説明

釣竿

本発明は、釣竿及び釣竿のような筒状構造体の製造方法に関する。釣竿は、ある平面(210)の範囲内でのびる。前記平面におけるロッド(202)の少なくとも一部分の第一方向(B)への曲げ剛性は、前記平面における第一方向と反対方向(A)の曲げ剛性と異なる。前記二つの方向の曲げ剛性の差は、第一方向における曲げ剛性の値の少なくとも5%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣竿に関する。本発明は、また、釣竿の製造方法に関する。釣竿は、大まかに、フライロッド、キャスティングロッド、及びフィッシングポールに分類することができる。本発明は、筒状構造体を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
フライロッドは、比較的重いフィッシングライン(フライライン)に取り付けた比較的軽いルアー(フライ)をキャストする釣竿である。キャスティングロッドは、比較的軽いフィッシングラインに取り付けた比較的重いルアーをキャストする釣竿である。フライロッド及びキャスティングロッドは、各々、所定の位置にルアーをキャストするために、異なるキャスティングアクション及びプロセスを必要とする。フィッシングポールは、ルアーを所定の位置に送る時にキャスティングプロセスを使用しない釣竿である。
【0003】
図1Aは、フライロッド又はキャスティングロッドになり得る典型的な釣竿10を示している。この釣竿は、長手方向軸線に沿ってのびる筒体12を備えている。少なくとも一つのハンドル、即ち、グリップ14が、筒体12に取り付けられている。前記ハンドル14は、筒体12におけるロッドの先端部16から離れた方の端部にある。筒体の直径は、典型的には、先端部が最も可撓性を有するように、ハンドル14から先端部16に向けてテーパー状にされている。一連のリング、即ち、ガイド18が、ロッド10の全長に沿って配置されている。リング、即ち、ガイド18は、ロッドの全長に沿ってフィッシングラインをガイドするように配置されている。リング18は、使用時にロッドのキャスティング方向を決める。リング18は、ロッドの一側面に隣接して配置され、ロッドからロッドのキャスティング方向に(即ち、フィッシングライン22がキャストされる方向に)のびている。
【0004】
使用時には、フィッシングリール20が、グリップ14に隣接してロッド10に取り付けられる。フィッシングライン22は、リール20から、リング18を通して、ロッド先端部16に向けてのびる。典型的には、フィッシングライン22は、フィッシングフライのような釣りのためのルアー24で終端する。
使用中、ルアー24が目的としたターゲットに向かうように(即ち、釣りをするための水中の所望の位置に向かうように)ロッドはキャストされる。キャスティング中、ロッドは、少なくとも、キャスティング方向と反対の後側に(図1Bにおける矢印Aの方向に)ロッド先端部16’が曲げられるように、アングラーに対して後側にスウィングされる。その後、ロッドは、少なくとも、先端部16’’が前方に曲げられるように、即ち、キャスティング方向(図1Cにおける矢印Bの方向)に曲げられるように、前方にスウィングされる。先端部16の静止位置は、図1B及び図1Cにおいて点線で示されている。
【0005】
図面では、ロッドの先端部だけが撓むように示されているが、多くの釣竿(特に、フライロッド)は、ロッド全体がある程度曲がるように、即ち、撓むように構成されている。さらに、キャスティングプロセス中の釣竿の撓み程度は、図面に示された程度より相当大きくされ得る。
【0006】
多くの種類の釣り、特に、フライフィッシングでは、同じターゲット上に正確にルアーを繰り返しキャストできることがアングラーにとって望ましい。(スピンキャスティングとして公知の)投げ釣りや磯釣りのような幾つかの種類の釣りでは、ルアーを長距離キャストできることが特に望ましい。例えば、磯釣りでは、海の波が崩れる位置を越えて、魚が集まる領域までルアーをキャストできることが望ましい。
英国特許GB1,172,666号には、正確なキャスティングのためには釣竿に対してキャスティング面が安定していることが望ましく、そうでなければ、釣人がキャスティング中にロッドをしっかり安定させなければならないことが開示されている。このような安定化によって、キャスティングのために実際に利用される力は低減される傾向にある。長い距離の正確なキャスティングを可能にすることを目的として、英国特許GB1,172,666号は、釣竿の筒状部分が、筒壁に対して偏心した穴を有する釣竿構造を開示している。このような構造は、キャスティング面におけるロッドの安定性を向上させ、安定化のために力を使用する必要なしに、長距離のキャストを達成するものとして説明されている。
米国特許出願US2002/0092225A1は、不均一な六角形の横断面を有するフライロッドを提供することによって、同様の問題を解決することを試みている。このような横断面は、ロッドのキャスティング方向における曲げ剛性より大きな曲げ剛性をロッドのキャスティング方向に垂直な面(即ち、横断面)が有するものとして説明されている。従って、ロッドを横方向に曲げることは、キャスティング方向に曲げることより困難になり、アングラーが、より簡単に、かつ、正確に目的のターゲットに向けてキャストすることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国特許GB1,172,666号
【特許文献2】米国特許出願US2002/0092225A1
【発明の概要】
【0008】
本発明の幾つかの実施例の目的は、改良した釣竿を提供することにある。
【0009】
第一の特徴において、本発明は、ある平面の範囲内でのび、前記平面におけるロッドの少なくとも一部分の第一方向への曲げ剛性が、前記平面における第一方向と反対方向の曲げ剛性と異なり、前記二つの方向の曲げ剛性の差が、第一方向における曲げ剛性の値の少なくとも5%であることを特徴とする釣竿を提供する。
キャスティング方向とその反対方向との間の平面に、このような曲げ剛性の差を持たせることにより、(ロッドをキャストした時の)ロッドの曲げ動作が要求される性能基準に合った、優れたものになる。例えば、フライロッドの場合、キャスティング方向の曲げ剛性が、その反対方向の曲げ剛性より大きいと、ラインが前方にキャストされた時に、ロッドが曲がり過ぎる可能性が低い。これにより、先端部の振動の問題に加えて、キャスト距離を短くすることになるロッド先端部の曲がり過ぎに関する従来技術の問題(両方とも、キャストを不正確にする)を緩和することができ、同時に、長距離のキャストを可能にするようにロッドが後方に大きな程度で曲がることを可能にする。
【0010】
また、この曲げ剛性の差は、使用時にロッド先端部の垂れの度合いを低下させるので、フィッシングポールにも有利である。
第一方向は、キャスティング方向であり得る。
第一方向における曲げ剛性は、その反対方向における曲げ剛性より大きいものであり得る。
前記ロッドの少なくとも一部分は、少なくとも、ロッドの全長の3分の1に沿ってのび得る。
前記ロッドの少なくとも一部分は、ロッド先端部からロッドハンドルに向けてのび得る。
前記ロッドの少なくとも一部分は、ロッドハンドルからロッド先端部に向けてのび得る。
前記ロッドの少なくとも一部分は、ロッドの全長に沿った部分的に配置された中間部分であり得る。
前記ロッドの少なくとも一部分は、少なくともロッド先端部からロッドハンドルまでのび得る。
【0011】
ロッドは筒状構造体から成り得、前記筒状構造体の内部に、第一方向の曲げ剛性とその反対方向の曲げ剛性との間に差を持たせるために、内側支持部材が配置され得る。
ロッドは、第一方向の曲げ剛性とその反対方向の曲げ剛性との間に差を持たせるために非対称な質量分布を有し得る。
ロッドは、少なくとも、第一曲げ剛性を有し長手方向にのびる第一要素と、第二の異なる曲げ剛性を有し長手方向にのびる第二要素とを有し得、前記第一要素は第一方向と隣接して配置され、前記第二要素は第一方向と反対方向に隣接して配置され得る。
【0012】
前記ロッドの少なくとも一部分の横断面は、前記平面に関しては鏡面対象であるが、前記平面に直交するロッドを二等分する別の面に関しては鏡面対称ではない形状で形成され得る。
前記ロッドの少なくとも一部分の横断面は、定幅曲線である形状で形成され得る。
前記ロッドの少なくとも一部分の横断面は、奇数個の辺を有する多角形として形成され得、前記多角形の頂点は前記平面内に配置され得る。
前記多角形は正多角形であり得る。
前記多角形は非正多角形であり得る。
前記多角形はルーロー多角形であり得る。前記多角形は、三角形、五角形、七角形の一つであり得る。
前記ロッドは、長手方向にテーパー状にされた筒体であり得、その横断面が非円形定幅曲線であり、均一な厚みの壁を有し得る。
前記ロッドはフライロッドであり得る。前記ロッドは、キャスティングロッドであり得る。前記ロッドは、フィッシングポールであり得る。
ロッドは、さらに、前記平面において、最大曲げ剛性を有する方向を表示する標示手段を有し得る。
【0013】
第二の特徴において、本発明は、ある平面の範囲内でのびる釣竿の製造方法であって、前記平面におけるロッドの少なくとも一部分の第一方向への曲げ剛性が、前記平面における第一方向と反対方向の曲げ剛性と異なるように釣竿を形成する工程を有し、前記二つの方向の曲げ剛性の差を、第一方向における曲げ剛性の値の少なくとも5%にすることを特徴とする釣竿の製造方法を提供する。
この製造方法は、心棒の周囲に可撓性材料を巻き付ける工程、筒体を形成するために材料を硬化させる工程、及び筒体から心棒を抜き取る工程を有し得る。
前記心棒は、非円形定幅曲線の横断面を有し得る。
【0014】
第三の特徴においては、本発明は、心棒の周囲に可撓性材料を巻き付ける工程、筒状構造体を形成するために材料を硬化させる工程、及び筒状構造体から心棒を抜き取る工程を備え、心棒が、定幅曲線である非円形横断面を有することを特徴とする筒状構造体の製造方法を提供する。
前記心棒は、奇数の辺を有する多角形横断面を備え得る。
前記可撓性材料は、カーボンファイバから成り得る。
【0015】
第四の特徴においては、本発明は、定幅曲線である非円形横断面を有する心棒を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】典型的な従来の釣竿を示す図である。
【図1B】ロッドをキャストした時のロッドの曲げ動作を示す図である(点線はロッド先端部の静止位置を示している。)。
【図1C】ロッドをキャストした時のロッドの曲げ動作を示す図である(点線はロッド先端部の静止位置を示している。)。
【図2】本発明の実施例に従った釣竿を示している。
【図3A】本発明の別の実施例に従った図2の釣竿の異なる横断面を示している。
【図3B】本発明の別の実施例に従った図2の釣竿の異なる横断面を示している。
【図3C】本発明の別の実施例に従った図2の釣竿の異なる横断面を示している。
【図4A】心棒の周りに材料を巻き付けることによって形成されたロッドの横断面を示している。
【図4B】心棒を使用する構造に特に適したルーローの多角形の形状のロッドの横断面を示している。
【図4C】心棒を使用する構造に特に適したルーローの多角形の形状のロッドの横断面を示している。
【図5A】本発明の別の実施例に従った図2の釣竿の異なる横断面を示している。
【図5B】本発明の別の実施例に従った図2の釣竿の異なる横断面を示している。
【図5C】本発明の別の実施例に従った図2の釣竿の異なる横断面を示している。
【図5D】本発明の別の実施例に従った図2の釣竿の異なる横断面を示している。
【図6】本発明の一実施例に従ったフィッシングポールの形態の釣竿を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を、添付図面を参照して、単なる実施例を用いて説明していく。
【0018】
本願の発明者は、ある平面の範囲内の第一方向における曲げ剛性が、反対方向における曲げ剛性とは異なる釣竿を提供し、製造すべき釣竿に新しく望ましい特性を持たせることを可能にすることを実現した。釣竿は、長手方向軸線に沿ってのび、そして、長手方向軸線は、前記平面の範囲内に位置することになる。
【0019】
従来技術の釣竿ブランク(使用可能な釣竿を製造するために、必要な附属品、即ち、ラインガイド、ハンドル等を取り付けるための基本筒状構造体)及び現在市販されている完成品釣竿の特性及び動作は、通常、全ての方向に対称である。製造者達は、この点において、僅かな製造交差の範囲内で製品の均一性を確保するために多大な努力をしている。ロッドデザイナー/ビルダーは、特別な用途や顧客の要望に応じたロッドを作り出す時に、機械的性質(構造体の材料の弾性率)と、ロッドブランクに沿った寸法のテーパー度合い及び/又は壁の厚さとの組合せに基づいて、曲げ特性の選択に直面する。例えば、フライロッドの(マルチファクトリアル)動作及び特性を表現するために用いられる専門用語は、ロッド製造産業において同一でなく、即ち、規格化されてなく、ほとんどの場合、客観的な計測に基づくものよりはむしろ、事実上主観的なものである。最も一般的で単純化された用語では、フライロッドは、スティフ/ファスト/ショートアクション、ソフト/スロー/ロングアクション、又は、しばしば、これらの極限値間のどこかにあるコンプロマイズアクションを用いて製造され得る。例えば、ソフトアクションのフライロッドは、殆どの場合、使用が簡単で、キャスター(アングラー)に対する一貫性及び再現性に優れているが、通常、長距離のキャスティングをすることができない。反対に、スティフアクションのフライロッドは、通常、より熟練した経験豊かなキャスター(アングラー)によって選択される。なぜなら、殆どの場合、より高い技術を必要とするが、より長い距離のキャスティングが可能で、しばしば、より高い精度も有する。
【0020】
釣竿に対する特性の記述へのより客観性のあるアプローチが、しばしば、導入される。例えば、ロッド先端部を、ロッドハンドルに対して90度曲げるために要求される重量/負荷が、曲げ特性の大まかな差別化のために使用され得る。これは「テストカーブ」として公知であり、より堅いロッドは、それより堅くないロッドより高いテストカーブを有する。テストカーブが高く堅いロッドでは、テストカーブが低く柔らかいロッドより、重いルアーが長い距離キャストされることになるが、逆に、針掛かりした魚を操作する適性は低い。
【0021】
本願の発明者は、各タイプのアクションの利点を兼ね備えた釣竿を提供できることが望ましいと認識した。そのために、キャスティングプロセス中に、ロッドによって生じる特性を変化させることを必要とし、例えば、フライロッドの場合、バックキャスト中のソフトアクションと、フォワードキャスト中のスティフアクションとを組み合わせることが望ましい。キャスティングロッドは、バックキャスト中にスティフアクションを有し、フォワードキャスト中にソフトアクションを有することが望ましい。ロッドにこの性能を持たせるために、本願の発明者は、好ましくは、ロッドが、キャスティング面の範囲内で曲げ剛性に差異を持つべきであること、即ち、キャスティング方向における曲げ剛性と、反対方向における曲げ剛性とを異ならせることを見出した。これは、新規な特徴であり、既存のロッドの設計に反している。
【0022】
本発明を理解し易くするために、過去、どのようにしてフライロッド及びキャスティングロッドがルアーをキャストできているかの原理について、以下に簡単に説明する。
【0023】
フライロッドに関しては、典型的には、ロッドは、キャスターの前にのびるように予め位置決めされ、通常、比較的長いフィッシングラインと取り付けられたルアーとが、ロッド先端部を越えて水面まで真っ直ぐにのびるようにされる。フィッシングラインの長さは、拘束することによって、又はフィッシングリールによって一時的に固定されるが、キャスターによって自由に変化され得る。キャスターが、ロッドハンドルを介してロッド先端部に加速した上向きの後方への運動を与えるように、即ち、ロッドが回転レバーとしてのキャスティング面の範囲内で後方に動くように、最初のバックキャスティングストロークが開始される。この運動は、フィッシングラインの長さによる慣性を克服し、フィッシングラインの少なくとも一部をキャスターの上側後方に位置させ、従って、可撓性のあるロッドを後方に円弧状に曲げる(ロッドに負荷をかける)のに充分なものである。フィッシングライン(フライライン)は、この効果を生じさせるために、意図的に、比較的重く太くされている。比較的軽いルアー(フライ)の重さは、極僅かな効果しか持たない。このアクションは、フィッシングラインとロッドそれ自身によって生じる運動からの運動エネルギを、ロッドとフィッシングラインに蓄積した位置エネルギに変換する。
【0024】
フォワードキャスティングストロークは、バックキャスティングストロークの後、直ぐに行わなければならない。正確には、どの程度直ぐにかは、ロッドの屈曲特性に依存する。スティフアクションロッドは、柔軟性が低く、キャスターに僅かな時間しか与えない。ソフトアクションロッドは、より主観的な「感覚」を持つことになり、一般的には、この点において、有利であると考えられる。仮にフォワードストロークが非常に遅いと、バックキャスティングストロークで一時的に蓄積された位置エネルギを失ってテンションがなくなることになり、フィッシングラインは、地面に落ち、ロッドが早く真っ直ぐになり、キャスト全体が失敗することになる。フォワードキャスティングストロークにおいて、キャスターは、前方に向かう下向きの加速された運動を(曲げられた)ロッドの先端部に与え、従って、ストロークの最後に、スプリングのように、曲がってから真っ直ぐになるロッドが元に戻るアクションからフィッシングラインに伝達される運動エネルギに加えて更なる運動エネルギが生じる。この結果、フィッシングラインは、取り付けられたルアーと共に、上述したように、外側前方に、キャスティング方向へ飛ばされる。推進力によって、ロッドは、前側下方へ円弧状に曲げられ、エネルギを弱らせる。結果として生じるロッド先端部の振動からの復帰は、スティフアクションロッドの方が良く、速い。
【0025】
キャスティングロッドでは、典型的には、ロッドは、キャスターの後方にのびるように予め位置決めされ、比較的短いフィッシングラインと取り付けられたルアーとが、ロッド先端部から、地面又は水面上に垂れ下がるようにされる。この時点で、ライン及び/又は可撓性ロッドの撓みにかかるテンションは、比較的重いルーアの重量に起因するものだけである。比較的軽いフィッシングラインの重量による効果はごく僅かである。フィッシングラインの長さは、拘束することによって、又はフィッシングリールによって、一時的に固定される。
【0026】
キャスティングアクションはシングルであり、キャスターによって、ロッドハンドルを介して、加速した上側前方への運動がロッド先端部に与えられ、フィッシングラインを介してルアーに与えられる。即ち、ロッドは、回転レバーとしてのキャスティング面の範囲内で前方に動かされる。最初の運動は、ルアーの容量とロッド自身の慣性の組合せを克服して、可撓性ロッドを後ろ向きの円弧状に一時的に曲げる(負荷)のに充分なものであり、従って、運動エネルギを蓄積された位置エネルギに変換するのに充分なものである。ロッド先端部の動きは、ロッドが真っ直ぐになるまで継続し、曲げられたロッドの範囲内で蓄積された位置エネルギが、付加的な運動エネルギとしてルアーまで伝達される。ロッドが真っ直ぐになった時点で、キャスターは、拘束していたフィッシングラインを解放し、それにより、取り付けられたルアーが円弧から抜け出して、予定のキャスト方向に前方に飛ばされる。
【0027】
本願の発明者は、キャスティングプロセス中の、その可撓性によるロッドの円弧(ロッドの湾曲)の範囲及び形状は、ロッドの本質的な屈曲特性によって、ある程度、決められることを認識した。従来の釣竿は、キャスティング面の範囲内で対称な屈曲特性を有し、即ち、このようなロッドは、キャスティング方向の曲げ剛性が、その反対方向の曲げ剛性と同じである。
【0028】
ロッドの大部分は、ロッドハンドルに隣接する太い部分から、ロッド先端部の細い部分にかけてテーパー状にされている。ロッド設計者達が直面する公知の問題の一つは、ロッドの不利益な振動性屈曲を最低限に抑えること、特に、細い部分、可撓性のあるロッド先端部の不利益な振動性屈曲を最低限に抑えることであり、この振動性屈曲は、キャスティングプロセス中にロッドが交互に前方及び後方へ動くことによって生じる。ロッド先端部のこのような望ましくない振動性屈曲は、前方及び後方への動きが終わった後も持続する。このような問題を解決するために、ロッド先端部に比較的硬い材料を使用した従来技術のロッドが知られている。このように硬い材料を使用すると、ロッド先端部の望ましくない振動動作は低減するが、それにより、バックキャスト中のロッド先端部の可撓性も減少するため、バックキャスト中にロッドに蓄積されるエネルギも減少するため望ましくない。
【0029】
曲げ剛性は、ある単位曲率(a unit curvature)まで剛構造体を曲げるために必要とされる偶力である。曲げ剛性は、典型的には、ロッドの長さに応じて、ビーム又はロッドの長手方向に沿って変化する。曲げ剛性は、ロッドが曲がる度合いを示す。従って、キャスティング方向において、キャスティング方向とは反対の方向と比べて、異なる曲げ剛性を持つことによって(即ち、キャスティング面の範囲内で差がある非対象の曲げ剛性を持つことによって)、ロッドは、後方と比べて前方(キャスティング方向)において異なった曲がり方をすることになる。
【0030】
このような非対象な曲げ剛性により、釣竿の設計におけるバリエーションを増やすことができ、かつ、釣竿に独特な特徴を有利に組み込むことが可能になる。例えば、ロッドの先端部が、キャスティング方向において、キャスティング方向と反対の方向よりも大きな曲げ剛性を有するように釣竿を構成することができる。従って、キャストするために釣竿を後方に振った時には、先端部は比較的大きな度合いで曲がり、キャストのための運動エネルギを蓄積する一方で、キャスティング方向にキャストするためにロッドを前方に振った時には、ロッド先端部はそれ程曲がらず、ロッド先端部が曲がり過ぎたり、振動性屈曲をしたりする可能性を低減して、より精密なキャストを実現する。
【0031】
このような非対象曲げ剛性は、殆どの場合比較的曲がり易い傾向にあるフライロッドに、特に、適している。フライロッドは、典型的には、カーボンファイバから成るテーパー状筒体として形成されている。釣竿は、一続きのマルチセクション筒体として形成され得る。典型的なフライロッドは、2m〜6mの間の長さの範囲にある。しかし、このような非対象曲げ剛性は、キャスティングロッド(例えば、コース釣竿、スピニング釣竿、バイト釣竿及びサーフ釣竿等として知られているロッド)やフィッシングポールを含む、どんなタイプの釣竿にも与えられ得ることは理解されるべきである。
【0032】
このような非対象の曲げ剛性は、ロッドの長手方向の任意の部分(即ち、ロッドの先端部、ロッドハンドルに隣接するロッドのベース部分、又は、先端部とハンドルとの間の途中の中間部分)に沿って又はロッド全体に与えられ得る。ロッドの非対称の曲げ剛性を与える部分は、ロッドの全長に対する任意の割合、即ち、少なくとも、10%、20%、30%、40%、50%又は100%であり得る。さらにまた、キャスティング方向(即ち、キャスティング面の前方向)と、キャスティング方向とは反対の方向(キャスティング面における後方向)との間の曲げ剛性の差は、キャスティング方向における曲げ剛性の値の任意の割合、即ち、少なくも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%を示し得る。
【0033】
図2は、本発明の一実施例に従って形成された釣竿110を示している。同一の符号が、図1A〜図1Cに示した従来技術の釣竿と類似の特徴を現すために用いられている。釣竿110の識別できる特徴は、釣竿本体102が、キャスティング面の範囲内で非対称の曲げ剛性を持って形成されていることである。典型的には、釣竿本体102は、他の点では、従来技術の釣竿10を形成するために使用された筒体12と同様の特徴を有する。例えば、釣竿本体112は、典型的には、長手方向軸線に沿って延びる筒体として形成されている。典型的には、釣竿本体を構成する筒体112は、円筒穴を有することになる。釣竿本体112は、一連の個別的な部分(例えば、三つの部分112a、112b及び112c)で形成され得、これらの部分が一緒に結合して釣竿本体を形成している。このような部分は、従来技術の釣竿で用いられているような公知の連結技術(例えば、円筒状プラグ及び受入ソケット)を使用して一緒に連結され得る。
【0034】
釣竿110の識別性のある特徴は、少なくともロッドの(長手方向の)一部分が、キャスティング面の範囲内で非対称の曲げ剛性を持つことにある。本願の発明者は、このような非対象の曲げ剛性を、複数の異なる構造を使用して与え得るように実現した。
【0035】
ある面の範囲内における非対称の曲げ剛性は、
・特有の横断面形状を持つロッドを形成すること、
・ロッドを形成するために異なる曲げ剛性を有する複数の材料を使用すること、
・(ロッドが中空であると仮定して)ロッドに適当な挿入物を設けること、又は、
・前記した技術の任意の組合せ
を含む様々な技術によって実現され得る。
【0036】
釣竿本体112の様々な実施可能な構造を、図3A〜図5Dを参照して以下に説明していく。これらの様々な構造は、釣竿本体の横断面を参照して説明される。しかし、ロッドが全長に亘って同じ形状である必要はないことは注意すべきである。例えば、ロッドは、ハンドルから先端部に向けてテーパー状であり得る。同様に、ロッドの様々な長手方向部分は、(又は、その部分のほんの一部であっても)、要求される釣竿の特徴と、釣竿本体112を形成する特定の材料に依存して、異なる形状又は異なるサイズの横断面を有することができる。
【0037】
図面では、釣竿本体は、符号202で示されている。最も多い実現方法では、ロッドの製造を容易にするために、ロッドを筒体のように形成すること、即ち、ロッドが孔を画定する筒状壁を有するように形成することが予想される。以下の図面では、孔は符号200で示されており、かつ、孔は、円形横断面であるとして一般的に示されている。しかし、孔200は、任意の横断面であり得ることは理解されるべきである。さらに、最も多い実施例では、釣竿は孔を備えていることを必要としない。孔の中に挿入すべき挿入物を含むこれらの実施例では、何れにしても、孔の中に挿入物を配置した後に、孔には付加的な材料が充填され得る。
【0038】
図3A〜図5Dでは、キャスティング面は符号210で示されている。キャスティング方向(前方キャスティング方向とも称される)は、矢印Bで示され、反対方向(後方キャスティング方向)は、矢印Aで示されている。どの場合にも、ロッドの横断面は、キャスティング方向に関して特定の方向性を有し、このような方向性は、大まかに反対方向と比べたキャスティング方向に関する曲げ剛性の増加に対応する。しかし、
反対方向に方向付けされた別の形式の実施例も特許請求の範囲に入ることは理解されるべきである(例えば、図3Aの二等辺三角形は、キャスティング方向ではなく、反対方向に頂点を有し得る。)。
【0039】
ここで、図3A〜図3Cを参照して本発明の幾つかの実施例を説明する。これらの実施例は、異なる形状を持った横断面で非対象の曲げ剛性を提供し得るものである。これらの実施例の各々において、横断面の形状は、キャスティング面210に関して左右対称(鏡面対象)である。このような非対象性は、ロッドが横方向に安定することを保証する。しかし、各実施例において、ロッドはキャスティング面210に垂直な面(この垂直面はロッドを二等分する面である。)に関して非対称である。このような非対象性により、キャスティング面に所望の非対象曲げ剛性が与えられる。
【0040】
図3Aは、二等辺三角形として形成されたロッドの横断面312aを示している。この三角形は、キャスティング面210に対して左右対称になるように方向付けされている。円筒孔200がロッド本体202を通してのびている。図3B,3C及び図4B〜図5Dを参照して説明される他の実施例と同様に、このような構造は、例えば、このような横断面を有する先端部を形成すること、及び/又は、ロッド全体をこのような横断面を有するように形成することにより、望ましくない先端部の振動を弱めるために用いられ得る。
【0041】
二等辺三角形は、キャスティング面210に対して鏡面対称を持つように方向付けされる。三角形の頂点は、前方キャスティング方向に隣接して方向付けされ、それにより、そのキャスティング方向における曲がりを制限し、同時に、キャスティング方向と反対方向に、相対的によく曲がるようにし、かつ、曲がり易くする。
【0042】
図3Bには、正三角形として形成された横断面312bを有するロッド本体が示されている。三角形の頂点は、頂点がキャスティング方向を向くように、キャスティング面210に沿って方向付けされている。
【0043】
たとえ、図3Bが、三辺の正多角形(「正」は、多角形が同じ長さの辺を持つことを示している。)を示していたとしても、ロッドは、奇数の辺を持った任意の正多角形として形成することができることは理解されるべきである。例えば、図3Cは、五角形の形状の横断面312cを有するように形成されたロッドを示しており(言い換えれば、ロッドは、五角形筒体として形成されている。)。
【0044】
図4Aは、心棒の周りに材料402を巻き付けることによって形成された釣竿の横断面412aを示している。例えば、その材料は、カーボンファイバーを有し得、例えば、エポキシ樹脂のようなバインダーにカーボンファイバー(又はガラスファイバーのような他のファイバー)を入れた複合材料である。心棒の周りにシート材料を巻きつけた後、材料を硬化してロッド本体202を形成するために、その材料は保存される。その後、心棒がロッド本体202から取り除かれ、中心孔200を残す。この技術は、材料402の両端部404がオーバーラップするので、ロッドの背の形成することになる。このような技術は、本発明の幾つかの実施例に従ったロッドを形成するために用いられ得、従来技術の釣竿を形成するための公知技術である。しかし、このような従来技術は、背の影響を最小限に抑えて、ロッドに左右対称の曲げ剛性を持たせることを確実にするものなので、このような従来技術のロッドは、異なる方向における曲げ剛性の差異が最小限に抑えられている。本発明の実施例は、曲げ剛性に影響を及ぼすのに適当な厚みと剛性を持った適切な背(即ち、材料の付加的なオーバーラップの厚み)をロッド面の範囲内に形成すること保証することによって形成され得る。
【0045】
好ましくは、心棒の周りへの材料の巻取りを促進するために、かつ、特に、一度心棒の周りに巻かれた材料の本質的に均一な圧力/応力分布を維持するために、ここで説明するようにロッドは、定幅曲線の形状の外周を有するように形成される。定幅曲線は、その境界の二つの対向する平行な接線の間の距離によって測定されたその幅が、それらの二つの平行線の方向に関係なく同じになる凸状平面形状である。また、定幅曲線は、定幅形状としても公知であり得る。ロッドは、任意の非円形定幅曲線、例えば、ルーロー多角形のような湾曲辺を持った多角形のような断面を持って形成することもできる。ルーロー多角形は、定幅曲線から成る多角形であり、言い換えれば、全ての直径が同じ長さの曲線から成る多角形である。ルーロー多角形は、円弧を組立てた曲線多角形であり、かつ、奇数の辺に対して定幅曲線である。その形状は、適当な形状にされた心棒、例えば、ルーロー多角形の形状の心棒を準備することによって形成され得る。また、所望の横断面形状は、心棒の周りに巻き付けた後に、材料を所望の形状にプレスするための外型を使用することでも形成され得る。形作られた心棒と型とは、両方とも、所望の形状を作るために一緒に利用することができる。
【0046】
図4B及び図4Cは、各々ルーロー三角形412b及びルーロー五角形412cとして形成されたロッド本体を示している。両実施例において、孔200’及び孔200’’は、外周の形状と一致しており、心棒が対応する形状にされていたことを示している。言い換えれば、図4Bの心棒は、ルーロー三角形の形状であり、図4Cの心棒は、ルーロー五角形の形状である。
【0047】
上述の横断面形状は、単なる一例として説明されているだけで、様々な別の形状が、所望の非対象曲げ剛性を提供するために用いられることは理解される。例えば、それらの形状は、不規則(例えば、不規則多角形)であり得、及び/又は偶数の辺を有する多角形であり得る。ロッドの横断面形状は、不規則な定幅曲線であり得る。その形状は、(正三角形を基礎とした図4Bに示したルーロー三角形とは対象的に)二等辺三角形を基礎としたルーロー三角形であってもよい。
【0048】
ロッドは、円形や多角形の形状を持つことを必要とせず、他の形状、例えば、偏心楕円の形状(例えば、卵型)の横断面であってもよい。ロッドの中心孔の形状は、ロッドの外周によって画定される形状とは異なるものであってもよい。例えば、孔が円形形状を融資、外周が楕円形を画定していてもよく、また、その逆でもよい。また、孔はロッドの中心でなくてもよく、言い換えれば、ロッドの中心からオフセットされていてもよい。
【0049】
非対象曲げ剛性を与えるための特別な横断面をロッドに持たせることの別の方法として、又は、そのことに加えて、ロッドは、非対象曲げ剛性を与える(又は、強める)ための材料を使用して、又は、付加的な構造を持たせて形成され得る。
【0050】
図5Aは、円形筒体として形成されたロッドの横断面512aを示しており、このロッドは、内側円形孔200を備えた円形本体202を有する。本体202は、キャスティング方向に隣接する筒体部分502aを形成する材料が、反対方向に隣接する筒体部分502bの材料とは、異なる曲げ剛性を有するように形成されている。例えば、部分502aは、部分502bを形成するカーボンファイバーより高い曲げ剛性を有するカーボンファイバーを使用して形成され得る。
【0051】
同様に、図5B〜図5Dに示すように、標準的なロッド本体202(即ち、円形横断面から成る外周部202と、円形横断面から成る内側孔200とを有する円筒状筒体)に、一つ又は複数の内側リブ又は内側部材504、506a、506b、508を追加することによって、キャスティング面の範囲内で一つの方向に付加的な曲げ剛性を付与し得る。
【0052】
例えば、図5Bは、孔200に挿入物504を配置したロッドの横断面512bを示している。挿入物504は、ロッドの長手方向に沿ってのび、キャスティング方向と隣接する孔面に接触して設けられている。このような挿入物504はキャスティング方向における曲げ剛性を高める。
【0053】
孔に配置されるリブやベーンを含む他の形状の挿入物が、キャスティング面の範囲内で曲げ剛性に所望の違いを与えるために用いることができることは理解される。様々な形状と同様に、このようなリブは、キャスティング面に対して垂直な面を中心に非対象であり、ロッドを二等分することが望ましい。好ましくは、リブは、ロッドをキャストする時に、横方向の安定性を与えるように、キャスティング面210を中心に鏡面対象である。例えば、図5Cは、T型リブ506a及び506bを備えたロッドの横断面512cを示している。リブのクロス部片506aは、キャスティング面210の横方向に(キャスティング面210に直交して)のび、単一リブ部片506bは、クロス部片506aからキャスティング面210に沿って孔面までのびている。T型部片506a及び506bの各端部は、孔面に連結されている。
【0054】
同様に、図5Dは、V型用断面を有するリブ又はベーン508を含む横断面512dを示している。リブ508の頂点は、キャスティング面210の範囲内に配置され、筒状ロッド本体202の内面に接触しており、リブの他の端部も、ロッド本体202の内面に接触している。頂点は、キャスティング方向を指している。図5C及び図5Dの両方において、リブは、ロッドの中で長手方向にのび、図示されたリブの断面を備えている。
【0055】
また、ロッドの非対象曲げ剛性は、非対象な質量分布を有するロッドによっても実現され得る。このような非対象な質量分布は、指向性曲げ特性を生じさせるように、ロッドの慣性モーメントに作用するようにされている。このような非対象な質量分布は多くの方法で実現され得、異なる重さの挿入物をロッド本体の異なる部分に設けたり、若しくは、非対象分布の孔、突起、又は凹みをロッド表面や壁に設けたりすることによって実現され得る。
【0056】
また、本願の発明者は、非対象な曲げ剛性を釣竿で利用するという概念が、フライロッド及びキャスティングロッドに限定されないことも理解している。ある平面において一方向の曲げ剛性が反対方向の曲げ剛性とは異なる非対象曲げ剛性は、他の形式の釣竿、特にフィッシングポールに使用しても有益である。
【0057】
例えば、図6は、フィッシングポール(「エサ釣り用ロッド」としても公知である)110を示している。使用時に、このようなロッドは、実質的に水面と平行に保持される。ロッド本体112’は、比較的長く、比較的多くの数(例えば、12本又はそれ以上)の個別部分(112a’〜112i’)で形成され得る。ロッド110’は、典型的には、キャスティングをしないものであるが、その代わりに、釣り人がいる土手や岸から釣り人が単にロッドを伸ばすことで、水中の所望の位置にルアー24が置かれる。
【0058】
典型的には、このようなロッド110’は、ロッドの全長に沿ってフィッシングラインをガイドするためのリング18を備えていない。変わりに、フィッシングライン22’は、しばしば、ロッド本体112’の先端部16に取り付けられる(又は、本体112’の端部112i’の範囲内に取り付けられる)。魚がかかっている時や魚を引き上げる時に生じるロッドとライン上への様々な過渡的な衝撃を吸収/緩衝するように、ライン22’は、全長に亘って比較的柔軟性があり弾性のある材料(例えば、エラストマコード又は筒体)から成るロッド本体112’に接続され得る。
【0059】
使用時に、典型的には、このようなフィッシングポールは、過度に垂れる。即ち、ロッドが比較的長く、ロッドが比較的重いので、ロッド先端部には比較的大きなたわみがある。望ましくないことに、このたわみはコントロールを低下させ、アングラーが不注意でロッドハンドルを僅かに動かすと、その動きが拡大されて、ロッド先端部の位置がずれる。
本願の発明者は、このロッドの垂れを最小限に抑えるために、ロッドが、ロッドの側部が最大の下向き曲げ剛性を有するような状態にさせられることを可能にするように、非対象な曲げ剛性を持たせてロッドを形成し得ることを実現した。図6に示した実施例のロッド本体112’は、このような非対象な曲げ剛性を持たせて形成されている。従って、先端部16の垂れ度合い(図面中に符号dで示されている)は、従来技術のロッドに比べて低減されている。
【0060】
ロッドを正確に方向付けすることを補助するために、最大曲げ剛性を有する方向を表示するサイン又はマークが、ロッド上に設けられ得る。そのサインやマークは、ロッド本体の一つの特別な部分に配置することができ、また、前記サインやマークは、ロッド112’の各部112a’〜112i’の全てに沿って配置され得る。このようなサインやマークは、最大曲げ剛性を有する方向に向けられ得る。代わりに、サインやマークは、最大曲げ剛性を有する方向から離れる反対方向に向けてもよく、この場合は、最大曲げ剛性の方向は反対に示される。例えば、図6は、ロッド本体の各部に、上向きの小さな矢印を設けて、ロッドの垂れを最小限に抑えるよう、最大曲げ剛性を有する方向が最も下に位置決めされることを保証するためのロッドの各部の所望の方向を表示するようにしている。
【0061】
また、本願の発明者は、これらの実施例で示したように、筒状構造体が、釣竿ではなく、他の応用にも利用可能であることも実現した。例えば、筒状構造体は、例えば、航空宇宙産業の応用物や自動車レースの応用物を含む様々な工学的応用物に用いられる耐荷重性部材を提供するために使用され得る。このような部材のための指向性があり非対象な曲げ剛性の開発は、このような応用物において有益であり得、現在の従来技術の部材を改善する。
【0062】
このような筒状構造体は、この明細書で説明した釣竿の何れかに関して説明したような構造を有し得(そのように製造され得る)。しかし、最も好ましくは、筒状構造体は、非円形定幅曲線、即ち、円形でない任意の定幅曲線である横断面を持つよう形成される。実施例は、多角形横断面定幅曲線、例えば、図4B又は図4Cに関して説明した形状を含む。
【0063】
筒状構造体は、定幅曲線である非円形横断面を持った心棒を使用して容易に形成され得る。定幅曲線は、例えば、ローリング工程で、心棒の周りに可撓性材料を巻き付けることによって、筒状構造体が容易に製造されることを可能にする。可撓性材料は、後で固定され得る、即ち、硬化され得る任意の公知の形式の可撓性材料から成り得る。例えば、可撓性材料は、ファイバーのシート(例えば、ガラスファイバー、カーボンファイバー、その合成物を含む)から成り得る。また、可撓性材料は、適当なバインダー、例えば、エポキシ樹脂を有し得る。代わりに、バインダーは、可撓性材料が心棒に巻き付けられた後に、可撓性材料に続けて塗布され得る。
【0064】
可撓性材料を心棒の周りに巻き付け、適当な場所に適当なバインダーを付けると、その後、可撓性材料は硬化して固まる。例えば、可撓性材料は、熱、UV(紫外線)、又は化学的硬化法を用いることによって硬化され得る。その後、心棒は、筒状構造体から取り除かれる。
【0065】
本願の発明者は、心棒が円形である必要がないことを理解した。実際、心棒の周囲に可撓性シート材料を巻き付けることを基礎とした製造工程において、心棒の横断面形状として(定幅曲線ではない横断面形状とは対照的な)非円形定幅曲線を使用する利点は、円形心棒を使用する時の幾つかの利点と似たものである。定幅曲線は、材料が心棒の周りに巻きつけられている時に、材料に本質的に均一な圧力分布/応力分布を与える。別の例、言い換えれば、定幅曲線でない心棒の周囲に巻き取られた巻取り材料は、材料の範囲内に応力集中の局部的な領域を生み出すことになる。このような応力集中は、最終製品に有害であり、例えば、使用時に製品に、初期故障や突発故障をもたらし得る。
【0066】
ここで説明した技術に基づいて、リブ、ロッド形状、筒状構造体及び挿入物の他の形態が、本発明の範囲内に入るものとして、当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある平面の範囲内でのび、
前記平面におけるロッドの少なくとも一部分の第一方向への曲げ剛性が、前記平面における第一方向と反対方向の曲げ剛性と異なり、
前記二つの方向の曲げ剛性の差が、第一方向における曲げ剛性の値の少なくとも5%である
ことを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記第一方向がキャスティング方向である
ことを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記第一方向への曲げ剛性が、その反対方向への曲げ剛性より大きい
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記ロッドの少なくとも一部分が、ロッドの全長の3分の1に沿ってのびる
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項5】
前記ロッドの少なくとも一部分が、ロッド先端部からロッドハンドルに向かってのびている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項6】
前記ロッドの少なくとも一部分が、ロッドハンドルからロッド先端部に向かってのびている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項7】
前記ロッドの少なくとも一部分が、ロッドの全長に沿って部分的に配置された中間部分である
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項8】
前記ロッドの少なくとも一部分が、少なくともロッド先端部からロッドハンドルまでのびている
ことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項9】
ロッドが筒状構造体から成り、
前記筒状構造体の内部に、第一方向の曲げ剛性とその反対方向の曲げ剛性との間に差を持たせるために、内側支持部材が配置されている
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項10】
ロッドが、第一方向の曲げ剛性とその反対方向の曲げ剛性との間に差を持たせるために非対称な質量分布を有する
ことを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項11】
ロッドが、少なくとも、
第一曲げ剛性を有し長手方向にのびる第一要素と、
第二の異なる曲げ剛性を有し長手方向にのびる第二要素と
を備え、
前記第一要素が第一方向と隣接して配置され、
前記第二要素が第一方向と反対方向に隣接して配置されている
ことを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項12】
前記ロッドの少なくとも一部分の横断面が、前記平面に関しては鏡面対象であるが、ロッドを二等分する別の面に関しては鏡面対称ではない形状で形成される
ことを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項13】
前記ロッドの少なくとも一部分の横断面が、定幅曲線である形状で形成される
ことを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項14】
前記ロッドの少なくとも一部分の横断面が、奇数個の辺を有する多角形として形成され、前記多角形の頂点が前記平面内に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜13の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項15】
前記多角形が正多角形である
ことを特徴とする請求項14に記載の釣竿。
【請求項16】
前記多角形がルーロー多角形である
ことを特徴とする請求項15に記載の釣竿。
【請求項17】
前記多角形が、三角形、五角形、七角形の一つである
ことを特徴とする請求項14〜16の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項18】
前記ロッドが、長手方向にテーパー状にされた筒体であり、
その横断面が非円形定幅曲線であり、均一な厚みの壁を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項19】
前記ロッドが、フライフィッシングロッド、フィッシングポール及びキャスティングロッドの少なくとも一つである
ことを特徴とする請求項1〜18の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項20】
前記平面において、最大曲げ剛性を有する方向を表示する標示手段を、さらに有する
ことを特徴とする請求項1〜19の何れか一項に記載の釣竿。
【請求項21】
ある平面の範囲内でのびる釣竿の製造方法であって、
前記平面におけるロッドの少なくとも一部分の第一方向への曲げ剛性が、前記平面における第一方向と反対方向の曲げ剛性と異なるように釣竿を形成する工程を有し、
前記二つの方向の曲げ剛性の差を、第一方向における曲げ剛性の値の少なくとも5%にする
ことを特徴とする釣竿の製造方法。
【請求項22】
心棒の周囲に可撓性材料を巻き付ける工程、
筒体を形成するために材料を硬化させる工程、及び
筒体から心棒を抜き取る工程
を有することを特徴とする請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記心棒が、非円形定幅曲線の横断面を有する
ことを特徴とする請求項21又は22に記載の製造方法。
【請求項24】
心棒の周囲に可撓性材料を巻き付ける工程、
筒状構造体を形成するために材料を硬化させる工程、及び
筒状構造体から心棒を抜き取る工程
を備え、
心棒が、定幅曲線である非円形横断面を有する
ことを特徴とする筒状構造体の製造方法。
【請求項25】
前記心棒が、奇数の辺を有する多角形横断面を備えている
ことを特徴とする請求項22〜24の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項26】
前記可撓性材料が、カーボンファイバーから成る
ことを特徴とする請求項22〜25の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項27】
定幅曲線である非円形横断面を有する心棒。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−542199(P2009−542199A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517424(P2009−517424)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002491
【国際公開番号】WO2008/003959
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(509007218)ディー−フレツクス リミテッド (1)
【Fターム(参考)】