説明

金属体の製造方法

【課題】熱インプリントで3次元形状の金属体を容易に作成できる方法を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明の金属体の製造方法によれば、フォトリソグラフィーと比較して容易な加工方法である熱インプリントで型を熱可塑性樹脂層に転写させ、その型の形状に転写された樹脂の上にめっきよって金属体を形成することで3次元形状の金属体を容易に作成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱インプリント工程を含む、金属体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フォトレジスト等の樹脂を用いてフォトリソグラフィーを行なう事で樹脂パターンを形成し、めっき技術やエッチング技術を用いて高密度配線基板に金属パターンを作製する方法はアディティブ法、サブトラクティブ法に代表されるようなフレームめっき法としてよく知られていた。
【0003】
また、プローブ端子など比較的アスペクト比の高い微細な金属構造体の製法もフォトリソグラフィーとめっき技術を組合わせた電鋳や特許文献1等に見られるようなシンクロトロン技術を適用したLIGA手法等を用いた製法が知られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−252032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術を用いた金属体の製法において、フォトリソ工程は煩雑で時間が掛かったり、高いアスペクト比の金属体を作製するのには高価な設備を用いなければならず製造コストが高くなる等の課題があった。更に、これまでの方法では、3次元形状の金属体を形成するのが非常に困難であった。
【0006】
本発明の目的は上記問題点を鑑み、3次元形状の金属体を容易に作成できる方法を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、配線を有する基材の一面に熱可塑性樹脂からなる第1の樹脂層を形成する第1の樹脂形成工程と、前記第1の樹脂層を加熱して、前記第1の樹脂層に型の形状を転写する転写工程と、前記第1の樹脂層の一部を除去して前記配線の一部を露出することにより第1の形状規定部を形成する第1の形状規定部形成工程と、 前記露出させた配線の一部及び前記第1の形状規定部の表面にめっきによって、第1の金属体を形成する第1の金属体形成工程と、前記第1の形状規定部を除去する第1の除去工程と、を有することを特徴とする。これによれば、フォトリソグラフィーと比較して容易な加工方法である熱インプリントで型を樹脂に転写させ、その型の形状に転写された樹脂の上にめっきよって金属体を形成することで、3次元形状の金属体を容易に作成できる。
【0008】
また、本発明は、前記第1の除去工程の後に、前記基材の一面に前記第1の金属体の一部を露出するように平坦化樹脂層を形成する平坦化工程と、熱可塑性樹脂からなる第2の樹脂層を前記平坦化樹脂層の表面に形成する第2の樹脂層形成工程と、前記第2の樹脂層を加工して前記第1の金属体の一部を露出させ第2の形状規定部を形成する第2の形状規定部形成工程と、前記第2の形状規定部の表面に第2の金属体を形成する第2金属体形成工程と、前記第2の形状規定部を除去する第2の除去工程と、を有することを特徴とする請求項1記載の金属体の製造方法。これによれば、複雑な3次元形状の金属体を容易に作成できる。
【0009】
また、本発明は、前記第2金属体形成工程で、前記第1の金属体と第2の金属体が接続されることを特徴とする。これによれば、第1の金属体に接続された第2の金属体を形成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により熱可塑性樹脂層と所望する形状を有する型を用いて3次元形状の金属体を容易に作成する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す工程フローを示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態で作成される第1の形状規定部の斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す工程フローを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の一実施の形態について図を参照にしながら、詳細に説明をする。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の形態を説明するための工程図を示している。
【0014】
図1(a)は、基材1の一面に熱可塑性樹脂層からなる第1の樹脂層を形成する第1の樹脂形成工程を示している。膜厚1μmのNi等の金属膜を200μm×200μmにパターニングされたパッド4を有する配線(図示省略)が設けられた基材1上に、熱可塑性樹脂層からなる第1の樹脂層10は、塗布して形成される。熱可塑性樹脂層からなる第1の樹脂層10は、東京応化工業株式会社製のノボラック系樹脂が主成分であるPMER−HM3000を用い、スピンコート法で100μmの膜厚で塗布される。尚、熱可塑性樹脂層からなる第1の樹脂層10としては、ノボラック系樹脂、ポリスチレン、PMMA、ポリエチレン、ポリカボネート等の熱可塑性樹脂を用いることができるが、めっき液に対する耐薬品性の観点からノボラック系樹脂が本実施例に好適である。
【0015】
図1(b)から図1(d)は、転写工程を示している。図1(b)は、プレヒート工程を示している。図1(c)は、熱プレス工程と冷却工程を示している。図1(d)は、転写型の離型工程を示している。
【0016】
図1(b)のプレヒート工程では、熱インプリントで転写する型をプレスする前工程として、熱プレス機のステージで第1の樹脂層10が軟化して転写可能となるように第1の樹脂層10を90〜130℃で30分間加熱する。
【0017】
図1(d)は、転写型の離型工程を示している。基材1の冷却終了後に、転写型7を第1の樹脂層10から剥離する。これにより、パッド4上には、転写型7によって形成された高さ100μm程度の3次元形状の第1の樹脂層10が形成される。しかし、パッド4上の一部には、第1の樹脂層10の一部が、膜厚1μm程度の平面状の熱可塑性樹脂の残膜13として残る部分がある。また同様に、パッド4が形成されていない基材1上にも膜厚2μm程度の平面状の残膜13が形成されてしまう。
【0018】
図1(e)は、残膜13を除去してパッド4の一部を露出させることにより第1の形状規定部を形成する第1の形状規定部形成工程を示している。基材1およびパッド4上の残膜13を除去するため、酸素プラズマ等を利用したアッシング処理を行う。これにより、パッド4の一部が露出される。その結果、パッド4上には図1(e)、図2に示されるような第1の形状規定部16が形成される。
【0019】
図1(f)は、めっきによる第1金属体形成工程を示している。第1金属体形成工程は、シード層形成工程とめっき工程を有しており、シード層形成工程は、めっき工程の前に行われる。シード層はTiとCuの2層となっており、初めに、シード層の下層として、Tiは、15nmの厚さになるようにスパッタ法を用いて、パッド4及び第1の形状規定部16の表面に成膜される。続いて、シード層の上層として、Cuは、100nmの厚さになるようにスパッタ法を用いて、成膜されたTiの表面に成膜される。なお、第1の形状規定部16は、図2に示されるように、斜面Aは、基材1の表面に対して約27°の角度で形成されているが、側面Bおよび側面Cは、90°の角度で形成されているため、めっきのシード層は側面B,Cにはほとんど成膜されない。シード層は、隣りあったパッド間で電気的に接続されないようにパターン形成される。シード層のパターン形成は、信越化学製めっきレジストSiPR−9272を100μm塗布し、露光・現像でレジストパターンを形成することにより行っても良いし、レジストパターンを用いないで、シード層形成のスパッタ成膜の時に、メタルマスクを用いてレジストパターンを形成してもかまわない。
【0020】
引き続きめっき工程を行う。Cuを5μm、Niを12μmの厚さで、基材1の配線(図示省略)を介して電気めっきを行い、シード層上に第1の金属体40を形成する。Cu用めっき液は富士化学工業株式会社製の硫酸銅めっき液、Niめっき液は上村工業株式会社製のパーマアロイを使用する。
【0021】
図1(g)は、第1の形状規定部を除去する工程を示している。パッド4上の、形状規定部16を除去するため、剥離液としては、アセトン溶液を用い、室温25℃にて10分間程度、第1の形状規定部部16を浸漬して行う。
【0022】
図1(a)〜(g)の工程を経ることにより、3次元形状である第1の金属体40を容易に作成する事ができる。
【0023】
以上により、本実施例では、フォトリソグラフィーと比較して容易な加工方法である熱インプリントで型を熱可塑性樹脂層に転写させ、その型の形状に転写された樹脂の上にめっきよって金属体を形成することで、3次元形状の金属体を容易に作成できる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態として、第1の実施形態で示した図1(a)〜(g)を経て形成された3次元形状である第1の金属体40をもとに、さらに複雑な形状を作成する工程を図3に示す。
【0024】
図3(h)は、基材の一面に第1の金属体の一部を露出するように平坦化樹脂層を形成する平坦化工程を示している。図1(g) の、第1の形状規定部16の除去後に得られた第1の金属体40が作成された基材1上に、平坦化樹脂は、スピンコート法等で90μmの膜厚で塗布され、金属体40の上部が露出するよう平坦化樹脂層23を形成する。平坦化樹脂としては、熱硬化性樹脂が用いられる。この平坦化樹脂層23は、ハードベークを行い硬化させる。
【0025】
図3(i)は、第2の樹脂層形成工程を示している。熱可塑性樹脂層からなる第2の樹脂層26は、前記平坦化工程の上面に塗布して膜厚100μmで形成される。熱可塑性樹脂層からなる第2の樹脂層26は、第1の樹脂層10と同一の成分であり、塗布方法も同一である。これにより、前記平坦化工程で露出されていた金属体40の上部は、熱可塑性樹脂からなる第2の樹脂層26に埋め込まれる。
【0026】
図3(j)は、第2の形状規定部形成工程として熱インプリント法を用いた場合で、第2の樹脂層を加熱して型の形状を転写させる工程を示している。まず、熱インプリントでは、基材1上のパッド4と転写型30の位置が合うように位置調整を行う。その後、第2の樹脂層26は、転写型30を荷重0.2MPa以上0.6MPa以下でプレスされながら、基材1を90〜130℃で5〜60分間加熱する。加熱終了後、転写型30の荷重は変えないまま、基材1が60℃以下になるまで冷却する。
【0027】
図3(k)は、転写型の離型工程を示している。基材1の冷却終了後に、転写型30を第2の樹脂層26から剥離する。さらに、第1の実施形態と同じように、第2の樹脂層26の残膜(図示しない)を除去する。これにより、平坦化樹脂層23上には、転写型30によって形成された高さ100μm程度の3次元形状の第2の形状規定部33が形成される。
【0028】
図3(l)は、めっきによる第2金属体形成工程を示している。まず、第1金属体形成工程と同様にシード層をスパッタ法で第2の形状規定部33上に成膜を行う。その後のめっき工程は第1実施形態と同じである。これにより、平坦化樹脂層23から露出したと第1の金属体40の一部と第2の金属体42は接続される。
【0029】
図3(m)は、平坦化樹脂層と第2の形状規定部を除去する工程を示している。平坦化樹脂層23と第2の規定部33を除去するため、剥離液として、アセトン溶液やジメチルスルホキシドとN−メチル−2−ピロリドンの混合液を用い、室温25℃にて10分間程度、平坦化樹脂層23と第2の形状規定部26は浸漬される。これにより、平坦化樹脂層23と第2の形状規定部は同一の剥離剤で連続的に除去できる。
【0030】
以上、図1(a)〜(g)の工程と図3(h)〜(m)の工程を経ることにより、複雑な形状をした3次元形状の金属体40,42を容易に作成する事ができる。なお、第2の金属体の作成は、別の方法で行っても良い。例えば、フォトリソグラフィ技術とめっき技術を用いて行われる。実際には、熱プレス工程の金型に対応する様なグレースケールフォトマスクを用いて露光、現像してフォトレジストをパターニングして、めっきを行い3次元金属体の形成を行っても良い。
【0031】
また、第2の金属体形成工程は、平坦化樹脂層23を形成し、この平坦化樹脂層23上にシード層を形成し、さらにめっきを行うことで第1の金属体の上部と接続された第2の金属体42を形成してもよい。その際のシード層形成及び、めっき工程は第1実施形態と同様である。また、平坦化樹脂層の除去は、剥離液として、アセトン溶液やジメチルスルホキシドとN−メチル−2−ピロリドンの混合液を用い、室温25℃にて10分間程度、平坦化樹脂層23を浸漬して行われる。
【0032】
本発明の三次元形状の金属体製造方法は、熱可塑性樹脂と熱インプリントにより簡便に3次元形状の金属体を作成することができる。また、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、第1、第2の実施形態において、熱可塑樹脂の成形加工はLIGA技術やレーザー技術により行うことも出来、引き続きめっき形成工程を行う事により3次元金属体の形成を行う事が出来る。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の金属体の製造方法は、3次元形状の金属体を容易な方法で作成できバーインテスター用プローブピンやプローブカード用のプローブピンの製造方法に有用である。
【符号の説明】
【0034】
1 基材
4 パッド
7、30 転写型
10 第1の樹脂層
16 第1の形状規定部
26 第2の樹脂層
20、36 めっき膜
33 第2の形状規定部
40 第1の金属体
42 第2の金属体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線を有する基材の一面に熱可塑性樹脂からなる第1の樹脂層を形成する第1の樹脂形成工程と、
前記第1の樹脂層を加熱して、前記第1の樹脂層に型の形状を転写する転写工程と、
前記第1の樹脂層の一部を除去して前記配線の一部を露出することにより第1の形状規定部を形成する第1の形状規定部形成工程と、
前記露出させた配線の一部及び前記第1の形状規定部の表面にめっきによって、第1の金属体を形成する第1の金属体形成工程と、
前記第1の形状規定部を除去する第1の除去工程と、
を有することを特徴とする金属体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の除去工程の後に、前記基材の一面に前記第1の金属体の一部を露出するように平坦化樹脂層を形成する平坦化工程と、
熱可塑性樹脂からなる第2の樹脂層を前記平坦化樹脂層の表面に形成する第2の樹脂層形成工程と、
前記第2の樹脂層を加工して前記第1の金属体の一部を露出させ第2の形状規定部を形成する第2の形状規定部形成工程と、
前記第2の形状規定部の表面に第2の金属体を形成する第2金属体形成工程と、
前記第2の形状規定部を除去する第2の除去工程と、
を有することを特徴とする請求項1記載の金属体の製造方法。
【請求項3】
前記第2金属体形成工程で、前記第1の金属体と前記第2の金属体が接続されることを特徴とする請求項2記載の金属体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−88224(P2011−88224A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241310(P2009−241310)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】