説明

金属粉末の燃料化方法及び燃料化システム

【課題】新たな廃棄物の発生や設備の劣化等を伴うことなく、安全かつ最大限に金属廃棄物を再利用する。
【解決手段】仮焼炉13の出口ダクトからプレヒータ12の出口ダクトまでの排ガス流路より抽気した燃焼ガスGを冷却し、冷却した燃焼ガスGを用いて金属粉末を混合器4まで搬送し、主原料と混合した後にセメント焼成用の燃料としてセメントキルン10に吹き込み、セメントキルン10内で燃焼させる。燃焼後の金属酸化物は、セメント中に取り込まれるため、新たな廃棄物を発生させることなく、金属廃棄物を再利用することができ、セメントキルン10の内壁に高温の金属粒子が融着したとしても、設備が劣化することはない。排ガス流路より抽気した燃焼ガスGを冷却した後に金属粉末の搬送用気体に用いるため、粉塵爆発の危険性を低減できる。燃焼ガスGを乾燥機15に導入し、燃焼ガスGの冷却と含水廃棄物Wの乾燥とを同時に行うこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末の燃料化方法及び燃料化システムに関し、特に、金属廃棄物を燃料として有効に再利用する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、機械製品や家電製品等には金属が多用され、それらが廃棄されれば金属廃棄物が発生し、また、その製造過程でも、金属加工の際の加工くずが廃棄物となる。金属部材の加工や研磨の際や、金属が気中から凝縮したとき、液中に析出したときなどは、比表面積の大きな粉末状態で金属の廃棄物が得られることがある。金属廃棄物のうち、純度が高いものは、金属資源として回収され、再利用されるが、廃棄物中には様々な不純物が混入していることが多く、それらは、埋め立て処理等によって処理される。しかしながら、その処理限度量は逼迫しており、廃棄物発生量のさらなる増大が見込まれる今日では、循環システムの確立が強く望まれている。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、生活・産業廃棄物としてのアルミドロス及びアルミ灰等を主原料とし、これに石灰質原料、珪酸塩質原料、硫酸塩質原料及び鉄原料から選ばれる1種又は2種以上の成分補正用原料を用いたアーウイン系セメントの製造方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−309750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属は発熱量が高いため、廃棄物処理された金属粉末を燃料として用いれば、熱エネルギーを得るための資源として有効利用することができる。しかしながら、金属粉末を燃焼させると、金属酸化物が発生し、これらは燃焼灰として排出されるため、新たな廃棄物を発生させることになる。
【0006】
また、金属粉末の燃焼には高温の燃焼炉を用いるが、その炉内雰囲気下では、金属粉末や金属酸化物が炉内各所に付着するため、伝熱効率の低下や、設備の劣化等を招くという問題がある。例えば、金属粉末をボイラーで燃焼させ、熱回収しようとすると、ボイラー水管に高温の金属粒子が融着し、それによって水管が劣化するため、破裂事故を誘発する虞がある。
【0007】
さらに、金属は、粉末状にすると、反応性が高くなるため、その取扱の際に粉塵爆発を引き起こす虞があり、廃棄物処理に危険が伴うという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、新たな廃棄物の発生や設備の劣化等を伴うことなく、安全かつ最大限に金属廃棄物を再利用することが可能な金属粉末の燃料化方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、金属粉末の燃料化方法であって、セメント焼成用仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路より抽気した燃焼ガスを冷却し、該冷却した燃焼ガスを用いて金属粉末を搬送してセメント焼成用の燃料としてセメント焼成炉に導入し、該セメント焼成炉で燃焼させることを特徴とする。ここで、前記金属粉末を廃棄物として排出されたものとすることもできる。
【0010】
そして、本発明によれば、金属廃棄物を含む金属粉末をセメント焼成用の燃料に用いるため、金属廃棄物を処理するのと同時に、熱エネルギーを得るための資源として有効利用することが可能となる。また、金属粉末を燃焼させたときに発生する金属酸化物は、セメント原料の一部となり、最終的にはセメント中に取り込まれるため、新たな廃棄物を発生させることなく、金属廃棄物を再利用することができる。さらに、セメント焼成炉の内壁は、耐火レンガによって保護されているのに加え、原料粉末層やコーティングで被覆されているため、高温の金属粒子が融着したとしても、設備が劣化するのを回避することができる。加えて、仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路より抽気し、その後、冷却した燃焼ガスを金属粉末を搬送するための気体として用いており、該燃焼ガスは低酸素濃度であり、また、所定の温度まで冷却されているため、粉塵爆発の危険性を低減することができる。
【0011】
上記金属粉末の燃料化方法において、前記排ガス流路より抽気した燃焼ガスを、含水廃棄物を乾燥させるための乾燥手段に供給し、該乾燥手段で前記含水廃棄物を乾燥しながら前記燃焼ガスを冷却することができる。この方法によれば、含水廃棄物の乾燥と、燃焼ガスの冷却とを同時に行うことができて経済的である。
【0012】
上記金属粉末の燃料化方法において、前記排ガス流路より抽気した燃焼ガスを300℃以下まで冷却することができる。金属廃棄物として多く排出される鉄粉、アルミニウム粉及びシリコン粉のうち、発火点が最も低いのは鉄粉であり、その発火点は、約310℃であるため、排ガス流路より抽気した燃焼ガスを300℃以下まで冷却することにより、粉塵爆発の危険性を大幅に低減することが可能となる。
【0013】
また、本発明は、金属粉末の燃料化システムであって、セメント焼成用仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路より燃焼ガスを抽気する抽気手段と、抽気された燃焼ガスを冷却する冷却手段と、冷却された燃焼ガスを用いて金属粉末を搬送する搬送手段と、搬送された金属粉末をセメント焼成用の燃料として用いてセメント原料を焼成するセメント焼成炉とを備えることを特徴とする。本発明によれば、前記発明と同様に、新たな廃棄物の発生や設備の劣化等を伴うことなく、安全かつ最大限に金属廃棄物を再利用することが可能となる。
【0014】
上記金属粉末の燃料化システムにおいて、前記冷却手段を、前記排ガス流路より抽気した燃焼ガスを用いて含水廃棄物を乾燥する乾燥手段とすることができる。この構成によれば、経済的な方法で燃料ガスを冷却することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、新たな廃棄物の発生や設備の劣化等を伴うことなく、安全かつ最大限に金属廃棄物を再利用することが可能な金属粉末の燃料化方法等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明にかかる金属粉末の燃料化システムの一実施の形態を示し、この燃料化システム1は、大別して、主燃料槽2と、副燃料槽3と、混合器4と、バーナ5と、セメントキルン10と、クリンカクーラ11と、プレヒータ12と、仮焼炉13と、乾燥機15等で構成され、セメント焼成設備の一部として構成される。尚、図中の物質の流れにおいて、実線は原燃料等の固体の流れを、破線は燃焼ガス等の気体及び粉体を含む気体の流れを示す。
【0018】
セメントキルン10、クリンカクーラ11、プレヒータ12及び仮焼炉13は、従来のセメント製造装置と同様の機能を有し、プレヒータ12に供給されたセメント原料Rは、プレヒータ12で予熱され、仮焼炉13で仮焼された後、セメントキルン10にて焼成される。
【0019】
主燃料糟2は、主燃料を一時的に貯蔵するために備えられ、石炭を乾燥粉砕した微粉炭が貯蔵される。また、主燃料糟2には、主燃料槽2から排出される微粉炭を圧送するためのブロワ7と、微粉炭を混合器4に導入するための管路6とが付設される。
【0020】
副燃料糟3は、副燃料を一時的に貯蔵するために備えられ、廃棄物としてセメント製造工場に持ち込まれた金属粉末が貯蔵される。副燃料として使用可能な金属粉末には、鉄粉、アルミニウム粉及びシリコン粉の他、金属加工の際に発生する切断くず、切削くず、研磨くず、ダライ粉、新断及びメカス、アルミニウムのリサイクル処理時等に発生するアルミドロス粉、並びにWSO(ワイヤーソーオイル)固形分等がある。尚、副燃料槽3に貯蔵される金属粉末の粒度は、凝集、固結の低減、粉塵爆発の防止、搬送の安定性等の観点から、平均粒径で0.01μm以上1000μm以下であることが好ましく、10μm以上300μm以下であることがより好ましい。
【0021】
混合器4は、主燃料槽2から導入される微粉炭と、副燃料槽3から導入される金属粉末とを所定の割合で混合するために設けられる。このときの金属粉末の混合割合は、燃料代替の確実な効果を得ること、一方、適正な火炎状況を確保する必要があることなどの観点から、金属粉末の窯前燃料全体に対する燃料代替率が、発熱量換算で0.1%以上90%以下になる程度であることが好ましく、10%以上50%以下になる程度であることがより好ましい。
【0022】
乾燥機15は、高含水有機汚泥等の高含水有機廃棄物(以下、「含水廃棄物」という)を乾燥するために備えられ、この乾燥機15には、最下段サイクロン12Aから第2サイクロン12Bへの排ガス流路より抽気した燃焼ガスGが供給され、乾燥機15は、この燃焼ガスGを用いて含水廃棄物を乾燥する。
【0023】
また、乾燥機15は、燃焼ガスGを冷却する冷却装置としても機能し、800〜900℃程度の温度を有する燃焼ガスGは、含水廃棄物の乾燥過程で所定の温度まで冷却される。鉄粉、アルミニウム粉及びシリコン粉の発火点が各々、約310℃、約640℃及び約770℃であることから、乾燥機15では、燃焼ガスGを300℃以下まで冷却することが好ましい。
【0024】
ファン16は、プレヒータ12から燃焼ガスGを乾燥機15に導入するために備えられ、ファン16には、その排気を最下段サイクロン12Aから第2サイクロン12Bへの排ガス流路に戻すための循環ダクト17と、ブロワ7に導入するための管路18とが付設される。
【0025】
次に、上記構成を有する金属粉末の燃料化システム1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0026】
燃料化システム1の運転が開始されると、最下段サイクロン12Aと第2サイクロン12Bとの間の排ガス流路から抽気された燃焼ガスGが乾燥機15に導入され、乾燥機15において、含水廃棄物が乾燥されると同時に、燃焼ガスGが冷却される。冷却された燃焼ガスGは、ファン16及び循環ダクト17を介して、排ガス流路に循環するとともに、管路18を介してブロワ7に導入される。尚、乾燥機15で乾燥された廃棄物Wは、セメント製造装置において処理してもよいし、セメント製造装置の系外で処理してもよい。
【0027】
次いで、管路18を介して、冷却された燃焼ガスGがブロワ7に導入され、副燃料糟3の金属粉末が混合器4に圧送される。それと並行して、主燃料糟2の微粉炭が管路6を介して混合器4に導入され、混合器4において、金属粉末と微粉炭とが混合される。次に、混合された両燃料がバーナ5からセメントキルン10内に吹き込まれ、セメント焼成に利用される。
【0028】
上記構成によれば、金属廃棄物としての金属粉末をセメント焼成用の燃料に用いるため、金属廃棄物を処理するのと同時に、熱エネルギーを得るための資源として有効利用することが可能となる。
【0029】
尚、セメントキルン10内において、金属粉末を燃焼させた際に金属酸化物が発生するが、発生した金属酸化物は、焼成過程でセメント原料の一部となり、最終的にはセメント中に取り込まれる。従って、新たな廃棄物を発生させることなく、金属廃棄物を再利用することができる。特に、金属粉末が、鉄粉、アルミニウム粉及びシリコン粉である場合には、それらの酸化物はセメントの主要成分であるため、多量の金属粉末を導入することができ、より多くの金属廃棄物を処理することが可能となる。
【0030】
また、金属粉末中に不純物が混入していたとしても、不純物が、廃油、廃プラスチック等の可燃物であったり、水等の蒸散するものであれば、別途の分離処理を行うことなく、そのまま、セメント焼成用の燃料として用いることができ、処理コストを低く抑えることが可能である。
【0031】
さらに、金属粉末をセメント焼成燃料の一部に用いることにより、主燃料である微粉炭の使用量を減らすことができるため、CO2の排出量を削減することができ、セメント製造の面から見ても有効である。また、金属粉末に微量の重金属、塩素等が混入していても、セメント焼成炉であれば、塩素バイパスシステムで系外に排出することができるため、セメント品質の低下を招く虞がない。
【0032】
さらに、セメントキルン10の内壁は、耐火レンガによって保護されているのに加え、原料粉末層やコーティングで被覆されているため、高温の金属粒子が融着したとしても、設備が劣化するのを回避することができる。
【0033】
また、金属粉末を搬送するための気体として、最下段サイクロン12Aと第2サイクロン12Bとの間の排ガス流路から抽気された燃焼ガスGを用いており、該燃焼ガスGは、2〜8%と酸素濃度が低いため、粉塵爆発の危険性を低減することができる。例えば、鉄粉及びシリコン粉の限界酸素濃度は、各々、約10%及び約15%であり、上記燃焼ガスGは、それらの何れよりも酸素濃度が低い。尚、アルミニウム粉の限界酸素濃度は約3%であり、排ガス流路から抽気される燃焼ガスGの酸素濃度の範囲内に含まれるが、上記構成では、抽気した燃焼ガスGを乾燥機15で冷却した後に、搬送用気体として用いるため、金属粉末を搬送するときの燃焼ガスGの温度は、アルミニウム粉の発火点よりも十分に低い。従って、金属粉末中にアルミニウム粉が含まれていたとしても、安全性を確保することができる。
【0034】
尚、上記実施の形態においては、ブロア7からの搬送気流に、先に主燃料糟2から主燃料としての微粉炭を導入して冷却された燃焼ガスで搬送し、その下流の混合機4で副燃料糟3からの金属粉末を混合したが、ブロア7からの搬送気流に、先に金属粉末を導入して冷却された燃焼ガスで搬送し、その下流の混合機で主燃料を混合してもよい。また、冷却された燃焼ガスで搬送された金属粉末を、主燃料と同一バーナ内の別流路から吹き込んでもよいし、主燃料とは別のバーナから吹き込んでもよい。
【0035】
また、上記実施の形態においては、セメントキルン10の窯前部から金属粉末を吹き込む場合について説明したが、微粉炭と金属粉末を混合させた燃料を仮焼炉13のバーナに供給し、仮焼炉13へ金属粉末を吹き込むこともできる。
【0036】
さらに、上記実施の形態においては、乾燥機15に、最下段サイクロン12Aから第2サイクロン12Bへの排ガス流路より抽気した燃焼ガスGを供給するが、プレヒータ12のさらに上流の、第2サイクロン12Bから第3サイクロン12Cへの排ガス流路、又は第3サイクロン12Cから第4サイクロン12Dへの排ガス流路から燃焼ガスGを抽気して乾燥機15に供給することもできる。
【0037】
また、上記実施の形態においては、含水廃棄物を乾燥するための乾燥機15を用いて燃焼ガスGを冷却するが、冷風を用いた熱交換器型の冷却装置を用いて燃焼ガスGを冷却してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかる金属粉末の燃料化システムの一実施の形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0039】
1 金属粉末の燃料化システム
2 主燃料糟
3 副燃料糟
4 混合器
5 バーナ
6 管路
7 ブロワ
10 セメントキルン
11 クリンカクーラ
12 プレヒータ
12A 最下段サイクロン
12B 第2サイクロン
12C 第3サイクロン
12D 第4サイクロン
13 仮焼炉
15 乾燥機
16 ファン
17 循環ダクト
18 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント焼成用仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路より抽気した燃焼ガスを冷却し、該冷却した燃焼ガスを用いて金属粉末を搬送してセメント焼成用の燃料としてセメント焼成炉に導入し、該セメント焼成炉で燃焼させることを特徴とする金属粉末の燃料化方法。
【請求項2】
前記金属粉末は、廃棄物として排出されたものであることを特徴とする請求項1に記載の金属粉末の燃料化方法。
【請求項3】
前記排ガス流路より抽気した燃焼ガスを、含水廃棄物を乾燥させるための乾燥手段に供給し、該乾燥手段で前記含水廃棄物を乾燥しながら前記燃焼ガスを冷却することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属粉末の燃料化方法。
【請求項4】
前記排ガス流路より抽気した燃焼ガスを300℃以下まで冷却することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の金属粉末の燃料化方法。
【請求項5】
セメント焼成用仮焼炉の出口ダクトからプレヒータの出口ダクトまでの排ガス流路より燃焼ガスを抽気する抽気手段と、
抽気された燃焼ガスを冷却する冷却手段と、
冷却された燃焼ガスを用いて金属粉末を搬送する搬送手段と、
搬送された金属粉末をセメント焼成用の燃料として用いてセメント原料を焼成するセメント焼成炉とを備えることを特徴とする金属粉末の燃料化システム。
【請求項6】
前記冷却手段は、前記排ガス流路より抽気した燃焼ガスを用いて含水廃棄物を乾燥する乾燥手段であることを特徴とする請求項5に記載の金属粉末の燃料化システム。

【図1】
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