説明

鉄筋かぶり厚検査装置及び鉄筋かぶり厚検査方法

【課題】型枠内面と鉄筋との間に形成される鉄筋かぶり厚が、予め設定された鉄筋かぶり厚の設定値を満たすか否かについて、コンクリートの打設前に、簡易な装置を使用して効率よく検査する。
【解決手段】設定値に応じて離隔距離が調整され、平行に射出される第1のレーザ光2aと第2のレーザ光3aのうち、いずれか一方のレーザ光を型枠内面14aに沿って照射し、他方のレーザ光が鉄筋に干渉されることなく、型枠内面と鉄筋との間を通過するか否かを目視によって確認する。2つのレーザ光が型枠内面と鉄筋の間を通過し、後方でレーザスポットを生じていればかぶり厚は設定値を満たしていると判断する。レーザ光は、型枠の開放された部分から照射し、照射角度を変更することにより、開放された部分から離れた位置での鉄筋かぶり厚を検査することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、コンクリート構造部材に埋め込まれた鉄筋の表面からコンクリートの表面までの距離である鉄筋かぶり厚が予め定められた設定値を満たしているか否かを、コンクリートを打設する前に検査するための鉄筋かぶり厚検査装置及び鉄筋かぶり厚検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの中性化を抑制し、耐久性のあるコンクリート構造物とするためには、コンクリート構造部材の最も表面近くに配置されている鉄筋を所定の厚さのコンクリートで覆うこと、つまり所定の鉄筋かぶり厚を確保することが必要である。このため、コンクリート構造物の設計段階で当該構造物に必要な鉄筋かぶり厚が設定されており、施工時において型枠と鉄筋を組み立てる際には、型枠の内面と最も外側に配置された鉄筋との間隔が鉄筋かぶり厚の設定値を満たすように組み立てなければならない。
【0003】
このように、型枠内面と鉄筋との離隔距離が所定の設定値であるか否かを調べるために、従来は型枠を組み立てた後のコンクリート打設前に、スケールでこれらの間隔を測定していた。しかし、型枠を組み立てた後では、測定しようとする位置に手を差し入れることができず、上記のような器具では測定できない場合がある。また、鉄筋かぶり厚の測定が困難な場所では、スペーサ等を配置して型枠と鉄筋との離隔距離を確保することもあるが、中間帯鉄筋が配置された場所等、スペーサによる鉄筋かぶり厚の確保が難しい箇所もある。
【0004】
このような鉄筋かぶり厚の測定が困難な箇所でも測定を可能にしようとする装置が、例えば特許文献1に記載されている。
このかぶり厚測定装置は、最大幅部分が所定のかぶり厚に設定された測定部材を棹状の支柱に取り付けたものである。測定は上記支柱を把持して測定部材の最大幅部分を型枠内面と鉄筋との間に差し入れることによって行い、測定部材が通過すればかぶり厚が所定値以上であると判断し、通過できない場所ではかぶり厚の所定値を満たしていないと判断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−197070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような測定装置では、型枠と鉄筋との間の小さなスペースに、棹状の支柱に取り付けられた測定部材を差し入れ、支柱を把持しての操作によって型枠と鉄筋との間に測定部材を通過させることになる。このため、支柱の長さが長くなると操作は難しくなり、測定の効率が悪くなっている。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、型枠内面と鉄筋表面との離隔距離である鉄筋かぶり厚が予め定められた設定値を満たすか否かを、簡易な装置で容易かつ効率よく検査することができる鉄筋かぶり厚検査装置及び鉄筋かぶり厚検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 コンクリート構造部材に埋め込まれる鉄筋とコンクリートが打設される前の型枠内面との離隔距離である鉄筋かぶり厚が予め定められた設定値を満たしているか否かをコンクリートの打設前に検査する鉄筋かぶり厚検査装置であって、 第1のレーザ光を射出する第1のレーザ光射出器と、 前記第1のレーザ光と平行に第2のレーザ光を射出する第2のレーザ光射出器と、を備え、 該第2のレーザ光射出器は、前記第2のレーザ光が前記第1のレーザ光と平行に射出される状態で、前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光との間隔を変動させることが可能に支持されていることを特徴とする鉄筋かぶり厚検査装置を提供する。
【0009】
この鉄筋かぶり厚検査装置では、平行に射出される2つのレーザ光を型枠の開放された部分から型枠と鉄筋との間に照射し、これらのレーザ光の照射状態を目視することにより、鉄筋かぶり厚の設定値を満たしているか否かを判断することができる。つまり、2つのレーザ光が型枠及び鉄筋の双方に遮られることがなければ、鉄筋かぶり厚は2つのレーザ光の照射間隔より大きくなっていることがわかる。したがって、2本の平行に射出されるレーザ光の間隔をかぶり厚の設定値に合わせておくと、実際に配置された型枠と鉄筋との間隔が設定されたかぶり厚を満たしているか否かを判断することができる。
また、検査に当たっては、型枠の開放部分例えば上方から下方に向けてレーザ光を照射すればよく、迅速な操作が可能となる。そして、型枠の開放された部分から離れた位置でもかぶり厚を容易に検査することができる。また、側面の型枠を鉄筋の組み立て後に建て込むような場合には、側面の型枠を建て込む前の開放された部分から横方向にレーザ光を照射することができるし、底部型枠に開閉可能な検査窓が設けられる場合には、この検査窓からレーザ光を横方向又は上方に向けて照射してかぶり厚を検査することもできる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鉄筋かぶり厚検査装置において、 前記第1のレーザ光射出器は、架台上に固定支持され、 前記第2のレーザ光射出器は、前記架台上に設けられたレール状部材に案内されて移動するものであり、 前記架台にはスケールが備えられ、 前記第2のレーザ光射出器には、前記スケールに刻まれた目盛りを指し示す位置設定用マークが付されており、 前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光との射出間隔は、前記位置設定用マークの指し示す前記スケール上の位置により、前記設定値に応じて調整することが可能であるものとする。
【0011】
この鉄筋かぶり厚検査装置では、位置設定用マークをスケールの目盛りに合わせることによって、平行に射出される2つのレーザ光の間隔を鉄筋かぶり厚の設定値に応じて容易に調整することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、 第1のレーザ光射出器から射出される第1のレーザ光と第2のレーザ光射出器から前記第1のレーザ光と平行に射出される第2のレーザ光との間隔を、コンクリート構造部材に埋め込まれる鉄筋とコンクリートが打設される前の型枠内面との離隔距離である鉄筋かぶり厚の設定値に応じて調整し、 型枠と鉄筋とを組み上げた後のコンクリート打設前に、第1のレーザ光と第2のレーザ光とのいずれか一方を前記型枠に沿って照射した状態で、他方のレーザ光が前記鉄筋に対して照射されるか否かにより、前記設定値を満たしているか否かを検査することを特徴とする鉄筋かぶり厚検査方法を提供する。
【0013】
この鉄筋かぶり厚検査方法では、第1のレーザ光と第2のレーザ光が所定の間隔で平行に照射されるので、2つのレーザ光を型枠と鉄筋との間に照射し、これらのレーザ光が型枠と鉄筋の間を通過するか否かによって鉄筋かぶり厚の設定値を満たすか否かを容易に視認することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の鉄筋かぶり厚検査方法において、 前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光とが垂直な面に照射されたときのレーザ光照射域における、2つのレーザ光照射域の外周縁の互いに最も離隔した位置間の距離が、前記設定値となるように前記第1のレーザ光射出器と第2のレーザ光射出器との間隔を調整するものとする。
【0015】
この鉄筋かぶり厚検査方法では、2つのレーザ光のそれぞれのレーザ光照射域の互いに最大に離隔した距離である外周縁から外周縁までの間隔を鉄筋かぶり厚の設定値に調整するので、鉄筋又は型枠の鉄筋と対向する位置にレーザ光の少なくともどちらか一方が照射されたときには、型枠と鉄筋との間隔が設定値を満たしていないことになり、かぶり厚が不足していることを容易に認識することができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4に記載の鉄筋かぶり厚検査方法において、 コンクリートからなる橋脚内で上下方向に埋め込まれる主鉄筋と、前記主鉄筋を横方向に 囲む帯鉄筋と、該帯鉄筋が変位するのを拘束するように該帯鉄筋の異なる位置間を連結する中間帯鉄筋とを配置し、 前記主鉄筋、前記帯鉄筋及び前記中間帯鉄筋を埋め込むようにコンクリートを打設するための型枠を組み立て、 前記第1のレーザ光と第2のレーザ光とのいずれか一方を前記型枠の上方から該型枠の内面に沿って照射した状態で、前記中間帯鉄筋の前記帯鉄筋に巻き回した位置に対して他方のレーザ光が照射されるか否かにより、前記設定値を満たすか否かを検査するものとする。
【0017】
帯鉄筋に巻き回すように係止された中間帯鉄筋は、帯鉄筋に巻き回された部分が突出して型枠と対向するものとなり、このような中間帯鉄筋の突出部が型枠面に対して多数存在することになる。これに対し、2つのレーザ光を型枠の上方から照射することによって多数が分布している中間帯鉄筋のそれぞれに対して型枠との間隔つまりかぶり厚が予め設定された値以上であるか否かを効率よく確認することができる。
また、コンクリートを一回で打設する高さの下方部についても、レーザ光を射出する位置を調整することによって中間帯鉄筋と型枠との間にレーザ光を照射することができる。さらに、上方部分で型枠と鉄筋との間隔が設定より小さくなっている部分が発見されても、レーザ光を射出する位置は容易に変えることができ、下方までレーザ光が照射される位置を選択し、レーザ光の照射角度を調整して全域の測定を効率よく行うことができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項3又は請求項4に記載の鉄筋かぶり厚検査方法において、 コンクリートの上床版とウェブとを有する橋桁を形成するための型枠内に、橋桁の軸線方向鉄筋と、前記ウェブ部分の前記軸方向鉄筋を囲むスターラップとを配置した後、 前記スターラップと前記型枠とが対向する位置の上方から、前記型枠に沿って前記第1のレーザ光と第2のレーザ光とのいずれか一方を照射した状態で、他方のレーザ光の前記スターラップに対する照射の有無により、前記設定値を満たすか否かを検査するものとする。
【0019】
コンクリート橋桁のウェブに配置されたスターラップは、ウェブ部分の型枠に最も接近した位置に配置され、ウェブの上下方向に連続するように配置される。このようなスターラップと型枠との間に上方から2つのレーザ光を照射する。そして、これらのレーザ光がスターラップの表面と対向する型枠の表面との間を斜め上方から通過するか否かを目視することによって、鉄筋かぶり厚が設定値を満足しているか否か分かる。そして、レーザ光の照射角度を変化させることによってスターラップの上部から下部までの全域についてかぶり厚を測定することができる。
また、橋桁の軸線方向に移動しながらレーザ光を照射することにより、すべてのスターラップについて迅速にかぶり厚を測定することができる。
さらに、橋桁の断面においてウェブが傾斜した形状となっている場合においても、レーザ光は傾斜した型枠に沿って照射し、かぶり厚を容易に測定することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
上記のように、本願発明に係る鉄筋かぶり厚検査装置及び鉄筋かぶり厚検査方法では、2つのレーザ光を型枠と鉄筋との間に照射して、これらのレーザ光が通過するか否かを目視で確認することにより、かぶり厚が予め設定された値より大きく確保されているか否かを容易かつ迅速に検査することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本願発明の一実施形態である鉄筋かぶり厚検査装置を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す鉄筋かぶり厚検査装置の概略正面図及び概略側面図である。
【図3】図1に示す鉄筋かぶり厚検査装置を用いてかぶり厚を検査することができる橋脚の鉄筋の配置状態を示す概略平面図である。
【図4】図3中に示すA−A線における矢視図であって、橋脚の鉄筋の配置状態を示す立断面図である。
【図5】図3及び図4に示す橋脚の鉄筋かぶり厚の検査方法を示す概略図である。
【図6】図3及び図4に示す橋脚の鉄筋かぶり厚の検査方法を示す概略図である。
【図7】図3及び図4に示す橋脚の鉄筋かぶり厚の検査方法を示す概略図であって、図4中に示すB−B線における矢視図である。
【図8】図1に示す鉄筋かぶり厚検査装置を用いてかぶり厚を検査することができる橋桁の鉄筋の配置状態を示す概略断面図である。
【図9】図8に示す橋桁のウェブの鉄筋かぶり厚を検査する方法を示す概略図である。
【図10】図8に示す橋桁のウェブの鉄筋かぶり厚を検査する方法を示す図であって、図9中に示すC−C線における矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願発明の一実施形態である鉄筋かぶり厚検査装置を示す概略斜視図であり、図2は概略正面図及び概略側面図である。
この鉄筋かぶり厚検査装置1は、第1のレーザ光2aを射出する第1のレーザ光射出器2と、第1のレーザ光2aと平行に第2のレーザ光3aを射出する第2のレーザ光射出器3と、第1のレーザ光射出器2及び第2のレーザ光射出器3を支持する架台4と、この架台上に設けられて第2のレーザ光射出器3をスライド移動させるレール5と、第2のレーザ光射出器3のスライド移動を任意の位置で拘束するストッパ6と、で主要部が構成されている。
上記第1のレーザ光射出器2は、上記架台4に固定支持されており、前面に設けられたレーザ光射出口2bから第1のレーザ光2aを射出するようになっている。そして、上記第2のレーザ光射出器3は、前面に設けられたレーザ光射出口3bから第2のレーザ光3aを第1のレーザ光2bと平行に射出するように架台4上に支持されている。
【0023】
上記架台4には、2本のレール5が平行に設けられており、これらのレール5は、図2(b)に示すように、架台4の上面から突き出して断面形状は下部から上部に向かって幅が徐々に拡大するものとなっている。そして、第2のレーザ光射出器3の取付基部3cに設けられた溝状の凹部3dがレール5と対応する断面形状となっており、この凹部3dがレール5に嵌め合わされている。レールの外面及び凹部の内面は精密に加工が施され、双方間に極わずかの隙間しか生じないように嵌め合わされるものとなっている。これにより第2のレーザ光射出器3は第2のレーザ光3aを照射する方向が第1のレーザ光2aと正確に平行となるように維持したままレール5に沿ってスライド移動するものとなっている。このように第2のレーザ射出器3が第1のレーザ光射出器2から離隔又は近接する方向にスライド移動して平行に射出する2つのレーザ光の間隔を調整することができるものとなっている。
【0024】
上記第2のレーザ射出装置3の取付基部3cは、第1のレーザ光射出器側に張り出した部分を備えており、この部分に貫通するネジ孔を備えている。このネジ孔にはストッパとして機能するボルト6がねじ込まれ、先端を架台4に強く押し付けることができるものとなっている。これにより、ボルト6は第2のレーザ光射出器3の取付基部3cとともに移動し、任意の位置でボルト6をねじ込むことによって第2のレーザ光射出器3の位置を固定することができるものである。つまり、第1のレーザ光射出器2から射出される第1のレーザ光2aと第2のレーザ光射出器3から射出される第2のレーザ光3aの間隔を、鉄筋かぶり厚の設定値に基づいて調整し、この間隔を固定することができる。
【0025】
また、架台4の前方側、つまりレーザ光2a、3aが射出される側には、目盛りが刻まれたスケール7が取り付けられ、第2のレーザ光射出器3には位置設定用マーク8が付されている。そして、この位置設定用マーク8が指し示すスケール7の目盛りが、第2のレーザ光3aと第1のレーザ光2aとの離隔距離と対応している。したがって、位置設定用マーク8の指し示す位置をスケール7上で調整することにより、第1のレーザ光2aと第2のレーザ光3aとの間隔を予め定められた鉄筋かぶり厚の設定値つまり設計値と対応するように調整することが可能となっている。
【0026】
例えば、鉄筋かぶり厚の設定値が50mmである場合、図1に示すように、2つのレーザ光2a,3aが被照射体Sに照射されることによって現れるレーザスポット9a,9b(レーザ光照射域)の最も離れている外周縁と外周縁との距離Dが50mmとなるように調整する。また、レーザスポットの中心間の距離が50mmとなるように調整するものであっても良い。
【0027】
次に、このような鉄筋かぶり厚検査装置を用いて橋脚の鉄筋かぶり厚を検査する方法を説明する。
図3は橋脚の鉄筋の配置状態を示す平面図、図4は図3中のA−A線における矢視図であって、橋脚の鉄筋の配置状態を示す立断面図である。
これらの図に示すように、鉄筋コンクリート橋脚の柱部分10には、曲げモーメントに抵抗する軸方向鉄筋つまり上下方向の主鉄筋11を配置するとともに、主鉄筋11の周囲を囲むように横方向の帯鉄筋12を配置し、さらに帯鉄筋12に巻き回すように係止されて帯鉄筋の異なる位置を連結する中間帯鉄筋13が配置されている。この中間帯鉄筋13は、例えば橋脚10の対向する側面付近の帯鉄筋12を連結して相互の間隔を保持するものである。これにより、帯鉄筋12の位置を拘束し、その曲げ剛性によって主鉄筋11が外側に膨らみ出そうとするのを拘束するものとなっている。
なお、この橋脚10は、予め定められた高さの複数の施工ブロックに分割し、下方から順次にコンクリートを打設して構築するものであり、一つの施工ブロックは先にコンクリートが打設された施工ブロック10aの上に連続するように鉄筋が配置されるものである。
【0028】
型枠14は、上記のように配置された主鉄筋11、帯鉄筋12及び中間帯鉄筋13を囲むように組み立てられる。このとき、最も外側に配置された中間帯鉄筋13と型枠内面14aとの間隔が鉄筋かぶり厚の設定値を満たすように組み立てられる。鉄筋かぶり厚は、設計段階において、配置される鉄筋径、打設されるコンクリートに含まれる粗骨材の寸法、構造物の用途、構造物がさらされる環境等を考慮して決定されるものである。
【0029】
このように型枠14及び鉄筋が組み立てられた状態で、コンクリート打設前に型枠内面14aと中間帯鉄筋13との間隔が鉄筋かぶり厚の設定値を満たしているか否かを上記鉄筋かぶり厚検査装置1を用いて検査する。
検査に当たっては、鉄筋かぶり厚の設定値に基づき、鉄筋かぶり厚検査装置1の第2のレーザ光射出器3を架台4上で移動し、第1のレーザ光射出器2から離隔する距離を調整してストッパ6により架台4に固定する。つまり、第1のレーザ光射出器2から射出される第1のレーザ光2aと第2のレーザ光射出器3から射出される第2のレーザ光3aの離隔距離が、鉄筋かぶり厚の設定値と対応するように調整する。
【0030】
2つのレーザ光2a,3aは、照射面に垂直に照射したときにレーザスポットの最も離れている外周縁と外周縁との距離がかぶり厚の設定値となるように調整されているものとし、図5に示すように、型枠14の上方から下方に向かって型枠内面14aと鉄筋との間に照射する。このとき、第1のレーザ光2aは型枠内面14aに沿うように照射し、第2のレーザ光3aは、型枠14から最も離れるように照射位置を設定して、中間帯鉄筋13の帯鉄筋12に巻き回された先端13aと型枠との間に照射する。このとき、図5に示すように第1のレーザ光2aが型枠内面14aを照射することなく、第2のレーザ光3aが中間帯鉄筋13に照射されずに下方に照射されると、中間帯鉄筋13と型枠内面14aとの間隔が2つのレーザ光の間隔より大きいことが分かる。
【0031】
また、実際には第1のレーザ光2aを正確に型枠内面14aに沿って照射することが難しい場合もあり、第1のレーザ光2aが型枠内面14aに対してわずかの角度をもって照射されることがある。このような場合においては、型枠内面14aに第1のレーザ光2aが照射されて上下に長い範囲に第1のレーザ光2aの照射域が生じても、測定対象としている中間帯鉄筋13と対向する位置より下方に第1のレーザ光照射域が現れ、第2のレーザ光3aが中間帯鉄筋13に照射されていないときは、中間帯鉄筋13と型枠内面14aとの間隔が2つのレーザ光2a,3aの間隔より大きくなっていると判断することができる。
【0032】
一方、測定対象とする中間帯鉄筋13bが外側に押し出されて鉄筋かぶり厚の設定値を満たしていない場合は、図6に示すように、第2のレーザ光3aが中間帯鉄筋13bに照射される。また、第2のレーザ光3aが中間帯鉄筋13bに照射されないように2つのレーザ光2a,3aの照射角度を型枠側に変えると第1のレーザ光2aが測定対象とする中間帯鉄筋13bと対向する位置より上方の型枠内面14aに照射される。これにより、測定対象とした中間帯鉄筋13bは、鉄筋かぶり厚の設定値を満たしていないことが分かる。
【0033】
上記のような間隔の検査を各中間帯鉄筋について行う。
図7は、図4中に示すB−B線における矢視図であり、この図に示すように中間帯鉄筋13は型枠内面に多数が対向して突き出している。これらの中間帯鉄筋13に対して、図7に示すように、2つのレーザ光2a,3aを鉛直方向に対してやや傾斜させて照射することにより、上部の中間帯鉄筋13cのみでなく、下方の中間帯鉄筋13dについても容易にかぶり厚を検査することができる。また、上方の中間帯鉄筋が所定の設定値を満たしておらず、突き出した状態となっていても下方の中間帯鉄筋の検査を行うことができる。
一方、2つのレーザ光2a,3aを鉛直下方に照射し、複数の中間帯鉄筋13と型枠内面14aとの間を通過して、先にコンクリートを打設した施工ブロックの上面にレーザ光2a,3aが照射されていると、複数の中間帯鉄筋のいずれもが鉄筋かぶり厚の設定値を満たしていることが分かる。
【0034】
次に、本願発明に係る鉄筋かぶり厚検査装置1を用いて、コンクリートからなる橋桁のウェブの鉄筋かぶり厚を検査する方法を説明する。
図8は、コンクリートからなる橋桁20の鉄筋が配置された状態を示す概略断面図である。
この橋桁20は断面形状が箱型となったいわゆる箱桁であり、上床版21と下床版22とこれらを連結する2つのウェブ23とを備えている。2つのウェブは下床版22に向かって相互の間隔が小さくなるように傾斜している。
このような箱桁では、まず箱桁の底型枠31、ウェブの外側面及び上床版の張り出し部を形成するための外型枠32が組み立てられ、これらの内部に下床版22及びウェブ23に配置される鉄筋がそれぞれ鉄筋かぶり厚の設定値を満たすように組み立てられる。そして、ウェブ23の内面及び上床版21のウェブ間を形成するための内型枠33が組み立てられる。
【0035】
上記ウェブ23には、橋軸方向の鉄筋41及びPC鋼材を挿通するためのシース43が配置されるとともに、これらを囲むようにスターラップ42が配置される。スターラップ42は、橋軸方向の鉄筋41を囲むように配置されるため、ウェブ23の側面を形成するための外型枠32又は内型枠33と最も接近するように配置される。したがって、このスターラップ42が設計時に定められたかぶり厚を満たすように配置されていなければならない。
なお、図8中の符号44はハンチ筋、符号45はウェブ外面に沿った鉄筋と内面に沿った鉄筋との間隔を保持するとともにシースを保持する幅止め筋である。
【0036】
上記のように配置されたスターラップ42と外型枠32又は内型枠33との間隔つまり鉄筋かぶり厚を検査するにあたっては、まず、第1のレーザ光射出器から射出される第1のレーザ光2aと第2のレーザ光射出器3から射出される第2のレーザ光3aの離隔距離が、鉄筋かぶり厚の設定値と対応するように調整する。
このようにレーザ光2a,3aの離隔距離が調整された鉄筋かぶり厚検査装置1をウェブ23の上方で把持するか、又は照射角度を変えることができるように支持する。そして、第1のレーザ光2aを外型枠32又は内型枠33の内面32a,33aに沿って照射するとともに、第2のレーザ光3aは型枠面から最も離れるように照射する。つまり、平行な第1のレーザ光2aと第2のレーザ光3aを含む面が型枠内面32a,33aと垂直となるように2つのレーザ光を照射する。このとき、橋桁の側面側から見ると、図10に示すように上下方向に配置されたスターラップ42と交差するように2つのレーザ光2a,3aが傾斜した状態に照射角度を設定する。この状態で、第1のレーザ光2aと第2のレーザ光3aとの双方がスターラップ42と型枠32,33との間隙を通過しているか否かを目視により確認する。スターラップ42に対して斜上方から照射されたレーザ光2a,3aの双方がスターラップ42と型枠内面32a,33aとの間隙を通過し、反対側に照射されてレーザスポットを形成していれば、かぶり厚は設定値を満たしていることが分かる。また、スターラップ42又は型枠内面32a,33aのスターラップとの対向位置よりレーザ光の射出側を照射していればかぶり厚は設定値を満たしていないことが分かる。そして、図10に示すように、スターラップ42に対するレーザ光の照射角度を変更し、レーザ光がスターラップ42と型枠内面32a,33aとの間を通過する位置をスターラップ42の上部から下部に移動させることによって、スターラップ42の上部から下部までの全域についてかぶり厚が設定値を満たしているか否かを検査することができる。
【0037】
一方、図10中の符号Lで示すように、2つのレーザ光2a,3aが複数のスターラップ42と型枠内面32a,33aとの間を通過するように斜め下方に照射し、2つのレーザ光2a、3aのいずれもが底型枠31上に照射されていることが視認できれば、2つのレーザ光2a,3aの照射範囲で、複数のスターラップ42についてかぶり厚が設定値を満たしていることを確認することができる。
【0038】
なお、以上に説明した実施の形態では、図1に示すように、レーザ光2a,3aが被照射体に照射されたときの2つレーザスポット9a,9bの外周縁から外周縁までの距離Dを基準にして2つのレーザ光の離隔距離を調整したが、レーザスポット9a,9bの中心から中心まで、つまり光束の中心を基準として調整することもできる。このように調整した場合は、第1のレーザ光2aと第2のレーザ光3aとが型枠又は鉄筋に照射されたときのレーザスポットの中心位置を目視し、鉄筋かぶり厚が設定値を満たすが否かを判定することになる。
【0039】
また、上記実施の形態では、第1のレーザ光射出器2から射出される第1のレーザ光2aを型枠側に照射し、第2のレーザ光射出器3から射出される第2のレーザ光3aを鉄筋側に照射しているが、第1のレーザ光2と第2のレーザ光3とは互換性があり、第1のレーザ光2aを鉄筋側に、第2のレーザ光3aを型枠側に照射することもできる。
【0040】
さらに、本発明でレーザ光のレーザスポットの大きさつまり射出されるレーザ光の径や強さは、照射されたレーザスポットが視認できる程度に設定されるものとする。したがって、鉄筋かぶり厚の検査をする構造物及びその部位、又は検査を行う場所の明るさ等によってレーザ光の径や出力を選択するのが望ましい。
【0041】
一方、第1のレーザ光射出器2と第2のレーザ射出器3とを離隔距離の調整が可能に支持する構造は、上記構造に限定されるものではなく、射出される第1のレーザ光2aと第2のレーザ光3aとを正確に平行に維持して射出することができるものであれば、その他の構造を採用することができる。また、ストッパも本実施の形態に限定されるものではなく、他の構造を使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1:鉄筋かぶり厚検査装置、 2:第1のレーザ光射出器、 2a:第1のレーザ光、 3:第2のレーザ光射出器、 3a:第2のレーザ光、 4:架台、 5:レール、 6:ストッパとして機能するボルト、 7:スケール、 8:位置設定用マーク、 9:レーザスポット、
10:橋脚、 10a:橋脚の先にコンクリートが打設された施工ブロック、 11:主鉄筋、 12:帯鉄筋、 13:中間帯鉄筋、 14:橋脚の型枠、 14a:型枠内面、
20:橋桁、 21:上床版、 22:下床版、 23:ウェブ、 31:底型枠、 32:外型枠、 32a:外型枠の内面、 33:内型枠、 33a:内型枠の内面、 41:軸方向鉄筋、 42:スターラップ、 43:シース、 44:ハンチ筋、 45:幅止め筋





【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造部材に埋め込まれる鉄筋とコンクリートが打設される前の型枠内面との離隔距離である鉄筋かぶり厚が予め定められた設定値を満たしているか否かをコンクリートの打設前に検査する鉄筋かぶり厚検査装置であって、
第1のレーザ光を射出する第1のレーザ光射出器と、
前記第1のレーザ光と平行に第2のレーザ光を射出する第2のレーザ光射出器と、を備え、
該第2のレーザ光射出器は、前記第2のレーザ光が前記第1のレーザ光と平行に射出される状態で、前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光との間隔を変動させることが可能に支持されていることを特徴とする鉄筋かぶり厚検査装置。
【請求項2】
前記第1のレーザ光射出器は、架台上に固定支持され、
前記第2のレーザ光射出器は、前記架台上に設けられたレール状部材に案内されて移動するものであり、
前記架台にはスケールが備えられ、
前記第2のレーザ光射出器には、前記スケールに刻まれた目盛りを指し示す位置設定用マークが付されており、
前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光との射出間隔は、前記位置設定用マークの指し示す前記スケール上の位置により、前記設定値に応じて調整することが可能であることを特徴とする請求項1に記載の鉄筋かぶり厚検査装置。
【請求項3】
第1のレーザ光射出器から射出される第1のレーザ光と第2のレーザ光射出器から前記第1のレーザ光と平行に射出される第2のレーザ光との間隔を、コンクリート構造部材に埋め込まれる鉄筋とコンクリートが打設される前の型枠内面との離隔距離である鉄筋かぶり厚の設定値に応じて調整し、
型枠と鉄筋とを組み上げた後のコンクリート打設前に、第1のレーザ光と第2のレーザ光とのいずれか一方を前記型枠に沿って照射した状態で、他方のレーザ光が前記鉄筋に対して照射されるか否かにより、前記設定値を満たしているか否かを検査することを特徴とする鉄筋かぶり厚検査方法。
【請求項4】
前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光とが垂直な面に照射されたときのレーザ光照射域における、2つのレーザ光照射域の外周縁の互いに最も離隔した位置間の距離が、前記設定値となるように前記第1のレーザ光射出器と第2のレーザ光射出器との間隔を調整することを特徴とする請求項3に記載の鉄筋かぶり厚検査方法。
【請求項5】
コンクリートからなる橋脚内で上下方向に埋め込まれる主鉄筋と、前記主鉄筋を横方向に囲む帯鉄筋と、該帯鉄筋が変位するのを拘束するように該帯鉄筋の異なる位置間を連結する中間帯鉄筋とを配置し、
前記主鉄筋、前記帯鉄筋及び前記中間帯鉄筋を埋め込むようにコンクリートを打設するための型枠を組み立て、
前記第1のレーザ光と第2のレーザ光とのいずれか一方を前記型枠の上方から該型枠の内面に沿って照射した状態で、前記中間帯鉄筋の前記帯鉄筋に巻き回した位置に対して他方のレーザ光が照射されるか否かにより、前記設定値を満たすか否かを検査することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の鉄筋かぶり厚検査方法。
【請求項6】
コンクリートの上床版とウェブとを有する橋桁を形成するための型枠内に、橋桁の軸線方向鉄筋と、前記ウェブ部分の前記軸方向鉄筋を囲むスターラップとを配置した後、
前記スターラップと前記型枠とが対向する位置の上方から、前記型枠に沿って前記第1のレーザ光と第2のレーザ光とのいずれか一方を照射した状態で、他方のレーザ光の前記スターラップに対する照射の有無により、前記設定値を満たすか否かを検査することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の鉄筋かぶり厚検査方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−144544(P2011−144544A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5679(P2010−5679)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】