説明

釣り竿

【課題】 替穂先竿を使用することなく、穂先竿の調子を変更して、釣り操作を容易かつ軽快に行い得る釣り竿を提供する。
【解決手段】 穂先竿3の竿線方向における複数箇所に釣り糸aの一端を取付固定する糸連結体1,5を設ける。糸連結体1,5のうちの主糸連結体1を穂先竿3の竿先端に設け、糸連結体1,5のうちの副糸連結体5を、穂先竿3の竿先端から竿尻側に寄った位置に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穂先竿に釣り糸を連結する糸連結体を設けてある釣り竿に関する。
【背景技術】
【0002】
穂先竿としての穂先部(公報内番号:1)の竿先端に、釣り糸を連結固定する糸連結体としての糸取付部材(公報内番号:4)を設けていた(特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−289010号公報(段落〔0022〕〔0025〕,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
糸取付部材を穂先竿の竿先端だけに設けてあるので、二番竿の竿先端から穂先竿の糸取付部材の位置までの長さを変えて竿の調子を変更し、囮操作等をより軽快に行いたい場合には、穂先竿を長さの異なるものに取り換えていた。
したがって、長さの異なる穂先竿を替穂先竿として釣り場に携行しなければならず、釣り場に持ち込む装備が多くなって移動負担が大きくなる虞があった。
【0004】
本発明の目的は、替穂先竿を使用することなく、穂先竿の調子を変更して、釣り操作を容易かつ軽快に行い得る釣り竿を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、穂先竿の竿線方向における複数箇所に釣り糸の一端を取付固定する糸連結体を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0006】
〔作用〕
穂先竿の複数箇所に糸連結体が設けてあるので、任意の位置の糸連結体を選択して、その選択した糸連結体に釣り糸の一端を取付固定することによって、穂先竿の調子を変更することができ、所望の釣り操作が可能である。
【0007】
〔効果〕
したがって、穂先竿の調子を変更するのに、替穂先竿と取り替える必要はなく、替穂先竿を準備する必要性はない。
【0008】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、請求項1に係る発明において、前記糸連結体のうちの主糸連結体を穂先竿の竿先端に設け、前記主糸連結体を、穂先竿に自身の軸線周りで回転可能に保持される連結部と、竿先端より先側に突出する糸付部とを一体形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0009】
〔作用効果〕
主糸連結体は穂先竿の竿先端に設けてあるので、穂先竿の長さを生かして軟調子の状態で囮操作等を行うことができる。しかも、糸付部は穂先竿から更に竿先側に延出されているので、魚信等を減衰させずに穂先竿に伝達し、釣り人の感知能力に寄与するものである。
【0010】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項1又は2に係る発明において、前記糸連結体のうちの副糸連結体を、穂先竿の竿先端から竿尻側に寄った位置に設け、前記副糸連結体を、穂先竿の外周面に突出させた一対の区画壁と一対の区画壁の間において前記外周面に回転自在に外嵌する糸保持回転体とで構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0011】
〔作用効果〕
穂先竿自体に副糸連結体を主糸連結体とは別に設けることとしたので、穂先竿の竿先端だけではなく、竿先端よりは手元側に近い位置に副糸連結体を設けるこができる。このことによって、釣り糸を竿先端に取り付けた場合に比べて硬調子のものにでき、囮操作に優先して大物等を抜き上げる際に穂先竿の強靭さや力強さを持たせたものにできる。
一方、副糸連結体を設けるに、区画壁を設けて穂先竿の外周面に糸保持回転体を回転可能に保持できるようにしてあるので、簡単な構造で糸連結体を設けることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
鮎竿や渓流竿などに使用される竿先端部構造について説明する。図1に示すように、穂先竿3は、先細りの中実棒状に形成され、その穂先竿3の先端部に、筒状のホルダー2が外嵌装着され、ホルダー2に糸連結体を構成する主糸連結体1を、穂先竿3の軸線X周りに相対回動可能に備えて、釣り竿の竿先端部構造を構成している。
【0013】
図示は省略するが、穂先竿3は、軸線に沿って束ねたガラス強化繊維の束(500本〜1000本)に、熱硬化性樹脂を含浸させた後、ダイスより引き抜き、所定長さに裁断して中実棒状に形成し、その先端側ほど細くするための研削加工などを施して形成されている。
【0014】
ただし、中実棒状のものに限定される訳ではなく、中空体状のものでもよい。また、ガラス繊維だけで構成されるものではなく、ガラス繊維と炭素繊維との混合繊維、或いは、炭素繊維の単独であってもよい。なお、ここでは炭素繊維などに比較して弾性率が低く、柔軟性及び靱性の高いガラス繊維を採用してある。
【0015】
図1及び図2に示すように、主糸連結体1は、ステンレス又はアルミニウムなどの金属製で、釣り糸aが結び付けられる小径円柱状の糸付部1Aと、この糸付部1Aからの釣り糸aの抜け落ちを防止する抜止部1Bと、筒状ホルダー2に連結される大径円柱状の連結部1Cとで形成される。
【0016】
図2に示すように、筒状のホルダー2は、その先端部に、主糸連結体1の糸付部1Aが挿通される挿通孔2bと、主糸連結体1の連結部1Cを抜け止め保持する保持部2Bとを備え、その先端部に主糸連結体1の連結部1Cを内嵌させた状態で、その竿尻側を穂先竿3の先端側に外嵌した後、その外周面2Aの所定箇所2Cが、穂先竿3に形成した一対の凹部3Aにカシメ処理によって係入されることで、穂先竿3の先端部に主糸連結体1を穂先竿3の軸線X周りに相対回動可能に連結保持する。
【0017】
筒状のホルダー2の内部において、穂先竿3の先端と主糸連結体1の連結部1Cとの間には、主糸連結体1の回転抵抗を低減させる硬質のボール4が介装されている。
【0018】
副糸連結体5の構成について説明する。図1及び図3に示すように、副糸連結体5は、穂先竿3の竿先端から竿尻側に向けて4箇所に設けられている。各箇所での副糸連結体5の構成は同様である。副糸連結体5は、穂先竿3の外周面3Bの所定位置に突出させた一対の区画壁5Bと一対の区画壁5Bの間において外周面に回転自在に外嵌する糸保持回転体5Aとで構成してある。
【0019】
区画壁5Bは、穂先竿3の軸線方向に所定間隔を開けた状態で一対設けられており、断面三角形の環状体である。竿先側の区画壁5Bと竿尻側の区画壁5Bとは、互いに穂先竿3の外周面3Bから径方向に沿って立設した縦壁面5bを互いに向き合う状態に形成されて、糸保持回転体5Aを装着する空間を確保している。竿先側の区画壁5Bにおいては、縦壁面5bの竿先側には竿先側に向けて徐々に低くなる傾斜面5aが形成されており、一方、竿尻側の区画壁5Bにおいては、縦壁面5bの竿尻側には竿尻側に向けて徐々に低くなる傾斜面5aが形成されている。このように、傾斜面5a、5bが形成されているのは、釣り糸aが区画壁5Bに巻き付くことを阻止し、糸保持回転体5Aを保持する為である。
【0020】
区画壁5Bは、プリプレグ或いは樹脂塗料を盛り上げて形成するか、又は、弾性のゴムをリング状に形成して、所定位置に装着して形成する。ただし、区画壁5Bの縦壁面5bの先端外径Dは、二番竿6の玉口内径より小でなければならない。
【0021】
糸保持回転体5Aは少なくとも竿先側の区画壁5Bを形成する前に所定位置に装着する必要がある。糸保持回転体5Aは、断面チャンネル状の回転体であり、断面チャンネル状の凹入空間に釣り糸aの連結空間を形成している。糸保持回転体5Aは、釣り糸aを装着した状態で糸が絡みつかないように穂先竿3の外周面を回転するものであるが必ずしも回転するものである必要はない。
糸保持回転体5Aの材質は、チタンやアルミ等の軽量金属が採用される。
【0022】
以上のように、主糸連結体1と副糸連結体5とを合計5箇所に設けて、釣り糸aの連結位置を任意に選択できるように構成し、替穂先を用意する必要性を無くすものである。
鮎竿として使用して、囮鮎を自由に操る場合には、主糸連結体1や副糸連結体5の内の竿先側近くに配置されたものに釣り糸aを括りつける。
大物を狙う場合には、負荷に耐えやすい竿尻側の副糸連結体5に釣り糸aを括りつける。
【0023】
このように、釣り糸aの括り付け位置を釣り人の好み等に応じて任意に選択することができ、釣り操作性の向上を図るとともに、穂先竿3を長さの異なるものに取り替える必要もないのである。
【0024】
〔第2実施形態〕
この実施形態では、図4に示すように、穂先竿3が複数段階に伸縮可能な構成を採る形態について説明する。
つまり、主糸連結体1を備えた第1穂先部3a、最も竿先側に位置する副糸連結体5を備えた第2穂先部3b、次に竿先側に位置する副糸連結体5を備えた第3穂先部3c、竿尻側に位置する副糸連結体5を備えた第4穂先部3d、最も竿尻側に位置する副糸連結体5を備えた第5穂先部3eとに、穂先竿3を分割構成する。
第1穂先部3a〜第5穂先部3eまでの各先端部には、副糸連結体5が設けてあり、釣り糸aの括り付け位置を変更可能に構成してある。
【0025】
以上のような構成によって、図4(a)に示すように、第1穂先部3aは第2穂先部3b内に収納可能であり、第2穂先部3bは第3穂先部3c内に収納可能であり、第1穂先部3aから第4穂先部3dまでの小径竿体を順次大径竿体内に収納可能である。この収納状態を維持するために、大径竿体の竿尻端部の内部空間に小径竿体の竿尻端部を内嵌合して嵌合状態を保持する嵌合保持機構Aが設けてある。
【0026】
したがって、第1穂先部3aの竿尻端部を第2穂先部3bの嵌合保持機構A内に内嵌させることによって、第1穂先部3aを第2穂先部3b内に収納保持できる。同様に、第2穂先部3bの竿尻端部を第3穂先部3cの嵌合保持機構A内に内嵌させることによって、第2穂先部3bを第3穂先部3c内に収納保持できる。このように、順番に小径竿体を大径竿体内に収納保持することができる。
【0027】
一方、第1穂先部3aの竿尻端外周面と第2穂先部3bの竿先端内周面とは互いに嵌合して第1穂先部3aの伸長状態を保持すべく、第1穂先部3aの竿尻端外周面と第2穂先部3bの竿先端内周面とは圧接可能に構成してある。このような構成によって、図4(b)に示すように、第1穂先部3aを第2穂先部3bから引き出した伸長状態に保持できる。
第2穂先部3bから第4穂先部3dまでの竿体も、同様に、第3穂先部3cから第5穂先部3eまでの竿体から引き出した伸長状態に保持可能である。したがって、第1穂先部3aから第5穂先部3eまでの竿体も伸縮式振出竿に構成してある。
【0028】
このような構成を採ることによって、副糸連結体5のいずれかのものに釣り糸aを括り付けた場合に、例えば、その括り付け位置が第4穂先部3dに装着した副糸連結体5であれば、第1穂先部3aを第2穂先部3bに収納し、第1穂先部3aを収納した第2穂先部3bを第3穂先部3cに収納し、第1穂先部3a及び第2穂先部3bを収納した第3穂先部3cを第4穂先部3d内に収納する。
これによって、釣り糸aを括り付けた第4穂先部3dより先端側の第1穂先部3aから第3穂先部3cまでの竿体を第4穂先部3d内に収納できるので、第1穂先部3aから第3穂先部3cまでの竿体が釣り操作の邪魔になり難い。
【0029】
〔別実施形態〕
〔1〕糸連結体としては、穂先竿の竿先端から竿尻側に寄った位置に設けられる副糸連結体5のみで構成してもよい。
【0030】
〔2〕副糸連結体5を構成するに、糸保持回転体5Aを回転自在に保持するのに、穂先竿3の外周面3Bに区画壁5Bを立設する代わりに、軸用止め輪を外周面3Bに装着してもよい。このように軸用止め輪を導入すれば、糸保持回転体5Aの取り外しが容易に行える。
【0031】
〔3〕主糸連結体1としては、穂先竿3の先端部に、穂先竿3の軸心X周りに相対回動不能に固定装備したものであってもよい。
【0032】
〔4〕主糸連結体1に採用する材質として種々の変更が可能であり、例えば、金属材の他に硬質樹脂材などを採用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】鮎竿等の穂先竿を示す側面図
【図2】主糸連結体を示す縦断側面図
【図3】副糸連結体を示す縦断側面図
【図4】(a)穂先竿を構成する各穂先部を収縮した状態を示す側面図、(b)各穂先部を伸長した状態を示す側面図
【符号の説明】
【0034】
1 主連結体(糸連結体)
1A 糸付部
1C 連結部
3 穂先竿
3B 外周面
5 副糸連結体(糸連結体)
5A 糸保持回転体
5B 区画壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穂先竿の竿線方向における複数箇所に釣り糸の一端を取付固定する糸連結体を設けてある釣り竿。
【請求項2】
前記糸連結体のうちの主糸連結体を穂先竿の竿先端に設け、前記主糸連結体を、穂先竿に自身の軸線周りで回転可能に保持される連結部と、竿先端より先側に突出する糸付部とで構成してある請求項1記載の釣り竿 。
【請求項3】
前記糸連結体のうちの副糸連結体を、穂先竿の竿先端から竿尻側に寄った位置に設け、前記副糸連結体を、穂先竿の外周面に突出させた一対の区画壁と一対の区画壁の間において前記外周面に回転自在に外嵌する糸保持回転体とで構成してある請求項1又は2記載の釣り竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−247253(P2009−247253A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97331(P2008−97331)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】