説明

釣竿用部品

【課題】線膨張率に大きな差のある部材同士の一体化成形を行っても境界剥離を防止できる釣竿用部品を提供することである。
【解決手段】筒体15の外側に、該筒体よりも線膨張率の大きな合成樹脂材20を溶融させて行うインサート成形等の一体化成形によって両部材を一体化させて、これに竿杆を挿通させて装着させる釣竿用部品であって、前記筒体は、外側の合成樹脂材と一体化した境界部を介して該合成樹脂材からその長手方向に収縮力を受けた際に、該合成樹脂材の収縮に追従できる構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール装着部品等、竿杆を挿通させて装着させる釣竿用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
竿杆を挿通させた透明状の部品の外部から該部品を通して見た場合に、内方筒体に設けられた色や図柄等の各種模様が視認できるようにする構造が下記特許文献1に開示されている。これに開示の透明釣竿用グリップ部品では、グリップ部材とその内部の筒体との間に発生する部分的な剥離(文献2には、筒体と竿本体との間の部分的な剥離と記載されているが、問題点は前記の通り)によって視認不良が生じ得るため、下記特許文献2では、透明部品と部品内部の芯部材との間に被膜を設け、これにより部品と芯部材との均一な当接状態を得て、接合状態を強固にして剥離を防止することが行われている。
【特許文献1】特開平9−275858号公報
【特許文献2】特開2005−013154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、上記特許文献2の構造であっても、線膨張率に大きな差がある部材同士、即ち、線膨張率の大きな透明合成樹脂部品と線膨張率の小さな内部の芯部材とをインサート成形等による一体化を行えば、樹脂が成形温度から常温に冷却されると外側の透明合成樹脂部品が相対的に大きく縮み、内部の芯部材との境界部において剥離を生じ得る。剥離を生じた部品を見ると、剥離領域が白濁し、部品模様の視認性が低下するという問題がある。
依って解決しようとする課題は、線膨張率に大きな差のある部材同士の一体化成形を行っても境界剥離を防止できる釣竿用部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題に鑑みて第1の発明は、筒体の外側に、該筒体よりも線膨張率の大きな合成樹脂材を溶融させて行うインサート成形等の一体化成形によって両部材を一体化させて、これに竿杆を挿通させて装着させる釣竿用部品であって、前記筒体は、外側の合成樹脂材と一体化した境界部を介して該合成樹脂材からその長手方向に収縮力を受けた際に、該合成樹脂材の収縮に追従できる構造であることを特徴とする釣竿用部品を提供する。
この合成樹脂が透明状であれば、内部が視認でき、筒体表面に模様が有れば深みを有して視認できる。
【0005】
第2の発明は、第1の発明の前記筒体は繊維強化樹脂で構成されており、その繊維は筒体の円周方向と傾斜方向の中から任意に選択又は組み合わせた方向にのみ指向している。
ここで、円周方向と傾斜方向の中から任意に選択又は組み合わせた方向にのみ、とはいっても、実質的に無いと言える程極僅かしか存在しない軸長方向繊維存在の場合は発明に含まれる。
第3の発明は、第1の発明の前記筒体は、その長手方向の1か所以上の適宜な位置で分割されており、該分割部の両側各筒体要素は互いに長手方向に隙間を有して配設されている。
ここでの筒体要素間に他の部材が挟まれていても、該他の部材が筒体よりも該筒体の長手方向に柔軟な部材であれば、ここにいう隙間を有し、には反しない。
【発明の効果】
【0006】
第1の発明では、筒体が、外側の合成樹脂材からその長手方向に収縮力を受けた際に、該合成樹脂材の収縮に追従できる構造であるため、成形時よりも温度が低下した際の両部材の長さの相違が低減できて、境界部の剥離が防止できる。温度が低下する場合としては、成形後の冷却時以外に、釣具を車のトランクに入れて運搬する際に温度が相当に上昇し、その後、取り出してからの冷却の場合もある。
第2の発明では、強化繊維が円周方向か傾斜方向にだけ指向していて、実質、軸長方向に指向していないため、外側合成樹脂材の収縮力に対して柔軟性があり、外側合成樹脂材の収縮に追従でき、境界剥離が防止できる。
【0007】
第3の発明では、筒体が長手方向に2以上の筒体要素に分割されているため、外側の合成樹脂材が収縮する際に受ける収縮力(圧縮力)は実質的に分割位置で分断され、筒体は、実質、各筒体要素毎に収縮力を受けると考えられる。従って、分割して長さが短くなった分、外側合成樹脂材の収縮力が各筒体要素毎に振り分けられ、小さな圧縮力の作用で済み、境界剥離が防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を添付図面を用いて更に詳細に説明する。図1は本発明に係る釣竿用部品を使用した釣竿の例としてのルアーロッドの要部の縦断面図、図2は図1の中の本願釣竿用部品の拡大図(a)と端面図(b)であり、図3はその要部拡大図である。エポキシ樹脂等の合成樹脂マトリックスを炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製竿杆10の後方部所定位置外側には、図示しないリールを装着固定させるリール装着部品30を接着固定している。また、その直後位置には、EVA等の発泡性樹脂やコルク等の後側グリップG1が配設、接着固定されている。
【0009】
リール装着部品30は、内部側に、ここでは繊維強化樹脂製で円筒状の筒体15が配設され、外側に、透明なポリアミド樹脂(ナイロン)等の熱可塑性合成樹脂製のリール装着本体20が配設され、両部材が一体化されている。筒体15の外側表面には適宜な文字や図柄等の模様を設けている。また他の模様として、繊維強化樹脂製の筒体15の表面部に織布を使用し、その目を模様とすることもできる。この筒体は、その外表面に模様を形成する目的の他、リール装着本体20用の合成樹脂材を溶融させて射出成形等によって成形した後の冷却時に、竿杆挿通用の貫通孔が断面円形から非円形に歪むことを防止する目的も有する。
【0010】
従って、筒体15はリール装着本体20用の合成樹脂材よりも剛性の高いことが望まれる。従って、筒体は繊維強化樹脂製とは限らず、高剛性な合成樹脂材等を使用してもよい。この筒体15を繊維強化樹脂製とすることで、薄肉厚でありながら、軽量であって高剛性を確保できる。ここでは、リール装着本体に対して筒体15を一体化させるべくインサート成形を行った。
【0011】
リール装着本体20の材料としては、ナイロンの他、ABS樹脂、ポリカーボネート等の透明状の熱可塑性合成樹脂がある。これら材料は繊維強化樹脂材と比較して線膨張率が大きい。これらの合成樹脂材に比べて線膨張率が小さい他の合成樹脂材で筒体15を製作すれば、同様に、本願課題が生じ得る。
【0012】
上記のようにして製造されたリール装着部品30には、リール脚固定用の固定フード20A、リール脚載置面部20S、トリガー20T、先部には雄ねじ部20Nが形成されている。これらは全てリール装着本体20の側に形成されている。また、前記雄ねじ部20Nと螺合する雌ねじを有するナット部材Nが、リール装着部品30の前部に螺合しており、これは移動フード20Bをも有する。更には、このナット部材Nの外側部は、後側グリップG1と同様な発泡性のEVA等による前側グリップとして形成されている。
【0013】
図1の筒体15の上側面に模様を設けていれば、外部から、リール脚装着面部20Sの肉部を介して上記模様が深みを帯びて視認できる。
ナイロンによる筒体15のインサート成形で成形したリール装着本体20には、筒体15の後端面15Bに係止するように、係止部20K’が形成されている。また、係止部の内径は、筒体15の内径と同じに形成している。即ち、筒体の肉厚分の係止部となっている。
【0014】
筒体15は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂をマトリックスとし、その強化繊維は炭素繊維であって実質的に全て円周方向に指向させている。傾斜方向に指向させてもよい。筒体15はこの構造であるため、外側のリール装着本体20の収縮しようとする力が境界部から筒体側に伝達されるが、それにより筒体15に発生する力によって縮み、筒体15はリール装着本体20の収縮に追従する。こうして、両部材の境界での剥離が防止される。
【0015】
図4はリール装着部品30の他の構造例の要部を示す。筒体15はこの例では同じ長さの5つに分割され、筒体要素15A,15B,15C,15D,15Eで構成されている。夫々の間には隙間AB,BC,CD,DEを設けてあり、外側のリール装着本体20の成形時に、その材料であるナイロンが各隙間に侵入している。従って、各筒体要素は、各要素長さの範囲でリール装着本体20の収縮の力を受けるが、夫々は筒体全体の長さよりも短く、この場合は、約1/5であり、それだけリール装着本体20からの収縮力の作用が小さく、境界剥離が防止できる。
【0016】
図5はリール装着部品30の他の構造例の要部を示し、図4の形態の変形例と言える。各筒体要素間隙間に、筒体15の構成材よりも筒体の長手方向に柔軟な柔軟部材15AB,15BC,15CD,15DEを介在させている。この柔軟部材としては、例えば、シリコン等の合成ゴム、エラストマーがある。合成樹脂材を射出してインサート成形する準備の際、筒体要素間にこうした柔軟部材を介在させれば、筒体要素の位置決めが容易になる。また、この構造の効果は、リール装着本体20の収縮による各筒体要素間の位置ずれは各柔軟部材が吸収し、更に各筒体要素は、各要素長さの範囲でリール装着本体20の収縮力を受けるが、夫々は筒体全体の長さよりも短く、この場合は、約1/5であり、それだけリール装着本体20からの収縮力の作用が小さいため境界剥離が防止できる。
【0017】
上記図5の形態説明によって部品を成形する場合に、上記各柔軟部材の外周位置(外周寸法)を、隣接する筒体要素の外周よりも低くすれば、射出したナイロン等の合成樹脂材が各筒体要素間隙間に位置する柔軟部材の外周側に入り込み、図4の形態と同様な作用効果を奏する形態となる。
【0018】
以上では竿杆装着用の釣竿用部品としてリール装着部品を例示したが、グリップ部品等であってもよい。主に部品の長さ方向収縮による境界剥離防止であるため、部品の長さが長い方がこうした対策の必要性が高まる。リール装着部品のように7cm程度以上の部品長さのものでは対策を要する。また、釣竿はルアーロッドに限らず、これ以外でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、リール装着部品等の竿杆装着用の釣竿用部品に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明に係る釣竿用部品を使用した釣竿の例としてのルアーロッドの要部の縦断面図である。
【図2】図2は図1の中の本願釣竿用部品の拡大図と端面図である。
【図3】図3はその要部拡大図である。
【図4】図4はリール装着部品の他の構造例の要部図である。
【図5】図5はリール装着部品の更に他の構造例の要部図である。
【符号の説明】
【0021】
10 竿杆
15 筒体
15A,15B,15C,15D,15E 筒体要素
20 リール装着本体
30 リール装着部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体の外側に、該筒体よりも線膨張率の大きな合成樹脂材を溶融させて行うインサート成形等の一体化成形によって両部材を一体化させて、これに竿杆を挿通させて装着させる釣竿用部品であって、
前記筒体は、外側の合成樹脂材と一体化した境界部を介して該合成樹脂材からその長手方向に収縮力を受けた際に、該合成樹脂材の収縮に追従できる構造である
ことを特徴とする釣竿用部品。
【請求項2】
前記筒体は繊維強化樹脂で構成されており、その繊維は筒体の円周方向と傾斜方向の中から任意に選択又は組み合わせた方向にのみ指向している請求項1記載の釣竿用部品。
【請求項3】
前記筒体は、その長手方向の1か所以上の適宜な位置で分割されており、該分割部の両側各筒体要素は互いに長手方向に隙間を有して配設されている請求項1記載の釣竿用部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−172308(P2010−172308A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21029(P2009−21029)
【出願日】平成21年1月31日(2009.1.31)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】