説明

鉄道車両用荷棚構造

【課題】荷棚に対する注意を乗客に喚起することができ、荷棚への荷物の置き忘れを防止できるようにするとともに、停車駅への接近等の情報も提供することができる鉄道車両用荷棚構造を提供する。
【解決手段】側構体客室内上部に荷棚を有する鉄道車両において、前記荷棚の先端部に発光手段を設け、車両走行位置に応じて点灯又は点滅又は消灯させる。例えば、走行中は消灯させ、停車駅に近付いたときに点滅させ、停車駅に停車中は点灯させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用荷棚構造に関し、詳しくは、鉄道車両の側構体客室内上部に車体長手方向に設けられた鉄道車両用の荷棚の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の多くには、側構体客室内上部の長手方向に荷棚が設けられており、この荷棚を利用して、その下面に読書灯を設けたり(例えば、特許文献1参照。)、下部に空調装置のダクトを一体化したりすることが行われている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−255970号公報(図1)
【特許文献2】特開2001−63565号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、荷棚に荷物を載せた乗客が降車の際に荷物を置き忘れることがたまに起こる。その多くは、乗客が荷物を荷棚に載せたことを忘れてしまうことが原因であるが、車内放送で注意を喚起しても荷物の置き忘れはなくならないため、より効果的な対策が求められている。
【0004】
そこで本発明は、荷棚に対する注意を乗客に喚起することができ、荷棚への荷物の置き忘れを防止できるようにするとともに、停車駅への接近等の情報も提供することができる鉄道車両用荷棚構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の鉄道車両用荷棚構造は、側構体客室内上部に荷棚を有する鉄道車両において、前記荷棚の先端部に発光手段を設けたことを特徴とするものであり、前記発光手段は、車両走行位置に応じて点灯又は点滅又は消灯させることができ、例えば、走行中は消灯し、停車駅に近付いたときに点滅を開始し、停車駅に停車中は点灯するように設定することが好ましい。また、車体後方から前方に向かって、あるいは、車体前方から後方に向かって順次点滅させることもでき、ドアスイッチに連動して点灯又は点滅又は消灯するように設定することもできる。さらに、前記発光手段に複数の色調を用いることもでき、この場合は、車両走行位置等の状況に応じて異なった色調で点灯又は点滅することができる。
【0006】
発光手段を配置した具体的な荷棚構造として、前記荷棚は、基端部が前記側構体に固着される荷棚本体と、該荷棚本体の先端部に取り付けられる荷棚先端部材と、該荷棚先端部材の内側に収納された発光ユニットとを有し、該発光ユニットは、溝形部材の底部長手方向に複数のLEDを配列し、溝形部材両端からリード線を引き出したものであり、該発光ユニットは固定金具を介して前記荷棚先端部材の内側に取り付けられ、該発光ユニットを取り付けた前記荷棚先端部材は、該荷棚先端部材の内面に設けた係合金具を前記荷棚本体の先端部に設けた係合部材に係合させた状態で荷棚本体の先端部に固着されていることを特徴とし、特に、前記荷棚先端部材は全体が不透明材料で形成され、前記発光ユニットのLEDに対応する位置に設けた通孔に透明部材が取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の鉄道車両用荷棚構造によれば、常時は消灯している発光手段を必要に応じて点灯又は点滅させることにより、乗客、主として降車客に対して荷棚への注意を喚起することができるので、荷物の置き忘れを防止することができる。また、車両走行位置に応じて点灯又は点滅又は消灯することにより、乗客に対して各種情報を提供することができる。例えば、走行中は消灯し、停車駅に近付いたときに点滅を開始し、停車駅に停車中は点灯するように設定することにより、降車準備の開始等に利用できる。さらに、車体後方から前方に向かって、あるいは、車体前方から後方に向かって順次点滅させてスクロール状態とすることにより、単なる点滅とは違ったイメージを乗客に与えることができる。また、ドアスイッチと連動させて点灯又は点滅又は消灯することもできる。特に、発光手段に複数の色調を備えることにより、荷棚への注意喚起や各種情報表示を確実に行うことができる。
【0008】
また、発光ユニットを取り付けた荷棚先端部材を荷棚本体の先端部に設けた係合部材に係合させた状態で荷棚本体の先端部に固着することにより、発光手段を荷棚先端に容易に配置することができる。さらに、荷棚先端部材全体を不透明材料とし、発光ユニットのLEDに対応する位置に設けた通孔に透明部材を設けた構造とすることにより、係合部材等を不透明材料で覆うことができ、荷棚の外観を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明の一形態例を示す荷棚の断面図、図2は荷棚の正面図、図3は発光ユニットの正面図、図4は図2のIV−IV断面図、図5は図2のV−V断面図、図6は図2のVI−VI断面図である。
【0010】
荷棚11は、基部12aが側構体13の内側で窓開口13aの上部に固着される荷棚本体12と、該荷棚本体12の先端部に取り付けられる荷棚先端部材14と、該荷棚先端部材14の内側に収納された発光手段である発光ユニット15とを有しており、荷棚本体12の上面には棚板16が設けられ、下面には荷棚キセ17及び窓キセ18が設けられている。
【0011】
発光ユニット15は、溝形部材21と、該溝形部材21の底部に長手方向に対して所定間隔で取り付けられる複数のLED基板22と、該LED基板22を所定間隔に保持する保持部材23とで形成されており、溝形部材21の両端からはリード線24が引き出されている。LED基板22には、色調の異なるLED22a,22bが2列に設けられており、それぞれ独立して点灯できるように形成されている。この発光ユニット15は、荷棚長手方向に対してLED基板22の位置が等間隔になるように、複数個が一直線状に並べられた状態で荷棚先端部材14内に取り付けられる。
【0012】
荷棚先端部材14は、薄板金属等の不透明材料の成形品であって、荷棚本体12の先端上面への取付部14aの車体中央側先端14bから下方に屈曲し、さらに車体外方に向かって緩やかに湾曲したカバー面14cとを有している。図4に示すように、前記発光ユニット15のLED基板22に対応した位置のカバー面14cには、LED基板22の幅寸法及び長さ寸法に応じた長円形状の通孔14dが所定間隔で設けられており、各通孔14dには、断面凸字状の透明部材25の凸部25aがそれぞれ嵌め込まれている。
【0013】
図5に示すように、前記発光ユニット15は、カバー面14cの裏面に所定間隔で設けられた固定金具26を前記溝形部材21にネジ止めすることによって荷棚先端部材14の内側に取り付けられ、透明部材25の基板部25bは、溝形部材21の開口部に形成された嵌合部21aに嵌め込まれる。
【0014】
また、図6に示すように、カバー面14cの裏面には、前記固定金具26とは別に、係合金具27が所定間隔で設けられるとともに、荷棚本体12の先端部は、前記係合金具27に対応する位置に弾性部材からなる係合部材28がそれぞれ設けられている。前述のように、発光ユニット15を固定金具26を介してカバー面14cの裏面に取り付けた荷棚先端部材14は、前記取付部14aを荷棚本体12の先端部上面に載置し、係合金具27を係合部材28に弾性的に係合させることによって荷棚本体12の先端部に組み付けられ、取付部14aを貫通するネジ29によって荷棚本体12の先端部に固着される。
【0015】
このとき、カバー面14cの下端14eは、係合部材28の弾性によって荷棚本体12の先端部下面に押し付けられた状態となる。したがって、カバー面14cに取り付けネジ等が露出することがなく、荷棚11の外観を向上させることができる。また、荷棚11の先端上面には、荷物の落下を防ぐための縁部材30がネジ止めされる。
【0016】
このようにして形成された荷棚11は、前記LED22a,22bに通電して点灯することにより、通孔14dに嵌め込んだ透明部材25が光って見えることから、荷棚11の先端部にライン状に発光手段が設けられた状態となる。前記LED22a,22bは、常時点灯させておくのではなく、車両の走行位置に応じて点灯又は点滅又は消灯させることにより、乗客に各種メッセージを伝達することが可能である。
【0017】
例えば、走行中は消灯させておき、停車駅に近付いたときに点滅させることにより、乗客にまもなく停車駅であることを伝えることができ、停車中に連続して点灯させておくことにより、降車やその準備のために立ち上がった乗客に対して荷棚11への注意を喚起することができ、荷棚11への荷物の置き忘れを防止することができる。特に、通常は消灯しているLED22a,22bが停車駅近くや停車時に点灯することにより、常時点灯している車内照明とは異なった感覚となり、荷棚11に対する大きな注意喚起効果が得られる。
【0018】
また、LED22a,22bを、車体後方から前方に向かって、あるいは、車体前方から後方に向かって順次点滅させ、スクロール状態で点滅させることにより、例えば、停車駅に近付いたときには、車両の速度に応じてスクロール速度を変えることにより、停車駅への接近状態を知らせることができる。
【0019】
特に、本形態例に示すように異なる色調の2種類のLED22a,22bを設けておき、停車駅によって点灯または点滅する色調を変えることにより、近付いている停車駅あるいは停車している駅がどのような駅であるかという情報も表示可能であり、例えば、終着駅では青色や赤色、途中駅では白色というように使い分けることができる。また、LED22a,22bを交互に点滅させることによって注意喚起効果を更に向上させることができる。
【0020】
LED22a,22bの点灯、点滅、消灯の切り替えは、車両の走行位置に加えてドアスイッチに連動させることもできる。例えば、ドアスイッチを開としたときに点滅し、ドアが開いた状態では点灯し、ドアスイッチを閉としたときに再び点滅し、ドアが閉じたときに消灯するように設定することができ、開くときに点滅と、閉じるときの点滅とで色調を変えたり、点滅速度を変えたりすることもできる。
【0021】
なお、発光手段は、LED以外のものを光源として用いることもでき、鏡や光ケーブル等を用いて間接的に荷棚先端部を光らせることもできる。また、LEDは1種類だけでもよく、3種類以上を組み合わせることも可能である。さらに、LED等の光源を荷棚先端に露出させてもよいが、本形態例に示すように、LED等の光源を透明部材で覆うように形成することにより、光源であるLEDを保護することができ、破損や汚れを確実に防止することができる。また、荷棚先端部の全長にわたって連続した状態で発光手段を配置することも可能であり、上下方向の位置を変えて千鳥状に配置することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一形態例を示す荷棚の断面図である。
【図2】荷棚の正面図である。
【図3】発光ユニットの正面図である。
【図4】図2のIV−IV断面図である。
【図5】図2のV−V断面図である。
【図6】図2のVI−VI断面図である。
【符号の説明】
【0023】
11…荷棚、12…荷棚本体、12a…基部、13…側構体、13a…窓開口、14…荷棚先端部材、14a…取付部、14b…車体中央側先端、14c…カバー面、14d…通孔、14e…下端、15…発光ユニット、16…棚板、17…荷棚キセ、18…窓キセ、21…溝形部材、21a…嵌合部、22…LED基板、22a,22b…LED、23…保持部材、24…リード線、25…透明部材、25a…凸部、25b…基板部、26…固定金具、27…係合金具、28…係合部材、29…ネジ、30…縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側構体客室内上部に荷棚を有する鉄道車両において、前記荷棚の先端部に発光手段を設けたことを特徴とする鉄道車両用荷棚構造。
【請求項2】
前記発光手段は、車両走行位置に応じて点灯又は点滅又は消灯することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用荷棚構造。
【請求項3】
前記発光手段は、走行中は消灯し、停車駅に近付いたときに点滅を開始し、停車駅に停車中は点灯することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用荷棚構造。
【請求項4】
前記発光手段は、車体後方から前方に向かって、あるいは、車体前方から後方に向かって順次点滅することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用荷棚構造。
【請求項5】
前記発光手段は、ドアスイッチに連動して点灯又は点滅又は消灯することを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用荷棚構造。
【請求項6】
前記発光手段は、複数の色調を有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の鉄道車両用荷棚構造。
【請求項7】
前記発光手段は、車両走行位置に応じて異なった色調で点灯又は点滅することを特徴とする請求項6記載の鉄道車両用荷棚構造。
【請求項8】
前記荷棚は、基端部が前記側構体に固着される荷棚本体と、該荷棚本体の先端部に取り付けられる荷棚先端部材と、該荷棚先端部材の内側に収納された発光ユニットとを有し、該発光ユニットは、溝形部材の底部長手方向に複数のLEDを配列し、溝形部材両端からリード線を引き出したものであり、該発光ユニットは固定金具を介して前記荷棚先端部材の内側に取り付けられ、該発光ユニットを取り付けた前記荷棚先端部材は、該荷棚先端部材の内面に設けた係合金具を前記荷棚本体の先端部に設けた係合部材に係合させた状態で荷棚本体の先端部に固着されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の鉄道車両用荷棚構造。
【請求項9】
前記荷棚先端部材は全体が不透明材料で形成され、前記発光ユニットのLEDに対応する位置に設けた通孔に透明部材が取り付けられていることを特徴とする請求項8記載の鉄道車両用荷棚構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−176427(P2007−176427A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379366(P2005−379366)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(391016299)名古屋鉄道株式会社 (4)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)