説明

釣り竿用のバット

【課題】 仕様の異なる複数種のブランクスを取り換えて装着することができ、かつ、製作上容易に行え、部品点数も少なくできる釣り竿用のバットを提供する。
【解決手段】 仕様の異なる複数種のブランクス1を取り換えて装着するバット2におけるブランクス挿入用の内部空間に、ブランクス1の元部1Aを内嵌保持する筒状のアダプタ体9を装着する。アダプタ体9の内周面を先部から元部に掛けて内径が徐々に縮径する緩円錐台面部9Aに形成し、緩円錐台面部9Aの元端にブランクス1の元端1Aを挾持保持すべく、円形断面形成位置から軸線方向に沿って元端1Aに至るまでの部分を非円形状態に縮小する非円形縮小断面部9aを型形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕様の異なる複数種のブランクスを取り換えて装着する、握り部を備えた釣り竿用のバットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の釣り竿用のバットは、仕様の異なる複数種のブランクスを取り換えて装着する。一方、バット内に挿入されるブランクスの元部は、製作上のバラツキによって、元部の外径や長さが一定ではない場合がある。
そうすると、ブランクスの元部をバットに挿入して両者を固定した場合に、ブランクスの元部が設計通りに出来ていないとすると、ブランクスの元部とバットとの間にガタツキが発生する虞があった(特許文献1)。
【0003】
そこで、バット内に弾性変形可能なアダプタ体としての内筒(公報内番号:1)を挿入していた。内筒は、全長に亘って略一定の外径を備えた筒状体であり、筒状体の両端部において周方向複数箇所に切欠部(公報内番号:2)を設けて複数個の抱持体(公報内番号:3)を備えている。この抱持体の元端をリング状止具(公報内番号:6)に収束保持させることによって、抱持体をリング状止具側ほど小径となる傾斜面に構成してあった。
このような構成によって、抱持部では、挿入されるブランクスの元部の外径が異なるものであっても、軸線方向に沿った切欠部分が拡縮することによって、保持可能なものに構成してあった(特許文献1)。
【特許文献1】実公昭40−24686号公報(第1頁右欄上から第16行〜第20行,図1から図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来構成のものにあっては、まず、筒状体の両端に切欠部を形成して抱持体に分割し、その分割した複数個の抱持体をリング状止具で絞り込み保持する構成を必要とする。
したがって、筒状体の両端に切欠部と抱持体を形成する工程とその保持体を収束保持する工程を必要とし、部品としてリング状止具も必要となり、工程の手数が複数回にわたるとともに部品点数も多くなる欠点がある。
【0005】
本発明の目的は、仕様の異なる複数種のブランクスを取り換えて装着することができ、かつ、製作上容易に行え、部品点数も少なくできる釣り竿用のバットを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、ブランクス挿入用の内部空間に前記ブランクスの元部を内嵌保持する筒状のアダプタ体を装着し、前記アダプタ体の内周面を先部から元部に掛けて内径が徐々に縮径する緩円錐台面部に形成し、緩円錐台面部の元端部に前記ブランクスの元端を挾持保持すべく、非円形状態に縮小する非円形縮小断面部を型形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
筒状のアダプタ体を設けることによって、仕様の異なる複数種のブランクスを挿入しても、アダプタ体の非円形縮小断面部にブランクスの元部が内接することによって、弾性保持されることとなる。
しかも、前記アダプタ体が成形型によって製作されるので、緩円錐台面部と非円形縮小断面部とを単一の部品として製作することができる。
【0008】
〔効果〕
したがって、仕様の異なる複数種のブランクスの元部を弾性保持可能なアダプタ体を容易に製作でき、部品点数を少なくできる。
【0009】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、芯金の外周面を軸線方向に沿って元端側程大径の緩円錐台面に形成し、前記芯金の前記緩円錐台面の先端部を非円形状態に縮小する非円形縮小面部に形成し、前記芯金にプリプレグシートを巻回し、巻回したプリプレグシートを芯金とともに焼成し、前記芯金を脱芯して形成する点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
アダプタ体の非円形縮小断面部を形成するに、緩円錐台面を呈する芯金の先端部に非円形縮小面部を形成するだけの改善を施すことによって、型形成だけで所望のアダプタ体を得ることができ、それによって、単一の部品でアダプタ体を構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
船竿として使用される釣り竿Aは、図1及び図2に示すように、ブランクス1とバット2とを組み合わせて構成されている。バット2は単一のものであるが、ブランクス1は、長さ、調子等が異なる複数種類のものを選択して前記バット2に取り付けることができる。
ブランクス1は、釣り用ガイド3を備え、竿元端部に固定用ナット4を回転自在に装着し、固定用ナット4の更に竿元側に一定又は略一定の外径を呈する元部1Aを形成して、構成してある。
バット2は、竿元端に至る長さの竿素材5に筒状のリールシート6を外嵌装着するとともに、図示しない、竿元側に握り部を設けてある。
【0012】
図1及び図2に示すように、リールシート6は、固定フード6Aを一体形成する筒状のシートベース6Bと、シートベース6Bの先端部に形成されたネジ部6bに螺合するナット体6Dと、ナット体6Dと相対回転自在でかつ竿軸線方向に一体移動可能な可動フード6Cとで構成してある。
【0013】
ブランクス1等の製造について説明する。炭素繊維等の強化繊維群を引き揃え、引き揃え強化繊維群にエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させて、シート状のプリプレグを形成し、シート状のプリプレグを所定形状に細断して、図3に示すメインパターン7や図示しない補強パターンを準備する。
一方、このメインパターン7とは別に芯金8を準備する。芯金8は、元端に向けて外径が徐々に大きくなる緩円錐台面8Aを呈する棒状のものである。
【0014】
図示していないが、芯金8にメインパターン7を複数層に巻回して、このメインパターン7を巻回した芯金8とともに一体に焼成し、焼成後脱芯し所定長さに裁断し、仕上げ処理を施して、釣り用ガイド3等を取り付ける前のブランクスを構成する。
【0015】
次に、バット2に内装されるアダプタ体9について説明する。図2及び図5に示すように、アダプタ体9は、筒状体であり、先側から元側に掛けて外径が徐々に小径となる緩円錐台面形状を呈する緩円錐台面部9Aを構成し、緩円錐台面部9Aの元端の円形断面形成位置から軸線方向に沿ってアダプタ体9の元端に至るまでの部分を非円形状態に縮小する非円形縮小断面部9aを形成してある。
【0016】
アダプタ体9の製造方法について説明する。図3に示すように、上記したブランクス1の製造方法と略同様の製造方法で行うが、異なる点は、非円形縮小断面9aを形成する部分である。この非円形縮小断面9aを形成する為に、前記した芯金8に一工夫を加える。つまり、図4(a)(b)に示すように、前記した芯金8の先端に非円形縮小面部8aを形成する。この非円形縮小面部8aは、図4(a)に示すように、軸線に沿った正面視で、3つの円弧面8bと3つの直線面8cとを交互に形成したものである。直線面8cは、アダプタ体9の緩円錐台面9Aの傾斜より急な傾斜状態に形成されている。
【0017】
以上のように芯金8の形状に工夫を凝らして、アダプタ体9を製造する。アダプタ体9はブランクス1に比べて竿長の短いものであるが、製造工程がブランクス1と同様に行われるので、同じ図面を使用して説明する。
芯金8に、プリプレグシートから裁断したパターン7を巻回して、前記したように、芯金8とともに巻回したパターンを焼成し、焼成後脱芯し、所定長さに裁断して仕上げ処理を施し、アダプタ体9を形成する。
【0018】
このように構成されたアダプタ体9は、バット2の竿先端側開口から竿素材5内のブランクス挿入用の内部空間に挿入され、接着等で固定される。挿入方向は、元端側から挿し込み、先端をバット2の竿先端に合わせた位置まで挿入する。アダプタ体9はバット2と一体として取り扱う。
【0019】
図2に示すように、ブランクス1の元部1Aをバット体2に装着するには、元部1Aをアダプタ体9内に挿入し、元部1Aの端がアダプタ体9の非円形縮小断面9aに内接するまで押し込み、その押し込み状態でブランクス1に取り付けてある固定用ナット4をバット2のネジ部6bに螺合させて、取付固定状態を確定する。
【0020】
アダプタ体9の非円形縮小断面9aは非円形断面であり徐々に元側に向けて縮小するものであるので、ブランクス1の元部1Aの保持力、及び、位置決めが確かなものとなる。また、アダプタ体9はプリプレグ製であるので、非円形縮小断面9aは弾性変形力があり、ブランクス1の元部1Aの内接位置を、非円形縮小断面9aが拡縮小変形して、調節することができる。
【0021】
〔別実施形態〕
(1) 非円形縮小断面部9aとしては、単純な六角形、八角形等の多角形でもよい。
(2) アダプタ体9としては、プリプレグ以外の強化繊維の混入されていない熱可塑性樹脂単体のものでインジェクション成形したものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)ブランクスをバットに装着する前の状態を示す側面図、(b)ブランクスをバットに装着した状態を示す側面図
【図2】(a)アダプタ体をバットに挿入し、ブランクスをバットに装着する前の状態を示す縦断側面図、(b)ブランクスをアダプタ体に挿入し、バットに装着した状態を示す縦断側面図
【図3】メインパターンを芯金に巻回する前の状態を示す斜視図
【図4】(a)芯金の非円形縮小面部を示す正面図、(b)芯金の非円形縮小面部を示す側面図
【図5】(a)アダプタ体の非円形縮小断面部を示す正面図、(b)アダプタ体の非円形縮小断面部を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0023】
1 ブランクス
2 バット
8 芯金
8A 緩円錐台面
8a 非円形縮小面部
9 アダプタ体
9A 緩円錐台面部
9a 非円形縮小断面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕様の異なる複数種のブランクスを取り換えて装着する、握り部を備えた釣り竿のバットであって、
前記ブランクス挿入用の内部空間に前記ブランクスの元部を内嵌保持する筒状のアダプタ体を装着し、前記アダプタ体の内周面を先部から元部に掛けて内径が徐々に縮径する緩円錐台面部に形成し、緩円錐台面部の元端部に前記ブランクスの元端を挾持保持すべく、非円形状態に縮小する非円形縮小断面部を型形成してある釣り竿用のバット。
【請求項2】
芯金の外周面を軸線方向に沿って元端側程大径の緩円錐台面に形成し、前記芯金の前記緩円錐台面の先端部を非円形状態に縮小する非円形縮小面部に形成し、前記芯金にプリプレグシートを巻回し、巻回したプリプレグシートを芯金とともに焼成し、前記芯金を脱芯して形成する請求項1記載のアダプタ体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−254312(P2009−254312A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109232(P2008−109232)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】