説明

金型水冷穴への高密着銅配管

【課題】本発明は、金型の細長い穴の部分を冷却する際に、穴に銅のパイプを差し込んで内部に水を流すことにより急速に冷却することのできる金型水冷穴への高密着銅配管を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、金型の突起部に設けた管状の水冷穴の奥にインサート部材を入れるインサート挿入と、インサート部材の孔に入れたロッド棒をガイドにして銅パイプを水冷穴に入れ先端をインサート部材の溝に嵌め込むパイプ挿入と、垂直にした水冷穴にカシメ用パンチを入れ加圧してインサート部材及び銅パイプを接合するカシメ加工と、垂直にした水冷穴にバルジ用パンチを入れ加圧して内側から押し広げるバルジ加工とからなり、水冷穴の内部を仕切板により送水路と排水路に分けて水を流すことにより金型を銅パイプを介して冷却することを特徴とする金型水冷穴への高密着銅配管の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型の細長い穴の部分を冷却する際に、穴に銅のパイプを差し込んで内部に水を流すことにより急速に冷却することのできる金型水冷穴への高密着銅配管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、金型の細長い穴の部分を冷却するときは、穴に銅の棒を差し込み、銅の棒の穴から出ている部分を冷やし、熱伝導率を利用して銅の棒の穴に入っている部分を間接的に冷却していた。
【0003】
特許文献1に記載されているように、金型の局部的な温度上昇を防止し、金型の温度むらを少なくし、熱応力の発生を防止するダイカスト用金型の部分冷却方法及び金型という発明も公開されている。
【特許文献1】特開平09−057419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、金型の温度むらを少なくするために、金型の穴に銅棒を挿入して熱伝導によりゆるやかに冷却しているので、短時間で冷却したい場合には不向きである。
【0005】
そこで、本発明は、金型の細長い穴の部分を冷却する際に、穴に銅のパイプを差し込んで内部に水を流すことにより急速に冷却することのできる金型水冷穴への高密着銅配管を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、金型1の突起部2に設けた管状の水冷穴2aの奥にインサート部材3を入れるインサート挿入10aと、前記インサート挿入10a後にインサート部材3の孔3aに入れたロッド棒4cをガイドにして銅パイプ4を水冷穴2aに入れ先端をインサート部材3の溝3bに嵌め込むパイプ挿入10bと、前記パイプ挿入10b後に垂直にした水冷穴2aにカシメ用パンチ8を入れ加圧してインサート部材3及び銅パイプ4を接合するカシメ加工10cと、前記カシメ加工10c後に垂直にした水冷穴2aにバルジ用パンチ9を入れ加圧して内側から押し広げるバルジ加工10dとからなり、水冷穴2aの内部を仕切板5により送水路6bと排水路7bに分けて水を流すことにより金型1を銅パイプ4を介して冷却することを特徴とする金型水冷穴への高密着銅配管の構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上の構成であるから以下の効果が得られる。第1に、銅のパイプの中を水が循環するので、金型の冷却スピードを上げることができる。即ち、金型の冷却効率をコントロールすることが可能となる。
【0008】
第2に、銅パイプを介すことで、水冷穴内面の水腐食による割れを防止することができる。即ち、銅パイプの厚さ及びインサート部材の厚さを調整することにより、水冷却の緩和が容易にでき、金型の寿命も延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、金型の細長い穴の部分を冷却する際に、穴に銅のパイプを差し込んで内部に水を流すことにより急速に冷却するという目的を、金型の突起部に設けた管状の水冷穴の奥にインサート部材を入れるインサート挿入と、インサート部材の孔に入れたロッド棒をガイドにして銅パイプを水冷穴に入れ先端をインサート部材の溝に嵌め込むパイプ挿入と、垂直にした水冷穴にカシメ用パンチを入れ加圧してインサート部材及び銅パイプを接合するカシメ加工と、垂直にした水冷穴にバルジ用パンチを入れ加圧して内側から押し広げるバルジ加工とからなる加工を施すことで実現した。
【実施例1】
【0010】
以下に、添付図面に基づいて、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管について詳細に説明する。
【0011】
金型水冷穴への高密着銅配管は、金型1の突起部2に設けた管状の水冷穴2aの奥にインサート部材3を入れるインサート挿入10aと、前記インサート挿入10a後にインサート部材3の孔3aに入れたロッド棒4cをガイドにして銅パイプ4を水冷穴2aに入れ先端をインサート部材3の溝3bに嵌め込むパイプ挿入10bと、前記パイプ挿入10b後に垂直にした水冷穴2aにカシメ用パンチ8を入れ加圧してインサート部材3及び銅パイプ4を接合するカシメ加工10cと、前記カシメ加工10c後に垂直にした水冷穴2aにバルジ用パンチ9を入れ加圧して内側から押し広げるバルジ加工10dとからなり、水冷穴2aの内部を仕切板5により送水路6bと排水路7bに分けて水を流すことにより金型1を銅パイプ4を介して冷却することを特徴とする。
【0012】
図1は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管を施す金型の外観図であり、図2は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管を施す金型の正面断面図であり、図3は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管を施す金型の正面断面の拡大図である。
【0013】
金型1は、自動車の車輪等に使用する型であり、高圧鋳造により成型する。成型の際、約700℃から800℃の湯が注入され凝固するが、冷却を適切に行わないと熱膨張等によりひび割れが発生する。即ち、冷え過ぎても、また冷えなくても割れてしまう。
【0014】
金型1では、中心付近に複数設けた突起部2の内部に水冷穴2aを空け、水冷穴2aに水を循環させることにより冷却する。尚、熱処理前の金型はまだ柔らかい状態なので、水冷穴2aを容易に空けることができる。
【0015】
本発明は、従来の水冷穴2aに銅の棒を入れ、銅の棒を冷却して熱伝導により間接的に金型1を冷却するよりも効率が良い。また、銅パイプ4により直接水冷穴2aに水を流さないため金型の腐食を防止でき、金型1の寿命も延ばすことができる。
【0016】
水冷穴2aに取り付けた銅パイプ4の中に水を流すため、熱伝導率の面で速く冷却することが可能であるが、更に、銅パイプ4の厚さ等を調整することで、冷却効率をコントロールすることもできる。
【0017】
金型1は、やき入れにより堅くなるが、材料としては、じん性があるもの、即ち粘り強さのあるもので、かつ、堅さのあるものを使用する。じん性があると割れにくく、仮に割れても伝播しにくい。
【0018】
金型1は、下型1a及び上型1b等からなるが、冷却は同様の方法で行うことができるため、下型1aを例に説明する。金型1には、中心まで均等に冷却できるように、突起部2の内側に水冷穴2aを空ける。
【0019】
金型1自体に水が接触しないように、水冷穴2aの穴先端には銅製のインサート部材3を入れ、水冷穴2aの管部には中空の銅パイプ4を入れ、インサート成型をする。また、送水管6から送られる水を水冷穴2a内を循環させるために仕切板5も設ける。
【0020】
図4は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管で使用するインサート部材の正面図である。インサート部材3は、孔3a、溝3b及び湾曲部3c等からなり、成型の容易な銅を材質とする。
【0021】
インサート部材3の平面は、水冷穴2aと同様に円形であり、インサート部材3の正面は、上部が長方形状で、下部が半円状である。また、正面の断面は、中心に孔3aが空けられるため略U字状である。
【0022】
孔3aは、成型後の空洞の基になるものである。溝3bは、銅パイプ4を嵌め込むためにインサート部材3の周囲を凹ます。湾曲部3cは、水冷穴2aの先端の形状に合わせて湾曲させる。
【0023】
図5は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管で使用する銅パイプの正面断面図である。銅パイプ4は、管4a及び貫通孔4b等からなり、インサート部材3と同様に、銅を材質とする。
【0024】
管4aは、水冷穴2aの管部の形状に合わせて管状であり、内部が貫通孔4bにより中空である。サイズとしては、例えば、直径約8ミリメートルの管4aや、直径約20ミリメートルの管4aを使用する。
【0025】
図6は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管で使用するインサート部材及び銅パイプを水冷穴に挿入した状態の図であり、図7は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管で使用するインサート部材及び銅パイプを水冷穴に挿入してかしめた状態の図である。
【0026】
金型1の突起部2に設けられた水冷穴2aに対し、まずインサート部材3を奥まで挿入し、次に銅パイプ4を挿入する。銅パイプ4の先端は、インサート部材3の溝3bに嵌合させる。
【0027】
銅パイプ4の貫通孔4bからカシメ用パンチ8を入れ、インサート部材3を孔3aから銅パイプ4の方向に潰していくことにより、銅パイプ4に接合させると共に水冷穴2aの空洞を拡げる。
【0028】
図8は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管の加工手順を示すフローチャートである。加工手順10は、インサート挿入10a、パイプ挿入10b、カシメ加工10c及びバルジ加工10dの工程からなる。
【0029】
尚、加工手順10は、金型1に存在する水冷穴2aの数だけ繰り返す。更に、仕切板5、送水管6及び排水管7等により水冷穴2a内に水路を設けることにより、金型1の水冷が可能となる。
【0030】
図9は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管のインサート挿入の手順を示す図である。インサート挿入10aの工程は、下型1aの突起部2に空けた水冷穴2aにインサート部材3を挿入する。
【0031】
下型1aは、突起部2の反対側の下面からドリル等で水冷穴2aを加工し、やき入れにより熱処理したものである。水冷穴2aの空いた側を上に向けた状態にし、インサート部材3を、湾曲部3cを下に向けて水冷穴2aの奥まで入れる。
【0032】
図10は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管のパイプ挿入の手順を示す図である。パイプ挿入10bの工程は、インサート挿入10aの後に、下型1aの突起部2に空けた水冷穴2aに銅パイプ4を挿入する。
【0033】
水冷穴2aに入れたインサート部材3に空けられた孔3aにロッド棒4cを差し込み、ロッド棒4cをガイドにして銅パイプ4を入れる。銅パイプ4の先端は、インサート部材3の溝3bに嵌め込む。
【0034】
図11は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管のカシメ加工の手順を示す図である。カシメ加工10cの工程は、パイプ挿入10bの後に、下型1aの突起部2に挿入されたインサート部材3と銅パイプ4をかしめる。
【0035】
水冷穴2aが垂直になるように固定し、カシメ用パンチ8のパンチ8aを銅パイプ4の内側に通す。パンチ8aの先端をインサート部材3の孔3aに押し込み加圧する。インサート部材3と銅パイプ4をかしめたら、ラム8bを上昇させ、パンチ8aを外す。
【0036】
図12は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管のバルジ加工の手順を示す図である。バルジ加工10dの工程は、カシメ加工10cの後に、下型1aの突起部2に挿入されたインサート部材3と銅パイプ4を内側から押し拡げる。
【0037】
水冷穴2aを垂直に固定し、バルジ用パンチ9のパンチ9aを銅パイプ4の内側に通す。パンチ9aは、ウレタンゴム等の弾性体であり、インサート部材3及び銅パイプ4を加圧する。適度な厚さになったら、ラム9bを上昇させ、パンチ9aを外す。
【0038】
図13は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管を施し仕切板を用いて水を流した状態を示す図である。加工手順10によりインサート部材3及び銅パイプ4が取り付けられた突起部2の水冷穴2aに水を循環させる。
【0039】
水冷穴2aの中に仕切板5を、奥側に通路が確保されるように設置し、水冷穴2aの内部を二分する。水冷穴2aの空いた側を下に向け、水を通すための送水管6及び排水管7を設置する。
【0040】
送水管6から送られた水は、送水口6aから二分された一方である送水路6bを通り、水冷穴2aの奥で折り返し、二分されたもう一方である排水路7bを通って、排水口7aから排水管7に送り出される。
【0041】
仕切板5により水の流れが制御されるので、インサート部材3及び銅パイプ4を介して効率良く冷却することができる。また、水冷穴2a自体は、インサート部材3及び銅パイプ4により覆われているので、腐食することがない。
【0042】
図14は、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管を施し送水口を延ばして水を流した状態を示す図である。仕切板5を使用せずに、インサート部材3及び銅パイプ4が取り付けられた突起部2の水冷穴2aに水を循環させる。
【0043】
水を通すための送水管6及び排水管7を設置した際、送水管6を水冷穴2aの奥まで水が送れるくらいまで延ばす。送水管6は、水冷穴2aの中心に通し、銅パイプ4と送水管6の間に通路を確保する。
【0044】
送水管6からの水は、送水路6bを通って水冷穴2aの奥まで送られ、送水口6aから放出された水は、送水路6bの外側の排水路7bを通って、排水口7aから排水管7に送り出される。
【0045】
以上のように、本発明である金型水冷穴への高密着銅配管は、銅のパイプの中を水が循環するので、金型の冷却スピードを上げることができる。即ち、金型の冷却効率をコントロールすることが可能となる。
【0046】
また、銅パイプを介すことで、水冷穴内面の水腐食による割れを防止することができる。即ち、銅パイプの厚さ及びインサート部材の厚さを調整することにより、水冷却の緩和が容易にでき、金型の寿命も延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管を施す金型の外観図である。
【図2】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管を施す金型の正面断面図である。
【図3】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管を施す金型の正面断面の拡大図である。
【図4】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管で使用するインサート部材の正面図である。
【図5】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管で使用する銅パイプの正面断面図である。
【図6】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管で使用するインサート部材及び銅パイプを水冷穴に挿入した状態の図である。
【図7】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管で使用するインサート部材及び銅パイプを水冷穴に挿入してかしめた状態の図である。
【図8】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管の加工手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管のインサート挿入の手順を示す図である。
【図10】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管のパイプ挿入の手順を示す図である。
【図11】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管のカシメ加工の手順を示す図である。
【図12】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管のバルジ加工の手順を示す図である。
【図13】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管を施し仕切板を用いて水を流した状態を示す図である。
【図14】本発明である金型水冷穴への高密着銅配管を施し送水口を延ばして水を流した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 金型
1a 下型
1b 上型
2 突起部
2a 水冷穴
3 インサート部材
3a 孔
3b 溝
3c 湾曲部
4 銅パイプ
4a 管
4b 貫通孔
4c ロッド棒
5 仕切板
6 送水管
6a 送水口
6b 送水路
7 排水管
7a 排水口
7b 排水路
8 カシメ用パンチ
8a パンチ
8b ラム
9 バルジ用パンチ
9a パンチ
9b ラム
10 加工手順
10a インサート挿入
10b パイプ挿入
10c カシメ加工
10d バルジ加工

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の突起部に設けた管状の水冷穴の奥にインサート部材を入れるインサート挿入と、前記インサート挿入後にインサート部材の孔に入れたロッド棒をガイドにして銅パイプを水冷穴に入れ先端をインサート部材の溝に嵌め込むパイプ挿入と、前記パイプ挿入後に垂直にした水冷穴にカシメ用パンチを入れ加圧してインサート部材及び銅パイプを接合するカシメ加工と、前記カシメ加工後に垂直にした水冷穴にバルジ用パンチを入れ加圧して内側から押し広げるバルジ加工とからなり、水冷穴の内部を仕切板により送水路と排水路に分けて水を流すことにより金型を銅パイプを介して冷却することを特徴とする金型水冷穴への高密着銅配管。
【請求項2】
仕切板の代わりに送水口を水冷穴の奥まで延ばすことにより送水路と排水路を設けたことを特徴とする請求項1に記載の金型水冷穴への高密着銅配管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−136512(P2007−136512A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334227(P2005−334227)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(302007770)アジアエンジニアリング株式会社 (2)
【Fターム(参考)】