説明

釣り用履き物

【課題】防水性であり、ソール6がアッパー4から離脱しない釣り用履き物2の提供。
【解決手段】釣り用履き物2は、アッパー4、ソール6、フェルト8、第一連結体10及び内材24を備えている。アッパー4は、本体14、ベロ16、芯板18及び紐22を備えている。第一連結体10は、第一カバー30及び第一テープ32を備えている。第一カバー30の下端は、糸34によってソール6の前端と縫合されている。第一カバー30は、アッパー4の甲36と積層されている。第一カバー30は、接着剤によって甲36に接合されている。第一テープ32は、糸38によって第一カバー30と縫合されている。第一テープ32は折り返されている。この折り返しによって、ループ40が形成されている。このループ40に、紐22が通されている。内材24は、透湿防水性材料からなる。糸34は、内材24を貫通していない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り人に着用される履き物に関する。
【背景技術】
【0002】
釣り用履き物は、アッパー及びソールを備えている。ソールは、アッパーの底に接合されている。接合には、接着剤が用いられる。典型的な接着剤は、ポリウレタンを基材とする。
【0003】
海釣りでは、波が履き物にかかり、この履き物の内部に海水が浸入することがある。雨天時の釣りでは、雨水が履き物の内部に浸入することがある。水の浸入は、釣り人に不快感を与える。
【0004】
株式会社シマノ発行の「2005 Fishing Tackle Catalogue」の第197ページには、アッパーにゴアテックス(登録商標)のブーティが収容された釣り用履き物が開示されている。このブーティは防水性なので、このブーティにより水の浸入が阻止される。このブーティは透湿性なので、この履き物では蒸れが生じにくい。
【非特許文献1】株式会社シマノ発行の「2005 Fishing Tackle Catalogue」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着剤は、経時変化によって劣化する。劣化により、ソールがアッパーから剥離してしまうことがある。海釣りでは、履き物が海水に濡れることが多い。この海水に含まれる塩分により、接着剤の劣化が促進される。特にポリウレタンを基材とする接着剤が海水に曝されると、加水分解によって激しい劣化が生じる。
【0006】
履き物は、繰り返しの使用によりソールの摩耗又はアッパーの損傷が進行し、やがて寿命を迎える。通常の使用頻度であれば、寿命までにソールが剥離することはない。しかし、使用頻度が極めて少なく、かつ海水に濡れたまま放置されることが多い場合、摩耗又は損傷が進行していないにもかかわらず、ソールがアッパーから剥離することがある。釣り場においてソールがアッパーから離脱すると、釣り人は釣りを継続することができず、場所の移動にも苦労を伴う。
【0007】
アッパーとソールとが縫合されれば、ソールの離脱は生じない。しかし、縫合によってブーティに孔が生じる。この孔を通じ、水が履き物の内部に浸入してしまう。
【0008】
本発明の目的は、防水性であり、かつソールがアッパーから離脱しない釣り用履き物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る釣り用履き物は、
アッパー、
このアッパーに収容されており、防水性材料からなり、袋状である内材、
このアッパーの底に取り付けられたされたソール
並びに
アッパー及びソールの両方に接合された連結体
を備える。
【0010】
好ましくは、連結体のソールとの接合は、糸による縫合によって達成される。
【0011】
好ましくは、連結体は、ソールの前端に接合され、かつアッパーの甲に積層される。好ましくは、アッパーは紐を備え、連結体がループを備える。このループに、紐が通される。連結体がソールの後端に接合され、かつアッパーのヒールと積層されてもよい。
【0012】
本発明に係る釣り用履き物の製造方法は、
防水性材料からなり袋状である内材が、アッパーに収容される工程、
ソールに連結体が接合される工程
及び
アッパーの底にソールが取り付けられ、かつ連結体がアッパーと積層される工程
を含む。
【発明の効果】
【0013】
この釣り用履き物では、連結体により、アッパーとソールとが堅固に接合される。この履き物では、ソールの離脱が生じない。この履き物では、内材の防水性が孔によって阻害されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物2が示された正面図である。図2は、図1の履き物2の一部が示された平面図である。図3は、図1の履き物2が示された右側面図である。この履き物2は、アッパー4、ソール6、フェルト8、第一連結体10及び第二連結体12を備えている。
【0016】
図4は、図2のIV−IV線に沿った拡大断面図である。この図4には、履き物2の爪先近傍が示されている。図5は、図3のV−V線に沿った拡大断面図である。図5には、履き物2の踵近傍が示されている。
【0017】
アッパー4は、本体14、ベロ16、芯板18、ループ20及び紐22を備えている。本体14は、布製である。典型的には、本体14にメッシュ状の布が用いられる。本体14が、合成樹脂又はゴムからなってもよい。ベロ16の前端近傍は、糸24によって本体14に縫合されている。ベロ16は、本体14と同様の材料からなる。ベロ16が、スポンジを含んでもよい。芯板18は、紙素材からなる。芯板18は、アッパー4の底面を形成する。図4及び5に示されるように、本体14の下端は、折り曲げられて芯板18の下側に至っている。ループ20は、本体14に縫合されている。このループに、紐22が通されている。
【0018】
この履き物2はさらに、内材24を備えている。内材24は、アッパー4に収容されている。内材24は、袋状である。内材24は、ヒトの足を覆う形状を呈する。内材24は、透湿防水性材料からなる。典型的な透湿防水性材料は、ゴアテックス(登録商標)である。この内材24は、液体である水の分子を透過させない。この内材24は、気体である水の分子を透過させうる。内材24の上端近傍は、糸26によりアッパー4に縫合されている。
【0019】
ソール6は、ゴム又は合成樹脂を基材とする。典型的な基材は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)である。ソール6は、アッパー4の底に取り付けられている。この取付は、接着剤によって達成される。接着剤の基材ポリマーとしては、ポリウレタン、ポリクロロプレン及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が例示される。ポリウレタンが好ましい。
【0020】
フェルト8は、ソール6と積層されている。フェルト8は、図示されていない面ファスナーにより、ソール6に取り付けられている。典型的な面ファスナーは、ベルクロ社のマジックテープ(登録商標)である。フェルト8は、接地面28を有する。この接地面28は、地面と直接に接触する。フェルト8は、釣り場でのスリップを抑制する。地面との擦動によってフェルト8が摩耗した場合、フェルト8がソール6から剥がされる。そして、新たなフェルト8が面ファスナーによって取り付けられる。
【0021】
図4に示されるように、第一連結体10は、第一カバー30と第一テープ32とからなる。第一カバー30は、合成樹脂からなる。典型的には、第一カバー30に熱可塑性ポリウレタンエラストマーが用いられる。第一カバー30の下端は、糸34によってソール6の前端と縫合されている。第一カバー30は、アッパー4の甲36と積層されている。第一カバー30は、接着剤によって甲36に接合されている。接着剤の典型的な基材ポリマーは、ポリウレタンである。
【0022】
第一テープ32は、織布からなる。典型的な第一テープ32の材質は、ポリプロピレンである。第一テープ32は、糸38によって第一カバー30と縫合されている。第一テープ32は折り返されている。この折り返しによって、ループ40が形成されている。このループ40に、紐22が通されている。
【0023】
図5に示されるように、第二連結体12は、第二カバー42と第二テープ44とからなる。第二カバー42は、合成樹脂からなる。典型的には、第二カバー42に熱可塑性ポリウレタンエラストマーが用いられる。第二カバー42の下端は、糸46によってソール6の後端と縫合されている。第二カバー42は、アッパー4の踵48と積層されている。第二カバー42は、接着剤によって踵48に接合されている。接着剤の典型的な基材ポリマーは、ポリウレタンである。
【0024】
第二テープ44は、織布からなる。典型的な第二テープ44の材質は、ポリプロピレンである。第二テープ44は、糸50によって第二カバー42と縫合されている。第二テープ44は、アッパー4の踵48と積層されている。第二テープ44は、接着剤によって踵48に接合されている。接着剤の典型的な基材ポリマーは、ポリウレタンである。さらに第二テープ44は、糸52によってアッパー4と縫合されている。糸52の位置は、アッパー4の間口54の近傍である。この糸52は、内材24を貫通している。第二テープ44は折り返されている。この折り返しによって、ループが形成されている。
【0025】
この履き物2では、海水に曝されることにより、アッパー4とソール6との間の接着剤が劣化することがある。劣化により、アッパー4からソール6が剥離する。剥離は、爪先寄りで生じやすい。歩行により、ソール6の爪先寄りの屈曲が繰り返されるからである。この履き物2では、糸34によってソール6の前端が第一カバー30に縫合されており、接着剤によって第一カバー30が甲36と接合されているので、剥離が生じてもソール6がアッパー4から離脱しない。釣り場で剥離が生じても、釣り人は釣りを継続することができ、歩行によって場所を移動することもできる。
【0026】
この履き物2では、糸46によってソール6の後端が第二カバー42に縫合されており、この第二カバー42及び第二テープ44が接着剤によって踵48と接合されている。従って、ソール6の全面がアッパー4から剥離した場合でも、ソール6がアッパー4から離脱しない。剥離が爪先側のみで生じる履き物2の場合は、第二カバー42及び第二テープ44が設けられなくてもよい。
【0027】
第一カバー30と甲36との間の接着剤が劣化した場合でも、紐22、第一テープ32及び第一カバー30を介してソール6のアッパー4への連結が維持されるので、ソール6がアッパー4から離脱しない。第二カバー42と踵48との間の接着剤及び第二テープ44と踵48との間の接着剤が劣化した場合でも、糸52、第二テープ44及び第二カバー42を介してソール6のアッパー4への連結が維持されるので、ソール6がアッパー4から離脱しない。
【0028】
内材24には、糸26、52の貫通によって孔が生じている。この孔は、比較的上方にある。糸26、52よりも下方では、内材24に孔が存在しない。この内材24により、履き物2の内部への水の浸入が阻止される。この履き物2は、防水性に優れる。釣り人は、この履き物2を快適に利用することができる。
【0029】
内材24は透湿性なので、発汗によって生じた水蒸気は、内材24を通過して履き物2の外部へと排気されうる。釣り人は、蒸れを感じない。釣り人は、この履き物2を快適に利用することができる。
【0030】
この履き物2の製造方法では、内材24が袋状に形成される。この内材24が、アッパー4に収容される。内材24の上端近傍は、糸26によりアッパー4に縫合される。一方、糸38によって第一テープ32が第一カバー30に縫合され、糸50によって第二テープ44が第二カバー42に縫合される。第一カバー30は、糸34によってソール6の前端に縫合される。第二カバー42は、糸46によってソール6の後端に縫合される。換言すれば、ソール6に第一連結体10及び第二連結体12が接合される。このソール6に、接着剤によってアッパー4の底が取り付けられ、同時に第一連結体10及び第二連結体12がアッパー4と積層される。
【0031】
この製造方法では、糸34、46による縫合のとき、内材24に孔が生じない。この製造方法により、防水性に優れ、しかもアッパー4からのソール6の離脱が生じにくい靴が得られる。
【0032】
接着剤以外の手段で、第一カバー30及び第二カバー42がアッパー4に積層されてもよい。他の手段としては、リベットが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る履き物は、種々の釣り場において利用されうる。本発明に係る履き物には、ブーツ及びウェーダーが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用履き物が示された正面図である。
【図2】図2は、図1の履き物の一部が示された平面図である。
【図3】図3は、図1の履き物が示された右側面図である。
【図4】図4は、図2のIV−IV線に沿った拡大断面図である。
【図5】図5は、図3のV−V線に沿った拡大断面図である。
【符号の説明】
【0035】
2・・・釣り用履き物
4・・・アッパー
6・・・ソール
8・・・フェルト
10・・・第一連結体
12・・・第二連結体
14・・・本体
16・・・ベロ
18・・・芯板
22・・・紐
24・・・内材
26、38、46、50、52・・・糸
30・・・第一カバー
32・・・第一テープ
42・・・第二カバー
44・・・第二テープ
48・・・踵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパー、
このアッパーに収容されており、防水性材料からなり、袋状である内材、
このアッパーの底に取り付けられたされたソール
並びに
アッパー及びソールの両方に接合された連結体
を備えた釣り用履き物。
【請求項2】
上記連結体のソールとの接合が、糸による縫合によって達成された請求項1に記載の履き物。
【請求項3】
上記連結体が、ソールの前端に接合されており、かつアッパーの甲に積層されている請求項1又は2に記載の履き物。
【請求項4】
上記アッパーが紐を備えており、上記連結体がループを備えており、このループに紐が通されている請求項3に記載の履き物。
【請求項5】
上記連結体がソールの後端に接合されており、かつアッパーのヒールと積層されている請求項1又は2に記載の履き物。
【請求項6】
防水性材料からなり袋状である内材が、アッパーに収容される工程、
ソールに連結体が接合される工程
及び
アッパーの底にソールが取り付けられ、かつ連結体がアッパーと積層される工程
を含む釣り用履き物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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