説明

釣糸ガイド及び釣竿

【課題】ラインガイドが確実に固定された釣竿の提供。微小曲げモーメントが作用した場合であっても滑らかに湾曲変形し、且つ当該変形が一様に復元する釣竿の提供。
【解決手段】この釣竿10は、ガラス繊維強化樹脂からなる釣竿本体11を備える。釣竿本体11は、基端部14から先端部15に向かって漸次細くなる帯状に形成されている。釣竿本体11に貫通孔13が設けられている。中間ガイド16〜20は、貫通孔13に挿通され、ナイロン糸24及び接着剤にて固定されている。中間ガイド16〜20の取付脚23は一対の固定部34を備える。各固定部34は、釣竿本体11の長手方向基端側へ屈曲されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特にワカサギ釣りに使用される釣竿の構造並びにこの釣竿に適用される釣糸ガイドの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワカサギは、体長が数cm〜15cm程度の小型の魚であり、比較的釣りやすい魚であることから、釣人の間でワカサギ釣りは人気がある。このような小型の魚をターゲットとする釣りにおいては、釣竿や釣糸リールも非常に小型で繊細なものが使用される。それ故に、その釣果は、仕掛けやエサの選択、仕掛けの操作(いわゆる「誘い」)の仕方によって大きく左右され、ワカサギ釣りの上級者ほど仕掛けを微妙に操作するテクニック(「誘い」のテクニック)を重要視する。
【0003】
図6は、一般的なワカサギ釣りの仕掛けを模式的に示している。
【0004】
ワカサギ釣りでは、釣竿1及びリール2が使用され、リール2に巻き取られたライン3に仕掛け4が連結される。仕掛け4はおもり5を備えており、同図が示すように、おもり5の作用により仕掛け4が湖底6の付近まで沈められる。釣人は、釣竿1を所要の角度θとなるように傾斜させてワカサギがヒットするのを待つ。ワカサギがヒットすれば穂先7が不規則に振動するので、釣人はこのような振動を感知すると、リール2を操作してライン3を回収し、ヒットしたワカサギを取り込む。
【0005】
仕掛け4の投入及びライン3の回収が円滑に行われるために、釣竿1にラインガイド8が取り付けられる(たとえば、非特許文献1参照)。このラインガイド8は、一般に糸(木綿糸あるいはナイロン糸)及び接着剤により釣竿1の所要の位置に取り付けられる。ラインガイド8は、ライン3を安定的に支持するために、釣竿1に確実に固定されていなければならないという要請がある。
【0006】
ところで、実釣において上記角度θは、釣人のフィーリングによって決定されるものである。すなわち、釣人は、魚のヒット(いわゆる「アタリ」)を正確に把握でき、且つ、意図的に釣竿1の穂先7を振動させて「誘い」をかけやすいように上記角度θを調整する。換言すれば、釣人が仕掛けを操作する(「誘い」をかける)ために、釣竿1の弾性や曲がり特性がきわめて重要であり、従来から釣竿に関して種々の提案、改良がなされている(たとえば特許文献1〜特許文献4)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】富士工業株式会社製品史:http://www.fujitackle.com/history/guide.html
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−207358号公報
【特許文献2】特開2009−207357号公報
【特許文献3】特開2009−207356号公報
【特許文献4】特開2009−82052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
同図が示すように、通常、複数のラインガイド8が釣竿1の所定部位に取り付けられる。しかし、前述のように、釣竿1は、そのサイズが非常に小さく、きわめて小さい曲げモーメントが作用した場合であっても簡単に湾曲変形するように構成されるものであることから、ラインガイド8を確実に釣竿1に固定する作業は一般に容易ではない。
【0010】
また、実釣において釣人は、仕掛け4を水中に投入した後、同図の状態から意図的に穂先7を上下に振動させて「誘い」をかける。釣人は、釣果を上げるために次のようなテクニックを駆使する。すなわち、釣人は、穂先7に意図的に微細な振動を与え、前述のように、この振動が一様ではなく不規則に変化したときにアタリを感知する。釣人の経験上、ワカサギ釣りでは、このような穂先7の振動の微小変化を捉えることが釣果を大きく左右する。そうすると、釣竿1に要求される性能は、穂先7が微細且つ一様な振動を起こすことができること、換言すれば、穂先7が柔らかいこと、及び釣竿1が滑らかに曲がって且つ曲がりが一様に復元することである。加えて、釣人は、リール2を用いて仕掛け4を回収するが、その際に仕掛け4からワカサギが脱落しないためにも(いわゆる「バラシ」が起こらないように)、釣竿1が滑らかに曲がることが重要である。
【0011】
一方で、仮にラインガイド8が糸及び多量の接着剤によって釣竿1に強固に固定されると、ラインガイド8が取り付けられた部位の剛性が局部的に大きくなる。したがって、穂先7が振動した際、あるいは仕掛け4の回収時に、釣竿1が一様に曲がらないばかりか、当該部位を節として釣竿1に二次的な振動が発生してしまうおそれがある。その結果、釣人は、実釣において「誘い」をかけにくく且つアタリがとりにくく、さらにはヒットしたワカサギが針から外れやすい(「バラシ」やすい)という不都合が生じる。
【0012】
本発明はかかる背景のもとになされたものであって、その目的は、ワカサギ釣りに供される釣竿であって、ラインガイドが確実に装着されると共に局部的な剛性変化が抑えられた釣竿、並びに釣竿に簡単且つ確実に装着されるラインガイドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 本発明に係る釣竿は、基端から先端に向かって所定のテーパが設けられた樹脂又は繊維強化樹脂からなる細長棒状体からなる釣竿本体と、当該釣竿本体の先端に設けられたトップラインガイドと、当該トップラインガイドから当該釣竿本体の長手方向基端側に向かって所定の間隔をあけて配置された複数の中間ラインガイドとを備える。そして、少なくとも中間ラインガイドは、ラインが挿通されるリング部及び当該リング部に設けられた取付脚部とを有し、当該取付脚部は、上記釣竿本体に設けられた貫通孔に挿通され且つ当該釣竿本体の長手方向に屈曲された状態で当該釣竿本体に固定されている。
【0014】
この構成によれば、釣竿本体が樹脂又は繊維強化樹脂により構成されるので、当該釣竿本体は、均質な構造を備える。したがって、釣竿本体の断面係数は基端から先端に向かって漸次滑らかに変化し、当該釣竿本体に曲げモーメントが作用した場合に当該釣竿本体は全体に滑らかに湾曲変形する。この釣竿本体の断面係数が小さく設定された場合には、当該釣竿本体は、微小な曲げモーメントが作用した場合であっても敏感に反応して湾曲変形する。この釣竿本体にトップラインガイド及び複数の中間ラインガイドが装着される。各中間ラインガイドは、それぞれ、リング部及び取付脚部を有し、ラインは、リング部に挿通支持される。取付脚部は、釣竿本体に設けられた貫通孔に挿通され、当該釣竿本体に係合するから、各中間ラインガイドは少量の糸及び接着剤により簡単且つ確実に釣竿本体に固定される。また、少量の糸及び接着剤により各中間ラインガイドが装着されるから、釣竿本体の剛性が局部的に極端に大きくなることが防止される。
【0015】
(2) 上記中間ラインガイドはステンレス鋼線材から構成されるのが好ましい。このステンレス鋼線材が環状に湾曲形成されることにより上記リング部が形成され、当該ステンレス鋼線材の両端部によって上記リング部に連続して上記取付脚部が形成され得る。上記両端部は、上記釣竿本体の長手方向基端側に屈曲されるのが好ましい。
【0016】
この構成では、中間ラインガイドがステンレス鋼線材から構成されるので、中間ラインガイドの耐候性がきわめて高い。しかも、ステンレス鋼線材が湾曲ないし屈曲されるだけで、簡単且つ安価に中間ラインガイドが製造される。さらに、このステンレス鋼線材の両端部により形成される取付脚部が上記釣竿本体の長手方向基端側に屈り曲げられるから、中間ラインガイドが装着されることによる釣竿本体の局部的な剛性変化が抑えられる。
【0017】
(3) 上記両端部のうちの一方が上記釣竿本体の長手方向基端側に屈曲され、且つ上記両端部のうちの他方が上記釣竿本体の長手方向先端側に屈曲されていてもよい。
【0018】
(4) 上記釣竿本体は、断面形状が扁平した矩形である帯状に形成されているのが好ましい。
【0019】
この構成では、釣竿本体は、曲げモーメントが作用したときにきわめて敏感に湾曲変形することができる。したがって、この発明に係る釣竿本体は、ワカサギ釣りに供される釣竿の構成部品として好適である。
【0020】
(5) 上記貫通孔は、上記釣竿本体の剛性を局部的に低下させる円形孔であるのが好ましい。
【0021】
上記中間ラインガイドが釣竿本体に装着されると、当該中間ラインガイドが取り付けられた部分では釣竿本体の断面係数が局部的に大きくなることは避けられず、したがって、釣竿本体の滑らかな湾曲が阻害されるおそれがある。しかし、この発明では、均質な構造の釣竿本体に上記円形孔が設けられている。このため、当該円形孔が設けられた部位において当該釣竿本体の断面係数が小さくなり、釣竿本体の剛性は局部的に低下する。すなわち、このような円形孔が設けられた部位に上記中間ラインガイドが取り付けられると、上記円形孔が設けられることによる断面係数の低下と上記中間ラインガイドが設けられることによる断面係数の増大とが相殺され、結果として釣竿本体の断面係数は、基端から先端に向かって漸次滑らかに変化し得る。つまり、上記釣竿本体に微小な曲げモーメントが作用した場合であっても、当該釣竿本体は、滑らかに曲がって且つ一様に曲がりが復元する。
【0022】
(6) 本発明に係るラインガイドは、釣竿本体に取り付けられ、ラインが挿通支持されるラインガイドであって、一端部及び他端部並びにこれらを連続する中間部を備えた単一の金属製線材からなり、中間部が環状に湾曲されることによって形成されたリング部と、当該リング部に連続し、上記一端部及び他端部により形成される取付脚部とを有し、当該一端部及び他端部は、上記釣竿本体の長手方向に沿って平行に並ぶように屈曲されている。
【0023】
この発明によれば、ラインガイドが金属製線材からなるので、当該ラインガイドは、安価で且つ耐候性に優れたものとなる。また、この金属製線材の両端部により形成される取付脚部が平行に配置され、当該取付脚部は、釣竿本体の長手方向に沿って配置される。これにより、このラインガイドは、簡単且つ確実に釣竿本体に固定されると共に、このラインガイドが装着されることによる釣竿本体の局部的な剛性変化が抑えられるという利点がある。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、ラインガイドが釣竿本体に簡単且つ確実に固定されると共に、釣竿の局部的な剛性変化が避けられるので、ワカサギその他の小型魚の微小なアタリが釣人によって確実に捉えられ、且つ釣針から魚が脱落することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿の外観斜視図である。
【図2】図2は、図1における要部拡大図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態の変形例に係る釣竿の要部拡大斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態の第2の変形例に係る釣竿の要部拡大斜視図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態の第3の変形例に係る釣竿の要部拡大斜視図である。
【図6】図6は、一般的なワカサギ釣りの仕掛けを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ詳細に説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る釣竿の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更され得ることは言うまでもない。
【0027】
[釣竿の構成]
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿の外観斜視図である。図2は、図1における要部拡大図である。
【0029】
釣竿10は、主としてワカサギ釣りに供されるものであって、釣竿本体11と、釣竿本体11に設けられたトップガイド12(本発明における「トップラインガイド」の一例)及び中間ガイド16〜20(本発明における「中間ラインガイド」の一例)と、グリップ30とを備えている。この釣竿10の特徴とするところは、図2が示すように、釣竿本体11に複数の取付孔13(本発明における「貫通孔」の一例)が設けられており、この取付孔13に中間ガイド16〜20の取付脚23(本発明における「取付脚部」の一例)が挿通されている点である。これにより、中間ガイド13が簡易に且つ確実に釣竿本体11に固定されると共に、釣竿本体11が滑らかに湾曲変形し且つ当該変形が一様に復元され得るようになっている。
【0030】
釣竿本体11は、ガラス繊維強化樹脂からなる。もっとも釣竿本体11を構成する材料は、炭素繊維強化樹脂でもよいし、繊維で強化されていない樹脂や金属でもよい。釣竿本体11は、図1が示すように細長棒状体である。図1及び図2が示すように、この釣竿本体11は帯状に形成されている。すなわち、釣竿本体11の断面形状は、扁平した矩形に形成されている。ただし、釣竿本体1の基端部14においては(図1参照)、釣竿本体11の断面形状が円形に形成されている。つまり、この基端部14は、丸棒状に形成されている。
【0031】
図1が示すように、釣竿本体11はテーパ状に形成されており、釣竿本体11の幅寸法W(図2参照)は、釣竿本体11の基端部14から先端部15に向かって漸次小さくなっている。なお、本実施形態では、釣竿本体11は、まず丸棒状に形成され、これが切削されることによって上記帯状に成形されている。本実施形態では、釣竿本体11の基端部14の外径は4mmに設定され、先端の幅寸法Wは1.5mm、厚さ寸法B(図2参照)は0.15mmに設定されている。もっとも、釣竿本体11の外形寸法は設計変更され得るし、他の加工手段によって釣竿本体11が帯状に形成されてもよい。
【0032】
図2が示すように、釣竿本体11に上記取付孔13が設けられている。図1では明示されていないが、本実施形態では、5つの取付孔13が釣竿本体11の長手方向に沿って並設されている。各取付孔13の位置は、中間ガイド16〜20の位置に対応している。図1が示すように本実施形態では、釣竿本体11の先端から中間ガイド16までの距離p1は22mmに設定されており、隣り合う中間ガイド16〜20同士の間隔p2〜p5は、それぞれ、25mm、27mm、33mm、40mmに設定されている。なお、中間ガイド16〜20の数や上記距離p1、間隔p2〜p5は、適宜設計変更され得る。
【0033】
図2が示すように、上記取付孔13は円形に形成されている。この取付孔13の中心は、釣竿本体11の中心軸上に位置している。各取付孔13の内径は、本実施形態では1.5mmに設定されているが、取付孔13の内径は特に限定されるものではない。ただし、釣竿本体11において取付孔13を除いた部分の寸法Woは、1.8mm以上に設定されるのが好ましい。もっとも、取付孔13は楕円であってもよいし、その他の形状の貫通孔であってもよい。要するに、取付孔13の形状は、釣竿本体11に曲げモーメントが作用した際に取付孔13が設けられた部位における応力集中が回避されるような形状であればよく、釣竿本体11の断面形状が急激に変化しないように取付孔13の形状が決定されるべきである。
【0034】
中間ガイド16は、ステンレス鋼線材から構成されている。中間ガイド16は、環状に形成されたリング部21と、上記取付脚23とを備えている。中間ガイド16は、単一のステンレス鋼線材からなり、当該ステンレス鋼線材の一端部31及び他端部32により上記取付脚23が構成され、当該ステンレス鋼線材の中間部分により上記リング部21が構成されている。具体的には、上記ステンレス鋼線材の中間部分が円形に湾曲されることによってリング部21が形成されている。本実施形態では、上記ステンレス鋼線材がらせん状に2回だけ巻回されることによりリング部21が形成されているが、上記ステンレス鋼線材が幾重にも巻回されることによりリング部21が形成されていてもよい。
【0035】
取付脚23を構成する上記一端部31及び他端部32は、上記リング部21に連続しており、それぞれ、接続部33及び固定部34を有する。各接続部33は、上記リング部21に連続している。また、各固定部34は、各接続部33に連続し、当該各接続部33に対して屈曲されている。接続部33に対する固定部34の屈曲角度φは特に限定されないが、いわゆる鈍角に設定されるのが好ましい。さらに、各固定部34は、互いに平行に配置され、釣竿本体11の長手方向に沿って配置されている。この固定部34は、釣竿本体11の上面35側から上記取付孔13に挿通され、釣竿本体11の下面に当接される。そして、この固定部34は、ナイロン糸24により釣竿本体11に締結され、接着剤で固定される。中間ガイド17〜20も中間ガイド16と同様の構成であり、前述と同様の要領で釣竿本体11に固定される。
【0036】
図1が示すように、トップガイド12もステンレス鋼線材から構成されており、上記中間ガイド16〜20と同様にリング部21と、上記取付脚23とを備えている。上記中間ガイド16〜20は、取付脚23が釣竿本体11の取付孔13に挿通されていたが、本実施形態では、トップガイド12は、取付脚23が釣竿本体11の上面35に載置され、ナイロン糸24及び接着剤にて固定されている。もっとも、釣竿本体11の先端近傍に上記取付孔13が設けられ、この取付孔13にトップガイド12の取付脚23が挿通されてもよい。
【0037】
グリップ30は、釣竿本体11の基端部14に連結されている。グリップ30は、釣人が把持する部材であって、既知の構造を有する。グリップ30は円柱状に形成されたグリップ本体25を備えており、釣人が握りやすいように所要の外径に設定されている。グリップ本体25を構成する材料は、樹脂、金属が例示される。グリップ本体25は、リールシート26を備えている。このリールシート26は、釣用リールをグリップ本体25に固定するためのものであって、釣用リールが載置されるシート面29を備える。また、リールシート26は、固定フード27及び可動フード28を有し、これらはシート面29に載置された釣用リールの脚を挟持する。
【0038】
[釣竿の使用要領]
【0039】
図示されていない釣用リールがシート面29上に載置され、固定フード27及び可動フード28によって締結固定される。この釣用リールから引き出されたラインは、中間ガイド20〜16及びトップガイド12に順次挿通され、当該ラインの先端に仕掛けが連結される。
【0040】
この釣竿10では、釣竿本体11がガラス繊維強化樹脂からなるので、釣竿本体11は均質な構造の細長棒状体として構成されている。したがって、釣竿本体11の断面係数は基端部14から先端部15に向かって漸次滑らかに変化する。そのため、釣竿本体11に曲げモーメントが作用した場合に、釣竿本体11は全体に滑らかに湾曲変形する。また、この釣竿10がターゲットとするのはワカサギ等の小魚であるから、釣竿本体11の断面係数は小さく設定されている。したがって、釣竿本体11は、微小な曲げモーメントが作用した場合であっても敏感に反応して湾曲変形する。
【0041】
上記各中間ガイド16〜20は、それぞれ、リング部21及び取付脚23を有し、この取付脚23が釣竿本体11の貫通孔13に挿通されている。具体的には、取付脚23の固定部34が貫通孔13に挿通され、釣竿本体11の下面に係合される。この状態で、固定部34がナイロン糸24により釣竿本体11に締結されるので、中間ガイド16〜20は、少量のナイロン糸24及び接着剤により簡易に且つ確実に釣竿本体11に固定される。中間ガイド16〜20が釣竿本体11を貫通し前述のような簡易な構造で釣竿本体11に固定されることから、釣竿本体11の剛性が局部的に大きくなることが回避される。その結果、釣竿10の滑らかな湾曲が実現され、実釣において小型魚の微小なアタリが釣人によって確実に捉えられ、且つ釣針から魚が脱落することが防止される。
【0042】
また、中間ガイド16〜20及びトップガイド12がステンレス鋼線材から構成されているので、これらの耐候性がきわめて高い。しかも、ステンレス鋼線材が湾曲ないし屈曲されるだけで、簡単且つ安価に中間ガイド16〜20及びトップガイド12が製造される。さらに、ステンレス鋼線材の一端部31及び他端部32からなる取付脚23が釣竿本体11の長手方向基端側に屈り曲げられるから、中間ガイド16〜20が装着されることによる釣竿本体11の局部的な剛性変化がより一層抑えられる。
【0043】
本実施形態では、釣竿本体11が帯状に形成されているので、釣竿本体11に曲げモーメントが作用したときにきわめて敏感に湾曲変形する。したがって、この釣竿本体11はワカサギ釣りに供される釣竿10の構成部品として好適である。
【0044】
加えて、本実施形態では、釣竿本体11に設けられた貫通孔13は、釣竿本体11の剛性を局部的に低下させる円形孔であるから、次のような利点がある。
【0045】
中間ガイド16〜20が釣竿本体11に装着されると、各中間ガイド16〜20が取り付けられた部分において釣竿本体11の断面係数が局部的に大きくなることは避けられない。そのため、釣竿本体11の滑らかな湾曲が阻害されるおそれがある。ところが、前述のように均質な構造の釣竿本体11に円形の貫通孔13が設けられているため、この貫通孔13が設けられた部位において釣竿本体11の断面係数が局部的に小さくなる。すなわち、貫通孔13が設けられることによる断面係数の低下と中間ガイド16〜20が設けられることによる断面係数の増大とが相殺され、結果として釣竿本体11の断面係数は、基端部14から先端部12に向かって漸次滑らかに変化し得る。その結果、釣竿本体11に微小な曲げモーメントが作用した場合であっても、釣竿本体11は滑らかに曲がって且つ一様に曲がりが復元する。よって、釣人が釣竿10を使用してワカサギ釣りその他の小型魚をターゲットとした釣りを行う際に、仕掛けを微妙に操作して効果的な「誘い」をかけることができるし、小型魚の微小なアタリを確実に捉えることができる。しかも、ヒットした魚の引きに対して釣竿本体11がソフトに湾曲変形するので、ヒットした魚が釣針から脱落することが防止される。
【0046】
[変形例]
【0047】
図3は、上記実施形態の変形例に係る釣竿の要部拡大斜視図である。
【0048】
同図が示すように、この変形例に係る釣竿が上記釣竿10と異なるところは、上記中間ガイド16〜20の取付脚23は一対の固定部34を備えており、各固定部34は、同方向に屈曲されていたのに対し、本変形例では、一対の固定部42、43は、互いに反対向きに屈曲されている点である。すなわち、取付脚23の一方側の固定部42は、釣竿本体11の長手方向先端側に屈曲されており、他方側の固定部43は、釣竿本体11の長手方向基端側に屈曲されている。なお、その他の構成については、上記釣竿10と同様である。中間ガイド16〜20がかかる構造にて釣竿本体11に締結固定されていても、中間ガイド16〜20は、簡単に且つ確実に釣竿本体11に固定され得る。
【0049】
図4は、上記実施形態の第2の変形例に係る釣竿の要部拡大斜視図である。
【0050】
この変形例に係る釣竿が上記釣竿10と異なるところは、上記釣竿本体11は貫通孔13を備えていたのに対し、本変形例に係る釣竿本体44は貫通孔13が設けられていない点、及び上記中間ガイド16〜20の取付脚23は一対の固定部34を備えていたのに対し、本実施形態に係る中間ガイド46は、単一の固定部47を備え、且つ当該固定部47の先端にバーブ48が形成されている点である。なお、その他の構成については、上記釣竿10と同様である。
【0051】
中間ガイド46は、たとえばステンレス鋼板から構成され得る。本変形例では、中間ガイド46は、リング部21及び取付脚23が一体的に形成されている。上記バーブ48は、上記固定部47の先端が隆起されることにより構成されており、垂直壁面49が形成されている。
【0052】
本変形例では、同図が示すように中間ガイド46が釣竿本体44の上面35に載置され、その状態でナイロン糸24によって締結される。このナイロン糸24は、上記固定部47に掛け回され、上記バーブ48に係合する。これにより、釣竿本体44が平板状に形成されることによって、ナイロン糸24の一様な巻き掛けが困難な場合であっても、中間ガイド46の脱落が防止され、確実に釣竿本体44に固定され得る。
【0053】
なお、本変形例では、釣竿本体11が平板状に形成されているが、釣竿本体44が丸棒状に形成されていても、同様に中間ガイド46の確実な固定が実現される。また、本変形例では、上記バーブ48は、固定部47の先端が隆起されることによって構成されているが、固定部47が折り曲げられることによりバーブ48が形成されていてもよい。
【0054】
図5は、上記実施形態の第3の変形例に係る釣竿の要部拡大斜視図である。
【0055】
この変形例が上記第2の変形例に係る釣竿と異なるところは、釣竿本体11の貫通孔13に中間ガイド46の固定部47が挿通されている点、及び上記バーブ48が下向きに形成されている点である。この変形例では、中間ガイド46が釣竿本体44に挿通されるから、前述のように、中間ガイド46のより確実な固定が実現される。
【符号の説明】
【0056】
10・・・釣竿
11・・・釣竿本体
12・・・トップガイド
13・・・取付孔
14・・・基端部
15・・・先端部
16・・・中間ガイド
17・・・中間ガイド
18・・・中間ガイド
19・・・中間ガイド
20・・・中間ガイド
21・・・リング部
23・・・取付脚
24・・・ナイロン糸
31・・・一端部
32・・・他端部
33・・・接続部
34・・・固定部
42・・・固定部
43・・・固定部
44・・・釣竿本体
46・・・中間ガイド
47・・・固定部
48・・・バーブ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端から先端に向かって所定のテーパが設けられた樹脂又は繊維強化樹脂からなる細長棒状体からなる釣竿本体と、
当該釣竿本体の先端に設けられたトップラインガイドと、
当該トップラインガイドから当該釣竿本体の長手方向基端側に向かって所定の間隔をあけて配置された複数の中間ラインガイドとを備え、
少なくとも中間ラインガイドは、ラインが挿通されるリング部及び当該リング部に設けられた取付脚部とを有し、
当該取付脚部は、上記釣竿本体に設けられた貫通孔に挿通され且つ当該釣竿本体の長手方向に屈曲された状態で当該釣竿本体に固定されている釣竿。
【請求項2】
上記中間ラインガイドはステンレス鋼線材からなり、当該ステンレス鋼線材が環状に湾曲形成されることにより上記リング部が形成され、当該ステンレス鋼線材の両端部により上記取付脚部が形成されており、上記両端部は、上記釣竿本体の長手方向基端側に屈曲されている請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
上記中間ラインガイドはステンレス鋼線材からなり、当該ステンレス鋼線材が環状に湾曲形成されることにより上記リング部が形成され、当該ステンレス鋼線材の両端部により上記取付脚部が形成されており、上記両端部のうちの一方は上記釣竿本体の長手方向基端側に屈曲され、上記両端部のうちの他方は上記釣竿本体の長手方向先端側に屈曲されている請求項1に記載の釣竿。
【請求項4】
上記釣竿本体は、断面形状が扁平した矩形である帯状に形成されている請求項1から3のいずれかに記載の釣竿。
【請求項5】
上記貫通孔は、上記釣竿本体の剛性を局部的に低下させる円形孔である請求項4に記載の釣竿。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−234663(P2011−234663A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108194(P2010−108194)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】