説明

金型用冷却パイプ

【課題】内パイプの先端吐水口から吐出された冷却水の金型冷却穴内での滞留時間を簡単な構造でもって長引かせ、相対的に金型の冷却効果を高めることができ、しかも水垢の除去等のメンテナンスを容易な金型用冷却パイプを提供する。
【解決手段】外パイプ1の中に内パイプ2を配置すると共に内パイプ2を金型冷却穴5の内まで突出するように外パイプ1より長く形成して外パイプと内パイプとで冷却水の往路7と復路8を形成せしめ、金型冷却穴5の内に突出される内パイプ2の外周に、コイル状に形成された流れ誘導部材4を設け、金型冷却穴5内で熱交換される冷却水を金型冷却穴5の内部において上記流れ誘導部材4に沿わせて冷却水の復路8に誘導させるように構成し、更に前記流れ誘導部材を、内パイプの外周面及び/又は金型冷却穴内周面と摺接するように内パイプの軸方向に移動自在に設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト鋳造や射出成形等に使用される金型の金型冷却穴に装着して金型を冷却するための金型用冷却パイプに関し、特に、外パイプの中に内パイプを配置すると共に内パイプを金型冷却穴の内まで突出するように外パイプより長く形成して冷却水の往路と復路を形成せしめ、これら外パイプ及び内パイプの一端側に上記冷却水往路に通じる入水接続口と冷却水復路に通じる出水接続口を備えたホース接続口金を取付けて構成される金型用冷却パイプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の金型用冷却パイプは従来から多くの改良提案がなされ実用に供されている(例えば、特許文献1、2参照。)。そして、この種の金型用冷却パイプを用いて金型を冷却する場合に、金型冷却穴内に供給する冷却水の供給量に応じて冷却効果を高めることができることは自明である。
しかし、従来のものでは、金型冷却穴の内部における冷却水の滞留時間が短いために、金型冷却穴内で十分な熱交換がなされないまま冷却水復路から排出されてしまい、その結果、供給される冷却水の量の割には金型の冷却効果が低かった。その為に、特に製品肉厚が厚い部位では金型の冷却不足を生じることがあった。
【0003】
【特許文献1】特開2004−154796号公報
【特許文献2】特開2004−298921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、金型冷却穴の内部における冷却水の滞留時間を簡単な構造でもって長引かせることを可能とし、もって、相対的に金型の冷却効果を高めることができ、しかも金型冷却穴内部における水垢の除去等のメンテナンスを容易ならしめることが可能な金型用冷却パイプを安価に提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成する本発明に係る金型用冷却パイプは、外パイプの中に内パイプを配置すると共に内パイプを金型冷却穴の内まで突出するように外パイプより長く形成して外パイプと内パイプとで冷却水の往路と復路を形成せしめ、これら外パイプ及び内パイプの一端側に上記冷却水往路に通じる入水接続口と冷却水復路に通じる出水接続口を備えたホース接続口金を取付けて構成される金型用冷却パイプであって、金型冷却穴の内に突出される前記内パイプの外周に、コイル状に形成された流れ誘導部材を設け、金型冷却穴内で熱交換される冷却水を上記流れ誘導部材に沿わせて前記冷却水の復路に誘導させるように構成してなることを特徴としたものである(請求項1)。
この際、前記流れ誘導部材は、内パイプの外周部分だけに止まらず、内パイプの外周から金型冷却穴の内部最奥まで至る長さに形成しても良い(請求項2)。
また、前記流れ誘導部材は、内パイプの外周面及び/又は金型冷却穴内周面と摺接するように内パイプの軸方向に移動自在に設けられことが好ましい(請求項3)。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る金型用冷却パイプによれば、金型冷却穴の内に突出される内パイプの外周に、コイル状に形成された流れ誘導部材を設け、金型冷却穴内で熱交換される冷却水を上記流れ誘導部材に沿わせて前記冷却水の復路に誘導させるように構成してなるので、金型冷却穴内の冷却水は流れ誘導部材に沿って螺旋状に流れ、その分だけ金型冷却穴内部での滞留時間を長引かせることができる。従って、金型冷却穴内部での熱交換を無駄なく十分に行なうことが可能となり、その結果、冷却水の供給量が少なくとも金型を冷却することが可能となり、相対的に金型の冷却効果を高めることが出来る。
【0007】
しかも、流れ誘導部材は、外パイプないしは内パイプを格別に加工して成形せずとも、例えば既存のコイルスプリングを転用して内パイプの外周に単に嵌挿装着するだけで済むので、構造が簡単で製作も容易であり、安価に提供することが出来る。
【0008】
また、特に請求項2に記載の金型用冷却パイプによれば、流れ誘導部材が、内パイプの外周から金型冷却穴の内部最奥まで至る長さに形成されているので、流れ誘導部材を内パイプの外周から脱落しないように外パイプないし内パイプに止着する手間並びに止着するための手段構成を省略することが可能となる。
【0009】
更に、特に請求項3に記載の金型用冷却パイプによれば、流れ誘導部材が、内パイプの外周面及び/又は金型冷却穴内周面と摺接するように内パイプの軸方向に移動自在に設けられているので、冷却水の流れる勢いでもって流れ誘導部材が内パイプの軸方向に動き、内パイプの外周面と金型冷却穴内周面が流れ誘導部材に擦られる。その結果、流れ誘導部材自体と内パイプ外周面及び金型冷却穴内周面の清掃(水垢などの除去)が自動的に行なわれるようになるので金型冷却穴内部におけるメンテナンスを容易ならしめることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な好適実施例を、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は図示した実施例のものに限定されるものではなく、いろいろなバリエーションが考えられる。
【0011】
本発明に係る金型冷却用パイプAは、互いに同心状に配置される外パイプ1及び内パイプ2と、これら外パイプ1及び内パイプ2の一端側に一体的に取付けられるホース接続口金3等で構成され、金型冷却穴5の内に突出される内パイプ2の外周部分に冷却水の流れ誘導部材4が取外し可能或いは取外し不能な状態に設けられる。
【0012】
そしてこの金型冷却用パイプAは、金型Bの背面側からキャビティ方に向けて穿設された金型冷却穴5に対して取外し可能に且つ当該金型冷却穴5内から冷却水が漏出しないように挿入装着され、更に金型冷却穴5から不用意に脱落しないように必要に応じて金型Bの背面側に設けた押え板6などでもって定置状態に固定される。
ちなみに図1及び図2に示した実施例のものは、外パイプ1の先端部外周に螺子11を形成せしめて金型Bに螺合装着することにより、金型冷却穴5に対して取外し可能に且つ金型冷却穴5内から冷却水が漏出しないように挿入装着されている。図1及び図2に示した実施例の他に、上記螺子11に替えてO-リングを装着しても良い。
【0013】
外パイプ1及び内パイプ2は従来と同様に、ステンレスや銅からなる所要の内径並びに長さを備えた中空パイプ材を用いて形成される。
この際、内パイプ2は、外パイプ1の中に同心状に配置されると共に、金型冷却穴5の内奥まで突出し得るように外パイプ1より長く形成され、図1に示した実施例の場合には、内パイプ2の中を冷却水往路7とし、外パイプ1の内周面と内パイプ2の外周面との間で冷却水の復路8が形成される。
なお、図1及び図2に示した実施例とは逆に、外パイプ1の内周面と内パイプ2の外周面との間を冷却水の往路7とし、内パイプ2の中を冷却水の復路としても良い。
【0014】
一方、外パイプ1及び内パイプ2の一端側に一体的に取付けられるホース接続口金3には、冷却水往路7に通じる入水接続口3aと、冷却水復路8に通じる出水接続口3bが備えられ、入水接続口3a及び出水接続口3bにはそれぞれ外部に通じている給水ホースと排水ホースが接続される。
【0015】
従って、図1及び図2に示した実施例の場合、ホース接続口金3の入水接続口3aから内パイプ2の中(冷却水の往路7)を通って内パイプ2の先端吐水口2aから吐出された冷却水は、金型冷却穴5の内部、すなわち金型冷却穴5の内周面5aと内パイプ2の外周面とで形成される空間内で熱交換されて、外パイプ1と内パイプ2の間で形成される冷却水復路8を通ってホース接続口金3の出水接続口3bから排出される。
【0016】
また、金型冷却穴5の内奥に突出挿入される内パイプ2の外周には、コイル状に形成された流れ誘導部材4が設けられる。
流れ誘導部材4は、金型冷却穴5内で熱交換される冷却水を金型冷却穴5の内部において当該流れ誘導部材4に沿わせて内パイプ2の外周を螺旋状に回転させながら冷却水復路8に誘導し得るように、コイル状に形成されて内パイプ2の外周に着脱可能或いは着脱不能状態に止着される。
【0017】
すなわち、流れ誘導部材4は、例えば既製の市販されているコイルスプリング材を所要の長さに切断したものを転用することができ、使用するコイルスプリング材の内径や、線径、長さ及びコイル(螺旋)のピッチ等は、金型用冷却パイプが装着される金型冷却穴5の冷却条件などにより最適なものが適宜選択される。
【0018】
この際、金型冷却穴5の内部において冷却水が流れ誘導部材4に沿って螺旋状に回転しながら流れるように、流れ誘導部材4の内周面が内パイプ2の外周面にできるだけ近接させ且つ流れ誘導部材4の外周面が金型冷却穴5の内周面5aにできるだけ近接するように設定することが好ましい。そうすれば、冷却水の流れを制御し易くなると同時に、金型冷却穴5の内周面5a側をより冷却し得るようになる。
【0019】
また、流れ誘導部材4は、図1に示した実施例のごとく内パイプ2の外周部分にのみ存在するように短く形成して設けても良いし、図2に示した実施例のごとく内パイプ2の外周部分だけに止まらず金型冷却穴5の内部最奥まで至る長さに形成して配設しても良い。そして後者の場合、流れ誘導部材4を外パイプ1の先端から金型冷却穴5の内部最奥までの距離(L)と同じか少し短く形成しても良いし、距離(L)よりも少し長く形成して金型冷却穴5に装着した際に流れ誘導部材4が圧縮されるようでも良い。
【0020】
この際、特に流れ誘導部材4を上記距離(L)よりも少し長く形成する場合には、冷却水の流れる勢いでもって流れ誘導部材4が内パイプの軸方向に動き得るように流れ誘導部材4として利用するコイルスプリングの剛性(バネ力)が小さいものを選択することが好ましい。
【0021】
更に、流れ誘導部材4は、内パイプ2の外周部分から脱落しないように内パイプ2又は外パイプ1に固着させても良いし、格別に固着させずに内パイプ2の軸方向に沿って自由に移動できるようにフリーな状態に設けても良い。特に、流れ誘導部材4を距離(L)よりも少し短く形成して内パイプ2の軸方向に沿って自由に移動できるようにフリーな状態に設ければ、この流れ誘導部材4自体及び内パイプ2外周の清掃(水垢などの除去など)が自動的に行なわれるようになる。
【0022】
この場合、流れ誘導部材4を、内パイプ2の外周面及び/又は金型冷却穴5の内周面と摺接するように内パイプ2の軸方向に移動自在に設けることが好ましい。すなわち、流れ誘導部材4の内径を内パイプ2の外径より少し大きく形成して内パイプ2の外周にフリーな状態に嵌挿させることにより、冷却水の流れる勢いでもって流れ誘導部材4が内パイプ2の軸方向に動き、その時に流れ誘導部材4が内パイプ2の外周面及び金型冷却穴5の内周面に摺接するようになる。
【0023】
また、流れ誘導部材4を内パイプ2の外周部分から脱落しないように取り付ける場合、内パイプ2又は外パイプ1に着脱可能な状態に取り付けても良いし、着脱不能な状態に取り付けても良い。具体的には、例えば図1に示した実施例の如く内パイプ2の先端部外周などに抜け止め突起ないし突条10を形成せしめ、その抜け止め突起ないし突条10に流れ誘導部材4を脱落しないように掛止させることにより取り付ける方法、或いは流れ誘導部材4の内径を内パイプ2の外径より少し小径に形成してカシメるように止着する方法、または流れ誘導部材4の一部を内パイプ2または外パイプ1に溶接することにより取り付ける方法などが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明実施の一例を示す金型の冷却穴に装着した状態の断面図。
【図2】本発明の他の実施例を示す金型の冷却穴に装着した状態の断面図。
【符号の説明】
【0025】
A:金型用冷却パイプ B:金型
1:外パイプ 2:内パイプ
3:ホース接続口金 3a:入水接続口
4:流れ誘導部材 3b:出水接続口
5:金型冷却穴 6:押え板
7:冷却水往路 8:冷却水復路
10:抜け止め突起ないし突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外パイプの中に内パイプを配置すると共に内パイプを金型冷却穴の内まで突出するように外パイプより長く形成して外パイプと内パイプとで冷却水の往路と復路を形成せしめ、これら外パイプ及び内パイプの一端側に上記冷却水往路に通じる入水接続口と冷却水復路に通じる出水接続口を備えたホース接続口金を取付けて構成される金型用冷却パイプであって、
金型冷却穴の内に突出される前記内パイプの外周に、コイル状に形成された流れ誘導部材を設け、金型冷却穴内で熱交換される冷却水を上記流れ誘導部材に沿わせて前記冷却水の復路に誘導させるように構成してなることを特徴とする金型用冷却パイプ。
【請求項2】
前記流れ誘導部材が、前記内パイプの外周から金型冷却穴の内部最奥まで至る長さに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の金型用冷却パイプ。
【請求項3】
前記流れ誘導部材が、前記内パイプの外周面及び/又は金型冷却穴内周面と摺接するように前記内パイプの軸方向に移動自在に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金型用冷却パイプ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−144457(P2007−144457A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341947(P2005−341947)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000005256)株式会社アーレスティ (44)
【Fターム(参考)】