説明

金型の冷却方法及び冷却装置

【課題】冷却水及びパージエアが流通する冷却通路が多数あっても各冷却通路毎に独立して且つ鋳造工程のほぼ全ての工程にわたって、冷却ホースの詰まりや鋳抜きピンの損壊等のトラブルを早期に検出することが可能な金型冷却方法及び冷却装置を提供。
【解決手段】金型Aに形成された冷却通路1に冷却水を通水した後に当該冷却通路1内に残った冷却水をエアパージするようにした金型の間欠通水冷却方法であって、冷却通路1に送出された冷却水及び/又はパージエアの送出信号と、冷却通路1の出口側における当該冷却水及び/又はパージエアの流通を検知する検知信号とを判定するか、又は冷却通路1に冷却水とパージエアを送出していない任意の鋳造工程時に冷却通路1に流路確認用エアを送出させ、該流路確認用エアの送出信号と冷却通路1の出口側における当該流路確認用エアの流通を検知した検知信号とを判定することにより、冷却通路の正常・異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト鋳造や樹脂成型等に用いられる金型を冷却するための方法及び装置に関し、特に、金型に形成された冷却通路内に冷却水を通水した後に当該冷却通路内に残った冷却水をエアパージするようにしたいわゆる間欠通水冷却方法及びそれを実施する冷却装置に関し、更に詳しくは、前記冷却水及びパージエアが流通する冷却通路の正常・異常を検知することが可能な金型の冷却方法及び冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト鋳造や樹脂成型等に用いられる金型を冷却する場合、金型に多数個形成された例えばφ2.5mm〜φ6.0mm程の細い冷却通路にそれぞれ冷却ホースを接続せしめ、射出直後から型開きまでの金型温度が上昇する時に間欠冷却装置から冷却ホースを介して冷却水を送出して金型を冷却し、その後、型開きから製品取出しまでの金型温度が下がる時には、金型の冷やし過ぎを防ぐために冷却水の送出を止めて冷却通路内に残った冷却水をエアパージするいわゆる間欠通水冷却方法が従来から行なわれている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
しかし、係る金型冷却法を実施する冷却装置では、各冷却通路に接続された冷却ホースが途中で潰れたり裂けたり外れたり、或いは冷却水に含まれるごみや水垢(スケール)等の不純物が冷却通路に詰まる等のトラブルを発生することがある。
加えて、間欠通水冷却法は、鋳抜きピン等の比較的肉厚が薄い部位に適用されることが多く、すると、製品の取り出し時や型締め時に鋳抜きピン等の比較的肉厚が薄い部位に余計な力がかかって当該部位が折れたり型割れを起こし、冷却通路が損壊されることがあった。
【0004】
この様なトラブルに気付かずに鋳造を続けると、不良品を大量に製造してしまうことになるだけでなく、溶融金属(又は溶融樹脂)が、破壊された冷却通路から金型の裏側に回り込んで固まってしまうと多大な損害をこうむる事になる。
【0005】
その為に、間欠通水冷却法を実施する上で、上記トラブル、すなわち冷却通路の正常・異常を早期に検出できるようにすることが希求されている。その1つとして、冷却通路内にパージエアを導入する際そのエア圧をチェックし、パージエアのエア圧が正常である場合のみ次の鋳造サイクルに移行するようにしたものがある(特許文献3参照。)。
【0006】
しかし、このパージエアのエア圧を利用して冷却通路の正常・異常を検出する方法では、パージエアの送出が停止された後型開きから次の射出までの間に発生したトラブル(鋳抜きピンの損壊や冷却ホースの詰まり等)を検出することができない。しかも、鋳抜きピンの損壊状態によってはパージエアのエア圧がさほど低下しない、冷却通路が多数ある場合に、損壊をきたした鋳抜きピン以外の冷却通路で詰まりが生じると逆に通常よりエア圧が上昇してしまう、等の理由により冷却通路の正常・異常を検知できないので、トラブルに気付くのが遅くなり、結果として大量の不良品を製造してしまうことになる。
【0007】
【特許文献1】特開平10-80758号公報
【特許文献2】特開2003−136188公報
【特許文献3】特開2002−239683公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、冷却水及びパージエアが流通する冷却通路が多数あっても各冷却通路毎に独立してしかも鋳造工程のほぼ全ての工程にわたって、冷却ホースを含む冷却通路の詰まりや冷却通路が形成された鋳抜きピンの損壊等のトラブルを早期に検出することが可能な金型の冷却方法及び冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明の請求項1に係る金型の冷却方法は、金型に形成された冷却通路に冷却水を通水した後に当該冷却通路内に残った冷却水をエアパージするようにした金型の間欠通水冷却方法であって、前記冷却通路に送出された冷却水及び/又はパージエアの送出信号と、前記冷却通路の出口側における当該冷却水及び/又はパージエアの流通を検知する検知信号とを判定することにより前記冷却通路の正常・異常を検出するようにしたことを特徴としたものである。
また、本発明の請求項2に係る金型の冷却方法は、金型に形成された冷却通路に冷却水を通水した後に当該冷却通路内に残った冷却水をエアパージするようにした金型の間欠通水冷却方法であって、前記冷却通路に冷却水とパージエアを送出して金型を冷却している時以外の任意の鋳造工程時に、前記冷却通路に流路確認用エアを送出させ、該流路確認用エアの送出信号と前記冷却通路の出口側における当該流路確認用エアの流通を検知した検知信号とを判定することにより前記冷却通路の正常・異常を検出するようにしたことを特徴としたものである。
この際、前記冷却通路に流路確認用エアを送出するタイミングとしては、冷却通路にトラブルが存在する状態で射出することを避けるためにも、型締め完了から射出直前までが好ましい。
そして、本発明の請求項3に係る金型の冷却装置は、金型に形成された複数の各冷却通路にそれぞれ独立して冷却水とパージエア及び流路確認用エアを送出する間欠冷却装置と、前記各冷却通路の出口側にそれぞれ設置され前記間欠冷却装置から送出された冷却水とパージエア及び流路確認用エアの流通を検知するフロースイッチと、前記間欠冷却装置から送出された冷却水・パージエア・流路確認用エアの送出信号と当該冷却水・パージエア・流路確認用エアの流通を検知した前記各フロースイッチの検知信号を判定する判定器とを備え、前記判定器において前記間欠冷却装置からの送出信号が検知されているのに前記各フロースイッチからの検知信号が検知されなかった場合に当該冷却通路の異常と判定するように構成したことを特徴としたものである。
【0010】
なお、本明細書において、その正常・異常が検出されるべき冷却通路としては、金型に直接形成された冷却通路(冷却穴)だけでなく、該冷却通路(冷却穴)に接続されて当該冷却通路(冷却穴)内に冷却水とパージエア及び流路確認用エアを送出するための冷却ホースも含むものである。
【0011】
また、前記間欠冷却装置から送出された冷却水とパージエア及び流路確認用エアの流通を検知するのに、フロースイッチに代えて流量センサを使用することも可能であるが、流量センサは一般的に高価でしかも高圧の冷却水とパージエアを交互に流通させるような環境下では故障しやすいのであまり好ましくない。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載の金型の冷却方法によれば、冷却通路に送出された冷却水及び/又はパージエアの送出信号と、前記冷却通路の出口側における当該冷却水及び/又はパージエアの流通を検知する検知信号とを判定することにより前記冷却通路の正常・異常を検出するようにしたので、冷却水又はパージエアの送出信号が検知されているのに冷却通路の出口側における当該冷却水又はパージエアの流通が検知されなかった場合に当該冷却通路の異常と判定することができるから、冷却工程時において冷却ホースを含む冷却通路の詰まりと損壊をパージエアの流通が検知されないという同じ現象として早期に検出することが出来る。
しかも、このケースで異常の判定が出た場合、冷却水の通水不良に起因する製品の品質に疑いがもたれることが多く、冷却通路のトラブルを早期に検出することが出来ることから、不良品の流出を未然に防ぐことが出来ると共に、射出時において射出された溶湯の勢いで鋳抜きピンが折れたり型割れを生じた場合にそれを検出することが可能となる。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の金型の冷却方法によれば、冷却通路に冷却水とパージエアを送出して金型を冷却している時以外の任意の鋳造工程時に、前記冷却通路に流路確認用エアを送出させ、該流路確認用エアの送出信号と前記冷却通路の出口側における当該流路確認用エアの流通を検知した検知信号とを判定することにより前記冷却通路の正常・異常を検出するようにしたので、流路確認用エアの送出信号が検知されているのに冷却通路の出口側における当該流路確認用エアの流通が検知されなかった場合に当該冷却通路の異常と判定することができるから、冷却通路に冷却水とパージエアを送出して金型を冷却している時以外の任意の鋳造工程時において、冷却ホースを含む冷却通路の詰まりと損壊をパージエアの流通が検知されないという同じ現象として早期に検出することが可能となる。
しかも、このケースで異常の判定が出た場合、型締め時や製品取り出し時に鋳抜きピンが折れたり型割れを生じて冷却通路にトラブルが生じた場合にそれを直ちに検出することが可能となる。このように射出直前までの冷却通路の損壊を検知できるようになるため、溶融金属(又は溶融樹脂)が破壊された冷却通路から金型の裏側に回り込んで固まってしまうという多大な損害を未然に防ぐことができる。
【0014】
更に、本発明の請求項3に記載の金型の冷却装置によれば、金型に形成された複数の各冷却通路にそれぞれ独立して冷却水とパージエア及び流路確認用エアを送出する間欠冷却装置と、各冷却通路の出口側にそれぞれ設置され前記間欠冷却装置から送出された冷却水とパージエア及び流路確認用エアの流通を検知するフロースイッチと、間欠冷却装置から送出された冷却水・パージエア・流路確認用エアの送出信号と当該冷却水・パージエア・流路確認用エアの流通を検知した各フロースイッチの検知信号を判定する判定器とを備え、前記判定器において間欠冷却装置からの送出信号が検知されているのに各フロースイッチからの検知信号が検知されなかった場合に当該冷却通路の異常と判定するように構成してなるので、冷却通路のトラブルを検知するための判定器をわざわざ設ける必要が無く、冷却水及びパージエアが流通する冷却通路が多数あっても、各冷却通路毎に独立して、しかも鋳造工程のほぼ全ての工程にわたって、冷却ホースを含む冷却通路の詰まりや冷却通路が形成された鋳抜きピンの損壊等のトラブルを早期に検出することが出来、よって不良品の大量製造を未然に防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な好適実施例を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は図示実施例のものに限定されるものではない。
図1は、本発明に係る金型の冷却方法及び装置を金型Aに適用した実施の一例を説明する模式図であり、図2は鋳造機の鋳造サイクル(工程)を説明する図である。
【0016】
金型Aには、冷却を必要とする所要の個所にその背面側からキャビティ側へ向けて、例えばφ2.5mm〜φ6.0mm程度の細い冷却通路1が多数個開穿形成されており、各冷却通路1にはそれぞれ従来と同様に、冷却ホース2を介して間欠冷却装置Bと接続された金型冷却パイプ(図示せず)が取外し可能に装着され、間欠冷却装置Bから各冷却通路1にそれぞれ独立して冷却水とパージエア及び流路確認用エアが送出されることにより、金型Aが適正な金型温度に維持される。
【0017】
すなわち、一連の鋳造工程(図2参照)において、射出直後から型開きまでの金型温度が上昇する時に、間欠冷却装置Bから冷却ホース2を介して冷却パイプより冷却通路1内に冷却水を送出することにより金型が冷却され、その後、型開きから製品取出しまでの金型温度が下がる時には、金型の冷やし過ぎを防ぐために、間欠冷却装置Bからの冷却水の送出を止めると共に、冷却通路1内に残った冷却水をパージエアで除去する(エアパージする)ことによって金型Aが適正な金型温度に維持される。
この様に、間欠冷却装置Bから金型Aの冷却通路1内に冷却水を送出しその後冷却通路1内に残った冷却水をエアパージする一連の動作を金型の冷却工程と称する。
【0018】
また、金型Aの各冷却通路1の出口側には、間欠冷却装置Bから送出された冷却水とパージエア及び流路確認用エアの流通を検知するためのフロースイッチ3をそれぞれ各冷却通路1毎に独立して配設せしめる。
【0019】
本発明で使用されるフロースイッチ5としては、市販されている通常のフロースイッチを使用することができるが、鋳造金型の周辺に設置する関係上できるだけ小型で堅牢なケース等に収容しえるものが望ましい。具体的には、フロースイッチの内部を流れる冷却水の流量変化によって動作するフラッパーがあり、冷却水・パージエア・流路確認用エアの流量が設定値より増加又は減少するとフラッパーの動作によりスイッチがオンして、電気信号(通水検知信号)を発信するタイプのものが好適に用いられる。
【0020】
そして、間欠冷却装置Bから各冷却通路1に送出された冷却水・パージエア・流路確認用エアの送出信号と当該冷却水・パージエア・流路確認用エアの流通を検知した各フロースイッチ3の検知信号とを判定するための判定器4とを備えて構成される。
【0021】
而して、金型Aが冷却を必要とする冷却工程時においては、間欠冷却装置Bから各冷却通路1に冷却水とパージエアを間欠送出して金型を冷却すると共に、上記冷却水及び/又はパージエアの送出信号と冷却通路1の出口側に配設されたフロースイッチ3による流通検知信号とを判定器4で判定することにより、各冷却通路1の正常・異常が検出される。
【0022】
すなわち、冷却工程時には、間欠冷却装置Bから各冷却通路1にそれぞれ冷却水とパージエアを順次送出して金型を冷却すると共に、間欠冷却装置Bから各冷却通路1に送出された上記冷却水及び/又はパージエアの送出信号を判定器4に送信するようにする。一方、各冷却通路1の出口側では、間欠冷却装置Bから送出された冷却水及び/又はパージエアの流通(の有無)をそれぞれ各フロースイッチ3で検知し、各フロースイッチ3で検知された検知信号を判定器4に送信するようにする。
その結果、判定器4において、間欠冷却装置Bから送出された冷却水及び/又はパージエアの送出信号が検知され且つフロースイッチ3からの冷却水及び/又はパージエアの流通検知信号が検知された場合を正常と判定し、間欠冷却装置Bからの送出信号が検知されているのにフロースイッチ3からの冷却水及び/又はパージエアの流通検知信号が検知されなかった場合を冷却通路1の異常と判定するものである。
【0023】
また、金型Aが冷却を必要としない冷却工程時以外の時、すなわち、冷却通路に冷却水とパージエアを送出していない時には、間欠冷却装置Bから各冷却通路1にそれぞれ流路確認用エアを送出させて、該流路確認用エアの送出信号を判定器4に送信し、一方、各冷却通路1の出口側に配設された各フロースイッチ3でもって上記流路確認用エアの流通(の有無)を検知して、その検知信号を判定器4に送信するようにする。
その結果、判定器4において、間欠冷却装置Bから流路確認用エアの送出信号が検知され且つフロースイッチ3からの流路確認用エアの流通検知信号が検知された場合を正常と判定し、間欠冷却装置Bからの送出信号が検知されているのにフロースイッチ3からの流路確認用エアの流通検知信号が検知されなかった場合を冷却通路1の異常と判定するものである。
【0024】
そして、金型Aが冷却を必要とする冷却工程時でも冷却工程時以外の時であっても、判定器4が冷却通路1の異常と判定した場合には、鋳造機やその周辺機器に異常を報せることが出来るように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る金型の冷却方法及び冷却装置の実施の一例を説明する模式図。
【図2】鋳造工程を説明するフロー図。
【符号の説明】
【0026】
A:金型 B:間欠冷却装置
1:冷却通路 2:冷却パイプ
3:フロースイッチ 4:判定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に形成された冷却通路に冷却水を通水した後に当該冷却通路内に残った冷却水をエアパージするようにした金型の間欠通水冷却方法であって、
前記冷却通路に送出された冷却水及び/又はパージエアの送出信号と、前記冷却通路の出口側における当該冷却水及び/又はパージエアの流通を検知する検知信号とを判定することにより前記冷却通路の正常・異常を検出するようにしたことを特徴とする金型冷却方法。
【請求項2】
金型に形成された冷却通路に冷却水を通水した後に当該冷却通路内に残った冷却水をエアパージするようにした金型の間欠通水冷却方法であって、
前記冷却通路に冷却水とパージエアを送出して金型を冷却している時以外の任意の鋳造工程時に、前記冷却通路に流路確認用エアを送出させ、該流路確認用エアの送出信号と前記冷却通路の出口側における当該流路確認用エアの流通を検知した検知信号とを判定することにより前記冷却通路の正常・異常を検出するようにしたことを特徴とする金型冷却方法。
【請求項3】
金型に形成された複数の各冷却通路にそれぞれ独立して冷却水とパージエア及び流路確認用エアを送出する間欠冷却装置と、前記各冷却通路の出口側にそれぞれ設置され前記間欠冷却装置から送出された冷却水とパージエア及び流路確認用エアの流通を検知するフロースイッチと、前記間欠冷却装置から送出された冷却水・パージエア・流路確認用エアの送出信号と当該冷却水・パージエア・流路確認用エアの流通を検知した前記各フロースイッチの検知信号を判定する判定器とを備え、前記判定器において前記間欠冷却装置からの送出信号が検知されているのに前記各フロースイッチからの検知信号が検知されなかった場合に当該冷却通路の異常と判定するように構成したことを特徴とする金型冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−73722(P2008−73722A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255484(P2006−255484)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000005256)株式会社アーレスティ (44)
【Fターム(参考)】