説明

金属コア多層プリント配線板の製造方法

【目的】 硬化工程を1度有する従来の金属コア多層プリント配線板の製造方法を大きく変えることなく、スルーホールの信頼性が高く、放熱特性に優れた金属コア多層プリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【構成】 絶縁基板47aに内層用の回路47bが形成された内層回路板47と、Bステージ状のプリプレグ45及び46と、スルーホール用の穴加工が施された金属板43と、フィラー入り接着剤シート42と、銅箔41とを前記順序に積層して加圧加熱する金属コア多層プリント配線板の製造方法において、前記プリプレグ45と前記金属板43との間にフィラー入り接着剤シート44を介層して加圧加熱することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は金属コア多層プリント配線板の製造方法に係わり、更に詳しくはスルーホールの信頼性が高く、放熱性に優れた金属コア多層プリント配線板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】今日、早い速度で進む電子部品の高集積化、及び電子機器の実装の高密度化に伴い、放熱特性に特に優れた金属コア多層プリント配線板がますますその重要性を増しつつある。ところで、一般に用いられている金属コア多層プリント配線板の製造方法において、多層板の積層・プレスする方法は、主に次に示す4種類の方法がある。
【0003】(1).図3の(A) に示すように、内層回路板1、プリプレグ2、スルーホール用の穴を有する金属板3、Bステージ状樹脂シート4、フィラー入り接着剤シート5が施された銅箔6を前記順序に順次積層し、加圧加熱して硬化させる方法。
(2).図4の(A) に示すように、フィラー入り接着剤シート11を介して銅箔12がスルーホール用の穴を有する金属板13に張り合わされた未硬化状態の銅張金属積層板14を、プリプレグ15を介して内層回路板16に積層し、加圧加熱して硬化させる方法。
【0004】(3).図5の(A) に示すように、フィラー入り接着剤シート21を介して銅箔22をスルーホール用の穴を有する金属板23に張り合わせ、あらかじめ加熱硬化して成形された銅張金属積層板24を、プリプレグ25を介して内層回路板26に積層し、加圧加熱して硬化させる方法。
(4).図6の(A) 〜(C) に示すように、フィラー入り接着剤シート31を介して銅箔32がスルーホール用の穴を有する金属板33に張り合わされた銅張金属積層板34に、銅箔32が張り合わされた面と反対側の銅張金属積層板34の面にもフィラー入り接着剤シート31を張り合わせ、金属板33の穴部もフィラー入り接着剤で充填されたもの(図(A) )を加圧加熱して銅張金属積層板硬化物35を得(図(B) )、その銅張金属積層板硬化物35をプリプレグ36を介して内層回路板37に積層し(図(C) )、再び加圧加熱して硬化させる方法(31aはフィラー入り硬化接着剤層を示す)。
【0005】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、上記従来の方法にあっては、下記のような各問題があった。
(a).上記(1) の場合、図3の(B) に示すように、金属板3と銅箔6との間のフィラー入り硬化接着剤層5aにBステージ状樹脂シート4及びプリプレグ2からオーバーフローした樹脂が混入した状態となり(2aはプリプレグ硬化絶縁層、4aは硬化樹脂シートを示す)、フィラー入り接着剤の特性である放熱特性が期待出来なくなり、また外観上も見劣りがするという問題があった。
(b).上記(2) の場合も、図4の(B) に示すように、上述同様、金属板13と銅箔12との間のフィラー入り硬化接着剤層11aの層にプリプレグ15からオーバーフローした樹脂が混入し(15aはプリプレグ硬化絶縁層を示す)、フィラー入り接着剤の放熱特性が期待出来なくなり、また外観上も見劣りがすると共に、更に金属板13の穴部が単なる樹脂になってしまうため、スルーホール絶縁層の熱膨張係数が大きくなり、メッキ銅との熱膨張差が大きく、メッキ・樹脂界面にストレスが生じ、しかもスルーホールとの密着性も低下し、従ってスルーホールの信頼性が低いものになってしまうという問題があった。
【0006】(c).上記(3) の場合は、図5の(B) に示すように、金属板23の穴部がプリプレグ25からなる単なる樹脂のみであるため(21aはフィラー入り硬化接着剤層、25aはプリプレグ硬化絶縁層を示す)、上記(b) 同様にスルーホールの信頼性が低下するという問題があった。しかも、硬化工程が2度あるため、工程が複雑となり、製造コストも上昇するという問題があった。
【0007】(d).上記(4) の場合は、図6の(D) に示すように(36aはプリプレグ硬化絶縁層を示す)、物性的にはなんら問題がないが、硬化工程が2度あるため、工程か複雑となり、製造コストも上昇するという問題があった。この発明は、かかる従来の課題に着目して案出されたもので、硬化工程を1度有する従来の金属コア多層プリント配線板の製造方法を大きく変えることなく、スルーホールの信頼性が高く、放熱特性に優れた金属コア多層プリント配線板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【問題を解決するための手段】この発明は上記目的を達成するため、プリプレグと金属板との間にフィラー入り接着剤シートを介層して加圧加熱することを要旨とするものである。
【0009】
【発明の作用】この発明は上記のように構成され、スルーホール用の穴部を有する金属板と接着兼絶縁用のプリプレグとの間にフィラー入り接着剤シートを配して加圧加熱するため、硬化時にプリプレグの樹脂がオーバーフローして、金属板の穴部、及び金属板と銅箔との間のフィラー入り接着剤シートに混入することを避けることが出来、銅箔及び金属板の回りを放熱特性に優れたフィラー入り硬化接着剤層のみで形成し、放熱性の高い金属コア多層プリント配線板を製造する。
【0010】またフィラー入り接着剤のみを金属板の穴部に充填することが出来、熱膨張係数が低くメッキ銅との密着性に優れたスルーホール絶縁層が形成され、従って信頼性の高いスルーホールが形成される。そして更に、1度の硬化工程で、従来2度の硬化工程を要していた、放熱特性に優れ、かつスルーホールの信頼性の高い金属コア多層プリント配線板を製造することが出来る。
【0011】
【発明の実施例】以下、添付図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。図1は金属コア多層プリント配線板を製造する場合の積層図であり、図2は金属コア多層プリント配線板の製造工程を示してる。図1の(A) は加圧加熱前の状態を示し、(B) は加圧加熱後の状態を示している。図1において、41は銅箔であり、42及び44はアルミナ等の熱伝導性が優れたフィラーを含有する放熱特性に優れた未硬化のフィラー入り接着剤シート、43はアルミニウム板、鉄板、銅板等の金属板、45及び46はガラス布等の基材にエポキシ樹脂等の樹脂を含浸させBステージまで硬化させたシート状のプリプレグである。
【0012】また47は絶縁基板47a上に内層用の回路47bが形成された内層回路板であり、48はフィラー入り接着剤シート42及び44が加圧加熱後に硬化したフィラー入り硬化接着剤層、49はプリプレグ45及び46が硬化して一体となったプリプレグ硬化絶縁層である。製造工程は、図2に示すように、金属板43にまずスルーホール用の穴加工を行い(ステップ■)、次に形成された穴のエッジ部のバリ取りを行い(ステップ■)、そして金属板43の表面に所定の方法で表面処理を施す(ステップ■)。また製造されたフィラー入り接着剤をフィルムへ塗工してフィルム状に形成した未硬化のフィラー入り接着剤シート44を形成する(ステップ■)と共に、銅箔41にフィラー入り接着剤を塗工して未硬化のフィラー入り接着剤シート42を有する接着剤シート付き銅箔51を形成する(ステップ■)。
【0013】次に、ステップ■で表面処理された金属板43とステップ■で形成された接着剤シート付き銅箔51とを張り合わせて銅張金属積層板52を形成し(ステップ■)、またステップ■で形成されたフィラー入り接着剤シート44とプリプレグ45とを張り合わせて接着剤シート付きプリプレグ53を形成する(ステップ■)。
【0014】そして別工程で従来の方法により絶縁基板47aに内層用の回路47bが両面に形成された内層回路板47、前記銅張金属積層板52、及び前記接着剤シート付きプリプレグ53を、内層回路板47の両側からプリプレグ46、プリプレグ45、フィラー入り接着剤シート44、金属板43、フィラー入り接着剤シート42、銅箔41の順になるようにそれぞれ積層して(ステップ■)、加圧加熱する。
【0015】加圧加熱時に、単独では流れにくいフィラー入り接着剤シート44が、プリプレグ45及び46からオーバーフローした樹脂に押されて、フィラー入り接着剤シート44のフィラー含有樹脂が金属板43の加工穴に満偏なく充填され、またフィラー入り接着剤シート44によりプリプレグ45の樹脂がオーバーフローして金属板43の加工穴、及び銅箔41と金属板43との間に介在するフィラー入り接着剤シート42に混入するのが防止され、図1の(B) に示すように、硬化後、銅箔41及び金属板43の回りをフィラー入り硬化接着剤層48のみで形成する多層板54を得ることができる。
【0016】以下、従来より用いられている通常の工程で、上記のように積層硬化された多層板54の金属板43の穴部にスルーホールを形成し、そして銅箔41に電気回路を形成して金属コア多層プリント配線板を得ることが出来る。金属板43の穴加工は、NCドリル、プレス等による打ち抜き、ケミカルミーリング等で行えばよく、バリ取りは、サンドペーパー等による表面研磨、或いはアルカリによる溶解等、表面研磨は、アルミニウムの場合は通常のアルマイト処理等、銅の場合は通常の酸化処理等を行えばよい。
【0017】銅箔41へのフィラー入り接着剤シート42の施工は、フィラー入り接着剤を銅箔41に塗布するか、またはフィラー入り接着剤をフィルムへ塗工してフィルム状に形成したフィラー入り接着剤シート42を銅箔41に張り合わせてもよい。銅箔41と金属板43との絶縁を確保するため、接着剤シート付き銅箔51を金属板43にラミネートした後、未硬化のフィラー入り接着剤シート42をBステージ化するか、レジンフローを考慮にいれて、未硬化のフィラー入り接着剤シート42を予め厚く設定しておくことが好ましい。
【0018】また加圧加熱時にプリプレグ45の樹脂がオーバーフローして、銅箔41と金属板43との間に介在するフィラー入り接着剤シート42に混入するのを防ぐために介層されたフィラー入り接着剤シート44は、混入防止のための十分な厚みを有し、好ましくは40μmから200μmであるが、前記数値に限定されるものではない。
【0019】加圧加熱方法は特に限定されるものではないが、真空プレス金型を使用し、加熱真空下で内層回路板47、接着剤シート付きプリプレグ53、及び銅張金属積層板52の積層体を真空脱気した状態で加圧すると、表面平滑性の劣る金属板を使用しても、フィラー入り硬化接着剤層48に気泡等が混入しない多層板54を形成することが出来、金属板43の穴部に残存する気泡を抑えることが出来る。
【0020】なお上記実施例では導電層を4層有する金属コア多層プリント配線板の製造方法の場合を説明したが、内層回路板47を複数内装して、更に多層の金属コア多層プリント配線板の製造方法に用いてもよい。
【0021】
【発明の効果】この発明は、上記のようにプリプレグと金属板との間にフィラー入り接着剤シートを介層して加圧加熱するので、プリプレグと金属板との間に介層されたフィラー入り接着剤シートがプリプレグの樹脂のオーバーフローを防止して、金属板の穴部、及び金属板と銅箔との間のフィラー入り接着剤シートにプリプレグの樹脂が混入することを避けることが出来、銅箔及び金属板の回りを放熱特性に優れたフィラー入り硬化接着剤層のみで形成し、放熱性の高い金属コア多層プリント配線板を製造することが出来るという効果がある。
【0022】またフィラー入り接着剤のみを金属板の穴部に充填することが出来、スルーホール絶縁層のスルーホールメッキに対する熱膨張係数及び密着性が向上して、信頼性の高いスルーホールを形成することが出来るという効果がある。そして更に、従来2度の硬化工程を要していた、放熱特性に優れ、かつスルーホールの信頼性の高い金属コア多層プリント配線板を1度の硬化工程のみで製造することが出来、製造工程を簡易化して製造コストを下げることが出来るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A) 及び(B) は、この発明の金属コア多層プリント配線板の製造方法の硬化前と硬化後の構成を示す断面図である。
【図2】この発明の金属コア多層プリント配線板の製造工程を示すブロック図である。
【図3】(A) 及び(B) は、第1従来例の金属コア多層プリント配線板の製造方法の硬化前と硬化後の構成を示す断面図である。
【図4】(A) 及び(B) は、第2従来例の金属コア多層プリント配線板の製造方法の硬化前と硬化後の構成を示す断面図である。
【図5】(A) 及び(B) は、第3従来例の金属コア多層プリント配線板の製造方法の硬化前と硬化後の構成を示す断面図である。
【図6】(A) 、(B) 、(C) 及び(D) は、第4従来例の金属コア多層プリント配線板の製造方法の硬化前と硬化後の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
41 銅箔 42,44 フィラー入り接着剤シート
43 金属板 45,46 プリプレグ
47 内層回路板 48 フィラー入り硬化接着剤層
51 接着剤シート付き銅箔 52 銅張金属積層板
53 接着剤シート付きプリプレグ 54 多層板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁基板に内層用の回路が形成された内層回路板と、Bステージ状のプリプレグと、スルーホール用の穴加工が施された金属板と、フィラー入り接着剤シートと、銅箔とを前記順序に積層して加圧加熱する金属コア多層プリント配線板の製造方法において、前記プリプレグと前記金属板との間にフィラー入り接着剤シートを介層して加圧加熱することを特徴とする金属コア多層プリント配線板の製造方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平5−183275
【公開日】平成5年(1993)7月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−346325
【出願日】平成3年(1991)12月27日
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(000134453)株式会社トゴシ (1)