説明

重送検出装置及び重送検出方法

【課題】シールが貼付されたシート状部材でも正確に重送検出できる、重送検出装置、及び重送検出方法を提供する。
【解決手段】シート状部材を搬送する搬送路を挟んで配置された超音波発信手段1から送信された超音波信号は、シート状部材を透過して超音波受信手段2によって受信される。受信された信号のA/D変換値の時系列なヒストグラムを作成し、ヒストグラムの各山の平均値を算出する。この平均値を比較することにより重送か否かの判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナーやOCRなどのように帳票を搬送して読み取る装置において、特に超音波センサを利用することにより複数枚の帳票が重なって搬送された場合にこれを検出するための重送検出装置及び重送検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナーやOCRなどのように帳票を搬送して読み取る装置においては、重送検出装置を用いて、帳票が複数枚重なって搬送されてしまうことによる誤動作を防止している。
【0003】
重送検出装置における重送検出方式には、光透過式、機械式、超音波式などの方式が知られている。
光透過式とは、搬送される帳票に光を照射し、帳票を透過した光量の大きさで帳票の厚みを検出することにより、重送か否かを検出する方式である。
機械式とは、物理的に帳票の厚みを測定することにより、重送か否かを検出する方式である。
超音波式とは、帳票の厚みの違いにより超音波の減衰量が異なることを利用して重送か否かを検出する方式である。
【0004】
光透過式は、印刷されている部分が存在すると透過光の光量が変化することにより誤検出するという問題がある。
また、機械式は、応答性が低いために高速搬送には使えないということ、及び、帳票がぴったりと重なっている場合には検出できないという問題がある。
超音波式は、上述のような問題がないため広く利用されている。
【0005】
超音波式の重送検出装置として、超音波受信信号の位相変化を検出して重送であるか否かを判定する装置(特許文献1参照)が提案されている。
【0006】
特許文献1に記載された重送検出装置は、図9に示すように、シート部材101が搬送される搬送路を挟むように超音波送信手段102と超音波受信手段103とを配置したものである。超音波送信手段102は、駆動回路105に接続され、駆動回路105は、制御回路104に接続されている。
超音波受信手段103は、アンプ106に接続され、アンプ106は、A−D変換器107に接続されている。
【0007】
次に図9に示した重送検出装置の動作について説明する。
駆動回路105は、制御回路104からの信号に基づいて超音波信号を出力する。超音波発信手段102は、駆動回路105からの超音波信号に基づいて超音波を発生させる。
【0008】
超音波発信手段102から発生した超音波は、超音波受信手段103によって受信される。ここで、超音波発信手段102と超音波受信手段103の間にシート部材101が存在すると、超音波はシート部材101により減衰するので、超音波受信手段103からの出力信号も減衰する。超音波受信手段103からの出力信号は、アンプ106で増幅されて、A−D変換器107によりアナログ信号からデジタル信号へと変換される。
【0009】
重送判定は、超音波発信手段102から超音波が発信されていないときの超音波受信手段103の出力信号、すなわち、ノイズ信号と、超音波が発信されているときの超音波受信手段103の出力信号との比を基に行う。
【0010】
ノイズ信号と、出力信号との比を用いる方法は、出力信号のみを用いる方法と比較して、外的要因の変化等によるアンプ106の増幅率の変動の影響を受けないため、重送検知の精度が低下しないとしている。
【0011】
また、重送判定は、シート部材101が、超音波送信手段102と超音波受信手段103の間に無い場合と、ある場合との超音波受信手段103からの出力信号の位相差を比較することによっても行う。
これにより、静電気や接着剤等でぴったり貼り付いた紙の重送も検知できるとしている。
【特許文献1】特許第3752228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に示したような従来の重送検出装置では、複数のシート部材が重なって搬送された場合はすべて重送と判定することになる。そのため、プライバシー保護のために目隠しシールが貼られた紙や、シーリングはがきなどのような意図的に2枚の紙を貼り付けたものについても、重送と誤検出してしまうという問題があった。その結果、装置が止まり業務が中断してしまうことになる。
【0013】
本発明は、かかる実情に鑑み、目隠しシールが貼られた紙や、シーリングはがきなどのように意図的に2枚の紙を貼り合わせたものについても、重送と誤検出することの無い重送検出装置及び重送検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の課題は、下記の各発明によって解決することができる。
即ち、本発明では、搬送路上を搬送されてくるシート状部材の重送を検出する装置において、超音波をシート状部材の平坦面に向けて発信する超音波発信手段と、前記超音波発信手段に対してシート状部材の搬送路を挟んで対向する位置に配置された、前記超音波発信手段からの超音波を受信する超音波受信手段と、前記超音波受信手段からの出力レベルのヒストグラムを生成する手段と、前記ヒストグラムにおける各ピークの出力レベルの平均値を求める手段と、各ピークの前記平均値に基づき、前記ヒストグラムにおける各ピークを、シート状部材の異なる断面形状パターンに対応付ける手段と、シート状部材の断面形状パターンの経時的変化及び前記平均値に基づいて重送であるか否かを判定する手段と、を具備することを最も主要な特徴となしている。
【0015】
また、本発明では、前記断面形状パターンとして、少なくとも、シート状部材1枚の第1のパターンと、シート状部材2枚が接着された第2のパターンと、シート状部材2枚が接着されずに重なった第3のパターンと、が定義されており、シート状部材の断面形状パターンの経時的変化として、第2のパターン、第3のパターン、第2のパターンの順に変化した場合は、重送と判定しないことを主要な特徴となしている。
【0016】
更に、本発明では、搬送路上を搬送されてくるシート状部材の重送を検出する方法であって、超音波をシート状部材の平坦面に向けて発信する超音波発信手段と、前記超音波発信手段に対してシート状部材の搬送路を挟んで対向する位置に配置された、前記超音波発信手段からの超音波を受信する超音波受信手段と、を備えた重送検出装置を用いて、前記超音波受信手段からの出力レベルのヒストグラムを生成するステップと、前記ヒストグラムにおける各ピークの出力レベルの平均値を求めるステップと、各ピークの前記平均値に基づき、前記ヒストグラムにおける各ピークを、シート状部材の異なる断面形状パターンに対応付けるステップと、シート状部材の断面形状パターンの経時的変化及び前記平均値に基づいて重送であるか否かを判定するステップと、を実行することを最も主要な特徴となしている。
【0017】
更にまた、本発明では、前記断面形状パターンとして、少なくとも、シート状部材1枚の第1のパターンと、シート状部材2枚が接着された第2のパターンと、シート状部材2枚が接着されずに重なった第3のパターンと、が定義されており、シート状部材の断面形状パターンの経時的変化として、第2のパターン、第3のパターン、第2のパターンの順に変化した場合は、重送と判定しないことを主要な特徴となしている。
【0018】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
シート状部材を透過した超音波の信号強度(超音波信号受信手段からの出力値)の頻度分布を時系列に算出することにより、シート状部材の搬送方向の縦断面の厚みに対応した信号強度分布が得られる。この信号強度分布を用いることにより、シート状部材が重送なのか、シールを貼ってあるのか判定することができる。そのため、目隠しシールが貼られた紙や、シーリングはがきなどのように意図的に2枚の紙を貼り合わせたものを重送として誤検出することなく重送判定が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の重送検出装置は、超音波受信手段からの出力値の時系列の頻度分布を算出する手段を具備している。これにより、シート状部材の搬送方向の縦断面の厚みに対応した前記出力値を得ることができる。これにより、シート状部材の搬送方向の縦断面の厚みの変化を知ることができるため、目隠しシールが貼られた紙や、シーリングはがきなどのように意図的に2枚の紙を貼り合わせたものを搬送しても、誤検出することなく重送判定が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づいて具体的に説明する。尚、本実施形態においては、重送検出対象としてのシート状部材としてはがきを例にとって説明するが、これに限定されるものではなく、フィルムや紙幣、帳票などであってもよい。
【0021】
図1は、本発明の重送検出装置の概略図である。図2は、シールが貼付されたはがきの平面図である。図3は、図2のIII−III断面図である。図4は、A/Dコンバーターからの出力値の時系列な推移の一例である。図5は、A/Dコンバーターからの出力値のヒストグラムである。図6(a)は、図5におけるヒストグラムの山(ピーク)の一つを拡大した図、図6(b)は、出力値の平均値を求める式である。図7は、図6(b)の式で求めた平均値の時系列的変化と、その平均値に対応するはがきの部位を示した図である。図8は、重送検出方法のフロー図である。
【0022】
まず、本発明の重送検出装置の概略構成について説明する。
図1は、本発明の重送検出装置の概略図である。本発明の重送検出装置は、超音波発信手段1と、超音波受信手段2と、アンプ4と、A/Dコンバーター6と、マイコン5と、駆動回路3と、を具備している。超音波発信手段1と超音波受信手段2とは、はがき7を搬送する搬送路において、搬送されるはがき7の表面と裏面とを挟み込んで対向するように配置されている。超音波発信手段1は、駆動回路3に接続され、駆動回路3は、マイコン5に接続されている。超音波受信手段2は、アンプ4に接続され、アンプ4は、マイコン5に接続されたA/Dコンバーター6に接続されている。
【0023】
マイコン5は、駆動回路3の制御を行い、それに伴って駆動回路3からは、信号が出力される。駆動回路3から出力された信号は、超音波発信手段1によって超音波信号に変換されて、超音波受信手段2に向けて送信される。超音波信号が、超音波発信手段1から出力されて、超音波受信手段2に受信されるまでの進路を超音波の進路10とする。
【0024】
超音波送信手段1と超音波受信手段2との間には、搬送路が存在し、はがき7が搬送されてくる。はがき7は、図1に示す矢印方向に搬送される。そのため、超音波の進路10にはがきの前部が到着したときから、はがきの後部が超音波の進路10からはずれるときまで、超音波の進路10は、はがきによりふさがれることになる。
【0025】
超音波信号は、超音波の進路10をはがきにふさがれることにより減衰する。また、超音波の進路10をふさいでいるはがきの枚数、シール貼付の有無等によっても、超音波信号の減衰率は変化する。このように、はがきの有無等によって減衰した超音波信号は、超音波受信手段2によって受信される。
【0026】
超音波受信手段2によって受信された超音波信号は、電気信号に変換されてアンプ4に出力される。アンプ4に入力した電気信号は、アンプ4によって増幅されてA/Dコンバーター6に出力される。A/Dコンバーター6に入力した電気信号は、A/Dコンバーター6によりデジタル信号に変換されてマイコン5へと出力される。マイコン5に入力したデジタル信号は、マイコン5によって解析され、重送か否か判定される。
【0027】
次に、本発明の実施形態の動作について説明する。シールが貼付されたはがきが搬送された場合を例にとって説明するが、これに限定されるものではなく、シート状の部材であれば、例えばフィルムや帳票等、その他のものでも適用できる。
【0028】
図2は、シールが貼付されたはがきの平面図である。はがき7の中央部にはシール8が貼付されている。シール8は、シール8の周辺部では、のり付け部9においてはがき7とのり付けされているが、シール8の中央部でははがき7とのり付けされていない。このため、シール8の中央部と、はがき7との間には、微少な隙間が存在している。
【0029】
図3は、図2におけるIII−III断面図である。はがき7の表面中央部にはシール8が貼付されている。シール8は、その周辺部でのり付け部9によって、はがき7に貼付されている。シール8の中央部とはがき7との間には空気層11が存在している。領域1とは、はがき7の搬送方向に垂直な、異なる2つの面で挟まれた空間に、はがきが存在しない領域のことである。領域2、領域3、領域4とは、それぞれ、はがき7の搬送方向に垂直な、異なる2つの面で挟まれた空間に、はがきのみ存在する領域、はがきと、シールのみが存在する領域、はがきと、シールと、はがきとシールとで挟まれた空気層11のみが存在する領域のことである。
【0030】
図3に示すように、超音波の進路10が領域1にある場合には、超音波の進路10には遮蔽物が存在しない。次に、はがき7が矢印で示される方向に搬送されると、領域2においては、超音波の進路10には、はがき7が1枚存在することになる。更にはがき7が搬送されると、領域3においては、超音波の進路10には、はがき7と、シール8とが存在することになる。更にはがき7が搬送されると、領域4においては、超音波の進路10には、はがき7と、空気層11と、シール8とが存在することになる。更にまたはがき7が搬送されると、超音波の進路10は、再び領域3に入り、超音波の進路10には、はがき7と、シール8とが存在することになる。更にはがき7が搬送されると、超音波の進路10は、再び領域2に入り、超音波の進路10には、はがき7だけが存在することになる。更に、はがき7が搬送されると、超音波の進路10は、再び領域1に入り、超音波の進路10には遮蔽物が存在しないことになる。
【0031】
図4は、A/Dコンバーターからの出力値の時系列な推移の一例である。領域1に超音波の進路10が位置しているときのA/Dコンバーターからの出力値を16進数表示したものが、領域1の範囲の数値である。同様に、領域2から領域4、領域4から領域1の範囲で示している数値は、それぞれの領域に超音波の進路10が位置しているときの、A/Dコンバーターからの出力値を16進数表示したものである。一つの領域に複数の数値があるのは、一定の搬送距離ごとにサンプリングしているため、同一領域でも複数回サンプリングして複数のデータが得られるためである。
【0032】
尚、データの値、データ数とも例として示したものであり、実際の測定条件等によっては、データの値、データ数とも変化してくることはもちろんである。また、この例では、超音波受信手段2から出力されたアナログ信号を、16進数の00からFFまで、すなわち8ビットで量子化しているが、量子化ビット数が8ビットに限定されるわけではなく、状況に応じて様々な量子化ビット数を選択することができる。
【0033】
領域1では、超音波の進路10を遮るものが無いため、超音波信号はあまり減衰することなく超音波受信手段2に到達し受信される。そのため、超音波受信手段2からの出力信号は大きいのものとなり、A/Dコンバーターによりデジタル信号化される際は、大きい数値に変換される。
【0034】
領域2では、超音波の進路10上にはがき7が存在するため、超音波信号は、はがき7を透過する際減衰する。そして、減衰した信号が、受信されてデジタル信号化されるため、デジタル信号化された数値は、領域1のときよりも小さい値となる。
【0035】
領域3では、超音波の進路10上には、はがき7と、シール8とが存在する。このため、超音波信号は、はがき7と、シール8とを透過することで、領域2のときよりも更に減衰する。そして、減衰した信号が、受信されてデジタル信号化されるため、デジタル信号化された数値は、領域2のときよりも更に小さい値となる。
【0036】
領域4では、超音波の進路10上には、はがき7と、空気層11と、シール8とが存在する。このため、超音波信号は、はがき7と、空気層11と、シール8とを透過することで領域3のときよりも更に減衰する。そして、減衰した信号が、受信されてデジタル信号化されるため、デジタル信号化された数値は、領域3のときよりも更に小さい数値となる。
【0037】
再び現れる、領域3、領域2、領域1についてのデジタル信号化された数値については、前記の説明と同様の理由の値となる。
【0038】
ここで、同一領域における複数の数値が同一でないのは、電気部品のバラツキや、はがき7、空気層11、シール8の厚み、超音波透過特性のバラツキによる影響のためである。
【0039】
図5は、A/Dコンバーターからの出力値の頻度分布を表したヒストグラムである。横軸は、A/Dコンバーターからの出力値を示し、縦軸は前記出力値の頻度を表している。この図に示すように、各領域ごとに頻度の山が形成されている。これは、同じ領域での超音波の減衰率は変わらないので、同じ領域で得られたA/Dコンバーターからの出力値は同じような値となるためである。
【0040】
図6(a)は、図5におけるヒストグラムの山の一つを拡大した図である。この図に示すように、頻度の山が一本のピークでなく幅を持つのは、前述したように、電気部品のバラツキや、はがき7、空気層11、シール8の厚み、超音波透過特性のバラツキによる影響のためである。
【0041】
図6(b)は、図6(a)で示すような各頻度の山の平均値を求めるための式である。図6(a)に示すように、A/Dコンバーターからの出力値は、ばらついている。このばらついた中で、最も頻度の高い値(中心として図示)と、その両端3つ(左端3、右端3として図示)のグラフを形成する全出力値のデータの和を前記全出力値のデータ数で除した値を平均値としている。
【0042】
ここで、前述の頻度の山の平均値を求める方法は一例であり、様々な方法を適用することができる。例えば、一つの山の中で、ある一定以上の頻度を持つデータ全ての値の和を求め、求めた和の値を、和を求める為に使用したデータの数で除するという方法も考えられる。その他、一般的に頻度の山の平均値を求める方法として知られている方法は、どれでも採用することができる。
【0043】
図7は、図6(b)の式で求めた平均値の時系列的変化と、その平均値に対応するはがきの部位を示した図である。図7における縦軸は、超音波の進路10に各領域が達した場合の、A/Dコンバーターからの出力値の平均値を示している。よって、横軸は、経過時間を示し、かつ、はがき7の各領域の位置をも示している。
【0044】
図4に示されるような、A/Dコンバーター6からの出力値を基に、図5のヒストグラムを作成し、図6(b)の式を使って平均値を求め、図7を作成することは、マイコン5により行われる。
【0045】
次に、重送判定方法について説明する。
重送判定は、マイコン5によって行われ、図7を基に次のように重送の判定がなされる。
【0046】
領域4が検出されなかった場合は重送ではないと判定される。領域4の検出は、領域4として設定した値より小さい出力値の平均値が検出できるかどうかにより行う。重送の場合は、重なったはがきとはがきとの間には空気層が存在するので、A/Dコンバーターからの出力値の平均値は、領域4として設定された値に近い値となるからである。ここで、領域4とした設定値を検出する代わりに、領域4と領域3との間に値を設定して、その値より低い出力値の平均値が検出されなかったときに、重送ではないと判定することもできる。この場合は、ノイズ等が原因となる誤動作を防止することができる。
【0047】
領域4が検出された場合において、領域4が2つの領域3に挟まれている場合は、重送ではないと判定する。この場合は、シールが貼付されたはがきが搬送されたと考えられるからである。ここで、領域3に挟まれているか否かの判断は、時系列な順番で、領域3が検出された後、領域4が検出され、その後さらに領域3が検出されたかどうかによって行われる。領域3の検出は、領域3として設定された値の範囲に属する出力値の平均値が検出されるかどうかにより行う。
【0048】
領域4が検出された場合において、領域4が2つの領域3に挟まれていない場合は、重送と判定する。
【0049】
このように、本発明においては、従来では重送と判定していた、シールが貼付されたはがきにおいても、重送ではないと正確に判定することができる。
【0050】
次に本発明の実施方法について説明する。
図8は、本発明の実施に係る重送検出方法のフロー図である。最初に、サンプリングを開始する(S100)。サンプリングの開始とは、超音波発生手段1から超音波を発生させ、超音波受信手段2で前記超音波の受信を始めることである。受信された超音波の信号は、A/Dコンバーター6によってデジタル信号に変換されて、マイコン5に送信されることになる。ここで、サンプリングの開始は、はがき7の先端が超音波の進路10に達する位置より10mm手前から始める。この10mmの区間でサンプリングされたデータが領域1のデータとなる。ここで、サンプリングの開始位置は、前記10mm手前に制限されず、いろいろな位置をとることができる。
【0051】
次に、全データのサンプリングが終了したかどうかの判定が行われる(S101)。この判定は、はがき7の後端が超音波の進路10を横切ってからさらに、はがき7が10mm搬送された時点で全データのサンプリングが終了したと判定される。前記の10mm搬送される間でサンプリングされたデータが、2番目に現れる領域1のデータとなる。終了と判定されなかった場合は、終了と判定されるまで、サンプリングを続けることになる。ここで、全データのサンプリングが終了したと判断する時点は上記の時点に制限されず、いろいろな時点を選ぶことができる。
【0052】
次に、サンプリングされた全データのヒストグラムを作成して、各頻度の山ごとに平均値を求める(S102)。平均値は、図6(b)で示した式を用いて求めることができるが、この方法に限らずいろいろな方法が採用できるのは前述の通りである。
【0053】
次に、はがきが2枚重なった部分があるかどうかの判定を行う(S103)。これは、領域4の平均値と領域3の平均値との間の値を判定基準値として設定し、この判定基準値を下回る平均値が検出されるかどうかによって行われる。検出されなかった場合は、このはがきは正常として処理が継続される(S104)。検出された場合は、次のS105のステップに進む。
【0054】
次に、S102で作成したヒストグラムにおいて、領域1以外の山が2個以上あるかどうかの判定を行う(S105)。これは、まず、前記ヒストグラムにおいて、所定以上サンプル数が集まったものを山と判断する。次に、各山の平均値を図6(b)の式で求めて、その平均値の差分が所定以上の大きさの場合を別の山と判断して山の数を計測することにより行う。
【0055】
山の数が一つの場合は、山の平均値が所定の値(領域3の平均値と領域4の平均値との間に設定された値、以下、2枚レベルと称す)より大きいかどうか比較し(S106)、大きい場合は正常であるとして処理を継続し(S108)、そうでない場合は、異常として処理される(S107)。
【0056】
山の数が2個以上の場合は、各山の平均値が2枚レベルより大きいかどうかを比較し(S109)、大きい場合は正常であるとして処理を継続し(S110)、小さい場合は次のステップS111に進む。
【0057】
次に、時系列データを作成する(S111)。これは、図7に示すように、サンプリングを開始してからの時間経過に対応させて、ヒストグラムの山の平均値を求めるものである。作成した時系列の平均値データ中に、領域4として設定された数値と同じ平均値が、領域3として設定された数値と同じ平均値に挟まれて検出されるかどうかの判定を行う(S112)。ここで、領域4として設定された数値も、領域3として設定された数値もある幅を持った数値とすることができ、その幅の範囲に入る平均値が検出できるかどうかで判定を行うこともできる。検出された場合は、正常であるとして処理を継続し(S114)、検出されなかった場合は異常として処理される(S113)。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の重送検出装置、及び重送検出方法は、プリンタ、スキャナ等のコンピュータの周辺機器において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る重送検出装置の概略図である。
【図2】シールが貼付されたはがきの平面図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】A/Dコンバーターからの出力値の時系列な推移の一例である。
【図5】A/Dコンバーターからの出力値のヒストグラムである。
【図6】(a)図5におけるヒストグラムの山の一つを拡大した図である。 (b)出力値の平均値を求める式である。
【図7】図6(b)の式で求めた平均値の時系列的変化と、その平均値に対応するはがきの部位を示した図である。
【図8】重送検出方法のフロー図である。
【図9】重送検出装置の概略図である。
【符号の説明】
【0060】
1 超音波送信手段
2 超音波受信手段
3 駆動回路
4 アンプ
5 マイコン
6 A/Dコンバーター
7 はがき
8 シール
9 のり付け部
10 超音波の進路
11 空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路上を搬送されてくるシート状部材の重送を検出する装置において、
超音波をシート状部材の平坦面に向けて発信する超音波発信手段と、
前記超音波発信手段に対してシート状部材の搬送路を挟んで対向する位置に配置された、前記超音波発信手段からの超音波を受信する超音波受信手段と、
前記超音波受信手段からの出力レベルのヒストグラムを生成する手段と、
前記ヒストグラムにおける各ピークの出力レベルの平均値を求める手段と、
各ピークの前記平均値に基づき、前記ヒストグラムにおける各ピークを、シート状部材の異なる断面形状パターンに対応付ける手段と、
シート状部材の断面形状パターンの経時的変化及び前記平均値に基づいて重送であるか否かを判定する手段と、
を具備することを特徴とする重送検出装置。
【請求項2】
前記断面形状パターンとして、少なくとも、シート状部材1枚からなる第1のパターンと、シート状部材2枚が接着された第2のパターンと、シート状部材2枚が接着されずに重なった第3のパターンと、が定義されており、
シート状部材の断面形状パターンが経時的に、第2のパターン、第3のパターン、第2のパターンの順に変化した場合は、重送と判定しないことを特徴とする請求項1に記載の重送検出装置。
【請求項3】
搬送路上を搬送されてくるシート状部材の重送を検出する方法であって、
超音波をシート状部材の平坦面に向けて発信する超音波発信手段と、
前記超音波発信手段に対してシート状部材の搬送路を挟んで対向する位置に配置された、前記超音波発信手段からの超音波を受信する超音波受信手段と、を備えた重送検出装置を用いて、
前記超音波受信手段からの出力レベルのヒストグラムを生成するステップと、
前記ヒストグラムにおける各ピークの出力レベルの平均値を求めるステップと、
各ピークの前記平均値に基づき、前記ヒストグラムにおける各ピークを、シート状部材の異なる断面形状パターンに対応付けるステップと、
シート状部材の断面形状パターンの経時的変化及び前記平均値に基づいて重送であるか否かを判定するステップと、
を実行することを特徴とする重送検出方法。
【請求項4】
前記断面形状パターンとして、少なくとも、シート状部材1枚からなる第1のパターンと、シート状部材2枚が接着された第2のパターンと、シート状部材2枚が接着されずに重なった第3のパターンと、が定義されており、
シート状部材の断面形状パターンが経時的に、第2のパターン、第3のパターン、第2のパターンの順に変化した場合は、重送と判定しないことを特徴とする請求項3に記載の重送検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−156010(P2008−156010A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343376(P2006−343376)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000233033)日立コンピュータ機器株式会社 (253)
【Fターム(参考)】