説明

金型冷却装置

【課題】 高い冷却能力を有し、かつ容易に金型温度を制御でき、さらに金型の冷却異常を検出できる金型冷却装置を提供する。
【解決手段】 金型Aに設けた冷却部1に水とエアを供給する金型冷却装置であって、水供給管2と、エア供給管3と、両供給管2,3が合流する合流部4と、合流部4と冷却部1とを接続する給水管5と、冷却部1から水とエアを排出する排水管7とを備え、給水管5の途中一部を断面積の大きな貯留管6としてあり、貯留管6の断面積が、上流側の給水管5の断面積の2.5倍〜4倍、長さが550mm〜750mmであり、貯留管6に水を貯留後、エアを圧送して、初めに水を冷却部1に噴出させ、その後水とエアの混合流体を噴出させる。その後さらに水とエアを交互に供給して水とエアの混合流体を複数回噴出させる。排水管7の途中には圧力計8が設けてあり、排水管7内の圧力を測定し、水および水とエアの混合流体の噴出異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型に設けた冷却部に水とエアを供給する金型冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト鋳造においては、金型や金型に挿入する鋳抜きピンなどを適切に冷却して温度管理をすることが、製品の高品質化を図るために重要である。冷却の方法としては、金型などに形成した冷却水路に冷却水を供給する方法が一般的であり、たとえば特許文献1や2の装置が提案されている。
文献1の装置は、金型Aに穿設された冷却穴A1内に冷却水を供給する冷却水供給径路2と、冷却穴A1内の冷却水をエアパージするための高圧エアを送るエアパージ径路3と、両径路2,3を合流させる流体合流部4とを備え、流体合流部4を通して冷却穴A1内に冷却水およびエアを交互に供給することにより金型Aを冷却する金型冷却装置であって、流体合流部4にクラッキング圧力より低い圧力の冷却水およびエアをそれぞれ冷却水供給径路2とエアパージ径路3内に維持させるチェック弁4a,4bを組み込むとともに、冷却水供給径路2から流体合流部4を通して冷却水を吐出した後にタイムラグをおいてエアパージ径路3から流体合流部4を通して高圧エアを吐出するものである。
また、文献2の装置は、金型1などに備えられた冷却水路4,5と連通可能に接続される冷却水管路6と、冷却水供給源に接続されかつ冷却水管路6に冷却水を供給する冷却水供給路11と、加圧エア供給源に接続されかつ冷却水管路6に加圧エアを供給する加圧エア供給路12とを備え、金型1内への鋳込みに際して予め設定されたタイミングで加圧エアとともに冷却水管路6内の所定量の冷却水を高い圧力で冷却水路4,5内に供給するものである。
【特許文献1】特開2003−136188号公報
【特許文献2】特開2005−46846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、文献1の装置においては、冷却水として高圧水吐出ポンプ1bで増圧した水を使用し、また、冷却水の圧送を止めた後に高圧エアを送るので、冷却水マニホールド5やホース6a、往復式冷却管6cの水が金型Aの冷却穴A1に高圧で噴出され、金型Aが冷えすぎてしまう。
また、文献2の装置は、冷却水が加圧エアとともに供給されるので、高い冷却能力を有するが、設定温度付近で金型の温度を微調整することは困難であると考えられる。
さらに、いずれの装置においても、小径の冷却管を備える鋳抜きピンなどを冷却しようとする場合、冷却管内に錆や水垢などが詰まり、冷却できないまま鋳造してしまうおそれがある。
【0004】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、高い冷却能力を有し、かつ容易に金型温度を制御でき、さらに金型の冷却異常を検出できる金型冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1の発明は、金型に設けた冷却部に水とエアを供給する金型冷却装置であって、水供給管と、エア供給管と、両供給管が合流する合流部と、該合流部と前記冷却部とを接続する給水管と、前記冷却部から水とエアを排出する排水管とを備え、前記給水管の途中一部を断面積の大きな貯留管としてあり、該貯留管の断面積が、上流側の前記給水管の断面積の2.5倍〜4倍であり、前記水供給管から水を供給して前記貯留管に水を貯留後、前記エア供給管からエアを圧送して、初めに前記給水管と前記貯留管の水を前記冷却部に噴出させ、その後水とエアの混合流体を噴出させることを特徴とする。
【0006】
本発明のうち請求項2の発明は、前記貯留管の長さが550mm〜750mmであることを特徴とする。
【0007】
本発明のうち請求項3の発明は、水を前記冷却部に噴出させ、その後水とエアの混合流体を噴出させた後、さらに前記水供給管および前記エア供給管から水とエアを交互に供給して水とエアの混合流体を複数回噴出させることを特徴とする。
【0008】
本発明のうち請求項4の発明は、前記排水管の途中に圧力計が設けてあり、水を前記冷却部に噴出させ、その後水とエアの混合流体の噴出が終了する前に、前記排水管内の圧力を測定し、水および水とエアの混合流体の噴出異常を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のうち請求項1の発明によれば、貯留管の断面積を上流側の給水管の断面積の2.5倍〜4倍にして、貯留管に水を貯留後、エアを供給することで、初めは水が冷却部に噴出し、その後水とエアの混合流体が噴出する。当初は貯留管に貯留された水がエアに押し出されるが、その後は、給水管に対して貯留管が広くなっていることで供給されたエアによって撹拌された水が噴出するのである。これにより、金型の冷却初期は水により設定温度近くまで急冷し、その後水とエアの混合流体により設定温度まで徐冷することができ、金型の温度を容易に制御できる。
【0010】
本発明のうち請求項2の発明によれば、貯留管の長さを550mm〜750mmとすることで、装置を大型化することなく、金型を冷却するために十分な量の水を貯留することができる。貯留管が長すぎると、装置全体が大型化してしまい、短すぎると、水の噴出時間が短くなって冷却能力が不足してしまう。
【0011】
本発明のうち請求項3の発明によれば、金型の形状や大きさなどの条件によって適宜水とエアの混合流体を噴出することで、さらに安定して金型の温度を制御できる。
【0012】
本発明のうち請求項4の発明によれば、排水管内の圧力測定により、水および水とエアの混合流体の噴出異常を検出できるので、冷却水の経路に錆や水垢などが詰まって冷却水が流れにくくなり、冷却不足のまま鋳造が行われることを防止し、製品の高品質化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の金型冷却装置の具体的な構成について、各図面に基づいて説明する。図1は、金型冷却装置の全体図であり、本装置は、水を供給する水供給源およびエアを供給するエア供給源に接続して使用するものである。水供給源には水用カプラ21が接続してあり、その下流には不純物を除去するためのストレーナ22を介して水用マニホールド23が接続してある。一方、エア供給源にはエア用カプラ31が接続してあり、その下流にはエア用マニホールド33が接続してある。水用マニホールド23からは三本の水供給管2が延びており、エア用マニホールド33からは三本のエア供給管3が延びているが、各水供給管同士、各エア供給管同士は互いに同等のものなので、以下においては特に断らない限り、それぞれの中の一本のみについて言及する。水供給管2には、水用ソレノイド弁24が接続してあり、エア供給管3には、エア用ソレノイド弁34が接続してある。そして、水供給管2とエア供給管3とは、各ソレノイド弁24,34の下流側に接続した合流部4において合流している。
合流部4の下流側には給水管5が接続してある。給水管5の下流側には金型Aに設けた冷却部1が接続してあり、冷却部1に水やエアを供給する。冷却部1の詳細は後述する。そして、給水管5の途中一部が、断面積の大きな貯留管6としてある。貯留管6の断面積は、その上流側の給水管5の断面積の2.5倍〜4倍とすることが望ましく、本実施例においては、上流側の給水管5の内径を5mm、貯留管6の内径を8mmとした(貯留管6の断面積は給水管5の断面積の2.56倍となる)。冷却部1には、水やエアを排出するための排水管7が接続してあり、さらにこの排水管7の途中に圧力計8が取り付けてある。
なお、水用マニホールド23には給水圧力計25および給水温度計26が接続してあり、エア用マニホールド33には、エア圧力計35が接続してある。また、水用マニホールド23およびエア用マニホールド33から貯留管6上流側の給水管5までは筐体41の中に納めてあり、圧力計8、給水圧力計25、給水温度計26およびエア圧力計35は筐体41の側面に取り付けてある。
【0014】
次に、給水管5と貯留管6との接続部分について、図2に基づき説明する。合流部から延びる給水管5にソケット27が接続されている。ソケット27は筐体41に形成した孔に嵌め込まれており、筐体41の外側からL字継手28が螺合されている。そして、L字継手28の下流側端部に貯留管6が接続されており、給水管5と貯留管6とが連通する。貯留管6の下流側端部と給水管5との接続部分についても同様である。
【0015】
次に、金型Aに設けた冷却部1について、図3に基づき説明する。金型Aは、金型固定中子a1と金型可動中子a2とを備え、両者の間に溶融金属を流し込むキャビティa3が形成されており、冷却部1は、金型固定中子a1に形成した孔に挿入した鋳抜きピン11と、鋳抜きピン11の中心軸上に形成した冷却穴12と、冷却穴12に挿入した冷却管13とを有する。冷却穴12は鋳抜きピン11の一端から他端近傍まで達するものであり、冷却管13は冷却穴12の底部近傍まで延びている。そして、給水管5が冷却管13と連通しており、排水管7が冷却穴12と連通している。給水管5から供給される水やエアは、冷却管13の中を通り、その先端から吐出されて冷却穴12(冷却管13の外側)を通って排水管7に排出される。この際、水やエアは熱せられた鋳抜きピン11と熱交換をして、鋳抜きピン11を冷却する。なお、図3(a)〜(c)に三種類の冷却部1を示したように、鋳抜きピン11には種々の長さ・太さのものがあり、その長さによって冷却管13の長さも異なる。
【0016】
次に、本装置により金型を冷却する際の動作について説明する。水供給源から供給される冷却水は、水用カプラ21からストレーナ22を介して水用マニホールド23を通り、水用ソレノイド弁24に到達する。ダイカストマシンの金型閉め信号を金型冷却装置が受けると、水用ソレノイド弁24が0.7秒間開き、冷却水は給水管5を通り、貯留管6に貯留される。一方、エア供給源から供給されるエアは、エア用カプラ31からエア用マニホールド33を通り、エア用ソレノイド弁34に到達する。ダイカストマシンの射出スタート信号を金型冷却装置が受けると、エア用ソレノイド弁34が14.5秒間開き、初めは貯留管6から水が押し出されて約5秒間噴出し、その後水とエアの混合流体が約9.5秒間噴出し、給水管5を通り冷却管13から鋳抜きピン11の冷却穴12に供給される。鋳抜きピン11の冷却穴12内壁に噴出した水および水とエアの混合流体は、熱せられた鋳抜きピン11と熱交換をして鋳抜きピン11を冷却し、排水管7を通って排出される。排水管7の途中に設けた圧力計8により、エア用ソレノイド弁34が開いてから13.5秒経過時に圧力を測定し、水と、水とエアの噴出異常を検出・確認する。エアの供給完了後、水用ソレノイド弁24を0.1秒間開き、その後エア用ソレノイド弁34を3秒間開く動作を5回繰り返し、水とエアの混合流体を噴出して鋳抜きピン11を冷却する。このようにすることで、たとえば鋳抜きピン11の設定温度を125度とすれば、最初の5秒間で水により125度近くまで急冷し、その後の9.5秒間で水とエアの混合流体により125度まで徐冷し、さらにその後水とエアの混合流体を繰り返し噴出することで容易に温度を125度に保つよう制御できる。なお、上記の水用ソレノイド弁24およびエア用ソレノイド弁34の開時間や、開閉の繰り返し回数は、一例に過ぎず、冷却対象となる金型の形状・大きさや設定温度などによって適宜増減できる。この際、最初の水用ソレノイド弁24の開時間を長くして貯留管6に貯留する水の量を多くすると、水の噴出時間は長くなるが、その後の水とエアの混合流体の噴出時間はほぼ一定である。
【0017】
ここで、貯留管の断面積および長さについて検討する。図4(a)〜(c)は、種々の断面積および長さを有する貯留管を用いて、貯留管に水を貯留する時間(すなわち、最初に水用ソレノイド弁を開く時間)を変化させた場合の、水の噴出時間を示すグラフである。貯留管は、内径が10mm、8mm、6.5mmの三種類、長さが750mm、550mm、350mmの三種類で、それらの組み合わせにより計九種類となる。また、貯留管の上流側に接続される給水管5の内径は5mmであり、給水管の断面積に対する貯留管の断面積の倍率では4倍、2.56倍、1.69倍の三種類となる。さらに、水圧は0.35MPa、エア圧は0.45MPaとした。
グラフより、貯留管の断面積が大きいほど、また長さが長いほど、そして貯留時間が長いほど、水の噴出時間が長くなることがわかる。上述のとおり、本冷却装置は当初の水の噴出により金型を設定温度近くまで急冷するものであり、噴出時間は冷却対象の条件により定まるものであるが、実際の冷却においては、少なくとも1秒程度は必要であり、この条件を満たすには、貯留時間を0.4秒以上とした上で、貯留管の内径が8mm以上は必要であることがわかる。また、一般に市販されているこの種の管の内径は10mmのものが最大であり、それ以上の径のものを使用することは現実的ではない。そして、貯留管の内径を8mm以上とすれば、長さは550mm以上とすることで、1秒以上の噴出時間が得られることがわかる。なお、長さを750mmより長くすると、装置が大型化してしまい好ましくない。
また、図4(d)は、貯留管の断面積と、水とエアの混合流体の噴出時間との関係を示すグラフである。貯留時間が0.4秒以上の範囲では、とくに内径10mmと8mmの場合に噴出時間のばらつきが少ないことがわかる。本冷却装置は、当初の水の噴出により金型を設定温度近くまで急冷後、混合流体により徐冷するものであるが、当初の急冷の時間を調節して設定温度より一定値だけ高い温度まで冷却すれば、そこから設定温度まで冷却するために要する時間は一定であるから、混合流体の噴出時間は一定であることが望ましく、この点からも貯留管の内径は8mm〜10mmとすべきであることがわかる。
以上より、貯留管としては、内径が8mm〜10mm(断面積が給水管の2.5倍〜4倍)、長さが550mm〜750mmのものを用いることが望ましい。
【0018】
本発明の金型冷却装置は、上記の実施形態に限定されない。たとえば、金型に穴を形成して冷却水を流し込み、金型を直接冷却するものであってもよい。また、実施例は三系統の冷却水経路を有するものであるが、系統数は、冷却対象となる金型の形状や大きさなどによって適宜増減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の金型冷却装置の全体図。
【図2】給水管と貯留管の接続部分の断面図。
【図3】冷却部の断面図。
【図4】貯留管の断面積、長さおよび貯留時間と水または混合流体の噴出時間との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0020】
1 冷却部
2 水供給管
3 エア供給管
4 合流部
5 給水管
6 貯留管
7 排水管
8 圧力計
A 金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型(A)に設けた冷却部(1)に水とエアを供給する金型冷却装置であって、
水供給管(2)と、エア供給管(3)と、両供給管(2,3)が合流する合流部(4)と、該合流部(4)と前記冷却部(1)とを接続する給水管(5)と、前記冷却部(1)から水とエアを排出する排水管(7)とを備え、
前記給水管(5)の途中一部を断面積の大きな貯留管(6)としてあり、該貯留管(6)の断面積が、上流側の前記給水管(5)の断面積の2.5倍〜4倍であり、
前記水供給管(2)から水を供給して前記貯留管(6)に水を貯留後、前記エア供給管(3)からエアを圧送して、初めに前記給水管(5)と前記貯留管(6)の水を前記冷却部(1)に噴出させ、その後水とエアの混合流体を噴出させることを特徴とする金型冷却装置。
【請求項2】
前記貯留管(6)の長さが550mm〜750mmであることを特徴とする請求項1記載の金型冷却装置。
【請求項3】
水を前記冷却部(1)に噴出させ、その後水とエアの混合流体を噴出させた後、さらに前記水供給管(2)および前記エア供給管(3)から水とエアを交互に供給して水とエアの混合流体を複数回噴出させることを特徴とする請求項1または2記載の金型冷却装置。
【請求項4】
前記排水管(7)の途中に圧力計(8)が設けてあり、水を前記冷却部(1)に噴出させ、その後水とエアの混合流体の噴出が終了する前に、前記排水管(7)内の圧力を測定し、水および水とエアの混合流体の噴出異常を検出することを特徴とする請求項1、2または3記載の金型冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−99698(P2010−99698A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273366(P2008−273366)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(500442674)株式会社ダイエンジニアリング (9)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)
【Fターム(参考)】