説明

釉薬の製造方法

【課題】 植物(剪定枝葉、樹木等)の焼却灰は、水簸(あく抜き、アルカリ成分の除去)と呼ばれる精製(製造)工程や粒度調整を経て陶磁器用釉薬原料として用いられる。通常、焼却灰を水に懸濁させ灰が沈降した後に上澄み液を捨て新たな水を加える作業を繰り返し、長期間を要する。本発明は、この製造(精製・水簸)に関して、短期間で容易に実施できる技術を提供する。
【解決手段】 焼却灰の水懸濁液に炭酸ガスの吹き込み(バブリング)を行う事で焼却灰中の酸化カルシウムの炭酸化及び中和反応を促進する。具体的には、まず焼却灰を水に懸濁させ、荒い目(20目程度)の篩に通す。これに炭酸ガスの吹き込みを行って一晩放置する。この上澄みを捨て新たな水を加えながらより細かい目(40目程度)の篩に通し、2度目の炭酸ガスの吹き込みを行い、更に一晩放置する。この上澄みを捨て、濾過、乾燥させることで陶磁器用釉薬原料としての灰を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陶磁器用の釉薬の製造方法に係り、特に、枝、葉、樹木等の農林系廃棄物の焼却灰(灰化物)を用いた釉薬の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農林系廃棄物(剪定枝葉、枯れ木、木材等)は、環境意識への高まり等もあり再資源化が進みつつあるが、未だに多くの場合は再資源化されることなく焼却・廃棄処分されている。一方で、陶磁器製造業界にとって、植物の焼却灰は天然鉱物(陶石、長石、珪石、石灰石、粘土)と並び最も重要な釉薬原料である。現に、各陶磁器の製造産地で杵灰、栗皮灰、杉灰、雑木灰、藁灰、籾灰等が伝統的に使われている。天然灰は成分安定性に欠け、他の釉薬原料と比較して高価で取引されているにも関わらず、天然灰を多く配合した釉薬(灰釉)は根強い人気がある。
【0003】
枝、葉、樹木等は焼却(灰化)しただけでは、釉薬原料として利用は困難である。なぜなら、アルカリ分を抽出・除去してから灰化した場合(例えば、特許文献1参照。)やシリカを主成分とする草木の灰である藁灰や籾灰等を除き、一般的に草木等の焼却灰はカルシウムを主成分として、カリウム、マグネシウム等の副成分を含有しアルカリ度が高い。そのため、焼却灰をそのまま釉薬原料として用いると、本焼成後に釉の縮れ・ピンホール・融けすぎといった欠陥が生じやすい。したがって、シリカ主体の藁灰や籾灰等も含め草木等の焼却灰は、水簸(あく抜き、アルカリ成分の除去)と呼ばれる精製(製造)工程や粒度調整を経て釉薬原料として用いられる(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
水簸は陶磁器原料の前処理方法の一つであり、原料の精製を主な目的で行われるものである。焼却灰の場合、炭(燃えかす)や灰汁(カリウム等の水溶性のアルカリ成分)等の不純物を除去するとともに、篩に通すことで粒度の調整も同時に行う。この作業が不十分であると、前述のような欠陥も起こり得るため重要な工程である。
【0005】
釉薬原料や陶磁器の製造業者は、一般に、以下の水簸(精製)操作を行う。最初に、適当な大きさの容器に水をはり、焼却灰を加え混合撹拌する。ここで、この懸濁液を20〜40目の篩に通し、炭(燃えかす)を取り除く。ここで、灰が沈降するまで待つ。この放置時間、即ち焼却灰の沈降に要する時間は、焼却したものや焼却条件等で異なるが、最低でも半日を要し、場合によっては数日以上を要する。このようにして上水が澄んだところで水を捨て、そこに新たな水を加え、混合撹拌と上澄み液を捨てるという作業を繰り返す。また、この水交換作業時に60〜80目の篩に通して粒度調整を行う。こうした水簸作業を終えた後に、乾燥して粉末の状態で釉薬原料として用いる。通常は、この作業に最低でも数ヶ月を要する。また、水簸作業終了の判定は経験や勘に頼るところが大きく、一般には懸濁液の上水のぬるぬるとした感触がなくなるまでとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2002−348184号公報
【特許文献2】 特開2002−179482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上に述べたように、草木等の焼却灰を陶磁器の釉薬原料として用いるには、粒度調整を含む水簸工程が重要であり不可欠である。従来の方法では焼却灰と水を混合撹拌後に焼却灰が沈殿するのを待ち、水を交換する作業を繰り返すことで次第にpHやアルカリ度を低下させるものである。
【0008】
加えて、一般的には、枝、葉、樹木等は畑などで野焼きされることが多く、温度制御が可能な焼却炉(灰化炉)は使用されない。シリカが主成分である藁灰、籾灰等の例外を除き、草木等の焼却灰の主成分であるカルシウムは炭酸塩の形で存在するが、高温では脱炭酸反応により酸化カルシウムに変換する。したがって、野焼きのような温度制御されない焼却(灰化)の場合は、酸化カルシウムを含むこととなり、中和反応(pHの低下、アルカリ度の低下)が妨げられる。
【0009】
以上のように、従来の方法が大量の水と長期間を要するものであった理由として、一つに、中和反応を促進する工夫がなされず水交換作業を重ねることでpHやアルカリ度を徐々に低下させる非効率的な方法に頼ってきたことが挙げられる。加えて、酸化カルシウムの存在による中和反応の阻害も一因と推定できる。本発明は、陶磁器釉薬用の天然灰製造(精製)に関わる上記の問題点を解決すべく、作業の迅速化、使用水量の削減、及び、撹拌作業を省くことが可能な釉薬の製造方法及び釉薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の第1手段は、カルシウムを主成分とする草木の焼却灰を原料とする釉薬の製造方法であって、焼却灰の懸濁水に炭酸ガスを吹き込む工程を有することを特徴とする。
【0011】
第2手段は、第1手段に記載の釉薬の製造方法であって、焼却灰が、草木を野焼き又は600℃以上で焼却して得られることを特徴とする。
【0012】
第3手段は、第1又は第2の手段のいずれかに記載の釉薬の製造方法であって、懸濁水に炭酸ガスを吹き込む工程の後に、上澄水のpHが10以下の場合に、濾布を用いて前記懸濁水の濾過残留物を脱水乾燥することを特徴とする。
【0013】
第4手段は、釉薬の製造方法であって、カルシウムを主成分とする草木の焼却灰を原料とする釉薬の製造方法であって、焼却灰の懸濁水を篩にかける第1篩分け工程と、次に該篩を通過した懸濁水に炭酸ガスを吹き込む第1吹込み工程と、次に該懸濁水の静置後の上澄水を捨てて新たな水を加えながら篩にかける第2篩分け工程と、次に該篩を通過した懸濁水に炭酸ガスを吹き込む第2吹込み工程と、次に該懸濁水の静置後の上澄水を濾過する第3篩分け工程と、次に得られた濾過残留物を脱水乾燥する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
第5手段は、第4手段に記載の釉薬の製造方法であって、第1篩分け工程の篩が20目で、第1吹込み工程の吹込み時間が約1時間で、第2篩分け工程の篩が40目で、第2吹込み工程の吹込み時間が1〜4時間で、第3篩分け工程に濾布を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上述した様に、本発明による水簸(精製)は、焼却灰の水懸濁液に炭酸ガスをバブリングすることが特徴である。これにより、炭酸ガスとの反応による酸化カルシウムから炭酸カルシウムへの変換や、中和反応(pHの低下、アルカリ度の低下)の促進がもたらされ、水の交換回数を減らすことができる。そのため、水簸作業期間の短縮や使用水量の削減の効果がある。また、バブリングにより、懸濁液の撹拌作業の省略が可能という効果もある。
【0016】
更には、中和するために酸のような有害な薬剤を必要とせず、比較的安全で扱いやすい炭酸ガスによって懸濁液を中和するため、作業効率の向上ばかりではなく、安全性、排水施設などへの負荷低下など二次的な効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】 栗剪定枝の加熱処理後のX線回折結果である。
【図2】 270℃で加熱処理した栗剪定枝の熱分析(TG)結果である。
【図3】 酸化カルシウム(試薬)及び栗剪定枝灰の水懸濁液の上澄みのアルカリ度の変化である。
【図4】 酸化カルシウム(試薬)及び栗剪定枝灰の水懸濁液の上澄みのpHの変化である。
【図5】 本発明による水簸(精製)作業を示したフローチャートである。
【図6】 本発明の実施に関わる機器構成である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によれば、枝、葉、樹木等の焼却灰を釉薬原料として用いるための水簸(精製)の期間短縮、作業効率向上を可能とする。通常は、最低でも数ヶ月以上要する作業を最短3日に短縮できる。以下、本発明を実施するための形態について、栗の剪定枝葉を試料とした実施例を挙げて説明する。なお、本発明は栗の灰以外にも実施できることは論を俟たない。
【0019】
栗剪定枝葉等及びその焼却灰の物性を確認するため、元素分析(蛍光X線分析、ガラスビード法)、熱分析(TG−DTA)及び栗剪定枝加熱処理物(加熱温度:270℃、650〜800℃)の鉱物分析(粉末X線回折)を行った。元素分析(重量%)は、枝、樹皮、樹木質部、実鬼皮、イガの部位毎に行ったが、いずれもカルシウム(CaO)含有量が最も多く(約30〜50%)、マグネシウム(MgO)、カリウム(KO)等も10〜20%程度含有し、強熱減量(LOI)が20〜40%程度であった。粉末X線回折の結果(図1)からは、650℃以下では炭酸カルシウムに由来するピークのみ確認でき、700℃及び750℃では炭酸カルシウムの一部が酸化カルシウムに変化し、800℃では炭酸カルシウムに由来するピークがほぼ完全に消失し、酸化カルシウムのみが検出された。また、栗樹皮の熱分析の結果(図2)からは、炭酸カルシウムの脱炭酸反応に由来する重量減少が約600〜700℃で確認された。粉末X線回折と熱分析の結果を比較すると、炭酸カルシウムから酸化カルシウムへの脱炭酸反応の開始温度が異なるが、これは昇温速度や最高温度保持時間の違いによるものと思われる。いずれにせよ、熱分析試験で確認されたとおり、600℃以上の高温で焼却(灰化)された灰は、炭酸カルシウムの脱炭酸に伴い酸化カルシウムを含むことが分かる。
【0020】
また、通常の水簸(精製)方法に従い、酸化カルシウム(試薬)0.5gに水30mlを加えて45分撹拌、4度の水交換を行った。この水交換による上澄み液のアルカリ度とpHの変化を調査した。アルカリ度は10.5前後で下がらず(図3)、pHも12.8から全く下がらなかった(図4)。このことから酸化カルシウムは溶解度が大きく、灰中に存在すると中和反応を困難にすると考えられる。なお、図3及び4において、1番最初に水に懸濁させた時を第1回とし、1度目の水交換後を第2回、4度目の水交換後を第5回と呼ぶ。更には、後述する本発明の方法と同様に、0.1%酸化カルシウム水溶液にパスツールピペットの先端から炭酸ガスを吹き込むと全体が白濁し、遠心分離した上澄み液は中性となることを確認した(pH7.0、アルカリ度は0)。
【0021】
一方、栗の剪定枝葉焼却灰(図3及び4の「栗灰」)でも上記と同様の試験を行った。なお、この時の焼却方法は耐熱煉瓦製の試作焼却炉(灰化炉)によるものであり、温度制御はしていない。通常の水簸(精製)方法に従い、栗剪定枝葉灰0.5gの水30ml懸濁液を45分撹拌後に水交換という操作を5度繰り返した時のアルカリ度の変化(図3)を見ると、最初(第1回の懸濁)の上澄み液が9.3であり、第2回以降、2.7、1.1、0.5、0.5と変化した。つまりアルカリ度は1度目の水交換(第1回から第2回)により1/3以下に減少し、更に2度目の水交換(第2回から第3回)で1/2以下に減少した。ただし、3度目以降の水交換ではほとんど変化していない。pHは、第1回から第5回まで11.8、11.6、11.5、11.4、11.3とわずかに減少した(図4)。本発明の方法と同様に2gの栗の剪定枝葉焼却灰を20mlの蒸留水に懸濁させた液にパスツールピペットの先端から炭酸ガスを吹き込み15分間バブリングするとpHが7付近となった。
【0022】
なお、「アルカリ度」は、ガラス製遠心管に撹拌子及び1〜2gの試料を入れ、一定量の蒸留水(20〜30ml、灰重量の10倍から30倍)を加えて撹拌し、遠心分離(2000rpm、5分間)した後、上澄み液を分取し、これをフェノールフタレインを指示薬として1/10Nの塩酸で滴定し試料1g当たりの中和に要する0.1mol/L−HClの必要量(ml)として算出した。
【0023】
上記の各実験結果を踏まえ、高温で焼却(灰化)するほどカルシウム分は炭酸塩から酸化物となりやすく、その酸化カルシウムの存在が水簸(精製)による中和を困難として、作業に長期間と大量の水を要すると考えられるが、本発明に従えば酸化カルシウムの炭酸塩化と中和反応を促進する2つの効果により極めて少ない回数の水交換で済むようになる。
【0024】
すなわち、高温で焼却(灰化)されて炭酸カルシウム(CaCO)以外に酸化カルシウム(CaO)が多量に生成しても、その焼却灰の水懸濁液中に炭酸(CO)ガスを吹き込むことで炭酸カルシウム(CaCO)へと変換が行われる。それと同時に炭酸ガスが水に溶けることで中和(pHの低下)の効果もある。
【0025】
また、灰の水懸濁液中に炭酸ガスをバブリングすることで、灰及び懸濁液の撹拌混合の効果があり、撹拌作業を省くことができる。なお、本発明者らは炭酸ガスを用いない場合、つまり従来の水簸(精製)方法を採用した場合、灰の水懸濁液撹拌時間と滴定アルカリ度の関係から、1回の水簸で可能な限りpHやアルカリ度を低下させるには45分以上の撹拌作業が必要であり、本発明と同等の品質(カルシウム・カリウム・マグネシウム等の元素組成簡易定量値)を持つ水簸灰を得るには最低でも4回以上の水交換が必要であることを確認した。その上、この場合は実用上、撹拌機等の設備が必要であり、本発明の方が容易で利便性のある手法である事は明らかである。
【0026】
図5に本発明による水簸(精製)方法のフローチャート、図6に実施に関わる機器構成を示す。焼却灰は耐熱煉瓦による焼却炉(灰化炉)を用いて焼成(灰化)したものである。カルシウムを主成分とする農林系廃棄物であればどのような焼却灰でも本発明を適用できる。1日目に、焼却炉(灰化炉)によって得た焼却灰(約3kg)に水道水(約40L)を加えて20目程度の篩で大きな粒子(燃えかす、炭)を除去する〔S01〕。次に、この篩下の懸濁液(pH11.6)に炭酸ガスを1時間程度バブリングしながら連続供給する〔S02〕。次に、これを一晩放置して灰を沈殿させる〔S03〕。
【0027】
2日目には、上澄み液を捨てて新たな水道水(約50〜60L、第1回より若干多目の水量)を加えながら40目程度の篩に通す(pH9.9)〔S04〕。この懸濁液に、2度目の炭酸ガスによるバブリングを中和(pH7.0)するまで行い(1〜4時間程度)〔S05〕、一晩放置する〔S06〕。なお、40目の篩上残渣は元素分析の結果から、主成分であるカルシウム分が比較的少なく、珪酸分や鉄分等の不純物が多いため、捨てることとする。
【0028】
3日目には、上澄み液を捨て、目の細かい袋状に加工した濾布(メッシュクロス、目開き5〜10μm程度)を用いて濾過し、その濾布に灰を入れたまま、例えば2層式洗濯機の脱水層で遠心脱水し、乾燥機内で乾燥させる〔S07〕。濾布の目開きは、5μmより細かい目にすると目詰まりにより濾過速度の低下を招き、10μmより大きな目にすると小さな灰の粒子は濾布を通過し収量(収率)の低下を招くため、5〜10μm程度が望ましい。
【0029】
なお、第1回の水投入では炭酸ガスを吹き込まなくてもカリウムイオンが多く溶出するので、水交換を1度行った第2回以降に炭酸ガスバブリングを行うと使用炭酸ガス量を減らせる。
【0030】
ここで炭酸ガスを数箇所から吹き込む、撹拌機を使用する、灰の水懸濁液を加熱するなどして酸化カルシウムと炭酸ガスの反応を促進させたり、水交換(灰の沈殿)のために一晩放置せずに遠心分離等により強制的に灰と水を分離するなどすれば、水簸作業時間・期間が更に短縮できることは容易に予想できる。
【0031】
上述の水簸作業とは別に、段落〔0005〕で示した従来の方法による水簸作業(約2ヶ月)を行った。この時の灰の水懸濁液撹拌時間は2〜3分とした。なお、一般には懸濁液の上水のぬるぬるとした感触がなくなるまで水簸作業を行うべきとされるが、本発明者らは概ねpHが10以下でぬるぬるとした感触がなくなることを確認したため、pH10以下を水簸作業終了の目安とした。得られた釉薬原料の元素分析結果を比較すると、表1に示すように、本発明の方がカルシウム含有量やLOI(強熱減量、主に脱炭酸による重量減)が多く、カリウムやマグネシウム分の含有量が少ない結果が得られた。つまり、本発明の方がより効果的な水簸(精製)ができたと言える。
【0032】
【表1】

【実施例1】
【0033】
次に、本発明による水簸(精製)を経た灰(粉末)を他の代表的な釉薬原料(粉末)と混合し、水に懸濁させた状態で素焼(約800℃)の陶磁器に浸しがけにより施釉して本焼成を行った。
【0034】
釉薬原料の調合割合は、長石0〜100%、合成藁灰0〜100%、本発明による水簸灰0〜100%(重量%;配合比は20%間隔で全21配合)であり、施釉した粘土(素地)は笠間土をベースとした陶器土、本焼成は電気炉による酸化焼成(最高温度1250℃まで100℃/hで昇温し、1h保持)とガス炉による還元焼成(SK9半倒)を行った。
【0035】
他の原料との配合比により様々な釉調(表面の質感)と発色を示した。本発明による水簸(精製)灰を多く配合した釉では、釉薬原料として市販されている天然灰に遜色のない「灰釉」を連想させる独特の釉調、発色を示した。皿、カップ等の形状に施釉した場合でも良好な結果が得られた。
【符号の説明】
【0036】
1 炭酸ガスボンベ
2 炭酸ガス調整器
3 ガスチューブ
4 灰の水懸濁液が入った容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムを主成分とする草木の焼却灰を原料とする釉薬の製造方法であって、焼却灰の懸濁水に炭酸ガスを吹き込む工程を有することを特徴とする釉薬の製造方法。
【請求項2】
焼却灰が、草木を野焼き又は600℃以上で焼却して得られることを特徴とする請求項1に記載の釉薬の製造方法。
【請求項3】
懸濁水に炭酸ガスを吹き込む工程の後に、上澄水のpHが10以下の場合に、濾布を用いた前記懸濁水の濾過残留物を脱水乾燥することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の釉薬の製造方法。
【請求項4】
カルシウムを主成分とする草木の焼却灰を原料とする釉薬の製造方法であって、焼却灰の懸濁水を篩にかける第1篩分け工程と、次に該篩を通過した懸濁水に炭酸ガスを吹き込む第1吹込み工程と、次に該懸濁水の静置後の上澄水を捨てて新たな水を加えながら篩にかける第2篩分け工程と、次に該篩を通過した懸濁水に炭酸ガスを吹き込む第2吹込み工程と、次に該懸濁水の静置後の上澄水を濾過する第3篩分け工程と、次に得られた濾過残留物を脱水乾燥する工程と、を有することを特徴とする釉薬の製造方法。
【請求項5】
第1篩分け工程の篩が20目で、第1吹込み工程の吹込み時間が約1時間で、第2篩分け工程の篩が40目で、第2吹込み工程の吹込み時間が1〜4時間で、第3篩分け工程に濾布を用いることを特徴とする請求項4に記載の釉薬の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−96978(P2012−96978A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256292(P2010−256292)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(591106462)茨城県 (45)
【出願人】(506376724)笠間焼協同組合 (1)