説明

鉄道車両の異常判定装置

【課題】事故発生時に車両の挙動データの読出し不可や消失を回避してデータの保護を図り、また、センサユニットの誤作動があってもその誤作動をカバーして、事故の際に必要な情報を出力する鉄道車両の挙動記録装置及び鉄道車両の異常判定装置を提供する。
【解決手段】異常判定装置の演算ユニット1は、耐衝撃・耐火性の筐体を備え、直交する3軸の加速度と各軸回りの角速度を測定する内部及び外部のセンサユニット2a,2bからのセンサ測定値の入力を受けて、車両異常を含む車両挙動を演算・記録し、更に各センサユニットの測定値に基づく演算結果について更に行うAND論理演算により、脱線、転覆、衝突等の車両異常を判定する。センサユニットの誤作動に起因した誤警報等を未然に防ぐことができる。列車編成においては、異常判定装置を先頭両車と最後尾両車とにそれぞれ配置し、測定値を交換することでデータのバックアップを図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、センサユニットからの出力によって、鉄道車両の脱線、転覆、衝突、その他の車両異常を判定する鉄道車両の異常判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道列車等において脱線等の事故が発生した場合に、その列車事故を自動的に検知することが行われている。即ち、運転手や車掌のような乗務員が鉄道車両に備え付けられている防護無線を起動し、また列車無線を使用して事故の状況を中央指令所に通報している。防護無線が発報される場合には、その付近にいる列車はその発報を受信することにより事故の発生を知ることができ、2次的事故を防止することができる。また、列車無線による通報を受けることにより、速やかに対策をとることができる。
【0003】
鉄道車両の事故の程度によっては乗務員が負傷してこれら防護無線及び列車無線の操作ができない状況が発生し、また負傷を免れても例えば気が動転して操作ができない状況が起こり得る。このような場合、付近を走行中の列車の乗務員は事故の発生を知ることができず、2次的事故が発生する恐れがあり、大事故につながる恐れがある。そこで、事故発生を自動的に検知して防護無線を自動発報し、乗務員が操作しなくても事故発生を知らせることができるようにした事故検知装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
即ち、この事故検知装置は、3軸加速度計及び3軸ジャイロの測定値を用いて列車の水平方向前方加速度、水平方向右方加速度、鉛直方向加速度、鉛直方向変位量及び姿勢角を演算する演算手段と、その演算手段の演算値と3軸加速度計及び3軸ジャイロの測定値とを用いて列車の事故を検知する検知手段と、その検知手段が事故を検知した時、列車に備え付けられている防護無線を起動する手段とを具備することによって、事故の自動的な検知と、それに基づいて防護無線の自動的な起動とを図っている。
【0005】
特許文献1に記載の従来例においては、防護無線を自動発報については、設置しているセンサが1箇所であるために、当該センサが誤動作をしてしまうとそれを誤作動であると認識して対応を取る手段がない。また、列車事故を起こした場合、設置している車両が大破してしまうと、自動的に防護無線が発報できない、かつ、データの記録もできず、トレインレコーダーとしての機能を果たせていない。
【0006】
鉄道車両の損壊を伴うような重大な事故が発生してときに、防護無線を確実に発報し得るようにした防護無線自動発報装置が提案されている(特許文献2参照)。この防護無線自動発報装置においては、演算部は3軸加速度計の測定値を用いて鉄道車両の事故を検知するために必要な演算処理を行い、検知処理装置はその演算値と3軸加速度計の測定値とに基づいて鉄道車両の事故を検知したときに事故検知信号を出力し、防護無線起動手段は鉄道車両の事故が検知されたことに基づいて防護無線を起動する。防護無線起動手段により起動された防護無線の作動状態は、作動状態保持手段によって、事故検知信号を用いることなく保持される。
【0007】
また、鉄道車両の損壊を伴うような重大な事故が発生してときに、防護無線を確実に発報し得る別の防護無線自動発報装置が提案されている(特許文献3参照)。この防護無線自動発報装置は、鉄道車両の事故が検知されたことに基づいて、防護無線を起動し、3軸加速度計、鉄道車両の事故を検知するために必要な演算処理を行う演算部、その演算値と3軸加速度計の測定値とに基づき鉄道車両の事故が検知されたときに事故検知信号を出力する検知ユニットを備えている。また、3軸加速度計等の動作に関する自己診断処理を行う自己診断手段を有し、自己診断処理の結果に基づき3軸加速度計及び演算手段のいずれか少なくとも1つの故障が検知されたときに故障検知信号を出力することで故障に迅速に対応可能とし、信頼性及び確実性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3744641号公報
【特許文献2】特開2008−35695号公報
【特許文献3】特開2008−35696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、鉄道車両において事故が生じた際の車両の挙動データは、事故原因の解析や事故で生じる現象の分析・対策にとって重要なデータである。鉄道車両の事故として脱線等の大事故の頻度は少ないが、大事故のときのデータのときほどデータの重要性は高いにも関わらず、そのデータが失われる可能性も高く、事故直後に必要な措置を取れない可能性も高い。そこで、事故の際にも車両の挙動データを記録することができ、また車両の挙動を測定するセンサユニットの誤作動があってもその誤作動をカバーすることができ、或いは事故直後の二次的災害を防止する有効な情報出力ができることが求められている。また、センサユニットの測定値に基づいて車両挙動を演算し、車両編成として車両異常に対応して、当該異常を乗務員等に表示・警報することが求められている。
【0010】
この発明の目的は、事故が生じた場合でも車両の挙動データの読出し不可や消失を回避してデータの保護を図り、センサユニットの誤作動があってもその誤作動をカバーして、真に事故が生じたときに作動し、或いは事故直後に二次的被害の発生を防止するための必要な情報を出力することができる、鉄道車両の異常判定装置を提供することである。また、センサユニットの測定値に基づいて車両挙動を演算し、車両編成として車両異常に対応して、当該異常を乗務員等に表示・警報することができる鉄道車両の異常判定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため、この発明による鉄道車両の異常判定装置は、鉄道車両に取り付けられており直交する3軸の加速度計及び当該直交する3軸回りの角速度を測定する3軸ジャイロを具備するセンサユニットと、前記鉄道車両に取り付けられた耐衝撃・耐火性の筐体に収容されており前記センサユニットの測定値が前記車両の挙動として記録される記録媒体と、前記車両の挙動に基づいて、脱線、転覆、衝突、その他の車両異常を判定する判定手段とを備えていることから成っている。
【0012】
この鉄道車両の異常判定装置によれば、車両の挙動を記録する記録媒体は耐衝撃・耐火性の筐体に収容されているので、車両が脱線、転覆、衝突のような大事故に遭っても、記録媒体が筐体によって保護されているので、損傷を受けることがなく、事故の際の車両の挙動データの消失を防止することができ、センサユニットによって検出された車両の挙動に基づいて、脱線、転覆、衝突、その他の車両異常を判定することができる。
【0013】
この鉄道車両の異常判定装置においては、鉄道車両編成に少なくとも2台以上設置されていて互いにデータ通信を行っており、前記各記録媒体には互いの前記車両の挙動をバックアップとして記録することが好ましい。更にまた、この鉄道車両の異常判定装置を、前記先頭車両或いは中間車及び最後尾車両の全車両に配置することができる。
【0014】
また、上記課題を達成するため、この発明による鉄道車両の異常判定装置は、直交する3軸の加速度計及び当該直交する3軸回りの角速度を測定する3軸ジャイロを具備するセンサユニットと、前記3軸の加速度計が測定した加速度測定値及び前記3軸ジャイロが測定した角速度測定値に基づいて車両異常を含む車両挙動を演算する演算ユニットとを具備しており、少なくとも1車両に前記センサユニットを2ユニット以上設置しており、全車両に設置された前記演算ユニットにて、前記各センサユニットの測定値に基づく演算結果について更に行うAND論理演算により、脱線、転覆、衝突、その他の車両異常を判定し、その判定を表示するとともに当該判定に基づいて警報を発する警報ユニットを設置していることから成っている。
【0015】
この鉄道車両の異常判定装置によれば、少なくとも1車両にセンサユニットを2ユニット以上設置しているので、複数のセンサユニットからの測定値が利用可能であり、演算手段は、各センサユニットの測定値に基づく演算結果について更に行うAND論理演算により、脱線、転覆、衝突、その他の車両異常を判定する。したがって、各センサユニットがすべて「異常」と判定した場合にのみ装置として異常と判定することができ、一つのセンサユニットからの測定値のみに依存して車両異常を判定するのではないので、異常判定装置としての信頼性を高めることができる。
【0016】
この鉄道車両の異常判定装置において、前記警報ユニットが発する警報が一定時間内に解除されないことに応じて自動的に防護無線を発報する防護無線手段を備えることができる。また、この鉄道車両の異常判定装置において、前記センサユニットに関連してその測定値を前記車両の挙動として記録する記録媒体を設け、前記センサユニット及び演算ユニットは少なくとも鉄道車両編成の先頭車両及び最後尾車両に設置されていて互いにデータ通信を行い、前記各記録媒体には互いの前記車両の挙動がバックアップとして記録することができる。記録媒体のような挙動記録装置は鉄道車両編成の先頭車両或いは中間車及び最後尾車両の全車両に設置されていて互いにデータ通信を行い、前記各記録媒体には互いの前記車両の挙動をバックアップとして記録することが好ましい。更に、この鉄道車両の異常判定装置において、前記車両異常が生じたとの判定に応じて乗務員に警報を発する警報ユニット、及び一定時間内に前記警報手段による警報を解除しないことに応じて自動的に防護無線を発報する防護無線手段の装置は、最後尾車両の運転室、車掌室等の乗務員室に配置することが好ましい。
【0017】
更にまた、この鉄道車両の異常判定装置において、前記直交する3軸の前記加速度及び前記直交する3軸回りの前記角速度について予め複数の閾値を設定し、前記直交する3軸の前記加速度測定値、又は前記直交する3軸回りの前記角速度測定値の何れかが、設定されている前記複数の閾値のいずれかを超えることに応じて、超えた当該閾値に応じた警報を発生することが好ましい。或いは、この鉄道車両の異常判定装置において、前記直交する3軸の前記加速度及び前記直交する3軸回りの前記角速度について予め複数の閾値を設定し、前記直交する3軸の前記加速度測定値、又は前記直交する3軸回りの前記角速度測定値の何れかが、設定されている前記複数の閾値のいずれを超えなくても、累積頻度に応じて、前記閾値に応じた警報を発生することが好ましい。
【0018】
更にまた、この鉄道車両の異常判定装置において、前記センサユニットの測定値を前記車両の異常な挙動として記録する記録媒体を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
この発明による鉄道車両の異常判定動装置によれば、センサユニットの測定値を車両の挙動として記録する記録媒体は耐衝撃・耐火性の筐体に収容・保護されているので、装置が設置されている車両が脱線、転覆、衝突、その他の大破する事故で損傷、炎上するような場合でも、記録媒体は車両の挙動記録を残すことができる。したがって、事故当時の車両挙動を記録でき、事故原因調査・分析に有効的なデータを提供することができる。
【0020】
この鉄道車両の異常判定装置においては、車両の挙動に基づいて車両異常を判定する判定手段を備えることで、車両の脱線、転覆、衝突、その他の車両異常を判定することができる。また、異常判定装置を鉄道車両編成に少なくとも2台以上設置して互いにデータ通信を行わせ、各記録媒体には互いの前記車両の挙動をバックアップとして記録することで、万一、どちらかの異常判定装置が損傷を受けたとしても、他方の異常判定装置が同程度の損傷を受ける可能性は極めて低く、他方の記録媒体に記録されているデータが利用可能に保存されているので、事故原因調査・分析に有効的なデータを確保することができる。また、各台の装置にはセンサユニットが2箇所設置されることになるので、センサ異常などの誤作動に対応することができる。
【0021】
この発明による鉄道車両の異常判定装置によれば、2ユニット以上設置されたセンサユニットと車両挙動を演算する演算ユニットとを具備し、各センサユニットの測定値に基づく演算結果について更にAND論理演算を行い、このAND論理演算により、脱線、転覆、衝突、その他の車両異常を判定し、その判定を表示するとともに当該判定に基づいて警報を発する警報ユニットが設置されるので、センサ異常などの誤作動に対応することができ、車両異常の判定とその判定に基づく警報ユニットによる警報時の信頼性向上が得られる。
【0022】
この鉄道車両の異常判定装置において、前記警報ユニットが発する警報が一定時間内に解除されないことに応じて防護無線手段が自動的に防護無線を発報することにより、鉄道車両の大事故時に運転手や車掌のような乗務員が意識喪失、動転若しくは大怪我等によって防護無線が発報されない状況でも、一定時間が経過すると自動的に防護無線が発報され、列車事故の二次被害の防止を図ることができる。また、防護無線が発報されるレベルの警報が発生している間でも、一定時間内であれば乗務員がこれを解除することができるので、センサの誤動作等に起因した誤った防護無線が自動的に発報されるのを防ぐことができる。また、この鉄道車両の異常判定装置において、センサユニットに関連してその測定値を車両の挙動として記録する記録媒体が設けられており、少なくとも鉄道車両編成の先頭車両及び最後尾車両に設置して互いにデータ通信を行わせることで、各記録媒体には互いの車両の挙動をバックアップとして記録することができ、データの読み出し不可やデータの消失を回避するなどデータの保護を図ることができる。更に、この鉄道車両の異常判定装置を先頭車両或いは中間車及び最後尾車両の全車両に設置することで、編成の進行方向から見た先頭車両、最後尾車両の何れかの装置が大事故等で大破した場合でも、何れの装置が通信異常を検知するため、自動的に防護無線を発報でき、確実に列車事故の二次被害を防止できる。
【0023】
この鉄道車両の異常判定装置において、直交3軸の加速度及び直交3軸回りの角速度について複数の閾値を設定し、複数の閾値のいずれかを超えることに応じて、超えた当該閾値に応じた警報を発生することにより、通常走行時には大事故に繋がる恐れのある情報を運転手に知らせることで、大事故事態を未然に防止できる機能を提供できる。また、異常挙動レベルを分割し、大事故を起こしそうなレベルや、いつもと違う振動レベル、軌道管理レベル等、運転手に明確な定量的な情報を出力できる。更にまた、設定されている複数の閾値のいずれを超えなくても、累積頻度に応じて、閾値に応じた警報を発生することにより、例えば、いつもと違う振動レベルが何度も続いた場合などには、累積頻度をカウントすることで、車両に異常が発生していると判断し、レベルは小さくとも大事故の繋がる恐れのあるレベルと判断するため、より精度の高い判断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による異常判定装置のシステム構成の概略図である。
【図2】本発明による異常判定装置の演算ユニットを示す概略図である。
【図3】本発明による異常判定装置の警報ユニットの外観を示す概略図である。
【図4】本発明による異常判定装置の乗務員室に設置した一例を示す概略図である。
【図5】本発明による異常判定装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図6】車両の乗務員室に設置された本発明による異常判定装置のシステム構成をデータ通信で接続した例を示す概略図である。
【図7】図6で示した本発明による異常判定装置の接続例を示すブロック図である。
【図8】本発明における異常判定装置の作動の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
この発明による鉄道車両の異常判定装置の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、この発明による鉄道車両の異常判定装置の一例を示すシステム図である。図2〜図4は、図1に示すこの発明における異常判定装置に用いられるパーツとしての各装置を示しており、図2は演算ユニット、図3は警報ユニット、図4は6軸センサを具備したセンサユニットのイメージ図である。図1に示す異常判定装置の本実施形態は、演算ユニット1と、演算ユニット1にCAN通信によるデータ通信線で接続されたセンサユニット2a,2bと、警報ユニット10とを備えている。また、演算ユニット1にはGPS40と速発41とが接続されている。このようにシステム構成された異常判定装置は、先頭車及び最後尾車両の運転室、車掌室などの乗務員室に設置し、お互いにデータ通信線で、データ通信を行うように構成されている。
【0026】
図2に示す演算ユニット1は、内部に、情報記憶回路3と、予備電源4とを収容しており、それらを耐衝撃・耐火性を備えた筐体5で囲っている。筐体5には、電源供給口6、ヒューズ接続口7、制御用及びデータ用の各種信号の入出力端子8が設けられている。演算ユニット1の外部には、図1に示したように、センサユニット2a,2bが設けられている。筐体5に関して、耐衝撃性の例としては、例えば、電子基板等を振動吸収用樹脂で包んで保護するものが挙げられる。また、耐火性の例としては2枚の鉄板とその間に挟んだコンクリート層とから成るケースが挙げられる。
【0027】
センサユニット2a,2bは、後述するように、直交する3軸の加速度を測定する加速度計と直交する3軸回りの角速度を検出する3軸ジャイロを具備した6軸センサであり、ボックス化されて演算ユニット1に接続されている。情報記憶回路3は、振動、挙動等の測定結果を残し、後々の解析毎に用いる回路であり、センサユニット2a,2bの測定値を車両の挙動として記録する記録媒体を備えている。記録媒体は、フラッシュメモリや耐衝撃性の高いハードディスク等の必要な容量を備えている耐衝撃性のあるもの、更には記録速度が速い半導体メモリ(或いは、それが実装された基板)が好ましい。予備電源4は、外部電源から電源供給口6を通じて供給される電源が事故によって遮断された場合に自動的に切り替わる内部充電池として設けられている。
【0028】
演算ユニット1内には、マイクロプロセッサーとして演算手段を備えており、異常の程度を3段階(LEVEL1〜LEVEL3)に区切る閾値が予め設定されている。異常の程度がそれぞれの閾値等を超えた場合に、後述する警報ユニット10に警報出力指示すると同時に、事故発生時又は異常挙動発生時前後の車両挙動データを警報ユニット10の記憶媒体に記録するよう指示を行う。
【0029】
センサユニット2a,2bから脱線、転覆、衝突等の大事故(異常程度がLEVEL1)のセンサ出力を検知した場合、車両に設置されている演算ユニット1はトレインレコーダーの機能を有する。演算ユニット1は耐衝撃・耐火性の筐体5を備えており、筐体5は、車両が大破、炎上した場合、若しくは水没した場合でも、記録媒体に記憶されているデータを保護し、事故発生時のデータ消失や取出し不可を回避することができる。また、これらの異常によって電源が遮断された場合は、自動的に内部の予備電源4に切り替わり、LEVEL1等の大事故時にもデータが記録できるようにしている。
【0030】
図3に示す警報ユニット10は、電源が投入されている場合に点灯する電源LED11、異常の程度に応じて点灯LEDがLEVEL1からLEVEL3の間でシフトする警報LED12、警報の内容及び程度について音声、ブザー又はランプ表示などで報知可能にするスピーカ13、警報LED12やスピーカ13の警報動作をリセットするリセットボタン14、記録媒体18が挿入可能な記録媒体入力端子15、及び記録媒体入力端子15に挿入された記録媒体18の動作状態を示すメモリLED16を備えている。スピーカ13を駆動するため、AMP(増幅器)が備わっている(図5参照)。また、ここでの記録媒体18としてはカード状の媒体、例えばフラッシュメモリが挙げられる。演算ユニット1は車両に据置きであるので、記録媒体入力端子15に挿入された記録媒体にデータを吸い上げ、持ち帰って別の場所で解析することができる。
【0031】
警報ユニット10においては、センサユニット2a,2bの測定値に基づいて演算ユニット1が得た演算結果が各LEVEL別に設定した閾値等を超えた場合、スピーカ13にて警報音を鳴らすと共に各レベル別に設置した警報LED12を点滅させることにより、事故又は異常挙動を運転手等の乗務員に知らせる。LEVEL1発生の警報時に限り、運転手等が予め決められた時間内に、例えば10秒以内にリセットボタン14を押すことで警報を解除することが可能である。
【0032】
図1に6軸センサとして示したセンサユニット2a,2bは、演算ユニット1近傍に2個設置される。センサユニット2a,2bが測定したセンサ情報は、有線(CANデータ通信ケーブル)を経て演算ユニット1に出力される。
【0033】
図4に、本発明による異常判定装置を乗務員室(先頭車両の運転室又は最後尾車両の車掌室)に設置した一例を示す。図1に示した演算ユニット1は、運転室20の床構造23上に適宜、据え付けられている。演算ユニット1には、列車AC100V電源から電源供給されている。図3に示した警報ユニット10は、乗務員が警報LED12の点灯を確認し易く、またスピーカ13からの警報音を聞き易く、更にはリセットボタン14を押し易いように、運転室側壁21に取り付けられている。センサユニット2a及び2bは、一例として、運転席下部と運転室収納部22内に設置されているが、設置場所はこれに限る必要はない。センサユニット2a及び2bの測定値出力は、演算ユニット1に有線(CANデータ通信ケーブルにて入力される。演算ユニット1による演算結果は警報ユニット10又は防護無線機24に出力される。
【0034】
図5に、本発明による異常判定装置のシステム構成をブロック図として示す。演算ユニット1は、演算手段及び判定手段を含むものとしてのマイクロプロセッサーユニット(MPU)30を備えている。MPU30には、センサユニット2a及び2bがA/D変換器31を介して接続されている。MPU30には、電源供給口6を介して外部電源に接続される外部電源部32、防護無線リレー出力部33、速発信号入力部35、演算ユニット通信部36、内蔵バッテリーとしての予備電源4、及び情報記憶回路3を備えている。速発信号入力部35は、車輪速度(列車速度Z)データを取り込む入力部であり、取り込んだデータは衝突、脱線が生じた場合の速度が大きく変化することによるダブルチェックに供される。演算ユニット通信部36は先頭車両と最後尾車両同士のデータ通信を行う機能を備える。また、GPS信号入力部37は、例えば、GPSのデータの入力に供され、GPSデータにより列車位置を高精度に特定することができる。演算ユニット1に対しては、A/D変換器31を介して、センサユニット2a及び2bが接続されており、更に警報ユニット10が接続されている。
【0035】
図4及び図5に示した異常判定装置においては、直交3軸の加速度及び直交3軸回りの角速度について、事故等の異常の程度に応じて複数の閾値がMPU30に組み込まれて設定されている。異常の程度が複数の閾値のいずれかを超えることに応じて、超えた当該閾値に応じた警報を警報ユニット10で発生させる。したがって、通常走行時には大事故に繋がる恐れのある情報を事前(直前)に運転手等の乗務員に知らせることで、大事故事態を未然に防止することができる。また、異常挙動レベルを分割し、大事故を起こしそうなレベルや、いつもと違う振動レベル、軌道管理レベル等、乗務員に明確な定量的な情報を、レベルに応じて種類や音量で区別した警報音、或いはレベルに応じた色で区別されたランプの点灯で、乗務員に知らせることができる。
【0036】
2個のセンサユニット2a,2bの測定値出力が演算ユニット1に入力され、MPU30は、これらのセンサユニット2a,2bの測定値に基づいて車両挙動を演算する。この演算の際、MPU30は、センサユニット2a,2bの測定値に基づく演算結果について更にAND論理演算を行うので、センサユニット2a,2bが共に一定時間、「異常」と判定した場合にのみ装置として異常と判定する。即ち、各軸についての同じ測定項目について、両方の測定値が同時に且つ一定時間、閾値を超えないと、それに対応したレベルの事故があったとは判定しない。このように、仮に、一方のセンサユニットのみが異常判定に相当する測定値を出力するなどの誤作動をした場合であっても、装置として事故があったとは判定しないので、警報時の信頼性向上が得られる。
【0037】
図6に、本発明による異常判定装置のシステム構成を乗務員室(先頭車両の運転室と最後尾車両の車掌室)に設置し、両システムをデータ通信で接続した例を示す。即ち、図5に示した演算ユニット1、センサユニット2a及び2b、警報ユニット10から成る異常判定装置のシステム構成が、先頭車両25の運転室20と最後尾車両26の車掌室20とにそれぞれ設置されており、両システム構成は演算ユニット1,1間でデータ通信線39によって互いに接続されている。データ通信線39は列車編成の各車両の床構造23の下側に沿って配線されており、演算ユニット1の入出力端子8(図2)に接続されている。
【0038】
図7には、図6で示した接続例のブロック図が示されている。なお、ここでは、先頭車両25の運転室20と最後尾車両26の車掌室20とに設置される各システム構成において、演算ユニット1には、警報ユニット10と並列に防護無線装置24が接続されているものとして示されている。図6及び図7に示すように、挙動記録と異常判定を行う各システム装置を少なくとも、車両編成の先頭車両25及び最後尾車両26に合計2台を設置してデータ通信線39を介して互いにデータ通信を行わせることで、各情報記憶回路3(図2)には互いの車両の異常時の挙動をバックアップとして記録することができる。先頭車両25及び最後尾車両26の各乗務員室20に配置することで、先頭車両25、最後尾車両26の何れかの装置が大事故等で大破した場合には、何れかの装置が通信異常を検知するため、自動的に防護無線を発報でき、確実に列車事故の二次被害を防止できる。また、仮に、先頭車両25と最後尾車両26のいずれか一方が事故で大破するなどした場合にも、他方の車両が同時にダウンすることは極めて稀であるため、機能が維持された方のシステムではデータの消失が回避されデータの読み出しが可能であるなど、データを保護することができる。
【0039】
本発明における異常判定装置における先頭車両25と後方車両26に設置されている演算ユニット1,1間の通信方法の説明を以下に示す。
列車1編成における先頭車両25と後方車両26の運転室(車掌室)20にそれぞれ設置された演算ユニット1,1同士は、一定時間毎に演算ユニット1,1の正常確認通信を行う。この正常確認通信において、LEVEL1等の大事故で何れかの車両が破損し、演算ユニット1自体の破損又はデータ通信線39の断線を、何れかの車両25,26の演算ユニット1,1が認識した場合、LEVEL1の警報を例えば運転手に発報させることができる。このように、常に1編成において先頭車両25と後方車両26との間で、演算ユニット1,1同士が通信を行っているので、例えば、大事故で先頭車両25の運転手が防護無線装置40で発報することができない状況であっても、後方車両26の演算ユニット1から自動的に防護無線が発報できる仕組みになっている。
【0040】
MPU30は、センサユニット2a及び2bから有線等で送信される加速度測定値及び角速度測定値の測定値データを用いて、車両異常を含む車両挙動を演算し、車両の挙動に基づいて、車両の脱線、転覆、衝突、その他の車両異常を判定する。MPU30においては、センサユニット2a及び2bからの測定値データがAND論理で処理されるので、センサユニット2a,2bからの測定値が共に設定閾値以上の値であることが一定時間継続していると判断されるときに、真に異常状態が生じたものとの判定がなされる。MPU30は、片方のセンサユニット2a又は2bの誤作動により誤った測定値が出力されても、その測定に基づいて直ちに異常判定に用いることがない。両方のセンサユニット2a,2bが同時に誤作動をすることは極めて稀であるので、事実上、異常判定において片方のセンサユニット2a又は2bのみの測定結果に基づく誤作動を排除することができる。
【0041】
警報ユニット10においてリセットボタン14を押すことで警報の解除を行った上で、運転手等の乗務員は、状況を確認して防護無線装置24から防護無線を発報することができる。また、乗務員が負傷して、一定時間内にリセットボタン14を押せない場合には、防護無線装置24において、自動的に防護無線を発報するように設定することができる。このことにより外乱等のセンサ誤動作による、防護無線の誤発報が無くなる。本体で各LEVEL別に設定した閾値等を超えた場合、演算ユニット1及びセンサユニット2a及び2bより出力された車両挙動情報を記録媒体装置3(図2)に記録する。情報記憶回路(半導体メモリ)3はモニタリング処理した、LEVEL1〜3の全ての挙動を記録し、記録媒体18(フラッシュメモリ)はLEVEL2、3の挙動を記録する。
【0042】
図8に本発明における異常判定装置の作動フローの一例を示す。
まず、3段階(LEVEL1〜LEVEL3)に設定した閾値について説明する。3軸回りの角速度より、車両の正常運行状況;台車等の故障による異常振動、異常挙動;脱線、衝突等による衝撃振動、異常挙動で発生が予想される各加速度値及び角速度値を、予め演算ユニット1に閾値として記憶させておき、その閾値を超えた時に下記の動作を行う。 LEVEL1:脱線、衝突、転覆等、大事故
→ 自動的に防護無線を発報する。車両の挙動データを情報記憶回路3と 記録媒体18の両方に記録する。
LEVEL2:大事故に繋がる恐れのある異常な車両挙動
→ 運転手に危険な予兆発生を知らせる。車両の挙動データを記録媒体1 8に記録する。
LEVEL3::いつもとなんとなく違う振動や挙動、軌道管理基準
→ 運転手に状況を知らせる。車両の挙動データを記録媒体18に記録す る。
【0043】
車両の電源ONに連動して演算ユニット1の電源がONとなる(ステップ1;「S1」と略す。以下同じ)。初期システムチェックを行い、「異常無し」か否かを判定する(S2)。S2の判定において、異常有りの判定の場合には警報LED12において全LEDを点灯して異常報知処理をする(S18)。S2において初期システムチェック異常無しの場合には、モニタリング処理(S3)に移行する。
【0044】
モニタリング処理(S3)を行い、データ収集部へ走行データを記録(S4)後、センサユニット2aとセンサユニット2bの出力比較で単位時間当たり問題無いか否かを判定する(S5)。S5の判定において、出力比較で問題有りと判定されるときにはS18へ移行する。S5の判定において、出力比較で「問題無し」と判定される場合には、加速度及び角速度がLEVEL1の閾値を超えたか否かが判定される(S10)。S10の判定でLEVEL1の閾値を超えていないと判定された場合には、後述するようにLEVEL2の閾値を超えたか否かのフローに移行する。
【0045】
S10の判定でLEVEL1の閾値を超えていると判定される場合には、警報ブザー(レベル1)及び音声を鳴らし続け、警報LED1の赤LEDを点灯する(S11)。この警報状態が10秒以上続き、10秒以内にリセットボタン14が押されないか否かを判定する(S12)。S12において、10秒以内にリセットボタン14が押された場合には、警報ブザー(レベル1)及び音声を停止し、警報LED1の赤LEDを消灯し(S131)、更に警報部10の記録媒体18に前後20秒間の挙動データを保存する(S14)。S12において、10秒以内にリセットボタン14が押されない場合には、防護無線を自動発報して列車無線処理をし(S15)、演算ユニット1内の情報記憶回路3に前後20秒の挙動データを保存し(S16)、更に警報部10の記録媒体18に前後20秒の挙動データを保存する(S17)。
【0046】
このように、車両異常が生じたとの判定に応じて、警報ユニット10は、警報ブザーと警報LEDとによって乗務員に警報を発する。鉄道車両の大事故時に、運転手や車掌のような乗務員が意識喪失、動転若しくは大怪我等によって防護無線が発報されない状況にあるときには、一定時間(10秒)内に警報ユニット10の警報が乗務員によって解除されないことがあるが、この場合には、当該一定時間が経過すると、演算ユニット1は防護無線手段24が自動的に防護無線を発報するように対応を取る。したがって、防護無線が自動的に発報され、列車事故の二次被害の防止を図ることができる。なお、防護無線が発報されるレベルの警報が発生している間でも、一定時間内であれば乗務員がこれを解除することができるので、センサの誤動作等に起因して防護無線が自動的に発報されるのを防ぐことができる。
【0047】
S10の判定で加速度及び角速度がLEVEL1の閾値を超えていないと判定された場合には、加速度及び角速度がLEVEL2の閾値を超えたか否かが判定される(S20)。S20の判定で加速度及び角速度がLEVEL2の閾値を超えていないと判定された場合には、後述するように加速度及び角速度がLEVEL3の閾値を超えたか否かのフローに移行する。S20の判定でLEVEL2の閾値を超えていると判定される場合には、警報ブザー2及び音声を鳴らし続け、警報LED1の黄LEDを10秒間点滅させ、警報ブザーを5秒間鳴らす(S21)。その後自動的に、警報LED1の黄LEDを消灯及びブザーを停止し(S22)、更に警報部10の記録媒体18に前後20秒間の挙動データを保存する(S23)。
【0048】
S20の判定で加速度及び角速度がLEVEL2の閾値を超えていないと判定された場合には、加速度及び角速度がLEVEL3の閾値を超えたか否かが判定される(S30)。S30の判定で加速度及び角速度がLEVEL3の閾値を超えていないと判定された場合には、S4に戻る。S30の判定で加速度及び角速度がLEVEL3の閾値を超えていると判定される場合には、警報ブザー(レベル3)を5秒鳴らし、警報LED10の青LEDを10秒点滅する(S31)。その後、警報ブザー(レベル3)は自動的に停止し、警報LED10の青LEDは自動的に消灯し(S32)、更に警報部10の記録媒体18に前後10秒間の挙動データを保存する(S33)。
【0049】
また、前述の閾値判定とは別に、3軸回りの加速度と3軸回りの角速度が3段階(LEVEL1〜LEVEL3)に設定した各閾値を超えなくても、累積頻度に応じて、閾値に応じた警報を発生することができる。即ち、各軸の測定項目について、各測定値が設定されている複数の閾値のいずれを超えなくても、例えば、いつもと違う振動レベルが何度も続いた場合などには、累積頻度をカウントすることで、車両に異常が発生していると判断し、レベルは小さくとも大事故の繋がる恐れのあるレベルと判断することとしている。例えば、LEVEL3に達しない加速度及び角速度でも、加速度及び角速度の累積が予め設定した累積閾値を超えればLEVEL3の警報を発生することができる。また、LEVEL3を超えLEVEL2に達しない加速度及び角速度でも、加速度及び角速度の累積が予め設定した累積閾値を超えればLEVEL2の警報を発生させることができる。また、LEVEL2を超えLEVEL1に達しない加速度及び角速度でも、加速度及び角速度の累積が予め設定した累積閾値を超えればLEVEL1の警報を発生することができる。こうした、累積頻度による対応によって、より精度の高い判断が可能となる。
【0050】
また、LEVEL1に達成しない加速度及び角速度でも、非常に速い期間で累積閾値を超えた場合はLEVEL2の警報を、LEVEL1を超えLEVEL2に達しない加速度及び角速度でも、非常に速い期間で累積閾値を超えた場合はLEVEL3の警報を発生させる。この累積頻度による判定の方法は、危険予知の考え方で有名であるハインリッヒの法則を参考にしたものでLEVEL3の小さな危険要因も数が増えると大きな危険に繋がることを想定した判定方法である。例えば、LEVEL1で一発閾値が「10」である場合、短い時間でレベル「5」の信号が10回あれば、累積閾値(所定時間内での「5」のレベルとその回数)に基づいて、LEVEL1に達する状況があったと評価する。
【0051】
以上、本発明の実施形態として異常判定装置について説明したが、演算ユニット1については、その記録媒体に着目すれば、鉄道車両の通常走行時の挙動記録装置としても捉えることができることは、明らかである。
【符号の説明】
【0052】
1 異常判定装置本体 2a,2b センサユニット
3 情報記憶回路(半導体メモリが実装された基板) 4 予備電源
5 筐体 6 電源供給口
7 ヒューズ接続口 8 入出力端子
10 警報ユニット 11 電源LED
12 警報LED 13 スピーカ
14 リセットボタン 15 記録媒体入力端子
16 メモリLED 18 記録媒体(フラッシュメモリ)
20 運転室(車掌室) 21 運転室側壁
22 運転室収納部 23 床構造
24 防護無線機
25 先頭車両 26 最後尾車両
30 マイクロプロセッサーユニット(MPU) 31 A/D変換器
32 外部電源部 33 防護無線出力部
34 列車無線出力部 35 速発信号入力部
36 本体通信部 37 外部シリアル入出力部
39 データ通信線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に取り付けられており直交する3軸の加速度計及び当該直交する3軸回りの角速度を測定する3軸ジャイロを具備するセンサユニットと、前記鉄道車両に取り付けられた耐衝撃・耐火性の筐体に収容されており前記センサユニットの測定値が前記車両の挙動として記録される記録媒体と、前記車両の挙動に基づいて、脱線、転覆、衝突、その他の車両異常を判定する判定手段とを備えていることから成る鉄道車両の異常判定装置。
【請求項2】
直交する3軸の加速度計及び当該直交する3軸回りの角速度を測定する3軸ジャイロを具備するセンサユニットと、前記3軸の加速度計が測定した加速度測定値及び前記3軸ジャイロが測定した角速度測定値に基づいて車両異常を含む車両挙動を演算する演算ユニットとを具備しており、
少なくとも1車両に前記センサユニットを2ユニット以上設置しており、全車両に設置された前記演算ユニットにて、前記各センサユニットの測定値に基づく演算結果について更に行うAND論理演算により、脱線、転覆、衝突、その他の車両異常を判定し、その判定を表示するとともに当該判定に基づいて警報を発する警報ユニットを設置していることから成る鉄道車両の異常判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の鉄道車両の異常判定装置において、
前記警報ユニットが発する警報が一定時間内に解除されないことに応じて自動的に防護無線を発報する防護無線手段を備えていることから成る鉄道車両の異常判定装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の鉄道車両の異常判定装置において、
前記センサユニットに関連してその測定値を前記車両の挙動として記録する記録媒体が設けられており、前記センサユニット及び演算ユニットは少なくとも鉄道車両編成の先頭車両及び最後尾車両に設置されていて互いにデータ通信を行っており、前記各記録媒体には互いの前記車両の挙動がバックアップとして記録されることから成る鉄道車両の異常判定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の鉄道車両の異常判定装置において、
前記警報ユニットは、前記先頭車両及び最後尾車両の運転室、車掌室等の乗務員室に配置されていることから成る鉄道車両の異常判定装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の鉄道車両の異常判定装置において、
前記直交する3軸の前記加速度及び前記直交する3軸回りの前記角速度について予め複数の閾値が設定されており、前記直交する3軸の前記加速度測定値、又は前記直交する3軸回りの前記角速度測定値の何れかが、設定されている前記複数の閾値のいずれかを超えることに応じて、超えた当該閾値に応じた警報を発生することから成る鉄道車両の異常判定装置。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の鉄道車両の異常判定装置において、
前記直交する3軸の前記加速度及び前記直交する3軸回りの前記角速度について予め複数の閾値が設定されており、前記直交する3軸の前記加速度測定値、又は前記直交する3軸回りの前記角速度測定値の何れかが、設定されている前記複数の閾値のいずれを超えなくても、累積頻度に応じて、前記閾値に応じた警報を発生することから成る鉄道車両の異常判定装置。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1項に記載の鉄道車両の異常判定装置において、
前記センサユニットの測定値を前記車両の異常な挙動として記録する記録媒体を備えていることから成る鉄道車両の異常判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−254181(P2010−254181A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108036(P2009−108036)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【Fターム(参考)】