係する上記態様では、pyr-gluはPAHのグルクロニド形態であり、実質的には水溶性であり、PDMSのような疎水性膜中に分配されない。生成物HPはずっと極性が低く、PDMS中に容易に分配される。
【0094】
本発明は、さらに利点を提供する。蛍光励起および発光に対する全光学経路は、光学プローブ内部に含まれ、特に、分配要素内に含まれ、光は測定における溶液を貫通しなくてもよい。これは、酵素活性は、不透明なまたは高散乱培地で直接検出されてもよいことを意味する。プローブ/分配要素は連続してモニタされる信号を提供し、これにより、酵素活性測定において必要とされる動力学の解析が容易になる。最後に、プローブ/分配要素の感度は、分配要素中の化合物濃度の溶液中の濃度に対する比率として規定される、生成物に対する分配定数(Kfs)により部分的に決定される。Kfsが1より大きい場合、生成物は分配要素中に「前濃縮」される。Kfsに対する値が大きくなるほど、検出感度が高くなる。PAHに対しては、10,000またはそれ以上の値が典型的である。
【0095】
引用した文献全ての内容は参照により本明細書に、全体として組み込まれる。
【0096】
本発明について下記の限定されない実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0097】
実施例1. 光学プローブ
光学プローブを、1mの長さの一本の直径600μmのナイロン(Nylon、登録商標)に被覆されたシリカファイバ(Fiberguide industries、Stirling、New Jersey、U.S.A.またはFiberTech Optika、Kitchener、Ontario、Canada)から作製した。ファイバの第1の端を他の機器との光学インタフェースのために準備し、分配要素をファイバの第2端に取り付けた。ファイバの第1端は4cmのクラッドを除去し、ファイバにセラミックブレードでスコアリング(scoring)し、ねじって引っ張りファイバを破壊し平面を残すようにすることにより準備した。分配要素に対しては、透明な疎水性ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマー膜をファイバの第2端に適用した。プローブを異なる分子量開始材料および異なる架橋度を有する3つのPDMS材料から作製した。
【0098】
GE RTV118(General Electric)膜を、50mgのPDMS前駆体材料を300μlのジクロロメタン(DCM)と混合し、その後、混合物が粘着性を示すまで(窒素の吹き込みにより3時間またはそれ以下の静的時間)DCMを蒸発させることにより作製した。18-ゲージシリンジの先端を使用して、粘着性PDMSのビーズをファイバの露出した先端に適用し、ビーズを24時間室温で硬化させた。
【0099】
Sylguard 186(Dow)膜を、ベース材料および硬化剤を10:1の体積比で混合することにより作製した。この混合物を3倍の体積のジクロロメタン(DCM)に溶解した。DCMを蒸発させ、この混合物を5時間室温で硬化させた。18-ゲージシリンジの先端を使用して、混合したSylguard 186(粘度=65,000cp;shore A=24)のビーズをファイバの露出した先端に適用し、ビーズを48時間室温で硬化させた。この型のビーズの例を図2に示す。その後、ビーズを、小刀を用いて調整し、励起光経路に直接存在しないエラストマーを除去した。小刀を使用して円錐状の端も作製し、プローブ体積およびバックグラウンド散乱を減少させた。
【0100】
Sylguard 184(Dow)膜を、上記Sylguard 186手順を繰り返すことにより作製したが、ずっと薄い膜を作製した(粘度=3900cp;shore A=50)。より厚い膜を得るために、調製したファイバを90℃のオーブンで30分間垂直に配置した。Sylguard 184をベース材料および硬化剤を10:1の体積比で混合することにより作製した。ファイバがまだ温かい間、選択を混合Sylguard 184と接触させた。これにより、エラストマーがファイバ先端上で急激に硬化した。膜が適当な寸法のビーズに類似するまで(例えば、図2)、複数回、これを繰り返した。その後、ビーズを小刀を用いて調整し、励起光経路に直接存在しないエラストマーを除去した(下記参照のこと)。
【0101】
実施例2. 光学プローブの実験的設置およびキャラクタリゼーション
実験的設置を図4に示す。この設置では、励起および発光スペクトルの走査、時間の関数としての、固定波長での発光のモニタリング、およびセンサ時間応答曲線の作成が可能である。一定長の光ファイバ2から作製した光学プローブ3を、光学カプラ5および光ファイバ7を介して励起光源4および分光計6に接続した。光源4は、キセノンランプに結合されたコンピュータ制御の走査モノクロメータを含み(どちらも、Sciencetech Inc.、London、ON製)、励起波長が選択された。分光計7は光電子増倍管検出器を備えた同様のモノクロメータを含み、より長い波長での発光をモニタした。
【0102】
上記手順を用いていくつかの光学プローブを調製した。光学プローブの初期キャラクタリゼーションを、生成物化合物、1-ヒドロキシピレンを、プローブを含む溶液に直接添加することにより実施した。GE RTV118を用いて作製したプローブの応答時間を図5に示す。このプローブでは30〜40分で平衡が起こり、他のプローブは同様の応答時間を示した(データ示さず)。平衡後、プローブにより検出した蛍光は図6に示されるように、HP濃度に対し直線性を有した。基質ピレン-β-D-グルクロニドに対する同様のプロットでは勾配が0であり、基質は検出されないことが示された。
【0103】
実施例3. 酵素活性の検出
酵素活性を検出するためのプローブの動作を、プローブを基質溶液に挿入し、安定化させ、その後に酵素を添加する(大腸菌由来のβ-gluおよびβ-galはSigmaから入手した)ことにより証明した。初期遅延後、蛍光の増加が30分にわたり観察された(図7)。20分〜30分の曲線の勾配を相対酵素活性の測定値として使用した。様々な基質レベルでの測定酵素活性をプロットすることにより(図8)、最適基質濃度は10μMであると決定した。この濃度をその後の実験で使用した。測定した酵素活性対添加した酵素量のプロットは直線であり(図9)、プローブにより酵素活性が定量でき、10ng/mlもの少ない酵素レベルが検出できることが示された。
【0104】
実施例4. 大腸菌の光学プローブ検出
大腸菌B(ストックNO.413)細胞数を、光学密度および平板計数測定の組み合わせにより決定した。様々な初期細胞数を含む試料を、標準Luriaブロスおよび10μMの基質を添加したガラスバイアル内に入れ(各試料の総体積は4mLとした)、インキュベーション時間を37.0±0.1℃で維持した。試料に光学プローブを挿入し、時間の関数として蛍光信号をモニタすることにより、試料を一度に試験した。1〜10時間後、1または複数の大腸菌細胞が試料中に最初に存在すれば、信号は急激に増加した(例えば、図10を参照のこと)。対照実験(凍結-解凍サイクルにより殺した細胞)では24時間後、何の応答もなかった。プローブを試料中に挿入した時間と信号発現(バックグラウンドレベルから1Vの増加として規定)の間の時間は最初に添加した細胞数に反比例し、細胞増殖の動力的分析モデルと一致した(図11および下記試料を参照のこと)。
【0105】
実施例5. 大腸菌増殖の動力学および大腸菌の定量
獲得した信号対時間データ(図10を参照のこと)は、細胞増殖に対する単純な動力学的モデルを用いて記述することができると仮定する。この場合、光学プローブは生成物濃度を報告し、この濃度は存在する細胞数の関数である。この仮定を用いると、光学プローブは、検出容器中で臨界数の細胞が発生すると正の信号を提供する。試料中の最初の細胞数をC0、検出に必要な数をCd(注:数/mLとしての細胞密度を細胞数の代わりに使用することができる)、細胞数が2倍になる時間をt2、検出に必要な時間をtdと規定する。任意の時間の細胞数(Ct)は下記のように書け:
および検出時間では下記のようになる:
【0106】
これは下記のように変換でき:
これは、下記のように配列し直される:
【0107】
ピレン-β-D-グルクロニド基質を用いて、周知のC0(平板計数により別個に決定)を有する一連の実験を実施し、検出までの時間tdを決定した。In(C0)対tdのプロットは直線であり(図11A)、勾配から-In(2)/t2、および切片からIn(Cd)が得られた。得られたプロットの線形回帰から、倍加時間t2を計算すると、20.3分であり、検出のための細胞臨界数Cdを決定すると3×108であった。
【0108】
プロットの線形性(図11A、R2>0.99)により全体的な挙動に対するこのモデルが支持され、検出前の時点の細胞数を計算する。これを使用すると特別な曲線を得ることができ、例えば、C0=1細胞、および任意の特定の時間では、我々は存在する細胞数を推定することができる。未知の試料に対し特定の時間で検出が起こると、同じプロットを使用して、最初に存在した細胞数を決定することができ、そのため試料中の大腸菌の定量が可能である。これにより試料および参照実験に対し同じ倍加時間が仮定される。これらはより広い範囲の試料に対し決定することができる。
【0109】
この実験を繰り返し、3つの他の基質を用い、大腸菌および総大腸菌群の検出のために、Log(初期細胞数)対検出時間の較正プロットを作成した。図11Bは、アントラセン-β-D-グルクロニド基質を用いた様々な初期細胞数での大腸菌検出時間を示す。これらの実験は、35℃で撹拌した100mLの試料を用い、0.75mgの基質および大腸菌株25922を用いて、実施した。図11Cはピレン-β-D-ガラクトピラノシド基質を用いた、様々な細胞数での総大腸菌群検出時間を示したものである。大腸菌(E.coli)は大腸菌(coliform)クラスに入るので、試験生物として大腸菌B-型を用いて検出を証明する。これらの実験は、37℃で撹拌した10mL試料を用いて実施した。図11Dは、アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド基質を用いた、様々な細胞数での総大腸菌群検出時間を示したものである。大腸菌は大腸菌クラスに入るので、試験生物として大腸菌25922を用いて検出を証明する。これらの実験は、37℃で撹拌した20mL試料を用いて実施した。
【0110】
実施例6. 4つの大腸菌株の検出
大腸菌B(ストックNo.413)をカナダ、オンタリオ州、キングストン所在のキングストンクイーンズ大学の研究グループから獲得した。株ATCC25922をアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)から購入した。株KS1およびKS2をキングストン市から流れ出る下水処理プラントから単離した。「野生型」または天然株を表す。
【0111】
これらの株を上記分析にかけた;すなわち、各株は増殖して「信号発現時間」が得られるので、pyr-glu基質を用い、プローブ信号対時間を追跡した。信号は最初に存在する細胞数に関連する。ATCC株およびキングストン下水株の1つに対する結果を図12Aおよび12Bにおいてプロットする。図12AおよびBからわかるように、全ての曲線の勾配は等価である(最初に存在する細胞数の対数変化の関数としての検出時間の変化を表す)。これらのプロットのy-切片は、最初の試料中で1つの細胞を検出するのにかかる時間を予測する。
【0112】
勾配が同一であるが、y-切片がわずかに異なるという事実は、増殖が始まる前の各株に対する「遅延(lag)」または「蘇生(resuscitation)」時間の差を示すかもしれない。これにより、実際の試料に対する信号発現時間から引き出すことができる細胞数推定値には約1オーダーの大きさの範囲が存在する。
【0113】
実施例7. アントラセン-グルクロニド基質
アントラセン-β-D-グルクロニド(ant-glu)基質について、pyr-glu基質(上記)と同じように試験した。ant-glu基質はピレン基質と実質的に同一に機能した。この基質の検出に対する励起および発光波長はわずかに長く、このため、小型分光計部品を使用する際にいくらかの改善が提供される。例えば、いくつかの構造において励起のために使用される紫外光発光ダイオードは、375nmで極大出力を有し、これはヒドロキシピレン(340nm)を励起するための極大波長よりわずかに長いが、ヒドロキシアントラセン(370nm)を励起するための極大波長により近い。
【0114】
実施例8. ガラクトシダーゼ酵素に対するピレン-ガラクトピラノシド基質
ガラクトシダーゼ活性の検出のための基質、ピレン-ガラクトピラノシド(pyr-gal)を合成し、大腸菌B(ストックNo.413)を用いて試験した。大腸菌に対するグルクロニダーゼ試験と類似する、ガラクトシダーゼ酵素試験を「総大腸菌群」細菌の指標として使用する。この基質からの生成物はグルクロニダーゼ生成物、すなわち、ヒドロキシピレンと同一であるので、本発明の方法および光学プローブはpyr-glu基質を用いても機能するが、ただし、ガラクトシダーゼ酵素が発現することを条件とすることが予測された。何百万もの細胞(図13A)および数千の細胞(図13B)を含むと推定される試料に対する初期の結果はグルクロニダーゼ試験と実質的に等しい。
【0115】
実施例9. 大腸菌試験の比較
カナダオンタリオ州キングストンまたはその付近の現地淡水源(湖および川)からの水試料(n=37)を現地の認可研究所(基準研究所と呼ぶ)に送達し、標準メンブランフィルタ法を用いた大腸菌分析を実施した。基準研究所は、各〜200mL試料から10mlの体積を分析用に取り出し、その後残りの試料を発明者らに届けた。各試料10mlを栄養ブロス濃縮物10mlと混合し、20mlの標準培地 (上記大腸菌研究で使用したものと同じ培地)を得、これにpyr-glu基質を添加した。試料を37℃の浴に入れ、撹拌バーおよび光学プローブを追加した。蛍光をモニタし、各試料に対し「検出時間」(td)を決定した。陰性試料は少なくとも20時間後、有意の蛍光信号を示さなかった。
【0116】
これらの試料の最初の組に対する結果を使用して、td応答を較正すると、図14に示す大腸菌曲線が得られた。この較正を使用してその後のtd結果を、各試料に対する「単位体積あたりの細胞数」(標準メンブランフィルタ法により検出される「コロニー形成単位」すなわちCFUに相当する)に変換した。比較の結果から、とりわけ0〜25CFU範囲では、本発明と標準研究所技術との間で良好な一致が示された。表1に、2つの方法の定性的な比較を示す。表1ではデータを「有無」のフォーマットとし、1細胞レベルでのサンプリング統計偏差が許容される。比較から、試料の「陽性」および「陰性」分類間で完全な一致が示される。
【0117】
この比較により、本発明が基準研究所技術よりも多くの利点を有し、性能に何の犠牲もないことが証明される。例えば、本発明は、より迅速で(例えば、15時間未満、より多くの汚染試料に対しより迅速な検出、対、基準研究所試験では18〜24時間)、必要とされる試料操作が少なく、視覚による計数、観察、またはヒトの介入がない光学検出が提供され(そのため、ヒトによる誤差を受けない)、過剰増殖および/または不透明試料において使用することができ、広いダイナミックレンジ(例えば、1〜1×106細胞対基準研究所では1〜100細胞)を有し、そのため希釈が必要でない試験を提供する。
【0118】
(表1)「有無」モードでの大腸菌の検出に対する本発明および基準研究所技術の比較
【0119】
実施例10. 総大腸菌群の検出
実施例9の試料のサブセットを、pyr-gelを用いる総大腸菌群(TC)分析のために選択した。基準研究所はこれらに対し総大腸菌群決定を実施していないので、最確数(MPN)定量法を用いたTC結果を提供する、市販の定量システム(Colilert-18(登録商標)、Idexx Laboratories Inc. Westbrook、ME)を使用する別個のTC試験も、試料について実施した。初期の結果を図13に示す;しかしながら、このデータの対数線形フィットに対する数値を確認するにはより多くのデータが必要であることに注意すべきである。そのため、この曲線が図14の大腸菌曲線と異なるかどうかについては結論づけることはできない。それらの2つの曲線は異なる汚染範囲をカバーしているからである。どちらの曲線も実際の試料を使用しており、存在する総大腸菌生物の実際の株にはランダムな変動があり、そのため、全体の性能は大腸菌試験と類似することが予測されることが強調されるべきである。。
【0120】
実施例11. 2-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシドの調製
2-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド4を図15で示したスキームにより調製した。アセトブロモガラクトース1を用いた相間移動条件(11)下での2-ヒドロキシアントラセン2のグリコシル化により、Zemplen条件下で脱保護されて4となる複合体3が良好な収率で得られた。
【0121】
実施例12. 1-ピレニル-β-D-ガラクトピラノシドの調製
1-ピレニル-β-D-ガラクトピラノシド7を実施例11と同様の様式で、1-ヒドロキシピレンおよびアセトブロモガラクトースから調製した(図16に示したスキーム)。
【0122】
図17に示されるように、2-ヒドロキシアントラセンおよび1-ヒドロキシピレンのグリコシル化もまた、アグリコンをペンタ-アセチルガラクトース6(12)と縮合させることにより実施してもよいが、複合体6の収率は高くない。
【0123】
実施例13. アントラセン-β-D-グルクロニドの調製
アントラセン-β-D-グルクロニドを、図18で示したスキームに従い調製した。2-ヒドロキシアントラセンをトリメチルシリルエーテル10に変換しその溶解度を増大させた。トリメチルシリルエーテル10を三フッ化ホウ素エーテルの存在下、トリクロロアセトアミデート9(13)に結合させた。乾燥メタノール中でのナトリウムメトキシドによる得られた複合体11の脱保護後、水を添加すると、ナトリウム塩12が溶液から結晶化した。この塩を、シクロヘキシルアンモニウムアセテートとの塩交換により、シクロヘキシルアンモニウム塩13に変換してもよい。
【0124】
イソブチリルトリクロロアセトアミデート14(15)を使用して、図19のスキームに示されるように、複合体15を介してアントラセンのグルクロニドを調製してもよいが、収率は改善されない。
【0125】
実施例14. 2-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド4の調製
テトラ-O-アセチル-2-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド3の調製
テトラ-O-アセチル-1-ブロモ-1-デオキシガラクトース1(205mg、0.5mmole)、2-ヒドロキシアントラセン2(74mg、0.381mmole)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム(100mg、0.294mmole)、ジクロロメタン(2.5mL)および1.5M水酸化ナトリウム(0.5mL、0.75mmole)の混合物を室温で一晩中、激しく撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、水(3×10mL)、satd塩類溶液(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで希釈した(×2)。溶媒を蒸発させると、褐色のゴム(240mg)が得られた。これを、シリカゲルクロマトグラフにかけ、溶離剤としてジクロロメタン、その後に39/1ジクロロメタン/酢酸エチルを用いると、化合物3が金色泡沫として得られた(129mg、収率65%)。
【0126】
乾燥メタノール(0.6mL)に溶解したテトラ-O-アセチル-2-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド3(30mg、0.057mmole)の溶液を室温で撹拌し、0.052Mのナトリウムメトキシドを含むメタノール(100μL、0.0052mmole)で処理した。20分後、白色沈澱が形成し始めた。一晩中撹拌した後、生成物を濾過し、少量のメタノールで洗浄し、その後、吸引して乾燥させると、クリーム状の白色固体、14.8mg(72.5%)が残った。
【0127】
実施例15. 1-ピレニル-β-D-ガラクトピラノシドの調製
1-ピレニル-β-D-ガラクトピラノシドを、実施例14で記述した様式と同様の様式で、調製した。
Tlc(10/1酢酸エチル/メタノール、UV)は、単一のスポットRf0.14を示した。
【0128】
実施例16. メチルトリ-O-アセチル-2-アントラセニル-β-D-グルクロニド11の調製
2-ヒドロキシアントラセントリメチルシリルエーテル10の調製
乾燥ピリジン(1.0mL)に溶解した2-ヒドロキシアントラセン(14)(100mg、0.515mmole)の溶液に、クロロトリメチルシラン(120μL、0.845mmole)を添加した。直ちに沈澱が形成した。一晩中室温で撹拌した後、トルエン(3mL)を添加し、混合物を濾過した。固体をさらにトルエンで洗浄し、濾液を合わせ、揮散させると、橙色の結晶固体が残った。残渣をトルエン(5mL)に溶解し、再び濾過し、微量のピリジン塩酸塩を除去した。溶媒の蒸発により橙色の固体が得られ、これを高真空下で乾燥させると、定量的収率(140mg)のトリメチルシリルエーテルが得られた。これを以下で、精製せずに使用した。
【0129】
25mLのナシ状フラスコに2-ヒドロキシアントラセントリメチルシリルエーテル10(191mg、0.717mmole)およびイミデート9(479mg、1.0mmole)を入れ、窒素でフラッシュした。粉末状の、活性化した3オングストロームのモレキュラーシーブ(1.0g)を反応フラスコに直ちに添加し、これに窒素を再びフラッシュし、氷中で冷却した。乾燥ジクロロメタン(8.5mL)を添加し、混合物を30分間、氷冷しながら、撹拌した。三フッ化ホウ素エーテル(85μL、0.67mmole)を最後に添加すると、反応物は直ちに灰緑色に変わった。反応混合物を一晩中窒素下で撹拌し、徐々に室温まで温めた。
【0130】
メタノール(2mL)を添加し、10分間撹拌することにより反応をクエンチした。固体を濾過して除去し、ジクロロメタンでよく洗浄した。濾液を合わせ、蒸発させると、褐色の泡沫が残り、これをジクロロメタンに溶解し、シリカゲル(1g)で処理し、再蒸発させた。残渣をジクロロメタン中で準備したシリカゲルカラム(20g)の上に添加し、この溶媒で溶離した。生成物を含む画分を合わせ、蒸発させると、くすんだ黄色の固体(152mg)が残った。酢酸エチル(2.0mL)からの結晶化により、オフホワイトの固体(69mg、19%)が得られた。
【0131】
実施例17. 2-アントラセニル-β-D-グルクロン酸、ナトリウム塩12の調製
メチルトリ-O-セチル-2-アントラセニル-β-D-グルクロニド11(145mg、0.284mmole)を乾燥メタノール(4.0mL)中に懸濁させ、氷浴中で窒素下冷却した。これに、0.678Mのナトリウムメトキシド溶液(710μL、0.48mmole)を添加した。混合物を一晩中撹拌し、徐々に室温まで温めた。生成物が溶液から沈澱するにつれ、固体が徐々に消費された。次の日、水(1.0mL)を添加し、撹拌を室温で続けた。微細な沈殿物を濾過し、少量のメタノールで洗浄し、吸引して乾燥させると、生成物がオフホワイトの固体として得られた(97mg、87%)。
【0132】
実施例18. 2-アントラセニル-β-D-グルクロン酸、シクロヘキシルアンモニウム塩13の調製
ナトリウム塩12(54mg、0.137mmole)をメタノール(〜5mL)および水(3mL)に溶解し、加熱して沸騰させた。溶液を、パスツールピペットに含まれる組織プラグを通して濾過し、熱水(0.5mL)を用いて洗浄した。熱濾液に酢酸シクロヘキシルアンモニウム(22mg、0.138mmole)を添加し、得られた溶液を冷却しながら撹拌した。氷中で冷却すると、シクロヘキシルアンモニウム塩が結晶化し、これを濾過して淡黄色固体として収集した(39.7mg、62%)。
【0133】
実施例19. ポリマー球分配要素光学プローブの調製および評価
この実施例は、シリコーンまたはポリジメチルシロキサン(PDMS)球分配要素光学プローブの調製および評価について記述する。
【0134】
PDMSは中性極性を有し、そのため疎水性である。この特性により、材料は水に浸漬されると、コンパクトな形状、すなわち球を形成する。この実施例で記述した分配要素のために使用されるPDMSは水よりもわずかに密度が高く、そのため、材料の球は水溶液の底に沈み、バイアルの底面に接着する。材料が硬化して剛性ポリマとなると、密度がわずかに増加する。我々は、懸濁中に硬化するのに十分長く球が浮かび続けるように、密度勾配を有する極性バッチ溶液を使用するスキームを開発した。
【0135】
バッチ溶液を下記のように調製した。酢酸ナトリウム三水和物1.4gおよび水4mLの溶液を、20mLのガラスバイアル中で完全に混合することにより調製した。その後、95%エタノール4mLを同じバイアルに撹拌せずに徐々に添加した。酢酸ナトリウム層はPDMS材料および硬化シリコーンよりも極性および密度が高いが、アルコール層は前駆体材料よりもかなり極性であるが密度は低い。溶液中に浸漬させると、ポリマ材料の球は直ちに、2つの別個の層の間の混合層に向かって移動し、そこで懸濁されたままとなる。球は混合層では横方向に移動せず、そのため、PDMS材料を溶液に注入することにより単一のバイアル中で多くの球を作製することができる。
【0136】
バッチ溶液により、各球に対し同一の形状が確保されるが、球のサイズは注入したPDMS材料の量に依存する。前駆体シリコーンの粘度が高いため、正確な体積注入のために標準の実験用ピペットおよびシリンジを使用することができない。そのため、前駆体材料に溶媒を添加し、その粘度減少させる。ポリマの硬化段階中に、溶媒は単純に拡散し、または蒸発してしまう。ジクロロメタン、ヘキサンおよび他の有機物などの多くの溶媒を使用して、前駆体材料を溶解することができるが、これらの溶媒はエタノールまたは水中に完全に混和せず、そのため、シリコーンは、硬化すると、バッチ溶液の表面まで徐々に上がってくる。テトラヒドロフラン(THF)は前駆体物質を溶解し、徐々にエタノール中に消散することができる溶媒であり、バッチ溶液の混合層中にシリコーン球が残り、生成収率は90〜100%である。再現性のある注入物に必要とされるTHFの量は、使用するシリコーンの型およびブランドにより変動する。約1.2mgの球質量(直径約1.5mm)では、Dow Corning Sylguard184シリコーンを用いる場合シリコーン前駆体1gにつきTHF0.45mLが必要であり、United Chemical Technologiesシリコーンを使用する場合シリコーン1gにつきTHF0.6mLが必要である。
【0137】
較正ピペットおよびシリンジを使用して、シリコーン/溶媒をバッチ溶液に注入することができる。1〜3mgの球を調製する場合、シリンジを用いるとより良好な再現性が得られる。シリンジを使用する場合、シリンジバレル上のゲージを都合よく使用して、バッチ溶液に注入するシリコーン/溶媒溶液の体積を設定することができる。ポリマ/溶媒をシリンジ中に入れるとすぐに、針をふき取り清浄にし、バッチ溶液のエタノール層中に挿入する。一滴のポリマ溶液が針から離れ、直ちにバッチ溶液の境界層に落下する(その場所にとどまる)まで、針プランジャを徐々に加圧する。針をエタノール層の他の位置まで移動させ、別の一滴を針から絞り出す。このように、かなりたくさんの球を20mLバイアル中で作製することができる。シリンジをバッチ溶液から注意深く取り除き、その後、バイアルにふたをかぶせ、室温で硬化時間が経過するまで静置する。
【0138】
バッチ溶液から固体ポリマ球を除去するために、球より細孔サイズが小さいプラスチックフィルタ漏斗を使用してバッチ溶液を濾過する。その後、保持した球を95%エタノールで洗浄し、残留酢酸ナトリウムを除去し、乾燥させる。乾燥すると、ポリマ球を計量し、質量により分類する。
【0139】
ポリマ球分配要素光学プローブの性能
上記のようにポリマ球分配要素を大量生産するために使用されるバッチプロセスにより、シリコーン球が一貫したサイズ、形態、および光学透明度を有することが確保され、これにより光学プローブの検出限界が改善される。その結果、平衡時間、一定の生成物溶液、例えばヒドロキシピレンまたはヒドロキシアントラセン中での信号生成、および球を用いて作製した光学プローブの較正が標準化される。
【0140】
上記のように、シリコーン球の調製には、様々なPDMS調合物を使用することができる。様々な調合物によりポリマの物理特性が変化する。例えば、Dow Corning Sylgard 184では、高い架橋度およびヒュームドシリカなどのフィラー材料の添加により、非常に剛性のポリマが形成される。このポリマは、アルコール溶液中で、分解に耐え、膨潤を最小に抑えることができるので、溶液中での寿命が非常に長い。この調合物の欠点は、1mgの球が生成物溶液中で平衡に達するのに3時間必要となることである。United Chemical Technologiesシリコーンから作製した1mgの球は1時間で平衡に達する。この球は、ヒュームドシリカが不足し、架橋度が低いため、Sylguard 184を用いて作製した球よりも剛性が低いが、膨潤および分解を受けやすい。架橋度は両方の調合物において制御することができ、表2に示すように、1〜3時間の平衡時間を有するポリマが達成される。
【0141】
(表2)球を作製するための2つのブランドのPDMS材料の調合物
【0142】
実施例20. 光学プローブを用いた酵素イムノアッセイ法
導入
この実施例は、17-β-エストラジオール(E2)の検出のためのイムノアッセイ法における、上記のようなPDMS分配要素を備えた光学プローブの使用について記述する。標準イムノアッセイキットをこの目的のために使用した。Assay Designs’s Correlate-EIA 17-β-Estradiolキット(Assay Designs Inc. Ann Arbor、MI)は生物および環境試料におけるE2の定量のための競合イムノアッセイ法である。標準または従来のアッセイ法手順を以下、説明する。
【0143】
E2を含むかもしれない試料または標準溶液を、マイクロタイタプレートのマイクロウエル内に、アルカリホスファターゼ(AP)酵素標識に付着されたE2(AP-E2)を含む第2溶液と共に入れる。E2に対するポリクローナル抗体(anti-E2)をマイクロウエルに添加する。これは予め、anti-E2を不可逆的にマイクロウエル表面に結合させる別の抗体で被覆されている。固定された抗体分子の数に対し、過剰のAP-E2を添加する。E2およびAP-E2の両方の競合的結合が起こり、AP-E2の固定量は、混合物中のE2の量と反比例する。結合時間後、残留試料および試薬を洗浄して除去すると、マイクロウエル中には固定されたAP-E2およびE2抗体複合体のみが残る。基質溶液を添加し、酵素活性測定により、固定されたAP-E2量を決定する。着色生成物を生成する基質とAPとの間の反応をモニタする。市販のキットは通常、基質としてp-ニトロフェニルホスフェートを、生成物としてp-ニトロフェノールを使用する。
【0144】
酵素活性を定量するために、生成した黄色を、連続して(吸光度対時間曲線が得られる)または一定(例えば、20分)インキュベーション時間後に405nmでの吸光度として測定する。モニタした「信号」は吸光度対時間曲線の勾配または一定時間モードで測定した吸光度の値である。信号はAP-E2のみを含むブランクで最大であり、試料中のE2レベルの増加に伴い減少する。ブランク溶液の信号に対する任意の試料の信号は、AP-E2の相対結合の測定値であり、しばしば、結合した割合またはパーセンテージとして表される。標準溶液に対する結合割合対E2濃度のプロットはアッセイ法に対する検量線を提供し、これを使用して、未知の試料中の濃度が決定される。
【0145】
そのようなイムノアッセイ法において使用される検出機器は、通常「ベンチトップ」マイクロタイタプレートリーダーである。これは精密で高価な(〜$30,000)機器であり、動作させるには幾人かの熟練者が必要であり、維持費が嵩む。また、「マイクロプレート」付属品を備えた従来の分光計を使用することができる。他のイムノアッセイ法はより大きな容器(例えば、5mL試験管構造)内で実施され、検出はベンチトップまたは携帯分光計で実施されるが、これらは、より多くの試料体積を使用し、1試料につきより多くの試薬を使用し、このため、より高いコストで動作する。携帯用またはフィールドバージョンは通常、精度および検出限界が低い。他の携帯用イムノアッセイは視覚的読み出しによる「テストストリップ」を使用するが、これらは通常、定量的な結果を提供することができず、検出限界がよくない。
【0146】
ここで、酵素活性を検出するための光学プローブを使用した標準酵素イムノアッセイ法に対する別の検出スキームについて説明する。これは、上記競合的結合スキームおよび全ての他の酵素イムノアッセイスキーム、例えば「サンドイッチ」アッセイ法、「イムノプローブ」および免疫標識システムにおいて使用することができる。
【0147】
我々のアプローチでは、我々は生成物の検出のために、ポリマ分配要素を有する光学プローブ(上記実施例1および10を参照のこと)を使用する。AP活性をモニタするために、蛍光化合物に結合させたリン酸部分を有する基質を使用する。この場合、生成蛍光化合物は、光学プローブにより検出されるものである。このアプローチを実証するために、我々は、1-ピレンホスフェート(PP)を合成した。これは、APと反応すると、1-ヒドロキシピレン(HOP)(光学プローブの分配要素により効率よく検出される)およびリン酸イオンを生成する。
【0148】
我々のアッセイ法では、光学プローブを、結合AP(すなわち、AP-E2)およびPP基質を含むマイクロウエル中に挿入する。PPおよびAPとの反応によりHOPが生成するので、HOPをプローブにより検出する。従来のアッセイ法のように、HOPは連続して(プローブはPP前に、またはPPと共に挿入される)、または「終点」モード(PPのHOPへの変換が一定反応時間で終了し、その後プローブを挿入する)で検出することができる。どちらの場合の信号も蛍光対時間曲線の勾配であり、従来のイムノアッセイ法に対し上述したアプローチと類似のアプローチを使用して、較正プロットが作成される。
【0149】
実験
薬品および試薬
Assay Designs’s Correlate-EIA 17-β-Estradiolキット(カタログNo.901〜008)をAssay Designs Inc.(Ann Arbor、MI)から購入した。トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン(tris)およびMgCl2・6H2OをSigma-Aldrich(Mississauga、Ontario、Canada)から入手した。MgCl2 1.0mMを有する0.1M Tris緩衝液pH9を毎日新たに調製した。1-ピレンホスフェートを我々の研究所で合成した。基質ストック4.97e-4Mを、使用直前に、MgCl2 1.0mMを有するpH9の0.1M Tris-HCl緩衝液中で調製した。2M硫酸(Fisher Scientific、Ottawa、Ontario、Canada)を停止液として使用した。
【0150】
計装
75ワットキセノンarcランプおよび光電子増倍検出器を備えた分光計(Sciencetech Inc.、London、Ontario、Canada)を用いて蛍光測定を行った。励起および発光スリットを全ての測定のために5nm帯域通過に設定した。励起波長は345nmであり、発光波長は385nmであった。ポリマー分配要素を備えた光学プローブ(実施例1および19を参照のこと)を、生成物の検出のために光学プローブ結合システムと共に使用した(例えば、図3Aを参照のこと)。
【0151】
手順
製造者が推奨する手順に従い、イムノアッセイ法を実施した。反応を抗体でコートしたマイクロウエル中で実施した。全てのアッセイ法を室温(24±2℃)で実施した。全ての試薬は、開封前に少なくとも30分間室温にした。100μlのアッセイ用緩衝液をBoマイクロウエルにピペットでとり、#1〜#6の標準100μlを個々のウエルに添加した。その後、50μlの複合体および50μlの抗体を、「終点」モードイムノアッセイにおいて各ウエルに添加した。動力学モードイムノアッセイ法では、20μlの複合体および20μlの抗体を添加し、アッセイ法用緩衝液もまた各ウエルに添加し、60μlとした。プレートをプレートシーラーで被覆し、2時間、〜500rpmで軌道撹拌しながらインキュベートした。インキュベーション後、プレートを300μl/ウエル洗浄溶液で4度洗浄した。
【0152】
未反応試薬を洗い流した後、250μlの緩衝PP溶液をウエルに添加した。連続イムノアッセイにおいて、光学プローブをPP溶液前、またはPP溶液と共に挿入した。終点イムノアッセイでは、室温で30分インキュベートした後、PP変換反応を2M H2SO4 50μlで停止させ、その後、光学プローブを溶液中に挿入した。どちらの場合も、信頼できる勾配が得られるまで、HOP取り込み曲線を記録した。各アッセイ後、50/50(v/v)エタノール/水溶液または1M NaOH溶液で、HOPを光学プローブのポリマ分配要素から一掃した。
【0153】
結果および考察
パラメータKMおよびVmaxの決定
PPはこの酵素の基質として以前報告されていないので、AP活性の決定のためのミカエリス-メンテン動力学的パラメータを決定した。基質濃度の関数としての基質変換速度を、1組の光学プローブ信号対時間曲線を作成することにより決定した。速度を基質濃度の関数としてプロットし(図20を参照のこと)、非線形曲線フィッティングにより動力学的パラメータVmax=9×10-3moles/sおよびKM=2.45×10-5Mが得られた。理想的には、約10×KMのアッセイ法の作用基質濃度をアッセイ法で使用し、感度および勾配再現性を最大とする。酵素活性のPP阻害は2×10-4Mレベルで示されるので、我々は、PPを使用する別のアッセイ法には、5×KM(1.25×10-4M)の信頼できる最大濃度を使用することを決めた。
【0154】
光学プローブを用いたイムノアッセイ法
終点モードでpH9の緩衝液に溶解した1.25×10-4Mの基質溶液を用いてイムノアッセイ法を実施した。停止時間溶液に浸漬させた後の光学プローブ応答を得た。予測されるように、E2濃度がより大きな試料では、より低い結合E2-AP量が得られ、このため光学プローブ応答がより低かった。相対応答を使用して%結合E2-APを計算した。%結合対E2濃度のプロットは、本質的にアッセイ法のための検量線であり、図21に示す。
【0155】
同じイムノアッセイパラメータを動力学的モードで使用し、光学プローブ信号対時間のプロットを作成した。このデータは実施例19において記述されているように光学プローブを用いて獲得し、これを使用して図22に示した%結合曲線を作成した。
【0156】
結論
これらの結果から、酵素活性を検出するために光学プローブを使用するこの新規酵素イムノアッセイ法では、従来の酵素イムノアッセイ法に匹敵する結果が得られるが、高価な検出装置は必要ないことが示される。
【0157】
等価物
当業者であれば、上記態様の変形物を認識し、またはルーチン実験により確認することができるであろう。そのような変形物は本発明の範囲内にあり、添付の請求の範囲内にある。
【0158】
参考文献
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、試料、例えば水および食品中の生物汚染物質に関連する酵素などの生体分子を、酵素基質および生成物の分配差(differential partitioning)により検出するための方法および装置に関する。特に、本発明は酵素活性を検出するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
酵素活性に関連する生体分子を検出する能力は、水および食品の生物学的汚染に対する試験などの分野で使用される。水の生物学的汚染(例えば、細菌)を検出することができることが特に興味深い。通常、大腸菌(Escherichia coli、E.coliまたはEC)および大腸菌群(total coliform、TC)などの細菌の検出法は、標的生物の増殖を促進するように設計されたブロス内での指標酵素活性の検出に基づく。許容される指標酵素は、ECおよびTCに対し、それぞれ、β-グルクロニダーゼ(β-glu)およびβ-ガラクトシダーゼ(β-gal)である。これらの酵素を使用する方法は、酵素活性を測定するための酵素と色素生産性または蛍光発生化合物との反応に依存する(再考のため、引用文献1および2を参照のこと)。β-gluまたはβ-galの場合、染料化合物のグルクロニドまたはガラクトシド複合体(conjugate)を試料ブロスに基質として添加し、標的酵素が存在する場合、複合体は遊離染料分子に変換される。酵素に依存する変換は、複合体と比較した場合の遊離染料分子の色または蛍光変化により検出される。いくつかの試験では、溶液中で検出される可溶性生成物を使用し、この場合大腸菌細胞もまた通常溶液中に懸濁している。他の試験では、フィルタ、膜、またはゲル表面の大腸菌細胞を使用し、支持体上に吸着する不溶性染料生成物と共に、標的生物のコロニー周辺で着色または蛍光スポットを形成する。いくつかの支持フォーマットは複数の染料基質を使用し、生物の存在により、様々な色を発する。
【0003】
しかしながら、上記アプローチは、エラー源、例えば、ブロスの適切性および全ての標的大腸菌型に対するインキュベーション条件、ならびに指標酵素活性に寄与することがある非標的生物の存在を受けやすい。それにも関わらず、確立された方法の信頼性は十分高く、肉製品から飲料水に及ぶ試料の評価に対しこれらの方法は広く許容されている。
【0004】
さらに、そのような基質のルーチンまたは市販の使用では、検出は通常ヒトの目で視覚的に実施され、性能にかなりの制限がある。基質が視認できる生成物に変換される前に、多くの大腸菌細胞が存在しなければならない。このため、最初の数の少ない細胞を検出するにはかなりのインキュベーションおよび増殖が必要となり、標準100mLの試料を24時間インキュベートすると、最初の試料内の1つの大腸菌細胞の検出限界が得られる。いくつかの場合、より迅速な検出が報告されているが、通常、より高い検出限界が許容されるのみである(例えば、100mL試料中100〜300の細胞(4、5、6))。また、視覚的な検出は定量的ではなく、これらの試験は通常「有無」の様式で使用され、大腸菌細胞の実際の数は決定されない。後者の例外は、いくつかのプレーティング法であり、この場合、コロニーの数が計数され、そのため、試料中の細胞数が定量的に決定される(3)。しかしながら、これは非常に手間および時間がかかるプロセスであり、この場合でも、長いインキュベーションが必要であり、ダイナミックレンジが限定される。
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの局面によれば、試料中の少なくとも1つの酵素活性と関連する生体分子を検出するための方法であって、少なくとも1つの酵素を少なくとも1つの基質と、酵素が基質と反応することができる条件下で、混合する段階;生体分子をその中に分配させるための分配要素を提供する段階;および、分配要素中の生体分子の蛍光を検出する段階;を含み、蛍光は酵素活性を示す、方法が提供される。
【0006】
1つの態様では、分配要素は、光学プローブを含む。別の態様では、分配要素はポリマ膜、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。好ましい態様では、酵素が基質と反応することができる条件は水性条件を含む。
【0007】
1つの態様では、生体分子は基質であり、蛍光検出段階は、蛍光の量の変化を検出する段階を含む。好ましい態様では、生体分子は酵素-基質反応の生成物である。
【0008】
1つの態様では、酵素活性は微生物と関連する。好ましい態様では、微生物は生物汚染物質である。別の態様では、少なくとも1つの酵素が、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される。好ましい態様では、微生物は大腸菌および総大腸菌群から選択される。様々な態様では、少なくとも1つの基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択され、酵素活性は、水、生物試料、食品および土壌から選択される試料中で検出される。
【0009】
1つの態様では、酵素および基質は、分配要素を含むカートリッジ内で混合される。
【0010】
本発明の第2の局面によれば、試料中の生物汚染物質を検出するための方法であって、試料を少なくとも1つの基質と、生物汚染物質と関連する酵素が基質と反応することができる条件下で、混合する段階;および酵素-基質反応の生成物の蛍光を検出する段階を含み、蛍光は試料中の生物汚染物質を示す、方法が提供される。
【0011】
様々な態様では、試料は、水、生物試料、食品および土壌から選択される。好ましい態様では、酵素-基質反応の生成物の蛍光は生成物を光学プローブ中に分配させることにより検出される。
【0012】
1つの態様では、酵素が基質と反応することができる水性条件を含む。別の態様では、酵素はβ-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼのうちの少なくとも1つである。さらに別の態様では、微生物は大腸菌および総大腸菌群から選択される。さらに別の態様では、少なくとも1つの基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、およびピレン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される。
【0013】
本発明の第3の局面によれば、分子の蛍光を検出するための光学プローブであって、光導波管;および光導波管の一端上に配置された分配要素を備え、蛍光分子は、選択的に分配要素中に分配され、そのため、蛍光は導波管内に結合される、光学プローブが提供される。
【0014】
1つの態様では、蛍光分子は酵素基質および酵素-基質反応の生成物から選択される。別の態様では、分配要素はポリマ膜である、好ましい態様では、ポリマ膜はポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。別の態様では、光学プローブはさらに、蛍光を測定するための分光計を含む。
【0015】
本発明の第4の局面では、分子の蛍光を検出するための装置であって、上記のような光学プローブ;励起光源;および分子の蛍光を測定するための分光計を備え、蛍光が分子を示す、装置が提供される。
【0016】
好ましい態様では、蛍光分子は、酵素基質および酵素−基質反応生成物から選択される。1つの態様では、酵素は微生物と関連する。様々な態様では、酵素は、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される。別の態様では、微生物は大腸菌および総大腸菌群から選択される。様々な態様では、基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、およびピレン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される。
【0017】
本発明の別の局面によれば、試料中の生物汚染物質を検出するための自動化システムであって、試料を少なくとも1つの基質と、微生物と関連する酵素が基質と反応することができる条件下でインキュベートするための試料インキュベータ;酵素-基質反応生成物の蛍光を検出するための上記装置;およびシステムの動作を制御し、蛍光の検出に関連するデータを保存および出力するための制御ユニット;を備え、検出された蛍光は試料中の生物汚染物質を示す、システムが提供される。
【0018】
1つの態様では、システムはさらに、試料の生物汚染物質に関連するデータを中継するための通信ユニットを備える。様々な態様では、試料は、水、生物試料、食品および土壌から選択される。好ましい態様では、酵素が基質と反応することができる条件は水性条件を含む。別の態様では、酵素は、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択され、微生物は大腸菌および総大腸菌群から選択される。様々な態様では、少なくとも1つの基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、およびピレン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される。
【0019】
本発明の別の局面によれば、試料中の生物汚染物質を検出するためのキットであって、上記装置;生物汚染物質と関連する酵素に対する基質;ならびに試料および基質をインキュベートするためのインキュベータ;を備え、試料中の生物汚染物質を示す、キットが提供される。
【0020】
様々な態様では、試料は、水、食品、生物試料および土壌から選択される。好ましい態様では、生物汚染物質は大腸菌および総大腸菌群から選択される少なくとも1つの微生物である。
【0021】
1つの態様では、酵素はβ-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される少なくとも1つの酵素である。別の態様では、基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、およびピレン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される少なくとも1つの基質である。
【0022】
本発明の別の局面によれば、分子の蛍光を検出するための光学プローブであって、光導波管;および光導波管の一端上に配置された分配要素を備え、分子は選択的に分配要素中に分配され、分子の蛍光は導波管内に結合される、光学プローブが提供される。
【0023】
1つの態様では、蛍光分子は、酵素基質および酵素-基質反応生成物から選択される。別の態様では、分配要素はポリマ膜である。好ましい態様では、ポリマ膜はポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む。別の態様では、光導波管は光ファイバである。
【0024】
本発明の別の局面では、分子の存在を検出するための装置であって、上記光学プローブ;励起光源;および分子の蛍光を検出するための検出器;を備え、検出された蛍光は分子の存在を示す、装置が提供される。
【0025】
1つの態様では、蛍光分子は、酵素基質および酵素-基質反応生成物から選択される。別の態様では、酵素は微生物と関連する。さらに別の態様では、酵素はβ-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される。
【0026】
1つの態様では、微生物は大腸菌および総大腸菌群から選択される。別の態様では、基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される
【0027】
本発明の別の局面によれば、試料中の少なくとも1つの酵素活性と関連する生体分子を検出するためのシステムであって、試料および少なくとも1つの基質とをインキュベートし、酵素を基質と反応させ、生体分子を生成させるための容器;生体分子を分配させるための分配要素;分配要素に分配された生体分子に照射する励起光源;分配要素に分配された生体分子の蛍光を検出する検出器;および制御ユニット;を備え、検出された蛍光は試料中の酵素活性を示す、システムが提供される。
【0028】
1つの態様では、制御ユニットは、システムの動作制御、蛍光検出に関連するデータの保存、および蛍光検出に関連するデータの出力から選択される少なくとも1つの機能を実施する。別の態様では、容器は試料および基質を含むための取り外し可能なカートリッジを備える。
【0029】
別の態様では、分配要素は取り外し可能なカートリッジ内に配置される。さらに別の態様では、システムは蛍光検出に関連するデータを通信ネットワークに中継する通信ユニットを備える。別の態様では、酵素は生体汚染物質と関連する。さらに別の態様では、試料は水、生物試料、食品および土壌から選択される。別の態様では、酵素はβ-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択され、生物汚染物質は大腸菌および総大腸菌群から選択される。様々な態様では、少なくとも1つの基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される。別の態様では、システムはさらに、システムの分配要素および光学部品を較正し、または蛍光検出をモニタする、またはそれらの両方を実施する手段を備える。
【0030】
1つの態様では、分配要素を較正し、蛍光検出をモニタするための手段は、分配要素中に分配し、生体分子とは異なる波長で蛍光を発するフルオロフォアを含み、フルオロフォアの蛍光は、検出器により検出され、制御ユニットは検出された蛍光を用いシステムの分配要素および光学部品を較正し、またはシステムの蛍光検出をモニタする。
【0031】
本発明の別の局面によれば、試料中の生物汚染物質を検出するためのキットであって、上記装置;および生物汚染物質と関連する酵素に対する基質を含み、キットは試料中の生物汚染物質の存在または量を示す、キットが提供される。
【0032】
別の態様では、キットは、試料および基質をインキュベートするための容器をさらに備える。1つの態様では、試料は水、食品、生物試料、よび土壌から選択される。別の態様では、生物汚染物質は大腸菌および総大腸菌群から選択される少なくとも1つの微生物である。別の態様では、酵素はβ-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される少なくとも1つの酵素である。別の態様では、基質は、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される少なくとも1つの基質である。
【0033】
本発明の別の局面によれば、標的種を検出するための方法であって、標的種に特異的な抗体を試料に、抗体が標的種に結合することができる条件下で、混合する段階;蛍光分子の生成により、結合した抗体の定量が可能な酵素を提供する段階;蛍光分子を分配させるための分配要素を提供する段階;および分配要素中で蛍光分子の蛍光を検出する段階;を含み、検出された蛍光は試料中の酵素活性を示す、方法が提供される。
【0034】
1つの態様では、抗体は酵素に結合する。別の態様では、酵素は、標的種に特異的な抗体に特異的な第2抗体に結合し、複合体は標的種に特異的な抗体および試料の組み合わせと混合される。別の態様では、蛍光は酵素-基質反応により連続して検出される。別の態様では、蛍光は、酵素-基質反応中の設定時間後に検出される。さらに別の態様では、標的種は生物または化学汚染物質である。別の態様では、標的種は、細菌、原虫およびウイルスからなる群から選択される。
【0035】
本発明について、例として、添付の図面を参照して、以下、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明による酵素活性の光学プローブ検出のための概略図である。
【図2】(A)本発明による光学プローブの1つの態様の写真であり、(B)本発明による光学プローブの別の態様の概略図である。
【図3A】(A)本発明の1つの態様による光学プローブおよび関連する光学部品を示した図である。
【図3B】(B)本発明による酵素活性をモニタするための自動化システムの概略図である。
【図3C】(C)本発明の自動サンプラーユニットにおいて使用するための試験カートリッジの概略図である。
【図3D】(D)図3Cで示した1または複数の試験カートリッジを保持するためのマガジンの概略図である。
【図3E】(E)本発明による自動サンプラーユニットの概略図であり、点線は光学経路を示す。
【図4】酵素活性を検出する様に構成された光学プローブおよび装置の概略図である。
【図5】本発明の1つの態様によるPDMS光学プローブ内へのヒドロキシピレンの分配速度を示したプロットである。
【図6】ヒドロキシピレンに対する光学プローブ検量線である。
【図7】酵素存在下、および不存在下での本発明の光学プローブにより検出された蛍光を比較するプロットである。
【図8】酵素グルクロニダーゼに対する、基質濃度の関数としての、本発明の光学プローブにより検出される標的分子形成速度のプロットである。
【図9】本発明の1つの態様による光学プローブにより検出される蛍光に基づくグルクロニダーゼ活性の検量線である。
【図10】様々な初期濃度の大腸菌細胞に対する大腸菌の光学プローブ検出を示すプロットである。
【図11A】(A〜D)基質および本発明による光学プローブを使用した、大腸菌または総大腸菌群の検出時間に対する動力学的モデルを説明するプロットであり、(A)ピレン-β-D-グルクロニド基質を用いた場合の様々な初期細胞数での大腸菌検出時間を示した図である。
【図11B】(A〜D)基質および本発明による光学プローブを使用した、大腸菌または総大腸菌群の検出時間に対する動力学的モデルを説明するプロットであり、(B)アントラセン-β-D-グルクロニド基質を用いた場合の様々な初期細胞数での大腸菌検出時間を示した図である。
【図11C】(A〜D)基質および本発明による光学プローブを使用した、大腸菌または総大腸菌群の検出時間に対する動力学的モデルを説明するプロットであり、(C)ピレン-β-D-ガラクトピラノシド基質を用いた場合の様々な細胞数での総大腸菌群検出時間を示した図である。
【図11D】(A〜D)基質および本発明による光学プローブを使用した、大腸菌または総大腸菌群の検出時間に対する動力学的モデルを説明するプロットであり、(D)アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド基質を用いた場合の様々な細胞数での総大腸菌群検出時間を示した図である。
【図12】(A)本発明による光学プローブを用いた、大腸菌のATCC株に対する細胞数の関数としての検出時間変化を示す図であり、(B)本発明による光学プローブを用いた、大腸菌の野生株に対する細胞数の関数としての検出時間変化を示す図である。
【図13】(A)何百万もの細胞を含む試料中の大腸菌の検出に対する、時間の関数としての光学プローブ信号強度を示したプロットであり、(B)何千もの細胞を含む試料中の大腸菌の検出に対する、時間の関数としての光学プローブ信号強度を示したプロットである。
【図14】それぞれ、グルクロニダーゼおよびガラクトシダーゼ活性の検出を用いた、大腸菌および総大腸菌群に対する検出時間に対する検量線を示す図である。
【図15】2-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシドを合成するためのスキームを示した図である。
【図16】1-ピレニル-β-D-ガラクトピラノシドを合成するためのスキームを示した図である。
【図17】2-ヒドロキシアントラセンおよび1-ヒドロキシピレンのグリコシル化に対する別のスキームを示した図である。
【図18】アントラセングルクロニドを調製するためのスキームを示した図である。
【図19】アントラセンのグルクロニドを調製するための別のスキームを示した図である。
【図20】本発明による光学プローブを用いた17-β-エストラジオールの検出のためのイムノアッセイに対する基質変換速度(v)対初期1-ピレンホスフェート(PP)基質濃度([S])を示すプロットであり、vに対する値は、様々な初期PP基質濃度に対する、1000秒後の、光学プローブ信号対時間のプロットの勾配から得られ、2×10-4Mでのデータポイントは阻害を示し、更なる解析から除外し、最もよく適合するミカエリス-メンテン動力学的パラメータを用いて曲線を描いた(実施例20を参照のこと)。
【図21】終点モードでの17-β-エストラジオール定量に対するイムノアッセイ結合曲線であり、BおよびB0値は、様々な初期PP基質濃度に対する、2400秒後の、光学プローブ信号対時間のプロットの勾配から決定され、100pg/mLでのデータポイント上の誤差バーは2度の実行から推定した。
【図22】動力学的モードでのE17-β-エストラジオール定量に対するイムノアッセイ結合曲線であり、BおよびB0値は、様々な初期PP基質濃度に対する、5000〜6000秒後の、光学プローブ信号対時間のプロットの勾配から決定した。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明の広範囲にわたる局面によれば、酵素活性に関連する生体分子の信頼性のある迅速検出のための方法および装置が提供される。本発明は、生物汚染物質、例えば微生物の酵素活性に関連する生体分子の検出に適用することができる。そのため、本発明の1つの実際の適用は、水および食品などの試料中の生物汚染物質の検出に関連し、この場合、汚染された水および食品の消費による汚染の蔓延および個人への感染を阻止するために、迅速な検出が重要である。本発明の別の実際の適用は、酵素レベルを決定するための、酵素免疫測定法(ELISA)などのアッセイ法における使用である。
【0038】
本明細書で使用されるように、「生体分子」という用語は、分子が自然で見出されるかどうかに関わらず、酵素反応の基質として機能することができる任意の分子、または酵素反応により生成させることができる任意の分子を表すことを意図する。むしろ、分子は「生物学的」であるとされる。(a)効果的に、酵素に結合する、または酵素により代謝される、または(b)酵素触媒反応により効果的に生成する、のいずれかであるからである。このように、合成基質およびその生成物は、この開示の目的では「生物学的」である。
【0039】
特に、本発明は、信頼性のある、迅速な酵素活性の検出を提供する。本発明によれば、標的酵素活性は、酵素に、フルオロフォアを含む基質を提供し、非常に低い生成物濃度の酵素-基質反応蛍光生成物の蛍光を選択的に検出することにより、検出される。また、標的酵素活性は、酵素に、フルオロフォアを含む基質を提供し、基質の蛍光を選択的に検出することにより検出される。この速度は酵素-基質反応が進むにつれ減少する。蛍光生成物または基質の選択的検出は、分配要素を有する光学プローブ、または単に分配要素を提供することにより達成される。この場合、生成物または基質は分配要素内に分配される。分配要素を有する光学プローブ、または分配要素は、分配要素に分配された生成物または基質の蛍光を検出するための適した光学ハードウエアに光学的に結合される。
【0040】
非常に低い生成物濃度での酵素-基質相互作用の生成物または基質濃度のわずかな変化を検出することができると、迅速な検出が得られる。ほんの少量の生成物を生成させる、または少量の基質を除去するのに必要とされる時間は短いからである。そのため、微生物の存在が検出される態様では、検出に必要とされるのは、ほんの小数の微生物であり、このためインキュベーション時間は短くなる。本発明について主に酵素-基質生成物の検出を参照して説明するが、本発明は基質の検出に同様に適用できることは理解されるであろう。
【0041】
本発明による酵素活性の検出は、標的酵素が活性である任意の培地(medium)中で実施することができる。この培地は対象分子、例えば酵素-基質反応生成物の分配要素中への分配が可能なように十分流動性がある。適した培地は水性であり、流体(例えば、液体)または半固体(例えば、生物組織、ゲル)であってもよい。一般に、本発明を使用して試料、例えば、水、食品、組織および体液などの生物試料、ならびに土壌中の標的酵素を検出する。いくつかの試料、例えば、一定の食品、生物および土壌試料の分析では、試料を適した培地と混合させる必要がある。
【0042】
本明細書で使用されるように、「検出(detectionまたはdetectioning)」および「モニタリング」は交換可能であり、オン-オフに基づき(例えば、離散試料)、または連続して(例えば、定期的なまたはランダムな間隔での連続サンプリング)、酵素活性および/または微生物の存在を検出することを意味するものである。
【0043】
迅速検出のための酵素活性検出スキームを最適化するために、下記3つの基準を満たすべきである:
1)基質は高い速度定数で標的酵素と反応すべきである;
2)生成物は高蛍光性で、微量でも容易に検出される;
3)基質と生成物の間の蛍光の差は大きくなければならず、そのため溶液からの蛍光信号は酵素変換により変化する。
これらの基準のため、従来の検出スキームの最適化にはかなりの制約がかかる。例えば、蛍光変化が必要なので、酵素による変換速度または生成物の検出限界の観点から所定の基質は最適でない場合もある。酵素に対しより良好な基質であり、または非常に蛍光性の生成物を有する蛍光発生性の候補は、基質自体が蛍光を発する場合、変換の検出を阻害し、適切でないかもしれない。本発明はそのような制約を克服する。
【0044】
フルオロフォアに対し報告されている最も低い検出限界の多くには、多環式芳香族炭化水素、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、または有機金属化合物、例えばキレートランタニドが関係する。そのようなフルオロフォアは、従来の検出スキームでは、β-グルクロニダーゼ(glu)またはβ-ガラクトシダーゼ(gal)活性を検出するための基質において使用されていない。生成物に対しかなり異なる蛍光スペクトルまたは強度を有する対応する糖類(グルクロニドおよびガラクトシド)との誘導体は知られていないからである。代わりに、現在使用されているフルオロフォアはほとんど全てのクマリン誘導体、例えばウンベリフェロン(umbelliferone)であり、これらはグルクロニドまたはガラクトシドとの複合体として許容される蛍光強度を有するが蛍光はずっと低い。対照的に、本発明は基質中でずっと広範囲のフルオロフォアを使用することができる。
【0045】
広範囲にわたる基質が報告されており、それらの多くが市販の検出用途で使用されている。溶液中の変換生成物の検出には、蛍光発生染料が好ましい。例えば、ウンベリフェロンおよびウンベリフェロン誘導体(例えば、4-メチルウンベリフェロン、トリフルオロメチルウンベリフェロン(7))の複合体は、生成物と基質との間の蛍光の対比が良好であり、複合体のβ-gluまたはβ-gal酵素のいずれかとの反応に対する速度が迅速であるため、好ましい。他の基質、例えばジオキセタン(8)もまた報告されている。溶解検出スキームでは色素生産性基質が使用されているが、膜またはゲル-担持細胞検出において使用するのが好ましい傾向がある。例としてはインドリル(9)およびインドキシル複合体(10)が挙げられる。
【0046】
本発明の1つの局面によれば、試料中の酵素活性に関連する生体分子を検出する方法が提供される。本明細書で使用されるように、「生体分子」という用語は、酵素基質または酵素-基質反応の任意の生成物を意味するものとする。方法は、標的酵素または標的酵素と関連する生物汚染物質と基質とを混合する段階、混合物に励起光(すなわち、基質および生成物のいずれかまたは両方において蛍光を発生させる波長の光)を照射する段階、および基質または酵素-基質反応の任意の生成物のいずれかの蛍光を選択的に検出する段階を含む。好ましくは、酵素-基質反応の蛍光生成物の蛍光が検出される。試料が実質的に液体または半固体(例えば、ゲル)でない場合、基質および試料は溶液中で混合することが好ましい。適した溶液としては、酵素活性を支持および/または促進することができる任意の溶液が挙げられる。細胞を使用する場合、適した溶液は、例えば、研究中の細胞の増殖を支持および促進するように選択される、適切な培地(すなわち、「ブロス」)としてもよい。細胞およびほとんど酵素に対し、そのような溶液は水性である。酵素-基質反応の生成物は、例えば、遊離蛍光(染料)分子とすることができ、その蛍光が検出される。
【0047】
本発明によれば、蛍光は、生成物と基質を区別する光学プローブにより検出され、そのため、生成物または基質の蛍光のみが検出される。特に、生成物または基質のいずれかの蛍光は、分配要素を単独で、または光学プローブと結合させて提供することにより検出される。分配要素により、生成物または基質のいずれかをその中に分配させることができる。蛍光(すなわち、光)を測定するための適した装置、例えば分光計またはフィルタ光度計に接続させると、分配要素/光学プローブは、蛍光強度に伴い予測通りに(例えば、線形に)変動する大きさを有し、生成物または基質濃度の関数である信号を発生させる。好ましい態様では、基質、生成物および分配要素の組み合わせが選択され、基質は検出されず、生成物が最低限の濃度で検出される。このように、生成物と基質の蛍光を区別することにより、上記第3の最適化基準が克服される。
【0048】
本発明は、任意の酵素活性の検出に適用することができ、ただし、(1)そのような標的酵素に対する基質はフルオロフォアと結合することができること、(2)標的酵素-基質反応により蛍光生成物が生成すること、および(3)蛍光生成物は本発明の分配要素/光学プローブにより選択的に検出できることを条件とすることは認識されるであろう。化学結合を開裂させる酵素では、基質は酵素に結合する部分を含まなければならず、酵素が開裂する結合を介して蛍光生成物に結合される。他の酵素反応、例えば、生成物を形成させるための基質の化学変換のみが存在するいくつかのペルオキシダーゼ反応では、適した基質は、分配要素中に分配される生成物を提供するものである。
【0049】
本発明を使用して1を超える酵素の存在を検出することができ、これは、同時に1を超える微生物の種または株に対応するかもしれない。この場合、考慮中の各酵素に対し適した基質の使用が必要である。各異なる酵素-基質反応の蛍光生成物が異なる波長で蛍光を発する場合、考慮中の各酵素の活性を検出することができる。また、各異なる酵素-基質反応の蛍光生成物が同じ波長で蛍光を発する場合、少なくとも1つの酵素活性を検出することができる。
【0050】
好ましい態様では、本発明が関する酵素は、β-グルクロニダーゼ(glu)またはβ-ガラクトシダーゼ(gal)である。そのような態様では、本発明は、水および食品などの試料中における、様々な株(例えば、ATCC25922:ATCC35150血清型O157:H7)、ならびにストックNo.413、E.coli B-型(カナダオンタリオ州キングストン、キングストンのQueen’s大学)および汚水分離ストックNos.KS1およびKS2(Kingston)(実施例6を参照のこと)を含む大腸菌、および他の微生物、例えば、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)(ATCC13047)、シトロバクター・フレウンデー(Citrobacter freundii)(ATCC8090)、クブシエラ・ニューモニア(Klebsiella pneumoniae)(ATCC 13883)、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)(ATCC27853)、および総大腸菌群の存在を検出するための方法を提供する。
【0051】
β-gluおよびβ-galに対する適した基質は、それぞれ、グルクロニドまたはガラクトシド部分を有する任意の基質であり、ここで、「グルクロニド」という用語は、それらの任意の塩および遊離酸を含むものとする。適した基質の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:
ピレン-β-D-グルクロニド(例えば、1-または2-ピレニル-β-D-グルクロニド);
アントラセン-β-D-グルクロニド(例えば、1-、2-、または9-アントラセニル-β-D-グルクロニド);
ピロメテン-β-D-グルクロニド(例えば、1-ヒドロキシメチル-3,5,7-トリメチルピロメタンジフルオロボレート-β-D-グルクロニド);
ピレン-β-D-ガラクトピラノシド(例えば、1-または2-ピレニル-β-D-ガラクトピラノシド);および
アントラセン-β-D-ガラクトピラノシド(例えば、1-、2-、または9-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド)。
【0052】
例えば、下記反応スキームで示されるように、β-glu活性は、ピレン-β-D-グルクロニド(pyr-glu)を用いて検出され、検出される生成物はヒドロキシピレン(HP)である:
【0053】
β-glu活性をアントラセン-β-D-グルクロニド(ant-glu)で検出する場合、下記反応スキームで示されるように、検出される生成物はヒドロキシアントラセンである。
【0054】
β-glu活性をピロロメテン-β-D-グルクロニドで検出する場合、下記反応スキームで示されるように、検出される生成物はヒドロキシピロメテンである。
【0055】
β-gal活性をピレン-β-D-ガラクトピラノシド(pyr-gal)で検出する場合、下記反応スキームで示されるように、検出される生成物はヒドロキシピレン(HP)である。
【0056】
実施例15〜19は、多くのこれらの基質およびそれらの中間体のための合成を提供する。
【0057】
本発明の第2の局面によれば、蛍光分子を選択的に検出するための光学プローブが提供される。特に、光学プローブは分子のプローブ中への分配を提供し、この場合、検出された蛍光は、主にプローブ中に分配された分子の蛍光である。分子のそのような分配は、光学プローブの端に分配要素を配置することにより達成される。分配要素により、対象分子のみがその中に分配される。
【0058】
例えば、蛍光発生基質および蛍光酵素-基質生成物を用いて酵素活性を検出するために、本発明は、基質または生成物分子のみが分配される分配要素を有する光学プローブを提供し、このため、基質または生成物のいずれかの蛍光が検出される。このように、光学プローブは基質および生成物のうちの1つのみからの蛍光を検出するので、基質および生成物の両方ともが蛍光性かどうかは重要ではない。基質の蛍光の消失速度、または生成物の蛍光の出現速度を測定することにより、酵素活性を測定することができる。好ましい態様では、生成物分子は分配要素に分配され、酵素活性は生成物の蛍光の出現速度を測定することにより決定される。上記のように、本発明による酵素活性の検出は、標的酵素が活性である任意の培地中で実施することができる。一般に、そのような培地は水性であり、流体(例えば、液体)であっても半固体(例えば、生物組織、ゲル)であってもよい。
【0059】
図1に示される、1つの態様によれば、本発明の光学プローブ2は、一端に配置された分配要素3を有する光導波管、例えば光ファイバを備える。励起光源4および分光計6または光を検出するための他の適した装置を、カプラ7を介して光ファイバの反対端に結合させ、光が光源4から分配要素3まで進み、分配要素により受理された光は光学検出器6(例えば、分光計またはCCD装置)まで進むようにする。光源4の波長は対象の蛍光性標的分子の励起に適するように選択され、通常生体分子に対しては紫外線(UV)領域である。しかしながら、本発明は他の波長および標的分子に適用できる。適した光源の例は、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード、およびレーザである。別の態様では、励起光源4はプローブと別々であり、そのためカプラ7は必要ない。標的分子に特異的な励起波長の選択および/または標的分子に特異的な発光波長のモニタリングにより、検出の特異性および選択性が改善される。
【0060】
図1の実施例では、プローブ2が、基質分子10および標的酵素12、または酵素を有する細胞(例えば、微生物)12を含む試料溶液8中に浸漬される。細胞を使用する場合、膜18は任意に、細胞接着のために提供されていてもよい。基質分子10は標的酵素12により生成物分子14および蛍光性生成物分子(すなわち、標的分子)16に変換される。分配要素3は基質分子または蛍光性生成物分子のいずれか、好ましくは後者をその中に分配させる。このように、生成物分子16は分配要素3中に分配され、そこで、光源4からの励起光が照射される。標的分子16から発光される蛍光は分光計6または他の適した装置により検出される。
【0061】
1つの態様によれば、光学プローブの分配要素は、光ファイバの一端に配置されたポリマ膜を含み、そのため、光ファイバのその端の光学開口(optical aperture)が被覆される。図2Aは直径600μmの光ファイバ製のそのような光ファイバプローブの顕微鏡写真である(実施例1を参照のこと)。ポリマの物理特性(例えば、粘度および硬度(shore A))を決定するポリマ材料の特性、例えば分子量および架橋度は、対象の蛍光性分子を選択的に分配させるように選択される。
【0062】
図2Bで示される好ましい態様では、光学プローブ100は光ファイバの一端に取り付けられた球状分配要素104を備える。光ファイバはコア102a、コーティング102bおよびジャケット102cを有する。光ファイバは、関連機器に容易に接続されるように、もう一方の端で適したコネクタ、例えば、SMAコネクタ(図示せず)により終端処理される。球状分配要素は、異なるポリマ調合物を用いて様々なサイズ、様々な剛性で調製することができる。一般に、約0.2mg〜約0.3mgの球状分配要素を使用することができる。好ましくは、球状分配要素の直径は実質的には、使用した光ファイバの直径と一致する。発明者らは、600μmの光ファイバでは、実質的に等しい直径を有する球状分配要素を取り付けると、良好な性能が得られることを見出した。半球分配要素を光ファイバにとりつけることにより、性能をさらに改善させることができる。球の直径を損なうことなく、分配要素の体積を減少させるからである。
【0063】
図2Bに示されるように、例えば、ステンレス鋼製の剛性チューブ106を使用して、ファイバコア12aおよび球状ファイバジョイント108を保護することができる。ステンレス鋼はその強度および腐食耐性のため、剛性チューブ106のための好ましい材料である。球状ファイバジョイント108は分配要素104と実質的に同じ特性、例えば、屈折率を有するポリマ材料で作製され、球104を光ファイバおよび剛性チューブに取り付けるのに使用される。ポリマジョイントは剛性チューブの端を塞ぎ、液体が、チューブと、ファイバコーティングおよびジャケットの間に入らないようにする。そのような光ファイバプローブの作製方法を下記、実施例19において示す。
【0064】
例えば、上記pyr-glu基質を用いた水溶液中のヒドロキシピレン生成物分子の検出に適した態様では、分配要素は、透明な疎水性ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマーから構成される。ヒドロキシピレンは水溶液からPDMS中に分配され、一方、pyr-glu基質はPDMS中に分配されない。このように、ヒドロキシピレンの蛍光は光学プローブにより検出される。PDMS膜中のヒドロキシピレンの出現速度は、試料溶液中の酵素濃度に対して直線性を有し、そのため、光学プローブからの信号対時間のモニタリングにより、酵素活性が測定される。
【0065】
異なる分子量および異なる架橋度を有する3つの適したPDMS材料の例はGE RTV118(General Elecrtic)、Sylguard186(Dow)、およびSylguard184(Dow)である。前駆体材料および硬化剤が提供されるポリマでは、前駆体材料の硬化剤に対する比率、硬化条件などの変数を変化させることができ、ポリマの物理特性が操作できる。他のポリマ、例えばGE RTV118はすでに混合して供給され、空気に曝露されると重合する。
【0066】
分配要素に適した他の材料の例としては、ゾルゲル、樹脂、ゲル、複合物、吸着剤、PDMS以外のポリマ、ポリウレタン、ポリアクリレート、分子鋳型膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
検出限界を最適化する(すなわち、試料中で最小酵素濃度で標的酵素活性を検出する、または試料中で最小濃度で標的分子蛍光を検出する)ためには、ファイバの光学開口における分配要素の体積を最大とするべきであり、一方応答時間を最小にするには、分配要素材料の断面を狭くすべきである。例えば、分配要素が膜である場合(例えば、図2A)、要素の断面は約400μm〜約800μm、好ましくは約500μm〜約700μmとするべきであり、厚さは約800μm未満、好ましくは約600μm未満とするべきである。所定の標的(すなわち、生成物または基質)分子を検出するために満足のいく性能を有する分配要素は、これらの特徴の間で妥協を示すであろう。ポリマ膜分配要素を円錐、球、または半球形状とすることにより性能をさらに増強させることができる。これにより、ポリマ膜中に分配されない標的分子の検出を阻害することによりプローブの選択性が増強され、試料からのバックグラウンド信号が制限される。
【0068】
検出時間を最小に抑えるための方策としては、例えば、増殖条件(例えば、温度、栄養培地)を最適化することにより細胞のインキュベーション時間を減少させること、分配要素/光学プローブによる信号の発生に必要な細胞数を減少させることが挙げられる。後者は、生成物用の励起光源および検出器、細胞による生成物への基質変換速度、および生成物用の分配要素の1または複数の適合性を最適化することにより達成できる。本発明をそのように最適化すると、1つの細胞の検出時間が3〜4倍、2〜4時間に、改善される(減少する)。
【0069】
蛍光性標的分子に関して詳細に説明してきたが、蛍光以外の光、例えば、バイオルミネセンスまたはケミルミネセンスを検出することにより、本発明を、酵素活性および微生物の存在の検出に適用することができるが、ただし、バイオルミネセンスまたはケミルミネセンス標的分子(基質または生成物)が光学プローブの分配要素中に分配できることを条件とする。
【0070】
本発明の1つの局面によれば、酵素活性を検出するための自動化システムが提供される。例えば、本発明による自動化システムを使用して、上記で詳細に記述したように、適した基質を使用すると、水、食品、または土壌試料中のグルクロニダーゼおよび/またはガラクトシダーゼ活性を検出し、大腸菌および総大腸菌群を検出することができる。自動化システムの1つの態様について、その概略図を図3Aおよび3Bに示す。システムは上記のような、分配要素を備えた光ファイバ2から作製される少なくとも1つの光学プローブ3、および関連光学部品、例えば適した光源4、分光計6または光を検出するための他の装置(例えば、電荷結合装置)、光ファイバ束7、コネクタ8、カプラ5、など、試料入口および廃棄出口を備える容器(試料インキュベータ)26、適したハードウエア(例えば、ポンプ、バルブなど、図示せず)、ならびに光学プローブおよび試料インキュベータに接続され、例えば、試料インキュベータへの基質の添加および試料流速を制御するための制御ユニット/コンピュータインタフェース22を備える。自動化システムはさらに、試料の温度、塩素濃度、pH、および濁度などの変数をモニタするための1または複数の追加のプローブ28を備えることができる。これらの変数は大腸菌および総大腸菌試験の時間および信号しきい値に影響することがあるからである。コンピュータインタフェース22はシステムの動作を制御し、対象となる酵素、このため微生物の有無に関連するデータを収集し、報告する。自動化システムのいくつかの用途では、例えば、水中の大腸菌および/または総大腸菌群の有無をモニタするために使用する場合、コンピュータインタフェースは、そのような微生物が検出された場合、水の流れを遮断するように構成することができる。
【0071】
図3Aに示されるように、システムは、光源からの励起光を光学プローブ/分配要素に送達し、光学プローブから光検出装置、例えば分光計または電荷結合装置(CCD)に蛍光を送達する光学パッケージ(optics package)を備える。1つの態様では、光学パッケージは二股ファイバ束である;すなわち、第1の光ファイバは第2および第3の光ファイバン端に一端で結合され;第2の光ファイバは光源と結合され、第3のファイバは光検出装置と結合される。3つのファイバの結合領域に、適合する屈折率流体が任意に提供されてもよく、散乱光が減少する。好ましくは、図3Aで示した部品は全て、光学プローブを除き、共通のシャシーまたはエンクロージャ内に備えられる。
【0072】
好ましい態様では、第1の光ファイバは600μmファイバ(例えば、AS600/660UVPI、FiberTech Optika、Kichener、Ontario、Canadaから入手可能)、ポリイミドコーティングおよびナイロンジャケットを備えた低OHファイバである。このファイバは、一端で適したコネクタ、例えばSMAアダプタにより終端処理され、光学プローブに接続される。第1のファイバの他端は第2および第3のファイバに結合される。第2および第3のファイバは第1のファイバと同じ直径であってもよいが、第2および第3のファイバのためにより小さな直径のファイバ(例えば、300または400μmコア)を使用すると、より良好な結合が得られる。特に、第2および第3のファイバ用に、400μmコア(FiberTech Optika AS400/440UVPI)、ポリイミドコーティングおよびナイロンジャケットを備える低OHファイバを使用すると、600μmの第1のファイバに結合した場合に非常に良好な性能が得られる。励起光、例えば、UV光の第2ファイバの自由端内への結合は、ファイバの端と光源の間にレンズを配置することにより増強される。1つの態様では、レンズは球面レンズであり、例えば、Melles Griot、Ottawa、Ontario、Canadaから入手可能なサファイアボールレンズである。第3ファイバの自由端は光検出装置に結合される。光検出装置がCCDである態様では、第3ファイバの自由端は、光源の波長の光がCCDに到達するのを阻止するロングパス光学フィルタを介してCCD上の1または複数の画素と整合される。
【0073】
微生物の有無を調べるための水をモニタするための自動化システムは、一家族住宅、学校、病院、市営の建物など、および特に井戸を備えたそのような住居および施設、ならびに市の上水配給ネットワークに据え付けることができる。後者では、自動化システムは水源(例えば、水処理プラント)に、ポンピングステーションに、および配給ネットワーク内の様々な分岐点で取り付けられ、各自動化システムは適した通信ハードウエア/ソフトウエア24(図3B)を用いて通信ネットワークに接続されることが予測される。そのような自動化システムは、汚染が許容されないレベルに到達した時、警告として、許容範囲と共に、様々な緊急レベル時に、および配給ネットワーク内で汚染が検出された場合、例えば、リアルタイム情報をオペレータに提供する。システムはまた、自動的に、影響を受けた分岐点で汚染された水の配給を遮断することもできるであろう。新規のまたは現存の水の配給システムへの据え付けを容易にするために、自動化システムは好ましくは、小型装置(例えば、発光ダイオード(LED)光源CCD分光計)を用いてコンパクトな構造で提供される。
【0074】
1つの態様では、システムは、大腸菌および総大腸菌群(これらに限定されない)を含む広範囲にわたる病原体に対する有無および細菌学的計数評価を送達することができる一体化された分配要素を備える試験カートリッジを使用する自動サンプラーユニットである。好ましくは、試験カートリッジは使い捨てカートリッジである。システムは上記原理に基づくが、光ファイバではなく、個々の試料が含有される一体分配要素を備えるカートリッジを使用する。分配要素は、光学プローブを用いて実施されるように、複数の試料と接触せず、このため、試料間での二次汚染の潜在的な原因が排除される。設計により、試験と試験の間に、光学プローブを洗浄する必要も排除される。好ましい態様では、システムは、連続光学経路完全性モニタリングおよび自己較正を提供する複数のフルオロフォアに基づく較正法を含む。システムは任意に、異なる病原体に対する複数の試験の実施を提供する。
【0075】
試験カートリッジは、特定の標的病原体、例えば大腸菌および総大腸菌群(これらに限定されない)に対する細菌学的試験を実施するのに必要な要素を組み入れる。図3Cに示されるように、試験カートリッジ200は、自動化システムにおいて簡単な構造により容易に操作することができる滅菌内部含む密閉ケーシング202を備える。分配要素204、および粉末または液体形態の試験培地はハウジング202内に含まれる。
【0076】
上述ように、試験培地は1または複数のグルクロニドまたはガラクトシド基質材料を含み、各基質材料は標的フルオロフォアを含む。試験培地はまた、水性環境に溶解し較正および光学信号経路完全性のモニタリングのためのベースライン光学信号を提供する第2のフルオロフォア(すなわち、較正フルオロフォア)、ならびに標的生物の増殖を支持するための増殖培地を含む。試験培地は任意に、水試料から遊離塩素を除去するためのチオ硫酸ナトリウム;非標的微生物の増殖を阻害するための抗生物質;および標的病原体の存在下で反応し、試料中の標的病原体の存在を視覚的に確認できるように色の変化を生成する化合物を含んでもよい。
【0077】
図3Cに示されるように、ケーシング202のホールまたはポート206は、膜または隔膜により被覆され、この膜により、ケーシング内の滅菌野を保存するように、例えば、針を使用して隔膜を通して試料を注入することにより、試料をカートリッジ内に導入することができる。ケーシング202上には、整合または指標付マーク208も配置され、これらは自動的に(例えば、光電子工学的に)感知することができ、自動化システムによるカートリッジの操作および配向が容易になり(例えば、試料を注入するためのポート106の正確な整合が容易になり)、カートリッジの識別が可能となり(例えば、その中に含まれる試験培地の型の識別が可能となり)、サンプリングユニットを様々な標的病原体に対する様々な試験の型に適合させることができる。カートリッジには任意にさらに、その1または複数の内面にフィン、チャネルまたはボス210を備えることができ、カートリッジを回転または撹拌させる際に試料の混合が容易になる。
【0078】
図3Dでは、複数の試験カートリッジ200を保持するためのマガジン220が図示されており、カートリッジを端に向かって偏らせるためにスプリング222などが備えられる。図3Eは本発明の自動サンプラー装置の1つの態様の概略図である。装置は、試験チャンバ内に1または複数の試験カートリッジ200を保持するためのホルダ230を備える。試験カートリッジは、図3Dに示したようなマガジンから手動で、または自動的にホルダ内に装着されてもよい。マガジン内に装着された試験カートリッジは、たった1つの型の標的病原体のためのものであってもよく、または様々な標的生物のための試験カートリッジの混合が存在してもよい。例えば、試験カートリッジは大腸菌のみ、大腸菌と総大腸菌群の組み合わせ、および同様に、場合によっては他の標的病原体のためのものであってもよい。光電子工学試験/整合センサ232と共に、試験カートリッジ上の指示器208により、装置は異なるカートリッジ間で識別することができる。ホルダ230はモータおよび駆動システム238を介して、カートリッジ200を保持、回転および/または撹拌させるための支持ローラ234、236を有する。装置はまた、水または他の試料をカートリッジ取り入れポート206を介して注入する試料注入器240を含んでもよい。また、カートリッジには、装置内に装着される前に、試料を注入してもよい。装置はまた、試料のインキュベーションのための加熱システム260を含んでもよく、その場合、例えば、加熱された空気がホルダ230を通って流される。
【0079】
装置は対象のフルオロフォア(例えば、標的酵素作用による基質の分解が起こると生じるフルオロフォア)を検出するための光学部品を含む。光学部品は分配要素と共に、上記と同じ原理で機能し、光学経路は図3Eの点線により表される。このように、装置は、カートリッジ200の分配要素204を照射するための光源242、例えばUV光源、および分配要素中に分配された標的フルオロフォアの蛍光を検出するための光学検出器244、例えばCCDを含む。装置はまた、上記、較正フルオロフォアの照射および検出を行う光学部品を含んでもよく、これにより、較正および/または光学信号経路完全性のモニタリングのためのベースライン光学信号が提供される。そのような態様では、標的および較正フルオロフォアにより生成する蛍光は区別され、検出されなければならない。このように、例えば、分配要素から放射される蛍光を検出するための光学経路は、光学経路を2つのチャネルに分割するビームスプリッター250およびミラー252である。各チャネルは、対象のフルオロフォア(すなわち、標的および較正フルオロフォア)の波長で光学フィルタ254、256を用いてフィルタ処理され、フィルタ処理された信号が検出される。
【0080】
装置は任意に、オペレータによる動作制御を可能とするコントロールパネル、データ収集/処理/表示装置、およびリモートコントロールインタフェース(例えば、インターネットまたはテレメトリ経由)を含み、装置は監視制御およびモニタリング、データロギング、および診断システム、通常SCADAシステムと呼ばれる、とインタフェースされる。
【0081】
本発明の自動化水サンプラーユニットは、検出結果の信頼性を保証するいくつかの特徴を有する。例えば、上記のように、試験カートリッジは追加の蛍光分子(すなわち、較正フルオロフォア)を使用する。これにより、各試験カートリッジの分配要素およびシステムの光学部品の較正が提供でき、好都合である。較正フルオロフォアの別の好都合な機能は、試験を通して光学経路の連続完全性モニタリングを提供することである。光学経路の不具合により検出フルオロフォアのルミネセンスの検出ができなくなり、誤った否定的な(negative)結果が得られるからである。光学経路の完全性は、CCD-系検出器を使用することにより保証される。ここで、CCDアレイ上の複数の画素を横切る照射により検出の冗長性が得られる。
【0082】
システムには任意に、下記のうちの1または複数が備えられてもよい:
1.肯定的な(有害)結果が得られるた場合の試料の再試験
2.有害水試料のバイオハザードの可能性を軽減するために、完了した水試験への塩素の注入
3.有害水試料の視覚的な確認を提供するための、基質への色指示薬の導入
4.試験カートリッジに埋め込んだ分配要素からの光学信号を収集するための自由空間光学感知技術の使用、または分配要素に摩擦により適合するインタフェースを提供するための研磨光ファイバセグメントの使用
5.試料の時間カスケーディング(例えば、2または4時間毎)を提供する、または複数の標的病原体試験を提供する(例えば、大腸菌および総大腸菌群は同時に同じ装置で実施)、のいずれかのため、複数の試験が平行して実施できる、試料注入器、加熱システム、および分配要素用の光学検出器からなる同じ装置内での複数の試験チャンバの含有
【0083】
下記は、試験サイクル中、本発明の自動化水サンプラーユニット(AWSU)により実施される主な段階の例である:
1.試験サイクルは、コントロールパネルを使用して、またはSCADAインタフェースを介する遠隔起動コマンドにより作動される
2.試験チャンバは必要な温度(例えば、35〜42℃)まで予め加熱される
3.試験カートリッジはカートリッジマガジンから選択され、試験チャンバに装着される
4.試験カートリッジは、カートリッジを回転させカートリッジを整合させ、試験サイクル中に撹拌するローラ機構により係合される
5.整合/試験ID指示器を用いて試験カートリッジを整合させ、隔膜を針注入器と整合させる
6.必要とされる体積(例えば、100mL)の水試料を試験カートリッジに注入する(試料ライン中の残留水の枯渇後)。インライン流量計を使用して必要な試料体積を測定する
7.針注入器を、塩素またはアルコール溶液を用いて清浄にし、滅菌する
8.内部タイマーを作動させ、SCADA信号を試験型IDと試料開始時間と共に送る
9.試験カートリッジを連続して回転させ、確実に、基質を溶解させ、試験水試料と混合させる
10.水試料は、水溶性較正フルオロフォアを含む基質混合物を溶解する
11.光学経路を作動させ、較正フルオロフォアのベースライン示度に対しモニタする
12.試料の回転および撹拌を20時間までの試験時間の間維持する
13.試験時間全体を通して、較正フルオロフォア(連続光学完全性経路モニタリングを提供するため)および標的フルオロフォア(水試料中の標的病原体の存在を指示)の両方の示度に対しモニタする
14.光学経路ステータス、病原体検出ステータス、および診断ステータスデータを、ロギングおよび報告のためにSCADAデータチャネルを介して定期的に送る
15.標的病原体の存在および推定数に対する警告を、聴覚および視覚的に、ユニットのフロントパネルに提供し、ロギング、報告、および運転動作のためにSCADAデータチャネルを介して送る
16.試験時間の終わりに、試料試験カートリッジを廃棄容器内に排出し、システムをリセットし別の試験を実施する
【0084】
本発明のさらに別の局面によれば、酵素活性を検出するためのキットが提供される。キットは、上記のように、光学プローブ、関連する光学部品および任意に、他の部品、例えばインキュベータを備え、好ましくはコンパクトで低コストであり、水や他の試料について大腸菌および総大腸菌群などの汚染微生物の存在に対し試験、モニタしたいと考える世帯主などの個人にとって、使用可能で手頃である。
【0085】
本発明のさらに別の局面では、酵素活性の測定が酵素結合免疫測定法(EIA)と連結され、試料、例えば水中の様々な標的種、例えば化学および微生物汚染物質(これらに限定されない)の検出が可能となる。酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)が好ましい態様である。標的種の認識における特異性および選択性は、イムノアッセイ法において使用される抗体により与えられる。標的種の定量は酵素により生成する蛍光性種(標識)の検出により与えられる。標識は、分配要素を使用することにより上記のように検出される。
【0086】
本発明のアッセイ法は、任意の標準イムノアッセイ法において使用される任意の酵素、例えば、アルカリホスファターゼ(AP)を使用することができる。APまたは他の酵素活性をモニタするために、蛍光性化合物に結合されたリン酸部分を有する基質を使用する。この場合、生成蛍光化合物は、光学プローブの分配要素に分配されるものである。
【0087】
イムノアッセイ法により検出することができる汚染物質のクラスとしては、ホルモン、エストロゲン化合物、殺虫薬、生物毒素、多核芳香族化合物、およびポリ塩化ビフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本発明のこの局面のいくつかの態様では、EIAは「競合的結合」アッセイ法を含む。第1の態様では、酵素は化合物に結合され、複合体は、抗体への結合に対し、標的化合物と競合することができる。これにより抗体と錯化された一定量の複合体が得られ、この量は存在する標的化合物の量に逆比例する。較正または「競合的結合」プロットは、最初に未結合複合体から抗体錯体を単離し、一連の標準標的汚染物質濃度に対し酵素活性を測定することにより作成される。下記実施例20を参照のこと。
【0089】
競合的結合を使用する第2の態様では、第2の標識(しばしば、蛋白質、例えばウシ血清アルブミン、または化学種)を化合物に結合させ、第2の標識/化合物複合体が、抗体への結合に対し、標的化合物と競合することができるようにする。競合的結合段階後、第2の標識に結合する第2の抗体を添加し、第2の抗体は酵素に結合する。上記のように、抗体錯体は未結合複合体から分離され、錯化標識の量は元の試料中の標的化合物の量に逆比例する。
【0090】
本発明の別の態様では、EIAは標的化合物の検出のために「サンドイッチ」アッセイ法(例えば、ELISA)を含む。そのような態様は一般に、生物汚染物質の検出に好ましい。サンドイッチアッセイ法の例では、対象の標的に特異的な抗体が固体担体上に固定される。試料を担体表面上に導入する。標的を有する汚染物質(細胞であってもよい)が抗体に結合し、固定される。固定された汚染物質の数を決定するために、汚染物質を認識しそれらに結合する第2の抗体を添加する。第2の抗体は、非標識であってもよく、または前もって酵素に結合させることができる。第2の抗体が非標識である場合、酵素に結合する第3の抗体を添加し、第3の抗体は第2の抗体を認識し、それに結合する。いずれにせよ、この手順の結果は、元の試料中に存在する標的汚染物質の数に正比例する固定酵素の量である。選択した酵素により生成物、好ましくは蛍光生成物が生成し、これが本明細書で記述されるように検出される。周知の汚染物質(例えば、細胞)レベルを含む一連の標準溶液に対し酵素活性を測定することにより検量線プロットを作成する。
【0091】
本発明のこの局面によれば、EIAを使用して、試料、例えば水、食品、生物試料および土壌中の生物汚染物質(例えば、大腸菌、総大腸菌群、ギアルジア・ランブリア(Giardia lamblia)、クリプトスポリジウム・アルブウム(Chryptosporidium arvuum)、およびシュードモナス・アエリギノーザ(Pseudomonas aeriginosa)(これらに限定されない))を検出することができる。好都合なことに、汚染物質自体の生物活性の測定では検出できない生物汚染物質の検出に使用することができる。イムノアッセイを都合よく使用することができる生物汚染物質のクラスとしては、細菌、原虫、およびウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。各クラスの特定の例としては、細菌については、大腸菌(Escherichia coli)0157:H7、シュードモナス・アエルギノーザ;原虫については、クリプトスポリジウム・パルブウムおよびギアルジア・ランブリア;ならびにウイルスについては、ノーウォーク(Norwalk)およびSARSウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。特に、アッセイ法は試料中のギアルジア・ランブリア、クリプトスポリジウム・アルブウムおよびシュードモナス・アエリギノーザを検出するのに有益である。これらの生物はグルクロニダーゼまたはガラクトシダーゼを有しておらず、このため、上記これらの酵素に基づく検出スキームに適しているからである。
【0092】
本発明は酵素活性の測定に対し、現在の方法を超える明確な利点を有する。例えば、通常使用される方法は、基質が生成物に変換されると、光学特性(光の吸光度または蛍光発光)が変化する基質/生成物の組み合わせを使用する。いくつかの基質は入手可能であり、酵素変換でかなりの光学変化が起こるが、この変化に対する要件により使用できる基質がかなり制限される。β-gluなどの酵素は、通常加水分解による化学結合の開裂を触媒するが、これは基質からの酸素結合置換基が除去され、ヒドロキシ基にとって代わられることを意味する(すなわち、エーテルからヒドロキシル化形態への変換)。そのため、従来の基質は、エーテルからヒドロキシル形態への変換において、かなりの光学変化をうける化合物に限定される。いくつかの化合物、例えばヒドロキシクマリン化合物はそのような変化を受ける。多環式芳香族炭化水素(PAH)を含む、より感度よく検出することができる多くの他の化合物は、そのような変換では、光学特性の有意の変化が起こらない。
【0093】
対照的に、本発明では、生成物は、光学プローブの分配要素への分配差に基づき基質から区別される。これは、化合物の化学特性の変化が必要とされる、すなわち、分配要素に分配されない形態から分配される形態への変化が必要とされるが、光学特性の変化は必要ないことを意味する。その結果、従来の方法では使用できない広範囲の化合物が、本発明による基質として使用することができる。例えば、PAHは生成物への変換前後の両方で蛍光を発する、適した基質である。β-glu活性の検出に関係する上記態様では、pyr-gluはPAHのグルクロニド形態であり、実質的には水溶性であり、PDMSのような疎水性膜中に分配されない。生成物HPはずっと極性が低く、PDMS中に容易に分配される。
【0094】
本発明は、さらに利点を提供する。蛍光励起および発光に対する全光学経路は、光学プローブ内部に含まれ、特に、分配要素内に含まれ、光は測定における溶液を貫通しなくてもよい。これは、酵素活性は、不透明なまたは高散乱培地で直接検出されてもよいことを意味する。プローブ/分配要素は連続してモニタされる信号を提供し、これにより、酵素活性測定において必要とされる動力学の解析が容易になる。最後に、プローブ/分配要素の感度は、分配要素中の化合物濃度の溶液中の濃度に対する比率として規定される、生成物に対する分配定数(Kfs)により部分的に決定される。Kfsが1より大きい場合、生成物は分配要素中に「前濃縮」される。Kfsに対する値が大きくなるほど、検出感度が高くなる。PAHに対しては、10,000またはそれ以上の値が典型的である。
【0095】
引用した文献全ての内容は参照により本明細書に、全体として組み込まれる。
【0096】
本発明について下記の限定されない実施例によりさらに説明する。
【実施例】
【0097】
実施例1. 光学プローブ
光学プローブを、1mの長さの一本の直径600μmのナイロン(Nylon、登録商標)に被覆されたシリカファイバ(Fiberguide industries、Stirling、New Jersey、U.S.A.またはFiberTech Optika、Kitchener、Ontario、Canada)から作製した。ファイバの第1の端を他の機器との光学インタフェースのために準備し、分配要素をファイバの第2端に取り付けた。ファイバの第1端は4cmのクラッドを除去し、ファイバにセラミックブレードでスコアリング(scoring)し、ねじって引っ張りファイバを破壊し平面を残すようにすることにより準備した。分配要素に対しては、透明な疎水性ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマー膜をファイバの第2端に適用した。プローブを異なる分子量開始材料および異なる架橋度を有する3つのPDMS材料から作製した。
【0098】
GE RTV118(General Electric)膜を、50mgのPDMS前駆体材料を300μlのジクロロメタン(DCM)と混合し、その後、混合物が粘着性を示すまで(窒素の吹き込みにより3時間またはそれ以下の静的時間)DCMを蒸発させることにより作製した。18-ゲージシリンジの先端を使用して、粘着性PDMSのビーズをファイバの露出した先端に適用し、ビーズを24時間室温で硬化させた。
【0099】
Sylguard 186(Dow)膜を、ベース材料および硬化剤を10:1の体積比で混合することにより作製した。この混合物を3倍の体積のジクロロメタン(DCM)に溶解した。DCMを蒸発させ、この混合物を5時間室温で硬化させた。18-ゲージシリンジの先端を使用して、混合したSylguard 186(粘度=65,000cp;shore A=24)のビーズをファイバの露出した先端に適用し、ビーズを48時間室温で硬化させた。この型のビーズの例を図2に示す。その後、ビーズを、小刀を用いて調整し、励起光経路に直接存在しないエラストマーを除去した。小刀を使用して円錐状の端も作製し、プローブ体積およびバックグラウンド散乱を減少させた。
【0100】
Sylguard 184(Dow)膜を、上記Sylguard 186手順を繰り返すことにより作製したが、ずっと薄い膜を作製した(粘度=3900cp;shore A=50)。より厚い膜を得るために、調製したファイバを90℃のオーブンで30分間垂直に配置した。Sylguard 184をベース材料および硬化剤を10:1の体積比で混合することにより作製した。ファイバがまだ温かい間、選択を混合Sylguard 184と接触させた。これにより、エラストマーがファイバ先端上で急激に硬化した。膜が適当な寸法のビーズに類似するまで(例えば、図2)、複数回、これを繰り返した。その後、ビーズを小刀を用いて調整し、励起光経路に直接存在しないエラストマーを除去した(下記参照のこと)。
【0101】
実施例2. 光学プローブの実験的設置およびキャラクタリゼーション
実験的設置を図4に示す。この設置では、励起および発光スペクトルの走査、時間の関数としての、固定波長での発光のモニタリング、およびセンサ時間応答曲線の作成が可能である。一定長の光ファイバ2から作製した光学プローブ3を、光学カプラ5および光ファイバ7を介して励起光源4および分光計6に接続した。光源4は、キセノンランプに結合されたコンピュータ制御の走査モノクロメータを含み(どちらも、Sciencetech Inc.、London、ON製)、励起波長が選択された。分光計7は光電子増倍管検出器を備えた同様のモノクロメータを含み、より長い波長での発光をモニタした。
【0102】
上記手順を用いていくつかの光学プローブを調製した。光学プローブの初期キャラクタリゼーションを、生成物化合物、1-ヒドロキシピレンを、プローブを含む溶液に直接添加することにより実施した。GE RTV118を用いて作製したプローブの応答時間を図5に示す。このプローブでは30〜40分で平衡が起こり、他のプローブは同様の応答時間を示した(データ示さず)。平衡後、プローブにより検出した蛍光は図6に示されるように、HP濃度に対し直線性を有した。基質ピレン-β-D-グルクロニドに対する同様のプロットでは勾配が0であり、基質は検出されないことが示された。
【0103】
実施例3. 酵素活性の検出
酵素活性を検出するためのプローブの動作を、プローブを基質溶液に挿入し、安定化させ、その後に酵素を添加する(大腸菌由来のβ-gluおよびβ-galはSigmaから入手した)ことにより証明した。初期遅延後、蛍光の増加が30分にわたり観察された(図7)。20分〜30分の曲線の勾配を相対酵素活性の測定値として使用した。様々な基質レベルでの測定酵素活性をプロットすることにより(図8)、最適基質濃度は10μMであると決定した。この濃度をその後の実験で使用した。測定した酵素活性対添加した酵素量のプロットは直線であり(図9)、プローブにより酵素活性が定量でき、10ng/mlもの少ない酵素レベルが検出できることが示された。
【0104】
実施例4. 大腸菌の光学プローブ検出
大腸菌B(ストックNO.413)細胞数を、光学密度および平板計数測定の組み合わせにより決定した。様々な初期細胞数を含む試料を、標準Luriaブロスおよび10μMの基質を添加したガラスバイアル内に入れ(各試料の総体積は4mLとした)、インキュベーション時間を37.0±0.1℃で維持した。試料に光学プローブを挿入し、時間の関数として蛍光信号をモニタすることにより、試料を一度に試験した。1〜10時間後、1または複数の大腸菌細胞が試料中に最初に存在すれば、信号は急激に増加した(例えば、図10を参照のこと)。対照実験(凍結-解凍サイクルにより殺した細胞)では24時間後、何の応答もなかった。プローブを試料中に挿入した時間と信号発現(バックグラウンドレベルから1Vの増加として規定)の間の時間は最初に添加した細胞数に反比例し、細胞増殖の動力的分析モデルと一致した(図11および下記試料を参照のこと)。
【0105】
実施例5. 大腸菌増殖の動力学および大腸菌の定量
獲得した信号対時間データ(図10を参照のこと)は、細胞増殖に対する単純な動力学的モデルを用いて記述することができると仮定する。この場合、光学プローブは生成物濃度を報告し、この濃度は存在する細胞数の関数である。この仮定を用いると、光学プローブは、検出容器中で臨界数の細胞が発生すると正の信号を提供する。試料中の最初の細胞数をC0、検出に必要な数をCd(注:数/mLとしての細胞密度を細胞数の代わりに使用することができる)、細胞数が2倍になる時間をt2、検出に必要な時間をtdと規定する。任意の時間の細胞数(Ct)は下記のように書け:
および検出時間では下記のようになる:
【0106】
これは下記のように変換でき:
これは、下記のように配列し直される:
【0107】
ピレン-β-D-グルクロニド基質を用いて、周知のC0(平板計数により別個に決定)を有する一連の実験を実施し、検出までの時間tdを決定した。In(C0)対tdのプロットは直線であり(図11A)、勾配から-In(2)/t2、および切片からIn(Cd)が得られた。得られたプロットの線形回帰から、倍加時間t2を計算すると、20.3分であり、検出のための細胞臨界数Cdを決定すると3×108であった。
【0108】
プロットの線形性(図11A、R2>0.99)により全体的な挙動に対するこのモデルが支持され、検出前の時点の細胞数を計算する。これを使用すると特別な曲線を得ることができ、例えば、C0=1細胞、および任意の特定の時間では、我々は存在する細胞数を推定することができる。未知の試料に対し特定の時間で検出が起こると、同じプロットを使用して、最初に存在した細胞数を決定することができ、そのため試料中の大腸菌の定量が可能である。これにより試料および参照実験に対し同じ倍加時間が仮定される。これらはより広い範囲の試料に対し決定することができる。
【0109】
この実験を繰り返し、3つの他の基質を用い、大腸菌および総大腸菌群の検出のために、Log(初期細胞数)対検出時間の較正プロットを作成した。図11Bは、アントラセン-β-D-グルクロニド基質を用いた様々な初期細胞数での大腸菌検出時間を示す。これらの実験は、35℃で撹拌した100mLの試料を用い、0.75mgの基質および大腸菌株25922を用いて、実施した。図11Cはピレン-β-D-ガラクトピラノシド基質を用いた、様々な細胞数での総大腸菌群検出時間を示したものである。大腸菌(E.coli)は大腸菌(coliform)クラスに入るので、試験生物として大腸菌B-型を用いて検出を証明する。これらの実験は、37℃で撹拌した10mL試料を用いて実施した。図11Dは、アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド基質を用いた、様々な細胞数での総大腸菌群検出時間を示したものである。大腸菌は大腸菌クラスに入るので、試験生物として大腸菌25922を用いて検出を証明する。これらの実験は、37℃で撹拌した20mL試料を用いて実施した。
【0110】
実施例6. 4つの大腸菌株の検出
大腸菌B(ストックNo.413)をカナダ、オンタリオ州、キングストン所在のキングストンクイーンズ大学の研究グループから獲得した。株ATCC25922をアメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)から購入した。株KS1およびKS2をキングストン市から流れ出る下水処理プラントから単離した。「野生型」または天然株を表す。
【0111】
これらの株を上記分析にかけた;すなわち、各株は増殖して「信号発現時間」が得られるので、pyr-glu基質を用い、プローブ信号対時間を追跡した。信号は最初に存在する細胞数に関連する。ATCC株およびキングストン下水株の1つに対する結果を図12Aおよび12Bにおいてプロットする。図12AおよびBからわかるように、全ての曲線の勾配は等価である(最初に存在する細胞数の対数変化の関数としての検出時間の変化を表す)。これらのプロットのy-切片は、最初の試料中で1つの細胞を検出するのにかかる時間を予測する。
【0112】
勾配が同一であるが、y-切片がわずかに異なるという事実は、増殖が始まる前の各株に対する「遅延(lag)」または「蘇生(resuscitation)」時間の差を示すかもしれない。これにより、実際の試料に対する信号発現時間から引き出すことができる細胞数推定値には約1オーダーの大きさの範囲が存在する。
【0113】
実施例7. アントラセン-グルクロニド基質
アントラセン-β-D-グルクロニド(ant-glu)基質について、pyr-glu基質(上記)と同じように試験した。ant-glu基質はピレン基質と実質的に同一に機能した。この基質の検出に対する励起および発光波長はわずかに長く、このため、小型分光計部品を使用する際にいくらかの改善が提供される。例えば、いくつかの構造において励起のために使用される紫外光発光ダイオードは、375nmで極大出力を有し、これはヒドロキシピレン(340nm)を励起するための極大波長よりわずかに長いが、ヒドロキシアントラセン(370nm)を励起するための極大波長により近い。
【0114】
実施例8. ガラクトシダーゼ酵素に対するピレン-ガラクトピラノシド基質
ガラクトシダーゼ活性の検出のための基質、ピレン-ガラクトピラノシド(pyr-gal)を合成し、大腸菌B(ストックNo.413)を用いて試験した。大腸菌に対するグルクロニダーゼ試験と類似する、ガラクトシダーゼ酵素試験を「総大腸菌群」細菌の指標として使用する。この基質からの生成物はグルクロニダーゼ生成物、すなわち、ヒドロキシピレンと同一であるので、本発明の方法および光学プローブはpyr-glu基質を用いても機能するが、ただし、ガラクトシダーゼ酵素が発現することを条件とすることが予測された。何百万もの細胞(図13A)および数千の細胞(図13B)を含むと推定される試料に対する初期の結果はグルクロニダーゼ試験と実質的に等しい。
【0115】
実施例9. 大腸菌試験の比較
カナダオンタリオ州キングストンまたはその付近の現地淡水源(湖および川)からの水試料(n=37)を現地の認可研究所(基準研究所と呼ぶ)に送達し、標準メンブランフィルタ法を用いた大腸菌分析を実施した。基準研究所は、各〜200mL試料から10mlの体積を分析用に取り出し、その後残りの試料を発明者らに届けた。各試料10mlを栄養ブロス濃縮物10mlと混合し、20mlの標準培地 (上記大腸菌研究で使用したものと同じ培地)を得、これにpyr-glu基質を添加した。試料を37℃の浴に入れ、撹拌バーおよび光学プローブを追加した。蛍光をモニタし、各試料に対し「検出時間」(td)を決定した。陰性試料は少なくとも20時間後、有意の蛍光信号を示さなかった。
【0116】
これらの試料の最初の組に対する結果を使用して、td応答を較正すると、図14に示す大腸菌曲線が得られた。この較正を使用してその後のtd結果を、各試料に対する「単位体積あたりの細胞数」(標準メンブランフィルタ法により検出される「コロニー形成単位」すなわちCFUに相当する)に変換した。比較の結果から、とりわけ0〜25CFU範囲では、本発明と標準研究所技術との間で良好な一致が示された。表1に、2つの方法の定性的な比較を示す。表1ではデータを「有無」のフォーマットとし、1細胞レベルでのサンプリング統計偏差が許容される。比較から、試料の「陽性」および「陰性」分類間で完全な一致が示される。
【0117】
この比較により、本発明が基準研究所技術よりも多くの利点を有し、性能に何の犠牲もないことが証明される。例えば、本発明は、より迅速で(例えば、15時間未満、より多くの汚染試料に対しより迅速な検出、対、基準研究所試験では18〜24時間)、必要とされる試料操作が少なく、視覚による計数、観察、またはヒトの介入がない光学検出が提供され(そのため、ヒトによる誤差を受けない)、過剰増殖および/または不透明試料において使用することができ、広いダイナミックレンジ(例えば、1〜1×106細胞対基準研究所では1〜100細胞)を有し、そのため希釈が必要でない試験を提供する。
【0118】
(表1)「有無」モードでの大腸菌の検出に対する本発明および基準研究所技術の比較
【0119】
実施例10. 総大腸菌群の検出
実施例9の試料のサブセットを、pyr-gelを用いる総大腸菌群(TC)分析のために選択した。基準研究所はこれらに対し総大腸菌群決定を実施していないので、最確数(MPN)定量法を用いたTC結果を提供する、市販の定量システム(Colilert-18(登録商標)、Idexx Laboratories Inc. Westbrook、ME)を使用する別個のTC試験も、試料について実施した。初期の結果を図13に示す;しかしながら、このデータの対数線形フィットに対する数値を確認するにはより多くのデータが必要であることに注意すべきである。そのため、この曲線が図14の大腸菌曲線と異なるかどうかについては結論づけることはできない。それらの2つの曲線は異なる汚染範囲をカバーしているからである。どちらの曲線も実際の試料を使用しており、存在する総大腸菌生物の実際の株にはランダムな変動があり、そのため、全体の性能は大腸菌試験と類似することが予測されることが強調されるべきである。。
【0120】
実施例11. 2-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシドの調製
2-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド4を図15で示したスキームにより調製した。アセトブロモガラクトース1を用いた相間移動条件(11)下での2-ヒドロキシアントラセン2のグリコシル化により、Zemplen条件下で脱保護されて4となる複合体3が良好な収率で得られた。
【0121】
実施例12. 1-ピレニル-β-D-ガラクトピラノシドの調製
1-ピレニル-β-D-ガラクトピラノシド7を実施例11と同様の様式で、1-ヒドロキシピレンおよびアセトブロモガラクトースから調製した(図16に示したスキーム)。
【0122】
図17に示されるように、2-ヒドロキシアントラセンおよび1-ヒドロキシピレンのグリコシル化もまた、アグリコンをペンタ-アセチルガラクトース6(12)と縮合させることにより実施してもよいが、複合体6の収率は高くない。
【0123】
実施例13. アントラセン-β-D-グルクロニドの調製
アントラセン-β-D-グルクロニドを、図18で示したスキームに従い調製した。2-ヒドロキシアントラセンをトリメチルシリルエーテル10に変換しその溶解度を増大させた。トリメチルシリルエーテル10を三フッ化ホウ素エーテルの存在下、トリクロロアセトアミデート9(13)に結合させた。乾燥メタノール中でのナトリウムメトキシドによる得られた複合体11の脱保護後、水を添加すると、ナトリウム塩12が溶液から結晶化した。この塩を、シクロヘキシルアンモニウムアセテートとの塩交換により、シクロヘキシルアンモニウム塩13に変換してもよい。
【0124】
イソブチリルトリクロロアセトアミデート14(15)を使用して、図19のスキームに示されるように、複合体15を介してアントラセンのグルクロニドを調製してもよいが、収率は改善されない。
【0125】
実施例14. 2-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド4の調製
テトラ-O-アセチル-2-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド3の調製
テトラ-O-アセチル-1-ブロモ-1-デオキシガラクトース1(205mg、0.5mmole)、2-ヒドロキシアントラセン2(74mg、0.381mmole)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム(100mg、0.294mmole)、ジクロロメタン(2.5mL)および1.5M水酸化ナトリウム(0.5mL、0.75mmole)の混合物を室温で一晩中、激しく撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、水(3×10mL)、satd塩類溶液(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで希釈した(×2)。溶媒を蒸発させると、褐色のゴム(240mg)が得られた。これを、シリカゲルクロマトグラフにかけ、溶離剤としてジクロロメタン、その後に39/1ジクロロメタン/酢酸エチルを用いると、化合物3が金色泡沫として得られた(129mg、収率65%)。
【0126】
乾燥メタノール(0.6mL)に溶解したテトラ-O-アセチル-2-アントラセニル-β-D-ガラクトピラノシド3(30mg、0.057mmole)の溶液を室温で撹拌し、0.052Mのナトリウムメトキシドを含むメタノール(100μL、0.0052mmole)で処理した。20分後、白色沈澱が形成し始めた。一晩中撹拌した後、生成物を濾過し、少量のメタノールで洗浄し、その後、吸引して乾燥させると、クリーム状の白色固体、14.8mg(72.5%)が残った。
【0127】
実施例15. 1-ピレニル-β-D-ガラクトピラノシドの調製
1-ピレニル-β-D-ガラクトピラノシドを、実施例14で記述した様式と同様の様式で、調製した。
Tlc(10/1酢酸エチル/メタノール、UV)は、単一のスポットRf0.14を示した。
【0128】
実施例16. メチルトリ-O-アセチル-2-アントラセニル-β-D-グルクロニド11の調製
2-ヒドロキシアントラセントリメチルシリルエーテル10の調製
乾燥ピリジン(1.0mL)に溶解した2-ヒドロキシアントラセン(14)(100mg、0.515mmole)の溶液に、クロロトリメチルシラン(120μL、0.845mmole)を添加した。直ちに沈澱が形成した。一晩中室温で撹拌した後、トルエン(3mL)を添加し、混合物を濾過した。固体をさらにトルエンで洗浄し、濾液を合わせ、揮散させると、橙色の結晶固体が残った。残渣をトルエン(5mL)に溶解し、再び濾過し、微量のピリジン塩酸塩を除去した。溶媒の蒸発により橙色の固体が得られ、これを高真空下で乾燥させると、定量的収率(140mg)のトリメチルシリルエーテルが得られた。これを以下で、精製せずに使用した。
【0129】
25mLのナシ状フラスコに2-ヒドロキシアントラセントリメチルシリルエーテル10(191mg、0.717mmole)およびイミデート9(479mg、1.0mmole)を入れ、窒素でフラッシュした。粉末状の、活性化した3オングストロームのモレキュラーシーブ(1.0g)を反応フラスコに直ちに添加し、これに窒素を再びフラッシュし、氷中で冷却した。乾燥ジクロロメタン(8.5mL)を添加し、混合物を30分間、氷冷しながら、撹拌した。三フッ化ホウ素エーテル(85μL、0.67mmole)を最後に添加すると、反応物は直ちに灰緑色に変わった。反応混合物を一晩中窒素下で撹拌し、徐々に室温まで温めた。
【0130】
メタノール(2mL)を添加し、10分間撹拌することにより反応をクエンチした。固体を濾過して除去し、ジクロロメタンでよく洗浄した。濾液を合わせ、蒸発させると、褐色の泡沫が残り、これをジクロロメタンに溶解し、シリカゲル(1g)で処理し、再蒸発させた。残渣をジクロロメタン中で準備したシリカゲルカラム(20g)の上に添加し、この溶媒で溶離した。生成物を含む画分を合わせ、蒸発させると、くすんだ黄色の固体(152mg)が残った。酢酸エチル(2.0mL)からの結晶化により、オフホワイトの固体(69mg、19%)が得られた。
【0131】
実施例17. 2-アントラセニル-β-D-グルクロン酸、ナトリウム塩12の調製
メチルトリ-O-セチル-2-アントラセニル-β-D-グルクロニド11(145mg、0.284mmole)を乾燥メタノール(4.0mL)中に懸濁させ、氷浴中で窒素下冷却した。これに、0.678Mのナトリウムメトキシド溶液(710μL、0.48mmole)を添加した。混合物を一晩中撹拌し、徐々に室温まで温めた。生成物が溶液から沈澱するにつれ、固体が徐々に消費された。次の日、水(1.0mL)を添加し、撹拌を室温で続けた。微細な沈殿物を濾過し、少量のメタノールで洗浄し、吸引して乾燥させると、生成物がオフホワイトの固体として得られた(97mg、87%)。
【0132】
実施例18. 2-アントラセニル-β-D-グルクロン酸、シクロヘキシルアンモニウム塩13の調製
ナトリウム塩12(54mg、0.137mmole)をメタノール(〜5mL)および水(3mL)に溶解し、加熱して沸騰させた。溶液を、パスツールピペットに含まれる組織プラグを通して濾過し、熱水(0.5mL)を用いて洗浄した。熱濾液に酢酸シクロヘキシルアンモニウム(22mg、0.138mmole)を添加し、得られた溶液を冷却しながら撹拌した。氷中で冷却すると、シクロヘキシルアンモニウム塩が結晶化し、これを濾過して淡黄色固体として収集した(39.7mg、62%)。
【0133】
実施例19. ポリマー球分配要素光学プローブの調製および評価
この実施例は、シリコーンまたはポリジメチルシロキサン(PDMS)球分配要素光学プローブの調製および評価について記述する。
【0134】
PDMSは中性極性を有し、そのため疎水性である。この特性により、材料は水に浸漬されると、コンパクトな形状、すなわち球を形成する。この実施例で記述した分配要素のために使用されるPDMSは水よりもわずかに密度が高く、そのため、材料の球は水溶液の底に沈み、バイアルの底面に接着する。材料が硬化して剛性ポリマとなると、密度がわずかに増加する。我々は、懸濁中に硬化するのに十分長く球が浮かび続けるように、密度勾配を有する極性バッチ溶液を使用するスキームを開発した。
【0135】
バッチ溶液を下記のように調製した。酢酸ナトリウム三水和物1.4gおよび水4mLの溶液を、20mLのガラスバイアル中で完全に混合することにより調製した。その後、95%エタノール4mLを同じバイアルに撹拌せずに徐々に添加した。酢酸ナトリウム層はPDMS材料および硬化シリコーンよりも極性および密度が高いが、アルコール層は前駆体材料よりもかなり極性であるが密度は低い。溶液中に浸漬させると、ポリマ材料の球は直ちに、2つの別個の層の間の混合層に向かって移動し、そこで懸濁されたままとなる。球は混合層では横方向に移動せず、そのため、PDMS材料を溶液に注入することにより単一のバイアル中で多くの球を作製することができる。
【0136】
バッチ溶液により、各球に対し同一の形状が確保されるが、球のサイズは注入したPDMS材料の量に依存する。前駆体シリコーンの粘度が高いため、正確な体積注入のために標準の実験用ピペットおよびシリンジを使用することができない。そのため、前駆体材料に溶媒を添加し、その粘度減少させる。ポリマの硬化段階中に、溶媒は単純に拡散し、または蒸発してしまう。ジクロロメタン、ヘキサンおよび他の有機物などの多くの溶媒を使用して、前駆体材料を溶解することができるが、これらの溶媒はエタノールまたは水中に完全に混和せず、そのため、シリコーンは、硬化すると、バッチ溶液の表面まで徐々に上がってくる。テトラヒドロフラン(THF)は前駆体物質を溶解し、徐々にエタノール中に消散することができる溶媒であり、バッチ溶液の混合層中にシリコーン球が残り、生成収率は90〜100%である。再現性のある注入物に必要とされるTHFの量は、使用するシリコーンの型およびブランドにより変動する。約1.2mgの球質量(直径約1.5mm)では、Dow Corning Sylguard184シリコーンを用いる場合シリコーン前駆体1gにつきTHF0.45mLが必要であり、United Chemical Technologiesシリコーンを使用する場合シリコーン1gにつきTHF0.6mLが必要である。
【0137】
較正ピペットおよびシリンジを使用して、シリコーン/溶媒をバッチ溶液に注入することができる。1〜3mgの球を調製する場合、シリンジを用いるとより良好な再現性が得られる。シリンジを使用する場合、シリンジバレル上のゲージを都合よく使用して、バッチ溶液に注入するシリコーン/溶媒溶液の体積を設定することができる。ポリマ/溶媒をシリンジ中に入れるとすぐに、針をふき取り清浄にし、バッチ溶液のエタノール層中に挿入する。一滴のポリマ溶液が針から離れ、直ちにバッチ溶液の境界層に落下する(その場所にとどまる)まで、針プランジャを徐々に加圧する。針をエタノール層の他の位置まで移動させ、別の一滴を針から絞り出す。このように、かなりたくさんの球を20mLバイアル中で作製することができる。シリンジをバッチ溶液から注意深く取り除き、その後、バイアルにふたをかぶせ、室温で硬化時間が経過するまで静置する。
【0138】
バッチ溶液から固体ポリマ球を除去するために、球より細孔サイズが小さいプラスチックフィルタ漏斗を使用してバッチ溶液を濾過する。その後、保持した球を95%エタノールで洗浄し、残留酢酸ナトリウムを除去し、乾燥させる。乾燥すると、ポリマ球を計量し、質量により分類する。
【0139】
ポリマ球分配要素光学プローブの性能
上記のようにポリマ球分配要素を大量生産するために使用されるバッチプロセスにより、シリコーン球が一貫したサイズ、形態、および光学透明度を有することが確保され、これにより光学プローブの検出限界が改善される。その結果、平衡時間、一定の生成物溶液、例えばヒドロキシピレンまたはヒドロキシアントラセン中での信号生成、および球を用いて作製した光学プローブの較正が標準化される。
【0140】
上記のように、シリコーン球の調製には、様々なPDMS調合物を使用することができる。様々な調合物によりポリマの物理特性が変化する。例えば、Dow Corning Sylgard 184では、高い架橋度およびヒュームドシリカなどのフィラー材料の添加により、非常に剛性のポリマが形成される。このポリマは、アルコール溶液中で、分解に耐え、膨潤を最小に抑えることができるので、溶液中での寿命が非常に長い。この調合物の欠点は、1mgの球が生成物溶液中で平衡に達するのに3時間必要となることである。United Chemical Technologiesシリコーンから作製した1mgの球は1時間で平衡に達する。この球は、ヒュームドシリカが不足し、架橋度が低いため、Sylguard 184を用いて作製した球よりも剛性が低いが、膨潤および分解を受けやすい。架橋度は両方の調合物において制御することができ、表2に示すように、1〜3時間の平衡時間を有するポリマが達成される。
【0141】
(表2)球を作製するための2つのブランドのPDMS材料の調合物
【0142】
実施例20. 光学プローブを用いた酵素イムノアッセイ法
導入
この実施例は、17-β-エストラジオール(E2)の検出のためのイムノアッセイ法における、上記のようなPDMS分配要素を備えた光学プローブの使用について記述する。標準イムノアッセイキットをこの目的のために使用した。Assay Designs’s Correlate-EIA 17-β-Estradiolキット(Assay Designs Inc. Ann Arbor、MI)は生物および環境試料におけるE2の定量のための競合イムノアッセイ法である。標準または従来のアッセイ法手順を以下、説明する。
【0143】
E2を含むかもしれない試料または標準溶液を、マイクロタイタプレートのマイクロウエル内に、アルカリホスファターゼ(AP)酵素標識に付着されたE2(AP-E2)を含む第2溶液と共に入れる。E2に対するポリクローナル抗体(anti-E2)をマイクロウエルに添加する。これは予め、anti-E2を不可逆的にマイクロウエル表面に結合させる別の抗体で被覆されている。固定された抗体分子の数に対し、過剰のAP-E2を添加する。E2およびAP-E2の両方の競合的結合が起こり、AP-E2の固定量は、混合物中のE2の量と反比例する。結合時間後、残留試料および試薬を洗浄して除去すると、マイクロウエル中には固定されたAP-E2およびE2抗体複合体のみが残る。基質溶液を添加し、酵素活性測定により、固定されたAP-E2量を決定する。着色生成物を生成する基質とAPとの間の反応をモニタする。市販のキットは通常、基質としてp-ニトロフェニルホスフェートを、生成物としてp-ニトロフェノールを使用する。
【0144】
酵素活性を定量するために、生成した黄色を、連続して(吸光度対時間曲線が得られる)または一定(例えば、20分)インキュベーション時間後に405nmでの吸光度として測定する。モニタした「信号」は吸光度対時間曲線の勾配または一定時間モードで測定した吸光度の値である。信号はAP-E2のみを含むブランクで最大であり、試料中のE2レベルの増加に伴い減少する。ブランク溶液の信号に対する任意の試料の信号は、AP-E2の相対結合の測定値であり、しばしば、結合した割合またはパーセンテージとして表される。標準溶液に対する結合割合対E2濃度のプロットはアッセイ法に対する検量線を提供し、これを使用して、未知の試料中の濃度が決定される。
【0145】
そのようなイムノアッセイ法において使用される検出機器は、通常「ベンチトップ」マイクロタイタプレートリーダーである。これは精密で高価な(〜$30,000)機器であり、動作させるには幾人かの熟練者が必要であり、維持費が嵩む。また、「マイクロプレート」付属品を備えた従来の分光計を使用することができる。他のイムノアッセイ法はより大きな容器(例えば、5mL試験管構造)内で実施され、検出はベンチトップまたは携帯分光計で実施されるが、これらは、より多くの試料体積を使用し、1試料につきより多くの試薬を使用し、このため、より高いコストで動作する。携帯用またはフィールドバージョンは通常、精度および検出限界が低い。他の携帯用イムノアッセイは視覚的読み出しによる「テストストリップ」を使用するが、これらは通常、定量的な結果を提供することができず、検出限界がよくない。
【0146】
ここで、酵素活性を検出するための光学プローブを使用した標準酵素イムノアッセイ法に対する別の検出スキームについて説明する。これは、上記競合的結合スキームおよび全ての他の酵素イムノアッセイスキーム、例えば「サンドイッチ」アッセイ法、「イムノプローブ」および免疫標識システムにおいて使用することができる。
【0147】
我々のアプローチでは、我々は生成物の検出のために、ポリマ分配要素を有する光学プローブ(上記実施例1および10を参照のこと)を使用する。AP活性をモニタするために、蛍光化合物に結合させたリン酸部分を有する基質を使用する。この場合、生成蛍光化合物は、光学プローブにより検出されるものである。このアプローチを実証するために、我々は、1-ピレンホスフェート(PP)を合成した。これは、APと反応すると、1-ヒドロキシピレン(HOP)(光学プローブの分配要素により効率よく検出される)およびリン酸イオンを生成する。
【0148】
我々のアッセイ法では、光学プローブを、結合AP(すなわち、AP-E2)およびPP基質を含むマイクロウエル中に挿入する。PPおよびAPとの反応によりHOPが生成するので、HOPをプローブにより検出する。従来のアッセイ法のように、HOPは連続して(プローブはPP前に、またはPPと共に挿入される)、または「終点」モード(PPのHOPへの変換が一定反応時間で終了し、その後プローブを挿入する)で検出することができる。どちらの場合の信号も蛍光対時間曲線の勾配であり、従来のイムノアッセイ法に対し上述したアプローチと類似のアプローチを使用して、較正プロットが作成される。
【0149】
実験
薬品および試薬
Assay Designs’s Correlate-EIA 17-β-Estradiolキット(カタログNo.901〜008)をAssay Designs Inc.(Ann Arbor、MI)から購入した。トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン(tris)およびMgCl2・6H2OをSigma-Aldrich(Mississauga、Ontario、Canada)から入手した。MgCl2 1.0mMを有する0.1M Tris緩衝液pH9を毎日新たに調製した。1-ピレンホスフェートを我々の研究所で合成した。基質ストック4.97e-4Mを、使用直前に、MgCl2 1.0mMを有するpH9の0.1M Tris-HCl緩衝液中で調製した。2M硫酸(Fisher Scientific、Ottawa、Ontario、Canada)を停止液として使用した。
【0150】
計装
75ワットキセノンarcランプおよび光電子増倍検出器を備えた分光計(Sciencetech Inc.、London、Ontario、Canada)を用いて蛍光測定を行った。励起および発光スリットを全ての測定のために5nm帯域通過に設定した。励起波長は345nmであり、発光波長は385nmであった。ポリマー分配要素を備えた光学プローブ(実施例1および19を参照のこと)を、生成物の検出のために光学プローブ結合システムと共に使用した(例えば、図3Aを参照のこと)。
【0151】
手順
製造者が推奨する手順に従い、イムノアッセイ法を実施した。反応を抗体でコートしたマイクロウエル中で実施した。全てのアッセイ法を室温(24±2℃)で実施した。全ての試薬は、開封前に少なくとも30分間室温にした。100μlのアッセイ用緩衝液をBoマイクロウエルにピペットでとり、#1〜#6の標準100μlを個々のウエルに添加した。その後、50μlの複合体および50μlの抗体を、「終点」モードイムノアッセイにおいて各ウエルに添加した。動力学モードイムノアッセイ法では、20μlの複合体および20μlの抗体を添加し、アッセイ法用緩衝液もまた各ウエルに添加し、60μlとした。プレートをプレートシーラーで被覆し、2時間、〜500rpmで軌道撹拌しながらインキュベートした。インキュベーション後、プレートを300μl/ウエル洗浄溶液で4度洗浄した。
【0152】
未反応試薬を洗い流した後、250μlの緩衝PP溶液をウエルに添加した。連続イムノアッセイにおいて、光学プローブをPP溶液前、またはPP溶液と共に挿入した。終点イムノアッセイでは、室温で30分インキュベートした後、PP変換反応を2M H2SO4 50μlで停止させ、その後、光学プローブを溶液中に挿入した。どちらの場合も、信頼できる勾配が得られるまで、HOP取り込み曲線を記録した。各アッセイ後、50/50(v/v)エタノール/水溶液または1M NaOH溶液で、HOPを光学プローブのポリマ分配要素から一掃した。
【0153】
結果および考察
パラメータKMおよびVmaxの決定
PPはこの酵素の基質として以前報告されていないので、AP活性の決定のためのミカエリス-メンテン動力学的パラメータを決定した。基質濃度の関数としての基質変換速度を、1組の光学プローブ信号対時間曲線を作成することにより決定した。速度を基質濃度の関数としてプロットし(図20を参照のこと)、非線形曲線フィッティングにより動力学的パラメータVmax=9×10-3moles/sおよびKM=2.45×10-5Mが得られた。理想的には、約10×KMのアッセイ法の作用基質濃度をアッセイ法で使用し、感度および勾配再現性を最大とする。酵素活性のPP阻害は2×10-4Mレベルで示されるので、我々は、PPを使用する別のアッセイ法には、5×KM(1.25×10-4M)の信頼できる最大濃度を使用することを決めた。
【0154】
光学プローブを用いたイムノアッセイ法
終点モードでpH9の緩衝液に溶解した1.25×10-4Mの基質溶液を用いてイムノアッセイ法を実施した。停止時間溶液に浸漬させた後の光学プローブ応答を得た。予測されるように、E2濃度がより大きな試料では、より低い結合E2-AP量が得られ、このため光学プローブ応答がより低かった。相対応答を使用して%結合E2-APを計算した。%結合対E2濃度のプロットは、本質的にアッセイ法のための検量線であり、図21に示す。
【0155】
同じイムノアッセイパラメータを動力学的モードで使用し、光学プローブ信号対時間のプロットを作成した。このデータは実施例19において記述されているように光学プローブを用いて獲得し、これを使用して図22に示した%結合曲線を作成した。
【0156】
結論
これらの結果から、酵素活性を検出するために光学プローブを使用するこの新規酵素イムノアッセイ法では、従来の酵素イムノアッセイ法に匹敵する結果が得られるが、高価な検出装置は必要ないことが示される。
【0157】
等価物
当業者であれば、上記態様の変形物を認識し、またはルーチン実験により確認することができるであろう。そのような変形物は本発明の範囲内にあり、添付の請求の範囲内にある。
【0158】
参考文献
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の少なくとも1つの酵素の活性に関連する生物分子を検出するための方法であって、
少なくとも1つの酵素を少なくとも1つの基質と、酵素が基質と反応することができる条件下で、混合する段階;
生物分子を分配するための分配要素を提供する段階;および
分配要素中の生物分子の蛍光を検出するための段階;
を含み、
検出される蛍光が試料中の酵素活性を示す、方法。
【請求項2】
分配要素が、ポリマ膜を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酵素が基質と反応することができる条件が、水性条件を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
生物分子が基質であり、蛍光を検出する段階が、蛍光の量の変化を検出する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
生物分子が、酵素-基質反応の生成物である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
酵素活性が、微生物と関連する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
微生物が、生物汚染物質である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの酵素が、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
微生物が大腸菌および総大腸菌群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの基質が、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
試料が、水、生物試料、食品および土壌から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
酵素および基質が、分配要素を含むカートリッジ中で混合される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
分子の蛍光を検出するための光学プローブであって、
光導波管;および
光導波管の一端に配置された分配要素;
を含み、
分子が、選択的に分配要素中に分配され、分子の蛍光が導波管内に結合される、光学プローブ。
【請求項14】
蛍光分子が、酵素基質および酵素-基質反応の生成物から選択される、請求項13記載の光学プローブ。
【請求項15】
分配要素が、ポリマ膜である、請求項13記載の光学プローブ。
【請求項16】
ポリマ膜が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む、請求項15記載の光学プローブ。
【請求項17】
光導波管が光ファイバである、請求項13記載の光学プローブ。
【請求項18】
分子の存在を検出するための装置であって、
請求項13記載の光学プローブ;
励起光源;および
分子の蛍光を検出するための検出器;
を備え、
検出された蛍光が分子の存在を示す、装置。
【請求項19】
蛍光分子が、酵素基質および酵素-基質反応の生成物から選択される、請求項18記載の装置。
【請求項20】
酵素が、微生物と関連する、請求項18記載の装置。
【請求項21】
酵素が、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される、請求項18記載の装置。
【請求項22】
微生物が大腸菌および総大腸菌群から選択される、請求項20記載の装置。
【請求項23】
基質が、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される、請求項19記載の装置。
【請求項24】
試料中の少なくとも1つの酵素の活性と関連する生物分子を検出するためのシステムであって、
試料および少なくとも1つの基質をインキュベートし、酵素を基質と反応させ、生物分子を生成させるための容器;
生物分子を分配することができる分配要素;
分配要素中に分配された生物分子に照射する励起光源;
分配要素中に分配された生物分子の蛍光を検出する検出器;および
制御ユニット;
を備え、
検出された蛍光は試料中の酵素の活性を示す、システム。
【請求項25】
制御ユニットは、システムの動作を制御する機能、蛍光検出に関連するデータを保存する機能、および蛍光検出に関連するデータを出力する機能から選択される少なくとも1つの機能を実施する、請求項24記載のシステム。
【請求項26】
容器が、試料および基質を含むための取り外し可能なカートリッジを備える、請求項24記載のシステム。
【請求項27】
分配要素が、取り外し可能なカートリッジ内に配置される、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
蛍光検出に関連するデータを通信ネットワークに中継する通信ユニットをさらに備える、請求項24記載のシステム。
【請求項29】
酵素が、生物汚染物質と関連する、請求項24記載のシステム。
【請求項30】
試料が、水、生物試料、食品および土壌から選択される、請求項24記載のシステム。
【請求項31】
酵素が、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される、請求項24記載のシステム。
【請求項32】
生物汚染物質が大腸菌および総大腸菌群から選択される、請求項29記載のシステム。
【請求項33】
少なくとも1つの基質が、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される、請求項24記載のシステム。
【請求項34】
システムの分配要素および光学部品を較正する、もしくは蛍光検出をモニタする、またはそれらの両方のための手段をさらに備える、請求項24記載のシステム。
【請求項35】
分配要素を較正するおよび蛍光検出をモニタする手段が、
分配要素中に分配され、生物分子とは異なる波長で蛍光を発するフルオロフォアを含み、
フルオロフォアの蛍光が検出器により検出され、
制御ユニットが検出された蛍光を使用して、システムの分配要素および光学部品を較正し、またはシステムの蛍光検出をモニタする、請求項34記載のシステム。
【請求項36】
試料中の生物汚染物質を検出するためのキットであって、
請求項18記載の装置;および
生物汚染物質と関連する酵素に対する基質;
を含み、
試料中の生物汚染物質の存在または量を示す、キット。
【請求項37】
試料および基質をインキュベートするための容器をさらに含む、請求項36記載のキット。
【請求項38】
試料が、水、食品、生物試料および土壌から選択される、請求項36記載のキット。
【請求項39】
生物汚染物質が大腸菌および総大腸菌群から選択される少なくとも1つの微生物である、請求項36記載のキット。
【請求項40】
酵素が、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される少なくとも1つの酵素である、請求項36記載のキット。
【請求項41】
少なくとも1つの基質が、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される、請求項36記載のキット。
【請求項42】
標的種を検出するための方法であって、
標的種に特異的な抗体を試料と、抗体が標的種に結合することができる条件下で、混合する段階;
蛍光分子を生成することにより結合抗体の定量が可能となる酵素を提供する段階;
蛍光分子を分配させるための分配要素を提供する段階;および
分配要素中の蛍光分子の蛍光を検出する段階;
を含み、
検出された蛍光が、試料中の酵素活性を示す、方法。
【請求項43】
抗体が酵素に結合される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
酵素が、標的種に特異的な抗体に特異的な第2の抗体に結合され、複合体が、標的種に特異的な抗体および試料の組み合わせと混合される、請求項42記載の方法。
【請求項45】
蛍光が酵素-基質反応の間中、連続して検出される、請求項42記載の方法。
【請求項46】
蛍光が、酵素-基質反応中のある一定時間後に検出される、請求項42記載の方法。
【請求項47】
標的種が生物または化学汚染物質である、請求項42記載の方法。
【請求項48】
標的種が、細菌、原虫およびウイルスからなる群から選択される、請求項42記載の方法。
【請求項1】
試料中の少なくとも1つの酵素の活性に関連する生物分子を検出するための方法であって、
少なくとも1つの酵素を少なくとも1つの基質と、酵素が基質と反応することができる条件下で、混合する段階;
生物分子を分配するための分配要素を提供する段階;および
分配要素中の生物分子の蛍光を検出するための段階;
を含み、
検出される蛍光が試料中の酵素活性を示す、方法。
【請求項2】
分配要素が、ポリマ膜を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酵素が基質と反応することができる条件が、水性条件を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
生物分子が基質であり、蛍光を検出する段階が、蛍光の量の変化を検出する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
生物分子が、酵素-基質反応の生成物である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
酵素活性が、微生物と関連する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
微生物が、生物汚染物質である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの酵素が、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
微生物が大腸菌および総大腸菌群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの基質が、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
試料が、水、生物試料、食品および土壌から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
酵素および基質が、分配要素を含むカートリッジ中で混合される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
分子の蛍光を検出するための光学プローブであって、
光導波管;および
光導波管の一端に配置された分配要素;
を含み、
分子が、選択的に分配要素中に分配され、分子の蛍光が導波管内に結合される、光学プローブ。
【請求項14】
蛍光分子が、酵素基質および酵素-基質反応の生成物から選択される、請求項13記載の光学プローブ。
【請求項15】
分配要素が、ポリマ膜である、請求項13記載の光学プローブ。
【請求項16】
ポリマ膜が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む、請求項15記載の光学プローブ。
【請求項17】
光導波管が光ファイバである、請求項13記載の光学プローブ。
【請求項18】
分子の存在を検出するための装置であって、
請求項13記載の光学プローブ;
励起光源;および
分子の蛍光を検出するための検出器;
を備え、
検出された蛍光が分子の存在を示す、装置。
【請求項19】
蛍光分子が、酵素基質および酵素-基質反応の生成物から選択される、請求項18記載の装置。
【請求項20】
酵素が、微生物と関連する、請求項18記載の装置。
【請求項21】
酵素が、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される、請求項18記載の装置。
【請求項22】
微生物が大腸菌および総大腸菌群から選択される、請求項20記載の装置。
【請求項23】
基質が、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される、請求項19記載の装置。
【請求項24】
試料中の少なくとも1つの酵素の活性と関連する生物分子を検出するためのシステムであって、
試料および少なくとも1つの基質をインキュベートし、酵素を基質と反応させ、生物分子を生成させるための容器;
生物分子を分配することができる分配要素;
分配要素中に分配された生物分子に照射する励起光源;
分配要素中に分配された生物分子の蛍光を検出する検出器;および
制御ユニット;
を備え、
検出された蛍光は試料中の酵素の活性を示す、システム。
【請求項25】
制御ユニットは、システムの動作を制御する機能、蛍光検出に関連するデータを保存する機能、および蛍光検出に関連するデータを出力する機能から選択される少なくとも1つの機能を実施する、請求項24記載のシステム。
【請求項26】
容器が、試料および基質を含むための取り外し可能なカートリッジを備える、請求項24記載のシステム。
【請求項27】
分配要素が、取り外し可能なカートリッジ内に配置される、請求項26記載のシステム。
【請求項28】
蛍光検出に関連するデータを通信ネットワークに中継する通信ユニットをさらに備える、請求項24記載のシステム。
【請求項29】
酵素が、生物汚染物質と関連する、請求項24記載のシステム。
【請求項30】
試料が、水、生物試料、食品および土壌から選択される、請求項24記載のシステム。
【請求項31】
酵素が、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される、請求項24記載のシステム。
【請求項32】
生物汚染物質が大腸菌および総大腸菌群から選択される、請求項29記載のシステム。
【請求項33】
少なくとも1つの基質が、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される、請求項24記載のシステム。
【請求項34】
システムの分配要素および光学部品を較正する、もしくは蛍光検出をモニタする、またはそれらの両方のための手段をさらに備える、請求項24記載のシステム。
【請求項35】
分配要素を較正するおよび蛍光検出をモニタする手段が、
分配要素中に分配され、生物分子とは異なる波長で蛍光を発するフルオロフォアを含み、
フルオロフォアの蛍光が検出器により検出され、
制御ユニットが検出された蛍光を使用して、システムの分配要素および光学部品を較正し、またはシステムの蛍光検出をモニタする、請求項34記載のシステム。
【請求項36】
試料中の生物汚染物質を検出するためのキットであって、
請求項18記載の装置;および
生物汚染物質と関連する酵素に対する基質;
を含み、
試料中の生物汚染物質の存在または量を示す、キット。
【請求項37】
試料および基質をインキュベートするための容器をさらに含む、請求項36記載のキット。
【請求項38】
試料が、水、食品、生物試料および土壌から選択される、請求項36記載のキット。
【請求項39】
生物汚染物質が大腸菌および総大腸菌群から選択される少なくとも1つの微生物である、請求項36記載のキット。
【請求項40】
酵素が、β-グルクロニダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼから選択される少なくとも1つの酵素である、請求項36記載のキット。
【請求項41】
少なくとも1つの基質が、ピレン-β-D-グルクロニド、アントラセン-β-D-グルクロニド、ピロメテン-β-D-グルクロニド、ピレン-β-D-ガラクトピラノシド、およびアントラセン-β-D-ガラクトピラノシドから選択される、請求項36記載のキット。
【請求項42】
標的種を検出するための方法であって、
標的種に特異的な抗体を試料と、抗体が標的種に結合することができる条件下で、混合する段階;
蛍光分子を生成することにより結合抗体の定量が可能となる酵素を提供する段階;
蛍光分子を分配させるための分配要素を提供する段階;および
分配要素中の蛍光分子の蛍光を検出する段階;
を含み、
検出された蛍光が、試料中の酵素活性を示す、方法。
【請求項43】
抗体が酵素に結合される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
酵素が、標的種に特異的な抗体に特異的な第2の抗体に結合され、複合体が、標的種に特異的な抗体および試料の組み合わせと混合される、請求項42記載の方法。
【請求項45】
蛍光が酵素-基質反応の間中、連続して検出される、請求項42記載の方法。
【請求項46】
蛍光が、酵素-基質反応中のある一定時間後に検出される、請求項42記載の方法。
【請求項47】
標的種が生物または化学汚染物質である、請求項42記載の方法。
【請求項48】
標的種が、細菌、原虫およびウイルスからなる群から選択される、請求項42記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−254816(P2011−254816A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130892(P2011−130892)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【分割の表示】特願2004−536735(P2004−536735)の分割
【原出願日】平成15年9月22日(2003.9.22)
【出願人】(505103150)クィーンズ ユニバーシティー アット キングストン (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【分割の表示】特願2004−536735(P2004−536735)の分割
【原出願日】平成15年9月22日(2003.9.22)
【出願人】(505103150)クィーンズ ユニバーシティー アット キングストン (1)
【Fターム(参考)】
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