説明

金属化フィルムコンデンサ

【課題】構造が簡素で、組立の自動化に適した低インダクタンス大容量コンデンサ。
【解決手段】両端部に電極を有する金属化フィルムコンデンサ素子を複数個、互いに隣接させて所定の方向に配列したコンデンサユニットを構成する。該ユニットは、配列方向に、互いに離間して配置された第1のコンデンサ素子(以下、素子と略記)群と、第1の素子の間に隣接し、電極の極性が反対方向の第2の素子群とからなり、第1の素子群の各々の電極面に接続された第1の電極板と、これと重なるように近接配置され、第2の素子群の各々の電極面に接続された第2の電極板と、第1の素子群の電極に接続された第1の電極補助板と、これと重なるように近接配置され、第2の素子群の電極面に接続された第2の電極補助板とを備え、第1および第2の電極板、電極補助板の間には各々、絶縁部材が介装される。電極板は、素子の側面に、電極補助板は、素子の電極面に沿って配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のコンデンサ素子のメタリコン電極を電極板によって接続した金属化フィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属化フィルムコンデンサは、誘電体フィルムの少なくとも片面に金属蒸着によって電極を形成した金属化フィルムを巻回し、巻回体の両端面にメタリコン電極を形成したものをコンデンサ素子とし、さらに、複数のコンデンサ素子を電極板によって並列に接続したものをケースに収納し、ケース内に樹脂を充填した後、樹脂を硬化させて作製していた。
【0003】
一方、フィルタ回路やインバータ等に使用される平滑用コンデンサは、高周波数の帯域で使用され、また、静電容量の大きなものが使用される場合が多く、インダクタンスを低減する必要があった。
【0004】
このため、従来のコンデンサでは、複数個のコンデンサ素子を用いて大容量のコンデンサを構成する場合、複数個のコンデンサ素子を接続したコンデンサ素体(コンデンサユニット)の一方の電極導出部に第1の引出板を接続し、他方の電極導出部に第1の引出板と絶縁シートを介して近接して導出させた第2の引出板を接続するとともに、この第2の引出板に接続板を接続して、この接続板でコンデンサ素体の側面を各々囲む配置とすることで、低インダクタンス化を図ろうとするものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、互いに隣接するコンデンサ素子の電極の極性が逆になるように複数のコンデンサ素子を並設し、第1および第2素子接続部をそれぞれ有する第1および第2電極板が絶縁体を介して重ね合わされるとともに、第1素子接続部と第2素子接続部とが交互にコンデンサ素子の並設方向に配列して各コンデンサ素子の電極に接続された接続構造を有するコンデンサが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
これにより、特許文献2記載のコンデンサでは、互いに隣り合う第1素子接続部と第2素子接続部には、電流が逆方向に流れ、第1および第2素子接続部での配線インダクタンスが低減されるとともに、第1および第2電極板が絶縁体を介して近接して設けられることにより、第1および第2電極板での配線インダクタンスが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−277378号公報
【特許文献2】特開2006−100507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載のコンデンサでは、低インダクタンスでかつ大容量のコンデンサを実現するために、第2の引出板に接続された接続板によって、コンデンサ素体を囲む必要があるので、構造が複雑になるとともに、引出板と接続板との接続等の組立工数がかかり、コストアップの要因となっていた。
【0009】
また、特許文献2記載のコンデンサでは、第1素子接続部と第2素子接続部とに互いに逆方向に電流が流れるものの、コンデンサの構造上、隣接する素子接続部同士を近接させるにも限度があり、配線インダクタンスの低減には自ずと限界があった。このため、これら配線に起因するインダクタンスが障害となって、コンデンサの大容量化および高周波化への対応が困難になるおそれがあった。
【0010】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構造が簡素で、組立の自動化に適した低インダクタンス大容量コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る金属化フィルムコンデンサは、両端部に電極を有するコンデンサ素子を複数個、互いに隣接させながら所定の方向に沿って配列したコンデンサユニットからなる金属化フィルムコンデンサであって、
コンデンサユニットは、
前記配列方向に、互いに離間して配置された第1のコンデンサ素子群と、該第1のコンデンサ素子に隣接しながら前記第1のコンデンサ素子の間に配置されるとともに、電極の極性が第1のコンデンサ素子と反対方向に配置された第2のコンデンサ素子群とからなり、
第1の素子接続部を有し、第1のコンデンサ素子群の各々の電極面に第1の素子接続部を介して接続された第1の電極板と、第2の素子接続部を有し、第1の電極板と重なるように近接配置され、第2のコンデンサ素子群の各々の電極に第2の素子接続部を介して接続された第2の電極板と、第1の電極板と第2の電極板との間に介装され、第1の電極板と第2の電極板とを絶縁する第1の絶縁部材と、
第3の素子接続部を有し、第1の素子接続部が接続された第1のコンデンサ素子群の各々の電極面に第3の素子接続部を介して接続された第1の電極補助板と、第4の素子接続部を有し、第1の電極補助板と重なるように近接配置され、第2の素子接続部が接続された第2のコンデンサ素子群の各々の電極面に第4の素子接続部を介して接続された第2の電極補助板と、第1の電極補助板と第2の電極補助板との間に介装され、第1の電極補助板と第2の電極補助板とを絶縁する第2の絶縁部材とを備え、
第1および第2の電極板は、配列した複数個のコンデンサ素子の前記電極面を除く側面に沿って配置され、第1および第2の電極補助板は、配列した複数個のコンデンサ素子の一方側の電極面に沿って配置されたことを特徴としている。
【0012】
このように構成された発明によれば、コンデンサユニットを構成する複数個のコンデンサ素子のうち、隣接するコンデンサ素子の電極の極性が互いに反対方向に配置され、電流が逆方向に流れるので、コンデンサ素子に発生する内部インダクタンスを低減することができる。また、第1の絶縁部材を介して第1の電極板と第2の電極板とが重なるように近接配置しているので、互いに逆方向に流れる電流により、配線インダクタンスを低減することができる。
ここで、第1および第2の電極板は、配列方向に沿って配列した複数個のコンデンサ素子の複数の電極面を除く側面上に該複数の側面に沿って配置されるが、この発明では、さらに、配列方向に沿って配列した複数個のコンデンサ素子の一方側に配置された複数の電極上に該複数の電極に沿って第1および第2の電極補助板を配置している。第1の電極補助板と第2の電極補助板とは、第2の絶縁部材を介して重なるように近接配置されているので、さらなる配線インダクタンスを低減することが可能となっている。
また、第1の電極補助板とコンデンサ素子の各々の電極との間、または第2の電極補助板とコンデンサ素子の各々の電極との間には第2の絶縁部材が介装されているので、前記第1または第2の電極補助板とコンデンサ素子の各々の電極との非接続部の絶縁性が確保される。
しかも、第1および第2の電極板を、素子側面と対向するように配置するとともに、第1および第2の電極補助板を、電極面と対向するように配置すれば足りることから、構造が簡素で、組立を簡便にでき、組立の自動化が容易になる。したがって、組立の自動化に適し、低インダクタンスで、かつ大容量のコンデンサを提供することができる。
【0013】
また、第1の電極補助板と複数個のコンデンサ素子の各々の電極との間、または第2の電極補助板と複数個のコンデンサ素子の各々の電極との間に介装され、第1または第2の電極補助板と複数個のコンデンサ素子の各々の電極とを絶縁する第3の絶縁部材を備えることが好ましい。
【0014】
ここで、複数個のコンデンサ素子の側面に近い方から第1の電極板、第1の絶縁部材および第2の電極板が順に配設された金属化フィルムコンデンサにおいては、第1の電極板に開口部を設け、開口部を通して第2の素子接続部をコンデンサ素子の電極面に接続することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、第1の電極板に対して複数個のコンデンサ素子の側面の反対側に配置された第2の電極板は、第2の素子接続部が第1の電極板に設けられた開口部を通ることにより、コンデンサ素子の電極面に接続される。このため、互いに近接配置される第1および第2の電極板の大きさ(面積)に接続上の制約がなく、第1の電極板と第2の電極板とが互いに向かい合う対向面積を大きくすることで配線インダクタンスを効果的に低減することができる。
【0016】
また、複数個のコンデンサ素子の各々の側面が互いに対向して配置されるようにコンデンサユニットを、配列方向に沿って平行に配置した一組のコンデンサユニットを備え、一組のコンデンサユニットの一方を構成するコンデンサ素子と、該コンデンサ素子に隣接して配置された一組のコンデンサユニットの他方を構成するコンデンサ素子とは、電極の極性が互いに反対方向に配置され、第1および第2の電極補助板をそれぞれ、一組のコンデンサユニットに対して共通に1つずつ設け、一組のコンデンサユニットの一方を構成するコンデンサ素子と他方を構成するコンデンサ素子とを接続してもよい。
【0017】
この構成によれば、隣接して配置される一組のコンデンサユニットの一方を構成するコンデンサ素子と他方を構成するコンデンサ素子とでは、電流の通流方向が逆となるので、コンデンサ素子に発生する内部インダクタンスをさらに低減することができる。しかも、コンデンサユニットの数を増やしても、共通の第1および第2の電極補助板を接続することで容易に低インダクタンス化を図ることができ、低インダクタンス化と大容量化とを同時に実現することができる。
【0018】
さらに、コンデンサユニットを収納するケースを有し、ケース内壁に、隣り合うコンデンサ素子の間に突出する突出片を設け、複数個のコンデンサ素子の各々を、突出片を挟んでケース内に収納するのが好ましい。
【0019】
この構成によれば、突出片によって、隣り合うコンデンサ素子を離隔させて配置することができ、また、離隔配置後にケース内に樹脂が充填されて絶縁されるので、コンデンサ素子の間に絶縁シート等の絶縁部材を介装する必要がない。このため、絶縁に要する部材費を削減することができるとともに、絶縁部材の介装作業を省くことができ、コンデンサの組立工程の簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、構造が簡素で、組立の自動化に適した低インダクタンスで、かつ大容量の金属化フィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るコンデンサ素子1列からなるコンデンサユニット10を示す斜視図(a)と、その分解図(b)とである。
【図2】本発明に係る2つのコンデンサユニット10が並置されてなるコンデンサユニット16を示す斜視図(a)と、コンデンサユニット16の電極板3と電極板4と絶縁シート9との重なりの状態を示す平面図(b)とである。
【図3】本発明に係る2つのコンデンサユニット10が並置されてなるコンデンサユニット16を示す分解図である。
【図4】本発明に係る金属化フィルムコンデンサのケース17を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る金属化フィルムコンデンサの電極板3および電極板4と、電極補助板11および電極補助板12とに流れる電流の向きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施の形態における金属化フィルムコンデンサについて図面を用いて説明する。
【0023】
図1(a)は、本発明に係るコンデンサ素子1列からなるコンデンサユニット10を示す斜視図であり、図1(b)はその分解図である。
【0024】
上記コンデンサ素子1は、金属化フィルム(図示せず)が巻回されて作製されたものである。金属化フィルムは、長尺な形状を有し、長手方向に沿って片側端電極に絶縁マージンが形成されている。このような金属化フィルムを2枚用いて、絶縁マージンと蒸着金属部とが対向するように、金属化フィルム同士を重ねて巻回し、巻回体を偏平に押圧加工して、略柱体の形状とする。
【0025】
金属化フィルムを巻回することによってできた巻回体は、向かい合う2つの素子端面(電極面)が形成され、偏平加工されているので、2つの素子端面は、長円(小判形)状または楕円状の形状を有し、該端面には、メタリコン電極2が溶射等によって形成される。また、巻回体には、メタリコン電極2が形成されない素子側面が形成される。
【0026】
なお、上記の例では、金属化フィルムを巻回してコンデンサ素子1を作製したが、両面金属化電極紙およびPPフィルム(図示せず)を巻回してコンデンサ素子1としてもよい。
【0027】
上述したように作製されたコンデンサ素子1を、複数個(例えば6個)、並置して1つのコンデンサユニット10を構成する。図1に示した例では、コンデンサ素子1の一方のメタリコン電極2が上面に、他方のメタリコン電極2が下面になるように複数のコンデンサ素子1が配列されているので、長尺な形状を有する。
【0028】
上述したように、コンデンサユニット10はコンデンサ素子1の配列方向に長尺な形状を有し、コンデンサ素子1の配列方向に沿って、電極板3および電極板4が配置されている。具体的には、電極板3および電極板4は、コンデンサユニット10を構成する6個のコンデンサ素子1の各々の素子側面(柱体としての側面)に対向するように配置されている。
【0029】
電極板3は、「第1の電極板」に相当する。また、電極板4は、「第2の電極板」に相当する。電極板3は、コンデンサユニット10の内面、すなわち、コンデンサ素子1の素子側面に近い側に配置され、電極板4は、コンデンサユニット10の外面、すなわち、コンデンサ素子1の素子側面から離れた側に配置されている。電極板3と電極板4との間に、絶縁シート9が介装され、電極板3と電極板4との間で、絶縁状態が維持されるように固定される。絶縁シート9は、「第1の絶縁部材」に相当する。
【0030】
図1に示した例では、電極板3は凸字形をしており、メタリコン電極2がなす面(電極面)よりも上方に突出した壁部を形成している。突出した壁部とすることにより、インダクタンス低減、ESR低減、放熱性改善の効果があり、また、凸字形の突出部4aにより、回路接続が容易となる。
【0031】
また、図1(b)に示すように、電極板3の壁面部(コンデンサ素子の巻回軸方向に伸びる平面部)より伸延し、メタリコン電極2に接続される素子接続部5は、略直角に折り曲げられている。この3本の素子接続部5の各々は、矩形の舌片形状を有している。また、電極板4の壁面部(コンデンサ素子の巻回軸方向に伸びる平面部)より伸延し、メタリコン電極2に接続される素子接続部6も、略直角に折り曲げられている。この3本の素子接続部6の各々も、矩形の舌片形状を有している。
電極板4には、3つの開口部19bが形成されており、3本の素子接続部6は、開口部19bの上端部から伸延している。素子接続部5が、「第1の素子接続部」に相当し、素子接続部6が、「第2の素子接続部」に相当する。
【0032】
図1に示した例では、下面のメタリコン電極2にも、上面側と同様の素子接続部5、6が電極板3および電極板4より伸延し、メタリコン電極2に接続されている。ただし、各コンデンサ素子の下面側の電極接続は、上面側と反対側の電極板に接続される。すなわち、上面が素子接続部5(電極板3)に接続されている場合は、下面は素子接続部6(電極板4)に接続され、上面が素子接続部6(電極板4)に接続されている場合は、下面は素子接続部5(電極板3)に接続される。
【0033】
電極板3の中央部には、3つの開口部19aが形成されており、電極板4の素子接続部6が貫通し、電極板3と電極板4とを重ね合せて配置したときに、上述した3本の素子接続部5と3本の素子接続部6とが、コンデンサ素子1の配列方向に交互に並ぶように、電極板3から伸延する。
【0034】
電極板3と電極板4とは、絶縁シート9をその間に挟んで、素子接続部6が開口部19aを貫通するように重ねられる。上述したように、3つの開口部19aと3本の素子接続部5とは、交互に並ぶように、電極板3に形成されているので、電極板3と電極板4とが重ねられたときには、素子接続部5と素子接続部6とは、交互に、かつ、直線状になるように配置される(図1(b)参照)。
そして、電極板3の下部には開口部19aと互い違いに、3つの開口部19cが形成されており、素子接続部6が開口部19cを貫通し、上述した3本の素子接続部5と交互に並ぶように、電極板4の下部から伸延する。
【0035】
素子接続部5と素子接続部6とは、コンデンサ素子1のメタリコン電極2に接続される。上述したように、3本の素子接続部5と3本の素子接続部6とは、交互に配置されており、隣り合う2つのコンデンサ素子1の一方は、素子接続部5に接続され、他方は、素子接続部6に接続される。
このような構成にすることで、素子接続部5に第1の電流を流し、素子接続部6には、第1の電流と逆方向の第2の電流を流すことができ、隣り合う2つのコンデンサ素子1の一方のメタリコン電極2には、第1の電流を供給し、他方のメタリコン電極2には、第1の電流と逆方向の第2の電流を供給することができる。上記の構成により、上述した磁場の打ち消し合いが起こり、低インダクタンス化を図ることができる。
【0036】
コンデンサ素子1の配列方向の端面では、電極板3と電極板4と絶縁シート9とが略直角に折り曲げられて、電極板3によって外部引出電極7が形成され、電極板4によって外部引出電極8が形成される。外部引出電極7と外部引出電極8との間に絶縁シート9が介装されており、絶縁状態を維持することができる。この外部引出電極7と外部引出電極8もコンデンサユニット10を構成するコンデンサ素子1の素子側面(柱体としての側面)に対向するように配置されている。
【0037】
外部引出電極7と外部引出電極8とには、電源(図示せず)などが接続され、コンデンサ素子1に給電することができる。電源から給電されることによって、外部引出電極7には第1の電流が流され、外部引出電極8には第1の電流と逆方向の第2の電流が流される(図5)。
【0038】
上述したように、外部引出電極7と外部引出電極8とは、その間に絶縁シート9が介装されており、さらに、外部引出電極7には第1の電流が流れ、外部引出電極8には第1の電流と逆方向の第2の電流が流れる。このような構成にしたことで、上述した磁場の打ち消し合いが起こり、低インダクタンス化を図ることができる。
【0039】
図1に示すように、コンデンサ素子が並置されたメタリコン電極2には、電極補助板11と電極補助板12とが配置されている。電極補助板11と電極補助板12との間に絶縁シート15が介挿されており、絶縁状態を維持することができる。電極補助板12が、「第1の電極補助板」に相当し、電極補助板11が、「第2の電極補助板」に相当する。また、絶縁シート15が、「第2の絶縁部材」に相当する。
そして、電極補助板12(上面側)と複数個のコンデンサ素子1との各々の間、および電極補助板11(下面側)と複数個のコンデンサ素子1との各々の間に配設された絶縁シート20が、本発明の「第3の絶縁部材」に相当する。
【0040】
電極補助板11と電極補助板12とは、長尺な形状を有する。電極補助板11には、長手方向に沿って3本ずつ、素子接続部14が形成され、素子接続部14は、矩形の舌片を有し、電極補助板11からコンデンサ素子1に向かって突出している。電極補助板12にも、長手方向に沿って3本ずつ、素子接続部13が形成され、素子接続部13も、矩形の舌片を有し、電極補助板12からコンデンサ素子1に向かって突出している。
図1に示すように、電極補助板11と電極補助板12とを重ねて配置したときには、素子接続部13と素子接続部14とは、コンデンサ素子1の配列方向に沿って交互に並ぶ。
【0041】
素子接続部13も素子接続部14も、コンデンサ素子1のメタリコン電極2に電気的に接続されており、素子接続部13は、素子接続部5が接続されているコンデンサ素子1に、また、素子接続部14は、素子接続部6が接続されているコンデンサ素子1に電気的に接続されている。
このようにすることで、素子接続部5と素子接続部13とメタリコン電極2とを介して、電極板3と電極補助板12とを同じ電位にすることができる。また、素子接続部6と素子接続部14とメタリコン電極2とを介して、電極板4と電極補助板11とを同じ電位にすることができる。
【0042】
このような構成にすることで、重なり合った電極補助板11と電極補助板12とには、常に逆向きの電流が流れるようにでき、これらの電流によって、常に逆向きの磁場を生じさせることができ、メタリコン電極2の近傍で発生する磁場を打ち消し合うようにすることができ、低インダクタンス化を図ることができる。
【0043】
また、電極補助板11と電極補助板12とが重ねられたときには、素子接続部13と素子接続部14とは、コンデンサ素子1の配列方向に交互に並ぶように、かつ、直線状に配置される(図1参照)。
そして、電極補助板12に第1の電流を流し、電極補助板11に、第1の電流と逆方向の第2の電流を流すことで、電極補助板12に流れる第1の電流によって生ずる磁場の向きと、電極補助板11に流れる第2の電流によって生ずる磁場の向きとを逆向きにすることができ、磁場の打ち消し合いが起こるため、電極補助板11と電極補助板12とがコイルとして機能することを防止して、低インダクタンス化を図ることができる。
【0044】
図1には、6個のコンデンサ素子1からなる第1のコンデンサユニット10を、また、図2および図3には、第1のコンデンサユニット10の長手方向に沿って、第2のコンデンサユニット10を並置したものを示す。コンデンサユニットは1つでも、2つ以上組み合わせても、使用することができ、必要とされる静電容量に応じて、適宜使い分けることができる。
【0045】
次に、図2のコンデンサユニットについて説明する。図2(a)は本発明に係る2つのコンデンサユニット10が並置されてなるコンデンサユニット16を示す斜視図であり、図2(b)は、コンデンサユニット16の電極板3と電極板4と絶縁シート9との重なりの状態を示す平面図である。また、図3は、コンデンサユニット16を示す分解図である。
【0046】
第2のコンデンサユニット10も長尺な形状を有し、その長手方向(コンデンサ素子1の配列方向)に沿って、電極板3および電極板4が配置されている。第2のコンデンサユニット10の電極板3および電極板4も、第1のコンデンサユニット10と同様の構成である。
したがって、第2のコンデンサユニット10においても、隣り合った2つのコンデンサ素子1の一方は、素子接続部5に接続され、他方は、素子接続部6に接続されるので、隣り合う2つのコンデンサ素子1の一方のメタリコン電極2には、第1の電流を供給し、他方のメタリコン電極2には、第1の電流と逆方向の第2の電流を供給することができる。
【0047】
電極板3は、「第1の電極板」に相当する。また、電極板4は、「第2の電極板」に相当する。電極板3と電極板4との間に、絶縁シート9が介装され、電極板3と電極板4との間で、絶縁状態が維持されるように固定される。絶縁シート9は、「第1の絶縁部材」に相当する。
【0048】
また、図2(b)に示すように、第2のコンデンサユニット10においても、電極板3より伸延し、メタリコン電極2に接続される素子接続部5は、略直角に折り曲げられている。この3本の素子接続部5の各々は、矩形の舌片形状を有している。また、電極板4より伸延し、メタリコン電極2に接続される素子接続部6も、略直角に折り曲げられている。この3本の素子接続部6の各々も、矩形の舌片形状を有している。
電極板4には、3つの開口部19bが形成されており、3本の素子接続部6は、開口部19bの上端部から伸延している。素子接続部5が、「第1の素子接続部」に相当し、素子接続部6が、「第2の素子接続部」に相当する。
【0049】
図2に示した例では、第2のコンデンサユニット10の下面のメタリコン電極2にも、上面側と同様の素子接続部5、6が電極板3および電極板4より伸延し、メタリコン電極2に接続されている。ただし、下面側の電極接続は、上面側と反対側の電極板に接続される。すなわち、上面が素子接続部5(電極板3)に接続されている場合は、下面は素子接続部6(電極板4)に接続され、上面が素子接続部6(電極板4)に接続されている場合は、下面は素子接続部5(電極板3)に接続される。
【0050】
さらに、第1のコンデンサユニット10(左側)と第2のコンデンサユニット10(右側)とは並置されているので、第1のコンデンサユニット10のコンデンサ素子1と、第2のコンデンサユニット10のコンデンサ素子1とは、隣り合うように配置される。配置されるコンデンサ素子1の対は、6組ある。
このように配置されたコンデンサ素子1の対の一方は、素子接続部5(電極板3)に接続され、他方は、素子接続部6(電極板4)に接続される。このような構成にしたことで、隣り合うように配置されたコンデンサ素子1の一方のメタリコン電極2には、第1の電流を供給し、他方のメタリコン電極2には、第1の電流と逆方向の第2の電流を供給することができる(図5参照)。
【0051】
上述したように、同じコンデンサユニット10内においても、異なるコンデンサユニット10においても、隣り合うように配置されたコンデンサ素子1の一方には、素子接続部5が接続され、他方には、素子接続部6が接続される。
【0052】
したがって、隣り合うように配置されたコンデンサ素子1のメタリコン電極2には、第1の電流が供給され、他方のメタリコン電極2には、第1の電流と逆方向の第2の電流が供給される。このように、隣り合うコンデンサ素子1に接続された素子接続部5と素子接続部6とには、常に逆向きの電流が流れるため、上述した磁場の打ち消し合いが起こり、低インダクタンス化を図ることができる。
【0053】
また、第1の素子接続部5を介してメタリコン電極2に接続された電極板3と、第2の素子接続部6を介してメタリコン電極2に接続された電極板4とは、絶縁シート9を介して、重なるように近接配置され、コンデンサ素子の側面に沿って配置される。
そして、第1のコンデンサユニット10(左側)と第2のコンデンサユニット10(右側)とは並置され、一対ずつ6組、隣り合うように配置される。このように配置されたコンデンサ素子1の対の一方は、素子接続部5(電極板3)に接続され、他方は、素子接続部6(電極板4)に接続される。ここで、左側の電極板3と電極板4、右側の電極板3と電極板4は、図2(b)の平面図のように絶縁シート9が介装された状態で前面に重ね合わされ、電極板3同士は外部引出電極7で、電極板4同士は外部引出電極8で、各々、接続される。
【0054】
図2に示すように、第1のコンデンサユニット10のコンデンサ素子1のメタリコン電極2と、第2のコンデンサユニット10のコンデンサ素子1のメタリコン電極2との双方にまたがって、電極補助板11と電極補助板12とが配置されている。電極補助板11と電極補助板12との間に絶縁シート15が介装されており、絶縁状態を維持することができる。電極補助板12が「第1の電極補助板」に相当し、電極補助板11が「第2の電極補助板」に相当する。また、絶縁シート15が「第2の絶縁部材」に相当する。
また、コンデンサ素子の上面側の電極補助板12とメタリコン電極2との間、および下面側の電極補助板11とコンデンサ素子のメタリコン電極2との間に、絶縁シート20を介装したことにより、電極補助板11、12とコンデンサ素子のメタリコン電極の非接続部との絶縁性が確保される。ここで、絶縁シート20が「第3の絶縁部材」に相当する。
【0055】
電極補助板11と電極補助板12とは、長尺な形状を有する。電極補助板11には、長手方向に沿って3本ずつ、素子接続部14が形成され、素子接続部14は、矩形の舌片を有し、電極補助板11からコンデンサ素子1に向かって突出している。電極補助板12にも、長手方向に沿って3本ずつ、素子接続部13が形成され、素子接続部13も、矩形の舌片を有し、電極補助板12からコンデンサ素子1に向かって突出している。
図2に示すように、電極補助板11と電極補助板12とを重ねて配置したときには、素子接続部13と素子接続部14とは、長手方向に沿って交互に並ぶ。
【0056】
素子接続部13も素子接続部14も、コンデンサ素子1のメタリコン電極2に電気的に接続されており、素子接続部13は、素子接続部5が接続されているコンデンサ素子1に、また、素子接続部14は、素子接続部6が接続されているコンデンサ素子1に電気的に接続されている。
このようにすることで、素子接続部5と素子接続部13とメタリコン電極2とを介して、電極板3と電極補助板12とを同じ電位にすることができる。また、素子接続部6と素子接続部14とメタリコン電極2とを介して、電極板4と電極補助板11とを同じ電位にすることができる。
【0057】
このような構成にすることで、重なり合った電極補助板11と電極補助板12とには、常に逆向きの電流が流れ、これらの電流によって、常に逆向きの磁場を生じさせることができ(図5参照)、メタリコン電極2の近傍で発生する磁場が打ち消し合うため、低インダクタンス化を図ることができる。
【0058】
また、電極補助板11と電極補助板12とが重ねられたときには、素子接続部13と素子接続部14とは、コンデンサ素子1の配列方向に交互に並ぶように、かつ、直線状に配置される(図2参照)。
そして、電極補助板12に第1の電流を流し、電極補助板11に、第1の電流と逆方向の第2の電流を流すことで、素子接続部14に流れる第1の電流によって生ずる磁場の向きと、素子接続部13に流れる第2の電流によって生ずる磁場の向きとを逆向きにすることができ、磁場の打ち消し合いが起こるため、素子接続部13と素子接続部14とがコイルとして機能することを防止して、低インダクタンス化を図ることができる。
【0059】
なお、上述したように、コンデンサ素子1の下側にもメタリコン電極2(図2(b)参照)が配置され、下側に配置されたメタリコン電極2にも、電極補助板11と電極補助板12とが配置されている。このような構成にすることで、下側に配置されたメタリコン電極2の近くで生じ得る磁場も、打ち消し合うようにすることができ、低インダクタンス化を図ることができる。
【0060】
並置された2つのコンデンサユニット10からなるコンデンサユニット16は、図4に示すコンデンサケース17に収納される。コンデンサケース17は、コンデンサユニット16と略同じ形状と大きさを有する。コンデンサケース17は、底面と4つの側面とからなる。底面には、複数個(例えば5個)のリブ18が底面に対して略垂直になるように形成されている。「突出片」がこのリブ18に相当する。
【0061】
この構成によれば、突出片によって、隣り合うコンデンサ素子を離隔させて配置することができ、また、離隔配置後にケース内に樹脂が充填されて絶縁されるので、コンデンサ素子の間に絶縁シート等の絶縁部材を介装する必要がない。このため、絶縁に要する部材費を削減することができるとともに、絶縁部材の介装作業を省くことができ、コンデンサの組立工程の簡素化を図ることができる。
なお、リブ18は電極補助板11と電極補助板12の配置される部位を避けて、コンデンサ素子のメタリコン電極の端部に突出するように形成しておくことにより、上記効果を十分に実現することができる(図4)。
【0062】
さらに、コンデンサユニット16をコンデンサケース17に収納したときには、リブ18はコンデンサ素子1に当接するので、リブ18によって、コンデンサ素子1の各々を一定の位置に保持でき、コンデンサ素子1の振動や移動を防止できるため、コンデンサ素子1と素子接続部5と素子接続部6との接続状態を維持でき、断線や短絡を防止することができる。
【0063】
上述した例では、2つのコンデンサユニット10を並置して、コンデンサユニット16を構成したが、3つ以上のコンデンサユニット10を並置して、コンデンサユニット16にすることもできる。3つ以上のコンデンサユニット10を並置した場合には、電極補助板11と電極補助板12との組を2つ以上用意して、隣り合うコンデンサユニット10を構成するコンデンサ素子1のメタリコン電極2との双方にまたがって、電極補助板11と電極補助板12とを配置して、素子接続部13と素子接続部14とをメタリコン電極2に電気的に接続すればよい。
【0064】
このような構成にすることで、3つ以上のコンデンサユニット10を並置した構成にしても、電極補助板11と電極補助板12とを用いることで、大容量化を実現しつつ、低インダクタンス化を容易に図ることもできる。
【0065】
また、コンデンサユニット16をコンデンサケース17に収納して、コンデンサケース17内に樹脂を充填することで、金属化フィルムコンデンサとするのが好適である。
【符号の説明】
【0066】
1 コンデンサ素子
2 電極(メタリコン電極)
3 電極板(第1の電極板)
4 電極板(第2の電極板)
4a 接続部
5 素子接続部(第1の素子接続部)
6 素子接続部(第2の素子接続部)
7 外部引出電極
8 外部引出電極
9 絶縁シート(第1の絶縁部材)
10 コンデンサユニット
11 電極補助板(第2の電極補助板)
12 電極補助板(第1の電極補助板)
13 素子接続部(第3の素子接続部)
14 素子接続部(第4の素子接続部)
15 絶縁シート(第2の絶縁部材)
16 コンデンサユニット
17 ケース
18 リブ(突出片)
19a 開口部
19b 開口部
19c 開口部
20 絶縁シート(第3の絶縁部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に電極を有するコンデンサ素子を複数個、互いに隣接させながら所定の配列方向に沿って配列したコンデンサユニットからなる金属化フィルムコンデンサであって、
前記コンデンサユニットは、
前記配列方向に、互いに離間して配置された第1のコンデンサ素子群と、該第1のコンデンサ素子に隣接しながら前記第1のコンデンサ素子の間に配置されるとともに、電極の極性が前記第1のコンデンサ素子と反対方向に配置された第2のコンデンサ素子群とからなり、
第1の素子接続部を有し、前記第1のコンデンサ素子群の各々の電極面に前記第1の素子接続部を介して接続された第1の電極板と、
第2の素子接続部を有し、前記第1の電極板と重なるように近接配置され、前記第2のコンデンサ素子群の各々の電極面に前記第2の素子接続部を介して接続された第2の電極板と、
前記第1の電極板と前記第2の電極板との間に介装され、前記第1の電極板と前記第2の電極板とを絶縁する第1の絶縁部材と、
第3の素子接続部を有し、前記第1の素子接続部が接続された第1のコンデンサ素子群の各々の電極面に前記第3の素子接続部を介して接続された第1の電極補助板と、
第4の素子接続部を有し、前記第1の電極補助板と重なるように近接配置され、前記第2の素子接続部が接続された第2のコンデンサ素子群の各々の電極面に前記第4の素子接続部を介して接続された第2の電極補助板と、
前記第1の電極補助板と前記第2の電極補助板との間に介装され、前記第1の電極補助板と前記第2の電極補助板とを絶縁する第2の絶縁部材と、
を備え、
前記第1および第2の電極板は、配列した前記複数個のコンデンサ素子の前記電極面を除く側面に沿って配置され、
前記第1および第2の電極補助板は、配列した複数個のコンデンサ素子の一方側の電極面に沿って配置されたことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記第1の電極補助板と前記複数個のコンデンサ素子の各々の電極との間、または前記第2の電極補助板と前記複数個のコンデンサ素子の各々の電極との間に介装され、前記第1または第2の電極補助板と前記複数個のコンデンサ素子の各々の電極とを絶縁する第3の絶縁部材を備えたことを特徴とする請求項1記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記複数個のコンデンサ素子の側面に近い方から前記第1の電極板、前記第1の絶縁部材および前記第2の電極板が順に配設された請求項1または2記載の金属化フィルムコンデンサであって、
前記第1の電極板には開口部が設けられ、
前記第2の素子接続部は前記開口部を通して前記コンデンサ素子の電極面に接続されたことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項4】
複数個のコンデンサ素子の複数側面が互いに対向して配置されるように前記コンデンサユニットを、前記配列方向に沿って平行に配置した一組のコンデンサユニットを備え、前記一組のコンデンサユニットの一方を構成するコンデンサ素子と、該コンデンサ素子に隣接して配置された前記一組のコンデンサユニットの他方を構成するコンデンサ素子とは、電極の方向が互いに反対方向に配置され、
前記第1および第2の電極補助体はそれぞれ、前記一組のコンデンサユニットに対して共通に1つずつ設けられ、前記一組のコンデンサユニットの一方を構成するコンデンサ素子と他方を構成するコンデンサ素子とを接続することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記コンデンサユニットを収納するケースを有し、
前記ケース内壁には、隣り合うコンデンサ素子の間に突出する突出片を有し、前記複数個のコンデンサ素子の各々は、前記突出片を挟んで前記ケース内に収納されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属化フィルムコンデンサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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